説明

マスキング材

【課題】雌ねじが形成された物品の塗装の仕上がり状態に支障をきたすことなく前記物品の塗装作業中に前記雌ねじからの脱離を防止する。
【解決手段】雌ねじ51をマスキングするマスキング材1であって、雌ねじ51のねじ山53と部分的に接触する接触部11を備える。接触部11は摩擦係数がねじ山53の摩擦係数と異なる材料からなる。前記材料は弾性変形可能なものもある。接触部11は雌ねじ51の開口部52を閉塞させる閉塞部10に設けられる。閉塞部10は例えば雌ねじ51への挿入方向に先細った裁頭円錐状に形成される。接触部11は例えばねじ山53との接触部分を露出させて閉塞部10の側面に巻き付き設けられるリング体に形成される。このリング体は、リング体の輪郭の短軸線または長軸線が雌ねじ51の軸線a0と垂直とならないように、閉塞部10に形成された溝101に嵌め込まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は雌ねじが形成された物品を塗装する際に前記雌ねじをマスキングするためのマスキング材に関する。
【背景技術】
【0002】
図5は雌ねじが形成された物品の一形態を示した斜視図である。図6は従来のマスキング材を示した斜視図である。
【0003】
図5に示された雌ねじ51が形成された物品5は、物品5の塗装工程に供される塗料が雌ねじ51のねじ山53やその谷間に付着しないように、雌ねじ51の開口部52やねじ山53に予めマスキングが施されている。前記マスキングを施すためのマスキング材としては例えば紙製のマスキングテープが用いられている(非特許文献1及び特許文献1)。
【0004】
前記マスキングテープは消耗品であるので、物品5の製造コストを削減させるために、近年では繰り返し使用できるマスキング材が用いられている。例えば図6に示されたマスキング材が用いられている。
【0005】
図6(a)に示されたマスキング材6は、金属製の材料からなり、雌ねじ51と螺合する雄ねじ61の一端にスパナ等のねじ回し手段を係止させる係止部62を備えるように成形されたものである。
【0006】
図6(b)に示されたマスキング材7は、シリコーン等の弾性変形可能な材料からなり、雌ねじ閉塞部71と摘み部72とが一体成形されているものである。雌ねじ閉塞部71は先端が曲面状に加工された裁頭円錐状に形成されている一方で摘み部72は円柱状に形成されている。
【0007】
図6(c)に示されたマスキング材8は、金属製の材料からなり、雌ねじ閉塞部81と摘み部82とが一体成形されているものである。雌ねじ閉塞部81は裁頭円錐状に形成されている。摘み部82は、雌ねじ閉塞部81の外径より小さい外径の円柱状に形成され、雌ねじ閉塞部81の軸方向に突出している。
【0008】
図6(d)に示されたマスキング材9は、耐熱性及び耐溶剤性のプラスチックからなり、雌ねじ51に挿入される円筒形状の雌ねじ保護部91の縁部に摘み部92が一体的に形成されている。摘み部92は、雌ねじ51から雌ねじ保護部91を取り外し易くするために、全長が雌ねじ51及び雌ねじ保護部91の全長よりも長く設定されると共にラッパ管状に形成されいる。
【非特許文献1】社団法人日本化学会編,標準化学用語辞典(1993)
【特許文献1】特開平07−224258号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
マスキング材6が物品5の塗装工程に用いられた場合、雄ねじ61が物品5の雌ねじ51と螺合しているので、係止部62が物品5から露出している状態となる。実際の塗装工程では、雄ねじ61の一部が雌ねじ51と螺合していることが多いので、雄ねじ61の一部分と係止部62とが物品5から露出している状況となっているのがほとんどである。したがって、雌ねじ51の開口部52周辺が塗料噴射ノズルの死角となりやすくなるので、物品5の塗装の仕上がり状態に斑が生じる場合がある。
【0010】
マスキング材7が物品5の塗装工程に用いられた場合、雌ねじ閉塞部71が弾性変形により物品5の雌ねじ51を閉塞させた状態となっているので、雌ねじ51の開口部52から露出した閉塞部71に塗料が被っても塗料成分は雌ねじ51のねじ山53に付着することはない。また、マスキング材7はその弾性変形能力により物品5の雌ねじ51から容易に脱落することはない。しかしながら、塗装後乾燥された物品5からマスキング材7が外されると、マスキング材7の表面に固着した塗料成分と共に物品5の雌ねじ51の開口部51周辺に塗装された塗料成分が剥がれる場合がある。したがって、物品5の塗装の仕上がり状態に斑が生じる場合がある。
【0011】
マスキング材8が物品5の塗装工程に用いられた場合、摘み部82のみが物品5から露出されている。この状態によれば、雌ねじ51の開口部52周辺において塗料噴射ノズルの死角が生じにくくなり、物品5の塗装の仕上がり状態に斑が生じることはない。しかしながら、マスキング材8の雌ねじ閉塞部81には物品5の雌ねじ51と螺合するねじ山が形成されていないので、前記塗装工程でマスキング材8が物品5から脱落する場合がある。このとき、塗装工程を中断せざるをえなくなり、結果的に物品5の塗装の仕上がり状態に斑が生じる場合がある。
【0012】
マスキング材9が物品5の塗装工程に用いられた場合、マスキング材9は構成成分のプラスチックの可撓性により物品5の雌ねじ51から容易に脱落することはない。しかしながら、前記塗装工程では、雌ねじ保護部91の一部分と摘み部92とが物品5から露出している状況がほとんどであるので、雌ねじ51の開口部52周辺が塗料噴射ノズルの死角となりやすくなる。したがって、物品5の塗装の仕上がり状態に斑が生じる場合がある。
【0013】
本発明はかかる事情に鑑みなされたもので、その目的は雌ねじが形成された物品の塗装の仕上がり状態に支障をきたすことなく前記物品の塗装作業中に前記雌ねじからの脱離を防止できるマスキング材の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
そこで、請求項1記載のマスキング材は、雌ねじをマスキングするマスキング材であって、雌ねじの開口部を閉塞させる閉塞部と、この閉塞部に設けられると共に前記雌ねじのねじ山と部分的に接触する接触部とを備え、前記接触部は摩擦係数が前記ねじ山の摩擦係数と異なる材料からなることを特徴とする。
【0015】
請求項2記載のマスキング材は、請求項1記載のマスキング材において、前記接触部は弾性変形可能な材料からなることを特徴とする。
【0016】
請求項3記載のマスキング材は、請求項1または2記載のマスキング材において、前記接触部は前記ねじ山との接触部分を露出させて前記閉塞部の側面に巻き付くように設けられるリング体の形状に形成され、この接触部は、前記リング体の輪郭の短軸線または長軸線が前記雌ねじの軸線と垂直とならないように、前記閉塞部に設けられたことを特徴とする。
【0017】
請求項4記載のマスキング材は、請求項1または2記載のマスキング材において、前記接触部は前記ねじ山との接触部分を露出させて前記閉塞部の側面に設けられる球体の形状に形成されると共に、その直径は雌ねじのリードの距離よりも大きく設定され、前記接触部が前記閉塞部の側面に複数設けられて形成された前記接触部の配列軌道の短軸線または長軸線は前記雌ねじの軸線と垂直とならないように設定されたことを特徴とする。
【0018】
請求項5記載のマスキング材は、請求項1から4のいずれか1項に記載のマスキング材において、前記閉塞部は前記雌ねじへの挿入方向に先細った裁頭円錐状に形成されたことを特徴とする。
【0019】
請求項6記載のマスキング材は、請求項1から5のいずれか1項に記載のマスキング材において、前記閉塞部は一端面に摘み部を前記閉塞部の軸方向に突出するように備え、前記摘み部の最大外径は前記閉塞部の最大外径よりも小さく設定されたことを特徴とする。
【0020】
請求項1記載のマスキング材によれば、物品に形成された雌ねじに装着されると、前記マスキング材に具備された接触部が前記雌ねじのねじ山と部分的に接触する。前記接触部の摩擦係数は前記雌ねじのねじ山の摩擦係数と異なっている。したがって、前記マスキング材のみに引力がかからない限り前記雌ねじから脱離しなくなると共に、前記マスキング材のみに引力をかければ前記マスキング材を容易に取り出せる。これにより、前記マスキング材に具備させる摘み部の小型化が実現し、前記雌ねじの開口部周辺に塗料噴射ノズルの死角が生じにくくなる。
【0021】
特に、請求項2記載のマスキング材によれば、前記接触部は弾性変形可能であるので、請求項1記載のマスキング材の脱離防止作用と取り外し易さが向上する。
【0022】
雌ねじのねじ山と部分的に接触する接触部としては、請求項3記載のマスキング材に具備された接触部のようにリング体状に形成されたものや、請求項4記載のマスキング材に具備された接触部のように球体状に形成されたものが挙げられる。
【0023】
また、請求項5記載のマスキング材によれば、閉塞部が先細りの形状となっているので、請求項1〜4記載のマスキング材に係る作用に加え、前記雌ねじに挿入し易くなる。
【0024】
さらに、請求項6記載のマスキング材によれば、雌ねじの開口部を閉塞させる閉塞部の一端面に設けられた摘み部の最大外径が前記閉塞部の最大外径よりも小さくなっているので、請求項1〜5記載のマスキング材に係る作用に加え、雌ねじの開口部周辺に塗料噴射ノズルの死角を生じさせない。
【発明の効果】
【0025】
したがって、本発明に係る請求項1〜6記載のマスキング材によれば、雌ねじが形成された物品の塗装の仕上がり状態に支障をきたすことなく前記物品の塗装作業中に前記雌ねじからの脱離を防止できる。
【0026】
特に、請求項2記載のマスキング材によれば、脱離防止作用と取り出し易さが向上するので、前記物品の塗装作業の効率が高まる。
【0027】
また、請求項5記載のマスキング材によれば、前記雌ねじに挿入し易くなるので、前記物品の塗装作業の効率がさらに高まる。
【0028】
さらに、請求項6記載のマスキング材によれば、前記雌ねじの開口部周辺に塗料噴射ノズルの死角を生じさせないので、前記物品の塗装の仕上がり状態がより一層良好なものになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、図面を参照しながら本発明を実施するための形態について説明する。
【0030】
(実施形態1)
図1(a)は本発明の実施形態に係るマスキング材を示した斜視図である。図1(b)は前記マスキング材に具備されている接触部を示した斜視図である。図1(c)は前記接触部を取り除いた前記マスキング材を示した斜視図である。
【0031】
マスキング材1は、雌ねじ51の開口部52を閉塞させる閉塞部10とこの閉塞部10を摘むための摘み部12とからなる。閉塞部10は雌ねじ51のねじ山53と部分的に接触する接触部11を備える。
【0032】
閉塞部10は開口部52を閉塞できればよいのでその形状は特に限定されない。閉塞部10の最大外径は開口部52の径に基づき定まる。図1(a)に示された閉塞部10は雌ねじ51への挿入方向に先細った裁頭円錐状に形成されている。かかる構成によれば、マスキング材1を雌ねじ51に装着し易くなる。
【0033】
接触部11は、図1(b)に示されたように、ねじ山53との接触部分を露出させて閉塞部10の側面に巻き付くように設けられるリング体の形状に形成されている。接触部11は摩擦係数がねじ山53の摩擦係数と異なる材料で形成させるとよい。例えば、接触部11は摩擦係数がねじ山53の摩擦係数よりも低い材料からなる。より具体的には、雌ねじ51が金属製の材料からなる場合、接触部11の材料としては弾性、耐油性、耐熱性の機能を有する既知のエラストマーが採用される。例えば、オレフィン系、塩ビ系、ウレタン系、エステル系、アミド系等の既知の熱可塑性エラストマーが挙げられる。
【0034】
接触部11は、図1(c)に示したように、少なくともねじ山53との接触部分が露出されるように閉塞部10の側面に形成された溝101に嵌め込まれる。溝101の内面には必要に応じて接着剤が適宜塗布される。溝101は、接触部11の輪郭をなす図3に示した楕円S1の中心O1を通過する短軸線a11または長軸線a12が雌ねじ51の軸線a0と垂直とならない状態で、接触部11を収容できるように形成される。このように形成された溝101に接触部11が嵌め込まれると、接触部11はねじ山53と部分的に接触できる。
【0035】
また、溝101の底部には、テーピングを適宜施すとよい。前記底部にテーピングが施された分だけ、接触部11の露出面が高くなり、雌ねじ51に装着された場合のマスキング材1の緩みを低減させることができる。前記テーピングに供されるテープは塗装作業時の養生に使用される既知のテープを採用すればよい。
【0036】
接触部11が先に例示した弾性機能を有する材料からなる場合、図1(c)に示された溝101の深さh1及び幅d1は、接触部11の一部を閉塞部10の側面に沿って露出させると共に接触部11が溝101から脱離しないようにするために、図1(b)に示された接触部11の径D1よりも小さく設定するとよい。溝101の断面形状は特に限定されないが、接触部11の断面形状に対応させると、接触部11は溝101から脱離しにくくなる。
【0037】
摘み部12は閉塞部10と一体成形される。摘み部12は閉塞部10と同一の材料で構成させるとよい。摘み部12は閉塞部10の一端面の中央部に閉塞部10の軸方向に突出するように設けられる。
【0038】
摘み部12の最大外径は閉塞部10の最大外径よりも小さく設定される。例えば図1(a)及び図1(c)に示された摘み部12は円柱部121と裁頭円錐部122と円柱部123とを有するように形成されている。円柱部121,123の外径及び裁頭円錐部122の最大外径は閉塞部10の最大外径よりも小さく設定されている。円柱部121は閉塞部10の一端面の中央部に接続されるように形成されている。円柱部121の径は円柱部123の径よりも小さく設定されている。円柱部123は裁頭円錐部122を介して円柱部121と接続されているような形態となっている。裁頭円錐部122の下端面の径は円柱部121の径と同径サイズとなっている。裁頭円錐部122の上端面の径は円柱部123の径と同径サイズとなっている。このように、裁頭円錐部122の上端に円柱部123が設けられるように摘み部12が形成されると、指を痛めさせることなくマスキング材1を雌ねじ51に着脱させることができる。
【0039】
閉塞部10と摘み部12との接続部分には補強部13を周設させると、前記接続部分が補強される。補強部13は閉塞部10及び摘み部12と同一の材料で構成させるとよい。補強部13は例えば図1(a)及び図1(c)に示されたように凹面状の湾曲面131が形成されるように設けられる。補強部13は摘み部12及び閉塞部10と共に一体成形されることにより前記接続部分に設けられる。または、摘み部12と閉塞部10とを一体成形した後に摘み部12と閉塞部10の接続部分に補強部13を周設させてもよい。
【0040】
図1(a)を参照しながらマスキング材1の作用について説明する。
【0041】
マスキング材1の軸線Y1が雌ねじ51の軸線a0と同一線上にある状態でマスキング材1を雌ねじ51の開口部52に挿入させると、接触部11は雌ねじ51のねじ山53と接触すると共に弾性変形しながら雌ねじ51内に導入される。そして、マスキング材1の閉塞部10の側面が雌ねじ51の開口部52の縁に接触すると、閉塞部10は開口部52を閉塞させる。このとき、接触部11は弾性変形すると共にねじ山53と部分的に接触している。また、接触部11はその摩擦係数がねじ山53の摩擦係数と異なっている。したがって、マスキング材1のみに引力がかからない限り、マスキング材1は雌ねじ51から脱離しない。また、マスキング材1のみに引力をかければマスキング材1を容易に取り出せる。すなわち、マスキング材1の摘み部12が摘まれて挿入方向とは逆の方向に引っ張られると、閉塞部10は接触部11を弾性変形させながら雌ねじ51から脱離する。
【0042】
(実施形態2)
図2(a)は本発明の他の実施形態に係るマスキング材を示した斜視図である。図2(b)は前記マスキング材に具備されている接触部を示した斜視図である。図2(c)は前記接触部を取り除いた前記マスキング材を示した斜視図である。
【0043】
マスキング材2は、雌ねじ51の開口部52を閉塞させる閉塞部20とこの閉塞部20を摘むための摘み部22とからなる。
【0044】
閉塞部20は開口部52を閉塞できればよいのでその形状は特に限定されない。閉塞部20の最大外径は開口部52の径に基づき定まる。図2(a)に示された閉塞部20は、マスキング材1に具備された閉塞部10と同様に、雌ねじ51への挿入方向に先細った裁頭円錐状に形成されている。
【0045】
閉塞部20は雌ねじ51のねじ山53と部分的に接触する接触部21を複数備える。接触部21は、図2(b)に示したように、ねじ山53との接触部分を露出させて閉塞部20に埋め込まれる球体の形状に形成される。接触部21の直径D2は、雌ねじ51のリードLの距離よりも大きく設定される。このように形成された接触部21によれば、ねじ山53と部分的に接触できる。尚、接触部21は、マスキング材1に具備された接触部11と同様に、摩擦係数がねじ山53の摩擦係数と異なる材料で形成させるとよい。
【0046】
接触部21は、図2(c)に示したように、少なくともねじ山53との接触部分が露出されるように閉塞部20の側面に形成された穴201に嵌め込まれる。穴201の内面には実施形態1と同様に必要に応じて接着剤が適宜塗布される。接触部21の設置数すなわち穴201の数は閉塞部20及び接触部21の大きさ等に基づき適宜に定まる。穴201は、図4に示されたように複数の接触部21が閉塞部20の側面に配置されて形成される接触部21の配列軌道S2の中心O2を通過する短軸線a21または長軸線a22が雌ねじ51の軸線a0と垂直とならないように、閉塞部20の側面に配列的に形成される。
【0047】
また、接触部21が先に説明した接触部11と同様の弾性変形機能を有する材料からなる場合、図2(c)に示された穴101の深さh2及び径d2は、接触部21の一部を閉塞部20の側面から露出させると共に接触部21が穴201から脱離しないようにするために、図2(b)に示された接触部21の径D2よりも小さく設定するとよい。穴201の断面形状は特に限定されないが、接触部21の断面形状に対応させると、接触部21は穴201から脱離しにくくなる。
【0048】
摘み部22は閉塞部20と一体成形される。摘み部22は閉塞部20と同一の材料で構成させるとよい。摘み部22は閉塞部20の一端面の中央部に閉塞部20の軸方向に突出するように設けられる。
【0049】
摘み部22の最大外径は閉塞部20の最大外径よりも小さく設定される。例えば図2(a)及び図2(c)に示された摘み部22は、マスキング材1に具備された摘み部12と同様に、円柱部221と裁頭円錐部222と円柱部223とを有するように形成されている。円柱部221,223の外径及び裁頭円錐部222の最大外径は閉塞部20の最大外径よりも小さく設定されている。このように、裁頭円錐部222の上端に円柱部223が設けられるように摘み部22が形成されると、指を痛めさせることなくマスキング材2を雌ねじ51に着脱させることができる。
【0050】
また、閉塞部20と摘み部22との接続部分には、マスキング材1と同様に、補強部23が周設されることにより前記接続部分の補強が図られる。補強部23は閉塞部20及び摘み部22と同一の材料で構成させるとよい。補強部23も、マスキング材1に設けられた補強部13と同様に、例えば図2(a)及び図2(c)に示されたように凹面状の湾曲面231が形成されるように設けられる。補強部23は前述の補強部13の形成方法で形成すればよい。
【0051】
図2(a)を参照しながらマスキング材2の作用について説明する。
【0052】
マスキング材2の軸線Y2が雌ねじ51の軸線a0と同一線上にある状態でマスキング材2を雌ねじ51の開口部52に挿入させると、個々の接触部21は雌ねじ51のねじ山53と接触すると共に弾性変形しながら雌ねじ51内に導入される。そして、マスキング材2の閉塞部20の側面が雌ねじ51の開口部52の縁に接触すると、閉塞部20は開口部52を閉塞させる。このとき、個々の接触部21は弾性変形すると共にねじ山53と部分的に接触している。接触部21はその摩擦係数がねじ山53の摩擦係数と異なっている。したがって、マスキング材2のみに引力がかからない限り、マスキング材2は雌ねじ51から脱離しない。また、マスキング材2のみに引力をかければマスキング材2を容易に取り出せる。すなわち、マスキング材2の摘み部22が摘まれて挿入方向とは逆の方向に引っ張られると、閉塞部20は接触部21を弾性変形させながら雌ねじ51から脱離する。
【0053】
以上の実施形態の説明から明らかなように、マスキング材1,2によれば、雌ねじ51が形成された物品の塗装の仕上がり状態に支障をきたすことなく、前記物品の塗装作業中に雌ねじ51からの脱離を防止できる。
【0054】
特に、接触部11,21が弾性変形可能な材料で構成されることにより、マスキング材1,2の脱離防止作用と取り出し易さが向上する。これにより、前記物品の塗装作業の効率が高まる。
【0055】
また、閉塞部10,20が雌ねじ51の開口部52への挿入方向に先細りの形状に形成されることにより、マスキング材1,2を雌ねじ51に挿入し易くなる。これにより、前記物品の塗装作業の効率がより一層高まる。
【0056】
さらに、閉塞部10,20に設けられた摘み部12,22の最大外径が閉塞部10,20の最大外径よりも小さく設定されることにより、雌ねじ51の開口部52周辺に塗料噴射ノズルの死角が生じなくなる。これにより、前記物品の塗装の仕上がり状態がより一層良好なものになる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】(a)本発明の実施形態に係るマスキング材を示した斜視図、(b)前記マスキング材に具備されている接触部を示した斜視図、(c)前記接触部を取り除いた前記マスキング材を示した斜視図。
【図2】(a)本発明の他の実施形態に係るマスキング材を示した斜視図、(b)前記マスキング材に具備されている接触部を示した斜視図、(c)前記接触部を取り除いた前記マスキング材を示した斜視図。
【図3】接触部の輪郭の短軸線または長軸線と雌ねじの軸線との関係を示した説明図。
【図4】接触部の配列軌道の短軸線または長軸線と雌ねじの軸線との関係を示した説明図。
【図5】雌ねじが形成された物品の一形態を示した斜視図。
【図6】(a),(b),(c)及び(d)は従来のマスキング材の一形態を示した斜視図。
【符号の説明】
【0058】
1,2…マスキング材
10,20…閉塞部
11,21…接触部
12,22…摘み部
13,23…補強部
101…溝
201…穴
121,123,221,223…円柱部
122,222…裁頭円錐部
131,231…湾曲面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
雌ねじをマスキングするマスキング材であって、
雌ねじの開口部を閉塞させる閉塞部と、この閉塞部に設けられると共に前記雌ねじのねじ山と部分的に接触する接触部とを備え、
前記接触部は摩擦係数が前記ねじ山の摩擦係数と異なる材料からなること
を特徴とするマスキング材。
【請求項2】
前記接触部は弾性変形可能な材料からなること
を特徴とする請求項1記載のマスキング材。
【請求項3】
前記接触部は前記ねじ山との接触部分を露出させて前記閉塞部の側面に巻き付くように設けられるリング体の形状に形成され、
この接触部は、前記リング体の輪郭の短軸線または長軸線が前記雌ねじの軸線と垂直とならないように、前記閉塞部に設けられたこと
を特徴とする請求項1または2記載のマスキング材。
【請求項4】
前記接触部は前記ねじ山との接触部分を露出させて前記閉塞部の側面に設けられる球体の形状に形成されると共に、その直径は雌ねじのリードの距離よりも大きく設定され、
前記接触部が前記閉塞部の側面に複数設けられて形成された前記接触部の配列軌道の短軸線または長軸線は前記雌ねじの軸線と垂直とならないように設定されたこと
を特徴とする請求項1または2記載のマスキング材。
【請求項5】
前記閉塞部は前記雌ねじへの挿入方向に先細った裁頭円錐状に形成されたことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のマスキング材。
【請求項6】
前記閉塞部は一端面に摘み部を前記閉塞部の軸方向に突出するように備え、
前記摘み部の最大外径は前記閉塞部の最大外径よりも小さく設定されたこと
を特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のマスキング材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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