説明

マイクロ流体の自励発振ミキサおよび装置ならびにその使用方法

化学的または生物学的反応を行うためのマイクロ流体装置(10)は、自励発振式の噴流混合チャンバとして使用するためのチャンバ(20)と、1つ以上のチャネル間の壁(25)によって隔てられた、2つ以上に分かれた供給チャネル(22、24、40)とを備え、前記2つ以上のチャネル(22、24、40)は前記チャンバ(20)の共有側面(18)で終了し、前記2つ以上のチャネル(22、24、40)は、2つ以上のチャネル(22、24、40)およびチャネル間の壁(25)のすべてを合わせた幅を含む、チャネルの全幅(28)を有し、前記チャンバ(20)は、前記チャネル(22、24、40)に対して垂直方向の幅(26)および前記チャネルに対して平行方向の長さ(32)を有し、前記幅(26)は、チャネルの全幅(28)の少なくとも2倍であり、前記チャンバ(20)は、その高さ(30)によって画成される、2つの向かい合う主要表面(56)を有し、前記チャンバ(20)は、少なくとも10cm2/cm3の主表面積の体積に対する比を有する。自励発振式の噴流混合チャンバを使用する、マイクロ流体の流体混合の方法についても開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学的または生物学的反応を行うためのマイクロ流体装置に関し、さらに詳細には、マイクロ流体装置のマイクロ流体ミキサに関する。
【背景技術】
【0002】
本明細書で理解されるように、マイクロ流体装置とは、マイクロメートルから数ミリメートルの範囲の規模にわたる流体装置のことをいい、言い換えれば、その最少寸法がマイクロメートルから数ミリメートルの範囲、好ましくは約数十マイクロメートルから約1±0.5ミリメートルの範囲にある、流体のチャネルを有する装置である。1つにはそれらの全過程に要する液量が少ないという特徴、および体積に対する表面の比率が高いという特徴の理由から、マイクロ流体装置、特にマイクロリアクターは、困難な、危険な、または他の方法では不可能な化学反応および工程を、安全で効率的かつ環境に配慮した方法で行うのに有用である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
幾つかの反応物質を反応速度論的時間スケールに関して非常に迅速に混合しなければならない、マイクロ流体ミキサを含めたマイクロリアクターでは、望ましい流量は、適用する研究室規模、パイロット規模、または製造規模に応じて、毎分数ミリリットルから毎分数百ミリリットルの範囲でありうる。このようなミキサの生物学的な用途では、流量は、わずかに毎分マイクロリットルの範囲でありうる。広範囲の流量全体にわたり有用でありうる、単一型のミキサまたはミキサの形状を有することが望ましいであろう。所定のミキサで達成される混合特性が、できる限り流量に左右されず、そのミキサが熱により混合流体から効率的に除去される特性を有することも望ましい。低い圧力損失とともに、良好な混合特性を達成することもまた、望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0004】
化学的または生物学的反応を行うためのマイクロ流体装置は、
自励発振式の噴流混合チャンバとして用いられるチャンバと、
1つ以上のチャネル間の壁によって隔てられた2つ以上に分かれた供給チャネルと、
を備え、
前記2つ以上のチャネルは、前記チャンバの共有側面で終了し、
前記2つ以上のチャネルは、前記2つ以上のチャネルと前記チャネル間の壁のすべてを合わせた幅を含むチャネルの全幅を有し、
前記チャンバは、前記チャネルに対して垂直方向の幅と、前記チャネルに対して平行方向の長さを有し、前記幅は少なくとも前記チャネルの全幅の2倍であり、
前記チャンバはその高さを画成する2つの向かい合う主要表面を有し、
前記チャンバは少なくとも10cm2/cm3である、主表面積の体積に対する比を有する。
【0005】
自励発振式の噴流を使用するマイクロ流体の流体混合方法は、
1つまたはそれ以上に分かれた供給チャネルおよびチャンバを提供する工程を有してなり、
前記1つまたはそれ以上のチャネルのそれぞれは、前記チャンバの共有壁において前記チャンバ内に入り、
前記1つまたはそれ以上に分かれたチャネルは、前記1つまたはそれ以上に分かれたチャネルおよび存在する場合にはチャネル間の壁のすべての幅を含むチャネルの全幅を有し、
前記チャンバは、少なくとも1つの出口チャネルを有し、
前記チャンバは、前記チャネルの全幅の少なくとも2倍の、前記1つ以上のチャネルに対して垂直方向の幅を有する。本方法はさらに、1つ以上の流体流れが、チャンバ内に自励発振式の噴流を誘発するのに十分な速度で、供給チャネルを通ってチャンバ内に流れる工程を有してなる。チャンバは、少なくとも10cm2/cm3である、主表面積の体積に対する比を有することが望ましい。
【0006】
本発明のさらなる特性および利点は、以下の詳細な説明に記載され、一部には、その記載から当業者に容易に明らかとなり、あるいは、以下の詳細な説明、特許請求の範囲、ならびに添付の図面を含めた、本明細書に記載される本発明を実施することにより認識されるであろう。
【0007】
前述の概要および以下の詳細な説明の両方は、本発明の実施の形態を提示するものであり、特許請求の範囲に記載するように本発明の本質および特徴を理解するための概観または骨組みを提供することが意図されている。添付の図面は、本発明のさらなる理解をもたらすために含まれており、本明細書に取り込まれ、本明細書の一部を成す。図面は、本発明の原理および操作を説明する役割をすると共に、本発明のさまざまな実施の形態を例証する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の1つの実施の形態の平断面図。
【図2】図1の線A−Aに沿った、図1の構造の正面断面図。
【図3】本発明の別の実施の形態の平断面図。
【図4】本発明のさらに別の実施の形態の平断面図。
【図5】本発明のさらに別の実施の形態の平断面図。
【図6】図2のものに対する本発明の別の実施の形態に対応する、図1の線A−Aに沿った、図1の構造の別の正面断面図。
【図7】図2および6のものに対する本発明のさらにもう1つの別の実施の形態に対応する、図1の線A−Aに沿った、図1の構造の別の正面断面図。
【図8】本発明のさらに別の実施の形態の平断面図。
【図9】本発明のさらに別の実施の形態の平断面図。
【図10】本発明のさらにもう1つの実施の形態の平断面図。
【図11】本発明のある実施の形態に従った、複数のマイクロ流体ミキサの1つの配置を示す概略図。
【図12】本発明の別の実施の形態に従った、複数のマイクロ流体ミキサの別の配置を示す概略図。
【図13】本発明のさらにもう1つの実施の形態の平断面図。
【図14】本発明の一部の実施の形態および1つの比較例についての流量(ミリリットル/分)の関数としての高速混合性能のグラフ。
【図15】本発明の一部の実施の形態および1つの比較例についての流量(ミリリットル/分)の関数としての圧力損失(ミリバール)のグラフ。
【図16】本発明の実施の形態による試験反応におけるさまざまな流量で生じる、対数スケールの粒径(マイクロメートル)の関数としての粒径分布(総体積のパーセンテージ)のグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0009】
これより、本発明の現在における好ましい実施の形態について詳細に述べるが、その実施例は、添付の図面に例証されている。可能な場合には、同一または同様の部分の参照のため、図面全体を通して、同一の参照番号が用いられる。
【0010】
本発明のマイクロ流体ミキサ10の1つの実施の形態を図1および2に示す。ミキサ10は一般的には平らであり、図1の平面における壁12、および図2に見られる床14および天井16によって画成される。(本発明のミキサ10は、便宜的にこの幾何学的配置で記載されているが、本発明の実施は任意の所望の幾何学的配置を有して差し支えなく、したがって、「床「「天井」「高さ」「長さ」「幅」および同様の用語は、相対的な用語でしかなく、特定の幾何学的配置を指定または要求するものではないことが、当業者には理解されよう。
【0011】
ミキサ10は、混合を必要とする化学的または生物学的反応を行うためのマイクロ流体装置(マイクロリアクター)の一部であることが望ましい。ミキサ10の壁12および床14および天井16は、自励発振式の噴流混合チャンバ20を画成する。2つ以上に分かれた供給チャネル22および24は、チャンバ20の共有側面18で終了する。チャネル22および24は、1つ以上のチャネル間の壁によって隔てられたチャンバ20に到達するまでは分かれている。
【0012】
チャンバ20は、チャネルの全幅28(2つ以上の供給チャネルおよび1つ以上のチャネル間の壁25を合わせた幅として定義される)の少なくとも2倍の、供給チャネル22および24に対して垂直な幅26を有することが望ましく、さらには、少なくとも3倍、なおさらには、少なくとも4倍であることが望ましい。チャンバ20の床14および天井16は、チャンバ20の2つの向かい合う主要表面56を形成し、チャンバ20の高さ30を画成する。チャンバ20は、高さ30の幅26に対する縦横比が1/10以下であることが望ましい。チャンバ20の長さ32および幅26は、望ましい作動流体を2つ以上のチャネル22および24を通じてチャンバ20内に流し、チャンバ20の幅26の方向に左右に振動する自励発振式の噴流を形成するのに十分であるように選択される。チャンバ20は、少なくとも5cm2/cm3の主表面積の体積に対する比を有することが望ましく、少なくとも10cm2/cm3であることが望ましく、少なくとも15cm2/cm3であることがさらに望ましい。
【0013】
化学製品の製造用途では、チャンバの高さ30は0.1〜2mmを含む範囲内であることが望ましく、さらには0.5mm〜1.7mmを含む範囲内であることが望ましく、0.8mm〜1.5mmを含む範囲内であることが最も望ましい。長さおよび幅よりも比較的小さい高さ、すなわち、主表面積の体積に対する比率が大きいことは、チャンバ20から良好に加熱除去すること(またはチャンバ20への容易な熱付加)を可能にする。
【0014】
図3は、複数のチャンバ20がマイクロ流体のチャネル34に沿って直列に配置された、本発明の別の実施の形態の平断面図である。図の一番左側にある第1のチャンバ20にのみ、2つ以上の供給チャネル22および24が配置される。その後のチャンバ20は、1つの供給チャネルであるチャネル34のみを有し、その後に続くチャンバ20のそれぞれは自励発振式の噴流を形成させる働きもしている。複数の連続的に配置される振動式の噴流混合チャンバ20は、追加の振動噴流の手段によって混合を向上または改善させる、または、必要に応じて非混和性の液体の懸濁を良好に維持させる、あるいはその両方の効果がある。図4に示すように、連続した混合チャンバ20は、チャネル34に沿ってすぐ近くに配置される必要はなく、次の混合の前に、ある程度の熱交換およびある程度の遅延時間を提供するため、チャネルの長さ36によって隔てられていてもよい。
【0015】
図5は本発明のさらに別の実施の形態の平断面図であり、ここで複数のチャネル34は、点線の外枠内の図における、より低い位置にある基板すなわち単一の床14上の壁12によって画成される。図5の実施の形態では、流体がチャンバ20に入る側面18は、チャンバ20で終了する3つのチャネルを備えるが、図から分かるように、2つのチャネルの外側はその頭部で接続されており、チャネル22に相当し、一方、内側のチャネルはチャネル24に対応する。あるいは、図5の装置におけるチャンバ20Dのように、3つ以上の完全に独立したチャネル22、24、および40を備えていてもよい。図の左上のチャネル22および24は、図示していないが、装置の天井のポートを通じて供給されて差し支えない。流体は、床14を通じてチャネル34Aを出て、床14のホール38を通って再びチャネル34Bに入る。示されているすべてのチャネルは、作動流体が5つの自励振動式の噴流チャンバ20〜20Dを通過するような方式で随意的に接続されていて差し支えなく、あるいは、示されている一部のチャネルは独立して、例えば図の下部に示す平行なチャネルのように、装置の外側からの出入り口でアクセス可能なようになっていてもよい。ホール38のような貫通孔がさまざまなチャネルの接続に用いられる場合には、図7の断面図に示すような多層構造を用いて構わない。ミキサチャンバ20を含む層のいずれかの側面に、熱交換流体が混合チャンバ20に隣接した空間に流れるように設計された、温度調節流体チャンバまたは流体通路50を備えていることが望ましいであろう。ドウェル時間および熱交換用の通路として、随意的に光触媒反応通路として、あるいは他の目的で用いられる通路52は、図示される装置の最下層に配置されることが有利であろう。
【0016】
本発明の装置の利点の1つは、最大でも約2mm、好ましくは約1.7mm未満、さらに好ましくは約1.5mm未満の非常に短い高さを有する、効率的なマイクロ流体の混合チャンバ20が提供されることである。しかしながら、同時に、混合チャンバの主要表面は、チャンバの高さに比べて広い。したがって、光またはレーザー光発生器、超音波発振器、電磁場発生器、または他の放射器などの放射器42は、音響、電気、磁気、電磁気、または他のエネルギーを用いてチャンバ20の任意の流体に放射することができるように、天井16(チャンバ20の2つの主要表面の1つ)を通り抜け、作動流体自体を通じて、図6の断面図に概略的に示すような混合チャンバ20に密接に連結していて差し支えない。第2の放射器または検出器44も、図6に示すように、混合チャンバ20に連結され、チャンバ20の床14の外側に配置されると効果的である。放射器または検出器44のような放射器または検出器は、例えば図7に示すように、装置に直接接続する必要はない。
【0017】
装置全体は、ガラス、ガラス・セラミック、またはセラミック材料から構成されることが好ましい。これらは、電磁スペクトルの可視光および/または他の領域に、一部の用途では望ましいであろう、優れた熱的および化学的耐久性、ならびに半透明性または透明性を与えることができる。本装置は、例えば、本発明者の同僚によって開発された、例えば米国特許第7,007,709号明細書に開示される方法など、任意のさまざまな方法に従って製造されて構わない。その特許文献には、2つのガラス基板間に成形されるフリット構造が配置され、次にフリットを焼結して基板とフリットを接着させて、フリットによって画成される流体チャンバを備えた一体となった装置にする、マイクロ流体装置の形成方法が開示されている。本特許文献に開示されるように、壁12を形成するフリット材料46の層を用いて、図6に示されるように、基板(床14および天井16)上に薄層を形成する。必要に応じて、別の方法、例えば図7に示すような、薄層を伴わないフリット壁を生じる方法、あるいは、図2の断面図に表される装置のような二元的組成を伴わないモノリシック・デバイスをもたらす方法を用いてもよい。このようなモノリシック・デバイスは、例えば欧州特許出願公開第07300835号明細書に開示される方法など、多孔質のカーボンモールドの間にガラス材料を加圧加熱成形することにより形成して差し支えなく、あるいは、マスク・サンドブラスティング、またはマスク・エッチングによりチャネル壁を形成した後、溶融または化学結合もしくは連結させるための他の手段によりモノリシック・デバイスを形成してもよい。
【0018】
チャンバの圧力抵抗を下げることができる、特に広い主表面積が混合チャンバ20にとって望ましい場合、あるいはその反対に、最大の圧力抵抗が望ましい場合には、1つ以上の柱54を、図8および9に示すように、チャンバ20内の空間の壁材料で形成して差し支えない。本発明のもう1つの別の実施の形態として、図10の平断面図に示すように、チャネル(2、24および40)は、すべてが同一の大きさである必要はない。中央のチャネルであるチャネル24は、外側のチャネルよりも狭いことが望ましい場合があり、言い換えれば、特に、中央のチャネルが外側のチャネルよりも少ない体積を運ぶことが意図されているか、期待される場合には、チャネル間の壁25同士の距離を縮めてもよい。当然ながら、チャネル間の壁およびチャネルの幅の他の配置も、可能である。
【0019】
本発明はまた、本明細書に開示される混合を行うための装置の使用方法もその範囲内に含み、その方法は、
共通する方向からそれぞれチャンバに入る、1つ以上の供給チャネルを提供する工程であって、前記チャンバが少なくとも1つの出口チャネルを有し、前記チャンバが前記1つ以上の供給チャネルを合わせた幅の少なくとも2倍の幅を有する、工程と、
前記チャンバ内に自励発振式の噴流を誘発するのに十分な速さで、前記供給チャネルから前記チャンバ内へ1つ以上の流体流れを流す工程と、
を有してなる。振動噴流は、効率的な(使用する全エネルギーおよびミキサ全体にわたる圧力損失において)混合工程を提供し、非常に良好な温度調節、あるいは、簡便な検査または作動流体へのエネルギーの容易な結合を可能にするため、高さ寸法を大幅に縮小することができる。チャンバは、2つの向かい合う主要表面、および0.1以下の高さの幅に対する縦横比、(および、少なくとも5cm3/cm2、望ましくは10cm2/cm3、および最も望ましくは15cm2/cm3である、主表面積の体積に対する比)を含むことが望ましい。
【0020】
図11は、ある実施の形態を示す概略的な平面図であり、ここで混合チャンバ20は、チャネル22および24によって最初に供給されるチャネルに沿って配置されて差し支えない。その後の混合チャンバは、非混和性の相を懸濁した状態に保つ役割をすることができる。図12の実施の形態では、2つのチャネルが第1の混合チャンバ20に入るが、いずれの混合チャンバにおいても1つの新しいチャネルが利用可能である。したがって、図示するように、下流の混合チャンバの大きさを増大させることが望ましいであろう。
【0021】
本発明にしたがった混合チャンバは、長方形であることを必要としない。必要なもののすべては、十分に広がった混合チャンバと、十分に突然に、チャンバ内に自励発振を生じさせることである。別の混合チャンバの形状を図13に示す。
【実施例】
【0022】
下記表に記載される特性を有する、自励発振式の噴流混合チャンバA〜Dを形成した。
【表1】

【0023】
チャネルは0.5mm幅、チャネル間の壁は0.6mm幅であり、上述の図5のチャンバ20に接続して示すものと同様のチャネル構造を有していた。次に2つの方法で、混合性能を測定した。混合性能を試験する第1の方法は、Villermaux J., et al. "Use of Parallel Competing Reactions to Characterize Micro Mixing Efficiency," AlChE Symp. Ser. 88(1991)6, p. 286に記載される方法を用いた。要約すれば、その方法とは、塩酸溶液、およびKI(ヨウ化カリウム)と混合した酢酸カリウム溶液を室温で調製することであった。これらの流体すなわち反応物質の両方を、次に、シリンジまたは蠕動ポンプを用いて、試験すべきマイクロミキサに連続注入した。試験結果は、異なる速さ、すなわち、UV吸収性の最終製品を生成する「高速」反応、および、超高速混合条件下で行なわれる、透明な溶液を生成する「超高速」反応という2種類の競争反応をもたらした。したがって、混合性能は混合流体のUV透過率と相関しており、理論的には完全な、すなわち100%の高速混合は、得られた製品に100%のUV透過率をもたらす。図14は、この方法で測定した、装置Cおよび装置Dのそれぞれ3つの例についての流量(ミリリットル/分)に対する透過率(%)で与えられる混合性能を示している。例えば欧州特許出願公開第01604733号明細書および同第1679115号明細書に開示される混合通路と形状が類似している、それぞれ三次元的に曲がりくねった通路の形状をした、1つ以上の連続した混合通路を有する装置によって得られた比較実験結果も、星印「*」のトレースで示されている。比較から分かるように、本発明のミキサの性能は、流量が多い点で優れており、具体的には、約100ml/分〜220ml/分およびそれ以上である。
【0024】
この良好な混合は、流量(ミリリットル/分)の関数としての圧力損失(ミリバール)で示される図15に見られるように、比較例と比べて、比較的低い圧力損失を実現している。見て分かるように、100〜200ミリリットル/分の流れの倍加により、比較装置と比べて半分にも満たない全圧力損失しか生じさせないが、図14に示すように、同等であるか、または優れた混合を有している。
【0025】
非混和性の液体の混合および固体粒子の処理の試験として、反応を行なった。この反応では、2種類の反応物質は非混和性の液体であり、形成される生成物はポリスチレン球と称されるコロイド粒子であった。
【0026】
この反応には、次の反応スキームを用いた:
【化1】

【0027】
溶媒としてTHFを用いたポリスチレンを、1回の供給(0.5重量%)で提供し、界面活性剤AOTを含む水溶液を2回目の供給(0.05重量%)で提供した。結果を、対数による粒径(マイクロメートル)の関数としてのPSD(粒径分布)(容量パーセント)のグラフである、図16に示す。図から分かるように、約0.10マイクロメートルの均質な粒径を生じる最良の混合を実現する閾値は、およそ158+20=178合計ミリリットル/分である。分布は、この流量以上ではほとんど副次ピークを有しない。その値は、比較例から得られる結果に相当するが、比較例よりも低い圧力損失を有する。したがって、本発明の装置から、同等の性質の混合が得られるが、それと同時に、より多い流量およびより低い圧力損失も得られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学的または生物学的反応を行うためのマイクロ流体装置(10)であって、前記装置が、
自励発振式の噴流混合チャンバとして使用するためのチャンバ(20)と、
1つ以上のチャネル間の壁(25)によって隔てられた、2つ以上に分かれた供給チャネル(22、24、40)と、
を備え、
前記2つ以上のチャネル(22、24、40)が、前記チャンバ(20)の共有側面(18)で終了し、
前記2つ以上のチャネル(22、24、40)が、前記2つ以上のチャネル(22、24、40)およびチャネル間の壁(25)のすべてを合わせた幅を含む、チャネルの全幅(28)を有し、
前記チャンバ(20)が、前記チャネル(22、24、40)に対して垂直方向の幅(26)および前記チャネル(22、24、40)に対して平行方向の長さ(32)を有し、
前記幅(26)は前記チャネルの全幅(28)の少なくとも2倍であり、
前記チャンバ(20)が、その高さ(30)によって画成される、2つの向かい合う主要表面(56)を有し、
前記チャンバ(20)が、少なくとも10cm2/cm3である、主表面積の体積に対する比を有する、
装置。
【請求項2】
前記チャンバ(20)が、少なくとも15cm2/cm3である、主表面積の体積に対する比を有することを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記チャンバ(20)がさらに、1/10以下の、高さの、長さと幅のいずれか大きい方に対する縦横比を有することを特徴とする請求項1または2記載の装置。
【請求項4】
前記チャンバ(20)に、その主要表面の少なくとも1つを通じて、音響、電気、磁気、電磁気、または他のエネルギーを放射するために、構造化され、配置される放射器(42)をさらに備えることを特徴とする請求項1〜3いずれか1項記載の装置。
【請求項5】
前記チャンバ(20)内の材料の1つ以上の特性を感知するために構造化され、配置される、検出装置(44)をさらに備えることを特徴とする請求項1〜4いずれか1項記載の装置。
【請求項6】
前記装置(10)が、ガラス、ガラス・セラミック、またはセラミックで形成されることを特徴とする請求項1〜5いずれか1項記載の装置。
【請求項7】
前記チャンバ(20)が、前記2つの向かい合う主要表面の間に延在する少なくとも1つの柱(54)をさらに備えることを特徴とする請求項1〜6いずれか1項記載の装置。
【請求項8】
化学的または生物学的使用のためのマイクロ流体装置(10)における1つ以上の流体の混合または攪拌を行う方法であって、前記方法が、
1つまたはそれ以上に分かれた供給チャネル(22、24、40)と、チャンバ(20)とを提供する工程であって、
前記1つ以上のチャネル(22、24、40)のそれぞれが前記チャンバ(20)の共有壁(18)で前記チャンバ(20)に入り、
前記1つまたはそれ以上に分かれたチャネル(22、24、40)が、前記1つまたはそれ以上に分かれたチャネル(22、24、40)および、存在する場合にはチャネル間の壁(25)のすべてを合わせた幅を含む、チャネルの全幅(28)を有し、
前記チャンバ(20)が少なくとも1つの出口チャネルを有し、
前記チャンバ(20)が前記チャネルの全幅(28)の少なくとも2倍の、1つ以上のチャネル(22、24、40)に対して垂直方向の幅(26)を有する
ことを特徴とする工程と、
1つ以上の流体流れが、前記チャンバ(20)内の自励発振式の噴流を誘発するのに十分な速さで、前記供給チャネル(22、24、40)を通って前記チャンバ(20)内に流れる工程と、
を有してなる方法。
【請求項9】
前記1つまたはそれ以上に分かれた供給チャネル(22、24、40)と前記チャンバ(20)とを提供する工程がさらに、
前記チャンバ(20)が、前記チャネル(22、24、40)に対して平行方向の長さ(32)を有し、かつ、前記長さおよび幅に対して垂直方向の前記チャンバ(20)の高さ(30)を画成する、2つの向かい合う主要表面を有することを含み、
前記チャンバ(20)が、少なくとも10cm2/cm3である、主表面積の体積に対する比を有する
ことを特徴とする請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記1つまたはそれ以上に分かれた供給チャネル(22、24、40)と前記チャンバ(20)とを提供する工程がさらに、
前記チャンバ(20)が、1/10以下である、高さの、長さと幅のいずれか大きい方に対する縦横比を含む
ことを特徴とする請求項9記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公表番号】特表2011−504221(P2011−504221A)
【公表日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−508422(P2010−508422)
【出願日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際出願番号】PCT/US2008/006219
【国際公開番号】WO2008/143923
【国際公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【出願人】(397068274)コーニング インコーポレイテッド (1,222)
【Fターム(参考)】