説明

マスキングセット

【課題】凹部の奥端に設定された非塗装領域を、容易かつ正確に塗装から保護することができるマスキングセットを提供する。
【解決手段】マスキングセット5は、塗装される部材1における凹部2の奥端に嵌着され、非塗装領域2Aの主要部を被覆するマスキング用治具6と、該マスキング用治具6で被覆されない非塗装領域2Aの残部と該嵌着状態にあるマスキング用治具6の表面とに跨って貼着される被覆シート7とからなる。そして、塗装前に前記マスキングセット5を部材1に装着してから、塗装を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗装される部材に形成された凹部の内面であって該凹部の奥端を含む領域に設定されている非塗装領域を、該塗装から保護するマスキングセットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
図1,2に示されるような自動車用バンパー等の部材1は、表面に塗装処理されることが一般的である。また、該部材1は、意匠あるいは機能の点から凹部2が形成されていることが多く、さらにその奥端を含む内面に非塗装領域2Aが設定される場合がある。図1に示す例では、前記凹部2の奥端に形成された貫通孔3(空気孔)周りに、非塗装領域2Aが設定されている。
【0003】
そして、該部材1に塗装を施す場合は、マスキング材を利用することが一般的である(例えば、特許文献1参照)。該マスキング材は、部材1の設計と合わせて設計および製造されることが通例であるが、なかには専用のマスキング材が製造されていない場合があった。このような場合は、シール等の粘着シートを、該非塗装領域2Aを覆うようにして貼り付けてから塗装処理するようにしていた(例えば、特許文献1,2参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2008-136952号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の非塗装領域を被覆する粘着シートの貼着箇所は、凹部のくぼみ形状に起因して湾曲部分であったり、奥まった狭小部分であったりすることが多く、粘着シートを所定部位に正確に貼り付けることは非常に困難かつ面倒であり、マスキングの精度が低下するという問題があった。
そこで、本発明は、上記のような凹部の奥端に設定された非塗装領域を、容易かつ正確に塗装から保護することができるマスキングセットを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記従来の問題点を解決するための手段として、塗装される部材に形成された凹部の内面であって該凹部の奥端を含む領域に設定されている非塗装領域を、該塗装から保護するマスキングセットであって、前記凹部の奥端に嵌着され、前記非塗装領域の主要部を被覆するマスキング用治具と、該マスキング用治具で被覆されない非塗装領域の残部と該嵌着状態にあるマスキング用治具の表面とに跨って貼着される被覆シートと、からなることを特徴とするマスキングセットを提供するものである。
前記マスキング用治具及び/又は前記被覆シートにおける貼着面には、粘着層が形成されていることが好ましい。
また、前記粘着層は、離型性を有する構成が好ましい。
また、前記被覆シートの貼着面に、粘着層が形成され、前記マスキング用治具が、表面が離型性を有する材料からなる構成としてもよい。
また、前記マスキング用治具及び/又は前記被覆シートは、紙材料からなるものでもよい。
さらに、前記凹部内に桟が差し渡されている場合は、前記マスキング用治具に、該凹部に嵌着された際に前記桟が挿入される桟挿入溝が凹設されていることが望ましい。
【発明の効果】
【0007】
〔作用〕
上記の構成にあって、前記部材を塗装する際には、まず凹部の奥端に前記マスキング用治具を嵌着し、そして該マスキング用治具の上から被覆シートを貼着して、非塗装領域を完全に被覆する。ここで、前記マスキング用治具は、あらかじめ該凹部における奥端の形状に対応して成形される。本発明は、該マスキング用治具を土台にして被覆シートを貼着することができるため、被覆シートの貼着作業が極めて容易であり、マスキングの精度も飛躍的に向上する。
また、前記粘着層が離型性を有する構成、あるいは、粘着層のある被覆シートを表面が離型性を有する材料からなるマスキング用治具に貼着する構成とすると、該被覆シートと該マスキング用治具とを繰り返し貼り付けたり剥がしたりすることができる。
また、マスキング用治具及び/又は前記被覆シートを紙材料で構成すると、軽量で安価な部材とすることができる。
さらに、マスキング用治具に桟挿入溝が設けられると、桟付きの凹部であっても支障なく嵌着させることができる。
【0008】
〔効果〕
本発明は、凹部の奥端に設定された非塗装領域を容易に被覆することができるため、マスキング精度が向上すると共に、マスキング作業に要する作業時間を飛躍的に短縮できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明のマスキングセット5は、塗装対象の部材1に設定された非塗装領域2Aを、塗装時に保護するものである。更に述べると、本発明における非塗装領域2Aは、部材1に凹設された凹部2の奥端に設定されている。以下、本発明の実施例を添付図面に従って説明する。
【0010】
〔部材〕
前記部材1は、図1等に示されるように、例えば自動車用バンパーであり、その前面部に凹部2が形成され、該凹部2の奥端に空気孔としての貫通孔3が設けられている。そして、該凹部2の内面であって該貫通孔3の周囲に、塗装を施さない非塗装領域2Aが設定されている。すなわち、図2に示すように、貫通孔3周りの非塗装領域2Aには塗膜が形成されず、非塗装領域2A以外の領域に塗膜10が形成される。なお、前記の部材1は、自動車用バンパー等の自動車用部品に限定されることはなく、塗装対象となる部材は全て含まれる。
【0011】
〔マスキングセット〕
前記マスキングセット5は、図3に示すように、マスキング用治具6と被覆シート7とからなる。
該マスキング用治具6は、前記部材1にある凹部2の奥端に適嵌され、かつ該適嵌状態で、前記非塗装領域2Aの主要部を被覆しうる寸法形状に成形されている。一方、被覆シート7は、図4に示されるように、基材71と該基材71の一側に積層される粘着層72と、該粘着層72表面に貼着される離形紙73とからなる。
【0012】
上記構成にあって、前記非塗装領域2Aを保護しつつ、部材1を塗装するには、図3に示すように、塗装前に前記凹部2の奥端にマスキング用治具6を嵌着させる。このとき、該マスキング用治具6によって、非塗装領域2Aの主要部が被覆される。そして、該非塗装領域2Aの残部を被覆すべく、前記離形紙73を剥がして粘着層72を露出させた前記被覆シート7を貼着する。該被覆シート7は、該マスキング用治具6の平らな上面と非塗装領域2Aの残部とに跨って貼着される。このように、該被覆シート7は、前記マスキング用治具6の上面を用いて貼着する。
上記マスキングセット5により非塗装領域2Aの全部を被覆すると、マスキング工程が完了し、図5に示すように、塗装処理が行われる。
【0013】
塗装処理が終わると、該マスキングセット5(被覆シート7とマスキング用治具6)を凹部2から取り外す。本発明は、前記被覆シート7を、前記マスキング用治具6を土台にして貼着するため、被覆シート7の作業性が極めて良い。
【0014】
前記マスキング用治具6は、シリコーン樹脂、フッソ樹脂等のそれ自体が離型性を有する材料とするのが好ましい。該材料であると、被覆シート7を繰り返し貼り付けたり剥がしたりすることができる。
また、該マスキング用治具6は、これに限定されず、他の材料を選択してもよい。例えば、石膏、木材、プラスチックからなる合成樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エンジニアリングプラスチック、エポキシ等)等の材料が提案される。該材料を選択した場合、表面に離型処理をしてもよい。
また、前記マスキング用治具及び/又は前記被覆シートは、紙材料で構成してもよい。なお、紙材料とした場合、前記マスキング用治具及び/又は前記被覆シートは、パルプモールドで成形することができる。
前記被覆シート7の基材71は、種々の材料が選択でき、前記粘着層72は、通常のアクリル樹脂、合成ゴム、からなる公知の粘着剤が選択できる。
【0015】
次に、図6,7に従って、上記構成とは異なる被覆シート7Aを説明する。
該被覆シート7Aは、基材71と、粘着層72A,72Bと、離形紙73A,73Bとが積層されてなると共に、該粘着層72A,72Bと該離形紙73A,73Bとに、切り込み74が設けられている。そして、中央に、粘着層72Aと離形紙73Aとが配され、切り込み74を境界にして、外周部に粘着層72Bと離形紙73Bとが配された構成とされている。
そして、該被覆シート7Aをマスキング用治具6に貼着する際は、外周部の離形紙73Bのみを剥がし取り、図8に示すように、中央部の離形紙73Aを該マスキング用治具6の上面に面接触させつつ、外周部の粘着層72Bを該マスキング用治具6の外周部と非塗装領域2Aの残部とに跨るようにして貼着する。
かかる構成とした場合、マスキング用治具6と被覆シート7Aとが粘着層72Bを介して貼着する面積が小さくなるため、該マスキング用治具6は、表面を離型処理しなくても被覆シート7Aを容易に剥がし取ることができる。したがって、該マスキング用治具6は、離型性をもたない上記材料とすることができる。
【0016】
次に、図9に従って、変形例としてのマスキング用治具6Aを説明する。
図9に示す部材1Aに凹設された凹部21内には、桟22が複数差し渡されている。このような場合は、以下のマスキング用治具6Aが好適である。
【0017】
該マスキング用治具6Aは、下面に桟挿入溝61が複数凹設されている。そして、該マスキング用治具6Aを、前記凹部21内に嵌着させると、前記桟挿入溝61に、前記桟22が挿入される。該構成とすると、桟付きの凹部21であっても支障なくマスキング用治具6Aを該凹部21に嵌着させることができる。
【0018】
本発明のマスキングセットは、上記実施例に限定されず、状況に合わせて適宜変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明のマスキングセットは、マスキング作業を容易にするものであり、産業上利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】部材の外観斜視図
【図2】塗装された部材の縦断面図
【図3】マスキングセットを装着した部材の縦断面図
【図4】被覆シートの断面図
【図5】マスキングセット装着状態で塗装処理された状態を示す縦断面図
【図6】変形例に係る被覆シートの平面図
【図7】変形例に係る被覆シートの縦断面図
【図8】変形例に係る被覆シートを貼着した状態を示す縦断面図
【図9】変形例に係るマスキングセットを装着した部材の縦断面図
【符号の説明】
【0021】
1,1A 部材
2,21 凹部
2A 非塗装領域
5 マスキングセット
6,6A マスキング用治具
7,7A 被覆シート
22 桟
61 桟挿入溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗装される部材に形成された凹部の内面であって該凹部の奥端を含む領域に設定されている非塗装領域を、該塗装から保護するマスキングセットであって、
前記凹部の奥端に嵌着され、前記非塗装領域の主要部を被覆するマスキング用治具と、
該マスキング用治具で被覆されない非塗装領域の残部と該嵌着状態にあるマスキング用治具の表面とに跨って貼着される被覆シートと、
からなることを特徴とするマスキングセット。
【請求項2】
前記マスキング用治具及び/又は前記被覆シートにおける貼着面には、粘着層が形成されている請求項1記載のマスキングセット。
【請求項3】
前記粘着層は、離型性を有する請求項2記載のマスキングセット。
【請求項4】
前記被覆シートの貼着面には、粘着層が形成されており、
前記マスキング用治具は、表面が離型性を有する材料からなる請求項1記載のマスキングセット。
【請求項5】
前記マスキング用治具及び/又は前記被覆シートが、紙材料からなる請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載のマスキングセット。
【請求項6】
前記凹部内に桟が差し渡されており、
前記マスキング用治具には、該凹部に嵌着された際に該桟が挿入される桟挿入溝が凹設されている請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のマスキングセット。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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