説明

マグネトロン駆動用電源

【課題】パターンが断裂することなくプリント基板を取り付け板に取り付けることができる、マグネトロン駆動電源を提供する。
【解決手段】プリント基板と、前記プリント基板上に電源の電力を高周波に変換するための半導体スイッチング素子およびコンデンサを含むインバータ回路と、前記インバータ回路により高周波化された電力を高圧に変換しかつ高圧を必要とするマグネトロンに電力を供給する昇圧トランスと、前記半導体スイッチング素子の発熱を冷却する放熱フィンを備え、前記高圧トランスと前記放熱フィンの間を支える補強用部材を備えたことにより、プリント基板のパターンが断裂することなくプリント基板を取り付け板に取り付けることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子レンジなどのマグネトロンを負荷とする、マグネトロン駆動用電源に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のマグネトロン駆動用電源について、図面を用いて説明する。図6は、従来のマグネトロン駆動用電源の外観を示す正面図である。図7は、同電源のプリント基板における半導体スイッチング素子の取り付け部の半田面を示す要部拡大図である。図8は、同電源の回路を示すブロック構成図である。
【0003】
これらの図において、マグネトロン駆動用電源は、単方向電源部1と、インバータ回路部2と、駆動回路3と、高圧整流回路4と、マグネトロン5とを有している。単方向電源部1は、商用電源101からの交流電源を全波整流するダイオードブリッジ102と、チョークコイル103及びコンデンサ104よりなるローパスフィルタ回路であり、インバータ回路部2の高周波スイッチング動作に対するフィルタの役割を果たすものである。
【0004】
インバータ回路部2は、共振コンデンサ201と、半導体スイッチング素子202と、転流ダイオード203と、昇圧トランス204から構成される。スイッチング素子202は、駆動回路3より与えられる、20〜50kHzのスイッチング制御信号によって、スイッチング動作をする。これにより、昇圧トランス204の一次巻線には、高周波電圧が発生する。
【0005】
高圧整流回路3は、コンデンサ401及び402と、ダイオード403及び404とから構成されており、昇圧トランス204の二次巻線で発生した電圧を半波倍電圧整流することで高圧直流電圧を発生し、マグネトロン5に印加する。
【0006】
マグネトロン5には、昇圧トランス204のヒータ巻線から、ヒータ用の交流電圧も印加される。マグネトロン5は、ヒータ用の交流電圧が印加されることで、陰極が傍熱されて発振可能な状態となり、この状態で高圧電流電圧が印加されると、電磁波エネルギーを発生する。
【0007】
前記インバータ回路部2の半導体スイッチング素子202は、図6のように発熱を冷却する放熱フィン6を備えている。また、放熱フィン6と昇圧トランス204が、プリント基板側面に位置している。
【0008】
さらに、半導体スイッチング素子202のリード端子部分を半田面側から見た要部拡大図の2つのパターン例を、図7(a)、(b)に示す。図7(a)、(b)に示すように、半導体スイッチング素子204のゲートG、エミッタE、コレクタCのリード端子のプリント基板には、スリットS1,S2,S3が設けられる。
【0009】
この理由は、半導体スイッチング素子204は発熱が大きく、リード線を伝いプリント基板へ熱応力が発生してしまうため、この熱応力を軽減させるためである。なお、上記従来のマグネトロン駆動用電源の構成については、特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第3986462号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、このような構成ではマグネトロン駆動用電源をセット(インバータの取り付け板)に実装する際、昇圧トランス204と放熱フィン6との間を持って実装すると、半導体スイッチング素子202のスリットへの過度の応力が発生してしまい、半導体スイッチング素子202のパターンが断裂し、半導体スイッチング素子202が壊れてしまうという問題があった。
【0012】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、基板のパターンが断裂せずにインバータを取り付けることを可能としたマグネトロン駆動用電源を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記従来の課題を解決するために、本発明のマグネトロン駆動用電源は、プリント基板と、前記プリント基板上に電源の電力を高周波に変換するための半導体スイッチング素子およびコンデンサを含むインバータ回路と、前記インバータ回路により高周波化された電力を高圧に変換しかつ高圧を必要とするマグネトロンに電力を供給する昇圧トランスと、前記半導体スイッチング素子の発熱を冷却する放熱フィンを備え、前記昇圧トランスと前記放熱フィンの間を支える補強用部材を備えることにより、前記プリント基板のパターン断裂することなく、プリント基板を取り付けることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明のマグネトロン駆動用電源は、昇圧トランスと放熱フィンとの間に補強用部材を取り付けることにより、プリント基板のパターンが断裂することなく前記プリント基板を取り付け板に取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態1における補強用部材の断面図と同補強用部材の側面図
【図2】本発明の形態におけるマグネトロン駆動用電源の外観を示す正面図
【図3】本発明の実施の形態1における放熱フィンに半導体スイッチング素子を設けた構成を示す正面図
【図4】本発明の実施の形態2における放熱フィンに半導体スイッチング素子とダイオードブリッジとを設けた構成を示す正面図
【図5】本発明の実施の形態3における放熱フィンに2つの半導体スイッチング素子とダイオードブリッジとを設けた構成を示す正面図
【図6】従来のマグネトロン駆動用電源におけるマグネトロン駆動用電源の外観を示す正面図
【図7】従来のマグネトロン駆動用電源におけるプリント基板の半田面から見た半導体スイッチング素子のリード端子部分の要部拡大図
【図8】従来のマグネトロン駆動用電源の回路を示すブロック構成図
【発明を実施するための形態】
【0016】
第1の発明は、プリント基板と、前記プリント基板上に電源の電力を高周波に変換するための半導体スイッチング素子およびコンデンサを含むインバータ回路と、前記インバータ回路により高周波化された電力を高圧に変換しかつ高圧を必要とするマグネトロンに電力を供給する昇圧トランスと、前記半導体スイッチング素子の発熱を冷却する放熱フィンを備え、前記昇圧トランスと前記放熱フィンの間を支える補強用部材を備えたものである。
【0017】
これにより、プリント基板のパターンが断裂することなく前記プリント基板を取り付け
板に取り付けることができる。
【0018】
第2の発明は、第1の発明において、補強用部材が昇圧トランスのコアを押さえつけるものである。これにより、コアの振動を抑えることができる。
【0019】
第3の発明は、第1の発明において、補強用部材と昇圧トランスを熱溶融させて固定するものである。これにより、容易に補強用部材とコアを固定することができる。
【0020】
第4の発明は、第1から第3のいずれか一つの発明において、半導体スイッチング素子の発熱を冷却する放熱フィンが、半導体スイッチング素子と商用電源を整流するダイオードブリッジの両方を備えるものである。これにより、半導体スイッチング素子とダイオードブリッジの両方を冷却することができる。
【0021】
第5の発明は、第1から第3のいずれか一つの発明において、半導体スイッチング素子の発熱を冷却する放熱フィンが、少なくとも2つの半導体スイッチング素子と商用電源を整流するダイオードブリッジの両方を備えるものである。これにより、半導体スイッチング素子とダイオードブリッジの両方を冷却することができる。
【0022】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0023】
(実施の形態1)
図1(a)は、本発明の第1の実施の形態におけるマグネトロン駆動用電源の補強用部材の正面図、図1(b)は同補強用部材の側面図、図2は、同マグネトロン駆動用電源の外観を示す正面図、図3は、放熱フィンに半導体スイッチング素子を設けた構成を示す正面図である。
【0024】
本実施の形態のマグネトロン駆動用電源は、プリント基板上7に昇圧トランス204と放熱フィン6がプリン基板7側面に配置しており、その間にパターン断裂を防ぐ補強部材8を備えている構成となっている。
【0025】
また、昇圧トランスと補強部材は熱溶融させることにより容易に固定することができる。さらに、補強部材8は昇圧トランス204のコア9を押さえる構成となっていることにより、コア9の振動を抑えることができる。
【0026】
このように上記補強部材8は、昇圧トランス204と放熱フィン6の間に挿入する構成となっていることにより、マグネトロン駆動用電源をセット(インバータの取り付け板)に実装する際、昇圧トランス204と放熱フィン6間を持って実装したとしても、さらに半導体スイッチング素子202のスリットがあったとしても、半導体スイッチング素子部202のパターンが断裂せずに挿入することができる。
【0027】
(実施の形態2)
図4は、図2に示した上記実施の形態1の放熱フィンの種類を変更した、本発明の実施の形態2の放熱フィン6を示した図である。
【0028】
図4に示すように、半導体スイッチング素子202の発熱を冷却する放熱フィン6が、半導体スイッチング素子と商用電源を整流するダイオードブリッジ102の両方を設けている場合の放熱フィンの構成においても実施の形態1と同様に昇圧トランス204と放熱フィン6間に補強部材8を挿入することができる。
【0029】
(実施の形態3)
図5は、図2に示した上記実施の形態1の放熱フィンの種類を変更した、本発明の実施の形態2の放熱フィン6を示した図である。
【0030】
図5に示すように、少なくとも2つの半導体スイッチング素子202、205と商用電源を整流するダイオードブリッジ102の両方を設けている場合の放熱フィン6の構成においても実施の形態1と同様に昇圧トランス204と放熱フィン6間に補強部材8を挿入することができる。
【0031】
以上、本発明の各種実施形態を説明したが、本発明は前記実施形態において示された事項に限定されず、明細書の記載、並びに周知の技術に基づいて、当業者がその変更・応用することも本発明の予定するところであり、保護を求める範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
以上のように、本発明にかかるマグネトロン駆動用電源は、電子レンジ等のマイクロ波加熱装置に適応できるものであり、昇圧トランスと放熱フィンとの間に補強用部材を取り付けることにより、プリント基板のパターンが断裂することなく前記プリント基板を取り付け板に取り付けることができる。
【符号の説明】
【0033】
1 単方向電源部
2 インバータ回路部
3 駆動回路
4 高圧整流回路
5 マグネトロン
6 放熱フィン
7 プリント基板
8 補強部材
9 コア
101 商用電源
102 ダイオードブリッジ
103 チョークコイル
104 コンデンサ
201 共振コンデンサ
202 半導体スイッチング素子
203 転流ダイオード
204 昇圧トランス
205 半導体スイッチング素子
401、402 コンデンサ
403、404 ダイオード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリント基板と、前記プリント基板上に電源の電力を高周波に変換するための半導体スイッチング素子およびコンデンサを含むインバータ回路と、前記インバータ回路により高周波化された電力を高圧に変換しかつ高圧を必要とするマグネトロンに電力を供給する昇圧トランスと、前記半導体スイッチング素子の発熱を冷却する放熱フィンを備え、前記高圧トランスと前記放熱フィンの間を支える補強用部材を備えたマグネトロン駆動用電源。
【請求項2】
前記補強用部材が、昇圧トランスのコアを押さえつける構成を有する請求項1に記載のマグネトロン駆動用電源。
【請求項3】
前記補強用部材が、補強用部材と昇圧トランスを熱溶融させて固定する構成とした請求項1に記載のマグネトロン駆動用電源
【請求項4】
前記放熱フィンが、前記半導体スイッチング素子と商用電源を整流するダイオードブリッジの両方を備えた請求項1〜3のいずれか1項に記載のマグネトロン駆動用電源。
【請求項5】
前記放熱フィンが、少なくとも二つの前記半導体スイッチング素子と商用電源を整流するダイオードブリッジを備えた請求項1〜3のいずれか1項に記載のマグネトロン駆動用電源。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−60568(P2011−60568A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−208900(P2009−208900)
【出願日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】