説明

マスキング材

【課題】 保護対象である縦桟を表面処理から好適に保護しつつ、表面処理剤による処理不良、汚損等の不具合を防止することができるマスキング材を提供する。
【解決手段】 バンパー10のフレーム11によって構成された孔部である空気取入口12に嵌着されることにより、該フレーム11に差渡されている1本または複数本の縦桟13を表面処理から保護するマスキング材20であって、シート本体21から上記縦桟13に嵌着する1条または複数条の桟嵌着溝23を屈曲形成して構成されたものであり、上記桟嵌着溝形成部22の外周奥行きdを上記フレーム11の奥行き巾wよりも大きく(d>w)設定することにより、上記桟嵌着溝23を上記縦桟13に嵌着した状態で、上記シート本体21の上下端縁と上記フレーム11の上下縁との間に隙間sが形成されるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車バンパーの空気取り入れ口等に形成された縦桟を塗装などの表面処理から保護するマスキング材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば自動車のバンパーには空気取り入れのための孔部が形成されているものがあり、また該孔部の内側に縦桟が差し渡されているものがある。該バンパーの塗装においては、該縦桟のみを故意に塗装しない場合があり、このような場合には該縦桟にマスキング材を被着したうえで該バンパーの塗装を行う。該マスキング材は、樹脂シートを所定形状に真空成形等したものであり、シート本体と、該縦桟に嵌着するべく該シート本体に屈曲形成された嵌着凹部とを備えている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、上記従来のマスキング材は、嵌着凹部の外周奥行きが縦桟の奥行き巾と略同一長さとされているため、バンパーに取り付けられた状態で孔部を塞いでしまう。その結果、孔部を通り抜けられずに行き場を無くした塗料が塗料ムラ(処理不良)を形成したり、バンパーを汚したりする(汚損)等のような不具合があった。
【0004】
本発明は、このような従来技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的とするところは、保護対象である縦桟を表面処理から好適に保護しつつ、表面処理剤による処理不良、汚損等の不具合を防止することができるマスキング材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記従来の問題点を解決するための手段として、フレームによって構成された孔部に嵌着されることにより、該フレームに差渡されている1本または複数本の縦桟を表面処理から保護するマスキング材であって、シート本体から上記縦桟に嵌着する1条または複数条の桟嵌着溝を屈曲形成して構成されたものであり、上記桟嵌着溝形成部の外周奥行きdを上記フレームの奥行き巾wよりも大きく(d>w)設定することにより、上記桟嵌着溝を上記縦桟に嵌着した状態で、上記シート本体の上下端縁と上記フレームの上下縁との間に隙間sが形成されるようにしたマスキング材を提供する。
上記マスキング材の横巾は、上記孔部の横巾よりも小さく設定されており、上記マスキング材の左右端縁と上記フレームの左右縁との間に隙間s’が形成されるようにすることが望ましい。
また上記フレームは自動車用のバンパーを構成しており、上記孔部は該バンパーに設けられた空気取入口であることが望ましい。
【発明の効果】
【0006】
〔作用〕
本発明のマスキング材にあっては、桟嵌着溝形成部の外周奥行きdを上記フレームの奥行き巾wよりも大きくしたことにより、桟嵌着溝を縦桟に嵌着した状態で、シート本体は孔部の内側よりもフレームの奥側へ突出するようになる。このためシート本体の上下端縁とフレームの上下縁との間に隙間sが形成されるようになり、塗料等の表面処理剤は該隙間sを介してフレームの奥側へと通り抜けることができるようになる。その結果、塗料等の表面処理剤による不具合を防止することができる。
またマスキング材の横巾を孔部の横巾よりも小さく設定し、マスキング材の左右端縁とフレームの左右縁との間に隙間s’を形成することにより、塗料等の表面処理剤がさらに該隙間s’からフレームの奥側へと通り抜けることができるようになる。
また上記マスキング材は、自動車用のバンパーに適用することにより、大量生産される該バンパーの製造に特に有用である。
〔効果〕
本発明にあっては、フレームの表面処理時において保護対象である縦桟を表面処理から好適に保護しつつ、表面処理剤による縦桟の周囲における処理不良、汚損等の不具合を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明のマスキング材を具体化した一実施形態について説明する。
図1に示すように、自動車のバンパー10は、複数のフレーム11によって枠状に構成されており、この枠状に構成された該バンパー10には、孔部として上下各一対で合計三対の空気取入口12が設けられている。そして、これら空気取入口12の内側にはそれぞれ複数本の縦桟13が設けられている。
該バンパー10において、複数のフレーム11は、表面処理時にその外面が塗装されており、これに対し、複数本の縦桟13は、該表面処理時にマスキング材が被着されることによって、未塗装とされている。
【0008】
図2(a)はマスキング材の正面図であり、(b)は底面図であり、(c)は背面図であり、(d)は側面図である。また図2(e)は、(a)のE−E線における断面図であり、(f)は、(a)のF−F線における断面図であり、
上記マスキング材20は、シート本体21から複数条の桟嵌着溝形成部22を、該シート本体21の正面側へ突出するように屈曲形成して構成されている。該桟嵌着溝形成部22の内側には、上記縦桟13に嵌着する桟嵌着溝23が形成されている。複数条の桟嵌着溝形成部22の間には補強条24が、該シート本体21の正面側へ突出するように形成されている。該補強条24は、シート本体21の剛性を向上させて撓んだり、変形したりしないようにすることにより、上記縦桟13に該桟嵌着溝23が嵌着不能となることを防止している。
該補強条24の上下には副補強条25が、該シート本体21の背面側へ突出するように形成されている。該副補強条25は、該補強条24と同様にシート本体21の剛性を向上させることにより、上記縦桟13に該桟嵌着溝23が嵌着不能となることを防止している。加えて、シート本体21の両側部には凸部26が、該シート本体21の背面側へ突出するように形成されている。これら副補強条25、凸部26は、該マスキング材20の左右方向における端部を該桟嵌着溝23の内側へ突出させており、該端部によって該縦桟13に該桟嵌着溝23が嵌着された際に該縦桟13に係止される係止部27が構成されている。
【0009】
該マスキング材20は、熱可塑性樹脂製のシートを所定形状に成形して製造されたものである。該熱可塑性樹脂としては、例えばポリスチレン(PS)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン−プロピレン共重合体、ポリ塩化ビニル(PVC)、塩化ビニリデン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、熱可塑性ポリエステル等の熱可塑性プラスチック、あるいはポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンエーテル,ポリフェニレンオキシド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリエーテルエーテルケトン、結晶性ポリエステル、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミノビスマレイミド、メチルペンテンコポリマー、セルロースアセテート等のエンジニアリングプラスチック、あるいは上記プラスチックの二種以上の混合物、あるいは上記プラスチックシートの二種以上の積層物等が挙げられる。
【0010】
さらに、上記熱可塑性樹脂には、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、亜硫酸カルシウム、燐酸カルシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛、アルミナ、シリカ、ケイ藻土、ドロマイト、石膏、タルク、クレー、アスベスト、マイカ、ガラス繊維、ケイ酸カルシウム、ベンナイト、ホワイトカーボン、カーボンブラック、鉄粉、アルミニウム粉、石粉、高炉スラグ、フライアッシュ、セメント、ジルコニア粉等の無機充填剤、木綿、竹、麻、羊毛等の天然繊維、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維、ビスコース繊維、アセテート繊維、塩化ビニル繊維、塩化ビニリデン繊維等の有機合成繊維、アスベスト繊維、ガラス繊維、炭素繊維、セラミック繊維、金属繊維、ウィスカー等の無機繊維、リンター、リネン、サイザル、木粉、ヤシ粉、クルミ粉、でん粉、小麦粉等の有機充填材等の補強材を添加して形状保持性、寸法安定性、圧縮および引張強度等を向上せしめてもよいし、更に難燃剤、防炎剤、防虫剤、防腐剤、ワックス類、滑剤、老化防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、結晶化促進剤、化学発泡剤、カプセル型発泡剤等の発泡剤、染料、顔料等の着色剤、DOP、DBP等の可塑剤等の一種または二種以上が混合されてもよい。
【0011】
上記熱可塑性樹脂製のシートの成形方法としては、真空成形、圧空成形、真空圧空成形等が挙げられる。該成形においては、金型を使用してもよく、またマスキング材20の対象物品(本実施形態であればバンパー10)を車体組み立て前に採取し、該対象物品を成形型として使用してもよい。
また該マスキング材20において、桟嵌着溝23は必ずしも複数条とする必要はなく、1条のみとしてもよい。また該補強条24、副補強条25、凸部26および係止部27から選ばれる少なくとも何れか1つを省略してマスキング材20を構成してもよい。
【0012】
上記バンパー10の塗装について説明する。
図3に示すように、該バンパー10の表面処理である塗装に際し、上記マスキング材20は、その桟嵌着溝23をフレーム11の外面側から空気取入口12の縦桟13に被せるようにして、該バンパー10に取り付けられる。このとき、該マスキング材20をフレーム11の外面側から内面側へと押し込むと、係止部27が該縦桟13を乗り越え、このまま該桟嵌着溝23の最内奥に縦桟13を位置させると、該係止部27が該縦桟13に係止されることにより、該桟嵌着溝23が該縦桟13に嵌着され、該マスキング材20が該空気取入口12の内側に固定される。そして、該マスキング材20が取り付けられた状態のまま、該バンパー10に塗装が施される。また塗装終了後は、該マスキング材20が該バンパー10から取り外されることにより、未塗装の縦桟13が現れる。
【0013】
図4に示すように、上記マスキング材20における桟嵌着溝形成部22の外周奥行きdは、上記バンパー10におけるフレーム11の奥行き巾wよりも大きく(d>w)設定されている。このため、上記桟嵌着溝23を上記縦桟13に嵌着した状態で、上記シート本体10の上下端縁と上記フレーム11の上下縁との間には、隙間sが形成される。該バンパー10の塗装において、表面処理剤である塗料は、該マスキング材20と縦桟13との境界部分において、隙間sを介してフレーム11の奥側へと通り抜ける。このように、空気取入口12内に吹き付けられた塗料は、隙間sからフレーム11の奥側へと逃がされるため、逃げ場を無くした塗料による塗りムラ、バンパーの汚れ等が防止される。
さらに図5に示すように、上記マスキング材20の横巾xは、上記空気取入口12の横巾yよりも小さく(x<y)設定されている。このため、上記桟嵌着溝23を上記縦桟13に嵌着した状態で、該マスキング材20の左右端縁と上記フレーム11の左右縁との間には、隙間s’が形成される。塗装の際に塗料は、上記隙間sのみならず、該隙間s’からもフレーム11の奥側へと通り抜け、逃がされるため、塗りムラ、バンパーの汚れ等が確実に防止される。
【0014】
上記実施形態では、マスキング材20をバンパー10用のものとしたが、これに限らず、例えば冷蔵庫、エアコン、テレビ、ビデオ、パソコン等のような家電製品において、空気取入口または排熱口に取り付けられるルーバーに適用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0015】
本発明のマスキング材によれば、製品の表面処理において、その表面処理剤による処理不良を防止し、製品の歩留まりを高めることができるため、極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】バンパーの正面図。
【図2】(a)はマスキング材の正面図、(b)はマスキング材の底面図、(c)はマスキング材の背面図、(d)はマスキング材の側面図、(e)は(a)のE−E線における断面図、(f)は(a)のF−F線における断面図、(g)は(a)のG−G線における断面図。
【図3】バンパーにマスキング材を取り付ける状態を示す底面図。
【図4】バンパーにマスキング材を取り付けた状態を示す底面図。
【図5】バンパーにマスキング材を取り付けた状態を示す正面図。
【符号の説明】
【0017】
11 フレーム
12 孔部である空気取入口
13 縦桟
20 マスキング材
21 シート本体
22 桟嵌着溝形成部
23 桟嵌着溝
d 桟嵌着溝形成部の外周奥行き
w フレームの奥行き巾
x マスキング材の横巾
y 空気取入口(孔部)の横巾
s,s’ 隙間


【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレームによって構成された孔部に嵌着されることにより、該フレームに差渡されている1本または複数本の縦桟を表面処理から保護するマスキング材であって、
シート本体から上記縦桟に嵌着する1条または複数条の桟嵌着溝を屈曲形成して構成されたものであり、
上記桟嵌着溝形成部の外周奥行きdを上記フレームの奥行き巾wよりも大きく(d>w)設定することにより、上記桟嵌着溝を上記縦桟に嵌着した状態で、上記シート本体の上下端縁と上記フレームの上下縁との間に隙間sが形成されるようにしたことを特徴とするマスキング材。
【請求項2】
上記マスキング材の横巾は、上記孔部の横巾よりも小さく設定されており、上記マスキング材の左右端縁と上記フレームの左右縁との間に隙間s’が形成されるようにした
請求項1に記載のマスキング材。
【請求項3】
上記フレームは自動車用のバンパーを構成しており、上記孔部は該バンパーに設けられた空気取入口である請求項1又は請求項2に記載のマスキング材。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate