説明

マイクロ硝子体網膜套管針刃

実施形態のマイクロ硝子体網膜套管針刃(100)が上面及び下面を有することができ、上面及び下面は切断縁を形成すべく交わる。刃の面積を最大にするために、上面及び下面のそれぞれは、丸みを帯びた大きな頂部を有する。各表面は凹領域も有し、凹領域は切断縁を形成することができる。MVR套管針刃を組織内に進めることによって、組織は上面の頂部及び下面の頂部に接触せしめられる。頂部は組織を引き込んで切断縁に接触させる。切断縁は、切開創が套管針カニューレを収容するような大きさに組織を切開する。上面及び下面の形状によって、刃の要素がシャフト(110)の直径のエンベロープから径方向外側に突出しないことが確実なものとなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して組織を切開することに関し、特にマイクロ硝子体網膜套管針刃(micro-vitreoretinal trocar blade)に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロ硝子体網膜(MVR)刃は套管針カニューレのために組織を切開するのに使用される。組織を引っ張り、伸ばし、又は裂くことを最小限にするために、套管針カニューレのために組織を切開する従来の手法では、套管針カニューレの内側ルーメン(lumen)よりも大きい耳幅(ear width)を有するMVR套管針刃が使用されてきた。図1は従来のMVR套管針刃を描写し、図1では、MVR套管針刃5が、関連する幅を備えた耳部10を有し、この幅はシャフト20の幅よりも大きい。しかしながら、刃5が研削されなければならない態様のせいで設計が制約されるので、例えば、耳部10と、シャフト20との間に組織を切断しない刃5の一部分15が存在する。図2A及び2Bでは、変更されたMVR套管針刃の図が描写され、変更されたMVR套管針刃は套管針カニューレのルーメンに挿入されることができる。しかしながら、短い刃幅は切開の幅を減少させる。
【0003】
套管針カニューレを患者内に進める方法は概して少なくとも二つの処置工程を必要とし、二つの処置工程では、MVR套管針刃は組織を切開するのに使用され、その後、套管針カニューレは、鋭利でない(blunt)挿入マンドレル(mandrel)を覆って設置され、且つ、新しく形成された切開創を通して挿入される。従来技術の手法に伴う欠点は、套管針カニューレを挿入するための処置が複雑なことである。例えば、図1において描写されたMVR套管針刃は套管針カニューレ内に収まることができず、このため、套管針カニューレを切開創に挿入できるようにするために、新しく形成された切開創からMVR套管針刃を取り除かれなければならない。切開創が作られた時点で、整列された切開路を保つために、(非常に滑りやすい)結膜が、移された位置において強膜に対して保持されなければならないことは困難である。套管針カニューレが切開創に挿入される前に結膜が解放されると、套管針カニューレの挿入は困難である。外科医は、切開創を見つけることができず又は結膜における切開創を強膜における切開創に整列させることができなければ、新しい切開創を形成する必要があり得る。また、套管針カニューレが切開創よりも大きければ、套管針カニューレを挿入するのに、組織を更に引っ張り、伸ばし、又は裂くことが必要とされ、このことは、患者の不快の原因であり、治癒にかかる時間を長くし、且つ感染症又は均等のものにかかりやすくする場合がある。
【発明の概要】
【0004】
本明細書において開示された実施形態のマイクロ硝子体網膜套管針刃は、組織において線状の切開創を作り出し且つ切開幅を最大にする刃形状を使用することができる。いくつかの実施形態では、切開幅を最大にするために、小剣型(stiletto-style)形状を使用することができる。いくつかの実施形態では、MVR刃の部分がシャフトの直径のエンベロープの径方向外側に突出しないように、MVRは小剣型形状を有する。
【0005】
実施形態のマイクロ硝子体網膜套管針刃は、外径を備えたほぼ円形の断面を有するシャフトと、シャフトの遠位端部上に位置する、上面及び下面を有する刃とを含むことができる。いくつかの実施形態では、上面及び下面は第1平面において第1切断縁及び第2切断縁を形成する。いくつかの実施形態では、上面及び下面のそれぞれは曲面である。いくつかの実施形態では、上面及び下面のそれぞれは第1切断縁と第2切断縁との間の中間線において頂部(apex)を有する。いくつかの実施形態では、上面及び下面のそれぞれは、頂部と第1切断縁との間及び頂部と第2切断縁との間に凹領域を有する。いくつかの実施形態では、刃はシャフトの外径から刃の遠位先端部にかけて次第に細くされる。いくつかの実施形態では、外径は套管針カニューレのルーメンの内径よりも小さい。いくつかの実施形態では、套管針カニューレのルーメンの内径は23ゲージである。いくつかの実施形態では、上面及び下面の凹領域は第1切断縁及び第2切断縁を形成すべく交わる。いくつかの実施形態では、上面の頂部及び下面の頂部は、上面及び下面の表面積を最大にすべく、選択された半径を有する。
【0006】
マイクロ硝子体網膜套管針刃の実施形態は、套管針カニューレ及びマイクロ硝子体網膜套管針刃を具備するシステムを含むことができ、套管針カニューレは、選択された内径を備えたルーメンと、外径とを有する。マイクロ硝子体網膜套管針刃は、套管針カニューレの内径よりも小さい外径を備えた、ほぼ円形の断面を有するシャフトと、シャフトの遠位端部上に位置する、上面及び下面を有する刃とを含むことができる。いくつかの実施形態では、上面及び下面は第1平面において第1切断縁及び第2切断縁を形成する。いくつかの実施形態では、上面及び下面のそれぞれは、第1切断縁と第2切断縁との間の中間線に頂部を有するように、曲面である。いくつかの実施形態では、上面及び下面のそれぞれは、頂部と第1切断縁との間及び頂部と第2切断縁との間に凹領域を有する。いくつかの実施形態では、刃はシャフトの外径から刃の遠位先端部にかけて次第に細くされる。いくつかの実施形態では、上面の頂部及び下面の頂部が、組織において張力がもたらされるように協働するので、組織は、組織における張力によって前記第1切断縁及び第2切断縁に接触せしめられ、第1切断縁及び第2切断縁との接触によって切開される。いくつかの実施形態では、套管針カニューレのルーメンを通して、刃を進めることができる。いくつかの実施形態では、第1切断縁及び第2切断縁との接触によって切開された組織は、套管針カニューレの外径を収容するような大きさの切開長を有する。いくつかの実施形態では、MVR套管針刃によって形成された切開の幅は、刃の幅と、刃の幅に対する頂部の高さの比率とに比例する。
【0007】
本明細書において開示される実施形態では、套管針カニューレを患者内に挿入するための方法が対象とされ、本方法は、組織を切開するためにマイクロ硝子体網膜套管針刃の遠位先端部を患者内に進めるステップと、マイクロ硝子体網膜套管針刃を介して患者内に套管針カニューレを進めるステップとを含む。いくつかの実施形態では、マイクロ硝子体網膜套管針刃は、套管針カニューレの内径よりも小さい外径を備えたほぼ円形の断面を有するシャフトと、シャフトの遠位端部上に位置する、上面及び下面を有する刃とを具備する。いくつかの実施形態では、上面及び下面は第1平面において第1切断縁及び第2切断縁を形成する。いくつかの実施形態では、上面及び下面のそれぞれは、曲面であり、且つ第1切断縁と第2切断縁との間の中間線に頂部を有する。いくつかの実施形態では、上面及び下面のそれぞれは、頂部と第1切断縁との間及び頂部と第2切断縁との間に凹領域を有する。いくつかの実施形態では、刃はシャフトの外径から刃の遠位先端部にかけて次第に細くされる。いくつかの実施形態では、マイクロ硝子体網膜套管針刃によって切開された組織は、選択された套管針カニューレを収容するような大きさの切開長を有する。いくつかの実施形態では、套管針カニューレのルーメンは23ゲージのルーメンである。
【0008】
本明細書において開示される実施形態の他の目的及び利点が、以下の記述及び添付の図面と関連して考えられると、より認識され且つ理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、従来のマイクロ硝子体網膜(MVR)套管針刃の図を描写する。
【図2A】図2Aは、従来のMVR套管針刃の図を描写する。
【図2B】図2Bは、従来のMVR套管針刃の図を描写する。
【図3】図3は、マイクロ硝子体網膜(MVR)套管針刃の一つの実施形態の斜視図を描写する。
【図4A】図4Aは、MVR套管針刃の一つの実施形態の側面図を描写する。
【図4B】図4Bは、MVR套管針刃の一つの実施形態の平面図を描写する。
【図5A】図5Aは、MVR套管針刃の一つの実施形態の刃領域の拡大図を描写する。
【図5B】図5Bは、MVR套管針刃の一つの実施形態の刃領域の拡大図を描写する。
【図6】図6は、MVR套管針刃の一つの実施形態の拡大側面図を描写する。
【図7】図7は、MVR套管針刃の一つの実施形態の拡大平面図を描写する。
【図8】図8は、MVR套管針刃の一つの実施形態の拡大端面図を描写する。
【図9】図9は、MVR套管針刃の一つの実施形態の刃領域の一つの実施形態の拡大図を描写する。
【図10】図10は、MVR套管針刃の一つの実施形態の刃領域の側面図を描写する。
【図11】図11は、MVR套管針刃の一つの実施形態の刃領域の平面図を描写する。
【図12】図12は、図10において描写される実施形態の端面図を描写する。
【図13】図13は、MVR套管針刃の一つの実施形態の側面図を描写する。
【図14】図14は、図12において描写されるMVR套管針刃の実施形態の断面図を描写する。
【図15】図15は、図12において描写されるMVR套管針刃の実施形態の断面図を描写する。
【図16】図16は、図12において描写されるMVR套管針刃の実施形態の断面図を描写する。
【図17】図17は、図12において描写されるMVR套管針刃の実施形態の断面図を描写する。
【図18】図18は、図12において描写されるMVR套管針刃の実施形態の断面図を描写する。
【図19】図19は、図12において描写されるMVR套管針刃の実施形態の断面図を描写する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
添付の図面と併せて以下の記述を参照することによって、本開示及び本開示の利点がより完全に理解されるであろう。添付の図面において、同様の参照番号は概して同様の特徴を示す。
この開示は様々な修正形態及び代替形態を許容するが、本発明の具体的な実施形態が図において例として示され且つ本明細書において詳細に記述されるであろう。しかしながら、本願における図及び詳細な記述では、開示された特定の形態に本開示が制限されることは意図されず、これとは反対に、本開示が、添付の特許請求の範囲によって定められるような本開示の思想及び範囲内に属する全ての修正、均等物、及び代替に亘ることが意図されていると理解されるべきである。
【0011】
以下の記述において詳細に述べられる、限定されるものではない実施形態を参照して、本発明のマイクロ硝子体網膜套管針刃並びに様々な要素及びこれらの有利な細部がより完全に説明される。本発明の詳細を無用に不明瞭にすることがないように、公知の、出発物質(starting material)、加工技術、部品、及び装備の記述は省略される。本発明の好ましい実施形態が開示されるが、詳細な記述及び具体例が単なる例示として与えられ且つ限定されるものではないことを、当業者は理解すべきである。この開示を読んだ後に、発明の基本概念の範囲内における、様々な代替、修正、及び付加が当業者にとって明白になるであろう。当業者は、本願において開示された図面が必ずしも一定の縮尺で描かれていないことも理解することができる。
【0012】
本明細書において用いられるような、「具備する」、「具備している」、「含む」、「含んでいる」、「有する」、「有している」といった表現、又はその他これらの変形表現は、非排他的な包含に及ぶことが意図される。例えば、構成要素のリストを具備する、処理、工程、物品、又は装置は、これら構成要素のみに必ずしも限定されるものではなく、リストされていることが明確ではない他の構成要素、又は斯かる処理、工程、物品、又は装置に特有ではない他の要素を含むことができる。更に、明確に反対のことが記載されていない限り、「又は」は、包含的な意味であって、排他的な意味ではない。例えば、条件A又はBは、以下のいずれか一つによって満たされる。すなわち、Aは真であり(又は存在し)且つBは偽である(又は存在しない)とき、Aは偽であり(又は存在せず)且つBは真である(又は存在する)とき、並びにA及びBは真である(又は存在する)ときである。
【0013】
加えて、本明細書において与えられるあらゆる例又は説明は、例又は説明に利用されるあらゆる用語又は表現への抑制、限定、又はそれらの明確な定義としては決して見なされるべきでない。代わりに、これら例又は説明は、単なる例示として、一つの特定の実施形態に対して記述されていると見なされるべきである。これら例又は説明において利用されるあらゆる用語又は表現が、本明細書のその箇所において又は他の箇所において与えられ又は与えられないかもしれない他の実施形態を網羅し、且つ斯かる全ての実施形態がこれら用語又は表現の範囲内に含まれることが意図されていることを当業者は理解するであろう。斯かる限定されるものではない例及び説明を指定する言葉として、「例えば」、「例として」、「例」、及び「一つの実施形態において」が含まれるが、これらに限定されない。
【0014】
限定されるものではないが、チタン、チタン合金、ステンレス鋼、セラミック、及び/又はポリマーを含んで成る材料からMVR套管針刃の部品を製造することができる。いくつかの実施形態では、所望の硬度及び耐久性のために熱処理されたステンレス鋼420からMVR套管針刃100を製造することができる。MVR套管針刃を含むシステムのいくつかの部品が加圧加熱処理され(autoclaved)且つ/又は化学的に殺菌されることができる。加圧加熱処理されず且つ/又は化学的に殺菌されない部品は、殺菌された材料から製造されることができる。MVR套管針刃を有するシステムの組立中、殺菌された材料から製造された部品は他の殺菌された部品に対して作動関係をもって設置され得る。
【0015】
図では様々な実施形態が示され、同様の番号が様々な図面の同様の部分又は対応する部分を参照するのに用いられる。
【0016】
図3は、マイクロ硝子体網膜(MVR)套管針刃100の一つの実施形態の斜視図を描写する。図4A及び図4Bは、図3において描写されたMVR套管針刃100の実施形態の側面図及び平面図を描写する。MVR套管針刃100はシャフト110及び刃120を含むことができ、刃120はシャフト110の一方の端部に配置される。本明細書において使用されるように、シャフト及び刃といった用語は、MVR套管針刃100の領域について言及することができる。いくつかの実施形態では、シャフト110及び刃120を形成するために、MVR套管針刃100は一体の材料から製造されることができる。他のいくつかの実施形態では、シャフト110及び刃120は、別個に製造されて、MVR套管針刃100を形成すべく互いに結合されてもよい。刃120はシャフト110に滑らかに移行するように研削され又は形成されることができるので、刃120とシャフト110との間におけるあらゆる移行部は識別されるのが困難である。刃120からシャフト110への滑らかな移行が、MVR套管針刃100によって切断される組織を引っ張り、伸ばし、又は裂くことを減少させることは有利である。
【0017】
図5Aは、(詳細Aとして)図4Aにおいて描写されるMVR套管針刃100の実施形態の拡大図を描写する。図5Bは、(詳細Bとして)図4Bにおいて描写されるMVR套管針刃100の実施形態の拡大図を描写する。マイクロ硝子体網膜套管針刃100は、切断縁123及び頂部121を形成する表面を含むことができる。
【0018】
MVR套管針刃100についての設計要件は1以上の特性に影響し得る。例えば、MVR套管針刃100の長さは外科医の感覚によって制限されることがある。長い刃120を有するMVR套管針刃100を使用することは、外科医にとって不快な場合がある。いくつかの実施形態では、MVR套管針刃100の先端部と、MVR套管針刃100についてのハンドルの基部との間が最小距離であることが望ましい。また、MVR套管針刃100の実施形態では、切断縁123の鋭さについて、刃120の設計を最適化することができる。凹状の(concave)エッジ角を有することと、切断縁123の所望の微視的品質を維持することとは、MVR套管針刃100が、刃120の所望の鋭さを提供するために有することができる特徴の例である。
【0019】
図5Aと図5Bとを比較することによって、(ベベル(bevel)角又は角度ベータとも称される)切断面123間の角度が、(頂角又は角度アルファとも称される)頂部121間の角度とは異なることが明らかにされる。実施形態のMVR套管針刃100は、以下に記述される、ベベル角と頂角との比率から恩恵を受けることができる。
【0020】
いくつかの実施形態では、シャフト110は一定の断面形状を有することができる。図6は、図5Bにおける断面H−Hにおいて得られるシャフト110の一部分の断面図を描写する。一定の断面形状を有するシャフト110は、套管針カニューレ内にMVR套管針刃100を通すのに都合がよい場合がある。
【0021】
いくつかの実施形態では、シャフト110は工具又は器具への接続のための形状構成を含んでもよい。図7は、(詳細Cとして示される)図4Bにおいて描写されるシャフト110のようなシャフトの一部分の側面図を描写する。いくつかの実施形態では、MVR套管針刃100は、シャフト110の他の部分の直径又は幅よりも狭い直径又は幅を有するように機械加工されたネック部(neck)112を有することができる。ネック部112は、図7の断面A−Aに沿った図8の断面図において示されるような平らな面113を有して形成されることができ、或いは、ハンドル、工具、又は器具との接続のために、より小さい半径又は形状構成(図示せず)を有してもよい。
【0022】
図9は、図3において描写されるMVR套管針刃100の実施形態の拡大斜視図を描写する。MVR套管針刃100はシャフト110及び刃120を含むことができ、刃120は凹領域122及び切断縁123と共に頂部121を有し、切断縁123はホローグラインド(hollow grind)を形成する。
【0023】
図10は、MVR套管針刃100の一つの実施形態の側面図を描写する。刃120は、頂部121を有する上面124と、頂部121を有する下面126とを含むことができる。上面124及び下面126は、図5Bにおいて示される切断縁123を形成すべく交わることができる。いくつかの実施形態では、下面126の頂部121に対する、上面124の頂部121の角度を刃120の頂角として見なすことができる。いくつかの実施形態では、上面124及び下面126が図5Aにおいて描写されるような遠位先端部125を形成すべく角度アルファで交わるように、刃120の頂角を定めることができる。
【0024】
図11はMVR套管針刃100の刃120の一つの実施形態の平面図を描写し、MVR套管針刃100は、頂部121、凹領域122、及び切断縁123を有する。図11に描写されるように、切断縁123に沿ったあらゆる点において測定された刃120の幅はシャフト110の外径よりも小さい。いくつかの実施形態では、二つの切断縁123の間の角度を刃角として見なすことができる。いくつかの実施形態では、切断縁123が図5Bにおいて描写されるような遠位先端部125を形成すべく角度ベータで交わるように、刃角を定めることができる。
【0025】
図12は、MVR套管針刃100の一つの実施形態の端面図を描写する。いくつかの実施形態では、図12において描写されるように、刃120の全ての構成要素が、套管針刃120が套管針カニューレのルーメンを通って進められることができるように構成され得る。言い換えれば、頂部121、凹領域122、又は切断縁123を含む、刃120の構成要素は、シャフト110の直径のエンベロープから径方向外側には突出しない。
【0026】
いくつかの実施形態では、切断縁123に追加の鋭さを提供するために、凹領域122をホローグラインドにすることができる。追加の鋭さを有する切断縁123によって、組織内に小さい外傷がもたらされることは有利であり、このことは、患者の痛み又は不快さを減少させることができ、且つ、治癒過程又は均等のものを改善することができる。
【0027】
図13は、MVR套管針刃100の一つの実施形態の平面図を描写する。図14〜図19はMVR套管針刃100の一つの実施形態の部分の断面図を描写する。
【0028】
図14は、図13の断面B−Bに沿ったMVR套管針刃100の一つの実施形態の断面図を描写する。図14では、頂部121が、切断縁123に関連する幅よりも小さい高さを有して描写される。いくつかの実施形態では、刃120の一部分は凹領域122を有さなくてもよい。いくつかの実施形態では、組織を切断するのに所望の鋭さを提供するために、切断縁123は所望の硬度又は耐久性を有することができる。
【0029】
いくつかの実施形態では、切開の幅は、切断縁123において測定される刃120の幅、頂部121の高さ、頂部121の半径、及び/又は頂部121の円弧長に比例し得る。例えば、大きな半径及び円弧長を有する頂部121は、小さい半径及び円弧長を有する頂部121よりも刃120の周囲に大きい表面積を有することができ、このため、より大きな張力が組織に印加され、より多くの組織が切断縁123に接触せしめられ得る。いくつかの実施形態では、図14において描写される輪郭を備えた刃120を有するMVR套管針刃100によって形成される切開の幅を、以下の式によって近似することができる。
incision=wbladetan(2×hapex/wblade) 式1
ここで、wincisionは切開の幅であり、wbladeは、切断縁123において測定された刃120の幅であり、且つhapexは頂部121の高さである。したがって、もし、hapex=0、wincision=wbladeであれば、切開の幅は、実在のMVR刃に似る。hapexが套管針カニューレの内径に近づき且つwbladeが套管針カニューレのルーメンの直径に近づくと、wincisionはwbladeを超えることができる。いくつかの実施形態では、wincisionを、切断縁123において測定されたwbladeの1.4倍に近づけることができる。
【0030】
例として、套管針カニューレが0.67mmの内径及び0.74mmの外径を有する場合、0.67mmのシャフト径を有するMVR刃100は、幅が約0.93mm(0.67mm×1.4)である切開創を形成することができるので、直径が0.74mmの套管針カニューレの外周を収容するのに十分な長さが提供される。更に、刃120の幅よりも広い切開創を生成することによって、套管針カニューレの周りに良好なシールを形成することができる。切開創が、従来技術の手法を使用する切開創よりも広いにも関わらず、伸ばされず又は裂かれない切開創は、套管針カニューレが取り除かれた後に、切開創自体をより良くシールすることができるので、概して治癒過程が改善され得る。いくつかの実施形態では、23ゲージの套管針カニューレ、25ゲージの套管針カニューレ、又は他のいくつかの大きさの套管針カニューレと共に、MVR套管針刃100を使用することができる。
【0031】
図15は、図13の断面C−Cに沿った、一つの実施形態のMVR套管針刃100の刃120の断面図を描写する。図15では、頂部121は、切断縁123に関連する幅よりも小さい高さを有して描写される。更に、図15では、刃120は、ホローグラインドを形成する凹領域122を有して描写される。刃120においてホローグラインドを形成する凹領域122は、より鋭い切断縁123を提供することができる。
【0032】
図16は、図13の断面D−Dに沿った、一つの実施形態のMVR套管針刃100の断面図を描写する。図16では、頂部121は、切断縁123に関連する幅よりも小さい高さを有するように描写される。いくつかの実施形態では、頂部121の半径は、刃120に沿った種々の点において一定のままであってもよい。
【0033】
図17は、図13の断面E−Eに沿った、一つの実施形態のMVR套管針刃100の断面図を描写する。図16では、頂部121は、切断縁123に関連する幅よりも小さい高さを有するように描写されるが、頂部の高さは、図15において描写される頂部の高さよりも大きい。
【0034】
図18は、図13の断面F−Fに沿った、一つの実施形態のMVR套管針刃100の断面図を描写する。図18では、頂部121は、関連する切断縁123の幅とほぼ等しい高さを有するように描写される。
【0035】
いくつかの実施形態では、頂部121の輪郭は円の円弧長に近い。例えば、図18における頂部121の輪郭はほぼ円形として描写される。したがって、いくつかの実施形態では、切開の幅を以下の式によって近似することができる。
incision=πhapex (式2)
ここで、wincisionは切開の幅であり、且つhapexは頂部121の高さである。hapexがシャフト110の半径に近いとき、wincisionはシャフト110の周長の半分にほぼ等しくなる。
【0036】
したがって、様々な形状を有するMVR套管針刃100についての切開幅を近似するのに、式1及び式2を使用することができる。可変の表面形状又は複合的な表面形状を有するMVR套管針刃100によって形成される切開の幅を近似するのに他の式又は組合せを使用できることが当業者によって理解されるであろう。
【0037】
図19は、図13の断面G−Gに沿った、一つの実施形態のMVR套管針刃100の断面図を描写する。図19では、刃120はほぼ円形の断面形状を有するように描写される。
【0038】
図13〜図19間における比較によって、いくつかの実施形態では、頂部121の高さが切断縁123の幅とは異なる比率で変化することができる(すなわち、頂角が刃120についての刃角よりも大きい又は小さい)こと、又は、刃角又は頂角が刃120に沿って変わることができることが示される。
【0039】
いくつかの実施形態では、刃角に対する頂角の比率を最適化することができる。最適化には、組織を伸ばし又は裂くことなく切断縁123と接触させて引っ張るために、頂部121によって組織上に十分な張力が印加されることを確実なものとすることが含まれ得る。最適化には、頂部121の与えられた高さについて、切断縁123が最小の切断面積を有することを確実なものとすることが含まれ得る。したがって、例えば、図13と図15とを比較することによって、(図13において描写される領域のような)刃120の一つの領域における切断縁123が単独で十分な切断面積を有することができ、一方、(図15において描写される領域のような)刃120の別の領域における切断縁123が、近接した凹領域122から恩恵を受けることができることが明らかにされ得る。
【0040】
いくつかの実施形態では、刃120の第1部分において、切断縁123の幅に対する頂部121の高さの比率が小さいことは有利である。例えば、比較的平らな先端部を有することによって、外科医は、好ましい平面において切開を始めることができる。いくつかの実施形態では、例えば図14に描写されるように、頂部121の高さは切断縁123の幅に対して短いが、切断縁123の幅に対する頂部121の高さの比率は遠位先端部125の近くにおける同じ比率よりも大きい。いくつかの実施形態では、切断縁123の幅に対する頂部121の高さの増加によって、組織は切断縁123に引き込まれて接触せしめられることができる。いくつかの実施形態では、切断縁123の幅及び頂部121の高さ又はその割合によって切開の幅を近似することができる。いくつかの実施形態では、切断縁123の幅に対する頂部121の高さの正接を切断縁123の幅に掛けることによって、切開の幅を近似することができる。
【0041】
MVR套管針刃100の実施形態では、手術医は、簡易化された処置を使用して套管針カニューレを挿入することができるようになる。組織を切開し、且つ、切断器具を取り除いて套管針カニューレを整列する間、整列された切開路を保つために強膜に対して結膜を保持して、鋭利でない挿入マンドレルを使用して套管針カニューレを挿入する代わりに、本明細書において開示される実施形態では、外科医は組織を切開してMVR套管針刃100を介して切開創内に套管針カニューレを進めることができる。
【0042】
いくつかの実施形態では、MVR套管針刃100を患者の組織内に進めることができる。いくつかの実施形態では、MVR100のシャフト110は外径を有することができる。シャフト110の外径を套管針カニューレのルーメンの内径よりも小さくすることができる。
【0043】
いくつかの実施形態では、套管針カニューレのルーメン内にMVR套管針刃100を進めることができ、且つ、シャフト110を介して患者内に套管針カニューレを進めることができる。いくつかの実施形態では、套管針カニューレのルーメン内にMVR套管針刃100を挿入することができ、且つ、単一のユニットとしてMVR套管針刃100及び套管針カニューレを患者内に進めることができる。
【0044】
切開創を生成するために、MVR套管針刃100の刃120を組織内に進めることができる。所望の切開幅を提供すべく刃120の形状を選択することができる。いくつかの実施形態では、所望の切開長及び切開幅を提供するために、頂部121の円弧長及び半径、凹領域122の半径、切断縁123の長さ若しくは幅、又はいくつかの組合せを選択することができる。
【0045】
いくつかの実施形態では、切開創が組織内に生成された後、MVR套管針刃100を介して套管針カニューレを進めさせ且つ患者内に定置することができる。患者内に工具又は器具を進めさせるために、套管針カニューレ又は患者からMVR套管針刃100を引き出し且つ所定位置に套管針カニューレを残すことができる。
【0046】
実施形態が本明細書において詳細に記述されてきたが、記述が単なる例であって限定的な意味に解釈されるべきではないことが理解されるべきである。したがって、実施形態の詳細における多くの変更及び追加の実施形態が、明白であり、本明細書の記述を参照した当業者によってなされ得ることが更に理解されるべきである。全ての斯かる変更及び追加の実施形態は下記の特許請求の範囲内であると考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ硝子体網膜套管針刃であって、
外径を備えた、ほぼ円形の断面を有するシャフトと、
該シャフトの遠位端部上に位置する、上面及び下面を有する刃とを具備し、
前記上面及び下面が第1平面において第1切断縁及び第2切断縁を形成し、
前記上面及び下面のそれぞれが、曲面であり、前記第1切断縁と前記第2切断縁との間の中間線において頂部を有し、且つ該頂部と該第1切断縁との間及び該頂部と該第2切断縁との間に凹領域を有し、
前記刃が前記シャフトの外径から前記刃の遠位先端部にかけて次第に細くされる、マイクロ硝子体網膜套管針刃。
【請求項2】
前記外径が套管針カニューレのルーメンの内径よりも小さい、請求項1に記載のマイクロ硝子体網膜套管針刃。
【請求項3】
前記套管針カニューレのルーメンの内径が23ゲージである、請求項2に記載のマイクロ硝子体網膜套管針刃。
【請求項4】
前記上面及び下面の凹領域が前記第1切断縁及び第2切断縁を形成すべく交わり、前記上面の頂部及び前記下面の頂部が、前記上面及び下面の表面積を最大にすべく、選択された半径を有する、請求項1に記載のマイクロ硝子体網膜套管針刃。
【請求項5】
システムであって、
選択された内径を備えたルーメンと、外径とを具備する套管針カニューレと、
マイクロ硝子体網膜套管針刃であって、前記套管針カニューレの内径よりも小さい外径を備えた、ほぼ円形の断面を有するシャフトと、該シャフトの遠位端部上に位置する、上面及び下面を有する刃とを具備する、マイクロ硝子体網膜套管針刃とを具備し、
前記上面及び下面が第1平面において第1切断縁及び第2切断縁を形成し、
前記上面及び下面のそれぞれが、曲面であり、前記第1切断縁と前記第2切断縁との間の中間線において頂部を有し、且つ該頂部と該第1切断縁との間及び該頂部と該第2切断縁との間に凹領域を有し、
前記刃が前記シャフトの外径から前記刃の遠位先端部にかけて次第に細くされる、システム。
【請求項6】
前記上面の頂部及び前記下面の頂部が、組織において張力がもたらされるように協働し、該組織が、該組織における張力によって前記第1切断縁及び第2切断縁に接触せしめられ、且つ該第1切断縁及び第2切断縁との前記接触によって切開される、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記第1切断縁及び第2切断縁との前記接触によって切開された前記組織が、前記套管針カニューレの外径を収容するような大きさの切開長を有する、請求項5に記載のシステム。
【請求項8】
前記MVR套管針刃によって形成された前記切開の幅が、前記刃の幅と、該刃の幅に対する前記頂部の高さの比率とに比例する、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
套管針カニューレを患者内に挿入するための方法であって、
マイクロ硝子体網膜套管針刃の遠位先端部を、組織を切開すべく前記患者内に進めるステップを含み、
前記マイクロ硝子体網膜套管針刃が、前記套管針カニューレの内径よりも小さい外径を備えた、ほぼ円形の断面を有するシャフトと、該シャフトの遠位端部上に位置する、上面及び下面を有する刃とを具備し、
前記上面及び下面が第1平面において第1切断縁及び第2切断縁を形成し、
前記上面及び下面のそれぞれが、曲面であり、前記第1切断縁と前記第2切断縁との間の中間線において頂部を有し、且つ該頂部と該第1切断縁との間及び該頂部と該第2切断縁との間に凹領域を有し、
前記刃が前記シャフトの外径から前記刃の遠位先端部にかけて次第に細くされ、
前記マイクロ硝子体網膜套管針刃によって切開された組織が、選択された套管針カニューレを収容するような大きさの切開長を有し、
前記マイクロ硝子体網膜套管針刃を介して前記患者内に前記套管針カニューレを進めるステップを更に含む、方法。
【請求項10】
前記套管針カニューレのルーメンが23ゲージのルーメンである、請求項9に記載の方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公表番号】特表2012−506296(P2012−506296A)
【公表日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−533228(P2011−533228)
【出願日】平成21年10月12日(2009.10.12)
【国際出願番号】PCT/US2009/060307
【国際公開番号】WO2010/047984
【国際公開日】平成22年4月29日(2010.4.29)
【出願人】(508185074)アルコン リサーチ, リミテッド (160)
【Fターム(参考)】