説明

マスク本体に配置されたフランジを有する平坦折り畳み式レスピレータ

ハーネス14、マスク本体12、並びに第1及び第2フランジ30a、30bを有する平坦折り畳み式のフィルタ式フェースピースレスピレータ10。マスク本体12は、収納するために平坦に折り畳むことが可能であり、使用するためにカップ状の構造に開くことができる。マスク本体12は、濾過構造体16を含み、第1及び第2マスク本体側部に配置された第1及び第2フランジ30a、30bを有する。第1及び第2フランジ30a、30bは、マスク本体12から横方向x及び正面方向yの双方に突出している。レスピレータのそれぞれの側部にフランジを備えることが、簡便なマスクの着脱、及び調節、並びに顔面への適合及びマスク本体の開かれた形状又は構造の維持に有益となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスク本体の各側部に備わる第1及び第2フランジを有する平坦折り畳み式レスピレータに関する。
【背景技術】
【0002】
レスピレータは一般に、(1)不純物又は汚染物質が着用者の呼吸器系に入るのを防ぐこと、並びに(2)他の人又は他の物が、着用者によって吐き出された病原体及び他の汚染物質にさらされることから守ること、の2つの一般的目的の少なくとも1つのために、人の呼吸経路を覆って着用されるものである。第1の状況では、レスピレータは、空気が着用者にとって有害な粒子を含んでいる環境、例えば自動車車体修理工場において着用される。第2の状況では、レスピレータは、他の人又は物に対する汚染の危険性がある環境、例えば手術室又はクリーンルームにおいて着用される。
【0003】
これらの目的のいずれか(又は両方)を満たすための様々なレスピレータが設計されてきた。これらレスピレータの一部は、マスク本体自体がフィルタ機構として機能するため、「フィルタ式フェースピース」として分類されてきた。取り付け可能なフィルタカートリッジ(例、米国再特許第39,493号参照(Yuschak et al))又はインサート成型されるフィルタ要素(例、米国特許第4,790,306号参照(Braun))と共にゴム又はエラストマーのマスク本体を使用するレスピレータとは異なり、フィルタ式フェースピースレスピレータは、フィルタカートリッジの据え付け又は交換の必要がないように、濾材がマスク本体全体の大半を覆うべく設計されている。これらフィルタ式フェースピースレスピレータは、一般に、2種類の構造、すなわち成型レスピレータ及び平坦折り畳み式レスピレータの一方の形式を取る。
【0004】
成型フィルタ式フェースピースレスピレータは、マスク本体にカップ状の構造を与えるために、熱接着繊維の不織ウェブ又は透かし編目のプラスチックメッシュを通常含んできた。成型レスピレータは、使用中及び収納時の双方で同一の形状を維持する傾向がある。そのため、これらのレスピレータは、収納又は輸送のために折り畳むことはできない。成型フィルタ式フェースピースレスピレータを開示している特許の例には、米国特許第7,131,442号(Kronzer et al)、米国特許第6,923,182号及び同第6,041,782号(Angadjivand et al)、米国特許第4,873,972号(Magidson et al)、米国特許第4,850,347号(Skov)、米国特許第4,807,619号(Dyrud et al)、米国特許第4,536,440号(Berg)、並びに意匠特許第285,374号(Huber et al)が挙げられる。
【0005】
平坦折り畳み式レスピレータは、その名が示すように、輸送及び収納のために平坦に折り畳むことができる。それらはまた、使用の際にカップ状の構造に開くこともできる。平坦折り畳み式レスピレータの例は、米国特許第6,568,392号及び同第6,484,722号(Bostock et al)並びに同第6,394,090号(Chen)に示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】カナダ特許第1,296,487号
【特許文献2】欧州特許第1,495,785A1号
【特許文献3】国際公開第96/28216A号
【特許文献4】米国意匠特許第285,374号
【特許文献5】米国意匠特許第412,573号
【特許文献6】米国公開第2007−0044803A1号
【特許文献7】米国公開第2007−0068529A1号
【特許文献8】米国再特許第RE31,285号
【特許文献9】米国再特許第RE37,974号
【特許文献10】米国再特許第RE39,493号
【特許文献11】米国特許第3,971,373号
【特許文献12】米国特許第4,013,816号
【特許文献13】米国特許第4,215,682号
【特許文献14】米国特許第4,536,440号
【特許文献15】米国特許第4,588,537号
【特許文献16】米国特許第4,600,002号
【特許文献17】米国特許第4,790,306号
【特許文献18】米国特許第4,798,850号
【特許文献19】米国特許第4,807,619号
【特許文献20】米国特許第4,850,347号
【特許文献21】米国特許第4,873,972号
【特許文献22】米国特許第5,237,986号
【特許文献23】米国特許第5,325,892号
【特許文献24】米国特許第5,496,507号
【特許文献25】米国特許第5,558,089号
【特許文献26】米国特許第5,617,849号
【特許文献27】米国特許第5,656,368号
【特許文献28】米国特許第5,804,295号
【特許文献29】米国特許第5,908,598号
【特許文献30】米国特許第6,041,782号
【特許文献31】米国特許第6,062,221号
【特許文献32】米国特許第6,123,077号
【特許文献33】米国特許第6,332,465号
【特許文献34】米国特許第6,334,671号
【特許文献35】米国特許第6,375,886号
【特許文献36】米国特許第6,391,429号
【特許文献37】米国特許第6,394,090号
【特許文献37】米国特許第6,397,458B1号
【特許文献39】米国特許第6,398,847B1号
【特許文献40】米国特許第6,406,657号
【特許文献41】米国特許第6,409,806B1号
【特許文献42】米国特許第6,454,986号
【特許文献43】米国特許第6,484,722号
【特許文献44】米国特許第6,492,286号
【特許文献45】米国特許第6,568,392号
【特許文献46】米国特許第6,743,464号
【特許文献47】米国特許第6,783,574号
【特許文献48】米国特許第6,824,718号
【特許文献49】米国特許第6,843,248号
【特許文献50】米国特許第6,854,463号
【特許文献51】米国特許第6,883,518号
【特許文献52】米国特許第6,923,182号
【特許文献53】米国特許第7,013,895号
【特許文献54】米国特許第7,028,689号
【特許文献55】米国特許第7,117,868号
【特許文献56】米国特許第7,131,442号
【特許文献57】米国特許第7,188,622号
【特許文献58】米国特許第7,311,104号
【特許文献59】米国特許第7,428,903号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
平坦折り畳み式レスピレータは、輸送及び収納のために平坦に折り畳むことができるという点で便利であるが、これらのレスピレータは使用中にカップ状の構造を維持することがより困難になる傾向がある。したがって、平坦折り畳み式レスピレータを設計する研究者は、カップ状の構造を使用中に維持するために役立つ、溶着線、継ぎ目、及び折り目をこれらのマスクに提供してきた。補強部材もまた、マスク本体のパネルに組み込まれてきた(上述のBostock et alの特許を参照)。本発明は、以下に記載するように、平坦折り畳み式フィルタ式フェースマスクの使用中における構造的一体性を向上させる更に別の方法を提供し、レスピレータの着脱の改善並びに適合及び調節の利便性を使用者に提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ハーネス、マスク本体、並びに第1及び第2フランジを含む新たな平坦折り畳み式のフィルタ式フェースピースレスピレータを提供する。マスク本体は、収納のために平坦に折り畳み可能で、使用の際にはカップ状の構造へと開くことができる。マスク本体は濾過構造体を含み、第1及び第2マスク本体側部に配置された第1及び第2フランジを有する。第1及び第2フランジは、開かれる際にマスク本体から横方向及び正面方向の双方に突出する。
【0009】
本発明者らは、マスク本体の対向する側部に第1及び第2フランジを使用することが、着用者の顔面への密着適合の維持及び達成の双方に有益であることを見出した。これらのフランジは、着用者の指がマスクを容易に掴み、着用並びにその後の調節及び取り外しの最中での適切な位置決めを可能とするための堅固な表面を提供する。これらのフランジはまた、ハーネスのストラップにより発生する引張りからの力に対応するレバーアームとして作用する。これらフランジが起因となり、マスク本体は、着用者の鼻及び目の下を覆い、並びに着用者のあご下の領域で下向きに引き下げられる。これらフランジはまた、マスクを外向きに突出させ、着用者の顔面から離れたカップ状の構造に保つ手助けをするという点でも有益である。
【0010】
用語解説
以下に詳述された用語は、定義された意味を有することになる。
【0011】
「二分する」は、ほぼ等しい2つの部分に分けることを意味する。
【0012】
「含む(又は、含んでいる)」は、特許専門用語において標準であるその定義を意味し、「備える」、「有する」、又は「含有する」とほぼ同義であるオープンエンド型の用語である。「備える」、「含む」、「有する」、及び「含有する」、並びにこれらの変形は、一般的に使用される制約のない用語であるが、本発明は、「本質的に〜からなる」などのより狭義の用語を使用して適切に記載されることもでき、これは、本発明のレスピレータがその意図される機能を果たす際の性能に対して悪影響を及ぼす物又は要素のみを除外するという点で、制約のない用語に準ずる用語である。
【0013】
「清浄な空気」は、汚染物質を取り除くために濾過されたある体積の大気中の周囲空気を意味する。
【0014】
「汚染物質」は、粒子(粉塵、ミスト及びフュームを含む)及び/又は一般には粒子とみなされない場合もあるが(例えば、有機蒸気等)、空気中に浮遊していることがある他の物質を意味する。
【0015】
「横断寸法」は、レスピレータを正面から見たときに、レスピレータの側方から側方まで横方向に延びる寸法を意味する。
【0016】
「カップ状の構造」は、人の鼻及び口を適切に覆うことが可能な任意の容器型の形状を意味する。
【0017】
「外部気体空間」は、吐き出された気体が、マスク本体及び/又は呼気弁を通過し、それらを越えた後に入る、周囲大気中の気体空間を意味する。
【0018】
「フィルタ式フェースピース」は、マスク本体自体が、マスク本体を通過する空気を濾過するように構成され、マスク本体にこの目的を達成するための別個の識別可能なフィルタカートリッジ又はインサート成型されたフィルタ要素が取り付けられていない、又は成型されていないことを意味し、
「フィルタ」又は「フィルタ層」は、通気性材質の1つ以上の層を意味し、その層は、通り抜ける空気流から汚染物質(粒子など)を除去するという主目的に適している。
【0019】
「濾材」は、それを通過した空気から汚染物質を取り除くために設計された通気性構造体を意味する。
【0020】
「濾過構造体」は、濾材又はフィルタ層を含む構成体を意味する。
【0021】
「第1側部」は、マスク本体を横断寸法に対して垂直に二分する平面の一方の側に位置するマスク本体の領域を意味する。
【0022】
「フランジ」は、突出部を意味し、そのフランジが突出する本体に対し構造的一体性又は強度を与える。
【0023】
「正面方向に」は、マスク本体が折り畳まれた状態のときに、マスク本体周辺部から離れて延びることを意味する。
【0024】
「ハーネス」は、マスク本体を着用者の顔面上で支持する助けとなる構造体又は部品の組み合わせを意味する。
【0025】
「一体的(integral)」は、同時に一緒に製造されていること、すなわち一部分として一緒に作製され、後に一緒に接合される別個に製造された2つの部分ではないことを意味する。
【0026】
「内部気体空間」は、マスク本体と人の顔面との間の空間を意味する。
【0027】
「横方向に」は、マスク本体が折り畳まれた状態のときに、マスク本体を横断寸法に対して垂直に2分する平面から離れて延びることを意味する。
【0028】
「境界線」は、折り目、継ぎ目、溶着線、接着線、ステッチ線、ヒンジ線及び/又はこれらの任意の組み合わせを意味する。
【0029】
「マスク本体」は、人の口及び鼻を覆って適合し、外部気体空間から内部気体空間を分離して画定する助けとなる通気性の構造体(層及び部品を互いに接合させる継ぎ目及び結合部を含む)を意味する。
【0030】
「ノーズクリップ」は、少なくとも着用者の鼻の周りの密封性を高めるために、マスク本体上で使用するように適応した(ノーズフォーム以外の)機械的装置を意味する。
【0031】
「周辺部」は、マスク本体の外側縁部を意味し、レスピレータを着用したときに、この外側縁部は、全体的に着用者の顔に隣接して配置される。
【0032】
「プリーツ」とは、それ自体の上に折り返しできるように設計された、又は折り返されている部分を意味する。
【0033】
「ポリマー」及び「プラスチック」はそれぞれ、1つ以上のポリマーを主に含み、同様に他の成分も含有してよい材料を意味する。
【0034】
「複数」は、2つ以上を意味する。
【0035】
「レスピレータ」は、呼吸するための清浄な空気を着用者に提供するための、人間が着用する空気濾過装置を意味する。
【0036】
「第2側部」は、マスク本体を横断寸法に対して垂直に2分する平面の一方の側に位置するマスク本体の領域を意味する(第2側部は第1側部に対向している)。
【0037】
「密着適合」又は「密着して適合する」とは、本質的に気密な(又は実質的に漏れのない)適合が(マスク本体と着用者の顔面との間に)もたらされることを意味する。
【0038】
「タブ」は、別の構成要素に取り付けるための十分な表面積を呈する部位を意味する。
【0039】
「横断方向に延びている」は、ほぼ横断寸法方向に延びていることを意味する。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】人の顔面に着用した状態での、本発明による平坦折り畳み式フィルタ式フェースピースレスピレータ10の正面斜視図。
【図2】図1に示すレスピレータ10の平面図。
【図3a】図2の線3a−3aに沿って取られた、マスク本体12の断面図。
【図3b】図3aの線3b−3bに沿って取られた、濾過構造体16の断面図。
【図4】本発明に関して使用してもよい、マスク本体12の正面図。
【図5】フランジが適合の改善に貢献し得る方法を図示している、レスピレータ10の側面図。
【発明を実施するための形態】
【0041】
本発明の実施では、平坦折り畳み式フィルタ式フェースピースレスピレータが提供され、このレスピレータは、マスク本体の対向する第1及び第2側部に配置された第1及び第2フランジを有している。第1及び第2フランジは、より確実な適合を着用者の顔面へもたらす点で有益であるということが見出された。フランジは、数多くの方法で、この顔面適合の利便性を達成する。第1に、フランジは、着用者の口から離れた、空隙を備えるカップ状の構造を使用中に保つための、構造的一体性をマスクにもたらす助けとなる。平坦折り畳み式レスピレータは、恒久的な形状に成型されておらず、そのため長期間の着用後には所望の顔面適合構造を失う傾向を示す場合がある。例えば、着用者は使用中にマスク本体を外部の物体に誤ってぶつけてしまう場合があり、呼気中の水分及び周囲環境が型崩れの一因となってマスク本体の内側を着用者の顔に接触させてしまう場合がある。開かれた構造のときにマスク本体から横方向及び正面方向の双方に延びる第1及び第2フランジを備えることが、所望の口から離れた構造を維持する助けとなる。第2に、第1及び第2フランジは、マスク本体のそれぞれの側部に取っ手を提供し、着用者による使用中のマスク本体の適切な位置決め調整が可能となる。着用者は、所望の顔面適合位置にマスクを移動させるためにマスク本体の外側層をつまむ必要がない。このようにフランジは、マスクの調整を達成するためのきわめて簡便な手段を提供する。第3に、フランジは、マスク本体が着用者の鼻及びあご下の領域に良好に係合するように下向き姿勢に引張られる起因となり得る構造部材の役割を果たす。この特有の効果は、図6を参照して以下で詳細に説明する。第4に、フランジは、手袋をした手であっても、マスクを容易に取り外すための手段を提供する。第5に、一旦取り外すと、フランジを対向方向に引張ることにより、更なる手動操作を必要とすることなくマスクを素早く平坦な構造に再び折り畳むことができる。
【0042】
図1は、着用者が呼吸するための清浄な空気を提供するために、本発明により使用することができる平坦折り畳み式フィルタ式フェースピースレスピレータ10の一例を示す。図示するように、フィルタ式フェースピースレスピレータ10は、マスク本体12及びハーネス14を含む。マスク本体12は、吸気が着用者の呼吸器系に入る前に通過する必要がある濾過構造体16を有する。濾過構造体16は、着用者が清浄な空気を吸い込むことができるように、周囲環境から汚染物質を取り除く。マスク本体12は、頂部18及び底部20を含む。頂部18及び底部20は、境界線22により隔てられている。この特定の実施形態では、境界線22は、マスク本体の中央部の両端間を横断方向に延びるプリーツである。マスク本体12は、上部セグメント24a及び下部セグメント24bを含む周辺部も含む。ハーネス14は、タブ28aにステープル留めされたストラップ26を有する。図示するように、タブ28aは、フランジ30aの一体的部分である。
【0043】
図2は、レスピレータ10が、マスク本体12の対向する側部に位置決めされた第1及び第2フランジ30a及び30bを有し得ることを図示している。ストラップ26は、タブ28a、28bのそれぞれにステープル留めされている。フランジ30a及び30bは、マスク本体から横方向及び正面方向の双方に突出する。これらフランジは、マスク本体をx方向で二分する平面32から離れて延びるという点で、マスク本体から横方向に突出している。フランジ30a及び30bはまた、矢印yで記すように、周辺部24aから離れマスク本体12の前側縁部22へ向かって延びるという点で、マスク本体12から正面方向にも延びている。それぞれのフランジが典型的に占める表面積は、約1〜15平方センチメートル、より典型的には、約2〜12平方センチメートル、更により典型的には、約5〜10平方センチメートルである。またフランジは、典型的にマスク本体から少なくとも2ミリメートル(mm)離れ、より典型的には、少なくとも5mm、更により典型的には、少なくとも1〜2センチメートル(cm)離れて延びる。フランジ30a、30bは、マスク本体に一体的に、又は非一体的に配置され、マスク本体を含む1つ以上又は全ての様々な層を含んでもよい。これは、フランジが、マスク本体の製作に使用される材料の延出部分である場合、又は、硬質又は半硬質プラスチックのような別個の材料で製作される場合のことである。一体的フランジは、フランジの剛性を高めるためにフランジ上に備わる溶着部又は接着部33を有し得る。あるいは、接着剤層を使用してフランジ剛性を高めてもよい。以下に記載の、たわみ剛性試験を用いると、フランジの曲げ弾性率は、フランジの主要面に沿って曲げた場合、少なくとも10メガパスカル(MPa)、より典型的には、少なくとも20MPaであってよい。上端部での曲げ弾性率は、典型的には100MPa未満、より典型的には、60MPa未満である。これらの数値(すなわち、上限及び下限の双方での)は、試験を試料の縁部に沿って行なった場合の約2倍の大きさである。図2においてタブ28a及び28bは、周辺セグメント24aの一部となる共有の縁部を有するように図示されているが、これらタブは、図1に示すように、マスクが着用者の顔面上に置かれた場合、マスク本体周辺部の顔面接触する周辺部を超えて延びていてもよい。顔面接触する周辺部は、通常、ブラケット状領域34内部に存在し、そのためタブ周辺部の一部ではない。マスク本体周辺部は、マスク本体12の様々な層を互いに接合するための一連の接着部又は溶着部35を有してもよい。マスク本体12はまた、マスク本体12の第1及び第2側部に位置決めされた第1及び第2境界線36a、36bを含む。第1及び第2フランジ30a、30bはそれぞれ、第1及び第2境界線36a、36bでマスク本体と接合させ、これら境界線と平行な軸を中心に回転させることができる。第1及び第2境界線30a、30bは、マスク本体を折り畳んだ状態で上面から見た場合に、マスク本体12の周辺部24aに対し垂直に延びる平面32から角度αでオフセットしている。角度αは、0度〜約60度、より典型的には約30〜45度であってよい。上部18は、第1境界線36aから第2境界線36bまで横断方向に延びる少なくとも1つのプリーツ線38を含む。
【0044】
図3aは、本発明によるマスク本体12のプリーツ状構造の一例を示す。図示のように、マスク本体12は、既に図1及び2を参照して説明した、プリーツ22及び38を含んでいる。マスク本体12の上部又はパネル18はまた、プリーツ40を含んでいる。マスク本体12の下部又はパネル20は、プリーツ42、44、46、48、50、及び52を含んでいる。マスク本体12の下部20は、上部18より広い濾材表面積を含んでもよい。マスク本体12はまた、マスク本体の周辺部に沿って固定される周辺ウェブ54を含む。周辺ウェブ54は、周辺部24a、24bでマスク本体の上に折り重ねてもよい。周辺ウェブ54はまた、縁部24a及び24bの周囲で折り畳まれて固定される内側カバーウェブ58の延出部分であってもよい。ノーズクリップ56は、マスク本体の上部18の中央で、濾過構造体16と周辺ウェブ54との間の周辺部に隣接して配置されてもよい。ノーズクリップ56は、着用者の鼻の輪郭に適合するように着用者の手作業で適応させることが可能となる柔軟な金属又はプラスチックで作製されてもよい。図示されるように、上部18は、マスク本体12が折り畳まれた状態では、プリーツ状のパネルのように見え、同様に下部20(図1)も、マスクが折り畳まれた収納状態では、プリーツ状のパネルのように見える。
【0045】
図3bは、濾過構造体16が、内側カバーウェブ58、外側カバーウェブ60、及びフィルタ層62のような1つ以上の層を含み得ることを図示している。内側及び外側カバーウェブ58及び60は、フィルタ層62を保護し、フィルタ層62からの繊維が緩んでマスク内側に入り込むのを防ぐために備えられてよい。レスピレータの使用中、空気はマスク内側に入り込む前に層60、62、及び58を順次通過する。マスクの内部気体空間内に配置された空気は、その後、着用者により吸引されてよい。着用者が息を吐くと、空気は逆方向に層58、62、及び60を順次通過する。あるいは、吐き出された空気が濾過構造体16を通過せずに、内部気体空間から急速に排除され外部気体空間に入ることを可能にする呼気弁(図示せず)をマスク本体に備えてもよい。典型的には、カバーウェブ58及び60は、濾過構造体の、特に着用者の顔面と接触する側で、心地よい感覚をもたらす不織布材を選択肢として作製されている。本発明の支持構造体に使用可能なさまざまなフィルタ層及びカバーウェブの構成体の詳細を下に記述する。着用者への適合及び快適性を向上させるために、エラストマーのフェースシール材を、濾過構造体16の周辺部に固定することができる。このようなフェースシール材は、レスピレータを着用したときに、内側に向かって放射状に延び、着用者の顔に接触することができる。フェースシール材の例は、米国特許第6,568,392号(Bostock et al)、同第5,617,849号(Springett et al)、及び同第4,600,002号(Maryyanek et al)、並びにカナダ特許第1,296,487号(Yard)に記述されている。濾過構造体はまた、少なくとも1つ以上の層58、60、又は62に対して、典型的には外側カバーウェブ60の外側表面に対して、構造的な網又はメッシュを並置してもよい。そのようなメッシュの使用は、Expandable Face Mask with Reinforcing Netting(attorney case no.65000US002)と題する米国特許出願第12/338,091号に記載されている。
【0046】
図4は、使用中の構造のマスク本体12を示す。使用中は、フランジ30a、30bは、マスク本体の第1及び第2側部上に配置され、使用中にマスク本体に向けて内側に折り畳まれてよい。必要に応じて、マスク本体及び/又はフランジ30a、30bの接触側は、それぞれのフランジ30a、30bをフランジの主要面64でマスク本体と接合可能にする固定手段を有してもよい。そのような固定手段としては、接着剤、剥離ライナー、フックアンドループ形締結具、又は他の好適な化学的、物理的、若しくは機械的な種類の締結具が挙げられる。
【0047】
図5は、どのようにしてハーネスストラップ26からの張力が、フランジ30aの全長に沿った方向の力を及ぼし、矢印70で記すような下方向にマスク本体を引張る起因となる得るかを概略的に図示している。着用者がレスピレータ10を着用する際、ストラップ26は着用者の耳より上の頭の後に配置される。ストラップは耳の上で頭に係合するように締め付けられるため、ストラップは、矢印72の方向で記すようにマスク本体を上向きに引張る。矢印72の方向に伝わる力は、タブ28aを同様の方向に引張る。マスク本体は交点76の領域全般に支点を有し、これによりフランジ30aが固定されているマスク本体に沿って力の伝達が可能となる。支点76により、フランジ30aはマスク本体を矢印78の方向に下向きに動かしやすくなる。フランジ30aにより矢印78の方向に及ぼされる相補的な力が起因となり、マスクが着用者の鼻に鼻領域80でより密着して係合する。この力の伝達はまた、マスク本体を周辺部24bに沿って着用者のあごの下の顔面とより緊密に係合させる傾向がある。このように第1及び第2フランジ30a及び30bを使用することで、平坦折り畳み式フィルタフェースマスクにおける密着適合の改善が達成可能となる。更に、第1及び第2フランジ30a及び30bを備えることで、着用者はそれらの箇所でマスクをより簡単に掴むことができ、それによりマスク本体は着用者の顔面上の適切な位置へとより簡単に操作可能となる。フランジ30a及び30bの使用はまた、着用者の顔面へのきわめて良好な密着適合を得るために、1つのストラップのみがマスク本体に使用されることを可能にする。
【0048】
本発明に関して使用される濾過構造体は、様々な異なる形状及び構造を呈してもよい。濾過構造体は、典型的には支持構造体に対して又は支持構造体内に適切に嵌まるよう適合される。通常、濾過構造体の形状及び構造は、マスク本体の全般的形状に対応する。濾過構造体は、フィルタ層及び2つのカバーウェブを含む多層にて図示されているが、濾過構造体はフィルタ層又はフィルタ層の組み合わせのみから構成されてもよい。例えば、プレフィルタを上流側に配置して、より微細かつ選択的なフィルタ層を下流側に配置することができる。加えて、活性炭などの収着剤材料を、濾過構造体を構成している繊維及び/又はさまざまな層の間に配置することができる。更に、収着層と共に別の粒子フィルタ層を使用して、粒子と蒸気の両方に対するフィルタリングを提供することができる。濾過構造体は、カップ状の構造を提供する補助となる1つ以上の補強層を含んでもよい。濾過構造体はまた、その構造的一体性に貢献する1つ以上の水平及び/又は垂直の境界線を有する場合もある。しかしながら、本発明による第1及び第2フランジの使用が、そうした補強層及び境界線への不必要な要求を生じさせる場合がある。
【0049】
本発明のマスク本体に使用される濾過構造体は、粒子捕捉タイプ又はガス及び蒸気タイプのフィルタであり得る。濾過構造体は更に、フィルタ層の一方から他方に液体が移動するのを防ぐバリヤー層であり得、これにより、例えば、液体エアロゾル又は液体(例えば、血液)の飛沫がフィルタ層に浸透するのを防止できる。用途に応じて、本発明の濾過構造体の構築には、類似の又は異なる濾材の複数の層を使用することができる。本発明の層状マスク本体に有効に使用できるフィルタは、マスク着用者の呼吸労力を最小限に抑えるために、一般に圧力低下が小さい(例えば、面速度毎秒13.8センチメートルで約195〜295パスカル)。フィルタ層は更に、予想される使用条件においてそれらの構造を維持するよう、可撓性及び十分な剪断強さを有する。粒子捕捉フィルタの例としては、微細な無機繊維(グラスファイバーなど)又はポリマー合成繊維の1枚又はそれより多くのウェブが含まれる。合成繊維ウェブには、メルトブローン法などのプロセスによって製造されるエレクトレット帯電ポリマーマイクロファイバーが含まれる。帯電したポリプロピレンから形成されたポリオレフィンマイクロファイバーは、粒子捕捉用途に特に有用である。別のフィルタ層は、呼吸空気中の有害な又は悪臭のある気体を除去するための吸着剤成分を含んでもよい。吸着剤は、接着剤、結合剤、又は線維構造によりフィルタ層内に拘束される粉末又は顆粒を含んでもよい(米国特許第6,334,671号(Springett et al)、及び米国特許第3,971,373号(Braun)を参照のこと)。吸着剤層は、繊維性フォーム又は網状発泡体などの基材にコーティングすることにより、薄く密着した層を形成することができる。吸着剤材料としては、活性炭(化学処理済み、又は未処理)、多孔質アルミナ−シリカ触媒基材、及びアルミナ粒子を挙げることができる。さまざまな構造に適合可能な収着性濾過構造体の一例が、米国特許第6,391,429号(Senkus et al)に記述されている。
【0050】
フィルタ層は、典型的には、所望の濾過効果を達成するように選択される。フィルタ層は、通常、粒子及び/又はその他の汚染物質を、フィルタ層を通過する気体流から高い割合で除去する。繊維性フィルタ層については、通常は、成型作業中に互いに結合してしまわないように、濾過する物質の種類に基づいて選択された繊維が選ばれる。示されているように、フィルタ層はさまざまな形状及び形態で用いることができ、典型的には厚さが約0.2ミリメートル(mm)〜1センチメートル(cm)、より典型的には約0.3mm〜0.5cmであり、ほぼ平面的なウェブであってよく、又は伸展した表面積を提供できるよう波形状であってもよい(例えば米国特許第5,804,295号及び同第5,656,368号(Braun et al)を参照のこと)。フィルタ層には更に、接着剤又は他の任意の方法によって接合された複数のフィルタ層も含まれ得る。基本的に、フィルタ層の形成用として知られている(又は後に開発される)好適な任意の材料を、フィルタ材料として使用することができる。Van A.Wente、「Superfine Thermoplastic Fibers」、48、Indus.Engn.Chem.に教示されているようなメルトブローン繊維のウェブ。1342以下参照(1956年)の教示のように、特に持続性帯電(エレクトレット)形では、メルトブローン繊維のウェブが特に有用である(例えば、米国特許第4,215,682号(Kubik et alを参照のこと)。これらのメルトブローン繊維は、約20マイクロメートル(μm)未満(「ブローンマイクロファイバー」をBMFと称する)、一般に約1〜12μmの有効繊維直径を有するマイクロファイバーであってもよい。有効繊維直径は、Davies, C. N.、「The Separation Of Airborne Dust Particles」、Institution Of Mechanical Engineers、ロンドン、会報1B、1952年に従って測定され得る。特に好ましいのは、ポリプロピレン、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)及びこれらの組み合わせから形成される繊維を含むBMFウェブである。米国再特許第31,285号(van Turnhout)に教示されている帯電小繊維化フィルム繊維も適している場合があり、またロジン−ウール繊維ウェブ、及びグラスファイバー若しくは溶液ブローンのウェブ、又は静電スプレー繊維、特にマイクロフィルム形態のものも適している場合がある。電荷は、米国特許第6,824,718号(Eitzmanet al)、同第6,783,574号(Angadjivand et al)、同第6,743,464号(Insley et al)、同第6,454,986号及び同第6,406,657号(Eitzmanet al)、並びに同第6,375,886号及び同第5,496,507号(Angadjivand et al)に開示されているように、繊維を水と接触させることにより繊維に付与することができる。電荷は、米国特許第4,588,537号(Klasse et al)に開示されているようなコロナ放電、又は米国特許第4,798,850号(Brown)に開示されているような摩擦帯電によっても繊維に付与することができる。更に、ハイドロ帯電プロセスにより製造されたウェブの濾過性能強化のため、添加剤を繊維に含めることができる(米国特許第5,908,598号(Rousseau et al)を参照)。特に、フッ素原子をフィルタ層の繊維表面に配置して、油性ミスト環境での濾過性能を改善することができる(米国特許第6,398,847B1号、同第6,397,458B1号、同第6,409,806B1号(Jones et al)を参照)。エレクトレットBMFフィルタ層の典型的な坪量は、1平方メートルあたり約10〜100グラムである。例えば、’507特許(Angadjivand et al)に記載されている技法によって帯電させた場合、またJones et alの特許に記載されるようにフッ素原子を含む場合、坪量はそれぞれ、約20〜40g/m及び約10〜30g/mとなる。
【0051】
内側のカバーウェブは、着用者の顔に接触するために滑らかな表面を提供するのに用いられることができ、また外側のカバーウェブは、マスク本体内の遊離繊維を封入するため、又は審美的理由から用いられることができる。カバーウェブは、フィルタ層の外側(又は上流側)に配置されたときにプレフィルタとして機能することができるが、典型的には濾過構造体に対して実質的なフィルタ効果を提供するものではない。好適な程度の快適性を得るために、内側カバーウェブは好ましくは比較的低い坪量を有し、比較的細い繊維から形成される。より具体的には、カバーウェブは、約5〜50g/m(典型的には10〜30g/m)の坪量を有するように作り上げられてよく、繊維は0.000389g/m(3.5デニール)未満(典型的には0.000222g/m(2デニール)未満、より典型的には0.000111g/m(1デニール)未満で、0.0000111g/m(0.1デニール)超)であってよい。カバーウェブに用いられる繊維はしばしば、約5〜24マイクロメートルで、典型的には約7〜18マイクロメートル、より典型的には約8〜12マイクロメートルの平均繊維直径を有する。カバーウェブはある程度の弾性(典型的には破断時に100〜200%であるが、必ずしもそうではなくてよい)を有し、可塑的に変形可能であり得る。
【0052】
カバーウェブに適した材料としては、ブローンマイクロファイバー(BMF)材料、特にポリオレフィンBMF材料、例えばポリプロピレンBMF材料(ポリプロピレンブレンド、及びポリプロピレンとポリエチレンとのブレンドも含む)が挙げられる。カバーウェブ用のBMF材料の好適な製造工程は、米国特許第4,013,816号(Sabeeら)に記載されている。このウェブは、繊維を滑らかな表面、典型的には滑らかな表面のドラム又は回転型コレクタの上に収集して形成してもよい―米国特許第6,492,286号(Berrigan et al)を参照。スパンボンド繊維も使用することができる。
【0053】
典型的なカバーウェブは、ポリプロピレン、又は50重量%以上のポリプロピレンを含むポリプロピレン/ポリオレフィン混合物から作製され得る。これらの材料は、着用者に程度の高い柔らかさ及び快適性を提供し、またフィルタ材料がポリプロピレンBMF材料であるとき、層間に接着剤を必要とすることなく、フィルタ材料に固定された状態に保つことが見出されている。カバーウェブで使用するのに好適なポリオレフィン材料としては、例えば、単一のポリプロピレン、2種のポリプロピレンの混合物、ポリプロピレンとポリエチレンの混合物、ポリプロピレンとポリ(4−メチル−1−ペンテン)の混合物、及び/又はポリプロピレンとポリブチレンの混合物を挙げることができる。カバーウェブ用の繊維の一例としては、ポリプロピレン樹脂から作製されたExxon Corporation製のポリプロピレンBMF「Escorene 3505G」があり、これは坪量が約25g/m、及び繊維デニールは0.2〜3.1の範囲である(約0.8の繊維100本超で測定の平均)。他の好適な繊維はポリプロピレン/ポリエチレンBMF(樹脂「Escorene 3505G」85パーセントと、エチレン/α−オレフィンコポリマー「Exact 4023」(これもExxon Corporation製)15%を含む混合物から製造される)であり、これは坪量が約25g/mであり、繊維は平均約0.8デニールである。好適なスパンボンド材料としては、ドイツ国PeineのCorovin GmbH製「Corosoft Plus 20」、「Corosoft Classic 20」及び「CorovinPP−S−14」の商品名で販売されているもの、並びにフィンランド国NakilaのJ.W. Suominen OY製「370/15」の商品名で販売されている毛羽立ちポリプロピレン/ビスコース材料が挙げられる。
【0054】
本発明で使用されるカバーウェブは好ましくは、処理後にウェブ表面からの繊維のはみ出しが非常に少なく、よって滑らかな外側表面を有する。本発明で用いてもよいカバーウェブの例は、例えば、米国特許第6,041,782号(Angadjivand)、同第6,123,077号(Bostock et al)及び国際公開第96/28216A号(Bostock et al)に開示されている。
【0055】
ハーネスに使用されるストラップは、様々な材料、例えば熱硬化性ゴム、熱可塑性エラストマー、編組み又は編込みされた織糸/ゴムの組み合わせ、非弾性の編組み構成要素、及びその他から作製され得る。ストラップは、弾性材料、例えば弾性の編組み材料から形成されてもよい。ストラップは、好ましくはその全長の2倍より大きく拡張され、その弛緩状態に戻り得る。ストラップはまた、その弛緩状態の長さの3倍又は4倍まで延びることが可能であり、かつ張力が取り除かれると、なんら損傷を受けずにその元の状態に戻ることができる。したがって、弾性限度は、ストラップの弛緩状態における長さの2倍、3倍、又は4倍以上であるのが好ましい。典型的には、ストラップは、長さ約20〜30cm、幅3〜10mm、厚さ約0.9〜1.5mmである。ストラップは、連続ストラップとして第1タブから第2タブまで延びてもよく、又はストラップは、更なる締結具又はバックルにより互いに接合され得る複数の部品を有してもよい。例えば、ストラップは、マスク本体を顔面から除去する際に、着用者により迅速に分離され得る締結具により一緒に接合された第一及び第二の部品を有してもよい。本発明に関して使用可能なストラップの一例が、米国特許第6,332,465号(Xue et al)に示されている。ストラップの1つ以上の部品を相互に接合するために使用し得る締結機構又は留め金機構の例は、例えば以下の米国特許第6,062,221号(Brostrom et al)、同第5,237,986号(Seppala)、及び欧州特許第1,495,785A1号(Chien)に示されている。
【0056】
図のように、内部気体空間から呼気を排除しやすくするために、マスク本体に呼気弁を取り付けてもよい。呼気弁の使用は、マスク内部からの暖かい湿った呼気を急速に除去することにより、着用者の心地よさを改善し得る。例えば、米国特許第7,188,622号、同第7,028,689号、及び同第7,013,895号(Martin et al)、同第7,428,903号、同第7,311,104号、同第7,117,868号、同第6,854,463号、同第6,843,248号、及び同第5,325,892(Japuntich et al)、同第6,883,518号(Mittelstadt et al)、及び同再特許第RE37,974号(Bowers)を参照。本質的に、呼気を内部気体空間から外部気体空間へと迅速に運搬するために、好適な圧力低下を提供し、かつマスク本体に適切に固定され得る任意の呼気弁を、本発明に関連して使用してもよい。
【0057】
本発明に関して使用されるノーズクリップは、本質的に、着用者の鼻への適合を改善する補助となる任意の追加部品であってよい。この領域における着用者の顔面の輪郭には実質的な変化があるため、ノーズクリップは、マスク本体がこの領域で適切な適合を達成する良好な補助となり得る。例えばノーズクリップは、マスク本体が、着用者の鼻の上及び鼻と頬との間の領域に対して所望の適合関係に保持されるべく成型することができるアルミニウムなどの柔軟で軟らかい帯状の金属を含んでもよい。好適なノーズクリップの一例が、米国特許第5,558,089号及び意匠特許第412,573(Castiglione)に示されている。他のノーズクリップが、米国特許出願第12/238,737号(2008年9月26日出願)、同公開第2007−0044803A1号(2005年8月25日出願)、及び同第2007−0068529A1号(2005年9月27日出願)に記載されている。
【実施例】
【0058】
たわみ剛性試験
フランジの剛性は、修正ASTM D790法「Flexural Properties of Unreinforced and Reinforced Plastics and Electrical Insulating Materials」の方法I「Three Point Bend Testing」により測定した。曲げ弾性率は、ASTM D790に従い、応力ひずみプロット図の線形領域で算出した。曲げ弾性率の値は、メガパスカル(MPa)の単位で記録した。
【0059】
試験試料の寸法は19mm×23mm×2mmとした。スパンの設定は、ノーズ半径2.5mmで15ミリメートル(mm)とした。クロスヘッド速度の設定は、13mm/分とした。MTS Alliance,Eden Prairie,MNから入手のA 100載荷フレームを全ての試験で使用した。
【0060】
レスピレータの組み立て
(実施例1)
レスピレータの濾過構造体は、3層の不織布材及び他のレスピレータ構成要素から形成した。本発明のマスクを、予備成形品作製工程、及びマスク仕上げ工程の2つの工程で組み立てた。予備成形品作製の段階には、不織繊維ウェブの積層及び固定工程、プリーツ折り目線形成工程、並びに周辺ウェブ材料及びノーズクリップ取り付け工程が含まれていた。マスク仕上げの作業工程には、エンボス加工された折り目線に沿ってプリーツを折る工程、マスク側縁部及び補強されたフランジ材料の双方を融着する工程、最終形態に切り出す工程、及びヘッドバンドを取り付ける工程が含まれていた。
【0061】
予備成形品作製の段階では、3層の不織布材を向かい合わせの配向で重ね合わせた。本実施例では、層を形成する個々の材料を以下の順序で組み立てた。
【0062】
1.外側網/スクリム
2.フィルタ材料
3.内側カバーウェブ
外側網/スクリムは、Thermanet 5103の網(Conwed,Minneapolis,MNから入手可能)をLeggett and Platt−Hanes Industries,Carthage,Missouriから入手した17グラム/平方メートル(gms)のElite 050スクリムと結合させた積層体であった。この網/スクリム積層体は、図3bの60として示され、熱及び圧縮を用いてスクリム上に網のストランドを溶融結合する熱接着で形成した。網/スクリム層の全体の厚さは、スクリムの厚さ0.10mmを含む0.12mmであった。予備成形品に使用したフィルタ材料(図3bの62として示す)は、エレクトレット帯電したブローンマイクロファイバーポリプロピレンのウェブであり、坪量35gms、硬度8%、及び有効繊維寸法4.75マイクロメートルであった。内側カバーウェブ(図3bの58として示す)は、17gmsのスパンボンドポリプロピレンのスクリムであり、BBA Nonwovens,Charlotte,North Carolinaから入手可能である。予備成形品は、それぞれの材料の層を所望の順に重ね合わせ、次に20cm×33cmのシートに切り出し、点結合のパターンを用いて互いに超音波溶着して作製した。超音波溶着は、Branson,Danbury,Connecticutから入手の2000型超音波溶着装置を使用し、ホーン振幅、周波数、及び加圧保持時間をそれぞれ、100%、20kHz、及び0.7秒としてラム圧483キロパスカル(kPa)で操作して行った。平頂角型ペグを備えたアンビルに対して操作し、これらペグは個々のフェース面積が1.6平方ミリメートルで、ペグ中心間が約1センチメートルの間隔で格子状に配列されており、溶着装置の平坦なフェースのホーンをこのアンビルに対して接触圧約6MPaで作動させた。不織布の層を固定し、プリーツの位置を画定する折り目線を、固定した不織布の層にエンボス加工した。折り目線のエンボス加工は、USM Corporation,Haverhill,Massachusettsから入手のダイ打抜き機Hytronic Cutting Machine Model Bをルールダイと用いて15トンの力で使用して行なった。そのダイは、予備成形品の全長を横断する、縁部にアールが付いた9本のバーを有しており、予備成形品にプレスすると、不織布層に線を作り出した。これらエンボス加工された線は、ウェブを相互に接触点で圧縮したが、材料を融着、又は貫通することはなかった。予備成形品作製作業の最終工程として、51グラム毎平方メートル(gsm)のスパンボンドポリプロピレンのスクリムであるBBA Nonwovensの幅4cm、長さ36cmを周辺ウェブのバンドとして、予備成形品の頂部及び底部の縁部に巻き付けて所定の位置に超音波溶着した。超音波溶着は、Branson,Danbury,Connecticutから入手の超音波溶着装置2000X型を使用し、ラム圧483kPa、ホーン振幅、周波数、及び加圧保持時間をそれぞれ、100%、20kHz、及び0.5秒で操作して行った。接触面積4.1平方センチメートルのアンビルに対して、特定のラム圧及びホ−ン条件を用いて操作し、結果的に8.5MPaの接触圧で予備成形品の材料を結合した。周辺ウェブ材料の結合に使用したアンビルの区域は、個々のフェース面積が1.6平方ミリメートルの、図2のパターン35に配列された平頂角型ペグで構成された。溶着装置の平坦なフェースのホーンをこのアンビルに対して作動させ、周辺ウェブを予備成形品に固定した。この工程を使用して、ノーズクリップを予備成形品の頂部に取り付け、予備成形品と周辺ウェブとの間に封入した。ノーズクリップは、可鍛性で、可塑的に変形可能な、図2に示す形状のアルミニウムの帯で、長さ9cm、幅0.5cm、厚さ1mmであった。
【0063】
マスクの仕上げ工程の作業では、図3に示すように、折り目線に沿ってプリーツが折られた。マスクの中央の折り目より上に位置するプリーツは、マスクを開くと折り目の外側が下方に向くように折られたが、これは着用時にマスクの折り目にごみ等が溜まることを防ぐ助けとなるためにされた。予備成形品に適正なプリーツ処理をして中央の折り目を中心に折り、マスクの側縁部(図2の36a及び36b)を融着するため、そして補強フランジ(図2の30a及び30b)の結合層を作り出すために、予備成形品を超音波溶着した。超音波溶着は、Branson,Danbury,Connecticutから入手の超音波溶着装置2000ae型を使用し、ラム圧483kPaで、ホーン振幅、周波数、及び加圧保持時間をそれぞれ、100%、20kHz、及び2.0秒で操作して行った。22.4平方センチメートルの接触面積を有するアンビルに対して、特定のラム圧及びホ−ン条件を用いて操作し、結果的に1.5MPaの接触圧で予備成形品の材料を結合した。フランジ材料を結合するためのアンビルの接触区域は、平頂角型ペグで構成されており、それらペグは1.6平方ミリメートルの個々のフェース面積を有し、それらの平坦側面から1.27ミリメートルの間隔を置いて配列され、その結果としての結合パターンは図5の30aで示される。マスクの側縁部の結合を形成するアンビルのバーは長さ95.25ミリメートル、幅9.525ミリメートルであり、結果として得られた結合パターンは図2の36aで示される。溶着装置の平坦なフェースのホーンをアンビルに対して作動させ、結果としての溶着パターン(図2の33)を形成し、フランジの結合層を作り出した。アンビルの傾斜バー要素がマスクの側縁部を封止し、ピン溶着表面がフランジ材料を融着させて堅固化した。マスク仕上げ作業の最終工程として、この補強フランジを所望の形状に切り出し、ヘッドバンドをタブにステープル留めした。フランジは幅1.0cm、長さ5.0cmで、ヘッドバンドを取り付けるタブ部分に位置決めされる0.5cmのアールが付いたヘッド部を備えていた。ヘッドバンドは、Stanley Bostitch,East Greenwich,Rhode Islandから入手の手持ちホチキスP6C−8型、及び亜鉛めっきのホッチキス針No.STH5019 0.635 cm(1/4インチ)を使用してタブのアールが付いたヘッド部に取り付けた。マスクからフランジの切片を切り出し、たわみ剛性試験で概説した方法に従い試験を行なった。フランジ切片の試験は、試料の平坦面に沿った方向、及びフランジ全長に沿って配向される試料の縁部に沿った方向の2つの配向で行った。試料の平坦表面に沿って曲げた場合、曲げ弾性率は27MPaであった。試料の縁部に沿って曲げた場合、曲げ弾性率は66MPaであった。ヘッドバンドは、幅7.9mm、厚さ0.8mmでProvidence Braid Co.,Pawtucket,Rhode Islandから入手の試料番号125−1であった。フランジは、マスク本体への取付け線に平行な軸を中心に回転可能であり、開いて着用した際、より強固なマスク本体を提供した。
【0064】
(実施例2)
フランジに別個のプラスチックシートを使用した点を除き、レスピレータを実施例1と同じ材料及び方法で作製した。実施例1で形成したマスク本体を使用し、不織布フランジを取り除き、取り除いたフランジと同じ形状及び寸法に切り出したMcMaster−Carr,Chicago,Illinoisから入手の厚さ0.7mmのポリエチレンフィルムのシートに交換した。これらプラスチックのフランジを、Branson,Danbury,Connecticutから入手の携帯型超音波ホーンE−150B型を使用した超音波溶着によりマスクに取り付けた。溶着装置のホーンは、フェースに長さ13mm、幅2mmの方形のバーを備えて構成され、このバーが、結合される材料に接触して平坦なアンビルに対し材料を圧縮した。溶着装置を、接触圧約3.4MPaの印加、並びにホーン振幅、周波数、及び加圧保持時間をそれぞれ、100%、20kHz、及び1.0秒で操作した。フィルム状補強フランジは良好な剛性及び硬さをもたらした。
【0065】
(実施例3)
フランジをマスク本体に押し付けて固定できるようにフランジの一方の主要面に沿って固定手段を位置決めした点を除き、レスピレータを実施例1と同じ材料及び方法で作製した。剥離ライナーを取り除き、フランジをマスク本体に押し付けることにより、フランジをマスク本体に固定した。開かれた構造のとき、この固定手段は、補強フランジをマスク本体に対してほぼ垂直な配向に保持した。フランジをこの方法で付着させることにより、マスクは、着用していなくとも開放位置で支持された。マスク本体にフランジが固定されていることで、マスク本体は、更に剛性が高まり、ハーネスストラップからの力に対応するフランジのレバー作用に更に反応した。固定手段は、Polycoated Kraft紙剥離ライナー上の感圧性Hi−Strength Acrylic接着剤であるScotch(商標)Laminating Adhesive 9671(3M Company,St.Paul Minnesota)の切片とした。この接着剤を、フランジの主要面頂部に適用し、フランジが境界線の軸に沿ってマスク本体に向かって回転した際にフランジとマスクが接触するようにした。
【0066】
本発明は、その趣旨及び範囲から逸脱することなく、さまざまな変形及び変更を加えられてもよい。したがって、本発明は、上記に限定されず、添付された請求項及びすべてのその等価物に記述する制限によって規制される。
【0067】
更に本発明は、ここに具体的に開示されていない要素がなくとも適切に実施可能であり得る。
【0068】
上記の全ての特許及び特許出願は、「背景技術」部分のものを含め、全体的に参考として本明細書に組み込まれる。そのような組み込まれる文献の開示と上記明細書との間に不一致又は矛盾がある限りにおいては、上記明細書が優先する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平坦折り畳み式フィルタ式フェースピースレスピレータであって、
(a)ハーネスと、
(b)収納のために平坦に折り畳まれ、使用のためにカップ状の構造に開くことが可能であり、濾過構造体を含むマスク本体と、
(c)前記マスク本体の第1及び第2側部に配置され、前記マスク本体から横方向及び正面方向の双方に突出する第1及び第2フランジと、を含む、平坦折り畳み式フィルタ式フェースピースレスピレータ。
【請求項2】
前記ハーネスが、前記第1及び第2フランジとそれぞれ一体的な第1及び第2タブにそれぞれ取り付けられる第1及び第2末端部を有するストラップを含む、請求項1に記載の平坦折り畳み式フィルタ式フェースピースレスピレータ。
【請求項3】
前記マスク本体が、前記マスク本体の第1及び第2側部に位置決めされた第1及び第2境界線で出会う第1及び第2部分を含み、前記第1及び第2フランジもまた、前記第1及び第2境界線で前記マスク本体に接合する、請求項1に記載の平坦折り畳み式フィルタ式フェースピースレスピレータ。
【請求項4】
前記第1及び第2境界線が、前記マスク本体を折り畳んだ状態で上面から見たときに、前記マスク本体の周辺部に対し垂直に延びる線から30〜45度の角度αでオフセットしている、請求項3に記載の平坦折り畳み式フィルタ式フェースピースレスピレータ。
【請求項5】
前記マスク本体が、折り畳まれた状態で第1及び第2パネルを含み、少なくとも一方の前記パネルが、前記第1境界線から前記第2境界線まで延びる1つ以上のプリーツを含む、請求項3に記載の平坦折り畳み式フィルタ式フェースピースレスピレータ。
【請求項6】
前記第1及び第2フランジが前記マスク本体と一体的である、請求項1に記載の平坦折り畳み式フィルタ式フェースピースレスピレータ。
【請求項7】
前記第1及び第2フランジのそれぞれが、フランジ剛性を高めるための手段を有する、請求項6に記載の平坦折り畳み式フィルタ式フェースピースレスピレータ。
【請求項8】
前記剛性を高める手段が、溶着パターンを含む、請求項7に記載の平坦折り畳み式フィルタ式フェースピースレスピレータ。
【請求項9】
前記フランジのそれぞれが、約2〜12平方センチメートルの表面積を占める、請求項6に記載の平坦折り畳み式フィルタ式フェースピースレスピレータ。
【請求項10】
前記フランジのそれぞれが、約5〜10平方センチメートルの表面積を占める、請求項9に記載の平坦折り畳み式フィルタ式フェースピースレスピレータ。
【請求項11】
前記フランジのそれぞれが、前記マスク本体から少なくとも2ミリメートル離れて延びる、請求項9に記載の平坦折り畳み式フィルタ式フェースピースレスピレータ。
【請求項12】
前記第1及び第2フランジのそれぞれが、前記マスク本体から少なくとも5ミリメートル離れて延びる、請求項11に記載の平坦折り畳み式フィルタ式フェースピースレスピレータ。
【請求項13】
前記第1及び第2フランジのそれぞれが、前記マスク本体から少なくとも1センチメートル離れて延びる、請求項12に記載の平坦折り畳み式フィルタ式フェースピースレスピレータ。
【請求項14】
前記第1及び第2フランジのそれぞれが、前記フランジの主要面を前記マスク本体に固定するための手段を含む、請求項6に記載の平坦折り畳み式フィルタ式フェースピースレスピレータ。
【請求項15】
前記固定するための手段が、接着剤を含む、請求項14に記載の平坦折り畳み式フィルタ式フェースピースレスピレータ。
【請求項16】
使用前の前記接着剤を覆う剥離ライナーを更に含む、請求項15に記載の平坦折り畳み式フィルタ式フェースピースレスピレータ。
【請求項17】
前記第1及び第2フランジを掴み、前記マスク本体を二分する平面から離れて対向する方向に手動で引張ることにより、前記マスク本体が、更なる手動操作を必要とすることなく、前記平坦に折り畳まれた状態を呈することが可能な、請求項1に記載の平坦折り畳み式フィルタ式フェースピースレスピレータ。
【請求項18】
前記フランジがそれぞれ、たわみ剛性試験を使用して前記フランジの主要面に沿って曲げたときに、少なくとも10MPaの曲げ弾性率を有する、請求項1に記載の平坦折り畳み式フィルタ式フェースピースレスピレータ。
【請求項19】
前記フランジがそれぞれ、少なくとも20MPaの曲げ弾性率を有する、請求項18に記載の平坦折り畳み式フィルタ式フェースピースレスピレータ。

【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2012−512699(P2012−512699A)
【公表日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−542167(P2011−542167)
【出願日】平成21年11月9日(2009.11.9)
【国際出願番号】PCT/US2009/063691
【国際公開番号】WO2010/080201
【国際公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】