説明

マスクの締め紐長さ調整具およびマスク

【課題】締め紐をマスク本体に取り付けた後からでも締め紐に取り付けることができ、締め紐の有効長さを調整する際に締め紐が係止スリットから抜け出ることのないマスクの締め紐長さ調整具を提供する。
【解決手段】本体部32に、弾性変形可能な締め紐を導入する導入孔33と、この導入孔33に右端が連通し、導入孔33内の締め紐を第1の係止スリット38へ案内する横方向へ延びた第1の案内スリット34と、導入孔33に左端が連通し、導入孔33内の締め紐を第2の係止スリット44へ案内する横方向へ延びた第2の案内スリット36とを設け、第1の係止スリット38は縦方向の中間部分に第1の案内スリット34の左端が連通し、第1の案内スリット34からの締め紐を係止し、第2の係止スリット44は縦方向の中間部分に第2の案内スリット36の右端が連通し、第2の案内スリット36からの締め紐を係止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、塵埃の多い場所、例えば、工事現場などで作業中に、塵埃を吸い込むのを防止するマスク、および、そのマスクにおける締め紐の有効長さを調整するマスクの締め紐長さ調整具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上記した従来のマスクの一例として、マスクに取り付けたゴム紐(締め紐)を二重(2つ)折りにして中空状の管(締め紐長さ調整具)に挿通し、ゴム紐に対する管の位置を調整することにより、ゴム紐の有効長さを調整するもの提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このマスクにおける管は、プラスチックの管などを適当な長さに切断することによって製作できるので、部品代を抑える(安くする)ことができる。
【0004】
また、従来のマスクの他の例として、止め具(締め紐長さ調整具)に設けた2つのコ字状の切り溝の壁部と2つの弾性プレートとによって締め紐を挟み込み、切り溝の壁部と弾性プレートとによって挟み込む締め紐の位置を調整することにより、締め紐の有効長さを調整するものが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
このマスクにおける止め具は、弾性を有するプレートを成形する際、コ字状の切り溝を2つ設けることにより、2つの弾性プレートも同時に形成できる構造(形状)なので、部品代を抑えることができる。
【0006】
また、従来のマスクのさらに他の例として、クリップ(締め紐長さ調整具)に設けたΣ形状の連結スリットからこの連結スリットの両端に設けた装着スリットへストラップ(締め紐)を移動させて装着スリットによってストラップを挟み込み、装着スリットによって挟み込むストラップの位置を調整することにより、ストラップの有効長さを調整するものが提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0007】
このマスクにおけるクリップは、プレートを成形する際、連結スリットと2つの装着スリットとを設けることにより、形成できる構造(形状)なので、部品代を抑えることができる。
そして、連結スリットから2つの装着スリットへストラップを移動させて2つの装着スリットによってストラップを挟み込む(係止する)構成(構造)なので、クリップへのストラップの挿通(取付)が行い易い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平7−185027号公報
【特許文献2】特開2005−218号公報
【特許文献3】特開2005−152229号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記した特許文献1に記載されているマスクにおける管(締め紐長さ調整具)は、二重(2つ)折りにしたゴム紐を中空状の管に挿通するのが難しく、面倒なため、製造コストが上昇する。
【0010】
上記した特許文献2に記載されているマスクにおける止め具(締め紐長さ調整具)は、2つの切り溝を連絡する連絡溝が設けられていない。
したがって、締め紐をマスク本体に溶着などによって取り付けた後、止め具を締め紐に取り付けることができない。
【0011】
上記した特許文献3に記載されているマスクにおけるクリップ(締め紐長さ調整具)は、2つの装着スリットを連絡する連結スリットが設けられている。
したがって、ストラップをマスク本体に溶着などによって取り付けた後においても、クリップをストラップに取り付けることができる。
しかしながら、特許文献3におけるクリップは、装着スリットと連絡スリットとが取り付けるストラップの幅方向へ直線状に連なっているので、ストラップの有効長さを調整するためにストラップを引っ張ると、ストラップを引っ張る方向により、ストラップが装着スリットから連絡スリットへ抜け出る。
【0012】
また、特許文献3におけるクリップは、連結スリットの両端から2つの連絡スリットが互いに離れる方向へ延びているので、ストラップの有効長さを調整するためにストラップを引っ張ると、ストラップが間隔を狭める方向へ近づくことにより、ストラップが装着スリットから連絡スリットへ抜け出る可能性がある。
したがって、マスクの使用中にストラップの有効長さを調整した場合、マスクが顔面から外れる可能性がある。
【0013】
この発明は、上記した不都合を解消するためになされたもので、締め紐をマスク本体に取り付けた後からでも締め紐に取り付けることができ、締め紐の有効長さを調整する際に締め紐が係止スリットから抜け出ることのないマスクの締め紐長さ調整具、および、これを用いたマスクを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この発明の、マスクの締め紐長さ調整具は、板状の本体部を備え、該本体部に、所定の幅、所定の厚さを有し、弾性変形可能な締め紐を導入する導入孔と、該導入孔に右端が連通し、前記導入孔内の前記締め紐を第1の係止スリットへ案内する横方向へ延びた第1の案内スリットと、前記導入孔に左端が連通し、前記導入孔内の前記締め紐を第2の係止スリットへ案内する横方向へ延びた第2の案内スリットと、前記第1の案内スリットの左端に縦方向の中間部分が連通し、前記第1の案内スリットからの前記締め紐を係止する縦方向へ延びた前記第1の係止スリットと、前記第2の案内スリットの右端に縦方向の中間部分が連通し、前記第2の案内スリットからの前記締め紐を係止する縦方向へ延びた前記第2の係止スリットとが設けられていることを特徴とする。
【0015】
また、この発明のマスクは、上記したマスクの締め紐長さ調整具を用いたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
この発明のマスクの締め紐長さ調整具によれば、導入孔と第1、第2の係止スリットとが第1、第2の案内スリットによって連通しているので、締め紐をマスク本体に取り付けた後からでも、マスクの締め紐長さ調整具を締め紐に取り付けることができる。
また、第1の係止スリットと第1の案内スリットとが交差しているとともに、第1の係止スリットの縦方向の中間部分に第1の案内スリットが連通し、第2の係止スリットと第2の案内スリットとが交差しているとともに、第2の係止スリットの縦方向の中間部分に第1の案内スリットが連通している。
したがって、締め紐の有効長さを調整する際、締め紐を引っ張っても、第1の係止スリットおよび第2の係止スリットを形成する壁部が、締め紐が間隔を狭める方向へ近づくのを阻止するため、締め紐が第1、第2の係止スリットから抜け出なくなる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】この発明の、マスクの締め紐長さ調整具の第1実施例を示す図で、(a)は平面図、(b)は(a)のB−B線による断面図、(c)は(a)のC−C線による部分断面図である。
【図2】この発明のマスクの第1実施例を示す正面図である。
【図3】図2に示したマスクの使用例を示す説明図である。
【図4】締め紐の締め紐長さ調整具への取付例を示す説明図である。
【図5】この発明のマスクの第2実施例を示す正面図である。
【図6】図5に示したマスクの使用例を示す説明図である。
【図7】この発明のマスクの第3実施例を示す正面図である。
【図8】図7に示したマスクの使用例を示す説明図である。
【図9】この発明の、マスクの締め紐調整具の他の実施例を示す図で、(a)はこの発明の、マスクの締め紐長さ調整具の第2実施例を示す平面図、(b)はこの発明の、マスクの締め紐長さ調整具の第3実施例を示す平面図、(c)はこの発明の、マスクの締め紐長さ調整具の第4実施例を示す平面図である。
【図10】この発明の、マスクの締め紐調整具のさらに他の実施例を示す図で、(a)はこの発明の、マスクの締め紐長さ調整具の第5実施例を示す平面図、(b)はこの発明の、マスクの締め紐長さ調整具の第6実施例を示す平面図、(c)はこの発明の、マスクの締め紐長さ調整具の第7実施例を示す平面図である。
【図11】この発明の、マスクの締め紐長さ調整具の第8実施例を示す平面図である。
【図12】この発明のマスクの第4実施例を示す正面図である。
【図13】図12に示したマスクの使用例を示す説明図である。
【図14】マスクの締め紐調整具の参考例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、この発明の実施例を、図面を参照して説明する。
【0019】
図1はこの発明の、マスクの締め紐長さ調整具(以下、単に“締め紐長さ調整具”と記述する)の第1実施例を示す図である。
【0020】
締め紐長さ調整具31は、装着者がマスクを装着するときに使用する締め紐の有効長さを調整するもので、所定の強度を有するプラスチック(樹脂)、例えば、ポリプロピレンで、平面視横長の長方形をした板状に成形され、その四隅の角を丸めた本体部32によって構成されている。
なお、締め紐長さ調整具31は、長方形だけでなく、長円状や円形形状であってもよい。
【0021】
この本体部32には、導入孔33、第1の案内スリット34、第2の案内スリット36、第1の係止スリット38、第2の係止スリット44などが設けられている。
【0022】
上記した導入孔33は、横長(図1(a)における左右方向)の本体部32の中央部分に縦方向(図1(a)における上下方向:以下、同じ)に、二重(2つ)折りにした締め紐を挿入できる長さ、幅とした大きさで設けられている。
【0023】
上記した第1の案内スリット34は、導入孔33の縦方向の左側中間部分、例えば、左側中央部分に右端が連通するように、本体部32の左側に横方向(図1(a)における左右方向:以下、同じ)に設けられている。
上記した第2の案内スリット36は、導入孔33の縦方向の右側中間部分、例えば、右側中央部分に左端が連通するように、本体部32の右側に横方向に設けられている。
したがって、第1の案内スリット34と第2の案内スリット36とは、横方向へ延びる同一直線状に位置している。
【0024】
そして、第1の案内スリット34の右端部、すなわち、導入孔33との接続部分に、締め紐の導入を容易にするため、円弧状の第1のガイド部35が設けられている。
同様に、第2の案内スリット36の左端部、すなわち、導入孔33との接続部分に、締め紐の導入を容易にするため、円弧状の第2のガイド部37が設けられている。
【0025】
上記した第1の案内スリット34および第2の案内スリット36の幅(図1(a)における上下方向)は、弾性変形可能な締め紐を引っ張って厚さを薄くした状態にすると、締め紐を移動(通過)させることができ、締め紐を引っ張るのを解除して厚くした状態にすると、締め紐を移動(通過)させことができなくなる間隔にされている。
さらに、締め紐長さ調整具31自体にも弾性があるので、締め紐長さ調整具31の若干の変形が、締め紐を移動させやすくするように作用する。
【0026】
上記した第1の係止スリット38は、第1の案内スリット34の左端が縦方向の右側中間部分、例えば、右側中央部分に連通するように、本体部32の左側に縦方向に設けられている。
上記した第2の係止スリット44は、第2の案内スリット36の右端が縦方向の左側中間部分、例えば、左側中央部分に連通するように、本体部32の右側に縦方向に設けられている。
したがって、第1の係止スリット38と第2の係止スリット44とは、平行して縦方向へ延びている。
【0027】
このように、本体部32に第1の係止スリット38を設けることにより、第1の係止スリット38を形成する壁部の厚さ方向(図1(c)における上下方向)の端部が、係止エッジ39を構成する。
同様に、本体部32に第2の係止スリット44を設けることにより、第2の係止スリット44を形成する壁部の厚さ方向の端部が、係止エッジ45を構成する。
【0028】
そして、第1の係止スリット38の両端、すなわち、第1の係止スリット38の上下端には、締め紐の幅方向の端部を収容する端部収容孔40,42が設けられている。
この端部収容孔40,42は、第1の係止スリット38の幅(図1(a)における左右方向)よりも大きな直径、例えば、第1の係止スリット38の幅の、約1倍〜3倍の直径の孔とされている。
同様に、第2の係止スリット44の両端、すなわち、第2の係止スリット44の上下端には、締め紐の幅方向の端部を収容する端部収容孔46,48が設けられている。
この端部収容孔46,48は、第2の係止スリット44の幅(図1(a)における左右方向)よりも大きな直径、例えば、第2の係止スリット44の幅の、約1倍〜3倍の直径の孔とされている。
【0029】
このように、第1の係止スリット38の両端に端部収容孔40,42を設けることにより、第1の係止スリット38を形成する壁部と端部収容孔40,42を形成する壁部との交差部分が、抵抗エッジ41,43を構成する。
同様に、第2の係止スリット44の両端に端部収容孔46,48を設けることにより、第2の係止スリット44を形成する壁部と端部収容孔46,48を形成する壁部との交差部分が、抵抗エッジ47,49を構成する。
【0030】
上記した第1の係止スリット38および第2の係止スリット44の幅(図1(a)における左右方向)は、弾性変形可能な締め紐を引っ張って厚さを薄くした状態にすると、締め紐を移動させることができ、締め紐を引っ張るのを解除して厚くした状態にすると、締め紐を移動させことができなくなる間隔にされている。
【0031】
また、一方(上方)の端部収容孔40の端から第1の係止スリット38を通過して他方(下方)の端部収容孔42の端までの長さL、および、一方(上方)の端部収容孔46の端から第2の係止スリット44を通過して他方(下方)の端部収容孔48の端までの長さLは、締め紐の幅と同じか、締め紐幅よりも狭くされている。
【0032】
なお、本体部32は、成形時のひけや、補強を兼ねるとともに、成形材料を少なくするため、両主表面に周回する(環状の)肉抜き部を設けることにより、両主表面の周縁に環状の外周補強リブ50を設けるとともに、両主表面の導入孔33、第1、第2の案内スリット34,36、第1、第2の係止スリット38,44および端部収容孔40,42,46,48を囲む環状の内周補強リブ51が設けられている。
【0033】
上記した締め紐長さ調整具31を用いた(利用した、使用した)この発明のマスクの実施例を、図面を参照して説明する。
【0034】
図2はこの発明のマスクの第1実施例を示す図、図3は図2に示したマスクの使用例を示す説明図、図4は締め紐の締め紐長さ調整具への取付例を示す説明図であり、図1と同一または相当部分に同一符号を付し、その説明を省略する。
なお、以下のマスクの説明における上下、左右は、マスクの装着者から見た上下、左右とする。
【0035】
図2および図3に示すマスク1は、カップ状に形成されたマスク本体部11と、このマスク本体部11に取り付けられた上、下側締め紐21U,21Dと、この上、下側締め紐21U,21Dに取り付けられた上、下側締め紐21U,21Dの有効長さを調整する締め紐長さ調整具31とで構成されている。
【0036】
上記したマスク本体部11は、例えば、人の鼻、口を覆うように成形されたフィルタ部で構成されている。
このフィルタ部は、前面側を被う前面被い部分と、この前面被い部分の外周に設けられ、人の鼻、口の外周に当接する接顔布とで構成されているものもある。
そして、前面被い部分は、例えば、多層構造とされ、締め紐が溶着または接着できるように構成されている。
【0037】
上記した上、下側締め紐21U,21Dは、弾性を有するゴムバンドなどで構成され、所定の長さと、所定の厚さと、所定の幅とを有している。
そして、上側締め紐21Uは、マスク本体部11の左端上側外面に一端(左端)が溶着などによって取り付けられ、マスク本体部11の右端上側外面に他端(右端)が溶着などによって取り付けられている。
また、下側締め紐21Dは、マスク本体部11の左端下側外面に一端(左端)が溶着などによって取り付けられ、マスク本体部11の右端下側外面に他端(右端)が溶着などによって取り付けられている。
【0038】
次に、締め紐長さ調整具31の上、下側締め紐21U,21Dへの取付の一例を、図4を参照して説明する。
【0039】
まず、図4(a)に示すように、二重(2つ)折にした上側締め紐21Uを導入孔33内へ挿入する。
そして、2つ折にした上側締め紐21Uの一方を引き延ばして厚さを薄くし、第1の案内スリット34から第1の係止スリット38へと移動させ、図4(b)に示すように、上側締め紐21Uの幅方向の両端を端部収容孔40,42内に位置させた状態で上側締め紐21Uを引っ張る力を解除する。
【0040】
このように、上側締め紐21Uの幅方向の両端を端部収容孔40,42内に位置させた状態で上側締め紐21Uを引っ張る力を解除すると、上側締め紐21Uが元の状態の厚さに戻ることにより、上側締め紐21Uは第1の係止スリット38内に係止され、両端部が端部収容孔40,42内に位置する状態となる。
【0041】
同様に、2つ折にした上側締め紐21Uの他方を引き延ばして厚さを薄くして、第2の係止スリット44内に係止させ、両端部を端部収容孔46,48内に位置させることにより、図4(c)に示すように、上側締め紐21Uに締め紐長さ調整具31を取り付けることができる。
【0042】
そして、同様にして、下側締め紐21Dにも締め紐長さ調整具31を取り付けることにより、図2に示すマスク1とすることができる。
【0043】
上述したように、この発明の締め紐長さ調整具31によれば、導入孔33と第1、第2の係止スリット38,44とが第1、第2の案内スリット34,36によって連通しているので、上、下側締め紐21U,21Dをマスク本体11に取り付けた後からでも、締め紐長さ調整具31を上、下側締め紐21U,21Dに取り付けることができる。
【0044】
また、締め紐長さ調整具31は、第1の係止スリット38と第1の案内スリット34とが交差しているとともに、第1の係止スリット38の縦方向の中間部分に第1の案内スリット34が連通し、第2の係止スリット44と第2の案内スリット36とが交差しているとともに、第2の係止スリット44の縦方向の中間部分に第1の案内スリット36が連通している。
したがって、上、下側締め紐21U,21Dの有効長さを調整する際、上、下側締め紐21U,21Dの2つ折りした部分を引っ張っても、第1の係止スリット38および第2の係止スリット44を形成する壁部が、上、下側締め紐21U,21Dが間隔を狭める方向へ近づくのを阻止するため、上、下側締め紐21U,21Dが第1、第2の係止スリット38,44から第1、第2の案内スリット34,36へ抜け出なくなる。
【0045】
また、第1の係止スリット38の両端に端部収容孔40,42が設けられて抵抗エッジ41,43が形成されるとともに、第2の係止スリット44の両端に端部収容孔46,48が設けられて抵抗エッジ47,49が形成されているので、上、下側締め紐21U,21Dの幅方向の端部が中央へ異動するのを抵抗エッジ41,43,47,49によって阻止されるため、上、下側締め紐21U,21Dが第1、第2の係止スリット38,44から第1、第2の案内スリット34,36へ一層抜け難くなる。
【0046】
また、第1の案内スリット34に第1のガイド部35が設けられ、第2の案内スリット36に第2のガイド部37が設けられているので、導入孔33から第1、第2の係止スリット38,44への上、下側締め紐21U,21Dの移動を容易に行うことができる。
【0047】
また、第1の係止スリット38の端部に係止エッジ39が形成されるとともに、第2の係止スリット44の端部に係止エッジ45が形成されているので、上、下側締め紐21U,21Dが長さ方向に引っ張られて有効長さが長くなるのを係止エッジ39,45によって阻止されるため、上、下側締め紐21U,21Dの有効長さが変化し難くなる。
【0048】
次に、マスク1の装着の一例について説明する。
【0049】
まず、マスク本体部11の下側に位置する下側締め紐21Dに頭部を挿入し、マスク本体部11を、鼻および口を被うように装着した後、下側締め紐21Dを頭部の後方下部に沿わせる。
【0050】
そして、マスク本体部11の上側に位置する上側締め紐21Uを頭部の後方上部に沿わせることにより、図3に示すように、マスク1を、2本紐オーバーヘッドタイプとして装着できる。
【0051】
このようにしてマスク1を装着した状態で、上、下側締め紐21U,21Dの締め付け力が強かったり、弱い場合は、上、下側締め紐21U,21Dの2つ折りにした部分を引っ張って薄くし、締め紐長さ調整具31を操作して上、下側締め紐21U,21Dに対して移動させ、上、下側締め紐21U,21Dの環状部分の長さ、すなわち、有効長さを所望の長さに調整することにより、所望の締め付け力に調整する。
【0052】
図5はこの発明のマスクの第2実施例を示す正面図、図6は図2に示したマスクの使用例を示す説明図であり、図1〜図4と同一または相当部分に同一符号を付し、その説明を省略する。
【0053】
図5および図6に示すマスク1Aは、カップ状に形成されたマスク本体部11と、このマスク本体部11に取り付けられた左、右側締め紐21L,21Rと、この左、右側締め紐21L,21Rに取り付けられた左、右側締め紐21L,21Rの有効長さを調整する締め紐長さ調整具31とで構成されている。
【0054】
上記した左、右側締め紐21L,21Rは、弾性を有するゴムバンドなどで構成され、所定の長さと、所定の厚さと、所定の幅とを有している。
そして、左側締め紐21Lは、マスク本体部11の左端上側外面に一端(上端)が溶着などによって取り付けられ、マスク本体部11の左端下側外面に他端(下端)が溶着などによって取り付けられている。
また、右側締め紐21Rは、マスク本体部11の右端上側外面に一端(上端)が溶着などによって取り付けられ、マスク本体部11の右端下側外面に他端(下端)が溶着などによって取り付けられている。
【0055】
次に、マスク1Aの装着の一例について説明する。
【0056】
まず、マスク本体部11を、鼻および口を被うように装着した後、マスク本体部11の左側に位置する左側締め紐21Lに左側の耳にかけ、右側締め紐21Rを右側の耳にかけることにより、図6に示すように、マスク1Aを耳かけタイプとして装着できる。
【0057】
このようにしてマスク1Aを装着した状態で、左、右側締め紐21L,21Rの締め付け力が強かったり、弱い場合は、左、右側締め紐21L,21Rの2つ折りにした部分を引っ張って薄くし、締め紐長さ調整具31を操作して左、右側締め紐21L,21Rに対して移動させ、左、右側締め紐21L,21Rの環状部分の長さ、すなわち、有効長さを所望の長さに調整することにより、所望の締め付け力に調整する。
【0058】
図7はこの発明のマスクの第3実施例を示す正面図、図8は図7に示したマスクの使用例を示す説明図であり、図1〜図6と同一または相当部分に同一符号を付し、その説明を省略する。
【0059】
図7および図8に示すマスク1Bは、カップ状に形成されたマスク本体部11と、このマスク本体部11に取り付けられた締め紐21と、この締め紐21に取り付けられた締め紐21の有効長さを調整する締め紐長さ調整具31とで構成されている。
【0060】
上記した締め紐21は、弾性を有するゴムバンドなどで構成され、所定の長さと、所定の厚さと、所定の幅とを有している。
そして、締め紐21は、マスク本体部11の左右端部に上下に沿わせ、マスク本体部11の左右端部を折り返して溶着することによって形成された孔内に、上下動可能に収容されて取り付けられている。
そして、締め紐21の両端に締め紐長さ調整具31が取り付けられている。
なお、図7では締め紐長さ調整具31をマスク本体部11の下側に配置させているが、締め紐長さ調整具31をマスク本体部11の上側に配置してもよい。
【0061】
次に、マスク1Bの装着の一例について説明する。
【0062】
まず、マスク本体部11の下側に位置する締め紐21の部分に頭部を挿入し、マスク本体部11を、鼻および口を被うように装着した後、マスク本体部11の下側に位置する締め紐21の部分を頭部の後方下部に沿わせる。
【0063】
そして、マスク本体部11の上側に位置する締め紐21の部分を引き上げて頭部の後方上部に沿わせることにより、図8に示すように、マスク1Bを、1本紐オーバーヘッドタイプとして装着できる。
【0064】
このようにしてマスク1Bを装着した状態で、締め紐21の締め付け力が強かったり、弱い場合は、締め紐21の端部を引っ張って薄くし、締め紐長さ調整具31を操作して締め紐21に対して移動させ、締め紐21の環状部分の長さ、すなわち、有効長さを所望の長さに調整することにより、所望の締め付け力に調整する。
【0065】
図9はこの発明の締め紐調整具の他の実施例を示す図で、(a)はこの発明の締め紐長さ調整具の第2実施例を示す平面図、(b)はこの発明の締め紐長さ調整具の第3実施例を示す平面図、(c)はこの発明の締め紐長さ調整具の第4実施例を示す平面図であり、図1〜図8と同一または相当部分に同一符号を付し、その説明を省略する。
【0066】
図9(a)に示す締め紐長さ調整具31Aが図1に示す締め紐長さ調整具31と異なるところは、第1の係止スリット38Aと第2の係止スリット44Aとが互いに外側へ凸状(円弧状)に膨らんで縦方向へ延びて対向しているところである。
【0067】
図9(b)に示す締め紐長さ調整具31Bが図1に示す締め紐長さ調整具31と異なるところは、第1の係止スリット38Bと第2の係止スリット44Bとが互いに内側へ凹状(円弧状)に凹んで縦方向へ延びて対向しているところである。
【0068】
図9(c)に示す締め紐長さ調整具31Cが図1に示す締め紐長さ調整具31と異なるところは、第1の係止スリット38Cと第2の係止スリット44Cとが互いに波形で縦方向へ延びて対向しているところである。
【0069】
図9(a)〜(c)に示す形状の締め紐長さ調整具31A〜31Cも、図1に示した締め紐長さ調整具31と同様に、締め紐の長さを調整することができ、同様な効果を得ることができる。
なお、図9(a)に示す締め紐長さ調整具31Aは、締め紐を引っ張った場合、締め紐の幅方向の端部が互いに離れる方向へ移動しようとする。
したがって、締め紐が第1、第2の係止スリット38A,44Aから一層抜け難くなる。
【0070】
図10はこの発明の締め紐調整具のさらに他の実施例を示す図で、(a)はこの発明の締め紐長さ調整具の第5実施例を示す平面図、(b)はこの発明の締め紐長さ調整具の第6実施例を示す平面図、(c)はこの発明の締め紐長さ調整具の第7実施例を示す平面図であり、図1〜図9と同一または相当部分に同一符号を付し、その説明を省略する。
【0071】
図10(a)に示す締め紐長さ調整具31Dが図9(a)に示す締め紐長さ調整具31Aと異なるところは、外形が円形であるところである。
【0072】
図10(b)に示す締め紐長さ調整具31Eが図9(b)に示す締め紐長さ調整具31Bと異なるところは、外形が円形であるところである。
【0073】
図10(c)に示す締め紐長さ調整具31Fが図9(c)に示す締め紐長さ調整具31Cと異なるところは、外形が円形であるところである。
【0074】
図10(a)〜(c)に示す形状の締め紐長さ調整具31D〜31Fも、図1に示した締め紐長さ調整具31と同様に、締め紐の長さを調整することができ、同様な効果を得ることができる。
なお、図10(a)に示す締め紐長さ調整具31Dは、締め紐を引っ張った場合、締め紐の幅方向の端部が互いに離れる方向へ移動しようとする。
したがって、締め紐が第1、第2の係止スリット38A,44Aから一層抜け難くなる。
【0075】
図11はこの発明の締め紐長さ調整具の第8実施例を示す平面図であり、図1〜図10と同一または相当部分に同一符号を付し、その説明を省略する。
【0076】
図11に示す締め紐長さ調整具31Gは、本体部32と、この本体部32と一体成形されたフック部53とで構成されている。
【0077】
上記した締め紐長さ調整具31Dは、装着者がマスクを装着するときに使用する締め紐の有効長さを調整するもので、所定の強度を有するプラスチック(樹脂)、例えば、ポリプロピレンで、板状に成形されている。
そして、フック部53は、導入孔33、第1、第2の係止スリット38,44と同様に縦方向へ延び、第1、第2の案内スリット34,36と交差している。
【0078】
この締め紐長さ調整具31Dは、締め紐長さ調整具31、31A〜31Cと同様に、締め紐の長さを調整することができる。
【0079】
図12はこの発明のマスクの第4実施例を示す正面図、図13は図12に示したマスクの使用例を示す説明図であり、図1〜図11と同一または相当部分に同一符号を付し、その説明を省略する。
【0080】
図12および図13に示すマスク1Cは、カップ状に形成されたマスク本体部11と、このマスク本体部11に取り付けられた左、右側締め紐21L,21Rと、右側締め紐21Rに取り付けられた右側締め紐21Rの有効長さを調整する締め紐長さ調整具31Gとで構成されている。
なお、締め紐長さ調整具31Gが右側締め紐21Rに取り付けられているが、締め紐長さ調整具31Gを左側締め紐21Rに取り付けたり、締め紐長さ調整具31Gを左、右側締め紐21L,21Rに取り付けてもよい。
【0081】
次に、マスク1Cの装着の一例について説明する。
【0082】
まず、マスク本体部11を、鼻および口を被うように装着した後、左、右側締め紐21L,21Rを耳の上下を経由するように沿わせ、フック部53を左側締め紐21Lに引っ掛けることにより、図13に示すように、マスク1Cを、サイドフックタイプとして装着できる。
【0083】
このようにしてマスク1Cを装着した状態で、左、右側締め紐21L,21Rの締め付け力が強かったり、弱い場合は、右側締め紐21Rの2つ折りにした部分を引っ張って薄くし、締め紐長さ調整具31Gを操作して右側締め紐21Rに対して移動させ、右側締め紐21Rの環状部分の長さ、すなわち、有効長さを所望の長さに調整することにより、所望の締め付け力に調整する。
【0084】
図14は締め紐長さ調整具の参考例を示す平面図であり、図1〜図13と同一または相当部分に同一符号を付し、その説明を省略する。
【0085】
図14に示す締め紐長さ調整具31Hは、装着者がマスクを装着するときに使用する締め紐の有効長さを調整するもので、所定の強度を有するプラスチック(樹脂)、例えば、ポリプロピレンで、平面視長方形(正方形)をした板状に成形され、その四隅の角を丸めた本体部32Bによって構成されている。
【0086】
そして、本体部32Bには、第1、第2の案内スリット34,36、第1、第2のガイド部35,37、第1、第2の係止スリット38,44、係止エッジ39,45、端部収容孔40,42,46,48、抵抗エッジ41,43,47,49、外周、内周補強リブ50,51が設けられている。
なお、第1、第2の案内スリット34,36は、互いに反対方向へ開放している。
【0087】
この締め紐長さ調整具31Gは、マスクを装着するための張力が締め紐に、第1、第2の案内スリット34,36から抜け出るように作用しているので、2つ折りにした締め紐の部分を引っ張って締め紐の有効長さを調整しようとすると、締め紐が第1、第2の係止スリット38,44から第1、第2の案内スリット34,36を介して抜け出る可能性がある。
【0088】
上記した実施例において、本体部32の外形を長方形、円形とした例を示したが、本体部は他の形状、例えば、楕円形などであってもよい。
また、マスク本体11に弁を設けたマスクであってもよい。
【符号の説明】
【0089】
1,1A マスク
1B,1C マスク
11 マスク本体部
21 締め紐
21U 上側締め紐
21D 下側締め紐
21L 左側締め紐
21R 右側締め紐
31,31A 締め紐長さ調整具
31B,31C 締め紐長さ調整具
31D,31E 締め紐長さ調整具
31F,31G 締め紐長さ調整具
31H 締め紐長さ調整具
32,32A 本体部
32B 本体部
33 導入孔
34 第1の案内スリット
35 第1のガイド部
36 第2の案内スリット
37 第2のガイド部
38,38A 第1の係止スリット
38B,38C 第1の係止スリット
39 係止エッジ
40,42 端部収容孔
41,43 抵抗エッジ
44,44A 第2の係止スリット
44B,44C 第2の係止スリット
45 係止エッジ
46,48 端部収容孔
47,49 抵抗エッジ
50 外周補強リブ
51 内周補強リブ
53 フック部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状の本体部を備え、
該本体部に、
所定の幅、所定の厚さを有し、弾性変形可能な締め紐を導入する導入孔と、
該導入孔に右端が連通し、前記導入孔内の前記締め紐を第1の係止スリットへ案内する横方向へ延びた第1の案内スリットと、
前記導入孔に左端が連通し、前記導入孔内の前記締め紐を第2の係止スリットへ案内する横方向へ延びた第2の案内スリットと、
前記第1の案内スリットの左端に縦方向の中間部分が連通し、前記第1の案内スリットからの前記締め紐を係止する縦方向へ延びた前記第1の係止スリットと、
前記第2の案内スリットの右端に縦方向の中間部分が連通し、前記第2の案内スリットからの前記締め紐を係止する縦方向へ延びた前記第2の係止スリットとが設けられている、
ことを特徴とするマスクの締め紐長さ調整具。
【請求項2】
請求項1に記載のマスクの締め紐長さ調整具において、
前記第1の係止スリットの両端部に、前記第1の係止スリットの幅よりも大きな直径で、前記締め紐の幅方向の端部を収容する端部収容孔を設けるとともに、
前記第2の係止スリットの両端部に、前記第2の係止スリットの幅よりも大きな直径で、前記締め紐の幅方向の端部を収容する端部収容孔を設けた、
ことを特徴とするマスクの締め紐長さ調整具。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のマスクの締め紐長さ調整具において、
前記第1の案内スリットの右端部に円弧状の第1のガイド部を設けるとともに、
前記第2の案内スリットの左端部に円弧状の第2のガイド部を設けた、
ことを特徴とするマスクの締め紐長さ調整具。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のマスクの締め紐長さ調整具において、
前記第1の係止スリットを形成する壁部の厚さ方向の端部に係止エッジを設けるとともに、
前記第2の係止スリットを形成する壁部の厚さ方向の端部に係止エッジを設けた、
ことを特徴とするマスクの締め紐長さ調整具。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のマスクの締め紐長さ調整具を用いた、
ことを特徴とするマスク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−251085(P2011−251085A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−128836(P2010−128836)
【出願日】平成22年6月4日(2010.6.4)
【出願人】(391009372)ミドリ安全株式会社 (201)
【Fターム(参考)】