マスク
【課題】目頭や鼻部や耳等の花粉症などのアレルギー性疾患の予防や症状緩和に優れた効果を発揮するマスクを提供する。
【解決手段】一対の本体シート3からなるマスク本体部1と耳かけ部2とを有するマスク10。マスク本体部1は、鼻部61と口部62とを覆う本体部主部1Aと、本体部主部1Aから上方に突出して鼻部61上部を覆う凸状部分1cとを有する。前方側縁部3aは接合部5で内面どうしが重ね合わされて互いに接合されている。接合部5の上端5aは、目頭63aどうしを結ぶ線L1から鼻部61の上端61bまでの高さ範囲に位置する。本体シート3の上端部3fを含む部分は、互いに接合されていない非接合部17とされている。非接合部17は、少なくとも一部が線L1より高い位置にあり、側方に開いた形態となって目頭63aまたはその近傍を覆うように顔面60aに面密着的に接する。
【解決手段】一対の本体シート3からなるマスク本体部1と耳かけ部2とを有するマスク10。マスク本体部1は、鼻部61と口部62とを覆う本体部主部1Aと、本体部主部1Aから上方に突出して鼻部61上部を覆う凸状部分1cとを有する。前方側縁部3aは接合部5で内面どうしが重ね合わされて互いに接合されている。接合部5の上端5aは、目頭63aどうしを結ぶ線L1から鼻部61の上端61bまでの高さ範囲に位置する。本体シート3の上端部3fを含む部分は、互いに接合されていない非接合部17とされている。非接合部17は、少なくとも一部が線L1より高い位置にあり、側方に開いた形態となって目頭63aまたはその近傍を覆うように顔面60aに面密着的に接する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鼻部の少なくとも一部と口部を覆うように顔に装着されるマスクに関する。
【背景技術】
【0002】
花粉症などのアレルギー性疾患を予防することなどを目的として、鼻部および口部を覆うマスクが使用されている。マスクには、微粒子(例えばアレルギー性疾患の原因となる花粉、ハウスダストなど)等を捕捉する性能が求められる。
近年では、顔面の形状に応じた立体形状を有するマスクが注目されている。
図18は、従来のマスクの一例を示すもので、このマスク110は、鼻部および口部を覆うマスク本体部101と、マスク本体部101の両側部にそれぞれ設けられた耳かけ部102とを備えている。
マスク本体部101は、前方側縁部103aどうしが接合された一対の本体シート103からなる。本体シート103の前方側縁部103aは略円弧状に湾曲した形状であり、全長にわたって互いに接合されている。
耳かけ部102が使用者の耳に掛けられることによって、マスク110は使用者の顔面に装着される。本体シート103の前方側縁部103aが湾曲した形状となっているため、マスク本体部101は顔面の形状に応じた立体形状となり、顔面の広い範囲を覆う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−273726号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
花粉症は、目の痒さや鼻水等が主な症状である。目の痒さについては、特に微小部分である目頭に顕著に表れやすい。
上記マスク110では、微粒子(花粉等)の侵入を阻止することによるアレルギー性疾患の予防や症状緩和の効果は限られており、特に痒みが顕著に表れる目頭等のアレルギー性疾患への十分な対策となっていなかった。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、目頭や鼻部や耳等の花粉症などアレルギー性疾患の予防や症状緩和に優れた効果を発揮するマスクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、一方の側縁部どうしが接合された一対の本体シートからなるマスク本体部と、前記マスク本体部の両側部にそれぞれ設けられた耳かけ部とを備え、前記マスク本体部は、使用者の鼻部の少なくとも一部と口部とを覆う本体部主部と、前記本体部主部から上方に突出して鼻部上部を覆う凸状部分とを有し、前記一対の本体シートの前記一方の側縁部は、長さ方向に沿って内面どうしが重ね合わされて少なくとも一部が互いに接合され、この接合部の上端は、前記凸状部分にあって装着時に使用者の目頭どうしを結ぶ線から前記使用者の鼻部上端までの高さ範囲に位置し、前記本体シートの前記側縁部の上端部を含む部分は、互いに接合されていない非接合部とされ、前記非接合部は、少なくとも一部が装着時に前記使用者の目頭どうしを結ぶ線より高い位置にあり、側方に開いた形態となって前記使用者の目頭またはその近傍(人によって異なり、複雑に起伏する領域)を覆うように前記使用者の顔面に面密着的に接するマスクを提供する。
前記非接合部における前記一対の本体シートは、前記装着時に、一方側の端縁を残して開いた形態となる構成としてよい。
前記非接合部における前記一対の本体シートは、前記装着時に、互いに離間して開いた形態となる構成としてもよい。
本発明のマスクは、前記本体シートの前記重ね合わされた部分の上端部が切り欠かれることによって前記非接合部が形成されている構成としてよい。
前記本体シートは、複数のシート体の積層体からなる構成としてよい。
本発明のマスクは、前記一対の本体シートの前記一方の側縁部は、長さ方向に沿って内面どうしが重ね合わされて複数の接合部で互いに接合され、前記複数の接合部は、1または複数の中間非接合部によって前記側縁部の長さ方向に隔てられ、前記中間非接合部は、前記マスク本体部内の使用者の呼気を外部に排出可能であり、かつ吸気を流入抑制する構成としよい。
前記本体シートは、遠赤外線放射素材、金属箔、鉄粉含有発熱材料、血行促進剤、マイナスイオン発生素材、磁石、吸湿発熱素材、および蓄熱シートからなる群から選択された1または2以上を含むものであってよい。
前記耳かけ部は、耳かけ穴より上部側の上辺部と、前記耳かけ穴より下部側の下辺部とを有し、前記上辺部の張力は前記下辺部の張力より大きい構成としてよい。
前記本体シートには、これを構成する繊維表面に所定量の正電荷または負電荷を与えて分極させた誘電状態を形成するエレクトレット処理を施してよい。
前記耳かけ部の外面側には、使用者の耳を覆う耳カバーが設けられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、本体シートの側縁部の上端部を含む部分が互いに接合されていないため、装着時には、この非接合部で本体シートが開いた形態となり、大きな接触面積で目頭から鼻部の上部にかけての領域(人によって異なり、複雑に起伏する領域)に面密着的に当接し、保温効果を高め、目頭や鼻部等の花粉症などのアレルギー性疾患の予防および症状緩和を図ることができる。
また、本体シートの顔面に対する接触面積が大きくなるため、顔面に加えられる押圧力は分散される。さらに、開いた形態で顔面に接する非接合部の曲げ弾性によって、接合部の上端が顔面に加える力が緩和される。よって、使用者の不快感を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の第1実施形態に係るマスクの斜視図である。
【図2】前図に示すマスクの要部拡大図である。
【図3】図1のマスクの折りたたんだ状態の側面図である。
【図4】図1のマスクを使用者の顔に装着した状態を示す斜視図である。
【図5】図1のマスクの断面図である。
【図6】図1のマスクの端部非接合部の断面図である。
【図7】前図に示す端部非接合部の動作を示す断面図である。
【図8】図1のマスクを使用者の顔に装着した状態を示す要部拡大図である。
【図9】従来のマスクの一例を使用者の顔に装着した状態を示す要部拡大図である。
【図10】人体頭部の構造を示す断面図である。
【図11】本体シートの他の例を用いたマスクの要部断面図である。
【図12】本発明の第2実施形態に係るマスクの要部を拡大した斜視図である。
【図13】本発明の第3実施形態に係るマスクの折りたたんだ状態の側面図である。
【図14】前図に示すマスクを使用者の顔に装着した状態を示す斜視図である。
【図15】本発明の第4実施形態に係るマスクの斜視図である。
【図16】本発明の第5実施形態に係るマスクの斜視図である。
【図17】涙器を模式的に示す図である。
【図18】従来のマスクの一例の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係るマスク10の斜視図である。図2はマスク10の要部拡大図である。図3は、マスク10の折りたたんだ状態の側面図である。図4は、マスク10を使用者の顔に装着した状態を示す斜視図である。図5は、マスク10の断面図である。図6は、マスク10の端部非接合部17の断面図である。図7は、端部非接合部の動作を示す断面図である。図8はマスク10を使用者60の顔に装着した状態を示す要部拡大図である。
以下の説明において、図3における左方を前方といい、右方を後方ということがある。マスク10の前後方向は顔に装着した際に使用者から見た前後方向に対応している。
【0009】
図1〜図6に示すように、マスク10は、マスク本体部1と、マスク本体部1の両側部にそれぞれ設けられた耳かけ部2とを備えている。
マスク本体部1としては、ポリオレフィン系材料やポリエステル系材料からなる合成繊維を用いた不織布を使用できる。ポリオレフィン系材料としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ1−ブテンなどがあり、ポリエステル系材料としてはポリエチレンテレフタレートなどがある。マスク本体部1の材料としては、熱可塑性樹脂を使用することもできる。
不織布を構成する繊維は単繊維であってもよいし、複合芯鞘繊維であってもよい。複合芯鞘繊維としては、ポリエステル−ポリエチレン芯鞘繊維、ポリプロピレン−ポリエチレン芯鞘繊維等を使用できる。
【0010】
マスク本体部1は、前方側縁部3a(一方の側縁部)どうしが接合された一対の本体シート3、3からなる。
図3に示すように、本体シート3は、略円弧状に湾曲した前方側縁部3aと、後方に向け下降する上縁部3dと、後方に向け上昇する略直線状の下縁部3eと、略直線状の後方側縁部3b(他方の側縁部)とを有する。本体シート3は、前方側縁部3aから後方に向かって徐々に高さ寸法を減じる形状である。
前方側縁部3aは前方に向けて凸状となるように湾曲した形状である。後方側縁部3bの長さ(図3の上下方向の寸法)は前方側縁部3aに比べて短くされている。
【0011】
図3〜図6に示すように、一対の本体シート3、3の前方側縁部3a、3aは、長さ方向に沿って内面3c、3cが重ね合わされて接合部5で互いに接合されている。
図1〜図3および図6に示すように、前方側縁部3a、3aの重なり部分4は、前方側縁部3aの全長にわたる略一定幅の帯状領域であり、図示例では本体シート3の前縁3g(一方側の端縁)から一定幅の領域である。
図3および図6に示すように、接合部5は本体シート3の内面3c、3cを互いに接合する部分であり、前方側縁部3aの長さ方向に沿って延在している。
【0012】
接合部5における本体シート3どうしの接合には、本体シート3の素材として熱可塑性樹脂が用いられている場合には熱溶着を採用できる。また、ポリビニルアルコール系などの接着剤によって本体シート3どうしを接合することもできる。
接合部5は、重なり部分4の全幅にわたって本体シート3を互いに接合することもできるし、本体シート3の幅方向の一部を互いに接合することもできる。図示例では、接合部5は本体シート3の前縁3gから間隔をおいて形成されている。
図4〜図6に示すように、本体シート3の前方側縁部3aは、使用者60が装着した状態では前方に突出した形態となる。
【0013】
図4に示すように、マスク本体部1は、使用者60の鼻部61の少なくとも一部と口部62とを覆うことができるように形成するのが好ましい。
マスク本体部1の後方側縁部3bの上端から下端までの高さ範囲の部分を本体部主部1Aという。本体部主部1Aは、使用者60の鼻部61の少なくとも一部と口部62とを覆うことができる。
マスク本体部1の上部の凸状部分1c(本体シート3の後方側縁部3bの上端より高い位置にある部分。すなわち本体部主部1Aから上方に突出した部分)は、目頭63aから鼻部61の上部にかけての複雑形状領域61a(人によって異なり、複雑に起伏する領域)を面密着的に覆う目頭保温部として機能する。凸状部分1cは、鼻部61の上部を覆う鼻部保温部としても機能する。
図示例では、接合部5の上端5aは本体部主部1Aから突出する凸状部分1cにあって、鼻部61の上端61bに係止しており、これによってマスク本体部1はずり落ちずに顔面60aに保持される。符号1aはマスク本体部1の上端(重なり部分4を除いた部分のマスク本体部1の上端)である。符号63は目である。鼻部61の上端61bは、側方から見て凹所の最深部となる部位である。
接合部5の上端5aは、装着時に使用者60の目頭63aどうしを結ぶ線L1から使用者60の鼻部61の上端61bまでの高さ範囲に位置している。
マスク本体部1の下部の凸状部分1d(本体シート3の後方側縁部3bの下端より低い位置にある部分)は、本体部主部1Aから下方に突出した部分である。マスク本体部1の下端1b(重なり部分4を除いた部分のマスク本体部1の下端)は本体部主部1Aから突出する凸状部分1dにあって使用者60のあご64に達するように形成することができる。
【0014】
本体シート3の前方側縁部3aの上端部3f(重なり部分4の上端部)を含む部分は、互いに接合されていない。この非接合部分を端部非接合部17という。端部非接合部17では本体シート3、3は重ね合わされているが、互いに接合されていない。
端部非接合部17は、装着時に使用者60の目頭63aどうしを結ぶ線L1より高い位置にある。端部非接合部17は、少なくとも一部が線L1より高い位置にあればよい。すなわち、端部非接合部17の全部が線L1より高い位置にあってもよいし、端部非接合部17の一部が線L1より高い位置にあってもよい。
【0015】
図3および図6に示すように、端部非接合部17は、前方側縁部3aの上端から前方側縁部3aの長さ方向にわたる非接合部分であり、その長さL2は例えば5〜7mmとすることができる。端部非接合部17では、本体シート3、3は重ね合わされているが互いに接合されていないため、力が加えられると姿勢が容易に変化する。
このため、図7に示すように、本体シート3、3に互いに離れる方向(図7の左右方向)の力が加えられると、本体シート3の曲げ弾性により、前方側縁部3aの姿勢は折り曲げ角度が小さくなるよう変化する。例えば、図6に示す状態では、前方側縁部3aは他の部分に対してほぼ垂直に折り曲げられているが、図7に示す状態ではその折り曲げ角度が小さくなっている。
これによって、端部非接合部17では、前方側縁部3a、3aは、前縁3g、3gのみが互いに接し、他の部分は互いに離間した姿勢をとることができる。すなわち、前方側縁部3a、3aは、前縁3g、3gを残して開いた形態となる。
【0016】
図7および図8に示すように、使用者60の顔に装着されたマスク10の本体シート3は、端部非接合部17で前縁3g、3gを残して側方に開いた形態となり、使用者60の顔面60a、例えば目頭63aから鼻部61の上部にかけての複雑形状領域61a(人によって異なり、複雑に起伏する領域)に面密着的に接する。端部非接合部17は、少なくとも目頭63aおよびその近傍領域を面密着的に覆う。
端部非接合部17は、顔面60aに沿って広がった状態で複雑形状領域61aに面密着的に当接するため、大きな接触面積で複雑形状領域61aに接し、この複雑形状領域61aにおける保温効果を高め、特に目頭や鼻部上部等の花粉症などのアレルギー性疾患の予防および症状緩和を図ることができる。特に、端部非接合部17が目頭63aおよびその近傍領域を面密着的に覆い、この領域を保温することによって、特に目頭や鼻部上部等のアレルギー性疾患(痒みや鼻水等)を効果的に予防および症状緩和することができる。
【0017】
図17は、涙器の構造を示す模式図である。涙は涙腺201から分泌され、花粉やダスト等を伴って眼球210の表面を流れ、目頭63aに近い涙小管202、涙嚢203、鼻涙管204等の涙道を経て、鼻腔に鼻水として排出される。花粉症が発症すると、鼻粘膜が炎症を起こし、特に目頭63aの痒さが顕著となるとともに浮腫を生じ、涙小管202が塞がれ、涙の流れが阻害される。涙の流れが阻害されると、花粉やダスト等は鼻腔に排出されなくなるため目63内に長時間滞留し、アレルゲンとなる成分が涙に溶出して目の粘膜を刺激して炎症を起こし、結膜炎等による目の痒みや涙目(多量の涙が目にたまる)の原因となる。
図1等に示すマスク10は、端部非接合部17により目頭63aから鼻部61の上部にかけての複雑形状領域61a(人によって異なり、複雑に起伏する領域)を面密着的に覆って保温することで、涙小管202を中心として涙嚢203や鼻涙管204等の涙道を保温する効果を高め、特に涙小管202の炎症や浮腫等を抑制し、閉塞を解消し、涙の流通を可能とする。涙の流通が可能となれば、花粉やダスト等に含まれるアレルゲン成分は、溶出する前に涙小管202、涙嚢203、鼻涙管204等の涙道を経て鼻腔に鼻水として排出される。このため、結膜炎や涙目等の花粉症の症状を抑制できる。
【0018】
マスク10では、前方側縁部3aの顔面60aに対する接触面積が大きくなるため、顔面60aに加えられる押圧力は分散されることから、使用者60の不快感を抑えることができる。
また、図8に示すように、開いた形態で顔面60aに接する端部非接合部17の曲げ弾性によって、本体シート3には顔面60aから離れる方向の力が作用する。このため、接合部5の上端5aが顔面60aに加える力が緩和される。よって、図9に示すように、接合部25が前方側縁部3aの上端にまで達する従来品に比較して、接合部5が顔面60aに当たることによる使用者60の不快感を抑制できる。
【0019】
図1、図3および図4に示すように、耳かけ部2は、マスク本体部1の本体シート3の後方側縁部3bから後方に延出して形成されている。耳かけ部2には、使用者60の耳65に引っ掛けられる耳かけ穴7が形成されている。P1は耳かけ部2の上辺部であり、耳かけ穴7より上部側の部分を含む。P2は耳かけ部2の下辺部であり、耳かけ穴7より下部側の部分を含む。
【0020】
耳かけ部2は、ポリオレフィン系材料やポリエステル系材料からなる合成繊維を用いた不織布を使用できる。耳かけ部2はマスク本体部1に比べて伸縮性が高いことが好ましい。例えば、弾性的に伸縮可能な繊維を使用した不織布を用いることができる。
上辺部P1の張力は、下辺部P2の張力より大きいことが好ましい。これによって、マスク本体部1がずり落ちるのを防ぎ、マスク本体部1を、接合部5の上端5aが鼻部61の上端61bに係止した位置に安定に保持できる。また、上辺部P1の張力を下辺部P2の張力より大きくすることで、マスク10の装着により耳65にかかる負担を軽減できる。
なお、耳かけ部2はマスク本体部1の一部としてマスク本体部1に一体的に形成されていてもよい。
【0021】
図1〜図3に示すように、本体シート3の後方側縁部3bの内面は、長さ方向に沿って耳かけ部2の前縁部2aの外面に重ね合わされており、この帯状の重なり部分8において本体シート3と耳かけ部2は互いに接合されている。本体シート3と耳かけ部2との接合には、熱溶着や接着剤を用いることができる。
【0022】
図4に示すように、マスク10は、マスク本体部1が使用者60の鼻部61の少なくとも一部と口部62とを覆うように装着することができる。
図示例では、マスク本体部1の目頭保温部1c(鼻部保温部)が目頭63aから鼻部61の上部にかけての複雑形状領域61a(人によって異なり、複雑に起伏する領域)を面密着的に覆い、マスク本体部1の接合部5の上端5aは、本体部主部1Aから突出して鼻部61の上端61bに達している。マスク本体部1の下端1b(前方側縁部3aの下端)は本体部主部1Aから突出して使用者60のあご64に達している。目頭保温部1cは目頭63aどうしを結ぶ線L1より高い位置に達している。具体的には、マスク本体部1の上端1aは線L1より高い位置にある。なお、ここでいう高さ方向とは、図4の上方であり、線L1より高い位置とは、この図において線L1よりも上に位置していることを意味する。
【0023】
図10は、人体頭部の構造を示す断面図である。この図において、正中線Yの左右に存在する空洞部が鼻腔Mである。
この鼻腔Mの両側に、それぞれ鼻腔Mと連通して、眼腔近辺に達する篩骨洞S1と、頬骨近辺に達する上顎洞S2とが副鼻腔である。
図4に示す装着状態にあっては、マスク本体部1によって鼻部61の大部分が覆われるため、鼻腔Mと副鼻腔(篩骨洞S1および上顎洞S2)との双方が保温されることになる。
特に、開いた形態となった端部非接合部17が、目頭63aから鼻部61の上部にかけての複雑形状領域61a(人によって異なり、複雑に起伏する領域)に大きな接触面積で面密着的に当接し、この複雑形状領域61aに面密着的に接触することにより保温効果を高め、特に目頭や鼻部等の花粉症などのアレルギー性疾患の予防および症状緩和を図ることができる。
【0024】
マスク10では、本体シート3の上端部3fを含む部分である端部非接合部17は、装着時には開いた形態となり、目頭63aから鼻部61の上部にかけての複雑形状領域61a(人によって異なり、複雑に起伏する領域)に大きな接触面積で面密着的に当接し、これにより保温効果を高め、特に目頭や鼻部等の花粉症などのアレルギー性疾患の予防および症状緩和を図ることができる。
また、本体シート3(前方側縁部3a)の顔面60aに対する接触面積が大きくなるため、顔面60aに加えられる押圧力は分散される。さらに、開いた形態で顔面60aに接する端部非接合部17の曲げ弾性によって、接合部5の上端5aが顔面に加える力が緩和される。よって、接合部5が顔面60aに当たることによる使用者60の不快感を抑制できる。
また、図17に示すように、端部非接合部17の変形が容易であるため、端部非接合部17から上縁部3dに沿って後方側縁部3bに向けて延在する帯状の上縁領域19も変形が容易であり姿勢変化が起こりやすくなる。このため、上縁領域19は顔面60aに沿う姿勢となって顔面60aに面密着的に当接し、当接部分の保温効果を高めることができる。
【0025】
本発明のマスクに用いる本体シートは1枚のシート体から構成してもよいし、複数枚のシート体から構成してもよい。
図11は、本体シートの他の例を示すもので、ここに示す本体シート3は、3枚のシート体13aからなる積層構造体である。シート体13aとしては、ポリオレフィン系材料やポリエステル系材料からなる合成繊維を用いた不織布を使用できる。
シート体13aには、エレクトレット化(エレクトレット処理)を施すことができる。エレクトレット化は、繊維表面に所定量の正電荷または負電荷を与えて分極させた誘電状態を形成する処理である。エレクトレット化処理には、既知の方法、例えばコロナ放電によりシート体13aを荷電させる方法を採用できる。
【0026】
<第2実施形態>
図1〜図4等に示すマスク10では、端部非接合部17はほとんど互いに離間していないが、図12に示すように、端部非接合部17の一部が互いに離間する構成も可能である。
端部非接合部17は、目頭63aから鼻部61の上部にかけての複雑形状領域61a(人によって異なり、複雑に起伏する領域)に大きな接触面積で面密着的に当接し、この複雑形状領域61aにおける保温効果を高めることによって、特に目頭や鼻部等の花粉症などのアレルギー性疾患の予防および症状緩和を図ることができる。特に、端部非接合部17が目頭63aおよびその近傍領域を覆い、この領域を保温することによって、アレルギー性疾患を効果的に予防および症状緩和することができる。
【0027】
<第3実施形態>
図13は、本発明の第3実施形態に係るマスク20の折りたたんだ状態の側面図である。図14は、マスク20を使用者の顔に装着した状態を示す斜視図である。
マスク20は、本体シート3の前方側縁部3aの上端部3f(重なり部分4の上端部)に切欠き部18が形成されることによって、本体シート3の上端部3hを含む部分が互いに非接合(端部非接合部18A)となっていること以外は図1〜図4等に示す第1実施形態のマスク10と同じ構成である。
図13に示すように、切欠き部18は、前方側縁部3aの上端から前方側縁部3aの長さ方向にわたる切り欠き部分であり、その長さL3は例えば5〜7mmとすることができる。切欠き部18の幅は、重なり部分4と同じ幅とすることができる。
切欠き部18の内縁18a(側縁部)は、前方側縁部3aに沿う方向に形成されており、切欠き部18が形成された部分における本体シート3の前方側縁部といえる。
この前方側縁部18aを含む部分である本体シート3の端部非接合部18Aは、上方に凸状となっており、マスク20を装着したときには、一対の本体シート3、3の端部非接合部18A、18Aは互いに離間した形態となる。
【0028】
図14に示すように、マスク20では、本体シート3の上端部3hを含む部分(端部非接合部18A、18A)が互いに非接合となっているため、装着時には端部非接合部18A、18Aが側方に開いた形態となり、目頭63aから鼻部61の上部にかけての複雑形状領域61a(人によって異なり、複雑に起伏する領域)に大きな接触面積で面密着的に当接し、この複雑形状領域61aに大きな接触面積で接して保温効果を高めることができる。
従って、特に目頭や鼻に症状が現れる花粉症などのアレルギー性疾患の予防および症状緩和を図ることができる。特に、端部非接合部18A、18Aが目頭63aおよびその近傍領域を覆い、この領域を保温することによって、目頭や鼻部等のアレルギー性疾患を効果的に予防および症状緩和することができる。
【0029】
<第4実施形態>
図15は、本発明の第4実施形態に係るマスク30を使用者の顔に装着した状態を示す斜視図である。
マスク30では、本体シート3、3の前方側縁部3a、3aが、複数の接合部35(一方側の接合部)で互いに接合されている。これら複数の接合部35は、1または複数の中間非接合部36(一方側の非接合部)によって、前方側縁部3aの長さ方向に互いに隔てられている。図示例では、接合部35は、前方側縁部3aの全長にわたって断続的に形成された略一定幅の部分である。接合部35の上端35aは鼻部61の上端61bに係止可能である。
【0030】
中間非接合部36は、隣り合う接合部35、35の間にあって本体シート3、3が互いに接合されていない部分である。
中間非接合部36では本体シート3、3は重ね合わされているが、互いに接合されていない。このため、中間非接合部36では本体シート3、3の隙間は通気可能であり、この隙間を通してマスク本体部1の内部空間の気体を外部に排出することができる。また、後述のように、吸気の際には外気流入を抑制できる。
【0031】
本体シート3の後方側縁部3bの内面は、長さ方向に沿って耳かけ部2の前縁部2aの外面に重ね合わされており、この帯状の重なり部分8において本体シート3と耳かけ部2は複数の後方接合部45(他方側の接合部)で互いに接合されている。
これら複数の後方接合部45は、1または複数の後方非接合部46(他方側の非接合部)によって後方側縁部3bの長さ方向に隔てられて形成されている。
【0032】
使用者60の呼気によってマスク本体部1の内部空間の気圧が高まると、呼気の一部は本体シート3の前方側縁部3aの中間非接合部36における隙間を通して外部に排出される。呼気の他の一部は、本体シート3の後方側縁部3bと耳かけ部2の前縁部2aとの重なり部分8の後方非接合部46における隙間から外部に排出される。
このため、呼気が内部空間内に充満することがなく、内部空間内の酸素濃度低下を改善することができる。よって、使用者60の健康阻害を低減できる。
【0033】
呼気が中間非接合部36における隙間から排出される際には、気流による気圧低下によって本体シート3、3が互いに離隔しにくくなる。本体シート3は繊維からなる構造体であるため、内面3c(図7参照)は微視的には平滑面ではなく凹凸を有することから、呼気中の微粒子(体液飛沫など)は非接合部36の内面3cに吸着され、外部への放出が抑えられる。
呼気が後方非接合部46における隙間から排出される際にも、呼気中の微粒子(体液飛沫など)は非接合部46の内面3cと耳かけ部2外面に吸着され、外部への放出が抑えられる。
中間非接合部36および後方非接合部46は十分な幅があるため、呼気中の微粒子を効果的に吸着し、外部への放出を抑制できる。
【0034】
吸気の際には、内部空間の気圧低下により中間非接合部36の本体シート3、3の前方側縁部3a、3aは閉じ合わされ、隙間から内部空間への外気流入は起こらない。
同様に、本体シート3の後方側縁部3bと耳かけ部2の前縁部2aとの重なり部分8においても、後方非接合部46において本体シート3と耳かけ部2とは閉じ合わされ、隙間から内部空間への外気流入は起こらない。
このため、吸気として内部空間に導入される外気の大部分は本体シート3を透過する。この際、外気中の微粒子(花粉など)は本体シート3に捕捉されるため、捕捉性能の低下はない。
従って、マスク30では、捕捉性能を低下させることなく、内部空間内に呼気が充満することによる酸素濃度低下を改善し、使用者60の健康阻害を低減できる。
【0035】
<第5実施形態>
図16は、本発明の第5実施形態に係るマスク40を使用者の顔に装着した状態を示す要部拡大図である。
マスク40は、耳かけ部2の外面側に、耳65を覆う耳カバー41が設けられていること以外は図1〜図3等に示す第1実施形態のマスク10と同じ構成である。
耳カバー41は、耳かけ部2とほぼ同じ外形を有する不織布等を使用できる。耳カバー41の使用により、耳65(例えば耳介および外耳道)の保温や外気中の微粒子の除去が可能となる。
従って、特に耳介および外耳道などの保温効果を高めるとともに外気中の微粒子を除去し、耳のアレルギー性疾患の予防および症状緩和を図ることができる。
【0036】
本発明のマスクは、本体シートが、遠赤外線放射素材、金属箔、鉄粉含有発熱材料、血行促進剤、マイナスイオン発生素材、磁石、吸湿発熱素材、および蓄熱シートからなる群から選択された1または2以上を含む構成としてもよい。例えば本体シートを構成する少なくとも1つのシート体が、前記材料(遠赤外線放射素材、金属箔、鉄粉含有発熱材料、血行促進剤、マイナスイオン発生素材、磁石、吸湿発熱素材、および蓄熱シートから選択された1または2以上)を含む構成とすることができる。
【0037】
遠赤外線放射素材とは、人体または外部から放射される熱を受けて遠赤外線に転化できる材料であって、例えばAl2O3、SiO2、TiO2、Cr2O3、ZrO2、MgO、Fe2O3などの金属酸化物;SiC、TiC、ZrC、B4Cなどの炭素化合物;Si3N4、BN、AlNなどの窒化物;またはそれらの2以上の複合体などのいわゆる遠赤外線放射性セラミクスが使用可能である。遠赤外線放射素材の使用によって、保温効果を高めることができる。
金属箔としてはアルミニウム箔などがあり、本体シートを構成する不織布に積層して使用できる。金属箔の使用によって保温効果を高めることができる。
【0038】
鉄粉含有発熱材料は、鉄粉が空気中の酸素および水分と反応する際の反応熱を利用するものであって、例えば、鉄粉と、食塩と、必要に応じて酸化触媒とを含む。鉄粉含有発熱材料は、袋に封入してシート状に構成したものを加温体として使用できる。加温体は、使用時に密封容器から取り出すことによって空気中の酸素と反応して発熱し、マスク本体部内を加温することができる。
血行促進剤としては、例えばサルチル酸メチル、カンファ、メントール類、各種香油類、ヒノキ油、ヒバ油、トウガラシチンキなどが使用できる。血行促進剤を使用すると、揮発性成分が皮膚に浸透して皮下の毛細血管の血行を促進することができる。
マイナスイオン発生素材としては、例えばトルマリン粉末、電気分解アルカリイオン水を使用できる。
磁石は、磁力を皮下の毛細血管に作用させて血行を促進することができる。
【0039】
吸湿発熱素材は、水分を吸収することにより発熱する機能を備えたものであって、例えばアクリレート系材料、セルロース系材料などがある。吸湿発熱素材は、例えば顔面から発汗される汗を吸収することにより発熱する。
蓄熱シートとしては、CMC、PVA、アクリル酸ポリマー等のゲル状の蓄熱剤を袋に封入してシート状に構成したものを使用できる。蓄熱シートは、電子レンジ等により加温できる。蓄熱シートの使用によって保温効果を高めることができる。
【0040】
これらの材料(遠赤外線放射素材、金属箔、鉄粉含有発熱材料、血行促進剤、マイナスイオン発生素材、磁石、吸湿発熱素材、および蓄熱シートから選択された1または2以上)は、本体シートの一部または全部に積層、含浸等することで使用できる。前記材料の使用位置(例えば加温体の取り付け位置)は特に限定されないが、特に、目頭保温部1c(鼻部保温部)に使用するのが好ましい。前記材料の使用方法(例えば加温体の取り付け方法)は特に限定されず、いかなる方法であってもよい。
前記材料の使用による加温、保温、血行促進などによって、特に目頭や鼻部等の花粉症などのアレルギー性疾患の予防および症状緩和を図ることができる。
【符号の説明】
【0041】
1・・・マスク本体部、1c・・・凸状部分、1A・・・本体部主部、2・・・耳かけ部、3・・・本体シート、3a・・・本体シートの前方側縁部(一方の側縁部)、3c・・・本体シートの内面、3f・・・本体シートの前方側縁部の上端部、3g・・・前縁(一方側の端縁)、3h・・・本体シートの上端部、4・・・本体シートの前方側縁部の重なり部分、5・・・接合部、5a・・・上端、10、20、30、40・・・マスク、13a・・・シート体、17・・・端部非接合部、18・・・切欠き部、35・・・接合部、36・・・中間非接合部、7・・・耳かけ穴、60・・・使用者、60a・・・顔面、61・・・鼻部、61b・・・鼻部の上端、62・・・口部、L1・・・目頭63aどうしを結ぶ線、P1・・・上辺部、P2・・・下辺部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、鼻部の少なくとも一部と口部を覆うように顔に装着されるマスクに関する。
【背景技術】
【0002】
花粉症などのアレルギー性疾患を予防することなどを目的として、鼻部および口部を覆うマスクが使用されている。マスクには、微粒子(例えばアレルギー性疾患の原因となる花粉、ハウスダストなど)等を捕捉する性能が求められる。
近年では、顔面の形状に応じた立体形状を有するマスクが注目されている。
図18は、従来のマスクの一例を示すもので、このマスク110は、鼻部および口部を覆うマスク本体部101と、マスク本体部101の両側部にそれぞれ設けられた耳かけ部102とを備えている。
マスク本体部101は、前方側縁部103aどうしが接合された一対の本体シート103からなる。本体シート103の前方側縁部103aは略円弧状に湾曲した形状であり、全長にわたって互いに接合されている。
耳かけ部102が使用者の耳に掛けられることによって、マスク110は使用者の顔面に装着される。本体シート103の前方側縁部103aが湾曲した形状となっているため、マスク本体部101は顔面の形状に応じた立体形状となり、顔面の広い範囲を覆う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−273726号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
花粉症は、目の痒さや鼻水等が主な症状である。目の痒さについては、特に微小部分である目頭に顕著に表れやすい。
上記マスク110では、微粒子(花粉等)の侵入を阻止することによるアレルギー性疾患の予防や症状緩和の効果は限られており、特に痒みが顕著に表れる目頭等のアレルギー性疾患への十分な対策となっていなかった。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、目頭や鼻部や耳等の花粉症などアレルギー性疾患の予防や症状緩和に優れた効果を発揮するマスクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、一方の側縁部どうしが接合された一対の本体シートからなるマスク本体部と、前記マスク本体部の両側部にそれぞれ設けられた耳かけ部とを備え、前記マスク本体部は、使用者の鼻部の少なくとも一部と口部とを覆う本体部主部と、前記本体部主部から上方に突出して鼻部上部を覆う凸状部分とを有し、前記一対の本体シートの前記一方の側縁部は、長さ方向に沿って内面どうしが重ね合わされて少なくとも一部が互いに接合され、この接合部の上端は、前記凸状部分にあって装着時に使用者の目頭どうしを結ぶ線から前記使用者の鼻部上端までの高さ範囲に位置し、前記本体シートの前記側縁部の上端部を含む部分は、互いに接合されていない非接合部とされ、前記非接合部は、少なくとも一部が装着時に前記使用者の目頭どうしを結ぶ線より高い位置にあり、側方に開いた形態となって前記使用者の目頭またはその近傍(人によって異なり、複雑に起伏する領域)を覆うように前記使用者の顔面に面密着的に接するマスクを提供する。
前記非接合部における前記一対の本体シートは、前記装着時に、一方側の端縁を残して開いた形態となる構成としてよい。
前記非接合部における前記一対の本体シートは、前記装着時に、互いに離間して開いた形態となる構成としてもよい。
本発明のマスクは、前記本体シートの前記重ね合わされた部分の上端部が切り欠かれることによって前記非接合部が形成されている構成としてよい。
前記本体シートは、複数のシート体の積層体からなる構成としてよい。
本発明のマスクは、前記一対の本体シートの前記一方の側縁部は、長さ方向に沿って内面どうしが重ね合わされて複数の接合部で互いに接合され、前記複数の接合部は、1または複数の中間非接合部によって前記側縁部の長さ方向に隔てられ、前記中間非接合部は、前記マスク本体部内の使用者の呼気を外部に排出可能であり、かつ吸気を流入抑制する構成としよい。
前記本体シートは、遠赤外線放射素材、金属箔、鉄粉含有発熱材料、血行促進剤、マイナスイオン発生素材、磁石、吸湿発熱素材、および蓄熱シートからなる群から選択された1または2以上を含むものであってよい。
前記耳かけ部は、耳かけ穴より上部側の上辺部と、前記耳かけ穴より下部側の下辺部とを有し、前記上辺部の張力は前記下辺部の張力より大きい構成としてよい。
前記本体シートには、これを構成する繊維表面に所定量の正電荷または負電荷を与えて分極させた誘電状態を形成するエレクトレット処理を施してよい。
前記耳かけ部の外面側には、使用者の耳を覆う耳カバーが設けられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、本体シートの側縁部の上端部を含む部分が互いに接合されていないため、装着時には、この非接合部で本体シートが開いた形態となり、大きな接触面積で目頭から鼻部の上部にかけての領域(人によって異なり、複雑に起伏する領域)に面密着的に当接し、保温効果を高め、目頭や鼻部等の花粉症などのアレルギー性疾患の予防および症状緩和を図ることができる。
また、本体シートの顔面に対する接触面積が大きくなるため、顔面に加えられる押圧力は分散される。さらに、開いた形態で顔面に接する非接合部の曲げ弾性によって、接合部の上端が顔面に加える力が緩和される。よって、使用者の不快感を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の第1実施形態に係るマスクの斜視図である。
【図2】前図に示すマスクの要部拡大図である。
【図3】図1のマスクの折りたたんだ状態の側面図である。
【図4】図1のマスクを使用者の顔に装着した状態を示す斜視図である。
【図5】図1のマスクの断面図である。
【図6】図1のマスクの端部非接合部の断面図である。
【図7】前図に示す端部非接合部の動作を示す断面図である。
【図8】図1のマスクを使用者の顔に装着した状態を示す要部拡大図である。
【図9】従来のマスクの一例を使用者の顔に装着した状態を示す要部拡大図である。
【図10】人体頭部の構造を示す断面図である。
【図11】本体シートの他の例を用いたマスクの要部断面図である。
【図12】本発明の第2実施形態に係るマスクの要部を拡大した斜視図である。
【図13】本発明の第3実施形態に係るマスクの折りたたんだ状態の側面図である。
【図14】前図に示すマスクを使用者の顔に装着した状態を示す斜視図である。
【図15】本発明の第4実施形態に係るマスクの斜視図である。
【図16】本発明の第5実施形態に係るマスクの斜視図である。
【図17】涙器を模式的に示す図である。
【図18】従来のマスクの一例の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係るマスク10の斜視図である。図2はマスク10の要部拡大図である。図3は、マスク10の折りたたんだ状態の側面図である。図4は、マスク10を使用者の顔に装着した状態を示す斜視図である。図5は、マスク10の断面図である。図6は、マスク10の端部非接合部17の断面図である。図7は、端部非接合部の動作を示す断面図である。図8はマスク10を使用者60の顔に装着した状態を示す要部拡大図である。
以下の説明において、図3における左方を前方といい、右方を後方ということがある。マスク10の前後方向は顔に装着した際に使用者から見た前後方向に対応している。
【0009】
図1〜図6に示すように、マスク10は、マスク本体部1と、マスク本体部1の両側部にそれぞれ設けられた耳かけ部2とを備えている。
マスク本体部1としては、ポリオレフィン系材料やポリエステル系材料からなる合成繊維を用いた不織布を使用できる。ポリオレフィン系材料としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ1−ブテンなどがあり、ポリエステル系材料としてはポリエチレンテレフタレートなどがある。マスク本体部1の材料としては、熱可塑性樹脂を使用することもできる。
不織布を構成する繊維は単繊維であってもよいし、複合芯鞘繊維であってもよい。複合芯鞘繊維としては、ポリエステル−ポリエチレン芯鞘繊維、ポリプロピレン−ポリエチレン芯鞘繊維等を使用できる。
【0010】
マスク本体部1は、前方側縁部3a(一方の側縁部)どうしが接合された一対の本体シート3、3からなる。
図3に示すように、本体シート3は、略円弧状に湾曲した前方側縁部3aと、後方に向け下降する上縁部3dと、後方に向け上昇する略直線状の下縁部3eと、略直線状の後方側縁部3b(他方の側縁部)とを有する。本体シート3は、前方側縁部3aから後方に向かって徐々に高さ寸法を減じる形状である。
前方側縁部3aは前方に向けて凸状となるように湾曲した形状である。後方側縁部3bの長さ(図3の上下方向の寸法)は前方側縁部3aに比べて短くされている。
【0011】
図3〜図6に示すように、一対の本体シート3、3の前方側縁部3a、3aは、長さ方向に沿って内面3c、3cが重ね合わされて接合部5で互いに接合されている。
図1〜図3および図6に示すように、前方側縁部3a、3aの重なり部分4は、前方側縁部3aの全長にわたる略一定幅の帯状領域であり、図示例では本体シート3の前縁3g(一方側の端縁)から一定幅の領域である。
図3および図6に示すように、接合部5は本体シート3の内面3c、3cを互いに接合する部分であり、前方側縁部3aの長さ方向に沿って延在している。
【0012】
接合部5における本体シート3どうしの接合には、本体シート3の素材として熱可塑性樹脂が用いられている場合には熱溶着を採用できる。また、ポリビニルアルコール系などの接着剤によって本体シート3どうしを接合することもできる。
接合部5は、重なり部分4の全幅にわたって本体シート3を互いに接合することもできるし、本体シート3の幅方向の一部を互いに接合することもできる。図示例では、接合部5は本体シート3の前縁3gから間隔をおいて形成されている。
図4〜図6に示すように、本体シート3の前方側縁部3aは、使用者60が装着した状態では前方に突出した形態となる。
【0013】
図4に示すように、マスク本体部1は、使用者60の鼻部61の少なくとも一部と口部62とを覆うことができるように形成するのが好ましい。
マスク本体部1の後方側縁部3bの上端から下端までの高さ範囲の部分を本体部主部1Aという。本体部主部1Aは、使用者60の鼻部61の少なくとも一部と口部62とを覆うことができる。
マスク本体部1の上部の凸状部分1c(本体シート3の後方側縁部3bの上端より高い位置にある部分。すなわち本体部主部1Aから上方に突出した部分)は、目頭63aから鼻部61の上部にかけての複雑形状領域61a(人によって異なり、複雑に起伏する領域)を面密着的に覆う目頭保温部として機能する。凸状部分1cは、鼻部61の上部を覆う鼻部保温部としても機能する。
図示例では、接合部5の上端5aは本体部主部1Aから突出する凸状部分1cにあって、鼻部61の上端61bに係止しており、これによってマスク本体部1はずり落ちずに顔面60aに保持される。符号1aはマスク本体部1の上端(重なり部分4を除いた部分のマスク本体部1の上端)である。符号63は目である。鼻部61の上端61bは、側方から見て凹所の最深部となる部位である。
接合部5の上端5aは、装着時に使用者60の目頭63aどうしを結ぶ線L1から使用者60の鼻部61の上端61bまでの高さ範囲に位置している。
マスク本体部1の下部の凸状部分1d(本体シート3の後方側縁部3bの下端より低い位置にある部分)は、本体部主部1Aから下方に突出した部分である。マスク本体部1の下端1b(重なり部分4を除いた部分のマスク本体部1の下端)は本体部主部1Aから突出する凸状部分1dにあって使用者60のあご64に達するように形成することができる。
【0014】
本体シート3の前方側縁部3aの上端部3f(重なり部分4の上端部)を含む部分は、互いに接合されていない。この非接合部分を端部非接合部17という。端部非接合部17では本体シート3、3は重ね合わされているが、互いに接合されていない。
端部非接合部17は、装着時に使用者60の目頭63aどうしを結ぶ線L1より高い位置にある。端部非接合部17は、少なくとも一部が線L1より高い位置にあればよい。すなわち、端部非接合部17の全部が線L1より高い位置にあってもよいし、端部非接合部17の一部が線L1より高い位置にあってもよい。
【0015】
図3および図6に示すように、端部非接合部17は、前方側縁部3aの上端から前方側縁部3aの長さ方向にわたる非接合部分であり、その長さL2は例えば5〜7mmとすることができる。端部非接合部17では、本体シート3、3は重ね合わされているが互いに接合されていないため、力が加えられると姿勢が容易に変化する。
このため、図7に示すように、本体シート3、3に互いに離れる方向(図7の左右方向)の力が加えられると、本体シート3の曲げ弾性により、前方側縁部3aの姿勢は折り曲げ角度が小さくなるよう変化する。例えば、図6に示す状態では、前方側縁部3aは他の部分に対してほぼ垂直に折り曲げられているが、図7に示す状態ではその折り曲げ角度が小さくなっている。
これによって、端部非接合部17では、前方側縁部3a、3aは、前縁3g、3gのみが互いに接し、他の部分は互いに離間した姿勢をとることができる。すなわち、前方側縁部3a、3aは、前縁3g、3gを残して開いた形態となる。
【0016】
図7および図8に示すように、使用者60の顔に装着されたマスク10の本体シート3は、端部非接合部17で前縁3g、3gを残して側方に開いた形態となり、使用者60の顔面60a、例えば目頭63aから鼻部61の上部にかけての複雑形状領域61a(人によって異なり、複雑に起伏する領域)に面密着的に接する。端部非接合部17は、少なくとも目頭63aおよびその近傍領域を面密着的に覆う。
端部非接合部17は、顔面60aに沿って広がった状態で複雑形状領域61aに面密着的に当接するため、大きな接触面積で複雑形状領域61aに接し、この複雑形状領域61aにおける保温効果を高め、特に目頭や鼻部上部等の花粉症などのアレルギー性疾患の予防および症状緩和を図ることができる。特に、端部非接合部17が目頭63aおよびその近傍領域を面密着的に覆い、この領域を保温することによって、特に目頭や鼻部上部等のアレルギー性疾患(痒みや鼻水等)を効果的に予防および症状緩和することができる。
【0017】
図17は、涙器の構造を示す模式図である。涙は涙腺201から分泌され、花粉やダスト等を伴って眼球210の表面を流れ、目頭63aに近い涙小管202、涙嚢203、鼻涙管204等の涙道を経て、鼻腔に鼻水として排出される。花粉症が発症すると、鼻粘膜が炎症を起こし、特に目頭63aの痒さが顕著となるとともに浮腫を生じ、涙小管202が塞がれ、涙の流れが阻害される。涙の流れが阻害されると、花粉やダスト等は鼻腔に排出されなくなるため目63内に長時間滞留し、アレルゲンとなる成分が涙に溶出して目の粘膜を刺激して炎症を起こし、結膜炎等による目の痒みや涙目(多量の涙が目にたまる)の原因となる。
図1等に示すマスク10は、端部非接合部17により目頭63aから鼻部61の上部にかけての複雑形状領域61a(人によって異なり、複雑に起伏する領域)を面密着的に覆って保温することで、涙小管202を中心として涙嚢203や鼻涙管204等の涙道を保温する効果を高め、特に涙小管202の炎症や浮腫等を抑制し、閉塞を解消し、涙の流通を可能とする。涙の流通が可能となれば、花粉やダスト等に含まれるアレルゲン成分は、溶出する前に涙小管202、涙嚢203、鼻涙管204等の涙道を経て鼻腔に鼻水として排出される。このため、結膜炎や涙目等の花粉症の症状を抑制できる。
【0018】
マスク10では、前方側縁部3aの顔面60aに対する接触面積が大きくなるため、顔面60aに加えられる押圧力は分散されることから、使用者60の不快感を抑えることができる。
また、図8に示すように、開いた形態で顔面60aに接する端部非接合部17の曲げ弾性によって、本体シート3には顔面60aから離れる方向の力が作用する。このため、接合部5の上端5aが顔面60aに加える力が緩和される。よって、図9に示すように、接合部25が前方側縁部3aの上端にまで達する従来品に比較して、接合部5が顔面60aに当たることによる使用者60の不快感を抑制できる。
【0019】
図1、図3および図4に示すように、耳かけ部2は、マスク本体部1の本体シート3の後方側縁部3bから後方に延出して形成されている。耳かけ部2には、使用者60の耳65に引っ掛けられる耳かけ穴7が形成されている。P1は耳かけ部2の上辺部であり、耳かけ穴7より上部側の部分を含む。P2は耳かけ部2の下辺部であり、耳かけ穴7より下部側の部分を含む。
【0020】
耳かけ部2は、ポリオレフィン系材料やポリエステル系材料からなる合成繊維を用いた不織布を使用できる。耳かけ部2はマスク本体部1に比べて伸縮性が高いことが好ましい。例えば、弾性的に伸縮可能な繊維を使用した不織布を用いることができる。
上辺部P1の張力は、下辺部P2の張力より大きいことが好ましい。これによって、マスク本体部1がずり落ちるのを防ぎ、マスク本体部1を、接合部5の上端5aが鼻部61の上端61bに係止した位置に安定に保持できる。また、上辺部P1の張力を下辺部P2の張力より大きくすることで、マスク10の装着により耳65にかかる負担を軽減できる。
なお、耳かけ部2はマスク本体部1の一部としてマスク本体部1に一体的に形成されていてもよい。
【0021】
図1〜図3に示すように、本体シート3の後方側縁部3bの内面は、長さ方向に沿って耳かけ部2の前縁部2aの外面に重ね合わされており、この帯状の重なり部分8において本体シート3と耳かけ部2は互いに接合されている。本体シート3と耳かけ部2との接合には、熱溶着や接着剤を用いることができる。
【0022】
図4に示すように、マスク10は、マスク本体部1が使用者60の鼻部61の少なくとも一部と口部62とを覆うように装着することができる。
図示例では、マスク本体部1の目頭保温部1c(鼻部保温部)が目頭63aから鼻部61の上部にかけての複雑形状領域61a(人によって異なり、複雑に起伏する領域)を面密着的に覆い、マスク本体部1の接合部5の上端5aは、本体部主部1Aから突出して鼻部61の上端61bに達している。マスク本体部1の下端1b(前方側縁部3aの下端)は本体部主部1Aから突出して使用者60のあご64に達している。目頭保温部1cは目頭63aどうしを結ぶ線L1より高い位置に達している。具体的には、マスク本体部1の上端1aは線L1より高い位置にある。なお、ここでいう高さ方向とは、図4の上方であり、線L1より高い位置とは、この図において線L1よりも上に位置していることを意味する。
【0023】
図10は、人体頭部の構造を示す断面図である。この図において、正中線Yの左右に存在する空洞部が鼻腔Mである。
この鼻腔Mの両側に、それぞれ鼻腔Mと連通して、眼腔近辺に達する篩骨洞S1と、頬骨近辺に達する上顎洞S2とが副鼻腔である。
図4に示す装着状態にあっては、マスク本体部1によって鼻部61の大部分が覆われるため、鼻腔Mと副鼻腔(篩骨洞S1および上顎洞S2)との双方が保温されることになる。
特に、開いた形態となった端部非接合部17が、目頭63aから鼻部61の上部にかけての複雑形状領域61a(人によって異なり、複雑に起伏する領域)に大きな接触面積で面密着的に当接し、この複雑形状領域61aに面密着的に接触することにより保温効果を高め、特に目頭や鼻部等の花粉症などのアレルギー性疾患の予防および症状緩和を図ることができる。
【0024】
マスク10では、本体シート3の上端部3fを含む部分である端部非接合部17は、装着時には開いた形態となり、目頭63aから鼻部61の上部にかけての複雑形状領域61a(人によって異なり、複雑に起伏する領域)に大きな接触面積で面密着的に当接し、これにより保温効果を高め、特に目頭や鼻部等の花粉症などのアレルギー性疾患の予防および症状緩和を図ることができる。
また、本体シート3(前方側縁部3a)の顔面60aに対する接触面積が大きくなるため、顔面60aに加えられる押圧力は分散される。さらに、開いた形態で顔面60aに接する端部非接合部17の曲げ弾性によって、接合部5の上端5aが顔面に加える力が緩和される。よって、接合部5が顔面60aに当たることによる使用者60の不快感を抑制できる。
また、図17に示すように、端部非接合部17の変形が容易であるため、端部非接合部17から上縁部3dに沿って後方側縁部3bに向けて延在する帯状の上縁領域19も変形が容易であり姿勢変化が起こりやすくなる。このため、上縁領域19は顔面60aに沿う姿勢となって顔面60aに面密着的に当接し、当接部分の保温効果を高めることができる。
【0025】
本発明のマスクに用いる本体シートは1枚のシート体から構成してもよいし、複数枚のシート体から構成してもよい。
図11は、本体シートの他の例を示すもので、ここに示す本体シート3は、3枚のシート体13aからなる積層構造体である。シート体13aとしては、ポリオレフィン系材料やポリエステル系材料からなる合成繊維を用いた不織布を使用できる。
シート体13aには、エレクトレット化(エレクトレット処理)を施すことができる。エレクトレット化は、繊維表面に所定量の正電荷または負電荷を与えて分極させた誘電状態を形成する処理である。エレクトレット化処理には、既知の方法、例えばコロナ放電によりシート体13aを荷電させる方法を採用できる。
【0026】
<第2実施形態>
図1〜図4等に示すマスク10では、端部非接合部17はほとんど互いに離間していないが、図12に示すように、端部非接合部17の一部が互いに離間する構成も可能である。
端部非接合部17は、目頭63aから鼻部61の上部にかけての複雑形状領域61a(人によって異なり、複雑に起伏する領域)に大きな接触面積で面密着的に当接し、この複雑形状領域61aにおける保温効果を高めることによって、特に目頭や鼻部等の花粉症などのアレルギー性疾患の予防および症状緩和を図ることができる。特に、端部非接合部17が目頭63aおよびその近傍領域を覆い、この領域を保温することによって、アレルギー性疾患を効果的に予防および症状緩和することができる。
【0027】
<第3実施形態>
図13は、本発明の第3実施形態に係るマスク20の折りたたんだ状態の側面図である。図14は、マスク20を使用者の顔に装着した状態を示す斜視図である。
マスク20は、本体シート3の前方側縁部3aの上端部3f(重なり部分4の上端部)に切欠き部18が形成されることによって、本体シート3の上端部3hを含む部分が互いに非接合(端部非接合部18A)となっていること以外は図1〜図4等に示す第1実施形態のマスク10と同じ構成である。
図13に示すように、切欠き部18は、前方側縁部3aの上端から前方側縁部3aの長さ方向にわたる切り欠き部分であり、その長さL3は例えば5〜7mmとすることができる。切欠き部18の幅は、重なり部分4と同じ幅とすることができる。
切欠き部18の内縁18a(側縁部)は、前方側縁部3aに沿う方向に形成されており、切欠き部18が形成された部分における本体シート3の前方側縁部といえる。
この前方側縁部18aを含む部分である本体シート3の端部非接合部18Aは、上方に凸状となっており、マスク20を装着したときには、一対の本体シート3、3の端部非接合部18A、18Aは互いに離間した形態となる。
【0028】
図14に示すように、マスク20では、本体シート3の上端部3hを含む部分(端部非接合部18A、18A)が互いに非接合となっているため、装着時には端部非接合部18A、18Aが側方に開いた形態となり、目頭63aから鼻部61の上部にかけての複雑形状領域61a(人によって異なり、複雑に起伏する領域)に大きな接触面積で面密着的に当接し、この複雑形状領域61aに大きな接触面積で接して保温効果を高めることができる。
従って、特に目頭や鼻に症状が現れる花粉症などのアレルギー性疾患の予防および症状緩和を図ることができる。特に、端部非接合部18A、18Aが目頭63aおよびその近傍領域を覆い、この領域を保温することによって、目頭や鼻部等のアレルギー性疾患を効果的に予防および症状緩和することができる。
【0029】
<第4実施形態>
図15は、本発明の第4実施形態に係るマスク30を使用者の顔に装着した状態を示す斜視図である。
マスク30では、本体シート3、3の前方側縁部3a、3aが、複数の接合部35(一方側の接合部)で互いに接合されている。これら複数の接合部35は、1または複数の中間非接合部36(一方側の非接合部)によって、前方側縁部3aの長さ方向に互いに隔てられている。図示例では、接合部35は、前方側縁部3aの全長にわたって断続的に形成された略一定幅の部分である。接合部35の上端35aは鼻部61の上端61bに係止可能である。
【0030】
中間非接合部36は、隣り合う接合部35、35の間にあって本体シート3、3が互いに接合されていない部分である。
中間非接合部36では本体シート3、3は重ね合わされているが、互いに接合されていない。このため、中間非接合部36では本体シート3、3の隙間は通気可能であり、この隙間を通してマスク本体部1の内部空間の気体を外部に排出することができる。また、後述のように、吸気の際には外気流入を抑制できる。
【0031】
本体シート3の後方側縁部3bの内面は、長さ方向に沿って耳かけ部2の前縁部2aの外面に重ね合わされており、この帯状の重なり部分8において本体シート3と耳かけ部2は複数の後方接合部45(他方側の接合部)で互いに接合されている。
これら複数の後方接合部45は、1または複数の後方非接合部46(他方側の非接合部)によって後方側縁部3bの長さ方向に隔てられて形成されている。
【0032】
使用者60の呼気によってマスク本体部1の内部空間の気圧が高まると、呼気の一部は本体シート3の前方側縁部3aの中間非接合部36における隙間を通して外部に排出される。呼気の他の一部は、本体シート3の後方側縁部3bと耳かけ部2の前縁部2aとの重なり部分8の後方非接合部46における隙間から外部に排出される。
このため、呼気が内部空間内に充満することがなく、内部空間内の酸素濃度低下を改善することができる。よって、使用者60の健康阻害を低減できる。
【0033】
呼気が中間非接合部36における隙間から排出される際には、気流による気圧低下によって本体シート3、3が互いに離隔しにくくなる。本体シート3は繊維からなる構造体であるため、内面3c(図7参照)は微視的には平滑面ではなく凹凸を有することから、呼気中の微粒子(体液飛沫など)は非接合部36の内面3cに吸着され、外部への放出が抑えられる。
呼気が後方非接合部46における隙間から排出される際にも、呼気中の微粒子(体液飛沫など)は非接合部46の内面3cと耳かけ部2外面に吸着され、外部への放出が抑えられる。
中間非接合部36および後方非接合部46は十分な幅があるため、呼気中の微粒子を効果的に吸着し、外部への放出を抑制できる。
【0034】
吸気の際には、内部空間の気圧低下により中間非接合部36の本体シート3、3の前方側縁部3a、3aは閉じ合わされ、隙間から内部空間への外気流入は起こらない。
同様に、本体シート3の後方側縁部3bと耳かけ部2の前縁部2aとの重なり部分8においても、後方非接合部46において本体シート3と耳かけ部2とは閉じ合わされ、隙間から内部空間への外気流入は起こらない。
このため、吸気として内部空間に導入される外気の大部分は本体シート3を透過する。この際、外気中の微粒子(花粉など)は本体シート3に捕捉されるため、捕捉性能の低下はない。
従って、マスク30では、捕捉性能を低下させることなく、内部空間内に呼気が充満することによる酸素濃度低下を改善し、使用者60の健康阻害を低減できる。
【0035】
<第5実施形態>
図16は、本発明の第5実施形態に係るマスク40を使用者の顔に装着した状態を示す要部拡大図である。
マスク40は、耳かけ部2の外面側に、耳65を覆う耳カバー41が設けられていること以外は図1〜図3等に示す第1実施形態のマスク10と同じ構成である。
耳カバー41は、耳かけ部2とほぼ同じ外形を有する不織布等を使用できる。耳カバー41の使用により、耳65(例えば耳介および外耳道)の保温や外気中の微粒子の除去が可能となる。
従って、特に耳介および外耳道などの保温効果を高めるとともに外気中の微粒子を除去し、耳のアレルギー性疾患の予防および症状緩和を図ることができる。
【0036】
本発明のマスクは、本体シートが、遠赤外線放射素材、金属箔、鉄粉含有発熱材料、血行促進剤、マイナスイオン発生素材、磁石、吸湿発熱素材、および蓄熱シートからなる群から選択された1または2以上を含む構成としてもよい。例えば本体シートを構成する少なくとも1つのシート体が、前記材料(遠赤外線放射素材、金属箔、鉄粉含有発熱材料、血行促進剤、マイナスイオン発生素材、磁石、吸湿発熱素材、および蓄熱シートから選択された1または2以上)を含む構成とすることができる。
【0037】
遠赤外線放射素材とは、人体または外部から放射される熱を受けて遠赤外線に転化できる材料であって、例えばAl2O3、SiO2、TiO2、Cr2O3、ZrO2、MgO、Fe2O3などの金属酸化物;SiC、TiC、ZrC、B4Cなどの炭素化合物;Si3N4、BN、AlNなどの窒化物;またはそれらの2以上の複合体などのいわゆる遠赤外線放射性セラミクスが使用可能である。遠赤外線放射素材の使用によって、保温効果を高めることができる。
金属箔としてはアルミニウム箔などがあり、本体シートを構成する不織布に積層して使用できる。金属箔の使用によって保温効果を高めることができる。
【0038】
鉄粉含有発熱材料は、鉄粉が空気中の酸素および水分と反応する際の反応熱を利用するものであって、例えば、鉄粉と、食塩と、必要に応じて酸化触媒とを含む。鉄粉含有発熱材料は、袋に封入してシート状に構成したものを加温体として使用できる。加温体は、使用時に密封容器から取り出すことによって空気中の酸素と反応して発熱し、マスク本体部内を加温することができる。
血行促進剤としては、例えばサルチル酸メチル、カンファ、メントール類、各種香油類、ヒノキ油、ヒバ油、トウガラシチンキなどが使用できる。血行促進剤を使用すると、揮発性成分が皮膚に浸透して皮下の毛細血管の血行を促進することができる。
マイナスイオン発生素材としては、例えばトルマリン粉末、電気分解アルカリイオン水を使用できる。
磁石は、磁力を皮下の毛細血管に作用させて血行を促進することができる。
【0039】
吸湿発熱素材は、水分を吸収することにより発熱する機能を備えたものであって、例えばアクリレート系材料、セルロース系材料などがある。吸湿発熱素材は、例えば顔面から発汗される汗を吸収することにより発熱する。
蓄熱シートとしては、CMC、PVA、アクリル酸ポリマー等のゲル状の蓄熱剤を袋に封入してシート状に構成したものを使用できる。蓄熱シートは、電子レンジ等により加温できる。蓄熱シートの使用によって保温効果を高めることができる。
【0040】
これらの材料(遠赤外線放射素材、金属箔、鉄粉含有発熱材料、血行促進剤、マイナスイオン発生素材、磁石、吸湿発熱素材、および蓄熱シートから選択された1または2以上)は、本体シートの一部または全部に積層、含浸等することで使用できる。前記材料の使用位置(例えば加温体の取り付け位置)は特に限定されないが、特に、目頭保温部1c(鼻部保温部)に使用するのが好ましい。前記材料の使用方法(例えば加温体の取り付け方法)は特に限定されず、いかなる方法であってもよい。
前記材料の使用による加温、保温、血行促進などによって、特に目頭や鼻部等の花粉症などのアレルギー性疾患の予防および症状緩和を図ることができる。
【符号の説明】
【0041】
1・・・マスク本体部、1c・・・凸状部分、1A・・・本体部主部、2・・・耳かけ部、3・・・本体シート、3a・・・本体シートの前方側縁部(一方の側縁部)、3c・・・本体シートの内面、3f・・・本体シートの前方側縁部の上端部、3g・・・前縁(一方側の端縁)、3h・・・本体シートの上端部、4・・・本体シートの前方側縁部の重なり部分、5・・・接合部、5a・・・上端、10、20、30、40・・・マスク、13a・・・シート体、17・・・端部非接合部、18・・・切欠き部、35・・・接合部、36・・・中間非接合部、7・・・耳かけ穴、60・・・使用者、60a・・・顔面、61・・・鼻部、61b・・・鼻部の上端、62・・・口部、L1・・・目頭63aどうしを結ぶ線、P1・・・上辺部、P2・・・下辺部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の側縁部どうしが接合された一対の本体シートからなるマスク本体部と、前記マスク本体部の両側部にそれぞれ設けられた耳かけ部とを備え、
前記マスク本体部は、使用者の鼻部の少なくとも一部と口部とを覆う本体部主部と、前記本体部主部から上方に突出して鼻部上部を覆う凸状部分とを有し、
前記一対の本体シートの前記一方の側縁部は、長さ方向に沿って内面どうしが重ね合わされて少なくとも一部が互いに接合され、この接合部の上端は、前記凸状部分にあって装着時に使用者の目頭どうしを結ぶ線から前記使用者の鼻部上端までの高さ範囲に位置し、
前記本体シートの前記側縁部の上端部を含む部分は、互いに接合されていない非接合部とされ、
前記非接合部は、少なくとも一部が装着時に前記使用者の目頭どうしを結ぶ線より高い位置にあり、側方に開いた形態となって前記使用者の目頭またはその近傍を覆うように前記使用者の顔面に面密着的に接することを特徴とするマスク。
【請求項2】
前記非接合部における前記一対の本体シートは、前記装着時に、一方側の端縁を残して開いた形態となることを特徴とする請求項1記載のマスク。
【請求項3】
前記非接合部における前記一対の本体シートは、前記装着時に、互いに離間して開いた形態となることを特徴とする請求項1記載のマスク。
【請求項4】
前記本体シートの前記重ね合わされた部分の上端部が切り欠かれることによって前記非接合部が形成されていることを特徴とする請求項3記載のマスク。
【請求項5】
前記本体シートは、複数のシート体の積層体からなることを特徴とする請求項1〜4のうちいずれか1項記載のマスク。
【請求項6】
前記一対の本体シートの前記一方の側縁部は、長さ方向に沿って内面どうしが重ね合わされて複数の接合部で互いに接合され、
前記複数の接合部は、1または複数の中間非接合部によって前記側縁部の長さ方向に隔てられ、
前記中間非接合部は、前記マスク本体部内の使用者の呼気を外部に排出可能であり、かつ吸気を流入抑制することを特徴とする請求項1〜5のうちいずれか1項記載のマスク。
【請求項7】
前記本体シートは、遠赤外線放射素材、金属箔、鉄粉含有発熱材料、血行促進剤、マイナスイオン発生素材、磁石、吸湿発熱素材、および蓄熱シートからなる群から選択された1または2以上を含むことを特徴とする請求項1〜6のうちいずれか1項記載のマスク。
【請求項8】
前記耳かけ部は、耳かけ穴より上部側の上辺部と、前記耳かけ穴より下部側の下辺部とを有し、前記上辺部の張力は前記下辺部の張力より大きいことを特徴とする請求項1〜7のうちいずれか1項記載のマスク。
【請求項9】
前記本体シートには、これを構成する繊維表面に所定量の正電荷または負電荷を与えて分極させた誘電状態を形成するエレクトレット処理が施されていることを特徴とする請求項1〜8のうちいずれか1項記載のマスク。
【請求項10】
前記耳かけ部の外面側に、使用者の耳を覆う耳カバーが設けられていることを特徴とする請求項1〜9のうちいずれか1項記載のマスク。
【請求項1】
一方の側縁部どうしが接合された一対の本体シートからなるマスク本体部と、前記マスク本体部の両側部にそれぞれ設けられた耳かけ部とを備え、
前記マスク本体部は、使用者の鼻部の少なくとも一部と口部とを覆う本体部主部と、前記本体部主部から上方に突出して鼻部上部を覆う凸状部分とを有し、
前記一対の本体シートの前記一方の側縁部は、長さ方向に沿って内面どうしが重ね合わされて少なくとも一部が互いに接合され、この接合部の上端は、前記凸状部分にあって装着時に使用者の目頭どうしを結ぶ線から前記使用者の鼻部上端までの高さ範囲に位置し、
前記本体シートの前記側縁部の上端部を含む部分は、互いに接合されていない非接合部とされ、
前記非接合部は、少なくとも一部が装着時に前記使用者の目頭どうしを結ぶ線より高い位置にあり、側方に開いた形態となって前記使用者の目頭またはその近傍を覆うように前記使用者の顔面に面密着的に接することを特徴とするマスク。
【請求項2】
前記非接合部における前記一対の本体シートは、前記装着時に、一方側の端縁を残して開いた形態となることを特徴とする請求項1記載のマスク。
【請求項3】
前記非接合部における前記一対の本体シートは、前記装着時に、互いに離間して開いた形態となることを特徴とする請求項1記載のマスク。
【請求項4】
前記本体シートの前記重ね合わされた部分の上端部が切り欠かれることによって前記非接合部が形成されていることを特徴とする請求項3記載のマスク。
【請求項5】
前記本体シートは、複数のシート体の積層体からなることを特徴とする請求項1〜4のうちいずれか1項記載のマスク。
【請求項6】
前記一対の本体シートの前記一方の側縁部は、長さ方向に沿って内面どうしが重ね合わされて複数の接合部で互いに接合され、
前記複数の接合部は、1または複数の中間非接合部によって前記側縁部の長さ方向に隔てられ、
前記中間非接合部は、前記マスク本体部内の使用者の呼気を外部に排出可能であり、かつ吸気を流入抑制することを特徴とする請求項1〜5のうちいずれか1項記載のマスク。
【請求項7】
前記本体シートは、遠赤外線放射素材、金属箔、鉄粉含有発熱材料、血行促進剤、マイナスイオン発生素材、磁石、吸湿発熱素材、および蓄熱シートからなる群から選択された1または2以上を含むことを特徴とする請求項1〜6のうちいずれか1項記載のマスク。
【請求項8】
前記耳かけ部は、耳かけ穴より上部側の上辺部と、前記耳かけ穴より下部側の下辺部とを有し、前記上辺部の張力は前記下辺部の張力より大きいことを特徴とする請求項1〜7のうちいずれか1項記載のマスク。
【請求項9】
前記本体シートには、これを構成する繊維表面に所定量の正電荷または負電荷を与えて分極させた誘電状態を形成するエレクトレット処理が施されていることを特徴とする請求項1〜8のうちいずれか1項記載のマスク。
【請求項10】
前記耳かけ部の外面側に、使用者の耳を覆う耳カバーが設けられていることを特徴とする請求項1〜9のうちいずれか1項記載のマスク。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2012−239588(P2012−239588A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−111456(P2011−111456)
【出願日】平成23年5月18日(2011.5.18)
【出願人】(000101938)イカリ消毒株式会社 (33)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月18日(2011.5.18)
【出願人】(000101938)イカリ消毒株式会社 (33)
【Fターム(参考)】
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