説明

マグネットドリル

【課題】マグネットドリルのセンタ決め作業の容易化を図ることで作業効率の向上を達成する。
【解決手段】先端にビット(12)が取り付けられる電動ドリル(14)と、該電動ドリルを前記ビットの軸心方向に昇降自在に保持するとともに、通電することにより磁力を発生して磁性体である穿孔対象物(16)に磁着するためのマグネット(18)を備えたドリルスタンド(22)と、を有するマグネットドリル(10)であって、前記ドリルスタンドの底面(22a)は磁性体からなり、かつ、前記ビットの軸心方向を法線方向として前記マグネットと接触しており、また、ドリルスタンド底面の周縁の一部または全部は前記ビットの軸心を中心とする円弧状に形成されている。この円弧状のドリル先端部を穿孔対象物に仮止めした直線棒角材に当接させながら穿孔することで、特に長尺物などに一列に複数の穿孔をする際の作業効率が向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、穿孔対象物に穿孔などを行うためのドリルに関し、より詳細には、穿孔対象物である磁性体にマグネットを用いてドリルを固定して穿孔などを行うマグネットドリルに関する。
【背景技術】
【0002】
図8に従来から用いられているマグネットドリル(磁気ボール盤)の概略を側面図で示した。このマグネットドリル100は主として、マグネット102を備えたドリルスタンド104と、このドリルスタンドに取り付けられた電動ドリル106から構成されている。なおマグネットは、磁性体である穿孔対象物16に磁着することで、穿孔対象物にマグネットドリルを固定するためのものである。
【0003】
ドリルスタンド104には取り付けた電動ドリル106を昇降用ハンドル108の操作によってビット12の軸心方向に昇降させる昇降機能が備えられている。またドリルスタンド104に備えられたマグネット102は通電することで磁力を発生する電磁石であり、その底面を磁性体とするケーシング112内に収容されている。ケーシング112の底面はビットの軸心方向を法線方向とする平面となっており、ドリルスタンド104の昇降機能は、ケーシング底面の延長面の上側と下側間を電動ドリルに取り付けたビット12の先端が往復移動できるように電動ドリル106を昇降させる。
【0004】
なおマグネットドリルに関する発明としては、例えば特許文献1の「磁気ボール盤のセンタ決め機構」などが発案されている。
【特許文献1】特開2002−454227号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような従来のマグネットドリルによって穿孔対象物に穿孔する際には、実際の穿孔前にドリルスタンドの昇降用ハンドルを回して電動ドリルを押し下げ、ビットの先端を穿孔対象物の穿孔個所に付けたマーキング等に近接させることで、穿孔しようとする穴とビットの軸心を一致させるセンタ決め作業を行っていた。
【0006】
ここで穿孔対象物が配管などを収めるために壁面や天井などに取り付けられた矩形断面を有する長尺物である場合などに、その長手方向一列に複数の穴を所定間隔で穿孔することがある。従来のマグネットドリルでは、このような場合でであっても、上述したセンタ決め作業をマグネットドリルを支えながら行った後に穿孔を行う必要があり、そのためその作業効率が悪かった。なお長尺物の長手方向に複数の穴を穿孔する場合には、その複数の穴が一直線に並んでいることが重要である一方、隣接する穴の間隔はさほど厳密ではないことも多い。
【0007】
またドリルスタンドのマグネットは穿孔対象物に対して電動ドリルを固定する手段としては非常に有用なものであるが、上述したセンタ決め作業において、穿孔個所に付けたマーキングの位置とビットの軸心とがずれていた場合に、磁着した状態ではマグネットドリルを正しい位置にセンタ決めし直すことが極めて困難であるといった問題があった。このことは例えば、穿孔対象物が天井面などに配置されており下側から穿孔しなければならない場合に作業の負担増を招いていた。すなわち、マグネットドリルを穿孔対象物に磁着できれば作業者は下側からマグネットドリルを軽く支える程度で楽に作業することができるものの、マーキングの位置とビットの軸心がずれていた場合には、マグネットへの通電を一旦中止し、下側からしっかりとマグネットドリルを支えながらビットを正しい位置にセンタ決めし直してやる必要があり、かかる作業はマグネットドリルの重さを支えながら上を向いて行う必要があるため困難を伴うといった問題があった。またマグネットへの通電を中止すると、マグネットドリルの自重がこれを支える作業者の手に急激に加わることとなるため、これを落下させてしまうなどの虞もあった。
【0008】
なおマグネットドリルのセンタ決めの際にはその力加減が微妙であり、ドリルスタンド底面と穿孔面との摩擦等によってマグネットドリルが作業者の意に反して大きく移動してしまうことも多く、微細なセンタ決めが困難となることも多かった。
【0009】
本発明はかかる問題点を解決するために創案されたものである。すなわち本発明の目的は、長尺物などに一列に複数の穿孔をする際のセンタ決め作業の容易化を図ることで作業効率の向上を達成することにある。また本発明の他の目的は、マグネットドリルのセンタ決めがずれていた場合等に、正しい位置にセンタ決めし直すことが容易なマグネットドリルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため本発明は、先端にビット(12)が取り付けられる電動ドリル(14)と、該電動ドリルを前記ビットの軸心方向に昇降自在に保持するとともに、通電することにより磁力を発生して磁性体である穿孔対象物(16)に磁着するためのマグネット(18)を備えたドリルスタンド(22)と、を有するマグネットドリル(10)であって、前記ドリルスタンドの底面(22a)は磁性体からなり、かつ、前記ビットの軸心方向を法線方向として前記マグネットと接触しており、また、ドリルスタンド底面の周縁の一部または全部は前記ビットの軸心を中心とする円弧状に形成されている、ことを特徴とするマグネットドリルを提供する。
【0011】
また、前記ドリルスタンド底面(22a)には複数の凹穴(24)が形成され、各凹穴には凹穴の底部に設けた弾性体(26)によって支えられ、かつ、その一部分がドリルスタンド底面から突起するようにしてコロ(28)が取り付けられており、前記マグネット(18)の磁力は、前記コロのみを穿孔対象物(16)に磁着させる強さと、弾性体を変形させることでコロを前記凹穴内に押し込んでドリルスタンド底面全体を穿孔対象物に磁着させる強さに段階的に切替え可能となっている、ことが好ましい。
【0012】
ここで特に、前記マグネット(18)の磁力は、ドリルスタンド底面(22a)にマグネットドリル(10)の自重による圧縮力が作用している場合およびドリルスタンド底面にマグネットドリルの自重による引張力が作用している場合にも、前記コロ(28)のみが穿孔対象物(16)に磁着する状態とドリルスタンド底面全体が穿孔対象物に磁着する状態とを切替え可能となっている、ことも好ましい。
【0013】
なお、前記コロ(28)は球体である、ものとする。
【0014】
また、前記ビット(12)の軸心を含む面内にスリット状の1本の光線を発光する光源(32)が設けられている、ことも好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明のマグネットドリルでは、マグネットが取り付けられたドリルスタンドの底面がビットの軸心方向を法線方向としており、また、ドリルスタンド底面の周縁の一部または全部がビットの軸心を中心とする円弧状に形成されているため、このドリルスタンド底面周縁を、例えば穿孔対象物の穿孔面上に仮止めした直線状の棒角材の側面に当てがうことで、ドリルスタンドが穿孔面内で多少傾いた状態で作業を行ったとしても、棒角材からの距離を一定(半径の長さ)に保ちつつ棒角材に沿って複数の穴を容易に穿孔することができる。なお、上述したように長尺物の長手方向に複数の穴を穿孔する場合には、その複数の穴が一直線に並んでいることが重要である一方、隣接する穴の間隔はさほど厳密ではないことも多いため、本発明のマグネットドリルを用いてやれば、マグネットドリルのセンタ決めを非常に容易に行うことができ、作業効率も格段に向上することとなる。
【0016】
また、ドリルスタンド底面に形成した複数の凹穴に、凹穴の底に配置した弾性体によって支えられ、かつ、その一部分がドリルスタンド底面から突起するようにコロを設けてやり、また、マグネットの磁力を、コロのみが穿孔対象物に磁着する強さと、弾性体を変形させることでドリルスタンド底面全体が穿孔対象物に磁着する強さに段階的に切替え可能とすることで、センタ決め作業において磁着したマグネットドリルの位置が穿孔位置とがずれていた場合にも、コロのみが磁着した状態とすることでこれを容易に正しい位置にセンタ決めし直すことが可能となり、作業効率や作業の安全性を高めることができる。
【0017】
ここでマグネットドリルが、穿孔対象物上に載せ置かれた状態で作業される場合(マグネットドリルの自重による圧縮力がドリルスタンド底面に作用している場合)と穿孔対象物にぶら下がった状態で作業される場合(ドリルスタンド底面にマグネットドリルの自重による引張力が作用している場合)を考慮して、それぞれの場合にマグネットの磁力をコロのみが穿孔対象物に磁着する状態とドリルスタンド底面全体が穿孔対象物に磁着する状態とを切替え可能とすることで、センタ決め作業の際にはコロのみを穿孔対象物に磁着させ、センタ決めが確認された後にはドリルスタンド底面全体を穿孔対象物に磁着させて穿孔作業を行うことができる。これにより、センタ決め作業時の安定性や作業性を高めることができ、特に、下側(および横側)から穿孔対象物に穿孔を行う際の作業者の負担を軽減するとともに安全性をも向上させることができる。
【0018】
なおコロを球体とすれば、センタ決め作業において穿孔面内の全ての方向にマグネットドリルを容易に移動させることができるため便宜である。また、コロを複数平行に並んだ円柱としてやれば、直線状に複数の穿孔を簡易的に行うことができる。
【0019】
また、マグネットドリルのドリルスタンドに、ビットの軸心を含む面内にスリット状の1本の光線を発光する光源を設けてやれば、この光軸のみによってセンタ決めを行うことができる。すなわちドリルスタンド底面の周縁からビット軸心までの距離は一定となるため、その光軸方向とドリルスタンド底面周縁が穿孔対象物(又はその上に仮止めした棒角材)と当接する点とビット軸心とを結んだ方向とが一致しない限り、光軸を穿孔位置に合わせてやるのみでセンタ決めを完了することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明は、例えば壁面や天井などに取り付けられ、配管などを内部に収めた矩形断面を有する長尺物などに、その長手方向一列に複数の穴を所定間隔で穿孔する際に有用なマグネットドリルであり、特に穿孔位置のセンタ決め作業の容易化を図ったものである。以下本発明のマグネットドリルの構造を図面を用いて説明した後に、その使用方法についても簡単に説明する。
【実施例1】
【0021】
図1乃至図3は実施例1のマグネットドリルの構成を説明するための図であり、図1は筐体カバーを透過して表した側面図、図2は図1のA−A断面矢視図、図3は底面図である。
このマグネットドリル10は全体の重さが3.5kg程度のハンディタイプの装置であり、各図に示したように先端にビット12(ドリル刃)が取り付けられた電動ドリル14と、電動ドリル14をビット12の軸心方向に昇降自在に保持するとともに、通電することにより磁力を発生して穿孔対象物16に磁着するマグネット18を備えたドリルスタンド22とから構成されている。このマグネットドリル10は、破線で示した筐体カバー33によってビット12の軸心近傍部分以外の部分が覆われている。
【0022】
ドリルスタンド22は縦×横×高さが15cm×10cm×12cm程度の大きさをしており、マグネットドリル10の上面を構成する天板35とマグネットドリルの底面を構成する底板37とが複数の支柱39によって連結された構造をしている。
この天板35は長方形の金属板の四隅を弧状に切り取った形状をしており、少なくともその先端側の一端はその下側に取り付けられることとなる電動ドリル14のビット12の軸心を中心とする円弧状(図面上では半径Wの円弧)をなしている。
一方底板37は磁性体から形成されており、ビット12が通過することができるようにその先端側が、ビットの軸心を中心とする円弧状(図面上では半径Wの円弧)をなし、そこに半円形の窓部41が開口している。
【0023】
この底板37には通電することで磁力を発生するマグネット18(電磁石)が取り付けられており、このマグネット18はドリルスタンド22に設けられた磁力切替スイッチ43の操作をすることで、電源に接続された制御装置20による制御によって、その磁力の強・弱・切を切替えることができるようになっている。
なお磁力の強弱は、マグネットドリル10がしっかりと穿孔対象物16に磁着して穿孔作業の最中にもドリルがずれてしまうことがない強さと、穿孔対象物16の穿孔面が天井面や垂直面である場合にも、磁着したマグネットドリル10が落下することがない程度の強さとする。ここで磁力の強さの調整を、例えば磁力切替スイッチ43の押操作の時間に対応して無段階(または多段階)に行えるようにしてやることも好ましい。
【0024】
またドリルスタンド22には後述する電動ドリル14を、電動ドリルに取り付けたビット12の軸心方向に昇降させるための昇降機構が備えられている。この昇降機構はドリルスタンド22に設けられた昇降スイッチ45の操作をすることで、電源に接続された制御装置20による制御によって、電動ドリル14の昇降を行う送りモータ47を有している。なお送りモータ47の換わりに、従来のマグネットドリルのように昇降用ハンドルを設けてやることも勿論可能である。
【0025】
電動ドリル14は、主軸モータ49の動力が、歯車を組み合わせて構成された減速機50を経て、ビット12が取り付けられるドリル回転軸51を回転させる構造となっている。主軸モータ49は、ドリルスタンド22に設けられた回転スイッチ53の操作をすることで、電源に接続された制御装置20による制御によって、正転・反転・停止の切り替えができるようになっている。
【0026】
なお磁力切替スイッチ43、昇降スイッチ45、回転スイッチ53は、その操作性を高めるために、作業者がマグネットドリル10を掴んで作業する際に指先が位置することとなるマグネットドリル筐体カバー33側面に配置されている。
【0027】
以上に説明した実施例1のマグネットドリル10は次のように使用される。
矩形断面を有する長尺物の長手方向一列に複数の穴を穿孔する場合には、まず、長尺物(穿孔対象物16)の穿孔面上に、複数の穿孔予定個所と平行するように真っ直ぐな棒角材を仮止めする。その際、穿孔予定個所を結んだ直線と棒角材との距離がマグネットドリル先端の円弧の半径(W)と同じになるようにしてやる。
【0028】
穿孔対象物16に穴を穿孔する際には、マグネットドリル10の先端の円弧状の部分を棒角材の側面に当てがいながら、ビット12が目測により穿孔位置の真上に来るようにスライドさせてセンタ決めし、その状態で磁力切替えスイッチを操作して弱い磁力でマグネットドリル10を穿孔対象物16に磁着させる。そして昇降スイッチ45を操作して電動ドリル14に取り付けたビット12の先端を穿孔位置の近傍まで押し下げることで、センタ決めが正しく行われているかを確認する。センタ決めが正しく行われていない場合には、一度電動ドリル14を引き上げ、マグネットドリル10をその先端を棒角材の側面に当てがいながらずらし、再び昇降スイッチ45を操作してセンタ決めが正しく行われているかを確認する。
センタ決めが正しいことを確認した後には、磁力切替えスイッチを操作して強い磁力でマグネットドリル10を穿孔対象物16にしっかりと磁着させ、それから回転スイッチ53を操作してビット12を正回転させ、その後に昇降スイッチ45を操作して電動ドリル14を押し下げることで穿孔対象物16に穿孔を行う。複数の穿孔は、上記手順を繰り返すことで行われる。
【0029】
以上に説明した本実施例のマグネットドリル10によれば、マグネットドリル10の先端が円弧状に形成されているため、仮止めした直線状の棒角材の側面に当てがうだけで、棒角材からの距離を一定(半径の長さ)に保ちつつ棒角材に沿って複数の穴を穿孔することができる。なお隣接する穴の間隔がさほど厳密ではない場合にあっては、実質的に目視によるセンタ決め作業が不要となるため、作業効率が格段に向上することとなる。
【実施例2】
【0030】
図4乃至図6は実施例2のマグネットドリルの構成を説明するための図であり、図4は筐体カバーを透過して表した側面図、図5は底面図、図6は図5のB−B断面図(マグネットドリル下部のみ)である。
このマグネットドリル10の基本構成は実施例1のマグネットドリル10と同様であるが、ドリルスタンド底面22aにその先端が若干突起する磁性体のコロ28が取り付けられている点が異なっている。そのため以下の説明では、実施例1のマグネットドリルと同様の構成については同一の符号を付すことで、重複した説明を省略する。
【0031】
このコロ28は球体であり、ドリルスタンド底面22aに形成された複数の凹穴24内に、凹穴24から抜け落ちてしまうことがないようにして収容されている。ここでコロ28は凹穴24の底部に設けた弾性体26(バネやゴムなど)による付勢力によって押し出された状態となって凹穴24内に保持されている。なお弾性体26とコロ28との間の転がり抵抗を低減するために、弾性体26とコロ28との間に金属片などを挟み込んでやってもよい。
【0032】
マグネット18の磁力は、突起したコロ28の先端部分のみが穿孔対象物16に磁着する強さと、弾性体26を押しつぶすことでコロ28を凹穴24内に押し込んでドリルスタンド底面22a全体が穿孔対象物16に磁着する強さに切替え(強・弱・切)可能となっている。より詳しくはマグネット18の磁力は、穿孔対象物16に上側から穿孔する場合(マグネットドリルは穿孔対象物上に載置される)および、横側から穿孔する場合又は下側から穿孔する場合(マグネットドリルは穿孔対象物の側面又は下面にぶら下がる)を考慮して、その使用状態に応じた磁力の切り替えが行えるようになっている。
この磁力の切り替えは、実施例1でも言及したように、磁力切替えスイッチの押操作の時間に対応して調節可能としてやってもよいし、例えば振り子式センサなどによってマグネットドリル10の使用状態を検出し、磁力の強弱の強さを、上側から穿孔する場合・横側から穿孔する場合・下側から穿孔する場合に最適な強さに自動的に調整してやることで、作業者にマグネットドリルの使用状態を意識させることなく磁力切替スイッチ43の切替え(強・弱・切)操作のみによって行えるようにしてやることも好ましい。なお弱の磁力の強さは、穿孔対象物16に横側から穿孔する場合や下側から穿孔する場合にも、磁着したマグネットドリル10がずれ落ちない強さにしてやるものとする。
【0033】
本実施例のマグネットドリルによれば、実施例1のマグネットドリルの効果に加え、センタ決め作業を容易に行うことが可能となる。特にセンタ決め作業において、弱く磁着したマグネットドリルの位置が穿孔位置とがずれていた場合などにも、磁着した状態でこれを容易に正しい位置にセンタ決めし直すことが可能となり、作業効率や作業の安全性を高めることができる。
【実施例3】
【0034】
図7は実施例3のマグネットドリルの特徴を説明するための斜視図であり、マグネットドリル先端部を表している。なお本実施例のマグネットドリルの基本構成は実施例2のマグネットドリルと同様であるためその全体像の図面は省略する。
このマグネットドリル10には、センタ決めを容易に行うための光源32が備えられている。
【0035】
この光源32はスリット状の1本の光線を発光するレーザであり、このレーザはマグネットドリル10の一側面に取りけられ、マグネットドリル長手方向と直交する方向に、かつ、電動ドリル14に取り付けられたビット12の軸心を含む面内にレーザ光を照射するようになっている。なお光源32にレーザポインタを用いることもできるが、その場合にはレーザの光軸がマグネットドリル底面同一面とビット軸心とが直交する点を通過するように取り付けてやる必要がある。
【0036】
以上に説明した実施例3のマグネットドリル10によれば、マグネットドリル先端を棒角材に当てがうことで棒角材からの距離を一定に保つことができ、また、スリット状のレーザ光をマグネットドリル長手方向と直交する方向に、かつ、電動ドリル14に取り付けられたビット12の軸心を含む面内にを照射することで、棒角材に沿った方向の位置確認が容易にできる。そのため、ビット先端を穿孔対象物16に近づけなくとも、レーザ光の目視のみによってセンタ決めを正しく行うことができる。
【0037】
以上に説明したように本発明のマグネットドリルでは、長尺物などに一列に複数の穿孔を行う際のセンタ決め作業が容易化され、また、センタ決めがずれていた際にも、マグネットドリルを正しい位置に容易にセンタ決めし直すことができる。
【0038】
なお、本発明の構成は上述したものに限られるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することができるのは勿論である。例えばマグネットドリルの形状(天板及び底板の形状)を前方後円墳型や円型などとすることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】実施例1のマグネットドリルの構成を説明するための側面図である。
【図2】図1のA−A断面矢視図である。
【図3】実施例1のマグネットドリルの底面図である。
【図4】実施例2のマグネットドリルの構成を説明するための側面図である。
【図5】実施例2のマグネットドリルの底面図である。
【図6】図5のB−B断面図(マグネットドリル下部のみ)である。
【図7】実施例3のマグネットドリルの先端部を表した斜視図である。
【図8】従来のマグネットドリル(磁気ボール盤)の概略を表した側面図である。
【符号の説明】
【0040】
10 マグネットドリル
12 ビット
14 電動ドリル
16 穿孔対象物
18 マグネット
20 制御装置
22 ドリルスタンド
22a ドリルスタンド底面
24 凹穴
26 弾性体
28 コロ
32 光源
33 筐体カバー
35 天板
37 底板
39 支柱
41 窓部
43 磁力切替スイッチ
45 昇降スイッチ
47 送りモータ
49 主軸モータ
50 減速機
51 ドリル回転軸
53 回転スイッチ
100 マグネットドリル
102 マグネット
104 ドリルスタンド
106 電動ドリル
108 昇降用ハンドル
112 ケーシング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端にビット(12)が取り付けられる電動ドリル(14)と、該電動ドリルを前記ビットの軸心方向に昇降自在に保持するとともに、通電することにより磁力を発生して磁性体である穿孔対象物(16)に磁着するためのマグネット(18)を備えたドリルスタンド(22)と、を有するマグネットドリル(10)であって、
前記ドリルスタンドの底面(22a)は磁性体からなり、かつ、前記ビットの軸心方向を法線方向として前記マグネットと接触しており、また、ドリルスタンド底面の周縁の一部または全部は前記ビットの軸心を中心とする円弧状に形成されている、ことを特徴とするマグネットドリル。
【請求項2】
前記ドリルスタンド底面(22a)には複数の凹穴(24)が形成され、
各凹穴には凹穴の底部に設けた弾性体(26)によって支えられ、かつ、その一部分がドリルスタンド底面から突起するようにしてコロ(28)が取り付けられており、
前記マグネット(18)の磁力は、前記コロのみを穿孔対象物(16)に磁着させる強さと、弾性体を変形させることでコロを前記凹穴内に押し込んでドリルスタンド底面全体を穿孔対象物に磁着させる強さに段階的に切替え可能となっている、ことを特徴とする請求項1に記載のマグネットドリル。
【請求項3】
前記マグネット(18)の磁力は、ドリルスタンド底面(22a)にマグネットドリル(10)の自重による圧縮力が作用している場合およびドリルスタンド底面にマグネットドリルの自重による引張力が作用している場合にも、前記コロ(28)のみが穿孔対象物(16)に磁着する状態とドリルスタンド底面全体が穿孔対象物に磁着する状態とを切替え可能となっている、ことを特徴とする請求項2に記載のマグネットドリル。
【請求項4】
前記コロ(28)は球体である、ことを特徴とする請求項2又は3に記載のマグネットドリル。
【請求項5】
前記ビット(12)の軸心を含む面内にスリット状の1本の光線を発光する光源(32)が設けられている、ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のマグネットドリル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−801(P2009−801A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−166749(P2007−166749)
【出願日】平成19年6月25日(2007.6.25)
【出願人】(301053682)有限会社機装工業 (2)
【Fターム(参考)】