説明

マイクロ流路形成体を利用したマイクロビーズアレイ用チップ、マイクロビーズアレイ及びこれらを用いた被検物質を検出する方法。

【課題】マイクロビーズアレイ及びマイクロビーズアレイ用チップの提供。
【解決手段】透明な材質からなる表面が平らな基板(1)、該基板と協働してマイクロビーズを含む溶液を流すためのマイクロ流路を形成するように表面が前記基板の表面に密着して設けられる透明な材質からなるマイクロ流路形成体(2)、並行する複数の直線部分を有する該マイクロ流路形成体の表面に形成された溝(3)、少なくとも一つのマイクロ流路の下流部において前記溶液が流れる隙間を有するように該溝の内部に突出して設けられ先頭のマイクロビーズの移動を阻止して後続のマイクロビーズを複数個整列して貯留させるための突起部(4)、前記流路の上流部に設けられ前記基板及び前記マイクロ流路形成体へ溶液を注入する注入口(5)、前記流路の下流部に設けられ前記基板及び前記マイクロ流路形成体から溶液を排出する排出口(6)を備えたマイクロビーズアレイ用チップ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上にマイクロ流路形成体が貼着されて成るマイクロビーズアレイ用チップ、該チップを使用したマイクロビーズアレイ、及びこれらを用いた被検物質を検出する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
これまでに、試料中の被検物質、例えば、DNA及びRNA等の核酸分子並びに蛋白質等の生体分子を分析測定する装置として、マイクロビーズに被検物質と特異的に結合する各種プローブ分子を表面に固定し、このようなマイクロビーズを1本の直線状のキャピラリ内に適当な順序で配列したマイクロビーズアレイが提案されている(非特許文献1及び特許文献1)。更に、ガラスキャピラリに代えて、硬質樹脂から成るチップを使用してマイクロビーズアレイも開発されている(特許文献2)。
【0003】
通常、このようなマイクロビーズアレイにおいては、複数種類のプローブ分子が固定されたマイクロビーズが適当な流路内に所定の順で挿入され1列に配列されている。分析に際しては、測定対象となる生体分子に蛍光物質などの検出可能物質を結合・付加した上で、かかる生体分子を含む溶液をこのようなマイクロビーズが配列されている流路に注入することによって、マイクロビーズ表面上に固定されているプローブ分子と分析測定対象の生体分子の間で反応が起こり、該プローブに特異的に結合した生体分子はマイクロビーズ上に固定化され、その結果、測定対象の生体分子を顕微鏡観察によって分析することが可能となる。
【非特許文献1】Yoshinobu, K., et al., Nucleic Acids Research, 2002, Vol.30, No.16 e87
【特許文献1】特開2000−346842号公報
【特許文献2】特開2005−201849号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような従来技術では、マイクロビーズが1本の直線状のキャピラリ内に配列されるような構造なので、異なる種類のプローブを固定したマイクロビーズを交互に配列するためには、光ピンセットなどで、1個1個マイクロビーズを摘んで所定の位置へ配置しなければならず、手作業に近く作業効率が著しく悪い欠点がある。機械によって自動的にマイクロビーズを配置しようとしても、マイクロビーズの直径が5μ程度の場合、機械化が困難であり、光ピンセットを用いて自動的に配置する装置は存在せず、製造したとしても極めて高価になり、手作業で作製する場合よりはるかに高い金額となり実用的でない。
【0005】
また、1本の直線状のキャピラリ内に異なるプローブを固定したマイクロビーズを配列した場合、蛍光顕微鏡の視野下に、観察が必要な部位の一部分しか見えず、キャピラリを相対的に移動するなどしてスキャニングしなければ全体を見ることができない欠点が生じる。
また、スキャニングして全体を観察するようにすると、移動による時間差が生じ、リアルタイムでの観察が出来ないという問題も生じる。
従来の技術によっては、花粉症などのアレルギー検査のための抗体検出は、検出までに数時間から一晩の時間を必要としている。
【0006】
本発明は、上記の従来技術の問題点を解決するとともに、試料中の被検物質を分析するため、各種の異なるプローブをそれぞれ固定したマイクロオーダーのマイクロビーズを顕微鏡の同一視野下で、リアルタイムで比較観察できるようにしたものである。しかも、マイクロビーズアレイ用チップおよびマイクロビーズアレイそのものも安価に作成できようにしたものである。
【0007】
すなわち、本発明の目的は、モールド成型で容易に且つ安価に製造することが出来るマイクロビーズアレイ用チップ、マイクロビーズアレイ、及びこれらを用いた被検物質を検出する方法を提供するものである。また、マイクロビーズアレイは、非常に小さな反応領域を有し、チップサイズの微小化、試料量の節約、一般的な顕微鏡プラットフォームにも対応可能であるマイクロビーズアレイ等を提供することである。
また、本発明の他の目的は、花粉症におけるスギ花粉特異的IgEを検出可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明は以下の各態様に係るものである。
[態様1]透明な材質からなる表面が平らな基板(1)と、該基板と協働してマイクロビーズを含む溶液を流すためのマイクロ流路を形成するように、表面が前記基板の表面に密着して設けられる透明な材質からなるマイクロ流路形成体(2)と、並行で隣接した直線部分が複数あるように該マイクロ流路形成体の表面に形成された溝(3)と、少なくとも一つのマイクロ流路の下流部において、前記溶液が流れる隙間を有するように該溝の内部に突出して設けられ、先頭のマイクロビーズの移動を阻止して後続のマイクロビーズを複数個整列して貯留させるための突起部(4)と、前記流路の上流部に設けられ前記基板及び前記マイクロ流路形成体へ溶液を注入する注入口(5)と、前記流路の下流部に設けられ前記基板及び前記マイクロ流路形成体から溶液を排出する排出口(6)とを備えたマイクロビーズアレイ用チップ。
[態様2]該マイクロ流路形成体の片面に形成された溝が注入口から排出口に到るまで一本の溝から成り、該一本の溝が中間領域において蛇行して前記複数の直線部分を有するように形成されていることを特徴とする、態様1記載のビーズアレイ用チップ。
[態様3]マイクロ流路形成体が一辺10〜50mmの略四角状で、厚さが2〜5mmであり、マイクロ流路が幅5〜100μm、高さ5〜100μm、及び長さ10〜100μmである、態様1〜2のいずれか一項に記載のマイクロビーズアレイ用チップ。
[態様4]マイクロ流路形成体が樹脂フィルムから成り、材質が、ポリジメチルシロキサン、ポリメチルメタクリレート、又は、シクロオレフィンポリマーから選択される合成樹脂である、態様1〜3のいずれか一項に記載のマイクロビーズアレイ用チップ。
[態様5]基板がガラス、石英、プラスチック、又はポリジメチルシロキサンから成る素材である、態様1〜4のいずれか一項に記載のマイクロビーズアレイ用チップ。
[態様6]検査対象と結合可能なプローブが固定されたマイクロビーズと、検査対象と結合しないプローブが固定されたマイクロビーズとが、態様1〜5のいずれか一項に記載のマイクロビーズアレイ用チップのマイクロ流路の直線部分に隣り合って配列されることを特徴とするマイクロビーズアレイ。
[態様7]マイクロビーズの直径が4〜10μmであり、マイクロビーズの総数が10〜250である、態様6記載のマイクロビーズアレイ。
[態様8]プローブが核酸分子である、態様6〜7のいずれか一項に記載のマイクロビーズアレイ。
[態様9]プローブが抗体分子である、態様6〜7のいずれか一項に記載のマイクロビーズアレイ。
[態様10]態様1〜5のいずれか一項に記載のマイクロビーズアレイ用チップの注入口からプローブが固定されたビーズを含む溶液を送入し、排出口から溶液を排出することによって、マイクロ流路内に該ビーズを配列させることを含む、態様6〜9のいずれか一項に記載のビーズアレイの作製方法。
[態様11]マイクロビーズアレイ用チップの注入口から検査対象と結合可能なプローブが固定された第1のマイクロビーズ複数個含む溶液を注入し、排出口から溶液を排出させながら、所定マイクロ流路の直線部分に前記第1のマイクロビーズを流し込んで前記突出部で先頭のマイクロビーズを停止させて、後続のマイクロビーズを複数個一列に配列させる段階と、
前記マイクロ流路の直線部分に隣り合ったマイクロビーズ直線部分に、前記第1のマイクロビーズとは異なるプローブが固定された第2のマイクロビーズを複数個含む溶液を注入口から注入し、前記第1のマイクロビーズ列に隣り合う所定マイクロ流路直線部分に、前記第2のマイクロビーズを複数個一列に配列させる段階を少なくとも1度行うことを特徴とする、態様10記載のマイクロビーズアレイの作製方法。
[態様12]マイクロシリンジポンプを用いて溶液を送入し、排出口から溶液を吸引することによって排出する、態様10又は11記載のマイクロビーズアレイ作製方法。
[態様13]光ピンセットを用いて、ジャンクションにおいて一つのマイクロ流路を流れてきたマイクロビーズを該流路と連通する別のマイクロ流路に導入する操作を含む、態様10又は11記載のマイクロビーズアレイ作製方法。
[態様14]態様6〜9のいずれか一項に記載のマイクロビーズアレイに形成されたマイクロ流路に試料溶液を導入し、ビーズに固定化されたプローブと被検物質との反応に基づき該被検物質を検出する方法。
[態様15]花粉症におけるスギ花粉特異的IgEを検出する態様14記載の方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によるマイクロビーズアレイ用チップは、マイクロビーズを含む溶液を流すためのマイクロ流路を形成するように、基板の表面に密着して設けられる透明な材質からなるマイクロ流路形成体の表面に、並行で隣接した直線部分が複数あるように溝が形成され、このマイクロ流路の下流部には溶液が流れ出る隙間を有するように溝の内部へ突出した突起部が設けられている。
【0010】
本発明によるマイクロビーズアレイ用チップは、このように形成されているので、プローブが固定されたマイクロビーズを含む測定対象溶液が、マイクロ流路の上流部に設けられた注入口からマイクロ流路内へ注入されると、マイクロビーズと溶液とはマイクロ流路内を流れ、先頭のマイクロビーズは、突起部で進行を遮られて停止する。その次のマイクロビーズも停止、というように、つぎつぎと連なって後続のマイクロビーズがマイクロ流路内に整列され、残った溶液の方は、溝内に突出した突起部と溝の内壁面との隙間から流れ、排出口から外部へ排出され、プローブが固定されたマイクロビーズと測定対象の溶液とをマイクロ流路内に流し込む場合、マイクロ流路の同じ直線部分の列内には、同じプローブが固定されたマイクロビーズが配置されるように溶液と一緒に連続して流し込まれる。この流し込み動作に続いて、この直線部分の隣りの列に、異なるプローブが固定されたマイクロビーズを測定対象溶液と共に流し込まれるという作業が繰り返し行われ、本発明によるマイクロビーズアレイが作られる。
【0011】
このようにして、プローブが固定されたマイクロビーズを含む溶液をマイクロビーズアレイ用チップの注入口から次々と流すという簡単な作業で、列毎に異なる種類のプローブが固定されたマイクロビーズを、短時間で蛍光顕微鏡の視野下(視野領域内)に複数本並列に整列させることが出来るので、蛍光顕微鏡の視野下で測定対象溶液をリアルタイムで複数列同時に観測できる。
【0012】
また、マイクロ流路形成体の片面に形成された溝が、注入口から排出口に到るまで一本の溝で構成され、この一本の溝が中間領域において蛇行して直線部分が複数有るように形成した場合には、直線部分のマイクロビーズの配置の切り替え動作を、マイクロビーズと溶液との流し込み時間、速度を制御するだけで済み、光ピンセットなどによるマイクロ流路内のコントロールが不要となる利点がある。
【0013】
マイクロ流路形成体、特に、PDMS等の樹脂フィルムが貼着されて成る本発明のマイクロビーズアレイ用チップは、様々な種類の素材からなる基板に吸着することが出来る、溝及び突起部を有するマイクロ構造体である本発明のマイクロビーズアレイ用チップはモールド成型で容易に且つ安価に製造することが出来る。
【0014】
本発明のマイクロビーズアレイは、マイクロシリンジポンプ等を用いてマイクロビーズアレイ用チップの注入口からプローブが固定されたマイクロビーズを含む溶液の注入の仕方を制御することで、排出口から溶液を排出することによって、マイクロ流路内にマイクロビーズを配列させることによって容易に作製することが出来る。
【0015】
更に、本発明のマイクロビーズアレイでは5μm程度の非常に小さいマイクロビーズを使用することが出来るので、反応領域を微小化することが可能となる。その結果、チップサイズの微小化、試料量の節約、顕微鏡プラットフォームに対応可能であり、又、光ピンセットによるマイクロビーズの操作も1個1個行う必要がなくなり、操作が楽になった。物質との反応が短時間で終了し、更に、蛍光測定におけるS/N 比の向上等が達成される。更に、カバーガラス又は石英ガラスを基板として使用することによって、全反射照明での検出が可能となる。
【0016】
又、実施例にあるように、マイクロビーズ固定用のマイクロ流路の高さ(深さ)に近い直径を有するマイクロビーズを使用することによってマイクロビーズとマイクロ流路の隙間が小さくなり、一緒に照明される液相(試料溶液)中の分子数が物理的に減少する結果、全反射照明と同様の効果が得られる。従って、このような場合には、マイクロビーズ(プローブ)に結合しなかった被検物質をマイクロ流路から洗浄等によって除去しなくても、プローブに結合した被検物質からの蛍光強度を実質的に測定することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明のマイクロビーズアレイ用チップにおいて、プローブが固定されたマイクロビーズはマイクロ流路内に注入され、その内の適当な中間領域に複数本直線部分が配列される。その結果、マイクロビーズアレイが形成される。この為に、少なくとも一つのマイクロ流路の下流部において、前記溶液が流れる隙間を有するように、マイクロ流路形成体の片面の表面に形成された溝の内部に突出して突起部〔図1(4)〕が設けられ、それによって形成されたダム構造によって、先頭のマイクロビーズの移動を阻止して後続のマイクロビーズが連なって複数個整列して貯留させることが出来る。
【0018】
更に、基板面に貼着されるマイクロ流路形成体に設けられた溝(マイクロ流路)の上流部及び下流部にあたる位置には、溶液の注入口〔図1(5)〕及び排出口〔図1(6)〕として機能する貫通孔が夫々設けられており、それらを介してマイクロビーズと、測定対象の被検物質等を含む溶液とをマイクロ流路内に流すことが出来る。このような貫通孔はマイクロ流路の構成に応じて、それぞれ、複数個設ける〔図1(a)〕ことも可能である。このような構造を有するマイクロ流路内に配置されて成るマイクロビーズアレイの概略を図1に示す。
【0019】
マイクロビーズアレイ用チップを構成するマイクロ流路形成体の大きさ及び形状は、使用目的及び基板の大きさ等を考慮してと当業者が適宜決めることができ、通常、一辺10〜50mmの略四角状で、厚さが2〜5mm、例えば、20mmx20mm、厚さ2mmである。
【0020】
又、マイクロビーズ配列用のマイクロ流路の形状・大きさ等も使用目的等を考慮して適宜決めることが出来るが、マイクロビーズの直径よりは多少大きくする必要がある。従って、通常、マイクロ流路形成体の片面に設けられた溝の幅5〜100μm、高さ(深さ)5〜100μm、例えば、幅及び高さ共に6.5μm(直径5μmのマイクロビーズ使用)とすることができる。
【0021】
又、溝に設けられた突起部によって形成されるダム構造によりマイクロ流路内に形成されるプローブが固定されたマイクロビーズアレイの一端が堰き止められるので、該突起部の幅及び高さはマイクロ流路のそれらよりも小さく、且つ、マイクロビーズを堰き止める一方で、マイクロビーズを含む溶液は流すことが出来るだけの大きさを有している必要がある。
従って、通常、突起部は幅2〜90μm、高さ5〜100μm、及び、長さ10〜100μm、例えば、幅2.5μm、長さ10μm、高さ6.5μmとすることができる。又、注入口及び排出口として機能する貫通孔の直径は、マイクロビーズの大きさ等も考慮して、通常、0.5〜2mmである。
【0022】
マイクロ流路(溝)の構成はマイクロビーズの送入過程及びマイクロビーズの数・配列等を考慮して当業者が適宜決めることが出来る。例えば、マイクロ流路が複数あり、互いに少なくとも一つのジャンクションで連通されている構成(図2)、及び、該マイクロ流路形成体の片面に形成された溝(マイクロ流路)が注入口から排出口に到るまで一本の溝から成り、該一本の溝が中間領域において蛇行して前記複数の直線部分を有するように形成されている構成(図3)とすることができる。
【0023】
又、マイクロ流路の上流側及び/又は中間領域において、蛍光顕微鏡の同一視野の領域内で、直線部分が複数本の互いに並行に観察可能に形成され、各ダム構造の下流部において一つに合流し、それが一つの共通の貫通孔(排出口)に連通させるようにすることも可能である〔図1(a)〕。この場合、各直線部分毎に異なるプローブが固定されたマイクロビーズがそれぞれ注入され、蛍光顕微鏡下の同一視野領域内で観測できるように、隣り合う直線部分に異なるプローブが固定されたマイクロビーズが配列されることになる。この場合は、注入時に、一つの直線部分には同じプローブが固定されたマイクロビーズが一列に並ぶように、マイクロシリンジポンプまたは光ピンセットで時間的に切り替えて、マイクロビーズと溶液とを注入するか、又は、個別に異なるプローブが固定されたマイクロビーズを用意しておき、マイクロシリンジポンプまたは光ピンセットでコントロールして一斉に注入する。
【0024】
マイクロ流路が溶液を注入する際の操作をより容易にするために、複数のマイクロ流路が上流部において互いに、例えば、扇状に広がり、各マイクロ流路に連通する複数の注入口は、例えば、互いに2〜5mm程度の間隔を有するように設計することが出来る〔図1(a)〕。又、注入口及び排出口である貫通孔に適当な長さのマイクロチューブ等の細管を接続することによって、溶液の注入及び排出が容易となる(図4)。
【0025】
通常、蛇行構造を有するマイクロ流路の中間領域が100〜1000μmの長さ、例えば、約500μmを有する。又、マイクロ流路の中間領域全体は、この部分に配列されるマイクロビーズに固定されたプローブと被検物質との反応領域が顕微鏡プラットフォームに対応可能となる(顕微鏡視野領域内に配置される)ように微小であることが好ましい。例えば、その縦横が夫々、40〜1000μmの長さ、例えば、100μm四方内に収まるような大きさであることが好ましい。
【0026】
マイクロメートルおよびナノメートル加工により上記のようなマイクロ流路を設けることが可能な限り、マイクロ流路形成体に使用する透明な材質に特に制限はなく、当業者に公知の任意のものを適宜選択することが可能である。その代表例として、フォトリソグラフィーによる加工が可能な紫外および可視光感受性高分子、鋳造加工可能なPDMS(ポリジメチルシロキサン)に代表される透明シリコンゴム類、射出成形可能なPMMA(ポリメチルメタクリレート)等の熱可塑性樹脂、及び、ナノメートルサイズの構造を転写するナノインプリントに適応可能なCOP(シクロオレフィンポリマー)等の熱可塑性樹脂および光硬化樹脂等の樹脂フィルムを挙げることが出来る。更に、各種プラスチック、ガラス、及び、石英等の材質も使用することが出来る。
【0027】
PDMSはシリコンエラストマーの一種である。透明性が極めて高く、光学的特性に優れており、広い波長領域、特に、可視光領域での吸収が極めて小さく、蛍光検出に適している。また、鋳型法を用いることによりナノからミクロンオーダーの任意の微細構造を有するマイクロ構造体の微細加工が容易である。更に、PDMS自体が、ガラス及びアクリル樹脂等のプラスチックに対する良好な吸着性及び剥離性を有しており、微細加工を施されたPDMS部材にこれら素材から成る基板を貼着させることにより、マイクロ流路やチャンバーを容易に形成することが可能である。更に、PDMSは弾力性に優れ、生体適合性材料でもある。
又、COP(シクロオレフィンポリマー)は光学用を目的とした、透明性、低複屈折性、耐熱性、低吸湿性を兼ね備えた樹脂として開発、製品化が進んでいる樹脂であり、携帯電話のカメラ部のレンズや光ピックアップ用レンズの材料として利用されている。特に近年熱転写ナノインプリント技術によってCOP樹脂にナノメートルおよびマイクロメートルサイズの任意の微細構造を構築することが可能となっている。さらに、蛍光観察において問題となる自家蛍光も石英と同程度なため、顕微鏡下での蛍光観察にも適している。
【0028】
本発明で使用するマイクロ流路形成体はその材質等に応じて当業者に公知の任意の方法で容易に製造・加工することが出来る。基板面に溝を形成する方法としては、例えば、微細加工用ドリル、ブロード等を用いて機械的切削加工法により溝部分を取り除く方法、フォトリソグラフィー、電子ビームリソグラフィー等の電離放射線リソグラフィーまたはAFMリソグラフィー、物理的、化学的エッチングにより、溝部分を取り除く方法等、あるいは、これらの方法を組み合わせて用いることによって、マイクロ流路形成体上に溝を直接的に形成することが出来る。更に、こうした方法で作製した所望の溝構造と反転する凸部構造を有する鋳型を用いて、該空間構造を転写することにより、間接的に溝を形成することも可能であり、例えば、鋳型を用いた射出成形、もしくは高温でのプレスモールド等を用いることができる。特に、素材としてPDMSを用いる場合には、PDMSは鋳型に対する追従性が高いので、鋳型を用いて形成する方法が特に好ましい。一度鋳型を作製すると、製造コストを下げ、簡便かつ安価に大量のマイクロビーズアレイを生産できる。
【0029】
本発明のマイクロビーズアレイ用チップを構成する基板として使用する透明な材質は、本発明のマイクロビーズアレイを用いる検出方法に使用する測定手段・装置等に応じて、公知の物質から当業者が適宜選択することができ、例えば、ガラス、石英、プラスチック、又はPDMS等の透明シリコンゴム類に代表される合成樹脂等を挙げることができる。
【0030】
又、基板面にマイクロ流路形成体を貼着させる際には、プラズマエッチング装置等を用いて基板表面を酸素で処理するとより強固な接着が可能となる。又、マイクロ流路形成体としてPDMSを用いた場合は、適当な洗剤を用いてガラス等の基板から有機物、ゴミなどを取り除けば接着剤なしで貼着させることが可能となる。
【0031】
本発明のマイクロビーズアレイに使用されるマイクロビーズ直径はマイクロ流路の大きさ等に応じて当業者が適宜きめることができ、通常、4〜90μm、好ましくは4〜10μm、例えば、約5μmである。尚、既に記載したように、標識物質からの蛍光の測定に際して全反射照明と同様の効果を得るためには、マイクロビーズの直径を、マイクロビーズ固定用のマイクロ流路の高さ(深さ)及び幅より僅かに小さくしてマイクロビーズとマイクロ流路の隙間が小さくすることが好ましい。又、一度に使用するマイクロビーズの総数は、被検物質の種類及びマイクロ流路の長さ等に応じて当業者が適宜きめることができ、通常、10〜250個の範囲、例えば100個程度のマイクロビーズを使用することが可能である。本発明のマイクロビーズアレイで使用可能なマイクロビーズは市販されており、当業者に公知の任意の材質、例えば、ポリスチレン等で構成され、適当な方法で製造することが出来る。
【0032】
マイクロビーズに固定化されるプローブは、被検物質と特異的に認識して結合し得る物質であり、被検物質に応じて、当業者が適宜選択することが出来る。例えば、DNA等の各種核酸分子及びオリゴヌクレオチド等のその断片、抗原・抗体等のタンパク質及びペプチド類、脂質及び糖類、または薬剤等の低分子化合物等を挙げることが出来る。これらは血液等の体液及び細胞・組織等から適当な抽出又は精製方法によって調製されたもの、又は、自然界及び環境から取得されたもの、更には、各種の合成物質であっても良い。ここで、異なるプローブがぞれぞれ固定された複数種のマイクロビーズを使用することによって、複数種の被検物質を同時に測定することも可能である。
【0033】
或いは、検査対象と結合可能なプローブが固定されたマイクロビーズと、検査対象と結合しないプローブが固定されたマイクロビーズとが、マイクロビーズアレイ用チップのマイクロ流路の直線部分に隣り合って配列させることも可能である。
尚、プローブ分子は、プローブ及びマイクロビーズ等の種類に応じて、物理的吸着法、共有結合、静電結合及びイオン結合等の化学的固定化法、生物学的特異結合等の担体結合法、架橋法、高分子物質で包み込む包括法等の、当業者に公知の任意の方法で行なうことが出来る。更に、適当なリンカー分子を介してマイクロビーズに結合させることも出来る。尚、プローブの固定化に際して、必要に応じて、適宜、紫外線照射、化学架橋剤によるクロスリンク形成、マイクロビーズ表面のブロッキング、洗浄等の処理を行うことが出来る。
【0034】
尚、マイクロ流路への各種溶液の送入及び排出は、当業者に公知の適当な供給手段及び回収手段を用いて行なうことが出来る。このよう手段の例として、例えば、ガラス製シリンジ、プラスチックシリンジ、マイクロピペッター、フッ化エチレン樹脂チューブ・シリコンチューブ、塩ビチューブ、ペリスタポンプ、プランジャーポンプ、マイクロシリンジポンプ、またはこれらの適当な組み合わせを挙げることが出来る。
【0035】
本発明のマイクロビーズアレイは、上記のマイクロビーズアレイ用チップの注入口からプローブが固定されたマイクロビーズを含む溶液を上記の方法で送入し、排出口から溶液を排出することによって、マイクロ流路内の適当な構造を有する中間領域に該マイクロビーズを配列させることによって容易に作製することが出来る(図4、図5)。
【0036】
より具体的には、マイクロビーズアレイ用チップの注入口から検査対象と結合可能なプローブが固定された第1のマイクロビーズ複数個含む溶液を注入し、排出口から溶液を排出させながら、所定マイクロ流路の直線部分に前記第1のマイクロビーズを流し込んで前記突出部で先頭のマイクロビーズを停止させて、後続のマイクロビーズを複数個一列に配列させる段階と、前記マイクロ流路の直線部分に隣り合ったマイクロビーズ直線部分に、前記第1のマイクロビーズとは異なるプローブが固定された第2のマイクロビーズを複数個含む溶液を注入口から注入し、前記第1のマイクロビーズ列に隣り合う所定マイクロ流路直線部分に、前記第2のマイクロビーズを複数個一列に配列させる段階を少なくとも1度行うことによって、本発明のマイクロビーズアレイを作製することができる。
【0037】
例えば、マイクロシリンジポンプを用いて溶液を送入し、排出口の孔に繋げたチューブから溶液を吸引することによって排出することができる。溶液を流す速度(吸引速度)はマイクロビーズアレイの構造等に応じて、適当に設定することが出来、例えば、20〜200μL/hとすることができる。
【0038】
その際に、適当なレーザー(例えば、Nd:YAGレーザー:波長1064nm)を用いる光ピンセットによりマイクロビーズをソーティングすることも可能である。即ち、光ピンセットがオフ状態ではマイクロビーズはマイクロ流路を直進しているが、ジャンクションにおいて光ピンセットをオン状態にすることによってこのマイクロ流路を流れている1個のマイクロビーズを捕捉し、該流路と連通する別のマイクロ流路にこの捕捉したマイクロビーズを導入することが可能である(図6、図7)。
【0039】
更に、例えば、当業者に公知のナノリットルレベルでの制御が可能な油圧式の超微量分取装置を用いて、例えば、マイクロタイター内の溶液中からマイクロビーズを一個ずつ吸い上げ、マイクロビーズアレイ用チップの注入口からマイクロビーズを一個一個送入することも可能である(図8、図9)。
【0040】
本発明のマイクロビーズアレイに形成されたマイクロ流路に試料溶液を導入することによって、該マイクロ流路内に配列されたマイクロビーズに固定化されたプローブと特異的に結合する被検物質が含まれている場合には、被検物質がプローブを介してマイクロビーズに固定され、その結果、該被検物質を検出することが出来る。ここで、試料溶液は生物の細胞・組織・器官、水若しくは土壌等の自然界から抽出又は分離されたもの、又は、人工的に製造された物等に由来し、当業者に公知の適当な方法・手段によって適宜前処理等を施して調製されたものである。この場合に、測定の対象となる被検物質には、当業者に公知の任意の方法で、蛍光物質、酵素、及びビオチン等の適当な化合物で標識しておくことが好ましい。或るいは、標識抗体のような二次反応体をマイクロ流路に導入して、結合した被検物質に更に、このような二次反応体を結合させた後に測定することも可能である。尚、既に記載したように、マイクロビーズ固定用のマイクロ流路の高さ(深さ)に近い直径を有するマイクロビーズを使用する場合には、被検物質とプローブとの反応後にマイクロビーズに結合しなかった被検物質をマイクロ流路から洗浄等によって除去しなくても、全反射照明と同様の効果によって、プローブに結合した蛍光物質の蛍光強度を実質的に測定することが可能である。
【0041】
尚、本発明のマイクロビーズアレイを使用する被検物質の分析・測定は、抗原抗体反応、核酸分子同士のハイブリダイゼーション、その他の分子間の特異的な反応等の当業者に公知の任意の測定原理で実施することが出来る。尚、本発明の検出方法で測定可能な被検物質に特に制限はなく、実施例に記載のズギ花粉特異的IgE等の自然界由来の天然物、生体由来の各種生理活性物質及び代謝物質等、並びに、人工合成物質等の任意の物質を挙げることが出来る。
【0042】
以下、実施例を参照して本発明を説明する。尚、本発明の技術的範囲はこれら実施例の記載に限定されるものではなく、これら記載に基づき当業者が適宜変更・修正したものも本発明に含まれる。
【実施例1】
【0043】
マイクロビーズアレイ用チップ:PDMSフィルムから成るマイクロ流路形成体が貼着されて成るマイクロビーズアレイ用チップを用いて、光ピンセット法により、本発明のマイクロビーズアレイのモデルを作製した。マイクロ流路の幅及び高さは6.5μm、マイクロビーズ直径5μm、蛇行構造を有するマイクロ流路の中間領域全体の長さは約500μmであり、この中間領域の体積は約21pLで100個のマイクロビーズをマイクロアレイ化した。又、蛇行構造を有するマイクロ流路の下流部に、幅2.5μm、長さ10μm、高さ6.5μmの突起部によりダム構造が形成されている。そのマイクロ流路に配列されたマイクロビーズ(Bangs 社、PC06N/5777、カルボキシ修飾ビーズ、直径5μm:100個)の様子を図10に示す。抗原・抗体反応の検出:抗GST抗体(Santa Cruz社製)及び抗His抗体(Santa Cruz社製)をリンカー分子であるプロテインA(PIERCE社製)又はプロテインG(PIERCE社製)との結合を介してマイクロビーズに固定した〔図11(a)〕。作製したビーズは、蛍光標識した各種抗原と反応させたときのみ蛍光シグナルが確認された〔図11(b)〕。
【実施例2】
【0044】
実施例1と同様に抗GST抗体ビーズ、抗His抗体ビーズ、抗GST抗体ビーズの順にマイクロビーズアレイを作製し、マイクロビーズアレイにCy3(GE社製)標識GST(10nM)を含む反応溶液(50mM HEPES-KOH (pH 7.5), 150mM NaCl, 0.05% tween20, 0.5mg/ml αカゼイン)を流して反応させた。その結果、抗GST抗体が固定されたマイクロビーズのみにシグナルが検出された(図12)。抗His抗体ビーズには、蛍光シグナルが得られないことから、正しく抗原抗体反応が起きていることがわかる。尚、測定は、Nd:YAGレーザー(532nm)を用いて落射照明で行った。
【実施例3】
【0045】
抗原・抗体反応のリアルタイム検出:次に、抗GST抗体固定マイクロビーズとCy3標識GSTとの抗原抗体反応をリアルタイムで観察した。実施例2と同様に反応溶液をマイクロビーズアレイに流して反応させ、5秒間隔で画像を取得した。測定は、Nd:YAGレーザー(532nm)を用いて落射照明で行った。尚、1個のマイクロビーズの蛍光強度変化をプロットした(図13)。時間とともに抗GST抗体ビーズの蛍光強度が増加していく様子が観察され、実時間で抗原・抗体反応が計測できることが示された。反応が定常状態になるまでの時間は、わずか200秒足らずであり、非常に速い速度で抗原が抗体に結合することが示された。この結果は、非常に狭い流路内で反応させるため、従来の方法に比べ高速な計測が可能になることを示している。
【実施例4】
【0046】
ヒトIgE検出ビーズの作製:マイクロビーズにプロテインAを介して抗ヒトIgE抗体(マウスモノクローナルIgG:abcam製)を実施例2で使用したマイクロビーズに結合させ、更に、DMPを用いて完全に共有結合させた抗体固定化マイクロビーズを作製し、Cy3標識ヒトIgEまたは、Cy3標識マウスIgGを含有する反応溶液(0.5mg/mL αカゼイン、0.2% tween 20, PBS)を流して反応させた。
その結果、作製した抗ヒトIgE抗体ビーズは、ヒトIgEと反応させたときに蛍光シグナルが得られ、マウスIgGと反応させたときはシグナルが得られなかった〔図14(a)〕。このことは作製した抗ヒトIgE抗体ビーズは、ヒトIgEを特異的に検出できることを示している。また、IgE濃度を変化させて同様の試験を行うと、濃度に依存して蛍光強度が増加することが示され、IgEをpMレベルで測定することが出来た〔図14(b)〕。
【実施例5】
【0047】
スギ花粉特異的抗体検出ビーズの作製:スギ花粉抽出蛋白質(Hayashibara製)あるいは、ネコ表皮抽出物をEDCを用いてマイクロビーズに共有結合で直接固定化した。作製したビーズとCy3標識したスギ花粉タンパク質(Cry JII)を認識する抗体(Hayashibara製)と反応させビーズを評価した。その結果、スギ花粉抽出蛋白質を固定化したビーズには、蛍光シグナルが強く得られるが、ネコ表皮抽出物固定化ビーズでは、シグナルはほとんど得られなかった(図15)。この結果は、作製したビーズでスギ花粉特異的抗体を検出することができることを示すものである。
【実施例6】
【0048】
血清中のIgE抗体の検出;実施例4で作製した抗ヒトIgE抗体固定化マイクロビーズ及び実施例5で作製したスギ花粉抽出蛋白質固定化マイクロビーズを使用したマイクロビーズアレイによって、血清中IgEを検出した。試料は、血清を0.2% tween 20/PBS 緩衝液で1/10 に希釈し試料として使用した。検出は、Cy3標識した抗ヒトIgE抗体を用いるサンドイッチ法で実施した(図16)。その結果、抗ヒトIgE抗体固定化マイクロビーズ及び抗スギ花粉抽出蛋白質抗体固定化マイクロビーズのみに蛍光シグナルが得られた(図17)。一方で、抗体を結合していないコントロールビーズには、蛍光シグナルは得られなかった。この結果は、抗ヒトIgE抗体固定化マイクロビーズで血清中の総IgE量を評価でき、スギ花粉抽出蛋白質固定化マイクロビーズでスギ花粉特異的IgEを検出することができることを示している。反応時間は、血清サンプルおよび検出用蛍光標識抗体ともに各5分間で検出できた。ELISA法等の従来方法では、数時間かかる検出であるが、流路を使ったビーズアレイを用いることでがわずか数分で行うことができることが示された。また、使用するサンプル量も1/100程度で実施することも可能になった。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明のマイクロビーズアレイを利用することにより、微量の試料中に含まれる多数種類の被検物質を同時に短時間で、且つ、高感度で検出する手段・方法を構築することが可能となる。従って、例えば、スギ花粉等のアレルギー診断に有効に使用することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明のマイクロビーズアレイのマイクロ流路の概略を示す。
【図2】マイクロビーズアレイ用チップにおいて、マイクロ流路が複数あり、互いに少なくとも一つのジャンクションで連通されている構成を示す。
【図3】マイクロビーズアレイ用チップにおいて、一本のマイクロ流路の中間領域が蛇行構造を有する構成を示す。
【図4】マイクロシリンジポンプによる、マイクロビーズアレイへの溶液の送入、及び、排出口からの溶液の吸引の様子を示す。
【図5】マイクロシリンジポンプによる、マイクロビーズアレイへの溶液の送入、及び、排出口からの溶液の吸引の様子を示す。
【図6】光ピンセットを用いるマイクロビーズのソーティングの概念図を示す。
【図7】光ピンセットを用いるマイクロビーズのソーティングの実際の様子を示す。
【図8】超微量分取装置を用いて溶液中からマイクロビーズのソーティングの様子を示す。
【図9】超微量分取装置を用いて溶液中からマイクロビーズのソーティングの様子を示す。
【図10】本発明のマイクロビーズアレイのマイクロ流路に配列されたマイクロビーズの様子を示す。
【図11】抗体結合マイクロビーズを示す。
【図12】抗体結合マイクロビーズを用いたマイクロビーズアレイ得られた抗原抗体反応の結果を示す。
【図13】抗GST抗体固定マイクロビーズとCy3標識GSTとの抗原抗体反応をリアルタイムで観察した結果を示す。
【図14】抗ヒトIgE抗体固定化マイクロビーズによるヒトIgEの測定結果を示す。
【図15】抗原固定化マイクロビーズによるスギ花粉蛋白質を認識する抗体の測定結果を示す。
【図16】血清中のIgE検出の概略を示す。
【図17】血清中のIgE検出の結果を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明な材質からなる表面が平らな基板(1)と、該基板と協働してマイクロビーズを含む溶液を流すためのマイクロ流路を形成するように、表面が前記基板の表面に密着して設けられる透明な材質からなるマイクロ流路形成体(2)と、並行で隣接した直線部分が複数あるように該マイクロ流路形成体の表面に形成された溝(3)と、少なくとも一つのマイクロ流路の下流部において、前記溶液が流れる隙間を有するように該溝の内部に突出して設けられ、先頭のマイクロビーズの移動を阻止して後続のマイクロビーズを複数個整列して貯留させるための突起部(4)と、前記流路の上流部に設けられ前記基板及び前記マイクロ流路形成体へ溶液を注入する注入口(5)と、前記流路の下流部に設けられ前記基板及び前記マイクロ流路形成体から溶液を排出する排出口(6)とを備えたマイクロビーズアレイ用チップ。
【請求項2】
該マイクロ流路形成体の片面に形成された溝が注入口から排出口に到るまで一本の溝から成り、該一本の溝が中間領域において蛇行して前記複数の直線部分を有するように形成されていることを特徴とする、、請求項1記載のビーズアレイ用チップ。
【請求項3】
マイクロ流路形成体が一辺10〜50mmの略四角状で、厚さが2〜5mmであり、マイクロ流路が幅5〜100μm、高さ5〜100μm、及び長さ10〜100μmである、請求項1〜2のいずれか一項に記載のマイクロビーズアレイ用チップ。
【請求項4】
マイクロ流路形成体が樹脂フィルムから成り、材質が、ポリジメチルシロキサン、ポリメチルメタクリレート、又は、シクロオレフィンポリマーから選択される合成樹脂である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のマイクロビーズアレイ用チップ。
【請求項5】
基板がガラス、石英、プラスチック、又はポリジメチルシロキサンから成る素材である、請求項1〜4のいずれか一項に記載のマイクロビーズアレイ用チップ。
【請求項6】
検査対象と結合可能なプローブが固定されたマイクロビーズと、検査対象と結合しないプローブが固定されたマイクロビーズとが、請求項1〜5のいずれか一項に記載のマイクロビーズアレイ用チップのマイクロ流路の直線部分に隣り合って配列されることを特徴とするマイクロビーズアレイ。
【請求項7】
マイクロビーズの直径が4〜10μmであり、マイクロビーズの総数が10〜250である、請求項6記載のマイクロビーズアレイ。
【請求項8】
プローブが核酸分子である、請求項6〜7のいずれか一項に記載のマイクロビーズアレイ。
【請求項9】
プローブが抗体分子である、請求項6〜7のいずれか一項に記載のマイクロビーズアレイ。
【請求項10】
請求項1〜5のいずれか一項に記載のマイクロビーズアレイ用チップの注入口からプローブが固定されたビーズを含む溶液を送入し、排出口から溶液を排出することによって、マイクロ流路内に該ビーズを配列させることを含む、請求項6〜9のいずれか一項に記載のビーズアレイの作製方法。
【請求項11】
マイクロビーズアレイ用チップの注入口から検査対象と結合可能なプローブが固定された第1のマイクロビーズ複数個含む溶液を注入し、排出口から溶液を排出させながら、所定マイクロ流路の直線部分に前記第1のマイクロビーズを流し込んで前記突出部で先頭のマイクロビーズを停止させて、後続のマイクロビーズを複数個一列に配列させる段階と、
前記マイクロ流路の直線部分に隣り合ったマイクロビーズ直線部分に、前記第1のマイクロビーズとは異なるプローブが固定された第2のマイクロビーズを複数個含む溶液を注入口から注入し、前記第1のマイクロビーズ列に隣り合う所定マイクロ流路直線部分に、前記第2のマイクロビーズを複数個一列に配列させる段階を少なくとも1度行うことを特徴とする、請求項10記載のマイクロビーズアレイの作製方法。
【請求項12】
マイクロシリンジポンプを用いて溶液を送入し、排出口から溶液を吸引することによって排出する、請求項10又は11記載のマイクロビーズアレイ作製方法。
【請求項13】
光ピンセットを用いて、ジャンクションにおいて一つのマイクロ流路を流れてきたマイクロビーズを該流路と連通する別のマイクロ流路に導入する操作を含む、請求項10又は11記載のマイクロビーズアレイ作製方法。
【請求項14】
請求項6〜9のいずれか一項に記載のマイクロビーズアレイに形成されたマイクロ流路に試料溶液を導入し、ビーズに固定化されたプローブと被検物質との反応に基づき該被検物質を検出する方法。
【請求項15】
花粉症におけるスギ花粉特異的IgEを検出する、請求項14記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【図11】
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【図16】
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【図7】
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【図10】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図17】
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【公開番号】特開2009−31126(P2009−31126A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−195476(P2007−195476)
【出願日】平成19年7月27日(2007.7.27)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成18年度地域新生コンソーシアム研究開発事業、産業活力再生特別措置法第30条の適用をうけるもの)
【出願人】(596175810)財団法人かずさディー・エヌ・エー研究所 (40)
【出願人】(591063394)財団法人 東京都医学研究機構 (69)
【Fターム(参考)】