説明

マグネトロン

【課題】 電源部筐体内での冷却液の漏れによる短絡事故の発生を防止して、安全に連続稼働させることのできる液体冷却方式のマグネトロンを得る。
【解決手段】 電源部筐体7内に配置されるマグネトロン11は、円筒陽極体が嵌合する冷却ブロック54と、冷却ブロック54に接続された枠状継鉄6と、この枠状継鉄6に取り付けられると共に貫通形成された液供給路と液排出路との一端が電源部筐体7の外部に露出する中継ブロック81と、中継ブロック81の液供給路及び液排出路と冷却ブロック54の液流路53とを連通させた耐熱性配管83,84とを備え、電源部筐体7の外部に露出する中継ブロック81の液供給路及び液排出路に、外部からの冷却液供給管71及び冷却液戻し管72を接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ波を使って所定の処理を行う処理装置の、電源部筐体内に配置される液体冷却方式のマグネトロンに関する。
【背景技術】
【0002】
マグネトロンを構成する円筒陽極体は、動作時に熱損失が発生して高温になるため、冷却が必要となる。
家庭用の電子レンジ等に搭載されるマグネトロンは、出力が900W程度で、出力が比較的に小さいため、円筒陽極体の冷却には、円筒陽極体の外周に複数の放熱板(フィン)を設けて、それらの放熱板に空気流を送る空気冷却方式が採用されている。
【0003】
しかし、マイクロ波を使って所定の処理を行う工業用の処理装置(例えば、生ゴミ乾燥処理機)に搭載されるマグネトロンは、出力が1.5〜5kW程度となり、出力が大きいため、空気冷却方式による冷却では、十分な冷却効果が期待できない。
そこで、工業用の処理装置に搭載されるマグネトロンの場合、円筒陽極体の冷却には、一般的に、適宜冷却液を使った液体冷却方式が採用される。
【0004】
図4乃至図6は、工業用の処理装置に搭載されるマグネトロンの従来例を示したものである。
ここに示したマグネトロン1は、内部の中心軸上に陰極体を収容した円筒陽極体3と、この円筒陽極体3が嵌合する陽極嵌合穴51を有した割り入りブロック本体52の内部に冷却液を挿通する液流路53が形成された冷却ブロック54と、この冷却ブロック54に接続された枠状継鉄6とを備えた構成で、図6に示すように、マイクロ波を使って所定の処理を行う処理装置の電源部筐体7内に配置される。
そして、円筒陽極体3は、外部から冷却ブロック54の液流路53に流される冷却液によって冷却される。
【0005】
ブロック本体52は、図5に示すように、陽極嵌合穴51に連通する半径方向の割り56を備え、この割り56を挟んで対峙する一対のフランジ部57a,57bをボルト58で締め付けることで、陽極嵌合穴51の内周が円筒陽極体3の外周に密着して、円筒陽極体3から冷却ブロック54への熱伝導が良好になる。
【0006】
冷却ブロック54の液流路53は、ブロックの一端面から互いに略平行に穿孔された2本の流路孔55a,55bと、この2本の流路孔55a,55bを連通するようにブロックの他の端面から穿孔された連通用流路孔55cとの3本の流路孔55a,55b,55cによって略コ字状に形成されている。3本の流路孔55a,55b,55cの内、連通用流路孔55cの開口端はプラグ59の螺着によって封止されている。これにより、液流路53は、例えば、液流路55aの開口端が給液口53aで、液流路55bの開口端が排液口53bとなる一連の液流路として機能する。
【0007】
図6に示すように、電源部筐体7内に配置された冷却ブロック54の給液口53a及び排液口53bには、配管継手71,72を介して、外部の冷却液供給管73及び冷却液戻し管74が接続されて、冷却ブロック54への冷却液の給排水が行われる(例えば、特許文献1,2参照)。
【0008】
【特許文献1】特開平5−54805号公報
【特許文献2】特開平4−284334号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところが、外部から冷却ブロック54に接続される冷却液供給管73,冷却液戻し管74は、通常、例えばシリコン樹脂等で形成された樹脂製ホースで、耐熱性が低いために、電源部筐体7内での発熱部からの輻射熱で溶けて、電源部筐体7内の電源部品の短絡事故を招く虞があった。
また、プラグ59や配管継手71,72は、いずれも、ねじの螺合によって冷却ブロック54に固定されるもので、加熱による伸縮の繰り返しによって締め付けが緩んで、これらの部品の接続部から冷却液が漏れて、電源部筐体7内の電源部品の短絡事故を招く虞があった。
【0010】
本発明は上記事情に鑑みなされたもであり、その目的は、電源部筐体内での冷却液の漏れによる短絡事故の発生を防止して、安全に連続稼働させることのできる液体冷却方式のマグネトロンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的は下記構成により達成される。
(1) 円筒陽極体と、この円筒陽極体に嵌合し外部から流される冷却液によって該円筒陽極体の冷却を行う冷却ブロックと、この冷却ブロックに接続された枠状継鉄とが、マイクロ波を使って所定の処理を行う処理装置の電源部筐体内に配置されるマグネトロンであって、
液供給路と液排出路とが貫通形成されると共に、前記液供給路と液排出路の一端が前記電源部筐体の外部に露出するように前記枠状継鉄に取り付けられた中継ブロックと、この中継ブロックの液供給路及び液排出路の他端を前記冷却ブロックに接続する耐熱性配管とを備え、
前記中継ブロックの一端に開口した液供給路と液排出路に、外部からの冷却液供給管及び冷却液戻し管とが接続されることを特徴とするマグネトロン。
【0012】
(2) 上記(1)において、前記冷却ブロックの液流路は、ブロックの一端面から互いに略平行に穿孔された2本の流路孔と、この2本の流路孔を連通するようにブロックの他の端面から穿孔された連通用流路孔との3本の流路孔によって略コ字状に形成され、前記連絡用流路孔の開口端は、プラグをロウ付けすることによって封止したことを特徴とするマグネトロン。
【発明の効果】
【0013】
上記(1)に記載のマグネトロンでは、例えば、耐熱性の低い樹脂製ホースが使用される外部からの冷却液供給管及び冷却液戻し管は、電源部筐体の外部に露出した中継ブロックに接続され、電源部筐体内に引き込まれないため、電源部筐体内での発熱部からの輻射熱による加熱を回避できる。そして、外部からの冷却水の循環のために、冷却ブロックと中継ブロックとの間を接続する管路は耐熱性配管を使用しているため、電源部筐体内の輻射熱を受けても、溶けることがない。
従って、電源部筐体内での冷却液の管路の溶けによる冷却液の漏出を防止でき、冷却液の漏れによる短絡事故の発生を防止して、安全に連続稼働させることができる。
【0014】
上記(2)に記載のマグネトロンでは、冷却ブロックへのプラグの固着・封止が、従来の螺着ではなく、ロウ付けに変更されているため、熱膨張の繰り返しを受けても、固着状態が緩むことがなく、プラグ等のねじ止め部の緩みによる冷却液の漏れも完全に防止することができて、冷却液の漏れによる短絡事故の発生を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明に係るマグネトロンの好適な実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
なお、以下に説明する実施の形態において、既に図4乃至図6において説明した部材と同一の構成については、図中に同一符号あるいは相当符号を付すことにより説明を簡略化あるいは省略する。
【0016】
図1は、本発明に係るマグネトロンの一実施の形態を示したものである。
ここに示したマグネトロン11は、内部の中心軸上に陰極体を収容した円筒陽極体3と、この円筒陽極体3が嵌合する陽極嵌合穴51を有した割り入りブロック本体52の内部に冷却液を挿通する液流路53が形成された冷却ブロック54と、この冷却ブロック54に接続された枠状継鉄6と、この枠状継鉄6にねじ62によって締結されて取り付けられた中継ブロック81と、この中継ブロック81と枠状継鉄6との間を接続する耐熱性配管83,84とを備えた構成で、図3にも示したように、マイクロ波を使って所定の処理を行う処理装置の電源部筐体7内に配置される。
そして、円筒陽極体3は、外部から中継ブロック81及び耐熱性配管83,84を介して冷却ブロック54の液流路53に流される冷却液によって冷却される。
【0017】
以上の構成において、円筒陽極体3、冷却ブロック54、枠状継鉄6、電源部筐体7等は、図4乃至図6に示したマグネトロンの場合と共通である。
即ち、ブロック本体52は、図2に示すように、陽極嵌合穴51に連通する半径方向の割り56を備え、この割り56を挟んで対峙する一対のフランジ部57a,57bを不図示のボルトで締め付けることで、陽極嵌合穴51の内周が円筒陽極体3の外周に密着して、円筒陽極体3から冷却ブロック54への熱伝導が良好になる。
【0018】
また、冷却ブロック54の液流路53は、ブロックの一端面から互いに略平行に穿孔された2本の流路孔55a,55bと、この2本の流路孔55a,55bを連通するようにブロックの他の端面から穿孔された連通用流路孔55cとの3本の流路孔55a,55b,55cによって略コ字状に形成されている。3本の流路孔55a,55b,55cの内、連通用流路孔55cの開口端はプラグ86のロウ付けによって封止されている。これにより、液流路53は、例えば、液流路55aの開口端が給液口53aで、液流路55bの開口端が排液口53bとなる一連の液流路として機能する。
【0019】
中継ブロック81は、液供給路と液排出路とが一端から他端に貫通形成されると共に、図1及び図3に示すように、前記の液供給路と液排出路が開口する一端が電源部筐体7の外部に露出するように枠状継鉄6に取り付けられている。
【0020】
耐熱性配管83,84は、何れも、樹脂製ホースと比較して高い耐熱性を有する銅製チューブである。
耐熱性配管83は、中継ブロック81に貫通形成された液供給路の他端開口を、冷却ブロック54の液流路53の給液口53aに接続している。耐熱性配管84は、中継ブロック81に貫通形成された液排出路の他端開口を、冷却ブロック54の液流路53の排液口53bに接続している。また、各銅製チューブの各ブロックへの接続部は、ロウ付けによって固定されると同時に、気密に封止されている。
【0021】
そして、中継ブロック81の一端に開口した液供給路と液排出路に、樹脂製ホースを使った外部からの冷却液供給管73及び冷却液戻し管74とが、配管継手71,72を介して接続されている。
【0022】
以上のマグネトロン11では、例えば、耐熱性の低い樹脂製ホースが使用される外部からの冷却液供給管73及び冷却液戻し管74は、電源部筐体7の外部に露出した中継ブロック81に接続され、電源部筐体7内に引き込まれないため、電源部筐体7内での発熱部からの輻射熱による加熱を回避できる。そして、外部からの冷却水の循環のために、冷却ブロック54と中継ブロック81との間を接続する管路は耐熱性配管83,84を使用しているため、電源部筐体7内の輻射熱を受けても、溶けることがない。
従って、電源部筐体7内での冷却液の管路の溶けによる冷却液の漏出を防止でき、冷却液の漏れによる短絡事故の発生を防止して、安全に連続稼働させることができる。
【0023】
また、上記実施の形態のマグネトロン11では、冷却ブロック54へのプラグ86の固着・封止が、従来の螺着ではなく、ロウ付けに変更されているため、また、冷却ブロック54への耐熱性配管83,84の接続が、従来の配管継手71,72(図5参照)によるねじの螺合ではなく、ロウ付けに変更されているため、熱膨張の繰り返しを受けても、固着状態が緩むことがなく、プラグ等のねじ止め部の緩みによる冷却液の漏れも完全に防止することができて、冷却液の漏れによる短絡事故の発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係るマグネトロンの一実施の形態の電源部筐体への取付け状態の側面図である。
【図2】図1のマグネトロンに使用している冷却ブロックと中継ブロックの接続図である。
【図3】図1に示したマグネトロンの電源部筐体に取り付けた状態の平面図である。
【図4】従来のマグネトロンの側面図である。
【図5】図4に示した冷却ブロックの斜視図である。
【図6】図4に示したマグネトロンの電源部筐体に取り付けた状態の平面図である。
【符号の説明】
【0025】
3 円筒陽極体
6 枠状継鉄
7 電源部筐体
51 陽極嵌合穴
52 ブロック本体
53 液流路
53a 給液口
53b 排液口
54 冷却ブロック
55a,55b 流路孔
55c 連通用流路孔
81 中継ブロック
83,84 耐熱性配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒陽極体と、この円筒陽極体に嵌合し外部から流される冷却液によって該円筒陽極体の冷却を行う冷却ブロックと、この冷却ブロックに接続された枠状継鉄とが、マイクロ波を使って所定の処理を行う処理装置の電源部筐体内に配置されるマグネトロンであって、
液供給路と液排出路とが貫通形成されると共に、前記液供給路と液排出路の一端が前記電源部筐体の外部に露出するように前記枠状継鉄に取り付けられた中継ブロックと、この中継ブロックの液供給路及び液排出路の他端を前記冷却ブロックに接続する耐熱性配管とを備え、
前記中継ブロックの一端に開口した液供給路と液排出路に、外部からの冷却液供給管及び冷却液戻し管とが接続されることを特徴とするマグネトロン。
【請求項2】
前記冷却ブロックの液流路は、ブロックの一端面から互いに略平行に穿孔された2本の流路孔と、この2本の流路孔を連通するようにブロックの他の端面から穿孔された連通用流路孔との3本の流路孔によって略コ字状に形成され、前記連絡用流路孔の開口端は、プラグをロウ付けすることによって封止したことを特徴とする請求項1に記載のマグネトロン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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