説明

マスク本体に平行な線の溶着パターンを有するフィルタ式顔面装着呼吸マスク

【課題】使用中のマスク本体の型崩れを防ぐ助けとなる、新規のフィルタ式顔面装着呼吸マスク構成体を提供する。
【解決手段】ハーネスと、このハーネスに接合するマスク本体と、を有する呼吸マスク。マスク本体は、不織繊維材料の複数の層を含み得る濾過構造体16を含む。不織繊維材料の層は、厚さAを有し、Aの0.5〜6倍の間隔で少なくとも2つの平行な溶着線34’、34”によって一体となって溶着される。平行な溶着線を使用するマスク本体は、同等の幅の単一の溶着線を使用する類似の構造体よりも、型崩れに対してより良好な抵抗性を示し得ると共に、より速い速度で製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2009年10月23日に出願された米国仮特許出願第61/254,314号の利益を主張する。
【0002】
本発明は、マスク本体上に配置された溶着パターンを有するフィルタ式顔面装着呼吸マスクに関し、その溶着パターンは、2つ以上の近接した間隔の平行な溶着線を含む。
【背景技術】
【0003】
呼吸マスクは一般に、(1)不純物又は汚染物質が着用者の呼吸器系に入るのを防ぐこと、並びに(2)他の人又は他の物が、着用者によって吐き出された病原体及び他の汚染物質にさらされることから守ること、の2つの一般的目的の少なくとも1つのために、人の呼吸経路を覆って着用されるものである。第1の状況では、呼吸マスクは、空気が着用者に有害な粒子を含有する環境、例えば自動車車体修理工場において着用される。第2の状況では、呼吸マスクは、他の人又は他の物に対する汚染の危険性がある環境、例えば手術室又はクリーンルームにおいて着用される。
【0004】
これらの目的のいずれか(又は両方)を満たすための様々な呼吸マスクが設計されてきた。これら呼吸マスクの一部は、マスク本体自体がフィルタ機構として機能するため、「フィルタ式顔面装着」として分類されてきた。取り付け可能なフィルタカートリッジ(例、米国再特許第39,493号参照(Yuschak et al.))又はインサート成型されるフィルタ要素(例、米国特許第4,790,306号参照(Braun))と共にゴム又はエラストマーのマスク本体を使用する呼吸マスクとは異なり、フィルタ式顔面装着呼吸マスクは、フィルタカートリッジの据え付け又は交換の必要がないように、濾材がマスク本体全体の大半を覆うべく設計されている。フィルタ式顔面装着呼吸マスクは、一般に、2種類の構造、すなわち成型呼吸マスク及び平坦折り畳み式呼吸マスクのうちの一方の構成を取る。
【0005】
成型フィルタ式顔面装着呼吸マスクは、マスク本体にカップ状の構造を与えるために、熱接着された繊維の不織ウェブ又は透かし編目のプラスチックメッシュを通常含んでいる。成型呼吸マスクは、使用中及び収納時の双方で同一の形状を維持する傾向がある。成型フィルタ式顔面装着呼吸マスクを開示している特許の例には、米国特許第7,131,442号(Kronzer et al.)、同第6,923,182号、同第6,041,782号(Angadjivand et al.)、同第4,850,347号(Skov)、同第4,807,619号(Dyrud et al.)、同第4,536,440号(Berg)、及び意匠特許第285,374号(Huber et al.)が挙げられる。平坦折り畳み式呼吸マスクは、その名が示すように、輸送及び収納のために平坦に折り畳むことができる。平坦折り畳み式呼吸マスクの例は、米国特許第6,568,392号及び同第6,484,722号(Bostock et al.)並びに同第6,394,090号(Chen)に示されている。
【0006】
使用中、フィルタ式顔面装着呼吸マスクは、目的とするカップ状の構造を維持しなければならない。何度も着用され、着用者の呼気からの多量の水分にさらされた後では、人の顔面上に着用されている間にマスク本体を他の物にぶつけてしまうことと関連して、既知のマスクは、型崩れ又はシェルに凹みが付き易くなることがある。型崩れしたマスクは、着用者に対し、特に凹みが鼻又は顔面に接触した場合に、不快感を与える恐れがある。着用者は、マスクを顔面から外し、マスク内側から凹みを押すことによって、凹みを取り除くことができる。使用中のマスクの型崩れを防ぐために、マスク本体の構造に追加的な層を加え、構造的一体性を向上させてきた。例えば、米国特許第6,923,182号(Angadjivand et al.)は、フィルタ層と第1及び第2賦形層との間に、第1及び第2接着層を使用して、耐破砕性成型フィルタ式フェースマスクを提供している。平坦折り畳み式呼吸マスクの構造的一体性を保持するために、米国特許第6,394,090号(Chen)は、第1及び第2境界線をマスク本体上に提供して、使用中の型崩れを防ぐ助けとしている。米国特許出願第12/562,239号(Spoo et al.)は、マスク本体の4つの4分円部位上に、4つの閉鎖型溶着パターンを使用して、型崩れ抵抗性の構造体を達成している。マスク本体の構造的一体性を強化するために溶着線を使用する既知のフィルタ式顔面装着呼吸マスクでは、使用される溶着線は、その適用時において「単一」であり、すなわち、互いに連携して作用する近接した間隔の平行な線の対又は集団は存在しない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、使用中のマスク本体の型崩れを防ぐ助けとなる、新規のフィルタ式顔面装着呼吸マスク構成体を提供する。本発明の呼吸マスクは、マスクハーネスと、マスク本体と、を含み、このマスク本体は、全体の厚さ「A」を有する濾過構造体を含む。この濾過構造体はまた、Aの0.5〜6倍の間隔で配置される2つ以上の平行な溶着線を有する。
【0008】
本発明は、長期の使用又は乱雑な取り扱いによって引き起こされるマスク本体の変形を最小限に抑える耐破砕特性を備えるフィルタ式顔面装着呼吸マスクを提供することを目的とする。近接した間隔の平行な溶着線の使用は、粒子負荷及び水分の蓄積によって呼吸マスクが構造的一体性を喪失する可能性を低くする梁効果を生み出し得る。使用中に型崩れしにくいフィルタ式顔面装着呼吸マスクは、着用者の快適性及び利便性を向上させる効果を提示する。更に、型崩れ抵抗性を提供するための追加層又はより重い層の必要性が少なくなる。マスク本体における媒体の使用が少なくなることは、結果的に、呼吸抵抗の減少及び生産コストの低減をもたらし得る。本発明者らはまた、単一の溶着線と同じ幅を全体として有する2つの平行な溶着線を使用する場合に、より速い溶着速度が達成され得ることを見出した。2つの平行な線を使用すると、溶着される表面積がより小さくなるため、不織繊維材料を結合させるために必要な溶着エネルギーが小さくなり、したがって層間剥離のリスクが低下して、それによりライン速度を上げることができる。更に、近接した間隔の平行な溶着線を使用することにより、「溶着バリ」もまた最小限に抑えられる傾向がある。「溶着バリ」とは、事前には溶融状態であったが、溶着線の縁部又は端部に沿って凝固してしまう余剰の材料である。溶着バリは、材料の凝集したビード及び穴をマスク本体内に生じさせる場合がある。幅の広い単一の溶着を作製する場合は、より多くの材料が融解され、それはロータリー式溶着プロセスにおいて取り除かなければならない。この「溶融状態の溶着前面」は、収束するエンボス加工パターン内に捕捉されて、「溶着バリ」を溶着パターンの後縁上に堆積させる場合がある。溶着速度を上げることが可能なため、また溶着バリの発生が少なくなるため、近接した間隔の平行な溶着線を有する呼吸マスクを製造する場合、製造コストを更に低減することができる。
【0009】
(用語解説)
以下に詳述された用語は、定義された意味を有することになる。
【0010】
「二分する」は、ほぼ等しい2つの部分に分けることを意味する。
【0011】
「含む(又は含んでいる)」は、特許専門用語において標準であるその定義を意味し、「包含する」、「有する」、又は「含有する」とほぼ同義である制限のない用語である。「備える」、「含む」、「有する」及び「含有する」、並びにこれらの変形は、一般的に使用される制約のない用語であるが、本発明は、「本質的に〜からなる」などのより狭義の用語を使用して適切に記載することもでき、これは、本発明の呼吸マスクがその意図される機能を果たす際の性能に対して悪影響を及ぼす物体又は要素のみを除外するという点で、制約のない用語に準ずる用語である。
【0012】
「清浄な空気」は、汚染物質を取り除くために濾過された、ある量の大気周囲空気を意味する。
【0013】
「汚染物質」は、粒子(粉塵、ミスト及びフュームを含む)並びに/又は一般には粒子とみなされない場合もあるが(例えば、有機蒸気等)、空気中に浮遊していることがある他の物質を意味する。
【0014】
「横断寸法」は、呼吸マスクを正面から見たときに、呼吸マスクの側方から側方まで横方向に延びる寸法を意味する。
【0015】
「カップ状の構造」は、人の鼻及び口を適切に覆うことが可能な任意の容器型の形状を意味する。
【0016】
「外部気体空間」は、吐き出された気体が、マスク本体及び/又は呼気弁を通過し、それらを越えた後に入る、周囲大気中の気体空間を意味する。
【0017】
「フィルタ式顔面装着」は、マスク本体自体が、マスク本体を通過する空気を濾過するように構成され、マスク本体にこの目的を達成するための別個の識別可能なフィルタカートリッジ若しくはインサート成型されたフィルタ要素が取り付けられていない、又は成型されていないことを意味する。
【0018】
「フィルタ」又は「フィルタ層」は、通気性材料の層を意味し、この層は、通過する空気流から汚染物質(粒子など)を除去するという主目的に適合している。
【0019】
「濾過構造体」は、不織繊維フィルタ層及び任意の他の不織繊維層を含む構成体を意味する。
【0020】
「第1側部」は、マスク本体を横断寸法に対して垂直に二分する平面の一方の側に位置するマスク本体の領域を意味する。
【0021】
「ハーネス」は、マスク本体を着用者の顔面上で支持する助けとなる構造体又は部品の組み合わせを意味する。
【0022】
「一体的(integral)」は、同時に一緒に製造されていること、すなわち一部分として一緒に作製され、後に一緒に結合される別個に製造された2つの部分ではないことを意味する。
【0023】
「内部気体空間」は、マスク本体と人の顔面との間の空間を意味する。
【0024】
「横方向に」は、マスク本体が折り畳まれた状態のときに、マスク本体を横断寸法に対して垂直に二分する平面から離れて延びることを意味する。
【0025】
「境界線」は、折り目、継ぎ目、溶着線、接着線、ステッチ線、ヒンジ線、及び/又はこれらの任意の組み合わせを意味する。
【0026】
「長手方向軸線」は、マスク本体を横断寸法に対して垂直に二分する線を意味する。
【0027】
「マスク本体」は、人の鼻及び口を覆って適合するよう設計され、かつ外部気体空間から離てられた内部気体空間を画定するのを助ける通気性構造体を意味する。
【0028】
「ノーズクリップ」は、少なくとも着用者の鼻の周りの密封性を高めるために、マスク本体上で使用するように適応した(ノーズフォーム以外の)機械的装置を意味する。
【0029】
「平行」は、概して等間隔に離れていることを意味する。
【0030】
「周辺部」は、マスク本体の外側縁部を意味し、呼吸マスクを着用したときに、この外側縁部は、全体的に着用者の顔に隣接して配置される。
【0031】
「プリーツ」とは、それ自体の上に折り返しできるように設計された、又は折り返されている部分を意味する。
【0032】
「ポリマー」及び「プラスチック」はそれぞれ、1つ以上のポリマーを主に含み、同様に他の成分も含有してよい材料を意味する。
【0033】
「複数」は、2つ以上を意味する。
【0034】
「呼吸マスク」は、呼吸するための清浄な空気を着用者に提供するための、人間が着用する空気濾過装置を意味する。
【0035】
「リブ」は、識別可能な、不織繊維材料の細長い塊を意味する。
【0036】
「第2側部」は、マスク本体を横断寸法に対して垂直に二分する平面の一方の側に位置するマスク本体の領域を意味する(第2側部は第1側部に対向している)。
【0037】
「密着適合」又は「密着して適合する」とは、本質的に気密な(又は実質的に漏れのない)適合が(マスク本体と着用者の顔面との間に)もたらされることを意味する。
【0038】
「タブ」は、別の構成要素を取り付けるための十分な表面積を呈する部位を意味する。
【0039】
「横方向に延びる」とは、ほぼ横断寸法に延びることを意味する。
【0040】
「溶着」又は「溶着される」は、少なくとも熱が加わることにより、一体となって接合することを意味する。
【0041】
「溶着線」は、少なくとも2センチメ−トルの距離にわたって連続している溶着を意味する。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明によるフィルタ式顔面装着呼吸マスク10の斜視図。
【図2】図1に示すフィルタ式顔面装着呼吸マスク10の正面図。
【図3】図1のフィルタ式顔面装着呼吸マスク10の折り畳まれた状態における平面図。
【図4】図2の線4−4に沿って取られた、溶着パターン32bにおける平行な溶着線34’及び34”の拡大断面図。
【図5】図3の線5−5に沿って取られた、呼吸マスクマスク本体12の断面図。
【図6】図5の線6−6に沿って取られた、濾過構造体16の断面図。
【図7】非溶着、並びにロータリー式溶着機を使用して実施した単一線溶着パターン及び二重線溶着パターンに関する、Taber剛性測定値の棒グラフ。
【図8】非溶着、並びにプランジ式溶着機を使用して実施した単一線溶着パターン及び二重線溶着パターンに関する、Taber剛性測定値の棒グラフ。
【発明を実施するための形態】
【0043】
本発明の実施において、マスク本体内に溶着される少なくとも2つの近接した間隔の平行な線を有するフィルタ式顔面装着呼吸マスクが提供される。これらの溶着線は、型崩れ抵抗性の向上、美観の向上、及び呼吸マスク製造の高速化に役立つことができる。
【0044】
図1は、着用者の顔面上で開かれた状態の、フィルタ式顔面装着呼吸マスク10の一例を示す。この呼吸マスク10を使用して、呼吸するための清浄な空気を着用者に提供することができる。図示のように、フィルタ式顔面装着呼吸マスク10は、マスク本体12及びハーネス14を含み、マスク本体12は、着用者の呼吸器系に入る前に吸気が通過しなければならない濾過構造体16を有する。濾過構造体16は、着用者が清浄な空気を吸い込むことができるように、周囲環境から汚染物質を取り除く。マスク本体12は、頂部18及び底部20を含む。頂部18及び底部20は、境界線22により隔てられている。この特定の実施形態では、境界線22はマスク本体の中央部を横断して延びる開放プリーツである。マスク本体12は、上部セグメント24a及び下部セグメント24bを含む周辺部も含む。ハーネス14は、タブ28aにステープル留めされたストラップ26を有する。ノーズクリップ30は、マスク本体12上の頂部18上の、その外側表面上又はカバーウェブの下に配置されてよい。
【0045】
図2は、呼吸マスク10が、境界線22の上側に配置されて境界線22を超えることのない第1溶着パターン32a及び第2溶着パターン32bを有するということを示す。第1溶着パターン32a及び第2溶着パターン32bは、長手方向軸線35の各側上に位置決めされる。第3溶着パターン32c及び第4溶着パターン32dは、境界線22の下側に配置され、境界線22と交差することはない。溶着パターン32c及び溶着パターン32dもまた、長手方向軸線35の対向する側上に位置決めされる。第1、第2、第3、及び第4溶着パターン、32a、32b、32c、32dのそれぞれは、二次元閉鎖パターンを画定する溶着線33を含む。各溶着パターンは、例えば、丸められた隅部と、内部に位置決めされた一対の三角形36及び38とを有するより大きな三角形を含む、トラス型形状を呈してもよい。三角形36、38のそれぞれは、より大きな三角形32a〜32dの内側で入れ子状態となっており、三角形36、38のそれぞれの2つの辺はまた、三角形32a〜32dのそれぞれの部分的な辺を形成する。丸められた隅部は、典型的には約0.5ミリメートル(mm)の最小半径を有する。図2に示すように、溶着パターン32a〜32dは、長手方向軸線35の両側で、又は境界線22及び長手方向軸線35の両側で対称性が存在するように、マスク本体12上に提供される。本発明は、三角形の内側の三角形パターンであるように本図面において例示されているが、二次元閉鎖パターンは、方形、台形、菱形などの四辺形を含む、他のトラス型形態を取ってマスク本体内に溶着されてもよい。二次元閉鎖溶着パターンのそれぞれは、約5〜30平方センチメートル(cm)、より一般には約10〜16cmの表面積を占めてよい。溶着パターンはまた、直線、曲線、及び様々な同心的形状のような他の形態を取ることもできる。これらの線は、概して横断寸法に延びるように構成されてよく、例えば米国特許第6,394,090号(Chen)を参照されたい。
【0046】
図3は、水平方向に折り畳まれた状態の、マスク本体12の平面図を示し、この状態は輸送及び顔面から外した収納に関して特に有益である。マスク本体12は、水平な境界線22に沿って折り畳むことができる。呼吸マスクは、第1タブ28a及び第2タブ28bに取り付けられる1つ以上のストラップ26を含むことができ、表示39がタブ28a、28bのそれぞれの上に配置されて、着脱及び調節のために着用者がマスク本体を把持することができる場所の指標を提供し得る。各フランジ上に提供され得る表示39は、米国特許出願第12/562,273号、表題「Filtering Face Piece
Respirator Having Grasping Feature Indicator」において更に説明されている。
【0047】
図4は、溶着パターン32bにおける二重溶着線33の断面図を示す。二重溶着線33は、溶着パターン32a、32b、32c、及び32d内で、鉄道線路と同様に、互いに平行に延びている。個々の溶着線34’、34”が、濾過構造体内の繊維を圧縮して接合することにより、それら繊維はほとんど凝固して無孔の中実型の結合となる。
【0048】
濾過構造体16は、厚さAを有する。図6を参照して以下で更に詳細に論じるように、濾過構造体16は、層の少なくとも1つがフィルタ式層の層である不織繊維材料の複数の層を含み得る。これらの層は、約(0.5〜6)×Aの距離Eで離間する2つの平行な溶着線34’及び34”により、一体となって溶着される。より好ましくは、平行な溶着線は、(0.6〜3)×Aの離間し、更により好ましくは、(0.7〜1.5)×Aで離間する。2つの平行線34’、34”の間の領域Eにおける不織繊維材料の層は、厚さBを有し、これは平行な溶着線34’、34”の外側の不織布材の複数の層の名目上非圧縮厚さAよりも小さい(溶着線の効果から離れる方向で、すなわち、溶着線34’及び34”に隣接する圧縮された区域から離れる方向で測定して)が、溶着線34’、34”のそれぞれの濾過構造体の厚さCよりも大きい。2つの平行線34’、34”の間の領域Eにおける濾過構造体の厚さBの、平行な溶着線34’、34”の外側の濾過構造体の厚さAに対する比率は、0.3〜0.9である。より好ましくは、この比率は0.4〜0.8であり、更により好ましくは、0.5〜0.7である。典型的には、間隔をあけた平行な溶着線は、少なくとも3cmの長さであり、より典型的には、4cmを超える長さである。
【0049】
平行な溶着線34’、34”は、マスク本体の構造的一体性の向上が望ましい区域において、実質的に連続していることが好ましい。溶着線は、濾過構造体の様々な層が融合して、溶着線内でそれらの層が剛性化するように作り出され得る。本発明は、2つの平行な溶着線を使用して説明されてきたが、3つ以上の平行な溶着線を離間した関係で使用して、2つ以上の実質的に連続する領域又はリブ41を溶着線の間に作り出してもよい。溶着線のそれぞれの間の領域は、呼吸マスクの型崩れ抵抗性を増大させる助けとなるように高密度化されることが好ましい。第1溶着線34’と第2溶着線34”との間に配置されるリブ41における高密度化が進むと、マスク本体12の梁剛性及びそれによる型崩れ抵抗性が更に改善され得る。溶着線のそれぞれの間の領域は、上述のように、溶着線の間の不織布材の複数の層の厚さが、溶着線の外側のそれらの層の厚さよりも薄くなるように高密度化され得る。同様の幅の単一の溶着線ではなく、平行な溶着線を使用すると、超音波溶着をより高速で実施することができる。更に、複数の溶着線を使用した場合、全体幅が同一の単一溶着線と比較して、超音波溶着「バリ」を減少させることができる。濾過構造体16を構成する不織繊維媒体の層又は複数の層の厚さAは、典型的には約0.3mm〜5mm、より典型的には約0.5mm〜2.0mm、更により典型的には約0.75mm〜1.0mmの厚さを有する。平行な第1溶着線34’と第2溶着線34”との間の領域Eの厚さBは、複数の層の厚さAよりも典型的には約10〜70パーセント小さく、より典型的には約20〜40パーセント小さい。第1溶着線34’と第2溶着線34”との間の領域の厚さBは、典型的には約0.18mm〜2.7mm、より典型的には約0.32mm〜1.8mm、更により典型的には約0.45mm〜0.9mである。個々の溶着線34’又は34”はそれぞれ、幅約0.5〜2mm、より一般的には幅約0.75〜1.5mmであってよい幅寸法Fを有する。平行な溶着線の全体幅Dは、典型的には約1.5mm〜7.0mm、より典型的には約2.0mm〜5mm、更により典型的には約2.5mm〜4.0mである。以下の実施例に示すように、実験が行なわれ、平行な溶着線を使用した場合は、全体幅が同様の単一で平坦な溶着線に対し、溶着の梁強度が改善されることが示される。
【0050】
溶着線は、典型的には「プランジ式」溶着プロセス又は「ロータリー式」溶着プロセスのいずれかで、超音波溶着を使用して作り出される。一般に、超音波溶着機上の振動ホーンにより、溶着線パターンを含むアンビルに抗する領域における、濾過構造体16の圧縮、融解、及びその後の凝固が引き起こされる。このプロセスは、ホーンとアンビルとの間の接触領域において、厚さAを有する濾過構造体16を取得し、厚さCへと一体となって結合させることができる。プランジ式溶着では、ホーン及びアンビルは典型的には、濾過構造体16をそれらの間に置いて、上下運動で接触するが、一方、ロータリー式溶着では、濾過構造体16はホーンとアンビルとの間にロータリー方式で連続的に送り込まれる。適切な工具で熱及び圧力を使用するような他の手段によっても、濾過構造体16を溶着線へと結合させることが可能である。
【0051】
図5は、マスク本体12に関するプリーツ形状の一例を図示する。図示のように、マスク本体12は、既に図1〜図3を参照して説明したプリーツ22を含む。マスク本体12の上部又はパネル18はまた、プリーツ40及び42を含む。マスク本体12の下部又はパネル20は、プリーツ44、46、48、及び50を含む。マスク本体12はまた、マスク本体の周辺部に沿って固定される周辺ウェブ54を含む。周辺ウェブ54は、周辺部24a、24bでマスク本体の上に折り重ねてもよい。周辺ウェブ54はまた、24a及び24bの縁部の周りに折り畳まれて固定される内側カバーウェブ58の延長部分であってもよい。ノーズクリップ30は、マスク本体の上部18上の、濾過構造体16と周辺ウェブ54との間で、周辺部24aに隣接した中央に配置され得る。ノーズクリップ30は、着用者の鼻の輪郭に適合するように着用者の手作業で適応させることが可能な、しなやかで柔軟な金属又はプラスチックで作製することができる。ノーズクリップは、アルミニウムから作製され、図3に示すように直線状であってよいが、頂部から見た際に、米国特許第5,558,089号及び意匠特許第412,573号(Castiglione)に示されるm形ノーズクリップのような他の形状を取ることもできる。
【0052】
図6は、濾過構造体16が、内側カバーウェブ58、外側カバーウェブ60、及びフィルタ層62のような、不織繊維材料の1つ以上の層を含み得ることを図示している。内側カバーウェブ58及び外側カバーウェブ60は、フィルタ層62を保護し、フィルタ層62における繊維が緩んでマスク内側に入り込むのを防ぐために提供され得る。呼吸マスクの使用中、空気はマスク内側に入り込む前に層60、62、及び58を順次通過する。マスクの内部気体空間内に配置された空気は、その後、着用者により吸引されてよい。着用者が息を吐くと、空気は逆方向に層58、62、及び60を順次通過する。あるいは、吐き出された空気が濾過構造体16を通過せずに、内部気体空間から急速に排除され外部気体空間に入ることを可能にする呼気弁(図示せず)をマスク本体に備えてもよい。典型的には、カバーウェブ58及び60は、濾過構造体の、特に着用者の顔面と接触する側で、心地よい感覚をもたらす不織布材を選択肢として作製されている。濾過構造体と共に使用できる様々なフィルタ層とカバーウェブの構成体を、より詳細に以下で説明する。着用者への適合及び快適性を向上させるために、エラストマーのフェースシール材を、濾過構造体16の周辺部に固定することができる。このようなフェースシール材は、呼吸マスクを着用したときに、内側に向かって放射状に延在し、着用者の顔に接触することができる。フェースシール材の例は、米国特許第6,568,392号(Bostock et al.)、同第5,617,849号(Springett et al.)、及び同第4,600,002号(Maryyanek et al.)、並びにカナダ特許第1,296,487号(Yard)に記述されている。濾過構造体はまた、少なくとも1つ以上の層58、60、又は62に対して、典型的には外側カバーウェブ60の外側表面に対して、構造的な網又はメッシュを並置してもよい。そのようなメッシュの使用は、2008年12月18日出願の、米国特許出願第12/338,091号、表題「Expandable Face Mask with Reinforcing Netting」に記載されている。
【0053】
本発明に関して使用されるマスク本体は、様々な異なる形状及び構成を取ることが可能である。濾過構造体は、フィルタ層及び2つのカバーウェブとを含む複数の層を備えて図示されているが、濾過構造体は単に、フィルタ層の組み合わせ、又はフィルタ層とカバーウェブとの組み合わせを含んでもよい。例えば、プレフィルタを上流側に配置して、より微細かつ選択的なフィルタ層を下流側に配置することができる。加えて、活性炭などの吸着剤材料を、濾過構造体を構成している繊維及び/又は様々な層の間に配置することができる。更に、吸着層と共に別の粒子フィルタ層を使用して、粒子と蒸気の両方に対する濾過を提供することができる。濾過構造体は、カップ状の構造を提供する補助となる1つ以上の補強層を含んでもよい。濾過構造体はまた、その構造的一体性に貢献する1つ以上の水平及び/又は垂直の境界線を有する場合もある。しかしながら、本発明による第1及び第2フランジの使用により、そうした補強層及び境界線への要求は、不要になり得る。
【0054】
本発明のマスク本体に使用される濾過構造体は、粒子捕捉タイプ又はガス及び蒸気タイプのフィルタであり得る。濾過構造体は更に、フィルタ層の一方の側から他方の側に液体が移動するのを防ぐバリヤー層であり得、これにより、例えば、液体エアゾール又は液体(例えば、血液)の飛沫がフィルタ層に浸透するのを防止できる。用途に応じて、本発明の濾過構造体の構築には、類似の又は異なる濾材の複数の層を使用することができる。本発明の層状マスク本体に有効に使用できるフィルタは、マスク着用者の呼吸労力を最小限に抑えるために、一般に圧力低下が小さい(例えば、面速度毎秒13.8センチメートルで約195〜295パスカル未満)。フィルタ層は更に、予想される使用条件においてそれらの構造を概ね維持するよう、可撓性及び十分な剪断強さを有する。粒子捕捉フィルタの例としては、微細な無機繊維(グラスファイバーなど)又はポリマー合成繊維の1つ以上のウェブが含まれる。合成繊維ウェブには、メルトブローン法などのプロセスによって製造されるエレクトレット帯電ポリマーマイクロファイバーが含まれる。帯電したポリプロピレンから形成されたポリオレフィンマイクロファイバーは、粒子捕捉用途に特に有用である。別のフィルタ層は、呼吸空気中の有害な又は悪臭のある気体を除去するための吸着剤成分を含んでもよい。吸着剤は、接着剤、結合剤、又は線維構造によりフィルタ層内に拘束される粉末又は顆粒を含んでもよい(米国特許第6,334,671号(Springett et al.)、及び同第3,971,373号(Braun)を参照のこと)。吸着剤層は、繊維性フォーム又は網状発泡体などの基材をコーティングすることにより形成されて、薄く粘着性の層を形成することができる。吸着剤材料としては、活性炭(化学処理済み、又は未処理)、多孔質アルミナ−シリカ触媒基材、及びアルミナ粒子を挙げることができる。様々な構成に適合可能な吸着性濾過構造体の例が、米国特許第6,391,429号(Senkus et al.)に記述されている。
【0055】
フィルタ層は、典型的には、所望の濾過効果を達成するように選択される。フィルタ層は、通常、粒子及び/又はその他の汚染物質を、フィルタ層を通過する気体流から高い割合で除去する。繊維性フィルタ層については、選択される繊維は濾過する物質の種類によって決定され、通常は、成型作業中に一体となって結合してしまわないものが選ばれる。示されているように、フィルタ層は様々な形状で用いることができ、典型的には厚さが約0.2ミリメートル(mm)〜1センチメートル(cm)、より典型的には約0.3mm〜0.5cmであり、ほぼ平面的なウェブであってよく、又は伸展した表面積を提供できるよう波形状であってもよい(例えば米国特許第5,804,295号及び同第5,656,368号(Braun et al.)を参照のこと)。フィルタ層には更に、接着剤又は他の任意の方法によって接合された複数のフィルタ層も含まれ得る。基本的に、フィルタ層の形成用として知られている(又は後に開発される)好適な任意の材料を、フィルタ材料として使用することができる。Wente,Van A.,Superfine Thermoplastic Fibers,48 Indus.Engn.Chem.、1342以下(1956)で教示されているような、メルトブロー繊維のウェブ、特に常時帯電(エレクトレット)状態にあるものは特に有用である(例えば、米国特許第4,215,682号(Kubik et al.)を参照)。これらのメルトブロー繊維は、約20マイクロメートル(μm)未満、典型的には約1〜12μmの直径の有効繊維直径を有するマイクロファイバー(「ブローンマイクロファイバーはBMFと略)とすることができる。有効繊維直径は、Davies,C.N.,The Separation Of Airborne Dust Particles,Institution Of Mechanical Engineers,London,Proceedings 1B,1952に従って測定され得る。特に好ましいのは、ポリプロピレン、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)及びこれらの組み合わせから形成される繊維を含むBMFウェブである。米国再特許第31,285号(van Turnhout)に教示されている帯電小繊維化フィルム繊維も適している場合があり、またロジン−ウール繊維ウェブ、及びグラスファイバー若しくは溶液ブローンのウェブ、又は静電スプレー繊維、特にマイクロフィルム形態のものも適している場合がある。電荷は、米国特許第6,824,718号(Eitzman et al.)、同第6,783,574号(Angadjivand et al.)、同第6,743,464号(Insley et al.)、同第6,454,986号及び同第6,406,657号(Eitzman et al.)、並びに同第6,375,886号及び同第5,496,507号(Angadjivand et al.)に開示されているように、繊維を水と接触させることにより繊維に付与することができる。電荷は、米国特許第4,588,537号(Klasse et al.)に開示されているようなコロナ放電、又は同第4,798,850号(Brown)に開示されているような摩擦帯電によっても繊維に付与することができる。更に、ハイドロ充電プロセスにより製造されたウェブの濾過性能強化のために、添加剤を繊維に含めることができる(米国特許第5,908,598号(Rousseau et al.)を参照)。特に、フッ素原子をフィルタ層の繊維表面に配置して、油性ミスト環境での濾過性能を改善することができる(米国特許第6,398,847(B1)号、同第6,397,458(B1)号、同第6,409,806(B1)号(Jones et al.)を参照)。エレクトレットBMFフィルタ層の典型的な坪量は、1平方メートルあたり約10〜100グラムである。例えば、’507特許(Angadjivand et al.)に記載されている技法によって帯電させた場合、また、Jones et al.の特許に記載されるようにフッ素原子を含む場合、坪量はそれぞれ、約20〜40g/m及び約10〜30g/mとなる。
【0056】
内側のカバーウェブは、着用者の顔に接触するために滑らかな表面を提供するのに用いられることができ、また外側のカバーウェブは、マスク本体における遊離繊維を封入するため、又は審美的理由から用いられることができる。カバーウェブは、典型的には、任意の重大な濾過の利点をフィルタ構造体に提供しないが、フィルタ層の外側(又は上流)に配置されると、前処理フィルタとして作用することができる。適切な快適さを得るため、内側カバーウェブは、好ましくは坪量が比較的低く、比較的細い繊維で形成されている。より具体的には、カバーウェブは約5〜50g/m(典型的には10〜30g/m)の坪量を有するように作り上げられてよく、繊維は3.5デニール未満(典型的には2デニール未満、より典型的には1デニール未満であるが0.1デニールを超える)であってよい。カバーウェブに用いられる繊維は、約5〜24マイクロメートル、典型的には7〜18マイクロメートル、より典型的には8〜12マイクロメートルの平均繊維直径を有することが多い。カバーウェブはある程度の弾性(典型的には破断時に100〜200%であるが、必ずしもそうではなくてよい)を有し、可塑的に変形可能であり得る。
【0057】
カバーウェブに適した材料としては、ブローンマイクロファイバー(BMF)材料、特にポリオレフィンBMF材料、例えばポリプロピレンBMF材料(ポリプロピレンブレンド、及びポリプロピレンとポリエチレンとのブレンドも含む)が挙げられる。カバーウェブ用のBMF材料の製造に適したプロセスは、米国特許第4,013,816号(Sabee et al.)に記載されている。このウェブは、繊維を滑らかな表面、典型的には滑らかな表面のドラム又は回転型コレクタの上に収集して形成してもよい―米国特許第6,492,286号(Berrigan et al.)を参照。スパンボンド繊維も使用することができる。
【0058】
典型的なカバーウェブは、ポリプロピレン、又は50重量%以上のポリプロピレンを含むポリプロピレン/ポリオレフィンブレンドから製造され得る。これらの材料は、着用者に程度の高い柔らかさ及び快適性を提供し、またフィルタ材料がポリプロピレンBMF材料であるとき、層間に接着剤を必要とすることなく、フィルタ材料に固定された状態に保たれることが見出されている。カバーウェブに使用するのに適したポリオレフィン材料としては、例えば、単独ポリプロピレン、2種のポリプロピレンのブレンド、並びにポリプロピレンとポリエチレンとのブレンド、ポリプロピレンとポリ(4−メチル−1−ペンテン)とのブレンド、及び/又はポリプロピレンとポリブチレンとのブレンドを挙げることができる。カバーウェブ用の繊維の一例としては、ポリプロピレン樹脂から作製されたExxon Corporation製のポリプロピレンBMF「Escorene3505G」があり、これは坪量が約25g/m、及び繊維デニールは0.2〜3.1の範囲である(約0.8の繊維100本超で測定の平均)。他の好適な繊維はポリプロピレン/ポリエチレンBMF(樹脂「Escorene 3505G」85パーセントと、エチレン/α−オレフィンコポリマー「Exact 4023」(これもExxon Corporation製)15%を含む混合物から製造される)であり、これは坪量が約25g/mであり、繊維は平均約0.8デニールである。好適なスパンボンド材料としては、Corovin GmbH of Peine,Germany製「Corosoft Plus 20」、「Corosoft Classic 20」及び「Corovin PP−S−14」の商品名で販売されているもの、並びにNakila,FinlandのJ.W.Suominen OYから「370/15」の商品名で入手可能な毛羽立ちポリプロピレン/ビスコース材質を挙げることができる。
【0059】
本発明で使用されるカバーウェブは好ましくは、処理後にウェブ表面からの繊維のはみ出しが非常に少なく、よって滑らかな外側表面を有する。本発明で使用することができるカバーウェブの例は、例えば、米国特許第6,041,782号(Angadjivand)、同第6,123,077号(Bostock et al.)、及び国際公開特許第96/28216(A)号(Bostock et al.)に開示されている。
【0060】
ハーネスに使用されるストラップは、様々な材料、例えば熱硬化性ゴム、熱可塑性エラストマー、編組み又は編込みされた織糸/ゴムの組み合わせ、非弾性の編組み構成要素、及びその他から作製され得る。ストラップは、弾性材料、例えば弾性の編組み材料から形成されてもよい。ストラップは、好ましくはその全長の2倍より大きく拡張され、その弛緩状態に戻り得る。ストラップはまた、その弛緩状態の長さの3倍又は4倍まで延びることが可能であり、かつ張力が取り除かれると、なんら損傷を受けずにその元の状態に戻ることができる。したがって、弾性限度は、ストラップの弛緩状態における長さの2倍、3倍、又は4倍以上であるのが好ましい。典型的には、ストラップは、長さ約20〜30cm、幅3〜10mm、厚さ約0.9〜1.5mmである。ストラップは、連続ストラップとして第1タブから第2タブまで延びてもよく、又はストラップは、更なる締結具又はバックルにより互いに接合され得る複数の部品を有してもよい。例えば、ストラップは、マスク本体を顔面から除去する際に、着用者により迅速に分離され得る締結具により一緒に結合された第一及び第二の部分を有してもよい。本発明に関して使用可能なストラップの一例が、米国特許第6,332,465号(Xue et al.)に示されている。ストラップの1つ以上の部品を相互に接合するために使用し得る締結機構又は留め金機構の例は、例えば以下の米国特許第6,062,221号(Brostrom et al.)、同第5,237,986号(Seppala)、及び欧州特許第1,495,785(A1)号(Chien)に示されている。
【0061】
指摘したように、内部気体空間から呼気を排除し易くするために、マスク本体に呼気弁を取り付けてもよい。呼気弁の使用は、マスク内部からの暖かい湿った呼気を急速に除去することにより、着用者の心地よさを改善し得る。例えば、米国特許第7,188,622号、同第7,028,689号、及び同第7,013,895号(Martin et al.)、同第7,428,903号、同第7,311,104号、同第7,117,868号、同第6,854,463号、同第6,843,248号、及び同第5,325,892(Japuntich et al.)、同第6,883,518号(Mittelstadt et al.)、及び同再特許第37,974号(Bowers)を参照。本質的に、呼気を内部気体空間から外部気体空間へと迅速に運搬するために、好適な圧力低下を提供し、かつマスク本体に適切に固定され得る任意の呼気弁を、本発明に関連して使用してもよい。
【実施例】
【0062】
本発明は、例えば図2の32a、32b、32c、及び32dのような呼吸マスクの部分の剛性を増大させることにより、平坦折り畳み式フィルタ式顔面装着呼吸マスクの型崩れ抵抗性を向上させる。これは、熱を使用して、図1の濾過構造体16の層を圧縮し、一体となって結合させることにより達成される。Taber剛性試験機(Taber Industries,North Tonawanda,New York,USA)を使用して、フィルタ式顔面装着呼吸マスクの構成に使用されることが多い不織布材を含む、様々な材料の剛性を測定することができる。
【0063】
Taber剛性試験機は、試料を特定の量、典型的には15°撓ませるために必要なトルク量を検出することにより、材料のストリップの剛性を測定する。Taber剛性試験機を用いて実施した試験の結果は、Taber剛性単位で記録される。Taber剛性の1単位は、1gm−cmのトルクが試料の一方の端部に加えられたときに、1cmの長さの試料が15°撓むために必要な剛性として定義される。試験機を異なる構成に設定することにより、Taber剛性試験機は、1Taber剛性単位未満から最大10,000Taber剛性単位までの剛性の範囲を測定可能である。
【0064】
ロータリー式超音波熱接着プロセスを利用する製造装置を使用して、図1〜3の10と同様の平坦折り畳み式フィルタ式顔面装着呼吸マスクを作り出した。それぞれ10個の呼吸マスクを、実施例1、比較試料1CA、及び比較試料1CBに作製した。実施例1の呼吸マスクは、2.0mmの非溶着の間隙によって隔てられた幅0.5mmの2つの平行な線から構成される図2の溶着線33を備えて作製された。この二重溶着線パターンの横断面は、平行な溶着線34’及び34”を備える図4に示す外観を有した。比較試料1CAの呼吸マスクは、図2に示す溶着パターン32a、32b、32c及び32dを備えずに作製され、比較試料1CBの試料は、幅3.0mmの単一の線から構成される図2の溶着線33を備えて作製された。
【0065】
実施例1並びに比較試料1CA及び1CBにおいて、図6に示す濾過構造体16は、2つのスパンボンドカバーウェブ58と60との間に挟まれたフィルタ層62から構成されるものとした。フィルタ層は、59グラム毎平方メートル(g/m)の秤量、及び7.5マイクロメートル(μm)の有効繊維直径(EFD)を有するポリプロピレンエレクトレットBMFウェブの単一の層から構成されるものとした。カバーウェブ層の双方とも、Shangdong Kangjie Nonwovens Co.Ltd.(Jinan,China)製の、34g/mの秤量を有する同一のポリプロピレンスパンボンドウェブとした。
【0066】
実施例2並びに比較試料2CA及び2CBのそれぞれ10個の呼吸マスクを、実施例1、並びに比較試料1CA及び1CBを作り出すために使用した同一の製造プロセスによって作製した。実施例2、並びに比較試料2CA及び2CBにおけるフィルタ層62は、実施例1及び対応する比較試料の作製に使用した同一のエレクトレットポリプロピレンBMFの2つの層から構成されるものとした。実施例2、並びに比較試料2CA及び2CBの作製に使用したスパンボンドカバーウェブ58及び60は、実施例1及び対応する比較試料に使用したカバーウェブと同一のものとした。
【0067】
剛性試験のために、呼吸マスクの濾過構造体の試料を、三角形の溶着パターン32a、32b、32c、又は32dの傾斜した側部の1つを含む長さ32mm、幅6mmの材料のストリップに切断することにより収集した。このストリップは、溶着パターンが、ストリップの中央に位置し、ストリップの長辺に平行となるように、各呼吸マスクから切り出された。試料を鋏で切断することによって層間に引き起こされる一切の熱接着を取り除くために、各試料ストリップの層の縁部を分離させた。剛性試験の前に、各タイプの試料ストリップの1つに関して、図4に示す寸法A、B、C、D、E、及びFを、デジタルマイクロメータを使用して測定した。測定値を表1に示す。算出量E÷A、B÷A、及びD÷Aもまた、表1に示す。各試料ストリップを、Model 150E Taber剛性試験機(Taber Industries,North Tonawanda,New York,USA)によりSRアタッチメント及び10単位補償素子を使用して0〜1Taber剛性単位の範囲で評定した。各タイプ、すなわち、実施例1及び2、並びに比較試料1CA、1CB、2CA、及び2CBの10個の試料ストリップに関する剛性試験の結果を平均し、図7に示す。
【0068】
図7に示すTaber剛性試験の結果は、本発明が、実施例1及び2で実行されたように、対応する比較試料と(BMF層の数に基づいて)比べた場合、濾過構造体16の部分の剛性を増大させることを実証している。単一幅広の溶着線を上まわる、こうした二重溶着線の剛性の増大は、図2に示す三角形パターンのような適切なパターンと相まって、本発明の実施例の型崩れ抵抗性を、対応する比較試料よりも向上させると予想される。
【0069】
表1の算出値、E÷A、B÷A、及びD÷Aを検証すると、二重溶着線パターンは、算出値による特徴付けが可能であることが認められる。E÷Aの値は、二重溶着線の間の間隔と非溶着濾過構造体の厚さとの比率に相当する。B÷Aの値は、二重溶着線の間のリブの高さと非溶着濾過構造体の厚さとの比率である。D÷Aの値は、溶着パターンの幅の、非溶着濾過構造体の厚さに対する比率である。

【0070】
【表1】


(−−)は、該当する特徴が試料に欠如しているために測定値が得られないことを示す。

【0071】
超音波プランジ式熱接着もまた、フィルタ式顔面装着呼吸マスク上に溶着線のパターンを形成するために使用することできる。一連の3つの特許実施例である、実施例3、4、及び5を、対応する比較実施例に加えて、超音波プランジ式熱接着により作り出した。これらの実施例及び比較試料において、図2に示す三角形パターン32a、32b、32c、及び32dに対応する溶着線パターンを、Branson 2000Xシリーズプランジ式溶着システム(Danbury,CT,USA)を使用して、濾過構造積層体16のシート上に形成した。実施例1及び2に関して使用したものと同様の二重溶着線パターンを、ポリプロピレンエレクトレットBMFの1つ、2つ又は3つの層をフィルタ層62内に備えた濾過構造積層体のそれぞれ10個のシートの上に形成した。実施例3はポリプロピレンエレクトレットBMFの1つの層を含み、実施例4はBMFの2つの層を含み、実施例5はBMFの3つの層を含むものとした。実施例3、4、及び5で使用したポリプロピレンエレクトレットBMFは、実施例1及び2で説明したBMFと同一のものとした。全ての濾過構造積層体において、フィルタ層62は、実施例1及び2で使用したスパンボンドカバーウェブと同一の2つのスパンボンドカバーウェブ58と60との間に挟むものとした。
【0072】
比較試料3CA、3CB、及び3CCのそれぞれ10個の積層体シートを、実施例3を作り出すために使用した同一の濾過構造積層体で作り出した。比較試料3CAの積層体シート上には、溶着パターンを形成しなかった。実施例3、4、及び5を作り出すために使用した同一の超音波プランジ式溶着システムを使用して、幅0.5mmの単一の溶着線を備えた、図2に示す三角形パターン32a、32b、32c及び32dを、比較試料3CBの積層体シート上に作り出した。同様にして、実施例3CCでは、超音波溶着システムを使用して、幅3mmの単一の溶着線を備えた三角形パターンを、10個の積層体シート上に作り出した。
【0073】
比較試料3CA、3CB、及び3CCを作り出すために使用した試料作製手順をそれぞれ使用して、比較試料4CA、4CB、及び4CCのそれぞれ10個の積層体シートのセットを作り出した。比較試料の2つのセットの間の唯一の相違は、第2のセット4CA、4CB、及び4CCは、ポリプロピレンエレクトレットフィルタウェブの2つの層を含む濾過構造積層体を備えて作製されたことであった。この作製手順を、比較試料5CA、5CB、及び5CCに関して繰り返したが、ただし、使用される濾過構造積層体は、ポリプロピレンエレクトレットフィルタウェブの3つの層を含むものとした。
【0074】
剛性試験のために、濾過構造積層体シートの試料を、三角形の溶着パターン32a、32b、32c、又は32dの傾斜した側部の1つを含む長さ32mm、幅6mmの材料のストリップに切断することにより収集した。このストリップは、溶着パターンが、ストリップの中央に位置し、ストリップの長辺に平行となるように、各積層体シートから切り出された。試料を鋏で切断することによって層間に引き起こされる一切の熱接着を取り除くために、各試料ストリップの層の縁部を分離させた。剛性試験の前に、各タイプの試料ストリップの1つに関して、図4に示す寸法A、B、C、D、E、及びFを、デジタルマイクロメータを使用して測定した。測定値を表2に示す。算出量E÷A、B÷A、及びD÷Aもまた、表2に示す。各試料ストリップを、Model 150E Taber剛性試験機(Taber Industries,North Tonawanda,New York,USA)により試料クランプを反転位置で使用し、10単位補償素子を使用して0〜10 Taber剛性単位の範囲で評定した。各タイプ、すなわち、実施例3、4、及び5、並びに比較試料3CA〜5CC、の10個の試料ストリップに関する剛性試験の結果を平均し、図8に示す。

【0075】
【表2】


(−−)は、該当する特徴が試料に欠如しているために測定値が得られないことを示す。

【0076】
図8に示すTaber剛性試験の結果は、本発明が、実施例3、4、及び5で実行されたように、対応する比較試料と比べた場合、濾過構造体16の部分の剛性を増大させることを実証している。単一幅広の溶着線を上まわる、こうした二重溶着線の剛性の増大は、本発明の実施例の型崩れ抵抗性を、対応する比較試料よりも向上させると予想される。表2の算出値、E÷A、B÷A、及びD÷Aを検証すると、二重溶着線パターンは、算出値による特徴付けが可能であることが認められる。
【0077】
本発明は、その趣旨及び範囲から逸脱することなく、様々な変形及び変更を加えられてもよい。したがって、この発明は、上記に限定されないが、以下の請求項及び全てのその等価物に詳述する制限によって規制される。
【0078】
本発明はまた、本明細書に具体的に開示されないいずれかの要素がない場合でも、好適に実施されることがある。
【0079】
上記の全ての特許及び特許出願は、背景技術部分のものを含め、全体的に参考として本明細書に組み込まれる。そのような組み込まれる文献の開示と上記明細書との間に不一致又は矛盾がある限りにおいては、上記明細書が優先する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルタ式顔面装着呼吸マスクであって、
(a)ハーネスと、
(b)前記ハーネスに接合するマスク本体と、を含み、前記マスク本体は、厚さA及び該Aの0.5〜6倍の間隔で配置される2つの平行な溶着線を有する濾過構造体を含む、フィルタ式顔面装着呼吸マスク。
【請求項2】
前記2つの平行な溶着線が、前記Aの0.6〜3倍の間隔である、請求項1に記載の呼吸マスク。
【請求項3】
前記2つの平行な溶着線が、前記Aの0.7〜1.5倍の間隔である、請求項2に記載の呼吸マスク。
【請求項4】
前記2つの平行線の間の領域における前記濾過構造体が、前記平行な溶着線の外側の前記濾過構造体の厚さよりも小さいが、前記溶着線のそれぞれにおける前記濾過構造体の厚さよりも大きい厚さを有する、請求項1に記載の呼吸マスク。
【請求項5】
前記2つの平行線の間の領域における前記濾過構造体の前記厚さの、前記平行な溶着線の外側の前記濾過構造体の前記厚さに対する比率が、0.3〜0.9である、請求項4に記載の呼吸マスク。
【請求項6】
前記2つの平行線の間の領域における前記濾過構造体の前記厚さの、前記平行な溶着線の外側の前記濾過構造体の前記厚さに対する比率が、0.4〜0.8である、請求項4に記載の呼吸マスク。
【請求項7】
前記2つの平行線の間の前記領域における前記濾過構造体の前記厚さの、前記平行な溶着線の外側の前記濾過構造体の前記厚さに対する比率が、0.5〜0.7である、請求項4に記載の呼吸マスク。
【請求項8】
前記平行な溶着線の外側の前記濾過構造体の前記厚さが、約0.3〜5mmである、請求項4に記載の呼吸マスク。
【請求項9】
前記平行な溶着線の間の前記領域の前記厚さBが、前記厚さAよりも約10〜70%小さい、請求項8に記載の呼吸マスク。
【請求項10】
前記溶着線のそれぞれが、約0.5〜2mmの幅を有する、請求項1に記載の呼吸マスク。
【請求項11】
前記平行な溶着線の全体幅が、1.5〜7mmである、請求項10に記載の呼吸マスク。
【請求項12】
前記平行な溶着線の全体幅が、2〜5mmである、請求項10に記載の呼吸マスク。
【請求項13】
前記間隔をあけた平行線が、少なくとも3cmの長さである、請求項1に記載の呼吸マスク。
【請求項14】
前記間隔をあけた平行線が、少なくとも4cmの長さである、請求項1に記載の呼吸マスク。
【請求項15】
前記2つの平行な溶着線のうちの一方から、前記Aの0.5〜6倍の間隔で配置される第3の平行な溶着線を更に含む、請求項1に記載の呼吸マスク。
【請求項16】
呼吸マスクであって、
(a)ハーネスと、
(b)前記ハーネスに接合するマスク本体と、を含み、前記マスク本体が、不織繊維材料の複数の層を含む濾過構造体を含み、前記不織繊維材料の複数の層が、厚さAを有し、前記Aの0.5〜6倍の間隔で配置される少なくとも2つの平行な溶着線によって一体となって溶着されている、呼吸マスク。
【請求項17】
前記平行な溶着線の間にリブが配置され、前記リブが、前記Aよりも小さい厚さを有する、請求項16に記載の呼吸マスク。
【請求項18】
前記リブが、前記Aより10〜70%厚さが小さく、前記平行線が、前記Aの0.6〜3倍の間隔で配置される、請求項17に記載の呼吸マスク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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