マイクロ流体チップ及び細胞の培養方法
【課題】培地の温度及びpHの調節が容易な小型のマイクロ流体チップを提供する。
【解決手段】ループ状に設けられた第1の細溝111及び第2の細溝112を表面に備える基板1と、開口21a〜22bを備え、基板1上に配置した際に第1の細溝111に対応する部分に培養流路11及び第2の細溝112に対応する部分に薬液流路12を形成するシート状の薄膜2と、透過膜3により内部が培養液室3aと薬液室5aに仕切られ、薄膜2を介して基板1上に配置した際に、培養液室3aは薄膜2の開口を介して培養流路11の一端11a及び他端11bと連通して培養流路11と閉鎖的な循環系を形成し、薬液室5aは薄膜2の開口を介して薬液流路12の一端12a及び他端12bと連通して薬液流路12と閉鎖的な循環系を形成するリザーバ5とを有するマイクロ流体チップ10。
【解決手段】ループ状に設けられた第1の細溝111及び第2の細溝112を表面に備える基板1と、開口21a〜22bを備え、基板1上に配置した際に第1の細溝111に対応する部分に培養流路11及び第2の細溝112に対応する部分に薬液流路12を形成するシート状の薄膜2と、透過膜3により内部が培養液室3aと薬液室5aに仕切られ、薄膜2を介して基板1上に配置した際に、培養液室3aは薄膜2の開口を介して培養流路11の一端11a及び他端11bと連通して培養流路11と閉鎖的な循環系を形成し、薬液室5aは薄膜2の開口を介して薬液流路12の一端12a及び他端12bと連通して薬液流路12と閉鎖的な循環系を形成するリザーバ5とを有するマイクロ流体チップ10。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ流体チップ及び細胞の培養方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロ流体チップによる微小流体下の細胞培養は、培地内物質の濃度勾配や流速の時間・空間的制御が容易であるため、生体医工学・生命科学のツールとして期待されている。とくに、ポリジメチルシロキサン(以下「PDMS」ともいう。)は、微細なパターンの再現性が高い、ソフトリソグラフィによるブロトタイビングが容易である、光学特性がよい、他の弾性透明樹脂に比べ毒性が少ない、容易に変形するため空気圧や外部のアクチュエータで駆動できるという利点があることから、マイクロ流体チップの材料として、多くの使用実績がある。
【0003】
ところが、PDMSには水分子と炭酸ガスの透過性がきわめて高いという性質があるため、PDMSに封入された細胞培養用培地などの液体を「密封」するのは困難である。そのため、物理化学的性質を保つことが求められる細胞培養においては、ディッシュ等による通常の細胞培養と同様、保温を行い、かつ浸透圧変化とpHの変化を抑える必要がある。通常の細胞培養においては、保温・浸透圧制御・pH制御をそれぞれヒータ・加湿器・CO2ガス注入で行う、いわゆるCO2インキュベータで行っている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
しかし、特許文献1に開示された方法は、対象を密閉系におく必要があるため、マイクロ流体システムの操作性・可搬性を損ない、設計・実装コストもかさむという問題があった。そのため、培地の温度及びpHの調節が容易な小型のマイクロ流体チップが求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−204188号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、培地の温度及びpHの調節が容易な小型のマイクロ流体チップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様は、ループ状に設けられた第1の細溝及び第1の細溝の外周にループ状に設けられた第2の細溝を表面に備える基板と、第1の細溝の一端と他端に対応する部分及び第2の細溝の一端と他端に対応する部分にそれぞれ開口を備え、基板上に配置した際に第1の細溝に対応する部分に培養流路及び第2の細溝に対応する部分に薬液流路を形成するシート状の薄膜と、透過膜により内部が培養液室と薬液室に仕切られ、薄膜を介して基板上に配置した際に、培養液室は薄膜の開口を介して培養流路の一端及び他端と連通して培養流路と閉鎖的な循環系を形成し、薬液室は薄膜の開口を介して薬液流路の一端及び他端と連通して薬液流路と閉鎖的な循環系を形成するリザーバとを有するマイクロ流体チップを要旨とする。
【0008】
本発明の第2の態様は、ループ状に設けられた第1の細溝を表面に備える基板と、第1の細溝の一端と他端に対応する部分にそれぞれ開口を備え、基板上に配置した際に第1の細溝に対応する部分に培養流路を形成するシート状の薄膜と、透過膜により内部が培養液室と薬液室に仕切られ、薄膜を介して前記基板上に配置した際に、培養液室は薄膜の開口を介して培養流路の一端及び他端と連通して培養流路と閉鎖的な循環系を形成し、薬液室は透過膜と薄膜により仕切られた空間を形成するリザーバとを有するマイクロ流体チップを要旨とする。
【0009】
本発明の第3の態様は、上述のマイクロ流体チップを用意し、培養流路及び培養液室により形成された閉鎖的な循環系内に細胞及び培養液を収容し、薬液流路及び薬液室により形成された閉鎖的な循環系内に薬液を収容する工程と、培養流路と培養液室内で培養液を循環させる工程と、薬液室と薬液流路内で薬液を循環させる工程と、薬液の温度を調整することにより透過膜を介して薬液室から培養液室に熱拡散により薬液を供給して培養流路内のpH及び温度を制御する工程とを含む細胞の培養方法を要旨とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、培地の温度及びpHの調節が容易な小型のマイクロ流体チップが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1の実施形態にかかるマイクロ流体チップの斜視図を示す。
【図2】本発明の第1の実施形態にかかるマイクロ流体チップの組み立て図を示す。
【図3】本発明の第1の実施形態にかかるマイクロ流体チップを下からみた図を示す。
【図4】点字デバイス流体駆動装置を作動させた際の点字部の昇降状態の概念図を示す。
【図5】本発明の第1の実施形態にかかるマイクロ流体チップの断面図を示す。
【図6】本発明の第2の実施形態にかかるマイクロ流体チップの斜視図を示す。
【図7】本発明の第2の実施形態にかかるマイクロ流体チップの組み立て図を示す。
【図8】本発明の第2の実施形態にかかるマイクロ流体チップを下からみた図を示す。
【図9】本発明の第2の実施形態にかかるマイクロ流体チップを下からみた図を示す。
【図10】本発明の第1の実施形態の変形例にかかるマイクロ流体チップを下からみた図を示す。
【図11】経過時間に対する温度変化を示す。
【図12】経過時間に対する培地のpH変化を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、実施形態を挙げて本発明の説明を行うが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。尚、図中同一の機能又は類似の機能を有するものについては、同一又は類似の符号を付して説明を省略する。
【0013】
[第1の実施形態]
図1は本発明の第1の実施の形態にかかるマイクロ流体チップ10の斜視図を示す。本発明者らは、鋭意研究の結果、マイクロ流体チップ10において、図1に示すように、リザーバ5の内部を透過膜3により培養液室3aと薬液室5aに仕切り、培養液室3aの周囲を薬液室5aで取り囲む構造とし、薬液室5aに加温した炭酸水素ナトリウム(重曹)水溶液を導入することで、細胞培養に適したインキュベーンョンをコンパクトに行うことを着想した。そして、導入された重曹水溶液がPDMS製の透過膜3を介して培養液室3a中の培地が接触し、PDMS内を拡散した熱・CO2・水分子を受け取ることにより、培地の温度・pH・浸透圧が1系統で同時に調節されることを見出した。
【0014】
[マイクロ流体チップ]
図2は本発明の第1の実施形態にかかるマイクロ流体チップ10の組み立て図を示す。図3は本発明の第1の実施の形態にかかるマイクロ流体チップ10を下からみた図を示す。図2に示すように、マイクロ流体チップ10は、ループ状に設けられた第1の細溝111及び第1の細溝111の外周にループ状に設けられた第2の細溝112を表面に備える基板1と、第1の細溝111の一端111aと他端111bに対応する部分及び第2の細溝112の一端112aと他端112bに対応する部分にそれぞれ開口21a、21b、22a、22bを備えるシート状の薄膜2と、キャップ状の透過膜3と、底面に開口部を備える直方体状で内部が空洞であるリザーバ5とを有する。
【0015】
薄膜2を基板1上に配置すると、第1の細溝111に対応する部分及び第2の細溝112に対応する部分に、それぞれ図3に示されるような培養流路11及び薬液流路12が形成される。透過膜3は、培養液室3aを内部に備え、培養流路11の一端11a及び他端11bと培養液室3aが連通するように薄膜2上に配置すると、培養流路11と閉鎖的な循環系を形成する。リザーバ5は、透過膜3を内部に収容するように薄膜2を介して基板1上に配置すると、透過膜3により内部が培養液室3aと薬液室5aに仕切られ、薬液室5aは薄膜2の開口22a,22bを介して薬液流路12の一端及び他端と連通して薬液流路12と閉鎖的な循環系を形成する。リザーバ5の上面に設けられた開口部5bから透過膜3の上面3bが露出するように、リザーバ5を薄膜2を介して基板1上に配置すると、開口部5bから透過膜3の上面3bが露出するため、上面3bから細胞や培養液を注入することができる。
【0016】
図3に示すように、マイクロ流体チップ10の下方から見た透過膜3の形状を円形状としたことで、培養液室3aと薬液室5aの透過膜3を介した接触面積が広がり、薬液が熱拡散により透過膜を介して薬液室5aから培養液室3aに移行しやすくなる。
【0017】
マイクロ流体チップ10を使用する際には、点字デバイス流体駆動装置51が仮想線で示される位置に取り付けられる。例えば図4に示すように点字デバイス流体駆動装置51を作動させて点字部51a、51b、51cを下降させて薄膜2を押し込み、点字部51a、51b、51cを上昇させ薄膜2を開放することを繰り返すことで培養流路11中の培養液Lが押し流される。
【0018】
培養流路11の一部には図5に示すように、細胞が溜まる溝11cが設けられている。またリザーバ5には表面から薬液室5aまで貫通する、薬液を導入するための入口5cと、薬液の出口5dが設けられている。また入口5c、出口5dには薬液を導入するための仮想線で示されるチューブ61,62が取り付けられる。かかるチューブは循環系を形成し、チューブ61,62の一部が熱源(図示せず)に接するように取り付けられる。
【0019】
基板1は、細胞に対する毒性が少なく、微細な加工ができ、光学特性がよいものが好ましい。上記特性を有することより、PDMSを用いることが好ましい。
【0020】
シート状の薄膜2は、細胞に対する毒性が少なく、光学特性がよく、後述の点字デバイス流体駆動装置51を使用する観点からは弾性体であることが好ましい。具体的にはシート状のシラン樹脂やPDMS等を用いることができる。
【0021】
透過膜3は、薬液が熱拡散により透過膜3を介して薬液室5aから培養液室3aに移行可能なものが好ましい。なお、透過膜3は通気性であることがより好ましい。上述の特性を備えることより、透過膜3としては、ポリジメチルシロキサン(PDMS)を用いることが好ましい。透過膜3の厚みは、10〜2000μmであることが好ましい。薬液の熱拡散性を高める、pH等の制御の応答性を高めるためには、10μm〜1000μmが好ましく、10μm〜100μmがより好ましい。
【0022】
リザーバ5は、光学特性がよいものが好ましい。上記特性を有することより、ポリメチルメタアクリレート(PMMA)等のアクリル樹脂や、PDMSを用いることが好ましい。
【0023】
[細胞の培養方法]
上述のマイクロ流体チップ10を用いた細胞の培養方法について説明する。
【0024】
(イ)図1〜図3に示すマイクロ流体チップ10を用意する。
【0025】
(ロ)培養流路及び培養液室3aにより形成された閉鎖的な循環系内に細胞及び培養液を収容する。透過膜3の上面3bを介して培養液室3a内に培養液(培地)及び細胞を充填し、リザーバ5に設けられた入口5cを介して薬液室5aにpH及び浸透圧調整用の薬液例えば重曹水溶液等を充填する。
【0026】
(ハ)培養流路と培養液室3a内で培養液を循環させる。また、薬液室5aと薬液流路12内でも薬液を循環させる。具体的には、図4に示すように点字デバイス流体駆動装置51を作動させて培養流路11中の培養液Lを押し流す。そして、培養液Lが図3に示すように培養流路11からその一端11aを経由して培養液室3aに入り、培養流路11の他端11bを介して培養流路11に戻るように循環を繰り返す。培養液Lと共に培養液室3aに注入された細胞Sは、培養液Lが培養流路11と培養液室3a間で循環を繰り返す際に溝11cに溜まる。薬液流路12及び薬液室5a間においても上述と同様にして薬液を循環させる。
【0027】
(ニ)薬液に接する熱源(図示せず)により薬液の温度を調整することにより透過膜3を介して薬液室5aから培養液室3aに熱拡散により薬液を供給して培養流路内のpH及び温度を制御する。マイクロ流体チップ10の外部に取り付けた熱源により、薬液室5aに薬液を導入する際に、予め薬液を加熱しておくことにより、温度を制御できる。
【0028】
生命科学の進歩に伴い研究内容が多様化複雑化し、生命科学の枠を超え、生命科学以外の分野、例えば工学の分野との技術交流も盛んになってきている。ところが、生命科学の研究につきものの細胞の培養には、細心の注意と熟練の技術が必要とされたことより、細胞の培養が技術交流の妨げとなることが懸念されていた。しかし、本発明によれば、マイクロ流体チップ10の構成が単純で取り扱いが容易であるため、細胞の培養が容易になる。またマイクロ流体チップ10が小型なので培養中の細胞を搬送しやすく、しかも温度とpHを高い精度で制御できる。そのため、研究者間での細胞のやり取りが容易になることで、細胞の研究にかかわる技術の進歩が期待される。
【0029】
点字デバイス流体駆動装置を用いた従来のマイクロ流体チップは、薄膜と、薄膜上に配置された基板とを備える。基板の第2の主面にはループ状に細溝が形成され、第2の主面と薄膜とが接するように基板を薄膜上に配置することで細溝に対応する箇所に培養流路が形成される。そして、基板の第2主面側下方から薄膜を介して培養流路上に点字デバイス流体駆動装置を配置し、点字デバイス流体駆動装置を稼動させることで、培養流路内に培養液が循環する。
【0030】
ところが、基板の第2主面側下方から培養流路上に点字デバイス流体駆動装置を配置すると、点字デバイス流体駆動装置の厚み分だけワーキングディスタンスが長くなる。そのため、顕微鏡の焦点が合わせずらくなるため、マイクロ流体チップの下方から細胞の顕微鏡観察を行うことは困難であった。一方、第1の実施形態によれば、図1に示すように点字デバイス流体駆動装置51が仮想線で示される基板1の第1主面側に取り付けられる。そのため、顕微鏡とマイクロ流体チップ間のワーキングディスタンスがなくなることで、マイクロ流体チップの下方から細胞の顕微鏡観察を行えるという作用効果を奏する。
【0031】
[第2の実施形態]
以下、第2の実施形態について、第1の実施形態との相違点を中心に説明する。
【0032】
図6は本発明の第2の実施の形態にかかるマイクロ流体チップ10Aの斜視図を示す。図7は本発明の第2の実施形態にかかるマイクロ流体チップ10Aの組み立て図を示す。図8は本発明の第2の実施の形態にかかるマイクロ流体チップ10Aを下からみた図を示す。
【0033】
図6に示すように、本発明の第2の実施の形態にかかるマイクロ流体チップ10Aは、ループ状に設けられた第1の細溝111を表面に備える基板1Aと、第1の細溝111の一端と他端に対応する部分にそれぞれ開口111a,111bを備え、基板1A上に配置した際に第1の細溝111に対応する部分に培養流路を形成するシート状の薄膜2Aと、透過膜3により内部が培養液室3aと薬液室5aに仕切られ、薄膜2Aを介して基板1A上に配置した際に、培養液室3aは薄膜2Aの開口21a,21bを介して培養流路の一端111a及び他端111bと連通して培養流路と閉鎖的な循環系を形成し、薬液室5aは透過膜3と薄膜2Aにより仕切られた空間を形成するリザーバ5とを有する。
【0034】
第1の実施形態においては、薬液をリザーバ5に設けたチューブ61,62を介してリザーバ5の外部に引き出し、チューブ61,62の一部に設けた熱源で薬液を加熱した。しかし第2の実施形態によれば、図6の仮想線で示されるように、薬液の熱源をリザーバ5の薬液室下方に配置して薬液の温度制御を行うことができる。薬液をチューブ61,62を介してリザーバ5の外部に引き出して加熱する必要がなくなることで、マイクロ流体チップ10Aをコンパクトにすることができる。マイクロ流体チップ10Aがコンパクトになることで、マイクロ流体チップ10Aの配置レイアウトが自由になりワークスペースが確保される。
【0035】
第1の実施形態においては、基板1の培養流路の外側に薬液流路を設けた。しかし、第2の実施形態では、基板1Aに薬液流路の細溝を設けないため、第2の実施形態の変形例として、例えば図9に示すような基板1Bに2本の培養流路用の細溝を設けたマイクロ流体チップ10Bとすることができる。第2の実施形態の変形例によれば、1つのマイクロチップ内で同時に2以上(異種もしくは同種)の細胞を培養できるので、極めて近い環境条件で2以上の細胞の対比観察ができるという作用効果を奏する。なお、基板1Bに形成される細溝の数は、基板1Bの表面積や培養流路のレイアウト等から定まるものであり特に上限に制限はない。また細溝のレイアウトの仕方も自由であり、例えば一段に並べる他に、二段にして並べても構わない。
【0036】
[その他の実施形態]
上記のように、本発明は第1、第2の実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0037】
第1の実施形態においては、使用する際に培養液室3aに培養液を充填し薬液室5aに薬液を充填するとしたが、細胞の培養作業の前から予め培養液室3aと薬液室5aのそれぞれに培養液と薬液を充填し保管しておいてもよい。細胞の培養の作業効率が向上するからである。
【0038】
第1の実施形態においては、透過膜3の形状をキャップ状とし、図3のようにマイクロ流体チップ10の下方から見た形状を円形状とした。しかし、培養液室3aと薬液室5aが透過膜3を介して接していればよく特に透過膜3の形状は限定されない。例えば図8に示すように、板状の透過膜3Xをリザーバ5の中心を通る線上に、リザーバ5の側壁にはめ込み式に取り付けて、リザーバ5内を2分割する形状としてもよい。なお、熱応答性が良好である点では図3のような形状にすることが好ましい。
【0039】
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【実施例】
【0040】
以下、実施例の記載を通じて、マイクロ流体チップ10の製法と作用効果について説明する。
【0041】
(マイクロ流体チップの製法)
以下の手法に従い、図1〜図3に示すマイクロ流体チップ10を製法した。基板1は厚さ約3mm程度、薄膜2は厚さ約200μm程度、リザーバ5は高さ約10cm程度とした。
【0042】
基板1は、代表幅300μm、代表高さ30μmの流路を構成する溝の反転型(フォトリソグラフィで作製)にPDMS前駆体(信越化学工業社製、製品名「KE-106」)を注入し、65℃で12時間硬化した後、離型することにより製造した。薄膜2は、シランコート剤(ハーベス(HARVES)社製、製品名「ハーベスHD-1101Z」)を塗布したスライドガラス(松浪硝子社製、製品名「S9111」)にPDMS前駆体を450rpmで10分間スピンコートし、その後、95℃で15分間硬化し、剥離・パンチで穴あけすることにより製造した。隔膜は、ボリカーボネート板を機械加工して作製した型にPDMS前駆体を注入・硬化(65℃;12h)・離型することにより形成した。プラズマ電流20mAで45分間、真空中空気プラズマ処理した後、65℃で5分間、圧接・加熱して各層を接合した。
【0043】
(インキュベーション)
マイクロ流体チップ10の培養液室3aに外径1.5mmのポリプロピレン(PP)チューブフィッティングを挿入し、シリンジを用いてDMEM(Gibco 12800;3.7g/1重曹と10%ウシ胎児血清添加)を200μl注入した。
【0044】
薬液室5aには、ポリプロピレンチューブフィッティングを介し、入口5cと出口5dの2か所に外径3.2mm、内径1.15mmのファーメドチューブを、入口5cにはさらに熱電対(ANBESMT製。製品名「KMG-200」)を接続した。
【0045】
薬液室5aの入口5c側に、インラインヒータとして、ペルチェ素子付銅製水枕(Swiftech製、製品名「MCW60-T」)を接続した。
【0046】
チューブの両端には重曹水用タンク(Swiftech製、「MCRES Micro Rev.2」)を接続し、チューブポンプ(東京理化器械製、製品名「MP-3」)を用い0.4M重曹水約135mlを約1ml/minにて循環した。
【0047】
ペルチエ素子と3Vの電圧源ならびに熱電対は、温度調節器(アズワン社製、製品名「TS-K」)に接続し、温度計測・制御を行った。
【0048】
培養液室3aの鉛直約2cm上方にライトガイドを配置し、波長切替光源(浜松ホトニクス社製、製品名「C7773」)からの光を導き、培養液室3aに単波長光(558nm、479nm、432nm、365nm)を照射した。ライトガイド先端のマイクロ流体チップ10をはさんで鉛直下方に、絞りを介してCCDカメラ(オリンパス社製、製品名「DP12」)を配置し、培養液室3a中のフェノールレッド(PR)による吸収で減衰した透過光の画像を取得し、光量を画像のピクセル値として得た。1回のpH測定につき4種類の波長の透過光量(I558、I479、I432、I365)を取得し、I558とI479、を、I479とI365から算出したベースラインで補正したものの対数比R(式(I)、式(II))を算出し、あらかじめ調製した既知pHのリン酸緩衝液(40mMPR含有)における測定結果から二重指数あてはめによりpHを推定した。
【0049】
R=log10(I558-Ioff(558))/(I432−off(432))・・(式I)、
Ioff(λ)=I365+(I479−I355)/(479−365)×(λ―365)・・(式II)、
図6に、本インキュベーション系において、マイクロ流体チップ10の薬液室5aの導入口における重曹水の温度を室温付近から上昇させた場合の応答の測定結果を示す。インラインヒータにより加熱された重曹水は、リザーバ5に到達する以前にチューブを通る間に無視できない位冷却されるにもかかわらず、本実施例においては、ヒータヘの8W程度の断続的電力印加(時定数20分)により、チッブ内の重曹水温度を約15分以内に37℃付近(図中点線)に制御することができ、その後の温度変動も常に±0.2℃以内に収まった。
【0050】
図7は、通常は10%CO2環境下においてインキュベーションされる培地(DMEM)をpH8にした状態で培養液室3aに導入し、そのうえで、重曹水循環により37℃に加湿したときの培地pHの時間変化である。細胞の操作や微小流体チップなどへの導入操作などで、培地をCO2インキュベータ外の開放系で操作するとpHが上昇する傾向があるが、本系では、上昇したpHの培地を約30分程度で、生理的に妥当なpH7.4付近(図中点線)まで押し下げ、かつ、少なくとも8時間はpH=7.3土0.1を維持できることが示された。
【0051】
本発明によれば、培地の温度とpHの制御が容易なことから、温度とpHの高い精度が求められる脳神経細胞などの培養に有用である。
【符号の説明】
【0052】
1…基板、
2…薄膜、
3…透過膜、
3a…培養液室、
5…リザーバ、
5a…薬液室、
11…培養流路、
111…第1の細溝、
12…薬液流路、
112…第2の細溝、
10…マイクロ流体チップ
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ流体チップ及び細胞の培養方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロ流体チップによる微小流体下の細胞培養は、培地内物質の濃度勾配や流速の時間・空間的制御が容易であるため、生体医工学・生命科学のツールとして期待されている。とくに、ポリジメチルシロキサン(以下「PDMS」ともいう。)は、微細なパターンの再現性が高い、ソフトリソグラフィによるブロトタイビングが容易である、光学特性がよい、他の弾性透明樹脂に比べ毒性が少ない、容易に変形するため空気圧や外部のアクチュエータで駆動できるという利点があることから、マイクロ流体チップの材料として、多くの使用実績がある。
【0003】
ところが、PDMSには水分子と炭酸ガスの透過性がきわめて高いという性質があるため、PDMSに封入された細胞培養用培地などの液体を「密封」するのは困難である。そのため、物理化学的性質を保つことが求められる細胞培養においては、ディッシュ等による通常の細胞培養と同様、保温を行い、かつ浸透圧変化とpHの変化を抑える必要がある。通常の細胞培養においては、保温・浸透圧制御・pH制御をそれぞれヒータ・加湿器・CO2ガス注入で行う、いわゆるCO2インキュベータで行っている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
しかし、特許文献1に開示された方法は、対象を密閉系におく必要があるため、マイクロ流体システムの操作性・可搬性を損ない、設計・実装コストもかさむという問題があった。そのため、培地の温度及びpHの調節が容易な小型のマイクロ流体チップが求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−204188号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、培地の温度及びpHの調節が容易な小型のマイクロ流体チップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様は、ループ状に設けられた第1の細溝及び第1の細溝の外周にループ状に設けられた第2の細溝を表面に備える基板と、第1の細溝の一端と他端に対応する部分及び第2の細溝の一端と他端に対応する部分にそれぞれ開口を備え、基板上に配置した際に第1の細溝に対応する部分に培養流路及び第2の細溝に対応する部分に薬液流路を形成するシート状の薄膜と、透過膜により内部が培養液室と薬液室に仕切られ、薄膜を介して基板上に配置した際に、培養液室は薄膜の開口を介して培養流路の一端及び他端と連通して培養流路と閉鎖的な循環系を形成し、薬液室は薄膜の開口を介して薬液流路の一端及び他端と連通して薬液流路と閉鎖的な循環系を形成するリザーバとを有するマイクロ流体チップを要旨とする。
【0008】
本発明の第2の態様は、ループ状に設けられた第1の細溝を表面に備える基板と、第1の細溝の一端と他端に対応する部分にそれぞれ開口を備え、基板上に配置した際に第1の細溝に対応する部分に培養流路を形成するシート状の薄膜と、透過膜により内部が培養液室と薬液室に仕切られ、薄膜を介して前記基板上に配置した際に、培養液室は薄膜の開口を介して培養流路の一端及び他端と連通して培養流路と閉鎖的な循環系を形成し、薬液室は透過膜と薄膜により仕切られた空間を形成するリザーバとを有するマイクロ流体チップを要旨とする。
【0009】
本発明の第3の態様は、上述のマイクロ流体チップを用意し、培養流路及び培養液室により形成された閉鎖的な循環系内に細胞及び培養液を収容し、薬液流路及び薬液室により形成された閉鎖的な循環系内に薬液を収容する工程と、培養流路と培養液室内で培養液を循環させる工程と、薬液室と薬液流路内で薬液を循環させる工程と、薬液の温度を調整することにより透過膜を介して薬液室から培養液室に熱拡散により薬液を供給して培養流路内のpH及び温度を制御する工程とを含む細胞の培養方法を要旨とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、培地の温度及びpHの調節が容易な小型のマイクロ流体チップが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1の実施形態にかかるマイクロ流体チップの斜視図を示す。
【図2】本発明の第1の実施形態にかかるマイクロ流体チップの組み立て図を示す。
【図3】本発明の第1の実施形態にかかるマイクロ流体チップを下からみた図を示す。
【図4】点字デバイス流体駆動装置を作動させた際の点字部の昇降状態の概念図を示す。
【図5】本発明の第1の実施形態にかかるマイクロ流体チップの断面図を示す。
【図6】本発明の第2の実施形態にかかるマイクロ流体チップの斜視図を示す。
【図7】本発明の第2の実施形態にかかるマイクロ流体チップの組み立て図を示す。
【図8】本発明の第2の実施形態にかかるマイクロ流体チップを下からみた図を示す。
【図9】本発明の第2の実施形態にかかるマイクロ流体チップを下からみた図を示す。
【図10】本発明の第1の実施形態の変形例にかかるマイクロ流体チップを下からみた図を示す。
【図11】経過時間に対する温度変化を示す。
【図12】経過時間に対する培地のpH変化を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、実施形態を挙げて本発明の説明を行うが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。尚、図中同一の機能又は類似の機能を有するものについては、同一又は類似の符号を付して説明を省略する。
【0013】
[第1の実施形態]
図1は本発明の第1の実施の形態にかかるマイクロ流体チップ10の斜視図を示す。本発明者らは、鋭意研究の結果、マイクロ流体チップ10において、図1に示すように、リザーバ5の内部を透過膜3により培養液室3aと薬液室5aに仕切り、培養液室3aの周囲を薬液室5aで取り囲む構造とし、薬液室5aに加温した炭酸水素ナトリウム(重曹)水溶液を導入することで、細胞培養に適したインキュベーンョンをコンパクトに行うことを着想した。そして、導入された重曹水溶液がPDMS製の透過膜3を介して培養液室3a中の培地が接触し、PDMS内を拡散した熱・CO2・水分子を受け取ることにより、培地の温度・pH・浸透圧が1系統で同時に調節されることを見出した。
【0014】
[マイクロ流体チップ]
図2は本発明の第1の実施形態にかかるマイクロ流体チップ10の組み立て図を示す。図3は本発明の第1の実施の形態にかかるマイクロ流体チップ10を下からみた図を示す。図2に示すように、マイクロ流体チップ10は、ループ状に設けられた第1の細溝111及び第1の細溝111の外周にループ状に設けられた第2の細溝112を表面に備える基板1と、第1の細溝111の一端111aと他端111bに対応する部分及び第2の細溝112の一端112aと他端112bに対応する部分にそれぞれ開口21a、21b、22a、22bを備えるシート状の薄膜2と、キャップ状の透過膜3と、底面に開口部を備える直方体状で内部が空洞であるリザーバ5とを有する。
【0015】
薄膜2を基板1上に配置すると、第1の細溝111に対応する部分及び第2の細溝112に対応する部分に、それぞれ図3に示されるような培養流路11及び薬液流路12が形成される。透過膜3は、培養液室3aを内部に備え、培養流路11の一端11a及び他端11bと培養液室3aが連通するように薄膜2上に配置すると、培養流路11と閉鎖的な循環系を形成する。リザーバ5は、透過膜3を内部に収容するように薄膜2を介して基板1上に配置すると、透過膜3により内部が培養液室3aと薬液室5aに仕切られ、薬液室5aは薄膜2の開口22a,22bを介して薬液流路12の一端及び他端と連通して薬液流路12と閉鎖的な循環系を形成する。リザーバ5の上面に設けられた開口部5bから透過膜3の上面3bが露出するように、リザーバ5を薄膜2を介して基板1上に配置すると、開口部5bから透過膜3の上面3bが露出するため、上面3bから細胞や培養液を注入することができる。
【0016】
図3に示すように、マイクロ流体チップ10の下方から見た透過膜3の形状を円形状としたことで、培養液室3aと薬液室5aの透過膜3を介した接触面積が広がり、薬液が熱拡散により透過膜を介して薬液室5aから培養液室3aに移行しやすくなる。
【0017】
マイクロ流体チップ10を使用する際には、点字デバイス流体駆動装置51が仮想線で示される位置に取り付けられる。例えば図4に示すように点字デバイス流体駆動装置51を作動させて点字部51a、51b、51cを下降させて薄膜2を押し込み、点字部51a、51b、51cを上昇させ薄膜2を開放することを繰り返すことで培養流路11中の培養液Lが押し流される。
【0018】
培養流路11の一部には図5に示すように、細胞が溜まる溝11cが設けられている。またリザーバ5には表面から薬液室5aまで貫通する、薬液を導入するための入口5cと、薬液の出口5dが設けられている。また入口5c、出口5dには薬液を導入するための仮想線で示されるチューブ61,62が取り付けられる。かかるチューブは循環系を形成し、チューブ61,62の一部が熱源(図示せず)に接するように取り付けられる。
【0019】
基板1は、細胞に対する毒性が少なく、微細な加工ができ、光学特性がよいものが好ましい。上記特性を有することより、PDMSを用いることが好ましい。
【0020】
シート状の薄膜2は、細胞に対する毒性が少なく、光学特性がよく、後述の点字デバイス流体駆動装置51を使用する観点からは弾性体であることが好ましい。具体的にはシート状のシラン樹脂やPDMS等を用いることができる。
【0021】
透過膜3は、薬液が熱拡散により透過膜3を介して薬液室5aから培養液室3aに移行可能なものが好ましい。なお、透過膜3は通気性であることがより好ましい。上述の特性を備えることより、透過膜3としては、ポリジメチルシロキサン(PDMS)を用いることが好ましい。透過膜3の厚みは、10〜2000μmであることが好ましい。薬液の熱拡散性を高める、pH等の制御の応答性を高めるためには、10μm〜1000μmが好ましく、10μm〜100μmがより好ましい。
【0022】
リザーバ5は、光学特性がよいものが好ましい。上記特性を有することより、ポリメチルメタアクリレート(PMMA)等のアクリル樹脂や、PDMSを用いることが好ましい。
【0023】
[細胞の培養方法]
上述のマイクロ流体チップ10を用いた細胞の培養方法について説明する。
【0024】
(イ)図1〜図3に示すマイクロ流体チップ10を用意する。
【0025】
(ロ)培養流路及び培養液室3aにより形成された閉鎖的な循環系内に細胞及び培養液を収容する。透過膜3の上面3bを介して培養液室3a内に培養液(培地)及び細胞を充填し、リザーバ5に設けられた入口5cを介して薬液室5aにpH及び浸透圧調整用の薬液例えば重曹水溶液等を充填する。
【0026】
(ハ)培養流路と培養液室3a内で培養液を循環させる。また、薬液室5aと薬液流路12内でも薬液を循環させる。具体的には、図4に示すように点字デバイス流体駆動装置51を作動させて培養流路11中の培養液Lを押し流す。そして、培養液Lが図3に示すように培養流路11からその一端11aを経由して培養液室3aに入り、培養流路11の他端11bを介して培養流路11に戻るように循環を繰り返す。培養液Lと共に培養液室3aに注入された細胞Sは、培養液Lが培養流路11と培養液室3a間で循環を繰り返す際に溝11cに溜まる。薬液流路12及び薬液室5a間においても上述と同様にして薬液を循環させる。
【0027】
(ニ)薬液に接する熱源(図示せず)により薬液の温度を調整することにより透過膜3を介して薬液室5aから培養液室3aに熱拡散により薬液を供給して培養流路内のpH及び温度を制御する。マイクロ流体チップ10の外部に取り付けた熱源により、薬液室5aに薬液を導入する際に、予め薬液を加熱しておくことにより、温度を制御できる。
【0028】
生命科学の進歩に伴い研究内容が多様化複雑化し、生命科学の枠を超え、生命科学以外の分野、例えば工学の分野との技術交流も盛んになってきている。ところが、生命科学の研究につきものの細胞の培養には、細心の注意と熟練の技術が必要とされたことより、細胞の培養が技術交流の妨げとなることが懸念されていた。しかし、本発明によれば、マイクロ流体チップ10の構成が単純で取り扱いが容易であるため、細胞の培養が容易になる。またマイクロ流体チップ10が小型なので培養中の細胞を搬送しやすく、しかも温度とpHを高い精度で制御できる。そのため、研究者間での細胞のやり取りが容易になることで、細胞の研究にかかわる技術の進歩が期待される。
【0029】
点字デバイス流体駆動装置を用いた従来のマイクロ流体チップは、薄膜と、薄膜上に配置された基板とを備える。基板の第2の主面にはループ状に細溝が形成され、第2の主面と薄膜とが接するように基板を薄膜上に配置することで細溝に対応する箇所に培養流路が形成される。そして、基板の第2主面側下方から薄膜を介して培養流路上に点字デバイス流体駆動装置を配置し、点字デバイス流体駆動装置を稼動させることで、培養流路内に培養液が循環する。
【0030】
ところが、基板の第2主面側下方から培養流路上に点字デバイス流体駆動装置を配置すると、点字デバイス流体駆動装置の厚み分だけワーキングディスタンスが長くなる。そのため、顕微鏡の焦点が合わせずらくなるため、マイクロ流体チップの下方から細胞の顕微鏡観察を行うことは困難であった。一方、第1の実施形態によれば、図1に示すように点字デバイス流体駆動装置51が仮想線で示される基板1の第1主面側に取り付けられる。そのため、顕微鏡とマイクロ流体チップ間のワーキングディスタンスがなくなることで、マイクロ流体チップの下方から細胞の顕微鏡観察を行えるという作用効果を奏する。
【0031】
[第2の実施形態]
以下、第2の実施形態について、第1の実施形態との相違点を中心に説明する。
【0032】
図6は本発明の第2の実施の形態にかかるマイクロ流体チップ10Aの斜視図を示す。図7は本発明の第2の実施形態にかかるマイクロ流体チップ10Aの組み立て図を示す。図8は本発明の第2の実施の形態にかかるマイクロ流体チップ10Aを下からみた図を示す。
【0033】
図6に示すように、本発明の第2の実施の形態にかかるマイクロ流体チップ10Aは、ループ状に設けられた第1の細溝111を表面に備える基板1Aと、第1の細溝111の一端と他端に対応する部分にそれぞれ開口111a,111bを備え、基板1A上に配置した際に第1の細溝111に対応する部分に培養流路を形成するシート状の薄膜2Aと、透過膜3により内部が培養液室3aと薬液室5aに仕切られ、薄膜2Aを介して基板1A上に配置した際に、培養液室3aは薄膜2Aの開口21a,21bを介して培養流路の一端111a及び他端111bと連通して培養流路と閉鎖的な循環系を形成し、薬液室5aは透過膜3と薄膜2Aにより仕切られた空間を形成するリザーバ5とを有する。
【0034】
第1の実施形態においては、薬液をリザーバ5に設けたチューブ61,62を介してリザーバ5の外部に引き出し、チューブ61,62の一部に設けた熱源で薬液を加熱した。しかし第2の実施形態によれば、図6の仮想線で示されるように、薬液の熱源をリザーバ5の薬液室下方に配置して薬液の温度制御を行うことができる。薬液をチューブ61,62を介してリザーバ5の外部に引き出して加熱する必要がなくなることで、マイクロ流体チップ10Aをコンパクトにすることができる。マイクロ流体チップ10Aがコンパクトになることで、マイクロ流体チップ10Aの配置レイアウトが自由になりワークスペースが確保される。
【0035】
第1の実施形態においては、基板1の培養流路の外側に薬液流路を設けた。しかし、第2の実施形態では、基板1Aに薬液流路の細溝を設けないため、第2の実施形態の変形例として、例えば図9に示すような基板1Bに2本の培養流路用の細溝を設けたマイクロ流体チップ10Bとすることができる。第2の実施形態の変形例によれば、1つのマイクロチップ内で同時に2以上(異種もしくは同種)の細胞を培養できるので、極めて近い環境条件で2以上の細胞の対比観察ができるという作用効果を奏する。なお、基板1Bに形成される細溝の数は、基板1Bの表面積や培養流路のレイアウト等から定まるものであり特に上限に制限はない。また細溝のレイアウトの仕方も自由であり、例えば一段に並べる他に、二段にして並べても構わない。
【0036】
[その他の実施形態]
上記のように、本発明は第1、第2の実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0037】
第1の実施形態においては、使用する際に培養液室3aに培養液を充填し薬液室5aに薬液を充填するとしたが、細胞の培養作業の前から予め培養液室3aと薬液室5aのそれぞれに培養液と薬液を充填し保管しておいてもよい。細胞の培養の作業効率が向上するからである。
【0038】
第1の実施形態においては、透過膜3の形状をキャップ状とし、図3のようにマイクロ流体チップ10の下方から見た形状を円形状とした。しかし、培養液室3aと薬液室5aが透過膜3を介して接していればよく特に透過膜3の形状は限定されない。例えば図8に示すように、板状の透過膜3Xをリザーバ5の中心を通る線上に、リザーバ5の側壁にはめ込み式に取り付けて、リザーバ5内を2分割する形状としてもよい。なお、熱応答性が良好である点では図3のような形状にすることが好ましい。
【0039】
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【実施例】
【0040】
以下、実施例の記載を通じて、マイクロ流体チップ10の製法と作用効果について説明する。
【0041】
(マイクロ流体チップの製法)
以下の手法に従い、図1〜図3に示すマイクロ流体チップ10を製法した。基板1は厚さ約3mm程度、薄膜2は厚さ約200μm程度、リザーバ5は高さ約10cm程度とした。
【0042】
基板1は、代表幅300μm、代表高さ30μmの流路を構成する溝の反転型(フォトリソグラフィで作製)にPDMS前駆体(信越化学工業社製、製品名「KE-106」)を注入し、65℃で12時間硬化した後、離型することにより製造した。薄膜2は、シランコート剤(ハーベス(HARVES)社製、製品名「ハーベスHD-1101Z」)を塗布したスライドガラス(松浪硝子社製、製品名「S9111」)にPDMS前駆体を450rpmで10分間スピンコートし、その後、95℃で15分間硬化し、剥離・パンチで穴あけすることにより製造した。隔膜は、ボリカーボネート板を機械加工して作製した型にPDMS前駆体を注入・硬化(65℃;12h)・離型することにより形成した。プラズマ電流20mAで45分間、真空中空気プラズマ処理した後、65℃で5分間、圧接・加熱して各層を接合した。
【0043】
(インキュベーション)
マイクロ流体チップ10の培養液室3aに外径1.5mmのポリプロピレン(PP)チューブフィッティングを挿入し、シリンジを用いてDMEM(Gibco 12800;3.7g/1重曹と10%ウシ胎児血清添加)を200μl注入した。
【0044】
薬液室5aには、ポリプロピレンチューブフィッティングを介し、入口5cと出口5dの2か所に外径3.2mm、内径1.15mmのファーメドチューブを、入口5cにはさらに熱電対(ANBESMT製。製品名「KMG-200」)を接続した。
【0045】
薬液室5aの入口5c側に、インラインヒータとして、ペルチェ素子付銅製水枕(Swiftech製、製品名「MCW60-T」)を接続した。
【0046】
チューブの両端には重曹水用タンク(Swiftech製、「MCRES Micro Rev.2」)を接続し、チューブポンプ(東京理化器械製、製品名「MP-3」)を用い0.4M重曹水約135mlを約1ml/minにて循環した。
【0047】
ペルチエ素子と3Vの電圧源ならびに熱電対は、温度調節器(アズワン社製、製品名「TS-K」)に接続し、温度計測・制御を行った。
【0048】
培養液室3aの鉛直約2cm上方にライトガイドを配置し、波長切替光源(浜松ホトニクス社製、製品名「C7773」)からの光を導き、培養液室3aに単波長光(558nm、479nm、432nm、365nm)を照射した。ライトガイド先端のマイクロ流体チップ10をはさんで鉛直下方に、絞りを介してCCDカメラ(オリンパス社製、製品名「DP12」)を配置し、培養液室3a中のフェノールレッド(PR)による吸収で減衰した透過光の画像を取得し、光量を画像のピクセル値として得た。1回のpH測定につき4種類の波長の透過光量(I558、I479、I432、I365)を取得し、I558とI479、を、I479とI365から算出したベースラインで補正したものの対数比R(式(I)、式(II))を算出し、あらかじめ調製した既知pHのリン酸緩衝液(40mMPR含有)における測定結果から二重指数あてはめによりpHを推定した。
【0049】
R=log10(I558-Ioff(558))/(I432−off(432))・・(式I)、
Ioff(λ)=I365+(I479−I355)/(479−365)×(λ―365)・・(式II)、
図6に、本インキュベーション系において、マイクロ流体チップ10の薬液室5aの導入口における重曹水の温度を室温付近から上昇させた場合の応答の測定結果を示す。インラインヒータにより加熱された重曹水は、リザーバ5に到達する以前にチューブを通る間に無視できない位冷却されるにもかかわらず、本実施例においては、ヒータヘの8W程度の断続的電力印加(時定数20分)により、チッブ内の重曹水温度を約15分以内に37℃付近(図中点線)に制御することができ、その後の温度変動も常に±0.2℃以内に収まった。
【0050】
図7は、通常は10%CO2環境下においてインキュベーションされる培地(DMEM)をpH8にした状態で培養液室3aに導入し、そのうえで、重曹水循環により37℃に加湿したときの培地pHの時間変化である。細胞の操作や微小流体チップなどへの導入操作などで、培地をCO2インキュベータ外の開放系で操作するとpHが上昇する傾向があるが、本系では、上昇したpHの培地を約30分程度で、生理的に妥当なpH7.4付近(図中点線)まで押し下げ、かつ、少なくとも8時間はpH=7.3土0.1を維持できることが示された。
【0051】
本発明によれば、培地の温度とpHの制御が容易なことから、温度とpHの高い精度が求められる脳神経細胞などの培養に有用である。
【符号の説明】
【0052】
1…基板、
2…薄膜、
3…透過膜、
3a…培養液室、
5…リザーバ、
5a…薬液室、
11…培養流路、
111…第1の細溝、
12…薬液流路、
112…第2の細溝、
10…マイクロ流体チップ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ループ状に設けられた第1の細溝及び前記第1の細溝の外周にループ状に設けられた第2の細溝を表面に備える基板と、
前記第1の細溝の一端と他端に対応する部分及び前記第2の細溝の一端と他端に対応する部分にそれぞれ開口を備え、前記基板上に配置した際に前記第1の細溝に対応する部分に培養流路及び前記第2の細溝に対応する部分に薬液流路を形成するシート状の薄膜と、
透過膜により内部が培養液室と薬液室に仕切られ、前記薄膜を介して前記基板上に配置した際に、前記培養液室は前記薄膜の開口を介して前記培養流路の一端及び他端と連通して前記培養流路と閉鎖的な循環系を形成し、前記薬液室は前記薄膜の開口を介して前記薬液流路の一端及び他端と連通して前記薬液流路と閉鎖的な循環系を形成するリザーバ
とを有することを特徴とするマイクロ流体チップ。
【請求項2】
ループ状に設けられた第1の細溝を表面に備える基板と、
前記第1の細溝の一端と他端に対応する部分にそれぞれ開口を備え、前記基板上に配置した際に前記第1の細溝に対応する部分に培養流路を形成するシート状の薄膜と、
透過膜により内部が培養液室と薬液室に仕切られ、前記薄膜を介して前記基板上に配置した際に、前記培養液室は前記薄膜の開口を介して前記培養流路の一端及び他端と連通して前記培養流路と閉鎖的な循環系を形成し、前記薬液室は前記透過膜と前記薄膜により仕切られた空間を形成するリザーバ
とを有することを特徴とするマイクロ流体チップ。
【請求項3】
前記透過膜は、ポリジメチルシロキサン(PDMS)からなることを特徴とする請求項1又は2に記載のマイクロ流体チップ。
【請求項4】
前記透過膜の厚みは、10〜1000μmであることを特徴とする請求項3に記載のマイクロ流体チップ。
【請求項5】
前記培養液室に培養液、前記薬液室に前記流路内のpH及び浸透圧調整用の薬液が充填されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のマイクロ流体チップ。
【請求項6】
前記リザーバを避けるように、前記薄膜を介して前記第1の細溝上に配置された、点字デバイス流体駆動装置をさらに有することを特徴とする請求項1又は2に記載のマイクロ流体チップ。
【請求項7】
前記基板は、ループ状に設けられた第3の細溝を表面にさらに備え、
前記薄膜は、前記第3の細溝の一端と他端に対応する部分にそれぞれ開口をさらに備え、前記基板上に配置した際に前記第3の細溝に対応する部分に第2の培養流路を形成することを特徴とする請求項2に記載のマイクロ流体チップ。
【請求項8】
ループ状に設けられた第1の細溝を表面に備える基板、前記第1の細溝の一端と他端に対応する部分にそれぞれ開口を備え、前記基板上に配置した際に前記第1の細溝に対応する部分に培養流路を形成するシート状の薄膜、透過膜により内部が培養液室と薬液室に仕切られ、前記薄膜を介して前記基板上に配置した際に、前記培養液室は前記薄膜の開口を介して前記培養流路の一端及び他端と連通して前記培養流路と閉鎖的な循環系を形成し、前記薬液室は前記透過膜と前記薄膜により仕切られた空間を形成するリザーバとを有するマイクロ流体チップを用意し、前記培養流路及び前記培養液室により形成された閉鎖的な循環系内に細胞及び培養液を収容する工程と、
前記培養流路と前記培養液室内で前記培養液を循環させる工程と、
前記薬液の温度を調整することにより透過膜を介して薬液室から培養液室に熱拡散により薬液を供給して培養流路内のpH及び温度を制御する工程と
を含むことを特徴とする細胞の培養方法。
【請求項9】
前記基板の前記リザーバの反対側表面に熱源を配置し、前記マイクロ流体チップを加熱することにより、前記薬液の温度を調整することを特徴とする請求項8記載の細胞の培養方法。
【請求項10】
ループ状に設けられた第1の細溝及び前記第1の細溝の外周にループ状に設けられた第2の細溝を表面に備える基板、前記第1の細溝の一端と他端に対応する部分及び前記第2の細溝の一端と他端に対応する部分にそれぞれ開口を備え、前記基板上に配置した際に前記第1の細溝に対応する部分に培養流路及び前記第2の細溝に対応する部分に薬液流路を形成するシート状の薄膜、透過膜により内部が培養液室と薬液室に仕切られ、前記薄膜を介して前記基板上に配置した際に、前記培養液室は前記薄膜の開口を介して前記培養流路の一端及び他端と連通して前記培養流路と閉鎖的な循環系を形成し、前記薬液室は前記薄膜の開口を介して前記薬液流路の一端及び他端と連通して前記薬液流路と閉鎖的な循環系を形成するリザーバとを有するマイクロ流体チップを用意し、前記培養流路及び前記培養液室により形成された閉鎖的な循環系内に細胞及び培養液を収容し、前記薬液流路及び前記薬液室により形成された閉鎖的な循環系内に薬液を収容する工程と、
前記培養流路と前記培養液室内で前記培養液を循環させる工程と、
前記薬液室と前記薬液流路内で前記薬液を循環させる工程と、
前記薬液の温度を調整することにより透過膜を介して薬液室から培養液室に熱拡散により薬液を供給して培養流路内のpH及び温度を制御する工程と
を含むことを特徴とする細胞の培養方法。
【請求項1】
ループ状に設けられた第1の細溝及び前記第1の細溝の外周にループ状に設けられた第2の細溝を表面に備える基板と、
前記第1の細溝の一端と他端に対応する部分及び前記第2の細溝の一端と他端に対応する部分にそれぞれ開口を備え、前記基板上に配置した際に前記第1の細溝に対応する部分に培養流路及び前記第2の細溝に対応する部分に薬液流路を形成するシート状の薄膜と、
透過膜により内部が培養液室と薬液室に仕切られ、前記薄膜を介して前記基板上に配置した際に、前記培養液室は前記薄膜の開口を介して前記培養流路の一端及び他端と連通して前記培養流路と閉鎖的な循環系を形成し、前記薬液室は前記薄膜の開口を介して前記薬液流路の一端及び他端と連通して前記薬液流路と閉鎖的な循環系を形成するリザーバ
とを有することを特徴とするマイクロ流体チップ。
【請求項2】
ループ状に設けられた第1の細溝を表面に備える基板と、
前記第1の細溝の一端と他端に対応する部分にそれぞれ開口を備え、前記基板上に配置した際に前記第1の細溝に対応する部分に培養流路を形成するシート状の薄膜と、
透過膜により内部が培養液室と薬液室に仕切られ、前記薄膜を介して前記基板上に配置した際に、前記培養液室は前記薄膜の開口を介して前記培養流路の一端及び他端と連通して前記培養流路と閉鎖的な循環系を形成し、前記薬液室は前記透過膜と前記薄膜により仕切られた空間を形成するリザーバ
とを有することを特徴とするマイクロ流体チップ。
【請求項3】
前記透過膜は、ポリジメチルシロキサン(PDMS)からなることを特徴とする請求項1又は2に記載のマイクロ流体チップ。
【請求項4】
前記透過膜の厚みは、10〜1000μmであることを特徴とする請求項3に記載のマイクロ流体チップ。
【請求項5】
前記培養液室に培養液、前記薬液室に前記流路内のpH及び浸透圧調整用の薬液が充填されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のマイクロ流体チップ。
【請求項6】
前記リザーバを避けるように、前記薄膜を介して前記第1の細溝上に配置された、点字デバイス流体駆動装置をさらに有することを特徴とする請求項1又は2に記載のマイクロ流体チップ。
【請求項7】
前記基板は、ループ状に設けられた第3の細溝を表面にさらに備え、
前記薄膜は、前記第3の細溝の一端と他端に対応する部分にそれぞれ開口をさらに備え、前記基板上に配置した際に前記第3の細溝に対応する部分に第2の培養流路を形成することを特徴とする請求項2に記載のマイクロ流体チップ。
【請求項8】
ループ状に設けられた第1の細溝を表面に備える基板、前記第1の細溝の一端と他端に対応する部分にそれぞれ開口を備え、前記基板上に配置した際に前記第1の細溝に対応する部分に培養流路を形成するシート状の薄膜、透過膜により内部が培養液室と薬液室に仕切られ、前記薄膜を介して前記基板上に配置した際に、前記培養液室は前記薄膜の開口を介して前記培養流路の一端及び他端と連通して前記培養流路と閉鎖的な循環系を形成し、前記薬液室は前記透過膜と前記薄膜により仕切られた空間を形成するリザーバとを有するマイクロ流体チップを用意し、前記培養流路及び前記培養液室により形成された閉鎖的な循環系内に細胞及び培養液を収容する工程と、
前記培養流路と前記培養液室内で前記培養液を循環させる工程と、
前記薬液の温度を調整することにより透過膜を介して薬液室から培養液室に熱拡散により薬液を供給して培養流路内のpH及び温度を制御する工程と
を含むことを特徴とする細胞の培養方法。
【請求項9】
前記基板の前記リザーバの反対側表面に熱源を配置し、前記マイクロ流体チップを加熱することにより、前記薬液の温度を調整することを特徴とする請求項8記載の細胞の培養方法。
【請求項10】
ループ状に設けられた第1の細溝及び前記第1の細溝の外周にループ状に設けられた第2の細溝を表面に備える基板、前記第1の細溝の一端と他端に対応する部分及び前記第2の細溝の一端と他端に対応する部分にそれぞれ開口を備え、前記基板上に配置した際に前記第1の細溝に対応する部分に培養流路及び前記第2の細溝に対応する部分に薬液流路を形成するシート状の薄膜、透過膜により内部が培養液室と薬液室に仕切られ、前記薄膜を介して前記基板上に配置した際に、前記培養液室は前記薄膜の開口を介して前記培養流路の一端及び他端と連通して前記培養流路と閉鎖的な循環系を形成し、前記薬液室は前記薄膜の開口を介して前記薬液流路の一端及び他端と連通して前記薬液流路と閉鎖的な循環系を形成するリザーバとを有するマイクロ流体チップを用意し、前記培養流路及び前記培養液室により形成された閉鎖的な循環系内に細胞及び培養液を収容し、前記薬液流路及び前記薬液室により形成された閉鎖的な循環系内に薬液を収容する工程と、
前記培養流路と前記培養液室内で前記培養液を循環させる工程と、
前記薬液室と前記薬液流路内で前記薬液を循環させる工程と、
前記薬液の温度を調整することにより透過膜を介して薬液室から培養液室に熱拡散により薬液を供給して培養流路内のpH及び温度を制御する工程と
を含むことを特徴とする細胞の培養方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−206045(P2011−206045A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−36167(P2011−36167)
【出願日】平成23年2月22日(2011.2.22)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成21年9月18日、社団法人日本生体医工学会 関東支部発行の「生体医工学シンポジウム2009講演予稿集」に発表、平成21年12月10日、社団法人日本生体医工学会発行の「生体医工学第47巻 第6号」に発表
【出願人】(800000068)学校法人東京電機大学 (112)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月22日(2011.2.22)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成21年9月18日、社団法人日本生体医工学会 関東支部発行の「生体医工学シンポジウム2009講演予稿集」に発表、平成21年12月10日、社団法人日本生体医工学会発行の「生体医工学第47巻 第6号」に発表
【出願人】(800000068)学校法人東京電機大学 (112)
【Fターム(参考)】
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