説明

マイクロレンズフィルム及びその製造方法

【課題】マイクロレンズの球径及び突出高さが揃い、レンズ間の密度も高く、光拡散機能を向上させ、輝度も向上させる。
【解決手段】球径30〜150μmの範囲から選択されたマイクロレンズの一定の球径が±20%の誤差の範囲内にあり、少なくとも直径の3分の1以上突出するように光透過性樹脂の一面側にマイクロレンズを成形し、このマイクロレンズを光透過性樹脂の単位面積当り75%以上の表面積を占めるように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置のバックライトユニットに使用される光拡散用のマイクロレンズアレイ、照明器具、特にLED照明の光拡散用としてのフィルム、太陽電池の集光フィルムなどに用いられるマイクロレンズフィルム及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
マイクロレンズフィルム(あるいはマイクロレンズアレイ)は、外径が10〜300μmの円形状で突出高さが0.6〜50μmの凸レンズを面状に配列したものである。このようなマイクロレンズフィルムを製造するため、特許文献1(特開2008−273149号公報)に記載のような転写成形ロールが開発された。この成形ロールは、シートに複数のマイクロレンズを転写成形するために用いられるマイクロレンズ転写成形用ロールであって、複数のマイクロレンズ成形面が、前記ロールの外周面に前記ロールの軸を中心軸とする1条の螺旋に沿って一定ピッチ間隔で配列されているものである。そして、このような成形ロールの製造は、ロール素材をそのロール素材の軸を中心に回転させるロール回転工程と、先端刃先形状が円弧状の工具を前記ロール素材の軸方向へ移動させる工具移動工程と、前記工具を前記ロール素材に対して一定周期で進退させる工具進退工程とを備え、前記ロール回転工程、前記工具移動工程、および、前記工具進退工程を制御しながら、複数のマイクロレンズ成形面を、前記ロール素材の外周面に前記ロール素材の軸を中心軸とする1条の螺旋に沿って一定ピッチ間隔で切削加工することにより行なうものである。
【0003】
特許文献1の転写成形ロールでは、マイクロレンズ成形面(半球状の溝)の直径を100μm未満、さらには50μm以下とし、1cm当り1万個以上の溝を成形することは、切削加工では困難であるとともに、精密な加工をしようと加工時間が長くなり、切削工具も精度の高いものが要求され、高コストになってしまっていた。
【0004】
マイクロレンズフィルム上に成形される半球状の突起、すなわちマイクロレンズの径は小さくかつ大きさを揃える(±20%)とともに、密度高く配列され、外観がきれいであることが、輝度を向上させ、光拡散機能を高め、モアレ現象やマダラの発生を防止するのに有効である。
【0005】
特許文献1の転写成形ロールで成形されるマイクロレンズフィルムの欠点を解消すべく、特許文献2(特開2009−113311号公報)に記載のものが開発された。この製造方法は、ガラスから成る基板にレンズ形状決定用粒子(直径11μmのシリカビーズ)の自己組織化現象を利用して前記レンズ形状決定用粒子からなる粒子膜を形成する工程と、シリコンウェハーから成る基板に樹脂層を形成する工程と、粒子膜が形成された基板(ガラス)と樹脂層が形成された基板(シリコンウェハー)を対向させ所定の圧力でプレスする工程と、プレス後に基板と基板を剥離する工程と、レンズ形状決定用粒子をプレスすることにより生成された穴を有する基板(シリコンウェハー)をモールドとしてマイクロレンズアレイを製造する工程とを含むものである。ここでいう「自己組織化現象」とは、粒子の分散液(シリカ微粒子をエタノールに分散させ、0.5wt%のシリカ微粒子エタノール分散液)を基板(ガラス)に塗布後、液媒が乾燥する際に微粒子間に生じる毛管力を駆動力として粒子が密にパッキングする現象である、と説明されている。シリカウェハーの基板には生成された穴が存在し、この基板をモールドとして利用する際、剥離処理を行った後に樹脂を穴とその面に注入して硬化させ、硬化後に樹脂を剥がしてマイクロレンズアレイを得る。
【0006】
液晶パネルディスプレイ(LCD)に使用されるマイクロレンズフィルムでは、単位面積当りのマイクロレンズ間の隙間が少ないほど、換言すればレンズ充填率が高いほど、光拡散が向上し、輝度が上昇する。上記特許文献2のように、直径11μmのシリカビーズが、「自己組織化現象」により、隙間なく密集するのであれば、シリコンウェハーから成るモールド(基板)の穴は密に配列され、このモールドで成形されたマイクロレンズフィルムのレンズ間の隙間も少なく、レンズ間が密に配列され、光拡散機能も向上し、輝度も上昇したものを得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−273149号公報
【特許文献2】特開2009−113311号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献2に開示された技術では、溶媒乾燥後の微粒子の突出具合が一定するかどうかにより、モールドの穴の深さが一定するかどうかが決まるが、微粒子の大きさや重さが違う場合に、粒子膜形成後の微粒子の突出比率の差が生じないかどうかも判然としない。溶媒の乾燥をコントロールすることで、粒子膜形成の状態をコントロールできるのかどうかも不明である。したがって、モールドの穴の深さを所望の深さにコントロールできるとは考えられず、マイクロレンズフィルムの表面粗度も一定せず、モアレなどの発生のおそれがあると思われる。
【0009】
また、特許文献2のものでは、長尺状のモールドあるいはローラに巻き付けられるような可撓性を有するモールドを製造することができず、そのため長尺状のマイクロレンズフィルムも製造できないものであった。そのために、十分なコストダウンを図れなかった。
【0010】
そこで、本発明は、マイクロレンズの球径及び突出高さが揃い、レンズ間の密度も高く、光拡散機能を向上させ、輝度も上昇させたマイクロレンズフィルムを提供するとともに、このようなマイクロレンズフィルムを安価かつ容易に製造することのできる製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の目的を達成するため、本発明に係るマイクロレンズフィルムは、球径30〜150μmの範囲から選択されたマイクロレンズの一定の球径が±20%の誤差の範囲内にあり、少なくとも直径の3分の1以上突出するように光透過性樹脂の一面側にマイクロレンズを成形し、このマイクロレンズを光透過性樹脂の単位面積当り75%以上の表面積を占めるように構成したものである。
【0012】
本発明に係るマイクロレンズフィルムの製造方法は、少なくとも上面に熱軟化性樹脂を有する小球支持シートを加熱軟化させた状態でその上面に球径30〜210μmから選択された一定の球径の小球を密に散布して軟化した樹脂層に球径の40〜60%埋め込み、前記小球支持シートの表面積に占める小球の表面積の割合を75%以上となるようにする工程と、この小球支持シートの露出する小球を樹脂材料で被覆して硬化させることにより小球が固着された固着層を形成する工程と、その後小球支持シートを小球から剥がして、小球が転写された穴を有するモールドシートを作製する工程と、このモールドシートの穴形成側に光透過性樹脂を供給し、光透過性樹脂の硬化後にモールドシートから剥離して光透過性樹脂の一面側にモールドシートの穴で成形されるマイクロレンズを備えたマイクロレンズフィルムを得るものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明のマイクロレンズフィルムによれば、球径30〜150μmの範囲から選択されたマイクロレンズの一定の球径が±20%の誤差の範囲内にあり、少なくとも直径の3分の1以上突出するように光透過性樹脂の一面側にマイクロレンズを成形し、このマイクロレンズを光透過性樹脂の単位面積当り75%以上の表面積を占めるように構成したので、マイクロレンズの間の密度が高く、光拡散機能が向上し、精度も上昇した。
【0014】
本発明のマイクロレンズフィルムの製造方法によれば、少なくとも上面に熱軟化性樹脂を有する小球支持シートを加熱軟化させた状態でその上面に球径30〜210μmから選択された一定の球径の小球を密に散布して軟化した樹脂層に球径の40〜60%埋め込み、前記小球支持シートの表面積に占める小球の表面積の割合を75%以上となるようにする工程と、この小球支持シートの露出する小球を樹脂材料で被覆して硬化させることにより小球が固着された固着層を形成する工程と、その後小球支持シートを小球から剥がして、小球が転写された穴を有するモールドシートを作製する工程と、このモールドシートの穴形成側に光透過性樹脂を供給し、光透過性樹脂の硬化後にモールドシートから剥離して光透過性樹脂の一面側にモールドシートの穴で成形されるマイクロレンズを備えたマイクロレンズフィルムを得る工程とを有するので、精密なマイクロレンズフィルムを安価に得ることができ、しかもモールドシートを長尺にすることも、可撓性を利用してローラに巻き付けることもできるため、長尺のマイクロレンズフィルムを製造でき、製造コストも安くなる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態のマイクロレンズフィルムの断面図。
【図2】図1のマイクロレンズフィルムの顕微鏡写真。
【図3】小球を支持した小球支持シートの拡大断面図。
【図4】小球支持シートに形成された固着層にベース層を熱プレスする状態の説明図。
【図5】図4で形成された積層物の小球支持シートを小球を残して剥離する状態の説明図。
【図6】モールドシートの断面図。
【図7】図6のモールドシートの顕微鏡写真。
【図8】他の例のモールドシートの断面図。
【図9】図8のモールドシートの顕微鏡写真。
【図10】小球散布工程を示す図。
【図11】小球散布直後の図。
【図12】乾燥機通過の後に未固着の小球を落とし、固着された小球をブラシでクリーニングする工程を示す図。
【図13】図8、9のモールドシートから成型されたマイクロレンズフィルムの顕微鏡写真。
【図14】実施例2で得られたマイクロレンズフィルムの顕微鏡写真。
【図15】実施例3で得られたモールドシートの顕微鏡写真。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明の好適な実施形態について、図面を参照にして説明する。
【0017】
図1に示すマイクロレンズフィルムの拡大断面図では、球径(直径)30〜150μmの範囲から選択された一定の球径が±20%の誤差の範囲内にあり、少なくとも直径の3分の1以上突出するように光透過性樹脂1の一面側にマイクロレンズ2を成形し、光透過性樹脂1の下側には光透過性の基材3を設けてある。また、マイクロレンズ2の球径は、49μm(誤差±20%)とし、基材3としては、厚さ188μmのポリエステルのフィルムを用いた。また、マイクロレンズ2と光透過性樹脂1とは、紫外線硬化樹脂(UV硬化樹脂)を硬化させて形成した。全体の厚さを285μmとした。
【0018】
図2は、顕微鏡で拡大したマイクロフィルムレンズの顕微鏡写真であり、マイクロレンズ2は、光透過性樹脂1の単位面積当り75%以上の表面積を占めるように高密度で配列されている。球径60〜80μmのマイクロレンズ2が形成される場合、1cm当り、23,000〜28,000個のマイクロレンズ2が配列されている。前記光透過性樹脂1として用いるUV硬化樹脂としては、アクリル、ポリウレタン、ポリエステル、エポキシ、シリコンの各UV樹脂の使用が可能である。特にアクリルUV樹脂が、黄変しないので好適に使用することができる。また、UV硬化樹脂を用いずに、熱可塑性樹脂を光透過性樹脂1として使用することもでき、アクリル、ポリウレタン、ポリエステル、エポキシ、シリコンの各熱可塑性樹脂の使用が好適である。
【0019】
図3は、球径30〜210μmのうち球径49μm(±20%)の小球20を上面に熱軟化性樹脂層10B(第2フィルム)を有する小球支持シート10の加熱軟化された上面に密に散布して半球前後、すなわち球径の40〜60%を埋め込み、小球20の表面積が、小球支持シート10の表面積に対して75%以上占めるようにした状態の断面図である。小球20としては、チタン、バリウム系ガラスの球で、密度4.1、屈折率1.9のものを用いた。小球20としては、ガラス球の他に、スチールボール、球状アルミナ、樹脂ビーズも使用するビーズの候補になったが、スチールボールは、その最小球径が300μmであり、かつ高価であったので、使用するには適さず、球状アルミナは、球径が30μm〜2mmまであるが、粒度分布にバラつきが大きく、かつ高価であって、これも使用には適さなかった。また、樹脂ビーズも粒度分布にバラつきが多く、ナローレンジのビーズをガラス球よりも得にくく、比重も0.7と軽く、散布して小球支持シート10の上面に半没させる作業が難しかった。
【0020】
前記小球支持シート10としては、ベースとしてポリエステルフィルム製の第1フィルム(ベース樹脂層)10Aの表面にポリエチレンフィルム製の第2フィルム、すなわち熱軟化性樹脂層10Bを積層した積層フィルムを用い、熱軟化性樹脂層10Bが軟化した状態で小球20をその球径の40〜60%を埋め込んで仮固着した。小球支持シート10の熱軟化性樹脂層10Bが冷却して硬化した状態で、小球20はポリエチレンフィルム(熱軟化性樹脂層10B)に仮固着し、小球20の頂面の高さがそろい、かつ小球20の表面積が小球支持シート10の表面積に占める割合を75%以上とした小球支持シート10が作製された。
【0021】
図3に示すように、小球20が仮固着された小球支持シート10に対し、小球20を被覆するように樹脂材料を塗布し、乾燥させて硬化させることにより小球20を強固に固着する固着層11を形成する。固着層11としては、例えばポリウレタン系樹脂層100重量部と硬化剤として変性ポリイソシアネート樹脂5重量部との配合溶液を主体とする溶液をローラで塗布し、熱風乾燥機で乾燥して、厚さ約60μmの固着層11を形成する。
【0022】
このように固着層11で小球20を被覆したものを、図4に示すように、一対のローラ12間でベース層(例えばポリエステルフィルム)13と熱プレスして、小球支持シート10(第1フィルムと第2フィルムの2層構造)と小球20、固着層11、ベース層13の積層物を巻き取る。そして、この巻き取った積層物を、3〜10日間、50℃の熟成室でエージングする。
【0023】
図4に示すように形成された積層物のエージングを終えたら、図5に示すように、小球20を固着層11に固着させた状態で小球支持シート10を小球20から剥離させる。ポリエチレン製の熱軟化性樹脂層(第2フィルム)10Bは、離型性に優れているため剥離も容易に行える。剥離された小球支持シート10は、図6に示すように、片面に穴31を有する可撓性を備えたモールドシート30となる。多数の穴31は、マイクロレンズ成型用となる。このモールドシート30の顕微鏡写真を図7に示す。剥離された小球支持シート10をモールドシート30とする場合、穴31の形状が小球20の形状に忠実に再現されたものとなる。
【0024】
前記モールドシート30は、剥離された小球支持シート10(小球20が転写された穴31を有する)としたが、図5に示す小球20を固着したままの固着層11とベース層13を使用し、小球20の露出面上に、アクリル酸アルキルエステル共重合体系樹脂100重量部と光触媒3重量部を攪拌混合した溶液を塗布し、乾燥して厚さ約50μmのアクリル層30Bを形成し、次いで、ポリエステルフィルム30Aの面と、前記アクリル層30Bの面とを、貼り付け圧力450N/cm、ロール表面温度40℃で貼り合せ、ラミネート直後にUV照射し(約1秒)、直ちに前記アクリル層30Bの面を小球20が突出する面から剥がし、モールドシート30を得ることができる(図8参照)。小球20、固着層11、ベース層13から成る積層物(小球付積層物)は、モールドシート30の成形用型となり、繰り返しモールドシート30を成形することを可能にする。図9は、このモールドシート30の顕微鏡写真を示す。
【0025】
上記モールドシート30にアクリル酸アルキルエステル共重合体系樹脂100重量部と光触媒3重量部及びトルエン20重量部を攪拌混合した溶液を塗布し、乾燥して厚さ約50μmのアクリル樹脂の光透過性樹脂1の層を形成した積層物を得た。次いで、基材3となるポリエステルフィルムの面とこの層の面とをロール表面温度40℃で貼り合せた。ラミネート直後にUV照射し(約1秒)、直後にモールドシート30から剥がして図1に示すようなマイクロレンズフィルムを得た。
【0026】
なお、特開2008−273149号に開示されたマイクロレンズ転写成形用ロールの表面にモールドシート30を巻きつけて装着し、このロールと押圧ロールとを対向配置し、これら両ロール間に加熱された成形シートを通過させてマイクロレンズフィルムを得ることもできる。
【0027】
前記固着層11としては、UV樹脂、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂を使用することもできる。前記熱硬化性樹脂としては、官能基を有する樹脂、例えば、官能基を1つ又は2つ以上有する自己架橋型樹脂又は官能基を1つ以上有する樹脂と、これらの官能基と反応しうる官能基を有する硬化剤との組み合わせが好適である。なお、小球20の転着性及び固着性向上のために、シランカップリング剤、極性基を有した比較的低分子の樹脂等を前記熱硬化性樹脂に添加してもよい。固着層11を構成する樹脂中、前記官能基を有する樹脂と前記硬化剤との総重量は、固着層11を構成する樹脂の重量部の50%好ましくは70%より多いものが好適である。前記官能基を有する樹脂としては、アクリル樹脂、フッ素樹脂、スチレン共重合体のようなビニル系共重合体、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂のような重縮合系共重合体等が挙げられる。前記官能基とは、硬化剤成分との反応に与る反応性官能基または自己架橋性の官能基を指称するものである。前記硬化剤成分との反応に与る反応性官能基としては、水酸基、カルボキシル基、エポキシ基、イソシアネート基、アミノ基、酸アミド基または不飽和二重結合等が挙げられる。前記自己架橋性の官能基としては、加水分解性シリル基、N−メチロールアクリルアミド基、アルキルエーテル化N−メチロールアクリルアミド基または不飽和二重結合などが挙げられる。
【0028】
前記硬化剤としては、前記反応性官能基が水酸基、カルボキシル基、アミノ基または酸アミド基などのように、いわゆる活性水素原子を有する基の場合には、イソシアネート系硬化剤、アミノプラスト系硬化剤、ポリエポキシ化合物または酸無水物などが挙げられる。また、前記硬化剤としては、ポリアミン類や多塩基酸類などが挙げられる。また、前記硬化剤としては、前記反応性官能基がイソシアネート基の場合には、グリコール類などのような各種のポリヒドロキシ化合物などが挙げられる。
【0029】
また、前記反応性官能基が加水分解性シリル基のような、いわゆる自己架橋性の官能基の場合には、架橋促進剤を更に用いてもよい。この架橋促進剤は、この加水分解性シリル基の加水分解用ないしは縮合用触媒である。この架橋促進剤としては、例えば、硫酸、塩酸または燐酸等の各種の酸性化合物、モノメチルアミンまたはトリエチルアミン等の各種のアミン化合物、ジ−n−ブチル錫ジラウレート、ジ−n−ブチル錫ジアセテートまたはジ−n−ブチル錫ジオクテート等の各種の有機錫化合物等を使用できる。
【0030】
前記固着層11は、例えば前記小球20を敷き詰めた小球支持シート10上に、固着層11を形成する樹脂の溶液を塗布し、例えば、熱風乾燥機を使用して乾燥させて得ることができる。乾燥後の固着層11の厚みは、例えば10〜300μm、好ましくは約30〜100μmである。
【0031】
前記固着層11とは別に、ポリエチレンテレフタレート(PET)(ポリエステル)フィルム上に、ポリウレタン系樹脂100重量部と硬化剤として変性ポリイソシアネート樹脂5重量部との配合溶液を主体とする溶液を塗布し、熱風乾燥機で乾燥して、厚さ約50μmのプライマー層を形成したものでベース層13を構成し、このベース層13のプライマー層と前記固着層11とを接触させ、押圧して小球付積層物を作製した。上記の押圧では、小球20の体積の40〜60%が固着層11内に埋設されるよう行った。この押圧の手段として、前記固着層11に沿わせた前記ベース層13に、ロール表面温度80℃の加熱ロールを通過させた。次いで、この小球付積層物を小球支持シート10から剥がして、図5に示すものを得た。前記ベース層13のPET上のプライマー層は、アクリル系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ウレタン系樹脂、ゴム系樹脂から形成される。
【0032】
前記ゴム系樹脂としては、例えば天然ゴム、イソプレンゴム、スチレン・ブタジエンブロック共重合体、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体、ブチルゴム、スチレン・エチレン・ブチレン・スチレン共重合体、ポリイソブチレン、ポリビニルイソブチルエーテル、クロロプレンゴム、ニトリルゴム等の合成ゴム等が挙げられる。
【0033】
これらのゴム系樹脂には、ロジン等の天然樹脂、変性ロジン、ロジンおよび変性ロジンの誘導体、テルペンフェノール樹脂、ポリテルペン系樹脂、テルペン変性体、脂肪族系炭化水素樹脂、シクロペンタジエン系樹脂、芳香族系石油樹脂、フェノール系樹脂、アルキルフェノール−アセチレン系樹脂、クマロン−インデン樹脂、ビニルトルエン−α−メチルスチレン共重合体等の粘着付与剤、各種可塑剤、老化防止剤、安定剤、オイル等の軟化剤、充填剤、安定剤、顔料、着色剤等を必要に応じて添加してもよい。これらは、必要に応じて2種類以上を併用して使用することもできる。
【0034】
前記アクリル系樹脂としては、例えば、アルキル基、ヒドロキシル基、エポキシ基、アルコキシ基、フェノキシ基、オキシエチレン基、アミノ基、アミド基、カルボキシル基、ハロゲン原子、リン酸基、スルホン酸基、ウレタン基、フェニル基、ベンジル基、テトラヒドロフルフリル基等を有するアクリル系ビニルモノマーの重合体または共重合体、アクリル系ビニルモノマーと、その他の共重合可能なモノマー類との共重合体が挙げられる。
【0035】
アルキル基を有するアクリル系ビニルモノマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0036】
ヒドロキシル基を有するアクリル系ビニルモノマーとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0037】
エポキシ基を有するアクリル系ビニルモノマーとしては、グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0038】
アルコキシ基を有するアクリル系ビニルモノマーとしては、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0039】
フェノキシ基を有するアクリル系ビニルモノマーとしては、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0040】
オキシエチレン基を有するアクリル系ビニルモノマーとしては、ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0041】
アミノ基を有するアクリル系ビニルモノマーとしては、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−tert−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、メタクリルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0042】
アミド基を有するアクリル系ビニルモノマーとしては、(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−メチレンビス(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0043】
カルボキシル基を有するアクリル系ビニルモノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、2−メタクリロイルオキシコハク酸、2−メタクリロイルオキシエチルマレイン酸、2−メタクリロイルオキシエチルフタル酸、2−メタクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸等が挙げられる。
【0044】
ハロゲン原子を有するアクリル系ビニルモノマーとしては、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、ペンタデカフルオロオキシエチル(メタ)アクリレート、2−クロロエチル(メタ)アクリレート、2,3−ジブロモプロピル(メタ)アクリレート、トリブロモフェニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0045】
リン酸基を有するアクリル系ビニルモノマーとしては、2−メタクリロイルオキシエチルジフェニルホスフェート(メタ)アクリレート、トリメタクリロイルオキシエチルホスフェート(メタ)アクリレート、トリアクリロイルオキシエチルホスフェート(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0046】
スルホン酸基を有するアクリル系ビニルモノマーとしては、スルホプロピル(メタ)アクリレートナトリウム、2−スルホエチル(メタ)アクリレートナトリウム、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0047】
ウレタン基を有するアクリル系ビニルモノマーとしては、ウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0048】
フェニル基を有するアクリル系ビニルモノマーとしては、フェニル(メタ)アクリレート、p−tert−ブチルフェニル(メタ)アクリレート、o―ビフェニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0049】
ベンジル基を有するアクリル系ビニルモノマーとしては、ベンジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0050】
テトラヒドロフルフリル基を有するアクリル系ビニルモノマーとしては、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0051】
その他の共重合可能なモノマーとしては、シラン基を有するビニルモニマー類、スチレン、クロロスチレン、α―メチルスチレン、ビニルトルエン、塩化ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、Veova10(シェル化学社製、ビニルアルキレート化合物)、アクリロニトリル、ビニルピリジン等が挙げられる。
【0052】
シラン基を有するビニルモノマー類としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエチル)シラン、ビニルトリアセチルシラン、メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0053】
また、その他の共重合可能なモノマーとしては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコール ジ (メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、N,N−メチレンビスアクリルアミド、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート等を用いることができる。このモノマーは、塗工適性を低下させない程度に用いることができる。
【0054】
更に、アクリル系樹脂には、各種添加剤として、例えばロジン等の天然樹脂、変性ロジン、ロジンおよび変性ロジンの誘導体、ポリテルペン系樹脂、テルペン変性体、テルペンフェノール樹脂、脂肪族系炭化水素樹脂、シクロペンタジエン系樹脂、芳香族系石油樹脂、フェノール系樹脂、アルキルフェノール−アセチレン系樹脂、クマロン−インデン樹脂、ビニルトルエン−α―メチルスチレン共重合体等の粘着付与剤、各種可塑剤、老化防止剤、安定剤、オイル等の軟化材、充填剤、着色剤、顔料等を必要に応じて添加することができる。これらは、必要に応じて2種類以上を併用して使用することもできる。
【0055】
上記アクリル系樹脂は、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法等の従来公知の方法のうち、任意の方法で重合して製造される。
【0056】
なお、重合時のモノマー濃度は、通常30〜70重量%、好ましくは40〜60重量%程度である。
【0057】
また、樹脂層を構成する樹脂には増粘剤、濡れ剤、レベリング剤、消泡剤等を適宜添加してもよい。前記アクリル系樹脂として官能基を有する架橋型アクリル共重合体を用いる場合には、前記官能基と反応する反応性官能基を有した硬化剤を添加するのが好ましい。また前記アクリル系樹脂として、架橋型でないアクリル共重合体を用いる場合には、適宜硬化剤を添加してもよい。
【0058】
なお、小球付積層物(小球20、固着層11、ベース層13)においては、前記樹脂製支持層は、例えば、前記樹脂の溶液を耐熱性を有する剥離材料上に塗布後、70℃で1分間及び100℃で2分間加熱乾燥して形成してもよい。
【0059】
前記硬化剤としては、例えば、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、トリグリシジル−トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、グリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ビスフェノール−S−ジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジルエステル、o−フタル酸ジグリシジルエーテル等のエポキシ系硬化剤、トルイレンジイソシアネート、2,4−トルイレンジイソシアネートダイマー、ナフチレン−1,5−ジイソシアネート、o−トルイレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリス(p−イソシアネートフェニル)チオホスファイト、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ポリイソシアネートプレポリマー等のイソシアネート系硬化剤、メラミン、尿素、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、ステログアナミンまたはスピログアナミン等の各種のアミノ基含有化合物と、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒドまたはグリオキザール等の各種のアルデヒド系化合物とを、常法により反応させて得られる縮合物等のアミノブラスト系硬化剤、Mg2+、Ca2+、Zn2+、A13+などを含むイオン性硬化剤(例えば酢酸亜鉛、酢酸マグネシウム、酢酸カルシウム等)などが挙げられる。
【0060】
更にポリエチレン系樹脂においては、未延伸ポリプロピレン(PP)フィルムまたは低密度ポリエチレン(LDPE)フィルムであるのが好ましい。
【0061】
前記ベース層13の厚みが、20μm以上150μm以下の範囲であるのが好ましい。前記固着層11の厚みは、5μm以上130μm以下の範囲であるのがより好ましく、10μm以上100μm以下の範囲であるのが更に好ましい。
【0062】
前記小球支持シート10と小球付積層物とが合着された状態で、65±5%の環境下で7日間エージング処理する工程を含むのが好ましい。
【実施例1】
【0063】
球径80μm(誤差±20%)に調整された小球20として、比重4.1のバリウム系ガラス球を使用した。ベース樹脂層10Aとして厚さ75μmのポリエチレンテレフタレート(PET)のフィルム(第1フィルム)を用い、この上に積層された厚さ50μmのポリエチレンフィルム(第2フィルム)の熱軟化性樹脂層10Bの表面に、球径80μmに調整された小球20を、その球径の40〜60%が前記熱軟化性樹脂層10B中に沈む程度に埋め込んだ。すなわち、熱軟化性樹脂層10Bを120℃に加熱して軟化させた状態で3m/分で移動させつつ、図10に示すように小球20を散布した。小球20の散布は、供給ホッパー12の供給口から小球20を落下させて行う。供給口の短い側の幅は小球20の球径よりも若干大きく、長い側の幅は小球支持シート10の幅と同幅としてある。供給口から落下された小球20は、2段にわたって設けた180μm×180μmのメッシュをもつメッシュスクリーン40、41で落下の運動量を低減されて樹脂層10Bに落下される。また、ベース樹脂層10Aの下面には微振動ロール42、43を設けて小球20を隙間なく熱軟化性樹脂層10Bに埋め込むようにし(1cm当り23,000個以上)、上方にはロール44を設けて小球20を押し付けて均一に埋め込むようにしてある。このロール44は、メッシュスクリーン40、41の後方1mの位置に設けられ、樹脂層10Bから60〜70μmのクリアランスを設けてある。小球20を軟化させた熱軟化性樹脂層10Bに散布した後、図11に示すように乾燥機中で加熱送風し、熱軟化性樹脂層10B中に小球20の球径の40〜60%が自重で埋没されるようにする。その後、図12に示すように、熱軟化性樹脂層10Bに仮固着されなかった小球20を落としながらブラシ13でクリーニングし、小球20が仮固着されたものを巻き取る。図10の工程では、熱軟化性樹脂層10Bを120℃(±5℃)に加熱しておくが、図11と図12の工程では、熱軟化性樹脂層10Bは冷めて小球20が半没された仮固着状態になっている。
【0064】
次に別に準備したポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚さ100μm)上に、ポリウレタン系樹脂「バイロン3900」(商品名)〔東洋紡績(株)製〕100重量部と硬化剤として変性ポリイソシアネート樹脂「コロネートL」(商品名)〔日本ポリウレタン工業(株)製〕5重量部との配合溶液を主体とする溶液を塗布し、熱風乾燥機で乾燥して、厚さ約50μmのプライマー層をPETフィルム上に形成してベース層13を形成した。
【0065】
次いで、小球支持シート10の小球仮固着層(熱軟化性樹脂層10B)上にポリウレタン系樹脂「バイロン3946」(商品名)〔東洋紡績(株)製〕100重量部と硬化剤として変性ポリイソシアネート樹脂「コロネートL」(商品名)〔日本ポリウレタン工業(株)製〕5重量部との配合溶液を主体とする溶液をローラで塗布し、熱風乾燥機で乾燥して、厚さ約60μmの固着層11を形成した。
【0066】
次に前記ベース層13のプライマー層を、前記固着層11の表面と接するように沿わせた。そしてその積層物を加熱押圧した。この押圧により、小球20の球径の40〜60%、好ましくは45〜55%が固着層11内に埋設されるようになる。この押圧の手段として、前記固着層11に沿わせた前記ベース層13を押圧するように、ロール表面温度80℃の加熱ロールを通過させた。
【0067】
加熱ロールを通過させた小球20を除いた4層構造のシートに対し、50℃(±2℃)、相対湿度65%(±5%)の条件で7日間エージングを実施した。その後、小球支持シート10を小球20から剥がして、図5に示すような小球付積層物を得た。
【0068】
上記小球付積層物にアクリル酸アルキルエステル共重合体系樹脂「NKorigoU−324A−20」(商品名)〔新中村化学(株)製〕100重量部と光触媒「Irugacure184」(商品名)〔日本チバ・ガイキ(株)製〕3重量部を攪拌混合した溶液を塗布し、乾燥して厚さ約50μmアクリル層30Bを形成し積層物を得た。次いで、ポリエステルフィルム30A「テイジンテトロンフィルムG2」(商品名)〔帝人デュポンフィルム(株)製〕の面と、前記アクリル層30Bの面とを、貼り付け圧力450N/cm、ロール表面温度40℃で貼り合わせた。その直後に、UV照射し(約1秒)直ちに前記アクリル層30Bの面を小球付積層物の樹脂面から剥がし、図8に示すようなモールドシート30を得た。
【0069】
上記モールドシート30にアクリル酸アルキルエステル共重合体系樹脂「NKorigoU−4HA」(商品名)〔新中村化学(株)製〕100重量部と光触媒「Irugacure184」(商品名)〔日本チバ・ガイキ(株)製〕3重量部及びトルエン20重量部を攪拌混合した溶液を塗布し、乾燥して厚さ約50μmのアクリル層を形成し積層物を得た。次いで、ポリエステルフィルム「コスモシャインA4300」(商品名)〔東洋紡績(株)製〕の面と、ロール表面温度40℃で貼りあわせた。その直後に、UV照射し(約1秒)直ちに前記アクリル面とモールドシート30の樹脂面から剥がし、図13に示すようなマイクロレンズフィルムを得た。このマイクロレンズフィルムを導光板上に積層させてバックライトユニットを得た。
【実施例2】
【0070】
小球20の球径60μm、温度条件116℃(±5℃)、ライン速度3m/分、ベース樹脂層10Aの厚さを100μmとし、ロール44のクリアランスは、30〜50μmとし、その他の条件は実施例1と同様とした。小球20の散布段階で3m/分のライン速度を5m/分にした場合、小球20の充填密度は低下した。3m/分の場合の充填密度は80%、5m/分の場合の充填密度は71%であった。この実施例2では、実施例1のモールドシート30の製造の副製造品であるビーズ付着シートである固着層11を用いて、熱プレスロールを使用し表面温度130℃で転写フィルムのポリエチレン層を熱軟化させながらラミネートした後剥離すれば、新たなモールドシート30の生産が可能であり、この作業を繰り返せば10倍量のモールドシート30を作り出すことが可能である。この実施例2で得られたマイクロレンズフィルムは、図14に示すとおりのものであった。
【実施例3】
【0071】
図7に示す小球20の固着層を用い、この固着層上の直径60μmの小球20の表面を覆うように低密度ポリエチレンをTダイ押出コーターにより、温度305℃で押し出して塗布し、その上に接着処理してあるポリエステルフィルムをラミネートして巻き取り、2日後に固着層から剥がしてモールドシートを得た。このモールドシートは、図15に示すようなものであった。この方法では、固着層を傷めることがなく、そのため繰り返し精密なモールドシートを成形することができる。
【0072】
小球20の球径が60μmの場合、1cm当り23,000個の充填密度とするため、図10の装置において、150μm×150μmのメッシュスクリーン40、41を用い、ロール44のクリアランスを50μmとして落下した小球20を均し、かつ圧力をかけて樹脂層10Bに埋め込むようにする。
【0073】
使用する小球20の球径と成形されたモールドシート30の穴31(レンズ成型穴)の深さとの関係は、次の表1に示すようになった。
【0074】
【表1】

【0075】
上述したように製造されるモールドシート30で成形されるマイクロレンズフィルムは、500mに及ぶ長さの帯状のものを成形することもでき、マイクロレンズの大きさの種類も多数にわたり、小球付積層物(小球20、固着層11、ベース層13)の存在により、これから新たなモールドシート30をいくらでも成形することができる。精密で長尺のモールドシート30を簡単に成型することができ、マイクロレンズフィルムの製造原価を大幅にコストダウンすることも可能となる。
【符号の説明】
【0076】
1 光透過性樹脂
2 マイクロレンズ
3 基材
10 小球支持シート
10A ベース樹脂層(第1フィルム)
10B 熱軟化性樹脂層(第2フィルム)
11 固着層
30 モールドシート
31 穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
球径30〜150μmの範囲から選択されたマイクロレンズの一定の球径が±20%の誤差の範囲内にあり、少なくとも直径の3分の1以上突出するように光透過性樹脂の一面側にマイクロレンズを成形し、
このマイクロレンズを光透過性樹脂の単位面積当り75%以上の表面積を占めるように構成したことを特徴とするマイクロレンズフィルム。
【請求項2】
長尺状に成形された請求項1に記載のマイクロレンズフィルム。
【請求項3】
少なくとも上面に熱軟化性樹脂を有する小球支持シートを加熱軟化させた状態でその上面に球径30〜210μmから選択された一定の球径の小球を密に散布して軟化した樹脂層に球径の40〜60%埋め込み、前記小球支持シートの表面積に占める小球の表面積の割合を75%以上となるようにする工程と、
この小球支持シートの露出する小球を樹脂材料で被覆して硬化させることにより小球が固着された固着層を形成する工程と、
その後小球支持シートを小球から剥がして、小球が転写された穴を有するモールドシートを作製する工程と、
このモールドシートの穴形成側に光透過性樹脂を供給し、光透過性樹脂の硬化後にモールドシートから剥離して光透過性樹脂の一面側にモールドシートの穴で成形されるマイクロレンズを備えたマイクロレンズフィルムを得る工程と、
を有することを特徴とするマイクロレンズフィルムの製造方法。
【請求項4】
前記小球を固着する固着層を利用して新たなモールドシートを製造することを特徴とする請求項3に記載のマイクロレンズフィルムの製造方法。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図2】
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【図7】
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【図9】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−88616(P2012−88616A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−236571(P2010−236571)
【出願日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【出願人】(000115979)レフライト株式会社 (7)
【Fターム(参考)】