説明

マスク

【課題】マスクの着用時に不快感を感じ難く、マスク本体部と着用者の顔面の間から塵埃やウイルスが侵入することを防いで、マスク本来の防塵性能を発揮できるマスクの提供を目的とする。
【解決手段】
マスク本体部と通気性接顔体の各外周における接触部分が接合一体化しており、通気性接顔体がマスク本体部の内気側において、着用者の顔面に接触可能な態様で存在するため、マスク本体部と着用者の顔面の間から塵埃やウイルスが侵入することを防ぐことができるマスクである。また、帯電された通気性接顔体であることによって、マスクの着用時に不快感を感じ難くなるように、見掛け密度が小さいなど通気性に優れる通気性接顔体を用いた場合であっても、電気的な力により接顔体の厚さ方向から塵埃やウイルスが侵入することを防ぐことができるマスクである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着用者の顔面とマスク本体部との間に、接顔体を備えるマスクに関する。
【背景技術】
【0002】
マスクの着用時に、着用者の顔面とマスクとの間に隙間が生じると、隙間から外気側の塵埃やウイルスがマスクの内気側に侵入して、マスク本来の防塵性能が発揮されない。
【0003】
そのため、着用者の顔面とマスクとの間に隙間が生じないよう、特許文献1および特許文献2が開示するように、マスク本体部の外周に接顔体を設ける試みがなされている。
【0004】
特許文献1に係る使い捨てマスクを図1に図示する。前記使い捨てマスクは、接顔体として発泡プラスチックや不織布などの柔軟弾性材料によって形成された接顔パッド(4)を備えている。そのため、使い捨てマスクの着用時に、着用者の顔面と使い捨てマスクの間に接顔パッド(4)が介在することで、隙間の発生を防ぐことができる。
【0005】
しかし、特許文献1に係る発明において、通気性の無い発泡プラスチックや通気性に劣る見掛け密度の大きな不織布などから接顔パッド(4)を形成すると、マスクの着用時に蒸れて着用者が不快感を感じ易いことが問題であった。一方、マスクの着用時に不快感を感じ難いように、通気性に優れる見掛け密度が小さい不織布などから接顔パッド(4)を形成すると、外気側に存在する塵埃やウイルスが接顔パッド(4)の厚さ方向に侵入しやすくなることで、使い捨てマスクの防塵性能が低下してしまう。
【0006】
特許文献2に係るマスクを図2に図示する。前記マスクは、略半球状に形成されたフィルタ部(2)の外周に沿って接顔部(3)を外側に突出するように配設することで、フェイスフィット性やフィルタの捕集性能を向上している。また、接顔部(3)に帯電した不織布を用いることで、塵、ウイルス等の捕集性能が静電気の力で高まり、外気側に存在する塵埃がマスクの内気側へ侵入することを防止できることを開示している。
【0007】
一方、特許文献2に係るマスクにおいて、フィルタ部(2)の外周に沿って外側に突出するように接顔部(3)を配設しているため、フィルタ部の大きさに対して顔面が小さい場合など、顔面と接顔部(3)の外周とが完全に当接しない場合には、顔面とフィルタ部(2)の間に接顔部(3)が介在できずに隙間が発生してしまう。
【0008】
また、特許文献2に係るマスクにおいて、接顔部(3)と顔面との間に形成された隙間を通り、着用者の呼気中に含まれる体液やウイルスなどが、マスクの内気側から外気側に放出されることは、副次的な問題となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006-149739号公報(特許請求の範囲、0010、0028、図4など)
【特許文献2】実用新案登録第3158500号公報(実用新案登録請求の範囲、0005、0008、0011、0023、0029、0031、0037、図4など)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上述した従来技術が有する限界を超えるべくなされたものであり、マスクの着用時に不快感を感じ難く、マスク本体部と着用者の顔面の間から塵埃やウイルスが侵入することを防いで、マスク本来の防塵性能を発揮できるマスクの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に係る発明は、
「マスク本体部および帯電された通気性接顔体が主たる構成部材のマスクであり、前記マスク本体部と前記通気性接顔体の各外周における接触部分が接合一体化しており、前記通気性接顔体が前記マスク本体部の内気側において、着用者の顔面に接触可能な態様で存在することを特徴とする、マスク。」
である。
【0012】
請求項2に係る発明は、
「前記通気性接顔体が、伸縮性シートからなることを特徴とする、請求項1に記載のマスク。」
である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の請求項1に係るマスクが「前記マスク本体部と前記通気性接顔体の各外周における接触部分が接合一体化して」なることから、マスク本体部と通気性接顔体との接合一体化部分から塵埃やウイルスが侵入することを防ぐことができる。
そして、「前記通気性接顔体が前記マスク本体部の内気側において、着用者の顔面に接触可能な態様で存在することを特徴とする」ことから、着用者の顔面の大きさや形状に関わらず通気性接顔体が着用者の顔面と当接して、マスクと着用者の顔面の間から塵埃やウイルスが侵入することを防ぐことができる。
更に、前記接顔体が「帯電された通気性接顔体」であることによって、マスクの着用時に不快感を感じ難くなるように、見掛け密度が小さいなど通気性に優れる通気性接顔体を用いた場合であっても、電気的な力により接顔体の厚さ方向から塵埃やウイルスが侵入することを防ぐことができる。
そのため、マスクの着用時に不快感を感じ難く、マスク本体部と着用者の顔面の間から塵埃やウイルスが侵入することを防いで、マスク本来の防塵性能を発揮できるマスクである。
【0014】
そして、本発明の請求項2に係るマスクが「伸縮性シートからなる」帯電された通気性接顔体を備えていることから、帯電された通気性接顔体が着用者の顔面の形状に、追従し易くなるため、帯電された通気性接顔体と着用者の顔面とが密着して、マスクと着用者の顔面の間から塵埃やウイルスが侵入することを防いで、マスク本来の防塵性能を更に発揮できるマスクである。
【0015】
また、本発明に係るマスクは、マスク本体部と着用者の顔面の間を塵埃やウイルスが通過することを防ぐことができるため、着用者の呼気中に含まれる体液やウイルスなどが、マスクの内気側から外気側へ放出されるのを防ぐという効果を副次的に奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】特許文献1に係る使い捨てマスクを着用者側から見た、模式的背面図である。
【図2】特許文献2に係るマスクの、模式的断面図である。
【図3】本発明に係る通気性接顔体を着用者側から見た、模式的背面図である。
【図4】本発明に係るマスクを着用者側から見た、模式的背面図である。
【図5】本発明に係る別のマスクを着用者側から見た、模式的背面図である。
【図6】本発明に係る更に別のマスクを着用者側から見た、模式的背面図である。
【図7】着用者が本発明に係るマスクを着用し、紙面上左方向を向いた様子を示す、模式的側面図である。
【図8】図7のA-A’方向線における模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係るマスクについて、本発明に係る通気性接顔体を着用者側から見た、模式的背面図である図3、本発明に係るマスクを着用者側から見た、模式的背面図である図4〜図6、および着用者が本発明に係るマスクを着用し、紙面上左方向を向いた様子を示す、模式的側面図である図7、ならびに図7のA-A’方向線における模式的断面図である図8を用いて説明する。
【0018】
なお、本発明ではマスクヒモ(16)や、マスクヒモ(16)をマスク本体部(11)に一体化するための部材(図示せず)など、マスク(10)に一般的に付随する周知の部材を省略した態様もマスク(10)と称する。
【0019】
図3は、本発明に係る通気性接顔体を着用者側から見た、模式的背面図である。
【0020】
本発明に係る通気性接顔体(12)の外周(13)とは、通気性接顔体(12)を着用者側から見た際の、主面における輪郭部分をいう。通気性接顔体(12)が、例えば図3に図示した形状のように、略環帯形状を成す通気性接顔体(12)である場合、その外周(13)は略長円形状である。
【0021】
なお、ここでいう略環帯形状とは、通気性接顔体(12)の外周(13)が略長円形状や略円形状をなしていると共に、通気性接顔体(12)の中央部分に、略くの字型あるいは略楔型形状、略長円形状あるいは略半円形、略涙型形状、略多角形状(図3では、略五角形状)などの開口(14)を備えており、前記外周(13)と前記開口(14)との最短距離が一定の長さを有していることをいう。
【0022】
帯電された通気性接顔体(12)の態様が図3の略環帯形状である場合、略環帯形状を成す通気性接顔体(12)の外周(13)の全てが後述するようにマスク本体部(11)の外周(13’)全てと接合一体化できるが、図5〜図6で説明するように、帯電された通気性接顔体(12)が非略環帯形状であると共に開口(14)を有していない態様である場合、その外周はマスク本体部(11)の外周(13’)と接合一体化している外周(図5〜図6においては13a)と接合一体化していない外周(図5〜図6においては13b)からなる。
【0023】
図4〜図6は、本発明に係るマスク(10)を着用者(図4〜図6では図示せず)側から見た、模式的背面図である。
【0024】
本発明に係るマスク本体部(11)の外周(13’)とは、マスク本体部(11)を着用者側から見た際の、主面における輪郭部分をいう。本発明に係るマスク(10)は主として、マスク本体部(11)と帯電された通気性接顔体(12)からなり、前記マスク本体部(11)と前記帯電された通気性接顔体(12)の各外周(13、13’)における接触部分が接合一体化している。
【0025】
図4では略環帯形状を成す帯電された通気性接顔体(12)を備えたマスク(10)を図示しており、マスク本体部(11)と前記帯電された通気性接顔体(12)の各外周(13、13’)の全てが接触すると共に、断続することなく一続きとなる態様で接合一体化している。
【0026】
また、図5〜図6では非略環帯形状であると共に開口(14)を有していない略くの字型の通気性接顔体(12)を備えたマスク(10)を図示しており、マスク本体部(11)の外周(13’)と前記帯電された通気性接顔体(12)の外周(13)の一部(図5〜図6においては13a)が接触すると共に接合一体化している。
【0027】
本発明でいう「接合一体化している」とは、前記帯電された通気性接顔体(12)の外周(13)における少なくとも一部と、前記マスク本体部(11)の外周(13’)における少なくとも一部とが接触しており、その接触部分が後述する接着剤や繊維接着などにより接合されることで一体化している結果、通気抵抗が前記マスク本体部(11)及び前記接顔体(12)よりも高い態様を指す。そのため、接合一体化された各外周(13、13’)における、前記帯電された通気性接顔体(12)と前記マスク本体部(11)の間から塵埃やウイルスが侵入することを防ぐことができる。
【0028】
なお、接合一体化している態様として、前記帯電された通気性接顔体(12)と前記マスク本体部(11)の各外周(13、13’)における接触部分を、断続することなく一続きとなるように溶融一体化あるいは接着一体化している態様、エンボスパターン等の細かい間隔をなすように溶融一体化あるいは接着一体化している態様などを挙げることができる。
【0029】
図6では、非略環帯形状であると共に開口(14)を有していない略くの字型の通気性接顔体(12)を、2つ有するマスク(10)を図示しており、マスク本体部(11)の紙面上上部および紙面上下部と前記通気性接顔体(12)の各外周(13、13’)における接触部分が接合一体化している。前記帯電された通気性接顔体(12)を2つ以上の有してなるマスク(10)である場合には前記帯電された通気性接顔体(12)それぞれの各外周(13)の一部と前記マスク本体部(11)の外周(13’)との、接触部分の各々を接合一体化する。
【0030】
図7および図8では、着用者が本発明に係るマスク(10)を着用した様子を示している。
【0031】
図7は、着用者が本発明に係るマスク(10)を着用し、紙面上左方向を向いた様子を示す、模式的側面図である。そして図8は、図7のA-A’方向線における模式的断面図である。
【0032】
本発明に係るマスク(10)において、帯電された通気性接顔体(12)がマスク本体部(11)の後述する内気側(b)において、着用者の顔面(15)に接触可能な態様で存在しているため、着用者が本発明に係るマスク(10)を着用すると、口や鼻など着用者の顔面(15)の一部と帯電された通気性接顔体(12)が接触する。そのため、帯電された通気性接顔体(12)がマスク本体部(11)と着用者の顔面(15)との間に介在することで、マスク本体部(10)と着用者の顔面(15)の間に隙間が生じることを防ぐことができる。
【0033】
本発明でいう「着用者の顔面に接触可能な態様」とは、マスク着用者が本発明に係るマスク(10)を着用した際に、前記帯電された通気性接顔体(12)の少なくとも一部が着用者の顔面(15)と接触する態様を指す。
【0034】
図4では、略環帯形状を成す帯電された通気性接顔体(12)の紙面手前側における、外周(13)、開口(14)周縁、通気性接顔体(12)の外周(13)と開口(14)間、の全てが着用者の顔面(15)と接触する。また図5〜図6では、前記略くの字型の帯電された通気性接顔体(12)の紙面手前側における、マスク本体部(11)の外周(13’)と接合一体化している外周(13a)、マスク本体部(11)の外周(13’)と接合一体化していない外周(13b)、通気性接顔体(12)の前記外周(13a、13b)間、のいずれか一つ以上の部位における少なくとも一部が着用者の顔面(15)と接触する。
【0035】
このように、前記マスク本体部(11)と前記帯電された通気性接顔体(12)の各外周(13、13’)における接触部分が接合一体化しているため、前記マスク本体部(11)と前記帯電された通気性接顔体(12)との接触部分から塵埃やウイルスが侵入することがないため、マスク本来の防塵性能を発揮できる。
【0036】
図4に図示したように、本発明に係るマスク(10)が、略環帯形状を成す帯電された通気性接顔体(12)を備えると共に、略環帯形状を成す帯電された通気性接顔体(12)とマスク本体部(11)における各全外周(13、13’)との接触部分が接合一体化された態様であると、マスク着用時に口や鼻など着用者の顔面(15)の一部が、通気性接顔体(12)の開口(14)に挿入されて、口や鼻など着用者の顔面の一部が略環帯形状を成す通気性接顔体(12)で囲まれる態様となる。そして、略環帯形状を成す帯電された通気性接顔体(12)がマスク(10)と着用者の顔面(15)との間に広い面積で介在する態様となることで、略環帯形状を成す帯電された通気性接顔体(12)によってマスク(10)と着用者の顔面(15)の間に隙間が生じることを、更に防ぐことができる。
【0037】
本発明では、マスク(10)を着用者が着用した際に形成される、マスク本体部(11)と着用者の顔面(15)によって模式的に包囲された空間を内気側(b)と称し、それ以外の空間を外気側(a)と称する。
【0038】
マスク本体部(11)は主に、マスクの外気側(a)からマスクの内気側(b)に向かい外気を通過させ、外気側(a)の空気中に含まれる塵埃やウイルスを捕集することで、清浄な空気をマスクの内気側(b)に供給する働きを担う。
【0039】
また、マスク本体部(11)は、マスクの内気側(b)からマスクの外気側(a)に向かい、着用者の呼気を通過させ、着用者の呼気中に含まれる体液やウイルスなどを捕集することで、体液やウイルスなどがマスクの外気側(a)へ放出されるのを防ぐ働きも担う。
【0040】
本発明に係るマスク(10)は、上述のように、マスク本体部(11)と帯電された通気性接顔体(12)との接合一体化部分から塵埃やウイルスが侵入することを防ぐことができる。
【0041】
そして、着用者の顔面(15)の大きさや形状に関わらず帯電された通気性接顔体(12)がマスク本体部(11)の後述する内気側(b)において、着用者の顔面(15)へ接触可能な態様で存在しているため、マスク(10)と着用者の顔面(15)の間から塵埃やウイルスが侵入することを防ぐことができる。
【0042】
更に、マスク(10)の着用時に不快感を感じ難くなるように、見掛け密度が小さいなど通気性に優れる通気性接顔体(12)を用いた場合であっても、電気的な力により接顔体(12)の厚さ方向から塵埃やウイルスが侵入することを防ぐことができる。
【0043】
そのため、マスク(10)の着用時に不快感を感じ難く、マスク本体部(11)と着用者の顔面(15)の間から塵埃やウイルスが侵入することを防いで、マスク本来の防塵性能を発揮できるマスク(10)である。
【0044】
本発明に係るマスク(10)が、伸縮性シートからなる帯電された通気性接顔体(12)を備えていると、帯電された通気性接顔体(12)が着用者の顔面(15)の形状に、追従し易くなるため、帯電された通気性接顔体(12)と着用者の顔面(15)とが密着して、マスク(10)と着用者の顔面(15)の間から塵埃やウイルスが侵入することを防いで、マスク本来の防塵性能を更に発揮できるマスク(10)である。
【0045】
また、本発明に係るマスク(10)は、マスク本体部(11)と着用者の顔面(15)の間を塵埃やウイルスが通過することを防ぐことができるため、着用者の呼気中に含まれる体液やウイルスなどが、マスクの内気側(b)から外気側(a)へ放出されるのを防ぐという効果を副次的に奏することができる。
【0046】
以下、本発明に係るマスク(10)を構成する、帯電された通気性接顔体(12)およびマスク本体部(11)について、詳細に説明する。
【0047】
通気性接顔体(12)を構成する素材(以降、通気性接顔体用素材と称する)や加工方法や形状などは、帯電された通気性接顔体(12)を調製できるのであれば特に限定されるものではない。
【0048】
通気性接顔体用素材は、例えば、不織布や織物や編物などの布帛、通気性を備えるフィルム、通気性を備える発泡体などから、適宜選択して構成することができる。また、これらの通気性接顔体用素材は単体あるいは複数で通気性接顔体(12)として利用することができる。
【0049】
通気性接顔体(12)は、例えば、ポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、炭化水素の一部をシアノ基またはフッ素或いは塩素といったハロゲンで置換した構造のポリオレフィン系樹脂など)、スチレン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリエーテル系樹脂(ポリエーテルエーテルケトン、ポリアセタール、変性ポリフェニレンエーテル、芳香族ポリエーテルケトンなど)、ポリエステル系樹脂(ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリアリレート、全芳香族ポリエステル樹脂など)、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド系樹脂(例えば、芳香族ポリアミド樹脂、芳香族ポリエーテルアミド樹脂、ナイロン樹脂など)、二トリル基を有する樹脂(例えば、ポリアクリロニトリルなど)、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリスルホン系樹脂(ポリスルホン、ポリエーテルスルホンなど)、フッ素系樹脂(ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデンなど)、セルロース系樹脂、ポリベンゾイミダゾール樹脂、アクリル系樹脂(例えば、アクリル酸エステルあるいはメタクリル酸エステルなどを共重合したポリアクリロニトリル系樹脂、アクリロニトリルと塩化ビニルまたは塩化ビニリデンを共重合したモダアクリル系樹脂など)など、公知の有機ポリマーから構成されているのが好ましい。
【0050】
なお、これらの有機ポリマーは、直鎖状ポリマーまたは分岐状ポリマーのいずれからなるものでも構わず、またポリマーがブロック共重合体やランダム共重合体でも構わず、また有機ポリマーの立体構造や結晶性の有無がいかなるものでも、特に限定されるものではない。更には、多成分の有機ポリマーを混ぜ合わせたものでも良く、特に限定されるものではない。
【0051】
また、通気性接顔体(12)に機能性を付与するために、通気性接顔体(12)を構成する有機ポリマーに活性炭、抗菌剤、消臭剤、帯電補助剤などの添加剤を添加しても良い。
【0052】
布帛を構成する繊維は、例えば、溶融紡糸法、乾式紡糸法、湿式紡糸法、直接紡糸法(メルトブロー法、スパンボンド法、静電紡糸法など)、複合繊維から一種類以上の樹脂成分を除去することで繊維径が細い繊維を抽出する方法、繊維を叩解して分割された繊維を得る方法など公知の方法により得ることができる。
【0053】
布帛を構成する繊維は、一種類の有機ポリマーから構成されてなるものでも、複数種類の有機ポリマーから構成されてなるものでも構わない。複数種類の有機ポリマーから構成されてなる繊維として、一般的に複合繊維と称される、例えば、芯鞘型、海島型、サイドバイサイド型、オレンジ型、バイメタル型などの態様であることができる。
【0054】
更に、前記布帛が、例えば伸縮性を示す有機ポリマーからなる繊維、又は熱などにより捲縮を発現した潜在捲縮性繊維、あるいは機械的にクリンプ処理などが施された繊維などを含んだ伸縮性シートからなると、柔軟で着用時に着用者の顔面(15)の形状に追従し易い通気性接顔体(12)を調製できるため、好ましい。
【0055】
そのため、前記伸縮性シートの質量における、伸縮性を示す有機ポリマーからなる繊維、又は熱などにより捲縮を発現した潜在捲縮性繊維、あるいは機械的にクリンプ処理などが施された繊維などの占める質量比率は30質量%以上であるのが好ましく、60質量%以上であるのがより好ましく、90質量%以上であるのが最も好ましい。特に、前記質量比率が100質量%であると、柔軟で着用時に着用者の顔面(15)の形状に、更に追従し易い帯電された通気性接顔体(12)を調製できる布帛を得られるため、好ましい。
【0056】
この時、前記伸縮性シートからなる帯電された通気性接顔体(12)が伸縮性を有していることで柔軟で着用時に着用者の顔面(15)の形状に追従し易いように、その「20%伸長時伸長回復率」がタテ方向、ヨコ方向共に50%以上であるのが好ましく、55%以上であるのがより好ましく、60%以上であるのが最も好ましい。
【0057】
なお、本発明において帯電された通気性接顔体(12)が「伸縮性を有している」とは、帯電された通気性接顔体(12)の「20%伸長時伸長回復率」がタテ方向ならびにヨコ方向ともに40%よりも高いことを意味する。この「20%伸長時伸長回復率」の算出方法は、後述する実施例で説明する。
【0058】
また、前記布帛に加熱処理を施して繊維同士を溶融一体化させても良い。また、加圧処理を施して、布帛の厚さ、通気度などを調整しても良い。更に、布帛にバインダの付与処理を施して、布帛を構成する繊維同士を接着一体化しても良い。
【0059】
前記不織布として、例えば、カード装置やエアレイ装置などに供することで繊維を絡み合わせて不織布の態様とする乾式不織布、繊維を溶媒に分散させシート状に抄き不織布の態様とする湿式不織布、直接法(メルトブロー法、スパンボンド法、静電紡糸法、紡糸原液と気体流を平行に吐出して紡糸する方法(例えば、特開2009-287138号公報に開示の方法)など)を用いて繊維の紡糸を行うと共にこれを捕集してなる不織布などが挙げられる。また、このようにして調製される不織布における繊維の絡合の程度を調整するため、不織布をニードルパンチ装置や水流絡合装置に供することができる。
【0060】
特に、水流絡合装置に供すると、柔軟で着用時に着用者の顔面(15)の形状に追従し易い通気性接顔体(12)を調製可能な不織布が得られると共に、水流を作用させて繊維同士を絡み合わせる際に、繊維に付着した帯電効果を阻害する添加剤(繊維油剤、分散剤、界面活性剤など)が水流により除去されて、後述するように帯電量に優れる通気性接顔体(12)を調製可能な不織布が得られるため、好ましい。
【0061】
通気性接顔体用素材を帯電させる手段として、例えば、プラズマ帯電処理やコロナ帯電などイオンを注入して帯電させる手段、極性液体を介して力を作用させて帯電させる手段、複数種類の繊維成分を摩擦して帯電させる手段など、公知の手段を適宜選択して、又は組み合わせて利用することができる。
【0062】
プラズマ帯電処理やコロナ帯電などイオンを注入して帯電させる手段を利用する場合、通気性接顔体(12)が、体積固有抵抗値が1014Ω・cm以上の有機ポリマーから構成されていると、帯電量のより多い通気性接顔体(12)を得ることができるため好ましい。
【0063】
体積固有抵抗値が1014Ω・cm以上の有機ポリマーとして、例えば、ポリオレフィン系樹脂(例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリメチルペンテン系樹脂、ポリスチレン系樹脂など)、ポリ四フッ化エチレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリウレタンなどを挙げることができる。
【0064】
なお、本発明における「体積固有抵抗値」は、JIS K 6911に定められている「熱硬化性プラスチック一般試験方法」に準じた測定により得られる値をいう。
【0065】
極性液体を介して力を作用させることで帯電させる手段を利用する場合、通気性接顔体(12)が、体積固有抵抗値が1014Ω・cm以上の有機ポリマーから構成されていると、帯電量のより多い通気性接顔体(12)を得ることができるため好ましい。
【0066】
更に、極性液体を介して力を作用させることで帯電させる手段を利用する際に、通気性接顔体(12)の帯電量を多くできるように、前記有機ポリマーにヒンダードアミン系化合物、脂肪族金属塩(例えば、ステアリン酸のマグネシウム塩、ステアリン酸のアルミニウム塩など)、不飽和カルボン酸変性高分子のうちから選ばれた1種または2種以上の化合物を、添加剤として添加することができる。これら一連の添加剤の中でもヒンダードアミン系化合物を添加するのが好ましい。
【0067】
このようなヒンダードアミン系化合物の具体例として、ポリ[{(6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)イミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル){(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}}、コハク酸ジメチル−1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン重縮合物、2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)などを挙げることができる。
【0068】
有機ポリマーに対する、これらの添加剤の添加量は特に限定されるものではないが、有機ポリマーの質量に対して、0.01〜5質量%の質量で添加されていることが望ましい。前記添加剤の添加量が0.01質量%未満では、通気性接顔体(12)の帯電効果が小さくなる傾向にあるためで、0.05質量%以上の添加量とするのが好ましい。
【0069】
また、当該添加量が5質量%を超えた場合、通気性接顔体(12)の強度が劣る傾向にある。そのため、より好ましくは当該添加量を4質量%以下とする。
【0070】
本発明において、極性液体を介して力を作用させることで帯電させる方法とは、通気性接顔体用素材に極性液体を付与すると同時に、又は付与した後に、極性液体を介して通気性接顔体用素材に力を作用させて帯電させる方法をいう。
【0071】
極性液体を通気性接顔体用素材に付与する手段として、例えば、スプレー、シャワー、ノズルなどを用いて極性液体を霧状、液滴状、液流状などの態様として付与する手段や、例えば、含浸装置(例えば、Rodney Hunt社のサチュレーター)を用いて極性液体に通気性接顔体用素材を浸漬することで付与する手段などが挙げられる。極性液体を通気性接顔体用素材に付与する手段は、帯電された通気性接顔体(12)を得られるのであれば限定されるものではなく、適宜選択するのが好ましい。
【0072】
極性液体として、例えば水、アルコール、アセトン、またこれらの水溶液、アンモニアが溶解した水などの、電気伝導率が低い液体を用いるのが好ましい。ここに云う電気伝導率とはJIS K 0101「工業用水試験方法」により測定されるものをいう。特に、極性液体として水を用いると、通気性接顔体用素材を帯電させる際の作業環境に優れること、並びに、帯電された通気性接顔体(12)を調製する最終段階での乾燥に際して、引火又は発火を回避し得る点から、より好ましい。
【0073】
また、液体帯電過程において使用される極性液体の温度は、通気性接顔体用素材を帯電できるのであれば、限定されるものではないが、40℃以下であることが好ましい。
【0074】
次いで、このようにして極性液体を介して力を作用させた通気性接顔体用素材は、極性液体を除くために乾燥処理へ供される。
【0075】
乾燥処理に使用する装置は、例えば、キャンドライヤやカレンダなどの加熱ローラ、熱風ドライヤ、熱風乾燥機、電気炉、ヒートプレートなど、公知の装置を挙げられる。乾燥処理における温度は、好ましくは120℃以下、より好ましくは105℃以下、さらに好ましくは90℃以下である。
【0076】
あるいは、上述の乾燥装置を使用することなく自然乾燥する、または、超音波や振動を作用させて極性液体を除くなど、通気性接顔体用素材が熱を受け難い乾燥処理を行っても良い。
【0077】
複数種類の繊維成分を摩擦して帯電させる手段を利用する場合、体積固有抵抗値が1014Ω・cm以上のポリオレフィン系樹脂成分からなる繊維とアクリル系樹脂成分からなる繊維を摩擦して布帛を帯電させると、布帛の帯電量を多くして帯電量のより多い通気性接顔体(12)を得ることができるため好ましい。
【0078】
そして、布帛の帯電量を多くできるように、ポリオレフィン系樹脂成分からなる繊維として、ポリオレフィン系樹脂の一部をシアノ基やハロゲンで置換した樹脂からなる、ポリオレフィン系繊維を用いるのが好ましい。更に、布帛の帯電量を多くできるように、ポリオレフィン系樹脂成分からなる繊維として、リン系酸化防止剤及び/又はイオウ系酸化防止剤が含むポリオレフィン系繊維を用いるのが好ましい。このとき、布帛の帯電量を多くできるように、ポリオレフィン系繊維にのみリン系酸化防止剤及び/又はイオウ系酸化防止剤を含むのが、より好ましい。
【0079】
布帛を構成する繊維に繊維油剤など帯電効果を阻害する添加剤が多量に付着していると、布帛の帯電が効果的になされず帯電量の多い通気性接顔体(12)を得ることが困難になる。そのため、繊維を例えば温水やアルコールなどで洗浄して、帯電効果を阻害する添加剤の添加割合が、繊維質量に対して0.2質量%以下、好ましくは0.15質量%以下である状態として、複数種類の繊維成分を摩擦して帯電させるのが望ましい。
【0080】
複数種類の繊維成分を摩擦して帯電させる手段は、繊維同士を互いに摩擦して帯電させることができるのであれば、その手段は限定されるものではない。
【0081】
不織布を帯電させる手段として、複数種類の繊維成分を摩擦して帯電させる手段を利用する場合、フラットカードやローラーカードに代表されるカード装置の他、ガーネット装置或いはエアレイ法に属する装置を用いると、繊維同士が互いに摩擦しやすいため好ましい。また、最終的に得られる通気性接顔体(12)の強度を高めると共に帯電量の向上を図るために、ニードルパンチ装置に供してなる不織布であるのが好適である。
【0082】
通気性接顔体用素材に補強材を積層してから帯電しても良い。補強材を備えていることで形態安定性に優れる通気性接顔体用素材から、帯電された通気性接顔体(12)を調製することができる。
【0083】
補強材として、通気性接顔体(12)の帯電能力を低下させにくい補強材を使用することが望ましい。例えば、スパンボンド不織布は帯電特性を劣化させる界面活性剤等の付着量が少ないことから、補強材として好適に使用可能である。
【0084】
帯電された通気性接顔体(12)の見掛け密度は、通気性が優れるように250kg/m3以下であるのが好ましく、200kg/m3以下であるのがより好ましく150kg/m3以下であるのが最も好ましい。また、マスクの外気側(a)に存在する塵埃やウイルス、及び/又は、着用者の呼気中に含まれる体液やウイルスなどの通過を防ぐことができるように、10kg/m3以上であるのが好ましく、30kg/m3以上であるのがより好ましく、50kg/m3以上であるのが最も好ましい。
【0085】
なお、この「見掛け密度」は帯電された通気性接顔体(12)の、1m3あたりの質量を算出した値である。
【0086】
また、帯電された通気性接顔体(12)の通気度は、通気性に優れるように、10cm3/cm2・s以上であるのが好ましく、20cm3/cm2・s以上であるのがより好ましく、30cm3/cm2・s以上であるのが最も好ましい。通気度の上限は、マスクの外気側(a)に存在する塵埃やウイルス、及び/又は、着用者の呼気中に含まれる体液やウイルスなどの通過を防ぎやすいように、200cm3/cm2・s以下であるのが好ましく、150cm3/cm2・s以下であるのがより好ましく、100cm3/cm2・s以下であるのが最も好ましい。
【0087】
なお、この「通気度」はJIS L1096に記載されている「通気性」A法(フラジール形法)の測定方法に準拠して測定した値である。
【0088】
帯電された通気性接顔体(12)の外周(13)の形状は、後述するようにマスク本体部(11)の外周(13’)と接合一体化できると共に、着用者の顔面(15)に接触可能な態様をなす限り限定されるものはなく、略多角形、略くの字型あるいは略楔型形状、略長円形状や略円形状あるいは略半円形状、略多角形状などになるよう、適宜調整されるのが好ましい。
【0089】
略環帯形状の帯電された通気性接顔体(12)である場合、帯電された通気性接顔体(12)における外周(13)の形状や開口(14)の形状は、マスク(10)と着用者の顔面(15)の間から塵埃やウイルスが侵入することを防ぐことができ、本来の防塵性能を発揮できるマスク(10)となるように、適宜調整されるのが好ましい。
【0090】
特に、帯電された通気性接顔体(12)における開口(14)と外周(13)との最短距離が10mm以上の略環帯形状であると、着用者の顔面(15)との間に隙間が生じることを更に防ぐことができ好ましい。また、前記最短距離の上限は限定するものではないが、帯電された通気性接顔体(12)が着用者の口や鼻を塞ぐことなく囲む態様をなすように、適宜調整する。
【0091】
通気性接顔体用素材から帯電された通気性接顔体(12)を調製する手段としては、公知の手段を採用することができる。例えば、通気性接顔体用素材を切り抜く、打ち抜くなどして、カップ形状マスクや二つ折りマスクなどの形状に加工されたマスク本体部(11)と接合一体化できる形状にできる。
【0092】
マスク本体部(11)を構成する素材(以降、マスク本体部用素材と称する)や加工方法や形状などは、塵埃やウイルスなどを捕集できるのであれば、特に限定されるものではない。マスク本体部(11)は、例えば、不織布や織物や編物などの布帛、通気性を備えるフィルム、通気性を備える発泡体などから、適宜選択して構成することができる。また、これらのマスク本体部用素材は単体あるいは複数でマスク本体部(11)として利用することができる。
【0093】
マスク本体部(11)は、前述の通気性接顔体(12)と同様の有機ポリマーから構成することができる。
【0094】
また、帯電されたマスク本体部(11)であると、マスク(10)の塵埃やウイルスなどの捕集能力を向上できるため好ましい。
【0095】
マスク本体部用素材として、例えば、乾式不織布、湿式不織布、直接法(メルトブロー法、スパンボンド法、静電紡糸法、紡糸原液と気体流を平行に吐出して紡糸する方法(例えば、特開2009-287138号公報に開示の方法)など)を用いて繊維の紡糸を行うと共にこれを捕集してなる不織布、などの不織布を採用することができる。
【0096】
特に、直接法を用いてなる不織布を採用すると、帯電効果を阻害する添加剤(繊維油剤、分散剤、界面活性剤など)を使用しない、あるいは使用量を少なくできるため、帯電量に優れるマスク本体部(11)を調製可能な不織布が得られるため、好ましい。
【0097】
マスク本体部用素材に補強材を積層してから帯電しても良い。補強材を備えていることで形態安定性に優れるマスク本体部用素材から、帯電されたマスク本体部(11)を調製することができる。
【0098】
補強材として、マスク本体部(11)の帯電能力を低下させにくい補強材を使用することが望ましい。例えば、スパンボンド不織布は帯電特性を劣化させる界面活性剤等の付着量が少ないことから、補強材として好適に使用可能である。
【0099】
マスク本体部(11)を調製する手段としては、公知の手段を採用することができる。例えば、マスク本体部用素材を切り抜く、打ち抜くなどして二つ折りマスクを調製できる。あるいは成型してカップ形状にできる。
【0100】
また、着用者の呼気中に含まれる体液やウイルスなどを、マスク本体部(11)あるいは帯電された接顔体(12)で捕集する必要の無い場合には、排気が楽に行えるようマスク本体部(11)に、内気側(b)から外気側(a)に移動する呼気を選択的に通過させることのできる排気弁(図示せず)を設けてもよい。
【0101】
マスク本体部(11)と帯電された通気性接顔体(12)の各外周(13、13’)における接触部分を接合一体化して、マスク(10)を調製する手段として、接着剤や繊維接着などの接合一体化手段を用いることができる。
【0102】
繊維接着による接合一体化は繊維の熱融着によって行っても良いが、熱が加わることで最終的に得られるマスク(10)の帯電性能が失われる恐れがあるため、繊維接着を行う場合には、超音波融着などマスク本体部(11)と帯電された通気性接顔体(12)が加熱され難い繊維接着手段を用いるのが好ましい。
【0103】
また、接合一体化する手段としては、成型したマスク本体部(11)と帯電された通気性接顔体(12)の双方を積層した後に各外周(13、13’)における接触部分を接合一体化する、あるいは通気性接顔体用素材とマスク本体部用素材を積層した後に同時に切り抜く、打ち抜く、あるいは成型すると共に、各外周(13、13’)における接触部分を接合一体化しても良い。
【0104】
なお、マスク本体部(11)に設ける帯電された通気性接顔体(12)の総数や位置は、マスク(10)と着用者の顔面(15)の間から塵埃やウイルスが侵入することを防ぐことができるのであれば、限定されるものではない。
【0105】
マスク本体部(11)の外周(13’)において、着用者の鼻に近い部位や、着用者の頬や顎に近い部位などに、帯電された通気性接顔体(12)が設けられていると、マスク(10)と着用者の顔面(15)の間から塵埃やウイルスが侵入することを、より防ぐことができる。
【0106】
着用者の顔面(15)にマスク(10)を保持するため使用されるマスクヒモ(16)や、マスクヒモ(16)をマスク本体部(11)に一体化するための部材(図示せず)など、マスク(10)に一般的に付随する周知の部材を一体化する方法は、特に限定されるものではない。
【0107】
また、本発明に係るマスク(10)は、プリーツ加工が施されたマスク本体部(11)から構成されてなるマスク(10)であっても良い。マスク本体部(11)にプリーツ加工を施す方法として、周知の技術を使用することができ、特に限定されるものではない。
【実施例】
【0108】
以下、本発明の理解を容易とするため特定の数値条件などを例示して説明するが、本発明はこれら特定条件にのみ限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内で設計の変更及び変形を行うことができる。
【0109】
なお、実施例および比較例に係る、帯電された通気性接顔体、帯電されていない通気性接顔体、帯電されていない非通気性接顔体、各接顔体のタテ方向およびヨコ方向における「20%伸長時伸長回復率」は、以下に説明する方法で算出し評価した。
調製した、実施例および比較例に係る各接顔体をなす素材から、その生産方向における長さが150mmかつ生産方向と直行する方向における長さが50mmの試料と、生産方向における長さが50mmかつ生産方向と直行する方向における長さが150mmの試料の、2種類の試料を採取した。
次いで、各試料をテンシロン型引張試験機(つかみ間隔100mm、引張速度200mm/min)に供することで、各試料の長辺方向における「20%伸長時伸長回復率」を算出した。
つまり、つかみ間隔が120mmとなるまで前記試料を引き伸ばした後、同速度でつかみ間隔を100mmに戻す途中、前記試料の長辺方向における応力が0になった際の、前記試料の長辺方向における長さ(L1)を次の式に代入することで、前記試料の長辺方向における「20%伸長時伸長回復率」を算出した。
【0110】
【数1】


そして、前記実施例および比較例に係る各接顔体をなす素材における生産方向の「20%伸長時伸長回復率」を、前記実施例および比較例に係る各接顔体のタテ方向における「20%伸長時伸長回復率」として評価し、生産方向と直行する方向の「20%伸長時伸長回復率」を前記実施例および比較例に係る各接顔体のヨコ方向における「20%伸長時伸長回復率」として評価した。
なお、前記試料をつかみ間隔が120mmとなるまで引き伸ばしている途中で、前記試料に破断が生じた場合、破断が生じた試料の「20%伸張時伸張回復率」は0%と評価した。
【0111】
Aマスク本体部の調製方法
(i)まず、体積固有抵抗値が1016程度(Ω・cm)である市販のポリプロピレン樹脂を用い、メルトブロー法を用いて紡糸を行い、メルトブロー不織布(目付:50g/m、平均繊維径:6μm)を調製した。
得られたメルトブロー不織布を、極性液体として電気伝導度が3.2(μS/cm)、温度が20±5℃の範囲に保たれた純水(蒸留、イオン交換を経た二次蒸留水に相当)が保持された浴槽内に搬送し、純水を付与した後、周波数20kHzの超音波を作用させた。次いで、超音波を作用させたメルトブロー不織布を、コンベヤ式ドライヤーを用いて105℃で乾燥し、液体帯電処理したメルトブロー不織布(目付:50g/m、平均繊維径:6μm)を調製した。
【0112】
次いで、体積固有抵抗値が1016程度(Ω・cm)である市販のポリプロピレン繊維(繊度:2.2dtex、繊維長:51mm)と、アクリル系繊維(繊度:2.2dtex、繊維長:51mm)を、60℃の温水で洗浄し、繊維に付着した繊維油剤の量を繊維質量に対して0.1%以下になるように調整した後、混合比が(ポリオレフィン系繊維:アクリル系繊維)=(40質量%:60質量%)となるように均一に混ぜ合わせて、乾燥させた。
この混ぜ合わせた繊維をカード装置によって繊維ウェブとすると共に摩擦帯電させ、この繊維ウェブをポリプロピレンスパンボンド不織布(目付:15g/m)に積層した後、繊維ウェブ側からニードルパンチ処理を行い、摩擦帯電処理したニードルパンチ複合不織布(目付:160g/m)を調製した。
【0113】
カバー層として目付20g/m2のポリプロピレンスパンボンド不織布を用意した。
【0114】
用意した各不織布を、上層から下層に向かいスパンボンド不織布-メルトブロー不織布-ポリプロピレンスパンボンド不織布を下層側に備えた態様のニードルパンチ複合不織布-ポリプロピレンスパンボンド不織布を上層側に備えた態様のニードルパンチ複合不織布-メルトブロー不織布-スパンボンド不織布の順で、計6枚の不織布を積層してなる積層不織布を形成した。

この積層不織布をサインカーブ形状に超音波溶断して、一つだけ凸形を有する略半円形状に溶断すると共に、溶断部において各不織布層間を融着一体化した。
次いで、積層不織布の融着一体化してなる融着線が中心となるように、略半円形状の積層不織布の直線部分を左右に展開することで、上層から下層に向かいスパンボンド不織布-メルトブロー不織布-ポリプロピレンスパンボンド不織布を下層側に備えた態様のニードルパンチ複合不織布の順で積層され、不織布同士が前記融着線で融着一体化した、計3枚の不織布が積層した態様をなすカップ形状のフィルタ層を調製した。
【0115】
(ii)以下の組成の繊維を混合してカード装置に供することで、目付が40g/m2の第1補強ウェブを作製した。
・ポリエチレン/ポリプロピレン芯鞘型複合繊維(繊度:6.6dtex、繊維長:102mm):70質量%
・ポリエチレンテレフタレート/ポリエチレンテレフタレートコポリマーサイドバイサイド型複合繊維(繊度:2.2dtex、繊維長:51mm):25質量%
・エチレン-エチレン酢酸ビニル共重合体/ポリプロピレン芯鞘型複合繊維(繊度:3.3dtex、繊維長:64mm):5質量%

次いで、以下の組成の繊維を混合してカード装置に供することで、目付が40g/m2の第2補強ウェブを作製した。
・ポリエチレン/ポリプロピレン芯鞘型複合繊維(繊度:20dtex、繊維長:102mm):30質量%
・ポリエチレン/ポリプロピレン芯鞘型複合繊維(繊度:6.6dtex、繊維長:102mm):65質量%
・エチレン-エチレン酢酸ビニル共重合体/ポリプロピレン芯鞘型複合繊維(繊度:3.3dtex、繊維長:64mm):5質量%

そして、第1補強ウェブと第2補強ウェブを積層し、第1補強ウェブ側からニードルパンチ処理を行うことで、ニードルパンチ積層不織布(目付80g/m2)を調製した。
このようにして調製されたニードルパンチ積層不織布をオーブンに入れ、145℃で5分間、加熱処理を行い、その後オーブンより取り出し、直ちにマスクの成形型を用いて5秒間のプレス成型を行うことで、カップ形状の補強材を得た。
【0116】
(iii)上述のようにして調製された、カップ形状のフィルタ層とカップ形状の補強材を、カップ形状の突出側にフィルタ層が存在するように積層した後、超音波溶着によりフィルタ層と補強材双方の全外周を互いに一体化することで、カップ形状のマスク本体部を調製した。
【0117】
B水流絡合不織布の調製方法
(B-1)ポリエチレン/ポリプロピレン芯鞘型複合繊維(繊度:3.3dtex、繊維長:64mm)をカード装置に供することで、目付10g/m2の繊維ウェブを調製した。
次いで、ポリエチレン/ポリプロピレン芯鞘型複合繊維(繊度:3.3dtex、繊維長:64mm)20質量%とポリプロピレン繊維(繊度:2.2dtex、繊維長:51mm)80質量%を混合して、カード装置に供することで、目付40g/m2の繊維ウェブを調製した。
このようにして調製された2層の繊維ウェブを積層し、水流絡合処理に供することで互いの繊維を絡み合わせ、その後、乾燥することで、非伸縮性水流絡合不織布(目付:50g/m2、見掛け密度:90kg/m3)を調製した。
【0118】
(B-2)潜在捲縮性を有する、エチレンプロピレンコポリマー/ポリプロピレンサイドバイサイド型複合繊維(繊度:2.2dtex、繊維長:44mm)をカード装置に供した後、水流絡合処理に供することで互いの繊維を絡み合わせ、その後、乾燥させ、熱風ドライヤーを用いてサイドバイサイド型複合繊維に捲縮を発現させることで、伸縮性水流絡合不織布(目付:95g/m2、見掛け密度:110kg/m3)を調製した。
【0119】
(B-3)潜在捲縮性を有する、ポリエチレンテレフタラート/ポリエチレンテレフタラートコポリマーサイドバイサイド型複合繊維(繊度:2.2dtex、繊維長:51mm)を用いたこと以外は、(B-2)項と同様にして、伸縮性水流絡合不織布(目付:70g/m2、見掛け密度:110kg/m3)を調製した。
【0120】
(実施例1)
(B-1)項で調製した非伸縮性水流絡合不織布を2層積層して、コロナ放電処理(15kv)を行った後、開口と外周との最短距離が10mmであり、図3に図示した略環帯形状となるように打ち抜くことで、帯電された通気性接顔体を調製した。なお、使用した帯電された通気性接顔体における「20%伸長時回復率」は、タテ方向(0%)、ヨコ方向(54%)であった。
次いで、帯電された通気性接顔体における全外周に、上述のようにして調製されたカップ形状のマスク本体部における全外周を接触させ、接触部分を超音波により融着させ接合一体化すると共に、マスクヒモをマスク本体部に超音波融着によって一体化させ、マスクを調製した。
【0121】
(実施例2)
(B-2)項で調製した伸縮性水流絡合不織布を1層使用したこと以外は、(実施例1)と同様にして、マスクを調製した。なお、使用した帯電された通気性接顔体における「20%伸長時回復率」は、タテ方向(66%)、ヨコ方向(65%)であった。
【0122】
(実施例3)
(B-2)項で調製した伸縮性水流絡合不織布を2層積層したこと以外は、(実施例1)と同様にして、マスクを調製した。なお、使用した帯電された通気性接顔体における「20%伸長時回復率」は、タテ方向(67%)、ヨコ方向(64%)であった。
【0123】
(比較例1)
通気性接顔体を設けることなく、A項で得られたカップ形状のマスク本体部に、(実施例1)と同様にしてマスクヒモをマスク本体部に超音波融着によって一体化させマスクを調製した。
【0124】
(比較例2)
コロナ放電処理(15kv)を行わず、帯電していない通気性接顔体を調製したこと以外は(実施例2)と同様にして、マスクを調製した。なお、使用した帯電していない通気性接顔体における「20%伸長時回復率」は、タテ方向(66%)、ヨコ方向(65%)であった。
【0125】
(比較例3)
(B-3)項で調製した伸縮性水流絡合不織布と、通気性を有していない市販の熱可塑性ポリウレタンフィルム(厚さ:50μm)とを積層し、熱プレスにより積層面の全てを一体化した後、コロナ放電処理(15kv)を行わず(実施例1)と同様の形状に打ち抜くことで、帯電していない非通気性接顔体を調製した。なお、使用した帯電していない接顔体における「20%伸長時回復率」は、タテ方向(90%)、ヨコ方向(90%)であった。
次いで、非通気性接顔体の伸縮性水流絡合不織布側を着用者の顔面側に配置して、帯電していない非通気性接顔体における全外周に、上述のようにして調製したカップ形状のマスク本体部における全外周を接触させ、接触部分を超音波により融着させ接合一体化すると共に、(実施例1)と同様にしてマスクヒモをマスク本体部に超音波融着によって一体化させマスクを調製した。
【0126】
以上のようにして得られた、実施例および比較例のマスクを、次の測定に供することで評価した。
【0127】
(マスクの漏れ率の測定方法)
防じんマスクの規格第7条3項の二「漏れ率の測定方法」に基づき、実施例および比較例のマスクにおける漏れ率を測定した。
つまり、塩化ナトリウムエアロゾルの数量中位径が約0.5μmで、かつ濃度が10±2mg/m3である、塩化ナトリウムエアロゾル含有空気中(マスク外気側)において、被験者にマスクを装着させて、毎分10回の呼吸を3分間行わせ、マスク内気側の塩化ナトリウム濃度を測定すると共に塩化ナトリウムエアロゾル含有空気中の塩化ナトリウム濃度を測定し、次の式によって漏れ率を算出した。
【0128】
【数2】


なお、漏れ率の値が低いほど、マスク内気側へ塩化ナトリウムエアロゾルが侵入するのを、防ぐことのできるマスクである。
【0129】
(マスクを着用した際の評価方法)
着用者に、各実施例および比較例のマスクを各2時間着用させ、マスクの着用時の蒸れによる不快感の有無を判断した。
つまり、マスクの着用時による不快感が無い場合には○と評価し、不快感が有る場合には×と評価した。
【0130】
実施例および比較例のマスクの測定結果を、表1にまとめた。
【0131】
【表1】

【0132】
実施例と比較例の測定結果を比較することで、以下のことが判明した。
・実施例と比較例1を比較した結果、実施例のマスクは接顔体を備えているため、漏れ率の低いマスクであることが判明した。
・実施例2と比較例2を比較した結果、実施例2のマスクは帯電された通気性接顔体を備えているため、漏れ率がより低いマスクであることが判明した。
・実施例1および実施例3と比較例3とを比較した結果、実施例1および実施例3のマスクは、通気性に優れてマスクの着用時の蒸れによる不快感が無いと共に、漏れ率が比較例3以下の低さのマスクであることが判明した。
【0133】
また、実施例同士の測定結果を比較することで、以下のことが判明した。
・実施例3と実施例1を比較した結果、実施例3のマスクは伸縮性シートを備えてなる通気性接顔体であるため、漏れ率が実施例1よりも低いマスクであることが判明した。
【産業上の利用可能性】
【0134】
本発明に係るマスクは、マスクの着用時に不快感を感じ難く、マスク本体部と着用者の顔面の間から塵埃やウイルスが侵入することを防いで、マスク本来の防塵性能を発揮できるマスクである。
【符号の説明】
【0135】
2・・・フィルタ部
3・・・接顔部
4・・・接顔パッド
10・・・マスク
11・・・マスク本体部
12・・・通気性接顔体
13・・・通気性接顔体の外周
13a・・・マスク本体部の外周と接合一体化している外周
13b・・・マスク本体部の外周と接合一体化していない外周
13’・・・マスク本体部の外周
14・・・開口
15・・・着用者の顔面
16・・・マスクヒモ
a・・・マスクの外気側
b・・・マスクの内気側

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マスク本体部および帯電された通気性接顔体が主たる構成部材のマスクであり、前記マスク本体部と前記通気性接顔体の各外周における接触部分が接合一体化しており、前記通気性接顔体が前記マスク本体部の内気側において、着用者の顔面に接触可能な態様で存在することを特徴とする、マスク。
【請求項2】
前記通気性接顔体が、伸縮性シートからなることを特徴とする、請求項1に記載のマスク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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