説明

マイナスイオンを発生する寝具

【課題】 マイナスイオンの発生個数が多く、通気性、吸水性、脱臭性、抗菌性、遠赤外線効果を備え、しかも発生体の入手のしやすさをも解決した優れた寝具を提供する。
【解決手段】 各種布団や枕等の寝具の内装材として、天然鉱物に水酸化化合物を添加してなる無機化合物を用いマイナスイオンを発生させることを特徴とするマイナスイオンを発生する寝具であり、具体的には、シラス粉末、シラスバルーン、風化サンゴ等を用い、イオンの発生を促進する水酸化カルシウムを加え、粉砕して得られる粉、粒状物或いはこれらの加工物を寝具の内装物として用いたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種の布団や枕等の寝具に関し、更に詳しくは、マイナスイオンを発生する寝具に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、各種の布団の内装材としては、もめん綿、羊毛綿、羽毛、ウレタンフォ−ム等が一般的であり、枕の内装材としては、適度な硬さを与えるためにパンヤやプラスチックで形成した小筒状の小片やソバガラ等が用いられている。
【0003】
これらの寝具にあって、通気性、吸水性、脱臭性、抗菌性を備えることが好適といわれているが、これに適する素材は比較的少なかった。
【0004】
これらを解決するものとして特許文献1がある。かかる技術の内容は、掛け布団、敷き布団、枕等の寝具の内装材として、風化サンゴの骨格を用いたことを特徴とする寝具を提案している。
【0005】
【特許文献1】特許第2787655号
【0006】
さて、近年に至り、マイナスイオンが人体に良い効果を与えることから、寝具にもマイナスイオン発生体を用いることが試みられている。マイナスイオンが人体に良い影響を与えることが言われており、例えば、血管の拡張、血圧の正常化、血液のアルカリ性傾向、心身のリラックス、脈拍が減少する、疲労回復効果がある、等々が言われている。
【0007】
マイナスイオン発生体の粉末を基材に担持させた技術がある(特許文献2)。しかるに、マイナスイオン発生体として、トルマリン、レアア−ス鉱石、希陽石、琥珀、ガ−ネット、風化サンゴ等が用いられている。
【0008】
【特許文献2】特開2003−138479号公報
【0009】
ここに用いられているマイナスイオン発生体はいずれも資源的に少ない材料に類するものであり、比較的高価である。
【0010】
しかるに、特許文献2中にマイナスイオン発生体の一例として風化サンゴの記載があり、これによって特許文献1に記載された風化サンゴを用いた寝具も又マイナスイオンの発生が予測される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
後述するように、風化サンゴを用いた寝具の場合にあっては、相当数のマイナスイオンを発生することが知られているが、風化サンゴであるためその入手にもやや難しい面がある。本発明はかかる従来技術による寝具に改良を加えたものであり、マイナスイオンの発生個数が多く、しかも、発生体の入手のしやすさをも解決した、優れた寝具を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の要旨は、各種布団や枕等の寝具の内装材として、天然鉱物に水酸化カルシウムを添加してなる無機化合物を用いたことを特徴とするマイナスイオンを発生する寝具であり、好ましい例としては、天然鉱物として火山灰であるシラスを粉砕して得られる粉・粒状物、かかるシラスを加工してなる微粒のシラスバル−ン、風化サンゴを粉砕して得られる粉・粒状物が例示できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の寝具にあっては、マイナスイオンの発生個数が多い安価な寝具が得られ、この他の特徴として、通気性、吸水性、脱臭性、抗菌性、遠赤外線効果等を兼ね備えた寝具が提供できたものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の寝具の構成は、寝具の内装材として、天然鉱物に水酸化カルシウムを添加してなる無機化合物を用いた構成であり、具体的には、天然鉱物として火山灰であるシラス微・粉末、シラスを加工して得られたシラスバルーン、風化サンゴを粉砕して得られる粉・粒状物を用いた構成であり、マイナスイオンの発生個数が多いという知見から、これを更に効果的にして本発明に到達したものである。
【0015】
上記シラス微・粉末は酸化ケイ素、酸化アルミニウム及びナトリウム、鉄、カリウム等の酸化物からなる鉱物であり、風化サンゴは天然の炭酸カルシウムを主体とする鉱物であり、好ましくは1〜50μmの粒径とした粉体として乾燥させたものである。尚、この水溶液のpHは6.0〜7.0程度である。
【0016】
そして、シラス加工物の一例としてのシラスバル−ンは、シラス粉末を1000℃にて焼成・発泡させ、微粒のバル−ンとしたものであり、その取扱い易さに特徴がある。尚、シラス粉末のバル−ン化については、非特許文献1等数多くの文献がありここではその詳細は省略する
【0017】
【非特許文献1】粉体工学会誌34巻、697〜703頁(1997)
【0018】
イオンの発生を促進する化合物は水酸化カルシウムである。
【0019】
天然鉱物、水酸化カルシウムを粉砕して得られる粉・粒状物を寝具に使う場合には、寝具用素材の表面に粉末を貼着させる必要がある。その第1の方法は、天然鉱物、水酸化カルシウムを含む懸濁液を作製後、各種布団や枕等の寝具の内装材の表面に塗布する。具体的には、調整した懸濁液をスプレーガン、コーター或いは刷毛をもってウレタンフォーム等の寝具の内装材の表面に塗布する。貼着量は寝具の用途に応じて変えることができるが、乾燥後素材1m2 当たりの重量で表示した場合、5〜100g/m2 内に納められる。別の方法としては、各種布団や枕等の寝具の内装材を当該懸濁液に浸漬し、その後、乾操・固着させる方法によってマイナスイオンを発生する寝具となるものである。
【0020】
上記の懸濁液は、水100部とバインダー100〜200部を混合した液に前記無機化合物を1〜50部添加してなるエマルジョン型の水性懸濁液である。
【0021】
懸濁液を内装材に貼着させるために用いられるバインダーとしては、アクリル酸エステル系共重合体、ポリエステル系ウレタン、ポリエーテル系ウレタン、酢酸ビニル系共重合体より選択される。
【実施例】
【0022】
(実施例)
懸濁液に使用するシラス粉末としては、火山灰であるシラス粉末を約1000℃に焼成・発泡させてなる平均粒径およそ14μmのシラスバル−ンを用いた。そして、先ず溶媒である水100部に対してバインダーとしてアクリル酸エステル系共重合体エマルジョン150部を加え均一な分散液を用意した。そこへ前記シラスバル−ンと、風化サンゴ粉末、更には水酸化カルシウムの単独、2者或いは3者混合物を用意し、これらを使ってイオン発生用の懸濁液を作製した。配合剤としてのシラスバル−ン、風化サンゴ粉末、水酸化カルシウム及びそれらの混合物は水100部に対して20〜40部加えた。
【0023】
ここで用意された懸濁液を表面を凹凸に形成したいわゆるプロファイル加工したウレタンフォームの表面に用意された懸濁液を乾燥後の塗布量として約10〜20g/m2 になるように塗布して、上記の測定法に従ってイオン発生数を測定した。得られた結果は表1に示した。部数は、水100当りの配合部数である。
【0024】
(マイナスイオンの測定)
マイナスイオンはシラス粉末等の入った塗膜に刺激を加えて発生させる。刺激の加え方としては、人の手の平、或いは動物性の毛でできた刷毛で、対象物の表面を縦方向或いは横方向に連続して擦る方法がとられる。擦る頻度は周波数にして2〜3Hz程度であるが、同様の刺激は機械に頼って加えても良い。
【0025】
マイナスイオンの発生個数は神戸イオン商会製同軸円筒型電極を持つKST−900を使って測定した。前記の方法により発生したマイナスイオンは空気中に発散し易いため、測定に当たっては試料と測定器を外気の影響を受けない風防の中に入れ、刺激を加えてイオンが発生したところで直ちに測定器に吸引させた。観測されるイオン数は発生個数/ccとして表示されるが、通常は所定の時間刺激を加えたときの時間平均値を単位発生量とした。
【0026】
【表1】

【0027】
(測定結果)
表1から明らかなように、シラス粉末(シラスバル−ン)や風化サンゴ単独から発生するマイナスイオン量に比べ、イオンの発生を促進させる水酸化カルシウム単独或いはそれを添加した配合系では明らかに高い値を示し、水酸化カルシウムの添加効果が著しいことが判明した。尚、水酸化カルシウムを添加するとマイナスイオンの発生量が高くなるが、反面強いアルカリ性を示すため大量に使用すると寝具の母材になるウレタンフォーム等を加水分解する可能性があり、現実的には添加量は5部以内に収めることが望ましい。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明は、安価で入手が容易なシラス粉末や風化サンゴ等の天然鉱物に水酸化カルシウムを添加してなる無機化合物を用い、この粉末を内装材として用いることによって、マイナスイオンの大量の発生を有し、更に、通気性、吸水性、脱臭性、抗菌性、遠赤外線効果等を備えた寝具が得られるものであり、掛け布団、敷き布団、枕のみならず、敷布、各種衣料品にも広く利用できるものである。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
各種布団や枕等の寝具の内装材として、天然鉱物に水酸化カルシウムを添加してなる無機化合物を用いたことを特徴とするマイナスイオンを発生する寝具。
【請求項2】
天然鉱物として火山灰であるシラスを粉砕して得られる粉・粒状物を用いた請求項1記載のマイナスイオンを発生する寝具。
【請求項3】
天然鉱物として火山灰であるシラスを加工してなる微粒のシラスバル−ンを用いた請求項2記載のマイナスイオンを発生する寝具。
【請求項4】
天然鉱物として風化サンゴを粉砕して得られる粉・粒状物を用いた請求項1記載のマイナスイオンを発生する寝具。
【請求項5】
天然鉱物、水酸化カルシウムを粉砕或いは熱処理加工して得られる粉・粒状物が平均粒径1〜50μmの微粉体である請求項1乃至4いずれか1記載のマイナスイオンを発生する寝具。
【請求項6】
天然鉱物、水酸化カルシウムを含む懸濁液を作製後、各種布団や枕等の寝具の内装材の表面に塗布させた請求項1乃至5いずれか1記載のマイナスイオンを発生する寝具。
【請求項7】
天然鉱物、水酸化カルシウムを含む懸濁液を作製後、各種布団や枕等の寝具の内装材を当該懸濁液に浸漬し、その後乾操貼着させた請求項1乃至5いずれか1記載のマイナスイオンを発生する寝具。
【請求項8】
懸濁液は、水100部とバインダー100〜200部を混合した液に前記無機化合物を2〜50部添加してなるエマルジョン型の水性懸濁液である請求項6又は7記載のマイナスイオンを発生する寝具。
【請求項9】
バインダーが、アクリル酸エステル系共重合体、ポリエステル系ウレタン、ポリエーテル系ウレタン、酢酸ビニル系共重合体より選択された請求項8記載のマイナスイオンを発生する寝具。



【公開番号】特開2007−97752(P2007−97752A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−289660(P2005−289660)
【出願日】平成17年10月3日(2005.10.3)
【出願人】(390001753)昭和西川株式会社 (5)
【Fターム(参考)】