説明

マイクロ流体素子

【課題】毛細管バルブの噴出回転数を調整することにより、チャンネルに流入する流量の制御特性が改善された、遠心力で機能するマイクロ流体素子を提供する。
【解決手段】マイクロ流体素子は、本体、複数のチャンネル、複数のリザーバ31、32、33、34及び複数の毛細管バルブ41、42、43、44を備える。リザーバは本体上に形成されている。本体上にチャンネルが形成されており、各チャネルは対応するリザーバにつながる。チャンネルは、主チャンネル20と、少なくとも1つの枝チャンネル21とを含む。主チャンネルは本体の上面に形成されており、該本体の中心からその円周へ向けて伸長する。各毛細管バルブが、対応するチャンネルに、毛細管バルブ間の噴出回転数の差が増大するように、本体の中心に実質的に近い距離で、設置されている。マイクロ流体素子は、毛細管バルブの個々の噴出回転数を経て、優れた流量制御特性で流体を連続して放出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ流体素子に関し、より詳細には、毛細管バルブの噴出回転数を調整することにより、チャンネルに流入する流量の制御特性が改善された、遠心力で機能するマイクロ流体素子に関する。
【背景技術】
【0002】
医療、薬学、バイオ工学及び環境モニタリングの進歩のために、圧倒的な化学分析、その関連装置及び専門家が必要とされている。しかしながら、一般の人々にとって、専門知識、装置及び理由に制限を受けることなく、より便利で、より簡単な分析プロセスが必要である。
【0003】
マイクロエレクトロニクス技術及び半導体の進歩に伴い、多大な努力が、生物学的分析及び生物医学的診断法の分野で、効率的で、敏感で、精密な小型の自動検出技術の開発に捧げられてきた。マイクロ総合分析システム(μTAS)の概念は、2990年代の初期に提案された。単に1つのμTASで、完全な化学分析工程として、サンプル準備、化学反応、検体の分離及び精製ならびに検出及び分析が可能となる。このように、μTASは、より便利で、より簡単な分析プロセスの必要性を満たしている。
【0004】
μTASの小型化は、運び易いという点で、有益である。μTASにマイクロ電子部品を使用することは、電力消費を下げて、コストを下げる。さらに、μTASは、少量のサンプル又は試薬しか要求しないので、試薬の経費を減少させる。さらに、自動的な化学プロセスの手順の間の、流量、材料の量及び各プロセスでの一連の反応は、分析結果に強い影響を及ぼす。μTASは、最小化されたバッチ化学処理と見なされている。μTASの主要な研究の焦点は、マイクロ流体技術である。前記マイクロ流体技術は、バルブ調整、混合、計量、分割及び分離などの種々の流体機能を含んでいる。
【0005】
微少流体は、機械的マイクロポンプ及び非機械的マイクロポンプを含めて、様々な方法で動かされる。前者は、ぜん動ポンプ、超音波ポンプ及び遠心ポンプを含む。後者は、電気、磁気及び重力の力によって汲み上げるものを含む。遠心ポンプの場合、それが、マイクロ流体ディスクシステムと称されるディスクタイプのマイクロ分析システムで使用される。前記マイクロ流体ディスクシステムは、遠心力によって流体の流れを作り、受動的な毛細管バルブを使って、流体の流れを制御する。受動的な毛細管バルブの根本のメカニズムは、毛細管圧力差すなわちラプラス圧力差が流体の流れを妨げることにある。したがって、流体の流れは、遠心力と毛細管圧との間のバランスを操作することによって、調節することができる。毛細管圧力に打ちかつ遠心力に対応する臨界回転数は、噴出回転数と呼ばれている。
【0006】
マイクロ流体システムの毛細管バルブについては、現在、多数の関連技術が公開されている。米国特許第6,143,248号明細書は、毛細管圧力が毛細管バルブ及びリザーバの配置、幾何学形状及び表面特性に関連すること、及び流体の量的変化は関連の法則に従うことを開示する。2001年、アンダーソン(Anderson)等は、マイクロチャネルの一部に疎水性の表面を形成するために、誘導結合型プラズマ(ICP)により、疎水性材料でマイクロチャネルの一部を改質した。表面特性の変化は、疎水性バルブと呼ばれるバルブ効果を引き起こす。2003年、フェング(Feng)等は、疎水性バルブが、また、前記バルブ効果を生じさせるために、チャンネルの幾何学を変更することにより、自己組織化単分子膜(SAMs)によって疎水性バルブを作ることができることを開示した。2004年、チョー(Cho)等は、毛細管バルブに環状チャンネルと長方形チャンネルを採用し、開口部の異なる角度(60°、90°及び120°)を有する毛細管バルブのモデルを提案し、予測された噴出回転数を実験結果で確認した。2006年、クワング(Kwang)等は、毛細管バルブで調整することがマイクロ流体管理プロセスに有益であることを示唆し、さらに、マイクロチャネルの幾何学及び表面特性の変化で、毛細管バルブにより、流体の流れを制御し得ることを示した。
【0007】
しかしながら、前述した参照は、幾何学の変化及び表面改質で流体の流れを調整すること及び噴出回転数を予測する方法を提案するに過ぎない。それらのいずれも、マイクロ流体システムでの毛細管バルブの位置、配置又は姿勢の関係、特に、流体の流れ制御で、マイクロ流体ディスクの中心に近位の位置の意義を明らかにしていない。さらに、より多くのマイクロチャネルを満たすことができるので、現在のほとんどすべてのマイクロチャネルは、マイクロ流体ディスクのより大きな半径方向位置に配置されている。それらのデザイン下では、前記バルブの噴出回転数は、通常2000RPMより低い。様々な半径方向距離を有する位置の毛細管バルブの噴出回転数が2000RPMより低く制限されるので、それらは、相互に重複する傾向がある。したがって、現在の技術による噴出バルブは、正しい順序で流体を効果的に放出することができない欠点を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第6,143,248号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前記欠点を克服すべく、本発明の目的は、前記した問題を緩和もしくは除去し得るマイクロ流体素子を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るマイクロ流体素子は、本体、複数のチャンネル、複数のリザーバ、複数の毛細管バルブ及びカバーを含む。
【0011】
前記本体は、円形ディスクの形状であり、上面、中心及び円周を有する。リザーバが前記本体の前記上面に形成されている。チャンネルが前記本体の前記上面に形成されており、各チャンネルは対応する前記リザーバにつながる。前記チャンネルは、主チャンネルと、少なくとも1つの枝チャンネルとを含む。前記主チャンネルは、前記本体の前記上面上に形成されている。前記中心から前記本体の前記円周へ向けて伸長する。
各毛細管バルブが、対応する前記チャンネルに、前記毛細管バルブの噴出回転数間の差が増大するように、前記本体の前記中心に実質的に近い距離で設置されている。前記カバーは、前記本体の前記上面に設置され、前記リザーバに対応する複数の開口を有する。
【0012】
好ましくは、前記各毛細管バルブの前記本体の前記中心への距離は、4cmより短い。
【0013】
好ましくは、前記主チャンネルは、第1の端部及び第2の端部を有する。前記第2の端部は、前記第1の端部の反対側に、また該第1の端部と前記本体の前記円周との間にある。前記複数の枝チャンネルは、前記主チャンネルにつながる。前記複数のリザーバは、第1のリザーバと、第2のリザーバとを含む。前記第1のリザーバは、前記主チャンネルの前記第1の端部につながる。前記第2のリザーバは、前記第1のリザーバと前記本体の前記円周との間に形成されており、前記枝チャンネルにつながり、前記主チャンネルと連通する。前記毛細管バルブは、第1の毛細管バルブと、第2の毛細管バルブとを含む。前記第1の毛細管バルブは、前記第1のリザーバと前記主チャンネルとの間に設置されている。前記第2の毛細管バルブは、前記枝チャンネルと前記第2のリザーバとの間に設置され、該両者を接続する。
【0014】
好ましくは、前記第1の毛細管バルブの幅(内径)は、前記第2の毛細管バルブの幅(外径)より小さく、これにより、それらの噴出回転数間の差は増大する。
【0015】
好ましくは、前記配置は、第3のリザーバ、第4のリザーバ及び第5のリザーバを含む複数のリザーバを有する。前記第5のリザーバは、前記主チャンネルの前記第2の端部につながる。前記第3のリザーバは、前記第2のリザーバと前記第4のリザーバとの間に設置され、対応する前記枝チャンネルを経て前記主チャンネルにつながる。前記第4のリザーバは、前記第3のリザーバと前記第5のリザーバとの間に設置され、他の対応する前記枝チャンネルを経て前記主チャンネルにつながる。前記複数の毛細管バルブは、さらに第3の毛細管バルブと、第4の毛細管バルブとを含む。前記第3の毛細管バルブは、対応する前記枝チャンネルに、また前記第3のリザーバと前記主チャンネルとの間に設置される。前記第4の毛細管バルブは、前記第4のリザーバと前記主チャンネルとの間で対応する前記枝チャンネルに設置される。
【0016】
好ましくは、前記第2の毛細管バルブの幅は、前記第3の毛細管バルブの幅より小さく、これにより、それらの噴出回転数間の差は増大する。
【0017】
好ましくは、前記第3の毛細管バルブの幅は、前記第4の毛細管バルブの幅より小さく、これにより、それらの噴出回転数間の差は増大する。
【0018】
好ましくは、前記第1の毛細管バルブは、疎水性に改質された内面を有する。
【0019】
好ましくは、前記第4の毛細管バルブ(周縁近くの毛細管バルブ)を除き、前記第1の毛細管バルブ、第2の毛細管バルブ及び第3の毛細管バルブのそれぞれは、疎水性に改質された内面を有する。
【0020】
さらに好ましくは、本発明に係るマイクロ流体素子は、追加の枝チャンネルを含む。前記追加の枝チャンネルは、前記主チャンネルと前記第1のリザーバとの間に設置され、遠位端部及び近位端部を有する。前記遠位端部は、前記第1の毛細管バルブと前記主チャンネルとにつながる。前記近位端部は、前記遠位端部と前記主チャンネルとを接続し、前記主チャンネルと非平行である。さらに好ましくは、前記追加の枝チャンネルの前記近位端部は、遠心方向に垂直である。
【0021】
好ましくは、前記第5のリザーバは、検出室又は廃棄物室である。
【0022】
好ましくは、前記カバーは、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル樹脂、ポリスチレン及び環状オレフィン共重合体から成るグループから選ばれた材料で作られる。
【0023】
前述した説明に基づき、本発明に係る前記毛細管バルブの半径方向距離は4cmより小さい。従来のマイクロ流体技術に比較して、前記毛細管バルブは、前記本体の前記中心に、より近い。本発明に係る前記マイクロ流体素子は、流体を連続して放出する点で有益であり得る。前記毛細管バルブの前記バルブ幅、姿勢及び表面改質によって調節することができるので、本発明に係る前記マイクロ流体素子の流体の連続した放出の優れた効果は、化学の分析プロセスへの種々の応用に有益である。
【0024】
発明の他の目的、利点及び斬新な特徴は、添付図面に関連する以下の詳細な説明から、より明白になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】毛細管バルブ内の毛細管圧力と遠心力とを説明する図面であり、
【図2】本発明に係るマイクロ流体素子の本体の平面図であり、
【図3】本発明に係るマイクロ流体素子の本体の分解斜視図であり、
【図4】図3の主チャンネル、枝チャンネル及びリザーバの組み合わせの平面図であり、
【図5】毛細管バルブの半径方向距離と噴出回転数との関係を示す図面であり、
【図6A】本発明に係るマイクロ流体素子の本体の第2の具体例の平面図であり、
【図6B】図6Aのマイクロ流体素子の一部を拡大した平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明は、低容量の流体を動かす主な推進力の根拠を遠心法に置く。マイクロチャンネル内を毛細管バルブへ向けて流体が流れる場合、表面張力と、液体、気体及び固体の各相間での界面自由エネルギー変化とに起因する毛細管圧力差は、流れの振る舞いを変化させ、またその流れを停止させる。そのため、受動的な毛細管バルブ調整は、その配置、幾何学形状及び表面改質によって変更することができる。
【0027】
図1を参照するに、本発明に係る毛細管バルブは、遠心力によって引き起こされた圧力(ΔPc)と、毛細管圧力(ΔPc)とのバランスによって決まる噴出回転数を有する。前記毛細管圧力が一定の場合、前記遠心力によって引き起こされた圧力は、噴出回転数に影響する重要なファクタになる。前記遠心力によって引き起こされた圧力は、下式によって決まる。

【0028】
毛細管圧力は、下式によって決まる。




【0029】
プラットホームの回転数を変更することにより、マイクロ流体ディスクの中心から異なる半径距離に置かれたリザーバで遠心力によって引き起こされた圧力を調整することができる。前記プラットホームの回転数が予め決められたリザーバの噴出回転数よりも高くなると、該予め決められたリザーバ内流体サンプルは、遠心力に動かされ、前記毛細管バルブを流れ過ぎるように前記毛細管バルブの毛細管圧力に打ち勝つ。
【0030】
図2及び図3を参照するに、本発明は、本体10と、主チャンネル20と、複数の枝チャンネル21と、複数のリザーバ30と、複数の毛細管バルブ40と、カバー50とを含むマイクロ流体素子を提供する。
【0031】
本体10は、円形のディスク形状であり、ポリカーボネート(PC)、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)、ポリスチレン(PS)及び環状オレフィン共重合体(COC)及びそれらの代用材料から成るグループから選ばれた材料で作られる。本体10は、上面、中心及び円周を有する。
【0032】
主チャンネル20及び枝チャンネル21は、本体10の上面に形成されている。 主チャンネル20は、本体10の中心から本体10の円周の方向へ向けて伸長し、第1の端部及び第2の端部を有する。前記第2の端部は、前記第1の端部の反対側にあり、該第1の端部と本体10の前記円周との間に置かれている。各枝チャンネル21は、主チャンネル20につながり、又該主チャンネルに連通する。
【0033】
各リザーバ30は、本体10の前記上面に形成されている。リザーバ30の数は、分析の要件によって決められる。本発明の好適な具体例では、図4を参照するに、本発明に係る前記マイクロ流体素子は、第1のリザーバ31、第2のリザーバ32、第3のリザーバ33、第4のリザーバ34及び第5のリザーバ35を含む5個のリザーバを備える。第1のリザーバ31は、主チャンネル20の前記第1の端部につながる。第1のリザーバ31の半径方向の距離は、すべての前記リザーバの中で最も短い。第1のリザーバ31は、前記リザーバのうち、本体10の前記中心に最も近い。本書で使用されている「半径方向距離」は、本体10の前記中心から対象までの距離をいう。第5のリザーバ35は、主チャンネル20の前記第2の端部につながり、該第2の端部に連通する。第2のリザーバ32、第3のリザーバ33及び第4のリザーバ34は、第1のリザーバ31と第5のリザーバ35との間に位置しており、対応する枝チャンネル21にそれぞれつながり、また連通する。さらに図2を参照するに、第5のリザーバ35は、混合室351及び廃棄物室352を含む。混合室351は、主チャンネル20から流出する流体を収集するために、主チャンネル20の前記第2の端部につながる。廃棄物室352は、混合室351から流出する流体を収集するために、混合室351につながる。
【0034】
主チャンネル20、枝チャンネル21及びリザーバ31、32、33、34、35は、機械加工、鋳造又はホトリソグラフィ及びそれらの代用の処理により、本体10の前記上面に形成される。
【0035】
各毛細管バルブ40は、対応する主チャンネル20又は対応する枝チャンネル21に設置されている。毛細管バルブの数及び配置は、分析又は製造の要件によって決められる。本発明に係る好適な具体例では、さらに図4を参照するに、前記マイクロ流体素子は、第1の毛細管バルブ41、第2の毛細管バルブ42、第3の毛細管バルブ43及び第4の毛細管バルブ44を含む4つの毛細管バルブ40を備える。第1の毛細管バルブ41は、主チャンネル20に設置され、該主チャンネルに連通する。第2の毛細管バルブ42、第3の毛細管バルブ43及び第4の毛細管バルブ44は、それぞれ対応する枝チャンネル21に設置され、該枝チャンネルに連通する。第1の毛細管バルブ41、第2の毛細管バルブ42、第3の毛細管バルブ43及び第4の毛細管バルブ44の幾何学的配置の変更やそれらの内面を改質することにより、流体の流れに対する抵抗が生じる。取り扱う流体のほとんどが水溶液であるので、第1、第2及び第3の毛細管バルブ41、42及び43の内面は、疎水性であり、噴出回転数の範囲を拡大できるように、第4(又は最後)の毛細管バルブ44に疎水性の処理をするべきではない。さらに、バルブ幅は、前記第1(内方)のバルブ41から第4(外方)のバルブ44へ向けて内方のバルブほど小さな幅を有する。
【0036】
さらに図4を参照するに、第1の毛細管バルブ41、第2の毛細管バルブ42、第3の毛細管バルブ43及び第4の毛細管バルブ44の半径方向距離は、それぞれr、r、r及びrである。好適な具体例では、r、r、r及びr
は4cmより短い。
【0037】
図3を参照するに、カバー50は、本体10の前記上面に設置され、複数の開口51を有する。開口51は、それぞれ第1のリザーバ31、第2のリザーバ32、第3のリザーバ33及び第4のリザーバ34に対応する。カバー50は、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル樹脂、ポリスチレン、環状オレフィン共重合体及びそれらの代用の物質で作られる。
【0038】
他の好適な具体例では、図7に示されているように、本発明に係るマイクロ流体素子は、回転プラットホーム60への設置に適する。回転プラットホーム60は、複数の柱61と、フランジ62とを備える。フランジ62は、回転プラットホーム60の前記中心に向けて伸びる複数の突起部621を有する。本体10A は、さらに、複数の位置決め開口11Aと、複数のノッチ12Aとを有する。位置決め開口11Aは、それぞれ本体10Aの上面及び下面に貫通し、柱61に対応して該柱の回りに置かれる。ノッチ12Aは、前記本体の縁部にそれぞれ形成され、突起部621に対応して該突起部に係合する。カバー50Aは、さらに、複数の位置決め穴52A及び複数の凹所53Aを有する。位置決め穴52Aは、それぞれカバー50Aの上面及び下面を貫通し、柱61に対応して該柱の回りに置かれる。凹所53Aは、それぞれカバー50Aの縁部に形成され、回転プラットホーム60のフランジ62の突起部621に対応して該突起部に係合する。前記構造体では、回転プラットホーム60の回転時、本体10A及びカバー50Aを回転プラットホーム60に確実に取り付けることができ、また突起部621とノッチ12A及び凹所53Aとの間、柱61と位置決め開口11A及び位置決め穴52Aとの間の係合を介して互いの位置合わせを容易になすことができる。
【例】
【0039】
1.毛細管バルブの半径方向距離と、噴出回転数との間の評価関係
【0040】
毛細管バルブ40の1つは、0.5cmの半径方向距離で形成され、その他のバルブは、本体10上に0.4cmの間隔で形成される。各毛細管バルブ40のバルブ幅は200μmである。各毛細管バルブの噴出回転数が決めらる。前記毛細管バルブの半径方向距離と噴出回転数との間の関係が、図5に示されている。0と1.5cmとの間の比較的短い半径方向距離の範囲内では、各毛細管バルブ40の噴出回転数は、半径方向距離につれて大きく異なる。他方、2.0と4.5cmとの間のより長い半径方向距離の範囲内では、毛細管バルブ40の噴出回転数は、互いに僅かしか異ならず、重なり合いさえする。
【0041】
2.毛細管バルブの噴出回転数と異なる半径方向距離との比較
【0042】
表1は第1の毛細管バルブ41、第2の毛細管バルブ42、第3の毛細管バルブ43及び第4の毛細管バルブ44の半径方向距離及びバルブ幅を示す。主チャンネル20と枝チャンネル21の深さは、すべて200μmである。毛細管バルブ41、42、43、44の内面は、疎水性の試薬によって改質され、その後、開口51を経て対応するリザーバ31、32、33、34に1.0から1.4μlの液体が注入される。前記マイクロ流体素子が回転する時、回転数は、100RPM/秒の角加速度で始まり、500RPMになると、1000RPM/秒の角加速度で30秒について50RPMの増加が続く。液体が毛細管バルブ41、42、43、44に噴出し、チャンネル20、21内を流れる時点で検出された回転速度は、先に述べた毛細管状のバルブの噴出回転数として決定される。本発明に開示された配置(中心の近くにバルブを配置した状態)と、従来のバルブ配置(中心から離れてバルブを置いた状態)と比較するに、表1に示されているように、同様なバルブ配置に関し、第1の毛細管バルブ41の噴出回転数が約2.5倍に増大し、第1の毛細管バルブ41と第2の毛細管バルブ42の噴出回転数の差が4倍に増大する。同様な結果が毛細管バルブ42、43、44の残りから観察され、より小さな半径方向距離での毛細管の噴出回転数は、より大きい半径方向距離でのそれに比較して、大きく増加することを示している。
【0043】
【表1】

【0044】
従来のマイクロ流体素子の毛細管バルブについては、半径方向距離は、通常1.5cmから6cmの間で設計される。その理由は、ディスクが射出成形で製造され、中心が射出点として使われており、取り除く必要があるため(CD製造など)、あるいは回転軸にディスクを設置するために中心が固定点として通常使われるためである。しかしながら、遠心力の変化割合は、半径方向距離がより大きくなる位置では、ほとんど異ならない。例えば、4cmと5cmの半径方向距離の毛細管バルブ間の遠心力の比率は4:5である。それらの間の変化割合が小さいため、5cmの半径方向距離の毛細管バルブ内の流体が噴出するとき、4cmの半径方向距離の毛細管バルブ内の流体は、また急に噴出するかもしれない。しかし、1cmの同じ間隔であれば、1cmと2cmの半径方向距離の毛細管バルブの間の遠心力の比率は1:2である。2cmの半径方向距離の毛細管バルブ内の流体が噴出した時、1cmの半径方向距離の毛細管バルブ内の流体は噴出しないかもしれない。したがって、リザーバから前記毛細管バルブを通ってチャンネル内に流体を連続して放出するために、毛細管バルブ間での噴出回転数の差は十分に大きくするべきである。
【0045】
3.毛細管バルブの内面のバルブ幅、姿勢、特性及び流体の連続放出の関係の評価
【0046】
図6A及び6Bを参照するに、本発明に係るマイクロ流体素子の好適な具体例が実施されており、該具体例では、枝チャンネル21Aが主チャンネル20Aと第1のリザーバ31Aとの間に設置されており、枝チャンネル21Aは遠位端部211と、近位端部212とを有する。遠位端部211は第1の毛細管バルブ41Aにつながっている。近位端部212は前記遠位端部及び主チャンネル20Aにつながっている。前記近位端部は主チャンネル20Aと非平行である。より具体的には、前記近位端部は主チャンネル20A(遠心方向)に垂直である。第1の毛細管バルブ41Aは、近位端部212と遠位端部211との間に設置されている。したがって、第1の毛細管バルブ41Aの噴出回転数はさらに増大する。
【0047】
図6及び表1に示されているように、すべての毛細管バルブ41A、42A、43A、44Aの中で第1の毛細管バルブ41Aのバルブ幅が最も小さく、第2の毛細管バルブ42Aのバルブ幅は、第1の毛細管バルブ41Aのバルブ幅よりも広く、第3の毛細管バルブ43A及び第4の毛細管バルブ44Aに対しても同様である。第4の毛細管バルブ44Aは、本体10Aの中心から最も遠く、すべての毛細管バルブ41A、42A、43A、44Aの中で最も広いバルブ幅を有し、バルブ幅が広ければ広いほど、バルブの噴出回転数はより低い値となる。毛細管バルブ41A、42A、43A、44Aのバルブ幅の適切な調整によって、毛細管バルブ間の噴出回転数の間隔は大きく増大することができる。
【0048】
上記の例によると、2つの隣接した毛細管バルブ間の差は、半径方向距離と共に減少する。したがって、水溶液では、本体10Aの前記中心から遠い毛細管バルブを除いて、本体10Aの前記中心にそれより近い毛細管バルブ41A、42
A、43Aの内面を疎水性に改質することにより、毛細管バルブ間の噴出回転数の差は大きく増大し、疎水性溶液のためにはその逆もまた同様である。
【0049】
前述した説明に基づき、流体の連続放出は、前記バルブの前記半径方向位置、前記毛細管バルブのバルブ幅、姿勢及び表面改質の調整によって最適化される。 したがって、本発明に係るマイクロ流体素子は種々の化学の分析プロセスに有益である。
【0050】
本発明の多数の特徴及び利点が本発明の構造及び機能の詳細と共に述べられたが、開示は説明のために過ぎない。変更は細部にわたって、特に、部品の形状、寸法及び配置の事項について、添付された特許請求の範囲に表現された広義の一般的な意味によって示される充分な範囲で本発明の原理内でなすことができる。
【符号の説明】
【0051】
10、10A 本体
11A 位置決め開口
12A ノッチ
20、20A 主チャンネル
21、21A 枝チャンネル
211 遠位端部
212 近位端部
30(31、31A、32、33、34) リザーバ
351 混合室(検出室)
352 廃棄物室
40(41、41A、42、43、44) 毛細管バルブ
50、50A カバー
51 開口
52A 位置決め穴
53A 凹所
60 プラットホーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面、中心及び円周及び下面を有する円形ディスク形状の本体と、
前記本体の前記上面に形成された複数のリザーバと、
前記本体の前記上面に形成され前記本体の前記中心から前記円周方向へ伸びる主チャンネル及び前記本体の前記上面に形成され前記リザーバにつながる少なくとも1つの枝チャンネルを含み、前記本体の前記上面に形成された複数のチャンネルと、
複数の毛細管バルブであってそれぞれが対向する前記チャンネルに、前記毛細管バルブの噴出回転数間の差が増大するように、前記本体の前記中心に実質的に近い距離で設置された複数の毛細管バルブと、
前記本体の前記上面に設置され前記リザーバに対応する複数の開口を有するカバーとを含む、マイクロ流体素子。
【請求項2】
前記各毛細管バルブの前記本体の前記中心への距離は、4cmより短い、請求項1に記載のマイクロ流体素子。
【請求項3】
前記主チャンネルは、第1の端部と、該第1の端部と反対側に該第1の端部と前記本体の前記円周との間の第2の端部とを有し、
複数の枝チャンネルは前記主チャンネルにつながり、
前記複数のリザーバは、前記主チャンネルの前記第1の端部につながる第1のリザーバと、該第1のリザーバと前記本体の前記円周との間に形成され1つの前記枝チャンネルにつながりまた前記主チャンネルに連通する第2のリザーバとを含み、
前記毛細管バルブは、前記第1のリザーバと前記主チャンネルの前記第1の端部との間に設置された第1の毛細管バルブと、前記枝チャンネルと前記第2のリザーバとの間に設置され該両者を接続する第2の毛細管バルブとを含む、請求項1に記載のマイクロ流体素子。
【請求項4】
前記第1の毛細管バルブの幅は、前記第2の毛細管バルブの幅より小さく、これにより、その噴出回転数間の差は増大する、請求項3に記載のマイクロ流体素子。
【請求項5】
前記複数のリザーバは、さらに、
前記主チャンネルの前記第2の端部につながる第5のリザーバと、
前記第2のリザーバと前記第5のリザーバとの間に設置され対応する前記枝チャンネルを経て前記主チャンネルにつながる第3のリザーバと、
前記第3のリザーバと前記第5のリザーバとの間に設置され他の対応する前記枝チャンネルを経て前記主チャンネルにつながる第4のリザーバとを含み、
前記複数の毛細管バルブは、さらに、
前記対応する枝チャンネルに、前記第3のリザーバと前記主チャンネルとの間で設置された第3の毛細管バルブと、
前記対応する枝チャンネルに、前記第4のリザーバと前記主チャンネルとの間で設置された第4の毛細管バルブとを含む、請求項3に記載のマイクロ流体素子。
【請求項6】
前記第2の毛細管バルブの幅は、前記第3の毛細管バルブの幅より小さく、これにより、両者の噴出回転数間の差は増大する、請求項5に記載のマイクロ流体素子。
【請求項7】
前記第3の毛細管バルブの幅は、前記第4の毛細管バルブの幅より小さく、これにより、両者の噴出回転数間の差は増大する、請求項6に記載のマイクロ流体素子。
【請求項8】
前記第1の毛細管バルブは、疎水性に改質された内面を有する、請求項4に記載のマイクロ流体素子。
【請求項9】
前記第2の毛細管バルブ、前記第3の毛細管バルブ及び前記第4の毛細管バルブのぞれぞれは、疎水性に改質された内面を有する、請求項6に記載のマイクロ流体素子。
【請求項10】
さらに、前記主チャンネルと前記第1のリザーバとの間に設置された追加の枝チャンネルを含み、該追加の枝チャンネルは、前記第1の毛細管バルブと前記主チャンネルとにつながる遠位端部と、該遠位端部と前記主チャンネルとを接続し、該主チャンネルに非平行な近位端部とを含む、請求項3に記載のマイクロ流体素子。
【請求項11】
さらに、前記主チャンネルと前記第1のリザーバとの間に設置された追加の枝チャンネルを含み、該追加の枝チャンネルは、前記第1の毛細管バルブと前記主チャンネルとにつながる遠位端部と、該遠位端部と前記主チャンネルとを接続し、該主チャンネルに非平行な近位端部とを含む、請求項8に記載のマイクロ流体素子。
【請求項12】
さらに、前記主チャンネルと前記第1のリザーバとの間に設置された追加の枝チャンネルを含み、該追加の枝チャンネルは、前記第1の毛細管バルブと前記主チャンネルとにつながる遠位端部と、該遠位端部と前記主チャンネルとを接続し、該主チャンネルに非平行な近位端部とを含む、請求項9に記載のマイクロ流体素子。
【請求項13】
前記近位端部は、前記本体の半径方向に垂直である、請求項10に記載のマイクロ流体素子。
【請求項14】
前記近位端部は、前記本体の半径方向に垂直である、請求項11に記載のマイクロ流体素子。
【請求項15】
前記第5のリザーバは、検出室又は廃棄物室である、請求項6に記載のマイクロ流体素子。
【請求項16】
前記第5のリザーバは、検出室又は廃棄物室である、請求項7に記載のマイクロ流体素子。
【請求項17】
前記第5のリザーバは、検出室又は廃棄物室である、請求項8に記載のマイクロ流体素子。
【請求項18】
前記カバーは、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル樹脂、ポリスチレン及び環状オレフィン共重合体から成るグループから選ばれた材料で作られる、請求項1に記載のマイクロ流体素子。
【請求項19】
前記カバーは、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル樹脂、ポリスチレン及び環状オレフィン共重合体から成るグループから選ばれた材料で作られる、請求項4に記載のマイクロ流体素子。
【請求項20】
前記本体は、さらに、該本体の前記上面及び下面を貫通する複数の位置決め開口と、前記本体の縁部に形成された複数のノッチとを備え、
前記カバーは、さらに、前記カバーの上面及び下面を貫通し前記本体の前記位置決め開口に対応する複数の位置決め穴と、前記カバーの縁部に形成され前記本体の前記ノッチに対応する複数の凹所とを備える、請求項1に記載のマイクロ流体素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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