説明

マスクの耳掛け紐取付け装置

【課題】本願マスクの耳掛け紐取付け装置は、このマスクに使用する耳掛け紐の長さは紐供給装置で正確にあらかじめ用意し、耳掛け紐をマスク本体の所定位置に配設する手段として機械機構を使用することなく、これに代わって空気流を使用することにより、耳掛け紐を所定の位置に瞬間的に配設することができ、高効率のマスクの耳掛け紐取付け装置を提供する。
【解決手段】本願マスクの耳掛け紐取付け装置1は、別工程で製造されたマスク本体11がコンベア14で耳掛け紐案内板35の下に運ばれてくる。耳掛け紐22はサーボモータ21を備えた耳掛け紐巻取りドラム22aから耳掛け紐導入管34を介して耳掛け紐案内板35のエアバルブ33に導かれる。耳掛け紐22はエアバルブで発生する空気流によりU字形状の溝39の末端まで運ばれる。その後溶着器32a、32bで耳掛け紐をマスク本体に溶着し、次いでカッタ31で耳掛け紐を切断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は衛生用マスク等の耳掛け紐の取付け装置に関する。詳しくはマスク本体の耳掛け紐溶着箇所に空気流を用いて迅速に耳掛け紐を導いて、その後この耳掛け紐をマスク本体に溶着し、続いてこの耳掛け紐を切断する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術における衛生用マスクの耳掛け紐の取付け装置においては、別工程でマスク本体を製造し、このマスク本体に耳掛け紐を取付ける方法が主流になっている。このマスク本体の四隅近傍の所定の位置(本願図11の32cを参照)に耳掛け紐を配設し、その後に溶着器を用いて耳掛け紐をマスク本体に溶着して、次いで不要の耳掛け紐を切断して完成マスクを得る。下記特許文献1にはこの耳掛け紐のマスク本体の溶着箇所に耳掛け紐を配置する手段として耳掛け紐把持体が耳掛け紐を把持し、カム、アーム等を用いた機械機構で目的を達成している。
【0003】
又、耳掛け紐はマスクと顔面の密着性を良好にするため芯に糸状のゴムを通し周囲を繊維でコーティングした伸縮自在のいわゆるゴム紐を用いる。マスク本体と耳掛け紐の溶着及び切断は極めて短時間(瞬間)に行うことが容易である。一方、伸縮性のゴム紐を把持して溶着箇所にこのゴム紐を配設する場合、配設速度を大きくするとゴム紐が伸びるため、正確な必要長さの耳掛け紐を取付けることができない。耳掛け紐の取付け装置の効率は正確な長さのゴム紐を所定位置にいかに迅速に配設できるか否かに左右されるのであるが、上述の機械機構を用いた場合には耳掛け紐に伸縮性があることを考慮すると速度を一定以上に大きくすることはできない。
【0004】
また、下記特許文献2における耳掛け紐取付け装置は、耳掛け紐を上下のベルトコンベアで挟持させて、所定の溶着箇所に配設している。この耳掛け紐取付け装置の効率を上げるためには、ベルトコンベアの回転速度を大きくする必要がある。このベルトコンベアの回転速度が大きいと耳掛け紐が伸びて、その結果正確な長さの耳掛け紐を供給できないことが懸念される。これらの特許文献で開示された耳掛け紐取付け装置はいずれも複雑な機械機構を使用しているため、これらの機器類の保守点検が容易ではないと考えられる。
【特許文献1】特開平−67977号公報
【特許文献2】実用新案登録第3072940号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願発明は、このマスクに使用する耳掛け紐の長さは耳掛け紐供給装置であらかじめ正確に用意し、耳掛け紐をマスク本体の所定位置に配設する手段として機械機構を使用することなく、これに代わって空気流を使用することにより、耳掛け紐を所定の位置に瞬間的に配設することのできるマスクの耳掛け紐取付け装置を提供する。本願発明は主として衛生用マスク、特にプリーツ型マスク及び立体マスクの製造に利用される。
【0006】
本願マスクの耳掛け紐取付け装置の備える耳掛け紐の溶着装置は、耳掛け紐をマスク本体の四隅の所定の位置に配設するために従来技術と異なり、機械機構を使用しない。この機械機構に代えて空気流を使用して行う。図5に示すエアノズル33のベンチュリー効果を利用して耳掛け紐を瞬間的に所定位置まで搬送する。この耳掛け紐の搬送通路は耳掛け紐案内板35に設けた溝39とこの溝に蓋をする補助板36で構成されるU字形状の管に沿って、耳掛け紐導入管から導入された耳掛け紐を図2に示す32bの位置まで瞬時に搬送する。
【0007】
この耳掛け紐案内板35の上に位置する溶着器取付け架台42には、耳掛け紐の入り口側の溶着器32a及び耳掛け紐の末端側の溶着器32bがマスク本体の所定の溶着位置に配設されている。この溶着器取付け架台は押圧ロッド41に油圧等の手段を用いて力を加えて、溶着器32a、32bを耳掛け紐とマスク本体に押圧・熱圧着して溶着する。また、耳掛け紐入り口側のU字形状溝の端部にカッタ31が装着されていて、溶着が完了した後にややタイミングをずらして耳掛け紐を切断する。
【0008】
図5から図9に示すように耳掛け紐とマスク本体の溶着及び耳掛け紐の切断が終了した後、押圧ロッドに加えた力を排除すると後退スプリング43aにより架台はもとの位置に復元される。これと同時に耳掛け紐案内板35も後退スプリング43bにより上方に移動する。このため、耳掛け紐案内板35と連結具37で連結された補助板36に間隙が生じて、耳掛け紐は自由に移動できる状態となる。また、補助板36とマスク本体にも間隙が生じて、耳掛け紐の溶着された完成マスクはコンベアで溶着器の外部に運び出されるとともに、次のマスク本体が耳掛け紐溶着装置の下側に運びこまれる。
また、あらゆるデザインの立体マスクに耳掛け紐を取付け可能とするために、溶着装置は耳掛け紐案内板の幅方向の中央を通る長軸の中心において平面視で、くの字形状に折れ曲がって形成され、折れ曲がった長軸のなす角度は90度から180度未満としている。
【0009】
耳掛け紐供給装置は、図10に示される耳掛け紐の把持体27が耳掛け紐を把持して所定の距離(マスクに必要な耳掛け紐の長さ寸法)を移動して必要な長さの耳掛け紐を耳掛け紐溶着装置に供給する。この把持体27の移動はソレノイドアクチュエータ及びアーム等を使用することができる。この把持体が運ぶ必要長さの耳掛け紐はサーボモータを用いて耳掛け紐巻取りドラムから供給される。
【0010】
耳掛け紐供給ドラムと耳掛け紐把持体の間に耳掛け紐送りガイド、固定ローラ及び耳掛け紐送りガイドと固定ローラの間にフリーローラを備え、このフリーローラは耳掛け紐に懸架され、耳掛け紐に懸架されたフリーローラは上下二個のセンサにより検出され、上記二個のセンサの間に位置するように上記サーボモータにより耳掛け紐を供給して制御される。このフリーローラの効果により耳掛け紐把持体が高速で移動しても耳掛け紐(ゴム紐)は、伸びが最小限におさえられ、正確な長さの耳掛け紐を耳掛け紐溶着装置に供給できる。本願マスクの耳掛け紐取付け装置の高速化は、上述の空気流を用いた耳掛け紐の配設とこの耳掛け紐供給装置で達成されている。
【0011】
他の本願発明の耳掛け紐供給装置は、二重耳掛け紐構造のマスク(図16、図17参照)を迅速且つ容易に製造するために、図15に示すように上記耳掛け紐案内板35に設けられたU字形状の溝39の末端に更に波形状の溝59を加え、上記溶着装置の備える溶着器は押圧ロッドと後退スプリングを備えた上下動自在の溶着器取付け架台であって、且つ、上記U字形状の溝の耳掛け紐入り口側の端部、上記U字形状の溝の他の端部、波形状の溝の耳掛け紐入り口側の端部及び上記波形状の溝の他の端部に配設した。
【発明の効果】
【0012】
本願マスクの耳掛け紐取付け装置は、複雑な機械機構を用いることなく耳掛け紐をマスク本体の所定位置に空気流を用いて迅速且つ確実に配設することができる。この耳掛け紐の配設に複雑な機械機構を用いないために、メンテナンスが不要であり且つ故障はきわめて少ない。前述のようにマスクの耳掛け紐取付け装置は耳掛け紐の確実な配設に時間がかかる。本願マスクの耳掛け紐取付け装置を使用すれば瞬間的に確実な耳掛け紐の配設が可能であるためマスクの耳掛け紐取付け速度は極めて大きく、不良品の発生も少ない。
また、上記溶着装置が上記耳掛け紐案内板の幅方向の中央を通る長軸の中心における平面視で、くの字形状に折れ曲がって形成され、折れ曲がった長軸のなす角度は90度から180度未満である場合には、あらゆるデザインの立体マスクにも耳掛け紐が取付け可能である。
【0013】
本願マスクの耳掛け紐取付け装置が備える耳掛け紐供給装置は、マスクに取付ける必要な長さの耳掛け紐をフリーローラを用いて正確に供給する。このため、耳掛け紐溶着装置において耳掛け紐をマスクの溶着箇所に大きな速度で配設しても耳掛け紐(ゴム紐)が、引っ張られて伸びることがない。従って、常に同一長さの耳掛け紐がマスク本体に取付けることが可能であり、不良品の発生が少ない。
【0014】
他の本願発明の耳掛け紐供給装置は、耳掛け紐案内板に設けられたU字形状の溝の末端に更に波形状の溝を加え、マスク本体の上記U字形状の溝の両末端、波形状の溝の耳掛け紐入り口側端部及び波形状の溝の他の端部の位置に溶着器を設けている。また、耳掛け紐のマスク本体への配設は上述の空気流を用いる。このため、二重耳掛け紐構造のマスク(図16、図17参照)を迅速且つ容易に製造することができる。この二重耳掛け紐構造のマスクを装着した場合は、人の顔とマスクの間に隙間が発生しにくいため、マスクの衛生効果が大きくなる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本マスクの耳掛け紐取付け装置の正面図である。
【図2】本マスクの耳掛け紐取付け装置の平面図である。
【図3】耳掛け紐案内板の平面図である。
【図4】耳掛け紐案内板の底面図である。
【図5】本マスクの耳掛け紐取付け装置の一部断面側面図である。
【図6】マスク本体と耳掛け紐の溶着及び耳掛け紐の切断時の説明図である。
【図7】マスク本体と耳掛け紐の溶着及び耳掛け紐の切断後の説明図である。
【図8】完成マスクがコンベアで運び去られた状態を示す図である。
【図9】新たなマスク本体がコンベアで運び込まれた状態を示す図である。
【図10】耳掛け紐供給装置の説明図である。
【図11】完成プリーツ型マスクの正面図である。
【図12】完成プリーツ型マスクを人が装着した際の説明図である。
【図13】立体マスクの紐取付け説明図である。
【図14】完成立体マスクの説明図である。
【図15】他の本願発明であるマスクの耳掛け紐取付け装置が備える耳掛け紐案内板の底面図である。
【図16】他の本願発明である二重耳掛け紐構造の完成マスクの正面図である。
【図17】他の本願発明である二重耳掛け紐構造の完成マスクを人が装着した際の説明図である。
【図18】実施例2に係る溶着装置の平面図である。
【図19】実施例2に係る立体マスクの紐取付け説明図である。
【図20】実施例2に係る完成立体マスクの説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本願発明を実施するための最良の形態を図に基づいて詳細に説明する。これらの図において共通の部材は共通の符号(番号)を付している。また、図から明らかに判断できる部材には符号をつけていない。これらの図は本願発明を説明するためのものであり本願発明はこれらの図に限定されない。
【0017】
本願発明のマスクの耳掛け紐取付け装置1は、耳掛け紐供給装置20と耳掛け紐溶着装置30を備える。マスク本体11は他の装置であるマスク本体製造機(図示せず)で製造され、マスクの耳掛け取付け装置1の備えるコンベアに自動で供給される。
【0018】
本願耳掛け紐供給装置に使用されるマスク本体の材質は熱可塑性樹脂又はこれを主材料としたものである。熱可塑性樹脂であれば特に限定はされないが、ポリプロピレンが特に好ましい。また、耳掛け紐の材料は芯に紐状のゴムを用い、周囲を繊維でコーティングしたもの(以下「ゴム紐」ともいう。)であり、この繊維は熱可塑性の樹脂又はこれを主材料としたものである。この耳掛け紐に用いる熱可塑性樹脂も特に限定をされないが、上述のマスク本体と同一のものが好ましい。マスク本体と耳掛け紐の溶着性が良好となるためである。
【実施例1】
【0019】
[溶着装置]
実施例1に係る溶着装置は主としてプリーツ型マスクの耳掛け紐の取付けに用いるが、立体マスクのデザインによってはこの立体マスクの耳掛け紐の取付けにも用いることができる。実施例1に係る溶着装置は長さ方向の中央長軸62と幅方向の中央短軸63とは直角に交わる(図3参照)。
図1は本願耳掛け紐取付け装置1の正面図である。この図1においてコンベア14の一部は省略されて描かれている。このコンベア14は金属製でエンドレスである。コンベア14に載置されたマスク本体11が矢印の方向に運ばれてくる。このコンベア14にはコンベア仕切り板14aが設けられているためマスク本体11がコンベアで移送中に位置をずらすことはない。このマスク本体11が耳掛け紐案内板35の真下に運ばれたときに、耳掛け紐22は耳掛け紐導入管34を介してエアノズル33中に存在し、電磁弁33aが開いて圧縮空気がエアノズル33に送り込まれる。耳掛け紐22はエアノズル33のベンチュリ効果で高速でU字管の入口からU字管の出口末端まで運ばれる。
【0020】
耳掛け紐案内板35の上には溶着器(U字形状の溝の耳掛け紐入口側に32a、U字形状の溝の耳掛け紐出口側に32b)及びカッタ31を設けた溶着器取付け架台42がある(図2参照)。この溶着器取付け架台42は押圧ロッド41を備え、この押圧ロッドに下方向に力を加えて溶着器32a、32b及びカッタ31を下方向に移動させ、溶着器32a、32bをマスク本体11と耳掛け紐22を押圧しつつ熱溶着する。この溶着器の種類は特に限定されること無く、高周波、熱電対、超音波等の周知の溶着器を使用することができる。これらのうちで高周波を用いた溶着器が特に好ましい。マスク本体11及び耳掛け紐22の主材料である熱可塑性樹脂を確実に溶着できるためである。次いで少しタイミングをずらす位置に設置したカッタ31で耳掛け紐22を切断する。
【0021】
上述の溶着及び切断工程が終了すると押圧ロッド41にかかる力が排除され、後退スプリング43a、44aで溶着器取付け架台42及び耳掛け紐案内板35がもとの位置に復元する。マスク本体11に溶着された耳掛け紐22からなる完成マスク13を拘束するものが全て排除され、コンベア14で完成マスク13は運び出され、新たなマスク本体11が運び込まれる。
【0022】
図2は本願耳掛け紐取付け装置1の平面図である。コンベア14を一部省略して描いている。図2に示すように押圧ロッド41、溶着器32a、32b及びカッタ31を備えた溶着器取付け架台42の真下に耳掛け紐案内板35が設けられている。この耳掛け紐案内板35の底面には平面形状がU字形状の耳掛け紐案内溝39が設けられ、更に、耳掛け紐案内溝39の入口側にエアノズル33及び耳掛け紐導入管34が設けられている(図5参照)。この耳掛け紐案内板35の真下にマスク本体11をコンベア14で運び込んで耳掛け紐22を溶着・切断をする。
【0023】
図3は耳掛け紐案内板35の平面図である。この耳掛け紐案内板35の底面に平面形状がU字形状の耳掛け紐案内溝39が設けられている。後述するようにこの耳掛け紐案内溝39は補助板36で蓋をしてU字形状の管を形成する。耳掛け紐22は耳掛け紐導入管34から導入され、電磁弁33aが開いてエアノズル33の空気流で上記U字管の末端まで瞬間的に移送される。図3では電磁バルブ33aになっているが、弁として機能するものであれば電磁弁に限定されない。このエアノズル33に用いる空気圧は特に限定されないが好ましくは2Kg/平方センチから5Kg/平方センチであり、更に好ましくは3Kg/平方センチから4Kg/平方センチである。この範囲の空気圧であると圧縮空気の取扱いが容易であり、且つ十分な耳掛け紐22の搬送速度が得られる。
【0024】
このU字形状の耳掛け紐案内溝39末端には耳掛け紐検出センサ39aが設置されている。この耳掛け紐検出センサ39aが耳掛け紐を検出したときに溶着器32a、32bがマスク本体11と耳掛け紐22を溶着し、カッタで耳掛け紐22を切断する。
【0025】
図4は耳掛け紐案内板35の底面図である。この耳掛け紐案内板35の底面には平面形状がU字形状である耳掛け紐案内溝39が設けられている。B−B線切断端面に示すようにこの耳掛け紐案内溝39断面形状は特に限定は無いが、略U字形状とするのが好ましい。後述する補助板36で蓋をしてU字管として耳掛け紐22を移送する際にスムーズにするためである。この耳掛け紐案内溝39の大きさは特に限定されないが耳掛け紐22が移送されるのに十分な大きさとする。
【0026】
図5は本願耳掛け紐取付け装置1の一部断面側面図である。耳掛け紐案内板35に一部開放した円筒形等の空隙35aを設け、補助板36にも同様に一部開放した円筒形等の空隙36aを設ける。これらの両円筒形等の空隙35a及び36aの間に、これらの空隙に収納可能な一対の円筒等をバーベル形状にした連結具37を設ける。この連結具37の作用により耳掛け紐案内板35と補助板36とは密着することも可能であり、また、耳掛け紐案内板35が補助板36を吊り下げた状態とすることも可能である。
【0027】
マスク本体11が耳掛け紐案内板35の真下にコンベア14で運び込まれたときに力F1を押圧ロッド41に与えて、耳掛け紐案内板35と補助板36とを密着させる。耳掛け紐案内溝39は、補助板36により蓋をされてB−B線切断端面で示すようにU字形状の管が形成される。耳掛け紐22はエアノズル33の空気流により平面形状がU字形の管中を末端まで高速で搬送される。
【0028】
図6はマスク本体と耳掛け紐の溶着及び耳掛け紐の切断状態を示す説明図である。押圧ロッド41にさらに力F2を加えると、押圧ロッド41にかかる力はF1+F2となり、図6に示すように後退スプリング43aの反力に逆らって、溶着器取付け架台42が下方に移動して溶着器32a、32bは耳掛け紐22とマスク本体11を押圧・溶着する。同時に溶着器取付け架台42に取付けられたカッタ31も下方に移動して耳掛け紐22を切断する。カッタによる耳掛け紐22の切断は溶着後に行うようにややタイミングをずらして溶着器取付け架台42に取付ける。
【0029】
好ましくは耳掛け紐22の溶着と同時に耳掛け紐固定器38を用いて耳掛け紐22を管壁に押しつけて固定する。耳掛け紐22の動きを安定させるためである。図では耳掛け紐固定器38としてエアーアクチュエータを使用しているが、これに限定されるものではない。耳掛け紐22を管壁に押しつけて固定することができれば慣用技術のものを使用することができる。
【0030】
図7はマスク本体と耳掛紐の溶着及び耳掛紐切断後の状態を示す説明図である。上述の溶着、耳掛け紐固定、耳掛け紐切断の一連の作動が終了した後、押圧ロッド41に加えられた力F1+F2を取り除く。後退スプリング43aの反力で溶着器取付け架台42が上方に移動するため溶着器32a、32b及びカッタ31も上方に移動する。また、後退スプリング44aの反力により耳掛け紐案内板35が上方に移動して、耳掛け紐案内板35と補助板36の間に間隙が生じる。このため耳掛け紐22は耳掛け紐案内板35及び補助板36に拘束されることなく自由に移動が可能になる。更に、補助板36は連結具37を介して耳掛け紐案内板35に吊り下げられた状態になる。このため耳掛け紐22が取付けられたマスク本体11はコンベア14の上に補助板36に拘束されることなく自由に載置される。このためコンベア14が移動すれば完成マスク13はコンベア14によって運び去られる。
【0031】
図8は完成マスクがコンベアで運び去られた状態を示す説明図である。耳掛け紐案内板35と補助板36の間には間隙があり、補助板36とコンベア14の間にも間隙がある。従って、新たなマスク本体11がコンベア14で運び込まれることが可能である。また、耳掛け紐22は耳掛け紐固定器38で管壁に押しつけられて固定されている。更に、電磁弁33aは閉じられている。
【0032】
図9は新たにマスク本体がコンベアで運び込まれた状態を示す図である。その後、力F1を押圧ロッド41に加えると溶着器取付け架台42が押し下げられて、耳掛け紐案内板35が押し下げられ耳掛け紐案内板35と補助板36は密接してU字形状の管を形成する。また、補助板36は新たに運び込まれたマスク本体11を押圧する。溶着器32a、32b及びカッタ31は力F1では押し下げることができないため、上方の位置に保持された状態である。耳掛け紐固定器38を開放して、エアノズルの電磁弁を開にすると空気流により耳掛け紐22はU字形状の管の末端まで瞬間的に移送される。その後、図5、図6、図7、図8の順に繰り返される。
【0033】
[耳掛け紐供給装置]
図10は本願耳掛け紐取付け装置1が備える耳掛け紐供給装置20である。この装置はサーボモータ21が耳掛け紐巻取りドラム22aを回転して必要長さの耳掛け紐22を常に供給する。必要長さの耳掛け紐22は把持体27が移動する距離L(仮想X軸とY軸の距離)である。把持体27を移動させる手段は特に制限はなくアーム等を使用することもできるが、好ましくはソレノイドアクチュエータ25を使用する。ソレノイドアクチュエータ25は、場所を取らず、作動が速く且つ故障が少ない。
【0034】
図10の(1)は把持体27が耳掛け紐22を把持した状態を表す。耳掛け紐22は耳掛け紐送りガイド22bを介してフリーローラ24、固定ローラ23を経由して把持される。このフリーローラ24は耳掛け紐22により懸架され、ガイド29により支持されている。フリーローラ24及びガイド29はフリーローラ側面図に示す構造になる。耳掛け紐22は上述の溶着装置30の備える耳掛け紐導入管34に続いている。
【0035】
図10の(2)は把持体27が耳掛け紐22を把持し距離Lを移動した状態を表す。移動距離Lがマスク本体11の取付ける耳掛け紐22の長さである。把持体27が高速で移動した場合でもフリーローラ24であらかじめ移動距離分の耳掛け紐22が保有されているためゴム紐製の耳掛け紐22の伸びる長さは最小限に抑えられる。また、フリーローラ24は光センサ等からなる上部センサ26aと下部センサ26bの間に位置するようにサーボモータ21でコントロールされている。このフリーローラ24が存在しない場合は把持体27が高速で移動するとゴム紐製の耳掛け紐22の伸びが大きいため、安定した長さの耳掛け紐22を供給することができない。また、この耳掛け紐供給装置20は、マスク本体11に取付ける耳掛け紐22の長さ(図中耳掛け紐22のK点からJ点まで)が用意されているため、耳掛け紐の溶着器30において耳掛け紐22が高速でU字形状管中を移送されても耳掛け紐22が伸びることはない。
【0036】
また、必要な耳掛け紐22の長さを調整する場合(大人用のマスク、小児用のマスクで必要長さは異なる。)は、上述のソレノイドアクチュエータ25で適応できる。把持体27は高速で移動するため、慣性で必要以上に移動することを防止するために耳掛け紐把持体ストッパ28を設けることが好ましい。
【0037】
[完成マスク]
図11は本願耳掛け紐取付け装置1で製造したプリーツ型マスクの完成マスク13の正面図である。(1)は完成マスクの状態を示すものであり、マスク本体11に耳掛け紐22が4か所の溶着箇所32cで溶着されている。(2)は完成マスクにさらに縁取り60を付したものである。この縁取り60はマスク本体11のほつれを防止するとともに美的外観を考慮したものである。この縁取り60は本願耳掛け紐取付け装置1で製造した完成マスク13の後工程で慣用技術に基づいて取付けることが可能である。(3)は出荷時の荷姿である。(1)、(2)及び(3)に描かれたマスクは、以下において、いずれも完成マスクと呼ぶ。
【0038】
図12は本願耳掛け紐取付け装置1で製造した完成マスク13を人が装着した際の説明図である。顔とマスクの間に隙間がやや生じやすいのがこの種のマスク(プリーツ型マスク)の難点ともいえる。この隙間の生じる難点を解消したのが後述する二重耳掛け紐構造マスクについての他の本願発明のマスクの耳掛け紐取付け装置である。この二重耳掛け紐構造マスクは特許文献特開2004−267694において開示されているが、製造が複雑で大量生産型の装置が発表されていない。
【0039】
図13は、立体マスクの紐取付け説明図である。図13(a)は立体マスクの本体を示す。この立体マスク本体は耳掛け紐を取付ける前にあらかじめ作製しておく。また、立体マスクの本体には鼻密着部材をあらかじめ取付けられている。図13(b)は本願耳掛け紐取付け装置1で耳掛け紐を取付けた状態を示す。図13(c)は耳掛け紐を取付けた状態の立体マスクを中心線に沿って折畳んで接着線で接着した状態を示す。この際に立体マスクの不要部分が生じるため、切断線で不要部分を切断する。
【0040】
図14は、完成立体型マスクの説明図である。図14(a)は図13に係る立体マスクの不要部分を切断した状態を示す。図14(b)は折畳んだ状態の完成立体マスクを開いた状態のものを示す。
【0041】
[他の本願発明のマスクの耳掛け紐取付け装置]
図15は他の本願発明のマスクの耳掛け紐取付け装置に使用される耳掛け紐案内板55の底面図である。他の本願発明のマスクの耳掛け紐取付け装置は、前述の耳掛け紐案内板35に設けられたU字形状の溝39の末端に更に波形状の溝59を加え、上記溶着装置の備える溶着器は押圧ロッドと後退スプリングを備えた上下動自在の溶着器取付け架台であって、且つ、上記U字形状の溝の耳掛け紐入り口側の端部32a、上記U字形状の溝の他の端部32b、波形状の溝の耳掛け紐入り口側の端部32d及び上記波形状の溝の他の端部32eに配設され、
上記溶着装置の備える耳掛け紐切断用のカッタ31は上記溶着器取付け架台であって、且つ、上記U字形状の溝の耳掛け紐入り口側の端部32a近傍に配設される。
【0042】
この溝は、前述の補助板36により蓋をされて管を形成してエアノズル33の空気流により、U字形状管39の入り口から入った耳掛け紐22はU字形状溝(管)39の末端を通って波型形状溝(管)59の入り口を経由して波型形状溝(管)59の末端に至る。この波型形状溝(管)59の末端には、耳掛け紐検出器39aが設けられていて、エアノズル33の空気流により、運ばれた耳掛け紐22を検出した後に耳掛け紐22とマスク本体11との溶着及び耳掛け紐22の切断を行う。この他の本願発明のマスクの耳掛け紐取付け装置に係る耳掛け紐案内板55及び溶着器の数及び位置以外のものは前述のマスクの耳掛け紐取付け装置1のものが全てそのまま適用される。他の本願発明のマスクの耳掛け紐取付け装置で製造されるマスク(以下「二重耳掛け紐構造マスク」という。)は、本願発明のマスクの耳掛け紐取付け装置1で製造されるマスクとほぼ同一の速さで製造することができる。
【0043】
[他の本願発明のマスクの耳掛け紐取付け装置で製造した完成マスク]
図16は他の本願発明のマスクの耳掛け紐取付け装置で製造した完成マスク13(以下完成二重耳掛け紐構造マスクという。)の正面図である。図16の(1)はマスク本体11に耳掛け紐22が32cの溶着箇所で溶着されている。(2)は縁取り60を付したマスクである。(3)は出荷時の荷姿の正面図である。以下において(1)、(2)及び(3)のものは全て完成(二重耳掛け紐構造)マスクと呼ぶ。
【0044】
図17は他の本願発明の二重耳掛け紐構造マスクを装着した際の説明図である。顔と完成マスクの間に隙間がなくマスク着用効果が大きい。
【実施例2】
【0045】
実施例2の耳掛け紐取付け装置に使用する溶着装置230は図18に示すように、耳掛け紐案内板235の幅方向の中央を通る長軸262の中心261において、平面からみた場合に、くの字形状に折れ曲がって形成され、折れ曲がった長軸262のなす角度θは90度から180度未満が好ましい。実施例2の耳掛け紐取付け装置は主として立体マスクの耳掛け紐を取付ける。立体マスクの耳掛け紐は実施例1の耳掛け紐取付け装置1を用いても上述のように取付けることは可能であるが、立体マスクのデザインによっては、耳掛け紐の取付けが困難な場合が生じる。立体マスクは高度な外気の濾過が要求される場合があり、マスクが顔面に密着して、外気の漏れを防止する必要がある。このため特殊なデザインが要求される場合がある。
【0046】
図19及び図20は高度濾過を要求される立体マスクの例を示す。図19(a)は立体マスクの本体である。耳掛け紐を取付ける前にこのマスク本体を製造しておく。立体マスクを顔に密着させる場合に図19(b)に示すように耳掛け紐をマスク本体に角度θを設けて取付ける必要が生じる場合がある。図19(c)は耳掛け紐を取付けたマスクを中心線で二つ折りにして接着線に沿って溶着する。この際不要部分が生じる。
図20(a)は上述の不要部分を切断線に沿って切り取った完成立体マスクを示す。図20(b)はこの立体マスクを展開した状態を示す。
【0047】
本実施例2における溶着装置230に角度θを設ける場合は、この溶着装置230に配設されたカッタ、溶着器等の部材及び補助板等の他の部材もこの角度に適合させる。これらの部材は実施例1のものがそのまま適用される。
更に、耳掛け紐供給装置20も実施例1に使用したものがそのまま適用される。
【符号の説明】
【0048】
1 マスク耳掛け紐取付け装置
11 マスク本体
13 完成マスク
14 コンベア
14a コンベア仕切り板
20 耳掛け紐供給装置
21 サーボモータ
22 耳掛け紐
22a 耳掛け紐巻取りドラム
22b 耳掛け紐送りガイド
23 固定ローラ
24 フリーローラ
25 ソレノイドアクチュエータ
26a 上部センサ
26b 下部センサ
27 耳掛け紐把持体
28 耳掛け紐把持体ストッパ
30 溶着装置
31 カッタ
32a 溶着器
32b 溶着器
32c 溶着箇所
32e 溶着器
32d 溶着器
33 エアノズル
33a 電磁弁
34 耳掛け紐導入管
35 耳掛け紐案内板
35a 耳掛け紐案内板側空隙
36 補助板
36a 補助板側空隙
37 連結具
38 耳掛け紐固定器
38a エアアクチュエータ
39 耳掛け紐案内溝
39a 耳掛け紐検出器
41 押圧ロッド
42 溶着器取付け架台
43a 後退スプリング
44a 後退スプリング
55 他の本願発明に係る耳掛け紐案内板
59 他の本願発明に係る耳掛け紐案内溝
60 縁取り
62 長軸
63 短軸
230 溶着装置
235 耳掛け紐案内板
261 中心
262 長軸
θ 屈曲角度



















【特許請求の範囲】
【請求項1】
耳掛け紐供給装置と、コンベアで移送されてくるマスク本体に耳掛け紐を溶着するための溶着装置と、を備えるマスクの耳掛け紐取付け装置であって、
上記溶着装置は、底面に平面形状がU字形状の溝が設けられた耳掛け紐案内板と、該耳掛け紐案内板の下部に設けられ、且つ、連結具により上下動自在に連結された該耳掛け紐案内板の上記溝に蓋をしてU字管を構成する補助板と、を備え、
上記耳掛け紐は上記耳掛け紐案内板に設けられた耳掛け紐導入管を介して上記耳掛け紐案内板が備えるエアノズルに導入され、
上記耳掛け紐は空気流により上記耳掛け紐案内板と上記補助板で構成されるU字管に沿って上記U字管の端部の溶着箇所に導かれ、
上記溶着装置の備える溶着器は押圧ロッドと後退スプリングを備えた上下動自在の溶着器取付け架台であって、且つ、上記U字形状の溝の耳掛け紐入り口側端部及び他の端部に配設され、
上記溶着装置の備える耳掛け紐切断用のカッタは上記溶着器取付け架台であって、且つ、上記U字形状の溝の耳掛け紐入り口側の端部に配設され、
上記溶着器は上記押圧ロッドで押圧された上記溶着器取付け架台により上記マスク本体と上記耳掛け紐とを押圧して熱溶着するとともに、上記カッタは耳掛け紐を切断することを特徴とするマスクの耳掛け紐取付け装置。
【請求項2】
上記溶着装置は上記耳掛け紐案内板の幅方向の中央を通る長軸の中心において平面視で、くの字形状に折れ曲がって形成され、折れ曲がった長軸のなす角度は90度から180度未満である請求項1記載のマスクの耳掛け紐取付け装置。
【請求項3】
上記耳掛け紐供給装置は、耳掛け紐供給ドラムを回転して所定量の耳掛け紐を供給するためのサーボモータと耳掛け紐把持体を移動させる耳掛け紐把持体移動装置とを備え、
上記耳掛け紐供給ドラムと上記耳掛け紐把持体の間に耳掛け紐送りガイド、固定ローラ及び耳掛け紐送りガイドと固定ローラの間にフリーローラを備え、
該フリーローラは耳掛け紐に懸架され、耳掛け紐に懸架された該フリーローラは上下二個のセンサにより検出され、上記二個のセンサの間に位置するように上記サーボモータにより上記耳掛け紐を供給して制御される請求項1又は請求項2に記載のマスクの耳掛け紐取付け装置。
【請求項4】
上記耳掛け紐把持体移動装置がソレノイドアクチュエータである請求項3に記載のマスクの耳掛け紐取付け装置。
【請求項5】
上記耳掛け紐案内板に設けられたU字形状の溝の末端に更に波形状の溝を備え、
上記溶着装置の備える溶着器は押圧ロッドと後退スプリングを備えた上下動自在の溶着器取付け架台であって、且つ、上記U字形状の溝の耳掛け紐入り口側の端部、上記U字形状の溝の他の端部、上記波形状の溝の耳掛け紐入り口側の端部及び上記波形状の溝の他の端部に配設され、
上記溶着装置の備える耳掛け紐切断用のカッタは上記溶着器取付け架台であって、且つ、上記U字形状の溝の耳掛け紐入り口側の端部に配設された請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のマスクの耳掛け紐取付け装置。












































【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2011−229895(P2011−229895A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−148886(P2010−148886)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(510029461)
【Fターム(参考)】