マイルドなスラブ形態を有する織物
【課題】従来のスパンシルク調やレーヨントワール調の織物では表現できなかった高級感のある光沢や風合い、コリコリ感、軽量感、膨らみ感、ハリコシ、ドレープ感、ナチュラルな異繊度感、爽やかな清涼感、吸湿性と放湿性に富みムレ感の少ない快適な着用感等、スパンシルク織物やレーヨントワール織物の特長を表現しながら、これらの織物を生産性の高い方法で、安価に提供する。
【解決手段】少なくとも２本以上のスラブ加工糸が合撚されてなり、且つ、公定水分率が８％以下のセルロース系フィラメント糸の混率が７０％以上である合撚糸条を用いたマイルドなスラブ形態を有する織物、或いはスラブ加工糸と公定水分率８％以下のセルロース系フィラメント糸とが合撚されてなり、且つ、公定水分率が８％以下のセルロース系フィラメント糸の混率が７０％以上である合撚糸条を用いたマイルドなスラブ形態を有する織物にある。スラブ加工糸のスラブ部分と道中部分の長さの比が１／（５〜１５）であるスラブ加工糸を用いることが好ましく、公定水分率８％以下のセルロース系フィラメント糸は、セルロースアセテートフィラメント糸であることが望ましい。
【解決手段】少なくとも２本以上のスラブ加工糸が合撚されてなり、且つ、公定水分率が８％以下のセルロース系フィラメント糸の混率が７０％以上である合撚糸条を用いたマイルドなスラブ形態を有する織物、或いはスラブ加工糸と公定水分率８％以下のセルロース系フィラメント糸とが合撚されてなり、且つ、公定水分率が８％以下のセルロース系フィラメント糸の混率が７０％以上である合撚糸条を用いたマイルドなスラブ形態を有する織物にある。スラブ加工糸のスラブ部分と道中部分の長さの比が１／（５〜１５）であるスラブ加工糸を用いることが好ましく、公定水分率８％以下のセルロース系フィラメント糸は、セルロースアセテートフィラメント糸であることが望ましい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、マイルドなスラブ形態を有する織物に関し、更に詳しくはスパンシルク織物やレーヨントワール織物のような高級感のある外観や風合いを表現し、これらの織物の欠点である機能性や価格を改善したマイルドなスラブ形態を有する織物に関する。
【背景技術】
【０００２】
スパンシルク織物やレーヨントワール織物は、素材の有する高級感のある光沢や風合い、特に後者では、複雑な撚糸手法からくる独特なコリコリとした爽やかなタッチ等があり、古くから愛されてきた。しかしこれらは洗濯による収縮や高価である等の問題がある。この問題を解決すべく、合繊によるスパンシルク調やレーヨントワール調の織物が各種開発され、各種商品が市販されているが、未だ満足のいく商品は得られているとは言い難い。
【０００３】
例えば、ポリエステル系フィラメント糸のスラブ加工糸を用いた商品やレーヨントワール織物調に近い複雑な撚糸を施したもの等が多種開発された。しかし、素材に起因するワキシイで硬い風合い、金属光沢、吸湿性が無いためのムレ感、静電性等の問題があり充分な商品は得られていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００４】
本発明の目的は、スパンシルク織物やレーヨントワール織物の有する洗濯による収縮や高価である等の問題を改善し、従来のスパンシルク調やレーヨントワール調の織物では表現できなかった高級感のある光沢や風合い、コリコリ感、軽量感、膨らみ感、ハリコシ、ドレープ感、ナチュラルな異繊度感、爽やかな清涼感、吸湿性と放湿性に富みムレ感の少ない快適な着用感等、スパンシルク織物やレーヨントワール織物の特長を表現しながら、これらの織物を生産性の高い方法で、安価に提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【０００５】
本発明の主要な構成は、少なくとも２本以上のスラブ加工糸が合撚されてなり、且つ、公定水分率が８％以下のセルロース系フィラメント糸の混率が７０％以上である合撚糸条、を用いたマイルドなスラブ形態を有する織物、またはスラブ加工糸と公定水分率８％以下のセルロース系フィラメント糸とが合撚されてなり、且つ、公定水分率が８％以下のセルロース系フィラメント糸の混率が７０％以上である合撚糸条、を用いたマイルドなスラブ形態を有する織物にある。
好ましくは、スラブ加工糸のスラブ部分と道中部分の長さの比が１／（５〜１５）であるスラブ加工糸を用いる。また、公定水分率８％以下のセルロース系フィラメント糸は、セルロースアセテートフィラメント糸であることが望ましい。
【発明の効果】
【０００６】
本発明によれば、スパンシルク織物やレーヨントワール織物の有する洗濯による収縮や高価である等の問題を改善し、従来のスパンシルク調やレーヨントワール調の織物では表現出来なかった高級感のある光沢や風合い、爽やかな清涼感、吸湿性と放湿性に富みムレ感の少ない快適な着用感等の、スパンシルク織物やレーヨントワール織物の特長を表現したスパンシルク調やレーヨントワール調の織物を生産性の良い、安価な織物を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【０００７】
本発明におけるスラブ加工糸は、その製法やスラブ形態、混用率等を特に限定するものではなく目的とする織物の風合いや意匠性により任意に選定すればよい。例えば、仮撚加工により作るスラブ形態は生産性もよくスラブ形態も種類が豊富であり好ましく用いられる。又、該スラブ加工糸にはポリエステル系フィラメント糸１００％、公定水分率８％以下のセルロース系フィラメント糸１００％、前者と後者の複合糸等が好ましく用いられる。
【０００８】
本発明における合撚糸条は、スラブ加工糸を２本以上合撚して用いるか、或いはスラブ加工糸と公定水分率８％以下のセルロース系フィラメント糸とを合撚して用いる必要がある。スラブ加工糸を合撚することにより、スラブ部分と非スラブ部分が複雑に重なり合うため、スラブ加工糸単独の場合よりもスラブ表現がマイルドになり、更に、人工的なスラブ外観が改善され、よりナチュラルな表面感が得られる。更に合撚の撚糸効果も加わり、膨らみ感やドライ感、コリコリ感、適度なハリコシ等が得られる。またスラブ加工糸とセルロース系フィラメント糸とを合撚することによって、スラブ加工糸単独の場合よりもスラブ表現がマイルドになり、ナチュラルな表面感が得られ、合撚の撚糸効果も同時に得られる。
【０００９】
本発明の合撚糸の撚方向はスラブ加工糸のスラブ部分が締まる方向に撚糸することが好ましい。例えば、仮撚加工により形成されたスラブ加工糸の場合は仮撚加工の加撚方向と同じ方向に合撚するとよい。スラブ部分が緩む方向に撚糸するとスラブ部分が乱れて外観が悪くなり、風合いもフカついた低級のものとなり、又、生産性も悪くなる。
【００１０】
本発明における公定水分率８％以下のセルロース系フィラメント糸とは、セルロースを原料として、再生或いは半合成された繊維のフィラメント糸であればよく、再生繊維としては、例えばビスコースレーヨン、リヨセル等が、半合成繊維としては、例えばセルロースジアセテート繊維、セルローストリアセテート繊維等が挙げられるが、その製法や種類を特に限定するものではない。また、単糸の断面形状、表面形状、艶、繊度等を特に限定するものではなく、得ようとする織物表現を考慮して任意に選定すればよい。
【００１１】
本発明においてセルロース系フィラメント糸の公定水分率が８％を超えると、水膨潤性による収縮が問題となり洗濯収縮、形態安定性、湿潤堅牢度の問題や、保水性が高く速乾性に劣る等の問題が生じる。このため、ポリエステル系フィラメント糸の混率を高める必要があり、ポリエステル系フィラメント糸の欠点である金属光沢、発色性、ワキシイな硬い風合いが強調され、本発明の目的とする織物が得難い。
【００１２】
本発明におけるポリエステル系フィラメント糸はその製法や種類を特に限定するものではなく、単糸の断面形状、表面形状、艶、繊度、収縮性、伸縮性、染料染着特性等も特に限定するものではない。また、２種類以上のポリエステル系フィラメント糸を複合したものであってもよく目的とする織物の風合いや意匠性により任意に選定すればよい。
【００１３】
本発明の合撚糸におけるセルロース系フィラメント糸の混用率は、７０％以上が必要である。セルロース系フィラメント糸の混用率が７０％を下回ると、セルロース系フィラメント糸の有する高級感に優れた光沢や、ソフトで爽やかな清涼感に優れた風合い、適度な吸湿性による快適な着用感等の特長が抑えられて、本発明の目的とする織物が得られない。
【００１４】
本発明における織物の組織や目付け、密度等は特に限定されるものではなく、得ようとする織物表現を考慮して任意に選定すればよい。
【００１５】
本発明におけるスラブ加工糸は、その製法やスラブ形態を特に限定するものではないが、そのスラブ部分と道中部分の長さの比が１／（５〜１５）のものが好ましく用いられ、より好ましくは１／（７〜１２）である。スラブ部分と道中部分の長さの比が１／５を上回るとスラブ部分が目立ちすぎ、荒れた目風となり、本発明の目的とする織物が得られ難い。また１／１５を下回るとスラブ部分が目立たず、その存在が分かり難くなり、スラブ糸としての意匠性に乏しくなるため、本発明の目的とする織物が得られ難い。
【００１６】
本発明の公定水分率８％以下のセルロース系フィラメント糸は、その製法や種類を特に限定するものではないが、アセテート繊維がその低屈折率からくる鮮明性、発色性、高級感のある光沢、適度なヤング率、分散染料可染性、熱可塑性によるセット性等を有しており好ましく用いられる。因みに、ジアセテートの公定水分率は６．５％、トリアセテートは３．５％であり適度な吸湿性と速乾性を有し、沸水収縮率も約２〜３％と少ない。また風合いや光沢の高級感の点からトリアセテートの使用が更に好ましい。
【実施例】
【００１７】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。また、風合いや外観、発色性等はハンドリングと目視によって評価した。
【００１８】
［実施例１］
ブライト８４ｄｔｅｘ／２０ｆの単糸菊型断面のセルローストリアセテートフィラメント糸（公定水分率３．５％、三菱レイヨン社製、以下、セルローストリアセテートはトリアセテートと略記。）、ブライト４０ｄｔｅｘ／９ｆの単糸菊型断面のトリアセテートフィラメント糸（公定水分率３．５％、三菱レイヨン社製）、及びブライト１１ｄｔｅｘ/ ４f Ｍ２１０単糸丸断面ポリエステルフィラメント糸（三菱レイヨン社製）からなる仮撚加工によるスラブ加工糸（１４５ｄｔｅｘ、トリアセテート混率９２％、スラブ部分と道中部分の長さの比１／９）を用い、該スラブ加工糸を２本引き揃え、仮撚加工の加撚方向であるＺ方向に５００回／ｍの撚糸を施した合撚糸を作成した。該合撚糸を経糸と緯糸に用いて、２／２ななこ織組織の一般にマットと呼ばれる織物を製織した。得られた織物の生機を常法により分散染料にてベージュ色に染色し、裏面にカレンダー仕上加工して、仕上経密度が９４本／２．５４ｃｍ、仕上緯密度が７１本／２．５４ｃｍのマット織物を得た。
【００１９】
得られた織物はソフトで膨らみ感があり、スパンシルク調の独特なドライタッチや軽量感、ハリコシ、ナチュラルな異繊度感等があり、更に、スパンシルク織物調の高級感のある光沢を有し、また、レーヨントワール調の爽やかな清涼感も有し、吸湿性と放湿性に富み、ムレ感の少ない快適な着用感等の、スパンシルク織物の特長を表現しながら、従来得られなかった好適なスパンシルク調織物であった。
【００２０】
［実施例２］
単糸菊型断面のトリアセテートフィラメント糸（三菱レイヨン社製、ブライト８４ｄｔｅｘ／２０ｆ、公定水分率３．５％）と単糸菊型断面のトリアセテートフィラメント糸（三菱レイヨン社製、ブライト４０ｄｔｅｘ/ ９ｆ、公定水分率３．５％）とからなる仮撚加工によるスラブ加工糸（１３５ｄｔｅｘ、トリアセテート混率１００％、スラブ部分と道中部分の長さの比１／９）を用い、該スラブ加工糸と単糸菊型断面のトリアセテートフィラメント糸（三菱レイヨン社製、ブライト１１０ｄｔｅｘ/ ２６ｆ ＬＸＢ、公定水分率３．５％）とを引き揃え、仮撚加工の加撚方向であるＺ方向に５００回／ｍの撚糸を施した合撚糸を作成した。該合撚糸を経糸と緯糸に用いて、平組織の織物を製織した。得られた織物の生機を常法により皺加工を施し、分散染料にて黒色に染色し仕上加工して、仕上経密度が６４本／２．５４ｃｍ、仕上緯密度が５１本／２．５４ｃｍの平織物を得た。
【００２１】
得られた織物は、発色性に優れた深みのあるの黒色が得られ、レーヨントワール調の高級感のある光沢と爽やかな清涼感やソフトで膨らみ感があり、コリコリとしたレーヨントワール織物独特の風合いも得られた。また、スパンシルク調の独特なドライタッチも有し、ハリコシ、ナチュラルな異繊度感等があり、吸湿性と放湿性に富み、ムレ感の少ない快適な着用感等の、レーヨントワール織物の特長を表現した、従来得られなかった好適なレーヨントワール調織物であった。また、皺加工によるナチュラルな表面感を表現していた。
【００２２】
［実施例３]
ポリエステルフィラメント糸（三菱レイヨン社製、セミダル３３ｄｔｅｘ／１２ｆ Ａ１１８単糸丸断面）とポリエステルフィラメント糸（三菱レイヨン社製、セミダル２２ｄｔｅｘ／１２ｆ Ａ２１０単糸丸断面）とからなる仮撚加工によるスラブ加工糸（６４ｄｔｅｘ、ポリエステル混率１００％、スラブ部分と道中部分の長さの比１／９）を用い、該スラブ加工糸と単糸菊型断面のトリアセテートフィラメント糸（三菱レイヨン社製、ブライト２２０ｄｔｅｘ／３４ｆ、公定水分率３．５％）とを引き揃え、仮撚加工の加撚方向であるＺ方向に６００回／ｍの撚糸を施した合撚糸を作成した。該合撚糸を経糸と緯糸に用いて、平組織の織物を製織した。得られた織物の生機を常法により皺加工を施し、分散染料にて茶色に染色し仕上加工して、仕上経密度が５３本／２．５４ｃｍ、仕上緯密度が４４本／２．５４ｃｍの平織物を得た。
【００２３】
得られた織物は、発色性に優れた深みのあるの色が得られ、レーヨントワール調の高級感のある光沢と爽やかな清涼感やソフトで膨らみ感があり、コリコリとしたレーヨントワール織物独特の風合いも得られた。
【００２４】
［比較例１］
ポリエステルフィラメント糸（三菱レイヨン社製、ブライト５６ｄｔｅｘ／３６ｆ Ｅ３２８単糸三角断面）とポリエステルフィラメント糸（三菱レイヨン社製、ブライト３３ｄｔｅｘ／１２ｆ Ｅ２１０単糸丸断面）とからなる仮撚加工によるスラブ加工糸（１０８ｄｔｅｘ、ポリエステル混率１００％、スラブ部分と道中部分の長さの比１／９）を用い、該スラブ加工糸を２本引き揃え、仮撚加工の加撚方向であるＺ方向に３００回／ｍの撚糸を施した合撚糸を作成した。該合撚糸を経糸と緯糸に用いて、３／３ななこ織組織の一般にマットと呼ばれる織物を製織した。得られた織物の生機を常法により分散染料にてベージュ色に染色し、裏面にカレンダー仕上加工して、仕上経密度が１３１本／ｃｍ、仕上緯密度が１００本／ｃｍのマット織物を得た。
【００２５】
得られた織物は、ナチュラルな外観を有し一見するとレーヨントワール織物調であるが、清涼感が乏しく石油由来のワキシイな風合いや金属的な光沢感が強く、満足いくものが得られなかった。
【００２６】
［比較例２］
スラブ加工糸として、単糸菊型断面のセルローストリアセテートフィラメント糸（三菱レイヨン社製、ブライト８４ｄｔｅｘ／２０ｆ、公定水分率３．５％）とポリエステルフィラメント糸（東レ社製、セミダル８４ｄｔｅｘ／２４ｆ Ｚ２７５単糸丸断面シック＆シン）からなる仮撚加工によるスラブ加工糸（２６９ｄｔｅｘ、トリアセテート混率６０％、スラブ部分と道中部分の長さの割合１／３）を用い、該スラブ加工糸を２本引き揃え、仮撚加工の加撚方向であるＺ方向に３００回／ｍの撚糸を施した合撚糸を作成した。該合撚糸を経糸と緯糸に用いて、平組織の一般にガーゼと呼ばれる織物を製織した。得られた織物は、ソフトで膨らみ感がありレーヨントワール調の清涼感やソフトで膨らみ感があるが、スラブ部分が目立ちすぎ、荒れた目風となり満足いくものが得られなかった。
【技術分野】
【０００１】
本発明は、マイルドなスラブ形態を有する織物に関し、更に詳しくはスパンシルク織物やレーヨントワール織物のような高級感のある外観や風合いを表現し、これらの織物の欠点である機能性や価格を改善したマイルドなスラブ形態を有する織物に関する。
【背景技術】
【０００２】
スパンシルク織物やレーヨントワール織物は、素材の有する高級感のある光沢や風合い、特に後者では、複雑な撚糸手法からくる独特なコリコリとした爽やかなタッチ等があり、古くから愛されてきた。しかしこれらは洗濯による収縮や高価である等の問題がある。この問題を解決すべく、合繊によるスパンシルク調やレーヨントワール調の織物が各種開発され、各種商品が市販されているが、未だ満足のいく商品は得られているとは言い難い。
【０００３】
例えば、ポリエステル系フィラメント糸のスラブ加工糸を用いた商品やレーヨントワール織物調に近い複雑な撚糸を施したもの等が多種開発された。しかし、素材に起因するワキシイで硬い風合い、金属光沢、吸湿性が無いためのムレ感、静電性等の問題があり充分な商品は得られていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００４】
本発明の目的は、スパンシルク織物やレーヨントワール織物の有する洗濯による収縮や高価である等の問題を改善し、従来のスパンシルク調やレーヨントワール調の織物では表現できなかった高級感のある光沢や風合い、コリコリ感、軽量感、膨らみ感、ハリコシ、ドレープ感、ナチュラルな異繊度感、爽やかな清涼感、吸湿性と放湿性に富みムレ感の少ない快適な着用感等、スパンシルク織物やレーヨントワール織物の特長を表現しながら、これらの織物を生産性の高い方法で、安価に提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【０００５】
本発明の主要な構成は、少なくとも２本以上のスラブ加工糸が合撚されてなり、且つ、公定水分率が８％以下のセルロース系フィラメント糸の混率が７０％以上である合撚糸条、を用いたマイルドなスラブ形態を有する織物、またはスラブ加工糸と公定水分率８％以下のセルロース系フィラメント糸とが合撚されてなり、且つ、公定水分率が８％以下のセルロース系フィラメント糸の混率が７０％以上である合撚糸条、を用いたマイルドなスラブ形態を有する織物にある。
好ましくは、スラブ加工糸のスラブ部分と道中部分の長さの比が１／（５〜１５）であるスラブ加工糸を用いる。また、公定水分率８％以下のセルロース系フィラメント糸は、セルロースアセテートフィラメント糸であることが望ましい。
【発明の効果】
【０００６】
本発明によれば、スパンシルク織物やレーヨントワール織物の有する洗濯による収縮や高価である等の問題を改善し、従来のスパンシルク調やレーヨントワール調の織物では表現出来なかった高級感のある光沢や風合い、爽やかな清涼感、吸湿性と放湿性に富みムレ感の少ない快適な着用感等の、スパンシルク織物やレーヨントワール織物の特長を表現したスパンシルク調やレーヨントワール調の織物を生産性の良い、安価な織物を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【０００７】
本発明におけるスラブ加工糸は、その製法やスラブ形態、混用率等を特に限定するものではなく目的とする織物の風合いや意匠性により任意に選定すればよい。例えば、仮撚加工により作るスラブ形態は生産性もよくスラブ形態も種類が豊富であり好ましく用いられる。又、該スラブ加工糸にはポリエステル系フィラメント糸１００％、公定水分率８％以下のセルロース系フィラメント糸１００％、前者と後者の複合糸等が好ましく用いられる。
【０００８】
本発明における合撚糸条は、スラブ加工糸を２本以上合撚して用いるか、或いはスラブ加工糸と公定水分率８％以下のセルロース系フィラメント糸とを合撚して用いる必要がある。スラブ加工糸を合撚することにより、スラブ部分と非スラブ部分が複雑に重なり合うため、スラブ加工糸単独の場合よりもスラブ表現がマイルドになり、更に、人工的なスラブ外観が改善され、よりナチュラルな表面感が得られる。更に合撚の撚糸効果も加わり、膨らみ感やドライ感、コリコリ感、適度なハリコシ等が得られる。またスラブ加工糸とセルロース系フィラメント糸とを合撚することによって、スラブ加工糸単独の場合よりもスラブ表現がマイルドになり、ナチュラルな表面感が得られ、合撚の撚糸効果も同時に得られる。
【０００９】
本発明の合撚糸の撚方向はスラブ加工糸のスラブ部分が締まる方向に撚糸することが好ましい。例えば、仮撚加工により形成されたスラブ加工糸の場合は仮撚加工の加撚方向と同じ方向に合撚するとよい。スラブ部分が緩む方向に撚糸するとスラブ部分が乱れて外観が悪くなり、風合いもフカついた低級のものとなり、又、生産性も悪くなる。
【００１０】
本発明における公定水分率８％以下のセルロース系フィラメント糸とは、セルロースを原料として、再生或いは半合成された繊維のフィラメント糸であればよく、再生繊維としては、例えばビスコースレーヨン、リヨセル等が、半合成繊維としては、例えばセルロースジアセテート繊維、セルローストリアセテート繊維等が挙げられるが、その製法や種類を特に限定するものではない。また、単糸の断面形状、表面形状、艶、繊度等を特に限定するものではなく、得ようとする織物表現を考慮して任意に選定すればよい。
【００１１】
本発明においてセルロース系フィラメント糸の公定水分率が８％を超えると、水膨潤性による収縮が問題となり洗濯収縮、形態安定性、湿潤堅牢度の問題や、保水性が高く速乾性に劣る等の問題が生じる。このため、ポリエステル系フィラメント糸の混率を高める必要があり、ポリエステル系フィラメント糸の欠点である金属光沢、発色性、ワキシイな硬い風合いが強調され、本発明の目的とする織物が得難い。
【００１２】
本発明におけるポリエステル系フィラメント糸はその製法や種類を特に限定するものではなく、単糸の断面形状、表面形状、艶、繊度、収縮性、伸縮性、染料染着特性等も特に限定するものではない。また、２種類以上のポリエステル系フィラメント糸を複合したものであってもよく目的とする織物の風合いや意匠性により任意に選定すればよい。
【００１３】
本発明の合撚糸におけるセルロース系フィラメント糸の混用率は、７０％以上が必要である。セルロース系フィラメント糸の混用率が７０％を下回ると、セルロース系フィラメント糸の有する高級感に優れた光沢や、ソフトで爽やかな清涼感に優れた風合い、適度な吸湿性による快適な着用感等の特長が抑えられて、本発明の目的とする織物が得られない。
【００１４】
本発明における織物の組織や目付け、密度等は特に限定されるものではなく、得ようとする織物表現を考慮して任意に選定すればよい。
【００１５】
本発明におけるスラブ加工糸は、その製法やスラブ形態を特に限定するものではないが、そのスラブ部分と道中部分の長さの比が１／（５〜１５）のものが好ましく用いられ、より好ましくは１／（７〜１２）である。スラブ部分と道中部分の長さの比が１／５を上回るとスラブ部分が目立ちすぎ、荒れた目風となり、本発明の目的とする織物が得られ難い。また１／１５を下回るとスラブ部分が目立たず、その存在が分かり難くなり、スラブ糸としての意匠性に乏しくなるため、本発明の目的とする織物が得られ難い。
【００１６】
本発明の公定水分率８％以下のセルロース系フィラメント糸は、その製法や種類を特に限定するものではないが、アセテート繊維がその低屈折率からくる鮮明性、発色性、高級感のある光沢、適度なヤング率、分散染料可染性、熱可塑性によるセット性等を有しており好ましく用いられる。因みに、ジアセテートの公定水分率は６．５％、トリアセテートは３．５％であり適度な吸湿性と速乾性を有し、沸水収縮率も約２〜３％と少ない。また風合いや光沢の高級感の点からトリアセテートの使用が更に好ましい。
【実施例】
【００１７】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。また、風合いや外観、発色性等はハンドリングと目視によって評価した。
【００１８】
［実施例１］
ブライト８４ｄｔｅｘ／２０ｆの単糸菊型断面のセルローストリアセテートフィラメント糸（公定水分率３．５％、三菱レイヨン社製、以下、セルローストリアセテートはトリアセテートと略記。）、ブライト４０ｄｔｅｘ／９ｆの単糸菊型断面のトリアセテートフィラメント糸（公定水分率３．５％、三菱レイヨン社製）、及びブライト１１ｄｔｅｘ/ ４f Ｍ２１０単糸丸断面ポリエステルフィラメント糸（三菱レイヨン社製）からなる仮撚加工によるスラブ加工糸（１４５ｄｔｅｘ、トリアセテート混率９２％、スラブ部分と道中部分の長さの比１／９）を用い、該スラブ加工糸を２本引き揃え、仮撚加工の加撚方向であるＺ方向に５００回／ｍの撚糸を施した合撚糸を作成した。該合撚糸を経糸と緯糸に用いて、２／２ななこ織組織の一般にマットと呼ばれる織物を製織した。得られた織物の生機を常法により分散染料にてベージュ色に染色し、裏面にカレンダー仕上加工して、仕上経密度が９４本／２．５４ｃｍ、仕上緯密度が７１本／２．５４ｃｍのマット織物を得た。
【００１９】
得られた織物はソフトで膨らみ感があり、スパンシルク調の独特なドライタッチや軽量感、ハリコシ、ナチュラルな異繊度感等があり、更に、スパンシルク織物調の高級感のある光沢を有し、また、レーヨントワール調の爽やかな清涼感も有し、吸湿性と放湿性に富み、ムレ感の少ない快適な着用感等の、スパンシルク織物の特長を表現しながら、従来得られなかった好適なスパンシルク調織物であった。
【００２０】
［実施例２］
単糸菊型断面のトリアセテートフィラメント糸（三菱レイヨン社製、ブライト８４ｄｔｅｘ／２０ｆ、公定水分率３．５％）と単糸菊型断面のトリアセテートフィラメント糸（三菱レイヨン社製、ブライト４０ｄｔｅｘ/ ９ｆ、公定水分率３．５％）とからなる仮撚加工によるスラブ加工糸（１３５ｄｔｅｘ、トリアセテート混率１００％、スラブ部分と道中部分の長さの比１／９）を用い、該スラブ加工糸と単糸菊型断面のトリアセテートフィラメント糸（三菱レイヨン社製、ブライト１１０ｄｔｅｘ/ ２６ｆ ＬＸＢ、公定水分率３．５％）とを引き揃え、仮撚加工の加撚方向であるＺ方向に５００回／ｍの撚糸を施した合撚糸を作成した。該合撚糸を経糸と緯糸に用いて、平組織の織物を製織した。得られた織物の生機を常法により皺加工を施し、分散染料にて黒色に染色し仕上加工して、仕上経密度が６４本／２．５４ｃｍ、仕上緯密度が５１本／２．５４ｃｍの平織物を得た。
【００２１】
得られた織物は、発色性に優れた深みのあるの黒色が得られ、レーヨントワール調の高級感のある光沢と爽やかな清涼感やソフトで膨らみ感があり、コリコリとしたレーヨントワール織物独特の風合いも得られた。また、スパンシルク調の独特なドライタッチも有し、ハリコシ、ナチュラルな異繊度感等があり、吸湿性と放湿性に富み、ムレ感の少ない快適な着用感等の、レーヨントワール織物の特長を表現した、従来得られなかった好適なレーヨントワール調織物であった。また、皺加工によるナチュラルな表面感を表現していた。
【００２２】
［実施例３]
ポリエステルフィラメント糸（三菱レイヨン社製、セミダル３３ｄｔｅｘ／１２ｆ Ａ１１８単糸丸断面）とポリエステルフィラメント糸（三菱レイヨン社製、セミダル２２ｄｔｅｘ／１２ｆ Ａ２１０単糸丸断面）とからなる仮撚加工によるスラブ加工糸（６４ｄｔｅｘ、ポリエステル混率１００％、スラブ部分と道中部分の長さの比１／９）を用い、該スラブ加工糸と単糸菊型断面のトリアセテートフィラメント糸（三菱レイヨン社製、ブライト２２０ｄｔｅｘ／３４ｆ、公定水分率３．５％）とを引き揃え、仮撚加工の加撚方向であるＺ方向に６００回／ｍの撚糸を施した合撚糸を作成した。該合撚糸を経糸と緯糸に用いて、平組織の織物を製織した。得られた織物の生機を常法により皺加工を施し、分散染料にて茶色に染色し仕上加工して、仕上経密度が５３本／２．５４ｃｍ、仕上緯密度が４４本／２．５４ｃｍの平織物を得た。
【００２３】
得られた織物は、発色性に優れた深みのあるの色が得られ、レーヨントワール調の高級感のある光沢と爽やかな清涼感やソフトで膨らみ感があり、コリコリとしたレーヨントワール織物独特の風合いも得られた。
【００２４】
［比較例１］
ポリエステルフィラメント糸（三菱レイヨン社製、ブライト５６ｄｔｅｘ／３６ｆ Ｅ３２８単糸三角断面）とポリエステルフィラメント糸（三菱レイヨン社製、ブライト３３ｄｔｅｘ／１２ｆ Ｅ２１０単糸丸断面）とからなる仮撚加工によるスラブ加工糸（１０８ｄｔｅｘ、ポリエステル混率１００％、スラブ部分と道中部分の長さの比１／９）を用い、該スラブ加工糸を２本引き揃え、仮撚加工の加撚方向であるＺ方向に３００回／ｍの撚糸を施した合撚糸を作成した。該合撚糸を経糸と緯糸に用いて、３／３ななこ織組織の一般にマットと呼ばれる織物を製織した。得られた織物の生機を常法により分散染料にてベージュ色に染色し、裏面にカレンダー仕上加工して、仕上経密度が１３１本／ｃｍ、仕上緯密度が１００本／ｃｍのマット織物を得た。
【００２５】
得られた織物は、ナチュラルな外観を有し一見するとレーヨントワール織物調であるが、清涼感が乏しく石油由来のワキシイな風合いや金属的な光沢感が強く、満足いくものが得られなかった。
【００２６】
［比較例２］
スラブ加工糸として、単糸菊型断面のセルローストリアセテートフィラメント糸（三菱レイヨン社製、ブライト８４ｄｔｅｘ／２０ｆ、公定水分率３．５％）とポリエステルフィラメント糸（東レ社製、セミダル８４ｄｔｅｘ／２４ｆ Ｚ２７５単糸丸断面シック＆シン）からなる仮撚加工によるスラブ加工糸（２６９ｄｔｅｘ、トリアセテート混率６０％、スラブ部分と道中部分の長さの割合１／３）を用い、該スラブ加工糸を２本引き揃え、仮撚加工の加撚方向であるＺ方向に３００回／ｍの撚糸を施した合撚糸を作成した。該合撚糸を経糸と緯糸に用いて、平組織の一般にガーゼと呼ばれる織物を製織した。得られた織物は、ソフトで膨らみ感がありレーヨントワール調の清涼感やソフトで膨らみ感があるが、スラブ部分が目立ちすぎ、荒れた目風となり満足いくものが得られなかった。
【特許請求の範囲】
【請求項１】
少なくとも２本以上のスラブ加工糸が合撚されてなり、且つ、公定水分率が８％以下のセルロース系フィラメント糸の混率が７０％以上である合撚糸条、を用いたマイルドなスラブ形態を有する織物。
【請求項２】
スラブ加工糸と公定水分率８％以下のセルロース系フィラメント糸とが合撚されてなり、且つ、公定水分率が８％以下のセルロース系フィラメント糸の混率が７０％以上である合撚糸条、を用いたマイルドなスラブ形態を有する織物。
【請求項３】
スラブ加工糸のスラブ部分と道中部分の長さの比が１／（５〜１５）であるスラブ加工糸を用いてなる請求項１または２記載のマイルドなスラブ形態を有する織物。
【請求項４】
公定水分率８％以下のセルロース系フィラメント糸が、セルロースアセテートフィラメント糸である請求項１〜３のいずれかに記載のマイルドなスラブ形態を有する織物。
【請求項１】
少なくとも２本以上のスラブ加工糸が合撚されてなり、且つ、公定水分率が８％以下のセルロース系フィラメント糸の混率が７０％以上である合撚糸条、を用いたマイルドなスラブ形態を有する織物。
【請求項２】
スラブ加工糸と公定水分率８％以下のセルロース系フィラメント糸とが合撚されてなり、且つ、公定水分率が８％以下のセルロース系フィラメント糸の混率が７０％以上である合撚糸条、を用いたマイルドなスラブ形態を有する織物。
【請求項３】
スラブ加工糸のスラブ部分と道中部分の長さの比が１／（５〜１５）であるスラブ加工糸を用いてなる請求項１または２記載のマイルドなスラブ形態を有する織物。
【請求項４】
公定水分率８％以下のセルロース系フィラメント糸が、セルロースアセテートフィラメント糸である請求項１〜３のいずれかに記載のマイルドなスラブ形態を有する織物。
【公開番号】特開２０１０−３７６７８（Ｐ２０１０−３７６７８Ａ）
【公開日】平成２２年２月１８日（２０１０．２．１８）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２００８−２０１０４２（Ｐ２００８−２０１０４２）
【出願日】平成２０年８月４日（２００８．８．４）
【出願人】（３０１０６７４１６）三菱レイヨン・テキスタイル株式会社 (102)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成２２年２月１８日（２０１０．２．１８）
【国際特許分類】
【出願日】平成２０年８月４日（２００８．８．４）
【出願人】（３０１０６７４１６）三菱レイヨン・テキスタイル株式会社 (102)
【Ｆターム（参考）】
[ Back to top ]