説明

マッサージ機

【課題】マッサージ機において、身体の長手方向に沿った広範囲に対して指圧点を直線的に移動させるようなマッサージを施せるようにし、もって斬新で快適なマッサージ感が得られるようにする。
【解決手段】マッサージ機1は、身体の一部を嵌め入れ可能に離れた状態で対向配置された一対の施療部材160,161と、一対の施療部材160,161の少なくとも一方又は両方を、当該一対の施療部材の相互間に嵌め入れられた身体の幅方向に向かって移動させて、身体を挟持し且つ押圧する挟持機構162と、挟持機構162による施療部材160,161の挟持状態を持続しつつ、施療部材160,161を身体の長手方向に沿って移動させる移動機構26と、を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マッサージ機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、下肢(特に、膝下から足首近傍にかけての部分)をマッサージすることができるマッサージ機として、椅子型マッサージ装置のフットレストに採用されたものが知られている(例えば、特許文献1)。このマッサージ機は、左右一対の施療凹部を備えており、その両側壁の内側面と中間壁の両側面とにそれぞれエアバッグが設けられている。これら各エアバッグをエア給排装置で膨張・収縮させることにより、各施療凹部内に嵌め込まれた両下肢を同時にマッサージできるようになっている。
【0003】
一般に、エアバッグは、中央部の膨らみが最も大きく両端部に向かうほど膨らみが小さくなっているので、下肢の長手方向の狭い範囲でしか十分な押圧力が得られないということがあった。そこで、複数のエアバッグを各施療凹部の長手方向に沿って並設し、この複数のエアバッグに同時又は順次にエアを給排して、下肢をその長手方向の広範囲に渡ってマッサージできるようにしたマッサージ機も提案されている(例えば、特許文献2)。
【0004】
一方、エアバッグを用いず、施療凹部を構成する両壁部そのものを下肢に対して接近・離反させる機構を採用したマッサージ機も提案されている(例えば、特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3012780号公報
【特許文献2】特開平11−347082号公報
【特許文献3】特許第3339849号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のマッサージ機は、特許文献1や特許文献2に開示されたエアバッグ式であろうと、特許文献3に開示された機械式であろうと、施療凹部に嵌め入れた身体部分に対し、対向する一対の施療部材でマッサージするものであり、結局のところは、定点的な押圧と解放を繰り返すだけである。そのため、得られるマッサージ感としては単一的で変化の乏しいものである。
【0007】
また、定点的な押圧と解放とを繰り返すだけのマッサージでは、血流やリンパの流れ、或いは神経に対して脈動的な刺激を与えることが主であり、換言すれば身体側の自発的な疲労回復や活性化を待つのが狙いとなる。すなわち、実質的且つ直接的に血流やリンパの流れを促進させるというようなイメージではなかった。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、身体の長手方向に沿った広範囲に対して指圧点を直線的に移動させるようなマッサージを施せるようにすることで、斬新で快適なマッサージ感が得られるようにし、また血流やリンパの流れに対して実質的且つ直接的な活性化を期待できるようにした新規なマッサージ機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明は次の手段を講じた。
即ち、本発明に係るマッサージ機は、身体の一部を嵌め入れ可能に離れた状態で対向配置された一対の施療部材と、前記一対の施療部材の少なくとも一方又は両方を、当該一対の施療部材の相互間に嵌め入れられた身体の幅方向に向かって移動させて、身体を挟持し且つ押圧する挟持機構と、前記挟持機構による施療部材の挟持状態を持続しつつ、前記施療部材を身体の長手方向に沿って移動させる移動機構と、を有していることを特徴とする。
【0009】
上記の如く、身体に施療部材を押し付けた状態のまま、この施療部材を身体の長手方向に移動させる構成を採用すれば、身体の長手方向に沿った広範囲に対して連続的な指圧マッサージを施すことができる。それゆえ、斬新で快適なマッサージ感が得られ、また血流やリンパの流れに対して実質的且つ直接的な活性化を期待できるようになる。
なお、ここにおいて「挟持機構」は、片側の施療部材だけに対して押圧状態の付与を行うものを含む。
【0010】
なお、前記挟持機構には、前記一対の施療部材を挟持位置へと進出させると共に、解放位置へと退行させる出退駆動部が備えられており、前記挟持位置は、一対の施療部材が互いに近接して身体を挟持し且つ押圧した状態となる位置とされ、前記解放位置は、一対の施療部材が互いに最も離反した状態となる位置とされているとよい。
前記移動機構による施療部材の移動範囲の一方端側又は他方端側が、前記一対の施療部材の解放位置となるように設定されていることは好ましい。
【0011】
好ましくは、前記施療部材は、拳状の形状を備えているとよい。
さらに好ましくは、前記一対の施療部材の間には、当該施療部材とは別位置で身体を押圧する押圧部材が設けられており、前記移動機構は、一対の施療部材の移動に連動して、前記押圧部材を身体の長手方向に沿って移動可能としているように構成するとよい。
ところで、本発明のマッサージ機を、前記身体の一部が、膝と足首との間に位置する「ふくらはぎ」であって、前記挟持機構は、前記一対の施療部材でふくらはぎの左右両側を挟持しつつ押圧するように構成された下肢用マッサージ機としてもよい。
【0012】
本発明のマッサージ機を、前記身体の一部が、膝と足首との間に位置する「ふくらはぎ」であって、前記挟持機構は、前記一対の施療部材でふくらはぎに対し、前面から左右の斜め外方にずれた箇所とふくらはぎの裏面とを挟持しつつ押圧するように構成された下肢用マッサージ機としてもよい。
本発明のマッサージ機を、前記身体の一部が、くるぶしより下側の「足部」であって、前記挟持機構は、前記一対の施療部材で足部の左右両側を挟持しつつ押圧するように構成された下肢用マッサージ機としてもよい。
【0013】
本発明のマッサージ機を、前記身体の一部が、上肢であって、前記挟持機構は、前記一対の施療部材で上肢の左右両側を挟持しつつ押圧するように構成された上肢用マッサージ機としてもよい。
前記一対の施療部材間で構成される施療凹部が一対設けられ、前記一対の施療凹部は、当該凹部の長手方向が同方向となるように並設するとよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るマッサージ機は、身体の長手方向に沿った広範囲に対して指圧マッサージを施せるものであり、斬新で快適なマッサージ感が得られるようになる。また血流やリンパの流れに対して実質的且つ直接的な活性化を期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係るマッサージ機の第1実施形態の内部構造の正面斜視図である。
【図2】本発明に係るマッサージ機の第1実施形態の外観の正面斜視図である
【図3】本発明に係るマッサージ機の第1実施形態の内部構造の背面斜視図である
【図4】本発明に係るマッサージ機の第1実施形態の内部構造の底面斜視図である
【図5】図1のA−A線断面図である。
【図6】図1のB−B線断面図である(解放位置)。
【図7】図1のB−B線断面図である(挟持位置)。
【図8】図1のC−C線断面図である(解放位置)。
【図9】図1のC−C線断面図である(挟持位置)。
【図10】バイブレーション機構を抽出して示した斜視図である。
【図11】図1のD−D線矢視図である(解放位置)。
【図12】図1のD−D線矢視図である(挟持位置)。
【図13】図1のD−D線矢視図である(挟持位置)。
【図14】本発明に係るマッサージ機の第2実施形態を示した斜視図である。
【図15】本発明に係るマッサージ機の第3実施形態の内部構造の正面斜視図である(解放位置)。
【図16】本発明に係るマッサージ機の第3実施形態の内部構造の正面斜視図である(挟持位置)。
【図17】本発明に係るマッサージ機の第3実施形態の内部構造の正面図である(挟持位置)。
【図18】本発明に係るマッサージ機の第3実施形態の内部構造の正面斜視図である(最上の挟持位置)。
【図19】図16の一部を省略して示したE−E線断面図である(挟持位置、挟持間隔:狭い)。
【図20】図16の一部を省略して示したE−E線断面図である(挟持位置、挟持間隔:広い)。
【図21】図15の一部を省略して示したF−F線断面図である(解放位置)。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づき説明する。
[第1実施形態]
図1〜図13は、本発明に係るマッサージ機の第1実施形態を示している。
第1実施形態のマッサージ機1は、使用者の左右両方の下肢を対象として、下肢を構成するふくらはぎLと足部Fとの両方に、挟み込みのマッサージならびに直線的に移動するような指圧マッサージを同時に行えるように構成されたものを示してある。
【0017】
なお、本明細書において「ふくらはぎL」は、人間の下肢のうち、膝下であって且つくるぶしより上の部分を言うものとし、「足部F」はくるぶしより下の部分を言うものとする。また、図1及び図2の矢示線Xで示す方向を前後方向、矢示線Yで示す方向を左右方向(幅方向)、矢示線Zで示す方向を上下方向と言う。
図2に示すように、第1実施形態のマッサージ機1は、正面視すると横長又は縦長の長方形或いは正方形であって側面視すると長靴型となるようなケーシング2を有したものとなっている。
【0018】
ケーシング2には、その前面の約上半部で前方及び上方へ向けて開放する左右一対の第1施療凹部4が、互いに左右に離れて並設されている。これら左右の第1施療凹部4に対して左右のふくらはぎLを嵌め入れることができる。
また、ケーシング2には、その前面の約下半部で上方及び前方へ向けて開放する左右一対の第2施療凹部5が、互いに左右に離れて並設されている。これら左右の第2施療凹部5に対して左右の足部Fを嵌め入れることができるようになっている。
【0019】
第1施療凹部4にふくらはぎLを嵌め入れ、同時に第2施療凹部5に足部Fを嵌め入れることができるように、第1施療凹部4及び第2施療凹部5は、左側配置のもの同士、及び右側配置のもの同士が連通するように構成されている。
第1施療凹部4や第2施療凹部5の内部には、スポンジやウレタン等によるクッション材、伸縮性の豊富な布やレザー等によるカバー材を備えた内張材6が設けられている。内張材6には、適度な通気性を付与させておくのが好適であり、場合によっては暖房又は冷房機構などをも付与しておくことができる。また、カバー材については線ファスナーや面ファスナー等による取付手段を採用することにより、必要に応じて容易に交換できるようにするとよい。
【0020】
左右の第1施療凹部4には、それぞれ、ふくらはぎLを左右両側からマッサージする垂直横押しマッサージ機構10と、ふくらはぎLを後面(背面)からマッサージする垂直裏押しマッサージ機構11とが設けられている。
左右の第2施療凹部5には、それぞれ、足部Fを左右両側からマッサージする水平横押しマッサージ機構12と、足部Fを裏(底面)からマッサージする水平裏押しマッサージ機構13とが設けられている。
【0021】
なお、第1実施形態のマッサージ機1においてケーシング2は、立てた状態と仰向け(前面を上向き)にして寝かせた状態とに使用向きを変更することが任意に選択可能である。そのため、使用者は、椅子などに腰掛けているときにはケーシング2を立てた状態にして、使用すればよいし、またベッドなどで仰向けに寝ころんでいるときにはケーシング2も仰向け又は傾斜させた状態にして、使用すればよい。
【0022】
このようなことから、第1施療凹部4の垂直横押しマッサージ機構10及び垂直裏押しマッサージ機構11や、第2施療凹部5の水平横押しマッサージ機構12及び水平裏押しマッサージ機構13における「垂直」や「水平」の呼称は、本明細書中での便宜上のものに過ぎず、マッサージ機1としての使用状態を限定したものではない。
図1、図3〜図5に示すように、ケーシング2の内部には支持フレーム15が設けられている。この支持フレーム15は、下端位置で略水平に設けられた台フレーム部16と、この台フレーム部16の後端部から上方へ向けて略垂直に設けられた背フレーム部17とを有しており、側面視L型に一体形成されている。
【0023】
そして、この支持フレーム15のうち、台フレーム部16に対して上記した水平横押しマッサージ機構12及び水平裏押しマッサージ機構13が設けられており、背フレーム部17に対して前記した垂直横押しマッサージ機構10及び垂直裏押しマッサージ機構11が設けられている。
図4に示す如く、台フレーム部16は、床面への設置に使用される左右一対の脚桟16aを有しており、これら脚桟16aの上方で、床面との間に空間を形成させるようにしつつ長手方向を前後方向へ向けて設けられた左右一対の水平桟16bを有している。左右の水平桟16bは、前後方向で同じ断面形状(同じ太さ)を有し、水平横押しマッサージ機構12及び水平裏押しマッサージ機構13を前後方向へ移動させる場合の水平レール20を形成するようになっている。
【0024】
これに対し、図3に示す如く、背フレーム部17は、長手方向を上下方向へ向けて設けられた左右一対の垂直桟17aを有して形成されている。左右の垂直桟17aは、それぞれ、上下方向で同じ断面形状(同じ太さ)を有し、垂直横押しマッサージ機構10及び垂直裏押しマッサージ機構11を上下方向へ移動させる場合の垂直レール21を形成するようになっている。
【0025】
まず、主として図3を参照しつつ、垂直横押しマッサージ機構10及び垂直裏押しマッサージ機構11を説明する。
垂直横押しマッサージ機構10は、所定間隔をおいて並設された横押し用の施療部材23,24(図1参照)と、これら施療部材23,24に対してふくらはぎLへの押付状態を付与させるための狭持機構25と、施療部材23,24及び挟持機構25を上下動させる移動機構26とを有している。
【0026】
垂直裏押しマッサージ機構11は、一対の施療部材23,24の相互間に嵌め入れられたふくらはぎLに対し、裏押しするための押圧部材27を有している。この垂直裏押しマッサージ機構11は、垂直横押しマッサージ機構10と移動機構26を共有する構成となっており、垂直横押しマッサージ機構10と一緒に上下動する。
垂直横押しマッサージ機構10の移動機構26は、背フレーム部17が有する左右一対の垂直レール21に対し、垂直動スライダ30が上下動自在な状態に保持され、この垂直動スライダ30が昇降駆動部31によって上下駆動されるようになっている。そして、この垂直動スライダ30に対して垂直横押しマッサージ機構10及び垂直裏押しマッサージ機構11が設けられている。
【0027】
なお、第1実施形態において昇降駆動部31は、長手方向を上下方向へ向けた送りネジ軸32と、この送りネジ軸32を回転駆動する正逆回転可能なモータ33及び減速ギヤ部34と、垂直動スライダ30に設けられ送りネジ軸32が串刺し状態で螺合するナット部材35とを有したものとしてある。モータ33及び減速ギヤ部34は、支持フレーム15内(台フレーム部16と背フレーム部17との交差部周辺)で固定されている。
【0028】
図1に示すように、垂直横押しマッサージ機構10の施療部材23,24は互いに対を成した状態として一組を形成し、この組み合わせが、使用者(身体)の左右下肢に各対応させて合計二組、設けられている。すなわち、施療部材23,24は、片脚のふくらはぎLを嵌め入れる程度に左右方向に離れた状態として対向配置されており、これら施療部材23,24間で一つの第1施療凹部4(図2参照)が構成されていることになる。
【0029】
図6に示すように、ふくらはぎLの内側に向く配置とされた施療部材23は、軸心を前後方向へ向けた状態で、且つふくらはぎLの側面太さd(前後方向の太さ)と略同等となる長さで突出する円柱形を基本形として、その円柱形における外周面の長手方向2カ所に、くびれを設けさせた形状としてある。
これに対し、ふくらはぎLの外側に向く配置とされた施療部材24は、軸心を前後方向へ向けた円盤型に形成されており、ふくらはぎLに対してその側面から前面近傍へかけた位置でのみ(比較的狭い範囲で)接触するように前後方向で扁平である。そのため、ふくらはぎLに対する面圧を適度に高めることができ、比較的強い刺激を付与するうえで好適となっている。
【0030】
いずれの施療部材23,24も、拳状の大きさならびに形状であり、その素材としては、プラスチックや硬質樹脂など弾性を有するものが採用可能である。
一方、垂直横押しマッサージ機構10の挟持機構25は、施療部材23,24の相互間にふくらはぎLが嵌め入れられたときに、当該ふくらはぎLの左右両側面に対して施療部材23,24を押しつけ状態にさせるための機構である。
【0031】
第1実施形態の挟持機構25は、施療部材23,24を、それぞれ各別且つ積極的に、解放位置(図6で示した位置)と挟持位置(図7で示した位置)との間で出退動作(近接・離反動作)させる出退駆動部37を有している。
両施療部材23,24を解放位置にすると、それらの相互間へふくらはぎLを出し入れする際に、施療部材23,24が邪魔にならない配置となる。
【0032】
図6及び図7に示すように、出退駆動部37は、施療部材23,24を支持する支持アーム40,41と、これら支持アーム40,41を垂直動スライダ30に対して水平揺動自在な状態に枢支する揺動軸43,44と、両支持アーム40,41に対して施療部材23,24を相対離反する方向(相互間を開く方向)へ付勢する解放付勢具45,46と、支持アーム40,41の基端部に対してカム作用を付与するカムレール47(図6にカムレール47は現れていない)とを有している。
【0033】
支持アーム40,41は平面視L型に形成されており、少なくとも揺動軸43,44の相互間で互いに対向するように突出した基端部を有している。これら各基端部にはカムレール47の後面へ当接可能となる従節ピン50,51が設けられている。支持アーム40,41のL型形状は、両施療部材23,24が押圧位置となっているときに、これら従節ピン50,51の突出向きが略一直線状になって対向するような折れ角を有したものとされている。
【0034】
解放付勢具45,46は、具体的には両脚を径方向外方へ突出させた脚付きコイルバネを採用してあり、それぞれ、揺動軸43,44を取り囲むように組み込んである。このコイルバネの一方の片脚を支持アーム40,41へ係合させ、他方の片脚を垂直動スライダ30に係合させてあるため、施療部材23,24には、図6中の矢符Pに示すような開脚方向(離反方向)のバネ力が発生する。
【0035】
図3に示すように、カムレール47は、支持フレーム15の背フレーム部17に対し、その垂直桟17a(垂直レール21を形成している部分)の裏面に、長手方向を上下方向へ向けて固定されており、その後面をカム面47a(即ち、支持アーム40,41の従節ピン50,51が摺接する面)とされている。
また、図5に示すように、このカムレール47は、垂直桟17aから後方へ突出するレール厚が上方へゆくほど薄くなり、下方へゆくほど分厚くなるように形成されている。即ち、前記したカム面47aは、垂直桟17aの長手方向に対して傾斜していることになる。さらに、このカムレール47は、背フレーム部17に沿って垂直動スライダ30が上下動する動作領域Sに対し、その下端までは達しない長さに形成されている。そして、カムレール47の下端部には、カム面47aの傾斜方向とは逆向きの傾斜を有する乗り降り誘導面47bが形成されている。
【0036】
すなわち、カムレール47は、カム面47aと乗り降り誘導面47bとの接続点として形成される頂点部47cを、垂直桟17aの後面から最も分厚くさせるような山形を呈した傾斜カムであると言える。また、カムレール47の下端よりも下となる位置、即ち、カムレール47が及ばない部分(垂直桟17aの後面が後方へ向けて露呈される部分)は、カムレール47としては厚さゼロであり、カム解放領域47dとなっている。
【0037】
以上述べたようなカムレール47の形状により、垂直レール21(垂直桟17a)に沿って垂直動スライダ30を上下動させれば、これに同行して支持アーム40,41も上下動し、このとき支持アーム40,41の従節ピン50,51はカムレール47のカム面47aに応じて、後方へ押される度合いが異なるものとなる。なお、支持アーム40,41は解放付勢具45,46によって施療部材23,24を相対離反する方向(相互間を開く方向)へ付勢されているため、この付勢作用がカムレール47のカム面47aに対する従節ピン50,51の接触状態を維持可能としている。
【0038】
詳しくは、施療部材23,24が垂直レール21の最も下部側に位置する際には、支持アーム40,41の従節ピン50,51は、カム解放領域47dにあるため、施療部材23,24は互いが最も離反した解放位置となる。この位置では、施療部材23,24の相互間に対して容易にふくらはぎLを出し入れすることができる。
その後、施療部材23,24が垂直レール21を上昇し、ふくらはぎLの上下略中央に対応する位置に達したときは、従節ピン50,51は、頂点部47cにあるため、施療部材23,24は互いが最も近接した挟持位置となる。さらに、施療部材23,24が垂直レール21の上部側に位置する際には、従節ピン50,51はカム面47aにあり、施療部材23,24は互いが接近した挟持位置となる。
【0039】
このように、出退駆動部37は、垂直動スライダ30の上下動に伴い、施療部材23,24を解放位置と挟持位置との間で出退動作させるものとなる。それ故、この出退駆動部37を具備した挟持機構25は、施療部材23,24の相互間に嵌め入れられたふくらはぎLに対して押しつけ状態を生じさせることができるようになる。
次に、マッサージ機1に備えられた垂直裏押しマッサージ機構11について説明する。
【0040】
図1,図5に示す如く、垂直裏押しマッサージ機構11は押圧部材27を有したものとなっている。
図5に示すように、この押圧部材27は、前記移動機構26の垂直動スライダ30から前方突出状態に固定されたものであって、軸心を左右方向へ向けた円盤型を基本形として、その後半分を切り取ったような側面視半円形に形成されている。
【0041】
この押圧部材27は、両施療部材23,24の相互間に嵌め入れられたふくらはぎLをその後面側中央でのみ(比較的狭い範囲で)接触するように左右方向で扁平である。そのため、ふくらはぎLに対する面圧を適度に高めることができ、比較的強い刺激を付与するうえで好適となっている。
押圧部材27は、垂直横押しマッサージ機構10の施療部材23,24と一緒に上下動するので、ふくらはぎLは、左右両側面と後面との3カ所を効果的にマッサージされるものとなっている。
【0042】
次に、図1,図3,図4を参照しつつ、マッサージ機1に備えられた水平横押しマッサージ機構12及び水平裏押しマッサージ機構13を説明する。
なお、これら水平横押しマッサージ機構12及び水平裏押しマッサージ機構13は、前述した垂直横押しマッサージ機構10及び垂直裏押しマッサージ機構11を略同一の機構を備え、それらを水平に設けたものであると言うことができる。
【0043】
図1に示すように、水平横押しマッサージ機構12は、所定間隔をおいて並設された横押し用の施療部材53,54と、これら施療部材53,54に対して足部Fへの押付状態を付与させるための挟持機構55と、施療部材53,54及び挟持機構55を前後動させる移動機構56とを有している。
水平裏押しマッサージ機構13は、一対の施療部材53,54の相互間に嵌め入れられた足部Fに対し、裏押しするための押圧部材57を有している。この水平裏押しマッサージ機構13は、水平横押しマッサージ機構12と一緒に前後動する。
【0044】
移動機構56は、台フレーム部16が有する左右一対の水平レール20(水平桟16b)に対し、水平動スライダ60が前後動自在な状態に保持され、この水平動スライダ60が進退駆動部61によって前後駆動されるようになっている。そして、この水平動スライダ60に対して水平横押しマッサージ機構12及び水平裏押しマッサージ機構13が設けられている。
【0045】
なお、水平動スライダ60を駆動する進退駆動部61は、長手方向を前後方向へ向けた送りネジ軸62と、この送りネジ軸62を回転駆動する正逆回転可能なモータ33及び減速ギヤ部64と、水平動スライダ60に設けられ送りネジ軸62が串刺し状態で螺合するナット部材65とを有している。モータ33は、垂直横押しマッサージ機構10の昇降駆動部31に備えられたものと兼用とされている。すなわち、モータ33は両軸モータであり、一方の駆動軸を昇降駆動部31の減速ギヤ部34に連結し、他方の駆動軸を、当該進退駆動部61の減速ギヤ部64に連結してある。
【0046】
図1に示すように、水平横押しマッサージ機構12の施療部材53,54は互いに対を成した状態として一組を形成し、この組み合わせが、使用者(身体)の左右両脚に各対応させて合計二組、設けられている。すなわち、施療部材53,54は、片脚の足部Fを嵌め入れる程度に左右方向に離れた状態として対向配置されており、これら施療部材53,54間で一つの第2施療凹部5(図2参照)が構成されていることになる。
【0047】
図8に示すように、足部Fの内側に向く配置とされた施療部材53も、また足部Fの外側に向く配置とされた施療部材54も、軸心を上下方向へ向けた状態で、且つ足部Fの高さh(床面から足部Fの甲までの高さ)を超える程度の長さで突出する円柱形を基本形として、その円柱形における外周面の長手方向2カ所がくくられた形状としてある。
いずれの施療部材53,54も、拳状の大きさならびに形状であり、その素材としては、プラスチックや硬質樹脂など弾性を有するものが採用可能である。
【0048】
挟持機構55は、施療部材53,54の相互間に足部Fが嵌め入れられたときに、当該足部Fの左右両側面に対して施療部材53,54を押しつけ状態にさせるための機構である。第1実施形態の挟持機構55は、施療部材53,54を、それぞれ解放位置(図8で示した位置)と挟持位置(図9で示した位置)との間で出退動作させる出退駆動部67を有している。一対の施療部材53,54を解放位置にすると、それらの相互間へ足部Fを出し入れする際に、施療部材53,54が邪魔にならない配置となる。
【0049】
図8及び図9に示すように、出退駆動部67は、施療部材53,54を支持する支持アーム70,71と、これら支持アーム70,71を水平動スライダ60に対して垂直揺動自在な状態に枢支する揺動軸73,74と、両支持アーム70,71に対して施療部材53,54を相対離反する方向(相互間を開く方向)へ付勢する解放付勢具75,76と、支持アーム70,71の基端部に対してカム作用を付与するカムレール77(図8にカムレール77は現れていない)とを有している。
【0050】
支持アーム70,71は正面視L型に形成されており、少なくとも揺動軸73,74の相互間で互いに対向するように突出した基端部を有している。これら各基端部にはカムレール77の下面へ当接可能となる従節ピン80,81が設けられている。支持アーム70,71のL型形状は、両施療部材53,54が押圧位置となっているときに、これら従節ピン80,81の突出向きが略一直線状になって対向するような折れ角を有したものとされている。
【0051】
解放付勢具75,76は、具体的には両脚を径方向外方へ突出させた脚付きコイルバネを採用してあり、それぞれ、揺動軸73,74を取り囲むように組み込んである。このコイルバネの一方の片脚を支持アーム70,71へ係合させ、他方の片脚を垂直動スライダ30に係合させてあるため、施療部材53,54には、図8中の矢符Qに示すような開脚方向(離反方向)のバネ力が発生する。
【0052】
図4に示すように、カムレール77は、支持フレーム15の背フレーム部16に対し、その水平桟16b(水平レール20を形成している部分)の裏面に、長手方向を前後方向へ向けて固定されており、その後面をカム面77a(即ち、支持アーム70,71の従節ピン80,81が摺接する面)とされている。
また、図5に示すように、このカムレール77は、水平桟16bから下方へ突出するレール厚が前方へゆくほど薄くなり、後方へゆくほど分厚くなるように形成されている。即ち、前記したカム面77aは、水平桟16bの長手方向に対して傾斜していることになる。さらに、このカムレール77は、台フレーム部16に沿って水平動スライダ60が前後動する動作領域Tに対し、その前端までは達しない長さに形成されている。そして、カムレール77の前端部には、カム面77aの傾斜方向と同じ向きの傾斜であって、且つ急角度を有する乗り降り誘導面77bが形成されている。
【0053】
すなわち、カムレール77は、カム面77aと乗り降り誘導面77bとの接続点として形成される頂点部77cを、水平桟16bの下面から最も分厚くさせるような山形を呈した傾斜カムであると言える。また、カムレール77の前端よりも前となる位置、即ち、カムレール77が及ばない部分(水平桟16bの下面が下方へ向けて露呈される部分)は、カムレール77としては厚さゼロであり、カム解放領域77dとなっている。
【0054】
以上述べたようなカムレール77の形状により、水平レール20(水平桟16b)に沿って水平動スライダ60を前後動させれば、これに同行して支持アーム70,71も前後動し、このとき支持アーム70,71の従節ピン80,81はカムレール77のカム面77aに応じて、下方へ押される度合いが異なるものとなる。なお、支持アーム70,71は解放付勢具75,76によって施療部材53,54を相対離反する方向(相互間を開く方向)へ付勢されているため、この付勢作用がカムレール77のカム面77aに対する従節ピン80,81の接触状態を維持可能としている。
【0055】
詳しくは、施療部材53,54が水平レール20の最も前部側に位置する際には、支持アーム70,71の従節ピン80,81は、カム解放領域77dにあるため、施療部材53,54は互いが最も離反した解放位置となる。この位置では、施療部材53,54の相互間に対して容易に足部Fを出し入れすることができる。
その後、施療部材53,54が水平レール20を上昇し、ふくらはぎLの上下略中央に対応する位置に達したときは、従節ピン80,81は、カムレール77の頂点部77cにあるため、施療部材23,24は互いが最も近接した挟持位置となる。さらに、施療部材23,24が垂直レール21の上部側に位置する際には、従節ピン50,51はカム面47aにあり、施療部材53,54は互いが接近した挟持位置となる。
【0056】
このように、出退駆動部67は、水平動スライダ60の前後動に伴い、施療部材53,54を解放位置と挟持位置との間で出退動作させるものとなる。それ故、この出退駆動部67を具備した挟持機構55は、施療部材53,54の相互間に嵌め入れられたふくらはぎLに対して押しつけ状態を生じさせることができるようになる。
次に、マッサージ機1に備えられた水平裏押しマッサージ機構13について説明する。
【0057】
図1,図5に示す如く、水平裏押しマッサージ機構13は押圧部材57を有したものとなっている。
押圧部材57は、移動機構56の水平動スライダ60から上方突出状態に設けられたものであって、軸心を左右方向へ向けた円盤型を基本形として、その下半分を切り取ったような側面視半円形に形成されている。
【0058】
すなわち、この押圧部材57は、両施療部材53,54の相互間に嵌め入れられた足部Fをその下面側(足部裏)中央でのみ(比較的狭い範囲で)接触するように左右方向で扁平である。そのため、足部Fに対する面圧を適度に高めることができ、比較的強い刺激を付与するうえで好適となっている。
押圧部材57は、水平横押しマッサージ機構12の施療部材53,54と一緒に前後動するので、足部Fは、左右両側面と後面との3カ所を効果的にマッサージされるものとなっている。
【0059】
なお、図5に示すように、第1実施形態では、押圧部材57が水平動スライダ60に対して上下動自在に保持されたものとしてある。また、水平動スライダ60には、押圧部材57の保持位置で上下に貫通する孔85が形成され、押圧部材57にはこの孔85内へ突出する従節子86が設けられたものとしてある。従節子86の先端(下端)は、円弧状にカーブさせた形状に形成されている。
【0060】
そして、カムレール77又はこのカムレール77を保持する水平桟16bに対して、押圧部材57の従節子86と当接するカム面88が形成されたものとしてある。このカム面88は、施療部材53,54の間に嵌め入れられた足部Fの足部裏に対し、ちょうど土踏まずの弓なりカーブに対応するような上方凸カーブを有している。
このようなことから、水平動スライダ60が前後動するのに合わせて、従節子86がカム面88に摺接しつつその上凸カーブに沿った緩やかな上下動を起こすようになる。この従節子86の上下動は、当然に押圧部材57の上下動を意味している。押圧部材57の上下動は、当該押圧部材57が足部Fで踏みつけられている状況下で行われるので、確実な動きとなり、またガタツキなど生じ難いものとなっている。
【0061】
かくして、足部裏の土踏まずにも押圧部材57による指圧が適切に作用するようになり、足部裏全体に対する指圧の平均化及びマッサージ効果の均一化が図れるものとなる。
ところで、第1実施形態のマッサージ機1には、効果的なマッサージを意図し、バイブレーション機構90が設けられている。
このバイブレーション機構90は、振動発生モータ91によって発生させた振動を、使用者のふくらはぎL及び足部Fに付与するためのものである。以下、このバイブレーション機構90を説明する。
【0062】
図1、図3〜図5に示すように、支持フレーム15の台フレーム部16には、その上部に複数本(図例では4本)の緩衝脚100を介して水平振動板101が支持されている。緩衝脚100は、ゴムや樹脂等により形成された弾性スリーブ等を具備したものであって、水平振動板101に起こる振動が台フレーム部16側へ伝搬するのを防止する。
また支持フレーム15の背フレーム部17には、その前面に複数本(図例では4本)の緩衝脚102を介して垂直振動板103が支持されている。緩衝脚102は、ゴムや樹脂等により形成された弾性スリーブ等を具備したものであって、垂直振動板103に起こる振動が背フレーム部17側へ伝搬するのを防止する。
【0063】
図10に示すように、これら水平振動板101と垂直振動板103は、水平振動板101の後端部と垂直振動板103の下端部とを連結させることで、側面視L型を呈する状態に一体化されている。
なお、水平振動板101には、水平裏押しマッサージ機構13の押圧部材57を上下方向で貫通させると共に、この押圧部材57が前後動するときの接触干渉を回避させるために、長手方向を前後方向へ向けた小開口105が形成されている。この小開口105の開口周部に指圧突起106が上方へ向けて突設されている。指圧突起106の配置、突設高さ、材質、個数などは足部裏にあるツボ位置などに応じて適宜に選択可能である。
【0064】
また水平振動板101には、水平横押しマッサージ機構12における内側配置の施療部材53(左右各組のもの)を上下方向で貫通させると共に、この施療部材53が前後動するときの接触干渉を回避させるために、板面中央部に大開口107が形成されている。
同様に、垂直振動板103には、垂直裏押しマッサージ機構11の押圧部材27を前後方向で貫通させると共に、この押圧部材27が前後動するときの接触干渉を回避させるために、長手方向を前後方向へ向けた小開口108が形成されている。この小開口108の開口周部に指圧突起109が前方へ向けて突設されている。指圧突起109の配置、突設高さ、材質、個数などはふくらはぎLの裏側にあるツボ位置などに応じて適宜に選択可能である。
【0065】
また垂直振動板103には、垂直横押しマッサージ機構10における内側配置の施療部材23(左右各組のもの)を前後方向で貫通させると共に、この施療部材23が上下動するときの接触干渉を回避させるために、板面中央部に大開口110が形成されている。
水平振動板101には、後端の左右中央部から大開口107内へ向けて張り出す状態で、振動受け台112が設けられている。この振動受け台112の上方に振動発生モータ91が倒立状態(モータ軸を下向きに突出させた状態)で保持されている。
【0066】
この振動発生モータ91のモータ軸には、その先端部(下端部)にベアリングなどの軸受部が取り付けられており、この軸受具を介して、振動受け台112に回転自在な状態に保持されるようになっている。また、この振動発生モータ91のモータ軸には、振動受け台112より上方側となる空中位置に対して偏心分銅(フライホイール)113が取り付けられている。
【0067】
これに対し、支持フレーム15には、水平振動板101の振動受け台112に対応する配置でモータ支持台120が設けられている。このモータ支持台120は、振動受け台112の前方及び後方へ突出する大きさを有しており、その突出位置となる前端部及び後端部に対して、それぞれ、上方へ向けて左右一対(合計4本)の防振脚121が突設されている。なお、第1実施形態において、このモータ支持台120は、昇降駆動部31や進退駆動部61が具備するモータ33を支持フレーム15に固定するためのモータブラケットを兼ねるようにしてある(図3参照)。
【0068】
そして、これら防振脚121の上端部に、振動発生モータ91に取り付けられたモータブラケット122が固定されている。
防振脚121は、ゴムや樹脂等により形成された弾性スリーブ等を具備したものであって、振動発生モータ91の振動が支持フレーム15側へ伝搬するのを防止する。
このようなことから、振動発生モータ91の駆動によって偏心分銅113を回転させると、振動発生モータ91自体に振動が発生し、この振動がモータ軸に取り付けられた軸受具を介して、水平振動板101の振動受け台112へと伝搬される。水平振動板101と垂直振動板103は一体化されているため、これら両板101,103は一体となって振動するようになる。その結果、水平振動板101の指圧突起106を介して足部裏へ振動が付与されることになり、また垂直振動板103の指圧突起109を介してふくらはぎLの裏側へ振動が付与されることになる。
【0069】
なお、水平振動板101には緩衝脚100が連結され、垂直振動板103には緩衝脚102が連結され、振動発生モータ91には防振脚121が連結されているため、これらの振動が支持フレーム15に伝搬することは可及的に防止され、騒音や床振動などの防止が図られる。
次に、第1実施形態に係るマッサージ機1の使用状況に基づき、その作用を説明する。
【0070】
マッサージ機1は、電源スイッチ又は運転操作スイッチがオフの状態にあるときには、図1や図11に示すように、垂直横押しマッサージ機構10の施療部材23,24は最も下方位置で停止している。また水平横押しマッサージ機構12の施療部材53,54は最も前方位置で停止している。
最も下方位置で停止している施療部材23,24は、それらの相互間隔が最も広く開いており、この状態が垂直横押しマッサージ機構10の挟持機構25(出退駆動部37)としての解放位置である。従って、これら施療部材23,24の相互間に対して容易にふくらはぎLを出し入れすることができる。
【0071】
また、最も前方位置で停止している施療部材53,54は、それらの相互間隔が最も広く開いており、この状態が水平横押しマッサージ機構12の挟持機構55(出退駆動部67)としての解放位置である。従って、これら施療部材53,54の相互間に対して容易に足部Fを出し入れすることができる。
そこでまず、使用者は、左右のふくらはぎLを施療部材23,24の間(第1施療凹部4の内部)にそれぞれ嵌め入れると共に、左右の足部Fを施療部材53,54の間(第2施療凹部5の内部)にそれぞれ嵌め入れる。
【0072】
この状態で電源スイッチ又は運転操作スイッチをオン操作すると、モータ33が作動し、垂直横押しマッサージ機構10では、昇降駆動部31の減速ギヤ部34を介して移動機構26が垂直動スライダ30を上方へ向けて移動開始させる。また、水平横押しマッサージ機構12では、進退駆動部61の減速ギヤ部64を介して移動機構56が水平動スライダ60を後方へ向けて移動開始させる。
【0073】
垂直横押しマッサージ機構10において、垂直動スライダ30が上方へ移動し始めると、支持アーム40,41(従節ピン50,51)がカムレール47によるカム作用を受けて、最初に、図12に示すように施療部材23,24の相互間隔が最も狭くなり、その後、図13に示すように垂直動スライダ30が上方へゆくほど、施療部材23,24はそれらの相互間隔を徐々に広げてゆくように動作する。
【0074】
また、垂直動スライダ30が動作領域Sの最上位置へ達した後、下方へ向けて移動し始めると、今度は反対に、施療部材23,24はそれらの相互間隔を徐々に狭めてゆくように動作する。このような施療部材23,24の動きは、ふくらはぎLの形状(太さの変化)に対応しており、ふくらはぎLに対してその長手方向に沿った広範囲に対して指圧点を直線的に移動させるようなマッサージを施すことになる。
【0075】
このような垂直動スライダ30の上下動が少なくとも1サイクル、所望に応じて複数サイクル繰り返される。複数サイクルの繰り返しを行う場合は、タイマー回路や計数回路に基づくものとしたり、或いは人為的なスイッチ操作に基づくものとすればよい。
なお、このとき、垂直裏押しマッサージ機構11では押圧部材27がふくらはぎLの後面を押付状態となっているから、ふくらはぎLには、合計3箇所の指圧点が一気に指圧をする状態が得られているものである。
【0076】
一方、水平横押しマッサージ機構12においては、水平動スライダ60が後方へ移動し始めると、支持アーム70,71(従節ピン80,81)がカムレール77によるカム作用を受けて、図12及び図13に示すように施療部材23,24はそれらの相互間隔を徐々に狭めてゆくように動作する。
また、水平動スライダ60が動作領域Tの最も後方位置へ達した後、前方へ向けて移動し始めると、今度は反対に、施療部材53,54はそれらの相互間隔を徐々に広げてゆくように動作する。このような施療部材53,54の動きは、足部Fの形状(幅の変化)に対応しており、足部Fに対してその長手方向に沿った広範囲に対して指圧点を直線的に移動させるようなマッサージを施すことになる。
【0077】
このような水平動スライダ60の前後動も、前記した垂直動スライダ30の上下動に同調しつつ少なくとも1サイクル、所望に応じて複数サイクル繰り返される。
なお、このとき、水平裏押しマッサージ機構13では押圧部材57が足部裏を押付状態となっているから、足部Fには、合計3箇所の指圧点が一気に指圧をする状態が得られているものである。
【0078】
このような施療部材23,24及び押圧部材27や、施療部材53,54及び押圧部材57による指圧マッサージに加え、バイブレーション機構90をも駆動させるようにすれば、ふくらはぎLには指圧突起106による振動が付与され、足部Fには指圧突起109による振動が付与されることになり、益々、快適なマッサージ効果が得られるものとなる。
【0079】
これらのことから、斬新で快適なマッサージ感が得られ、また血流やリンパの流れに対して実質的且つ直接的な活性化を期待できるようになる。
なお、バイブレーション機構90の駆動は、使用者の所望するところに応じて選択的にオン・オフできるようにしてもよい。垂直横押しマッサージ機構10や水平横押しマッサージ機構12と同期して常時動作するようにしておいてもよいし、それぞれが独立して動作するものであってもよい。
【0080】
垂直横押しマッサージ機構10と水平横押しマッサージ機構12とに関しても、各機構10,12が常に同期して動作するようにしてもよいし、垂直横押しマッサージ機構10と水平横押しマッサージ機構12とが、独立して動作するように構成されていてもよい。
[第2実施形態]
図14は、本発明に係るマッサージ機の第2実施形態を示している。
【0081】
第2実施形態のマッサージ機1は、足部専用のマッサージ機、又はふくらはぎ専用のマッサージ機として構成したもので、水平横押しマッサージ機構12及び水平裏押しマッサージ機構13のみを有したものとなっている(垂直横押しマッサージ機構10及び垂直裏押しマッサージ機構11は具備していない)。このマッサージ機は、非常にコンパクトであり、使用者のニーズに応えるマッサージ機として非常に有益である。
【0082】
これ以外の構成、作用効果、使用状況などは第1実施形態と略同様であるので、同一作用を生じるものに同一符号を付することもって、ここでの詳説は省略する。
[第3実施形態]
図15〜図21は、本発明に係るマッサージ機の第3実施形態を示している。
第3実施形態のマッサージ機1は、基本的には第1実施形態(図1〜図13参照)と同じ構成を有していて、使用者の左右両方の下肢を対象として、下肢を構成するふくらはぎLと足部Fとの両方に、挟み込みのマッサージや直線的に移動するような指圧マッサージ、或いは揉みによるマッサージを同時に行えるように構成されている。
【0083】
図15〜図18に示すように、第3実施形態のマッサージ機1も第1実施形態と同様に、側面視L型に一体形成された支持フレーム15を有している。
この支持フレーム15を構成するうち、下端位置でほぼ水平に設けられた台フレーム部16には、足部Fをマッサージする水平マッサージ機構150が配備されている。また、この支持フレーム15を構成するうち、台フレーム部16の後端部で垂直に起立して設けられた背フレーム部17には、ふくらはぎLをマッサージする垂直マッサージ機構151が配備されている。
【0084】
なお、第3実施形態のマッサージ機1でも、第1実施形態と同様に、正面視すると四角形状で側面視すると長靴型のケーシングを有し、このケーシングの前面に、左右のふくらはぎLや足部Fを嵌め入れるための左右一対の凹部が形成されているものとするが、このケーシングの図示は省略した。
この第3実施形態のマッサージ機1では、台フレーム部16に設けられた水平マッサージ機構150が、板状の施療部材154,155を具備しており、これら両施療部材154,155によって足部Fを左右両側から揉みマッサージする構成となっている。この水平マッサージ機構150は、第1実施形態で採用されていた「水平押しマッサージ機構12」に対応している。
【0085】
またこの第3実施形態のマッサージ機1では、背フレーム部17に設けられた垂直マッサージ機構151が、前押し用の施療部材160及び裏押し用の施療部材161を具備しており、これら両施療部材160,161によってふくらはぎLを前後両側から指圧マッサージする構成となっている。この垂直マッサージ機構151は、第1実施形態で採用されていた「垂直横押しマッサージ機構10」及び「垂直裏押しマッサージ機構11」に対応している。
【0086】
まず、垂直マッサージ機構151について詳説する。
この垂直マッサージ機構151は、ふくらはぎLの前面の斜め外方へずれた箇所を押す前押し用の施療部材160と、ふくらはぎLを介して前記施療部材160と対峙する配置とされてふくらはぎLを裏側から支持する裏押し用の施療部材161と、これら前押し用の施療部材160及び裏押し用の施療部材161に対してふくらはぎLへの押付状態を付与させる挟持機構162と、両施療部材160,161及び挟持機構162を上下動させる移動機構26とを有している。
【0087】
前押し用の施療部材160及び裏押し用の施療部材161は、互いに前後方向で対向する配置として構成され、この構成が使用者(身体)の左右の下肢に各対応させて左右一対に設けられている。当然に、挟持機構162は、各組を構成する施療部材160,161に対応させて、それぞれ個別に設けられている。
移動機構26は、背フレーム部17に設けられた左右一対の垂直レール21に対し、垂直動スライダ30の左右両端部に設けられたレール保持部163が上下動自在な状態に外嵌され、この垂直動スライダ30が昇降駆動部31によって上下駆動される構造となっている。この構造は、第1実施形態とほぼ同じである。また、この垂直動スライダ30に対して、左右両側に施療部材160,161及び挟持機構162が設けられている点も、第1実施形態と同じである。
【0088】
昇降駆動部31を具体的に説明すれば、長手方向を上下方向へ向けた送りネジ軸32と、この送りネジ軸32を回転駆動するための正逆回転可能なモータ33及びこのモータ33の後部側に連結された減速ギヤ部34と、垂直動スライダ30に設けられ送りネジ軸32が串刺し状態で螺合するナット部材35とを有したものとしてある。モータ33及び減速ギヤ部34は、支持フレーム15内(台フレーム部16上の左右方向中央部)で固定されている。
【0089】
図19〜図21に示すように、前押し用の施療部材160は、ふくらはぎLの前面(真正面)から左方又は右方の斜め外方にややずれて配置されている。具体的には、左側の施療部材160ではふくらはぎLの左寄りとなるような斜め外方であり右側の施療部材160ではふくらはぎLの右寄りとなるような斜め外方とされている。このような配置とされることで、この施療部材160は、ふくらはぎLの前面にある向こう脛(ムコウズネ)との直接的な当接を避け、そのうえで、向こう脛の左右外側に沿った横位置(軽く押すと浅い窪みを生じる状態で上下方向に延びた筋部)を押圧できるようになっている。
【0090】
この施療部材160は、前記移動機構26が具備する垂直動スライダ30のレール保持部163から、ふくらはぎLの左右方向外側を通って前方突出するように設けられたステー部165に対し、その前方の突出位置で支持されている。この施療部材160は、軸方向の中央部が膨らんだ円柱ローラ状(鼓状)に形成されたものであって、軸心となる部分に、前記ステー部165と連結する支軸166が設けられている。この施療部材160は、支軸166を中心に回転自在なものとしてもよいし、回転しないものとしてもよい。
【0091】
支軸166は、ステー部165との連結部分とされる根本側が左右方向の最外側となり、軸先端となるほど左右方向の内側へ入り込むように(図19に示す角度αを参照)、斜めに前方突出して設けられている。このような支軸166の斜め突出状態により、施療部材160がふくらはぎLを外側から回り込むようになって、前面の斜め外方にだけ当接し、ふくらはぎLの外方側面などとの当接を回避している。
【0092】
これに対し、裏押し用の施療部材161は、前押し用の施療部材160によって後方へ押されるふくらはぎLをその後面側中央で支え受けるようになっている。この施療部材161は、前記移動機構26が具備する垂直動スライダ30の前面に対し、ローラ軸を左右方向へ水平にして架設された円筒ローラとして形成されている。ローラ形状は、左右方向の内側が太く、左右方向の外側ほど細くなるテーパローラとしてある。
【0093】
そのため、この裏押し用の施療部材161は、ふくらはぎLを支持したときの押し量を、左右方向の内側ほど多くすると共に、ふくらはぎLを支持したときの面圧については反対に、左右方向の外側ほど高めるものであり、全体としてほどよい刺激を付与するうえで好適となっている。この施療部材161は、ローラ軸を中心に回転自在なものとしてもよいし、回転しないものとしてもよい。
【0094】
これら前押し用の施療部材160と裏押し用の施療部材161とは、前記移動機構26の垂直動スライダ30が上下動するときに、互いに一体となって上下動するので、ふくらはぎLは、その斜め前面(向こう脛の横)と後面との前後2カ所を効果的に指圧マッサージされるものとなっている。
なお、いずれの施療部材160,161も、その形成素材には、軟質又は硬質の樹脂やゴムなど、弾性を有するものが採用可能である。
【0095】
一方、垂直マッサージ機構151の挟持機構162は、前押し用の施療部材160と裏押し用の施療部材161との相互間にふくらはぎLが嵌め入れられたときに、前押し用の施療部材160が裏押し用の施療部材161から一定距離を超えて開かない(離れない)状態に保持させると共に、両施療部材160,161によってふくらはぎLの前後両面を押圧する状態が維持されるようにするための機構である。
【0096】
挟持機構162の具体的な構造は、次のようである。
すなわち、図19〜図21に示すように、前押し用の施療部材160を支持するステー部165の基部には、軸心を上下方向へ向けた状態で上方及び下方に突出する揺動軸43を設けると共に、この上下の揺動軸43を、垂直動スライダ30のレール保持部163に対して回転自在な状態で枢支させてある。これにより、このステー部165は、揺動軸43を支点に、垂直動スライダ30に対して水平揺動自在となっている。
【0097】
その上で、ステー部165の基部に対し、揺動軸43を超えてその後方へ向けて突出する従節ピン50を設けて、この従節ピン50の後端部を、背フレーム部17の垂直レール21に設けたカムレール47へ係合させてある。
このようなことから、前押し用の施療部材160に対し、裏押し用の施療部材161から開く(離れる)作用が生じても、従節ピン50がカムレール47に当接することにより、前押し用の施療部材160は裏押し用の施療部材161から一定距離を超えて開かない(離れない)ようになっている。
【0098】
なお、従節ピン50は、具体的に次のようにして設けてある。すなわち、揺動軸43に対し、両脚を径方向外方へ突出させた脚付きコイルバネ167のコイル部分を外嵌させ、このコイルバネ167の一方のバネ脚をステー部165へ係合させてある。また、このコイルバネ167の他方のバネ脚にスリーブを装着した状態で、このスリーブごとカムレール47に係合させてある。このカムレール47に係合させたバネ脚(スリーブ)が従節ピン50を形成するものである。
【0099】
従って、コイルバネ167のバネ作用があるので、前押し用の施療部材160は、裏押し用の施療部材161からある程度の範囲を持ってのみ開閉するようになっている。
また、カムレール47は、具体的に次のようにして設けてある。
すなわち、支持フレーム15の背フレーム部17には、その前面に、長手方向を上下方向へ向けてストレートに凹設された縦溝170(図15〜図19参照)が形成されている。縦溝170の下端部は、左右方向の内側へ斜めに折れ曲がった斜交溝部として形成されている。
【0100】
縦溝170にはレール部材171が嵌め込まれている。このレール部材171は、縦溝170のストレート部分だけに収められており、下端部で斜めに折れ曲がった斜交溝部までは及んでいない。
このレール部材171は、縦溝170におけるストレート部分内の溝幅よりも細く形成されている。また、このレール部材171は、縦溝170のストレート部分内において左右方向の内側(左側に配置された縦溝170では右寄りの溝壁を言い、右側に配置された縦溝170では左寄りの溝壁を言う)に沿って配置されている。従って、この縦溝170のストレート部分内には、レール部材171と共に、その左右方向外側に、支持アーム40の従節ピン50を嵌め入れることができるものとされている。
【0101】
なお、前記したステー部165には、垂直動スライダ30のレール保持部163との間に解放付勢具(図示しないコイルバネ)を設けてある。この解放付勢具により、ステー部165、即ち、前押し用の施療部材160を、図19中の矢符Pに示すような左右方向の外方(裏押し用の施療部材161との相互間を開く方向)へ付勢させてある。
この解放付勢具による付勢作用は、従節ピン50をレール部材171の側面に常に当接させる。そのため、従節ピン50は、レール部材171の側面に当接したまま縦溝170のストレート部分内で上下移動できるようになる。すなわち、この説明で明かなように、従節ピン50が当接するレール部材171の側面が、従節ピン50にとってのカムレール47となっている。
【0102】
ところで、第3実施形態では、この挟持機構162に対して、次のような出退駆動部37も採用している。すなわち、この出退駆動部37は、移動機構26の垂直動スライダ30が所定の下限位置を超えて、更に下方へ移動するときに、前押し用の施療部材160が裏押し用の施療部材161から一定距離を超えて開く(離れる)ようにするためのものである。
【0103】
この出退駆動部37の作動により、両施療部材160,161の相互間は挟持中よりも広くなり、ふくらはぎLの出し入れが容易となる(各施療部材160,161が邪魔にならない)。
具体的に、出退駆動部37は、縦溝170の下端部に内部連通して設けた斜交溝部によって構成されたものとしている。すなわち、この斜交溝部は、縦溝170のストレート部分内に嵌められたレール部材171(カムレール47)に対して、その下端部の側面に折れ曲がりながら連続していることになる。そのため、この斜交溝部の溝内面は、支持アーム40の従節ピン50を誘導することのできる解放レール48を形成していると言える。
【0104】
従って、垂直動スライダ30が垂直レール21に沿ってその最も下部側へ移動すると、ステー部165の従節ピン50は、カムレール47から解放レール48へと誘導されることになる。そのため、従節ピン50は、その後端が左右方向の内方へ傾くようになって、前押し用の施療部材160は揺動軸43を中心に、裏押し用の施療部材161から開く方向(離れる方向)へ揺動するようになる。そのため、両施療部材160,161の相互間距離は解放位置となる。
【0105】
なお、その後、垂直動スライダ30が垂直レール21を上昇すれば、ステー部165の従節ピン50は解放レール48からカムレール47へと誘導され、前押し用の施療部材160は揺動軸43を中心に、裏押し用の施療部材161に近接する方向へ揺動するようになる。そのため、両施療部材160,161の相互間距離は挟持位置となる。このように、出退駆動部37は、垂直動スライダ30の上下動に伴い、前押し用の施療部材160を解放位置と挟持位置との間で出退動作させるものとなる。
【0106】
なお、これらの説明から明らかなように、ステー部165の突出角度、即ち、裏当て用の施療部材161に対する前押し用の施療部材160の相互間距離は、カムレール47及び解放レール48の形状により決定される。
ところで、第3実施形態において、前記カムレール47を形成させているレール部材171は、断面が長丸状(又は楕円状)に形成されたものとしてある。そして、このレール部材171は、その上端部及び下端部が支持フレーム15の背フレーム部17に形成された縦溝170内において回動自在に保持されたものとしてある。
【0107】
また、支持フレーム15の背フレーム部17には、その上端面であって、且つ左右方向のおおよそ中央部に、ダイヤル操作部175を設けてある。そして、レール部材171の上端部(回動軸心)に一体回転可能に設けた回動入力片177と、ダイヤル操作部175の偏心位置との間に、リンク178を水平架設してある。これにより、ダイヤル操作部175の回動操作でリンク178を水平方向に沿って押し引きさせ、回動入力片177を介してレール部材171を回動させるリンク機構180を構成させてある。
【0108】
すなわち、このリンク機構180においてダイヤル操作部175を水平回転させると、レール部材171がその縦軸まわりに90°程度、回動して、レール部材171は、長丸状断面の長軸側が左右方向を向いたり(図19の状態)、長軸側が前後方向を向いたり(図20の状態)する。
このようなレール部材171の回動は、支持フレーム15の背フレーム部17に形成された縦溝170内で生じるものであり、レール部材171が縦溝170内(凹部スペース)の溝幅を狭める程度を変更させることになる。更に言えば、カムレール47を形成しているレール部材171の左右側面を、左右方向に位置変更させることになる。結果として、支持アーム40の従節ピン50がレール部材171に当接する位置を、左右方向の外方へ出っ張らせたり、左右方向の内方へ引っ込めさせたりできることになる。
【0109】
故に、図19に示す如く、このリンク機構180の操作で、レール部材171を、長丸状断面の長軸側が左右方向に向くようにしたときには、支持アーム40の従節ピン50が前後方向でまっすぐに突出し、前押し用の施療部材160は裏押し用の施療部材161に近接した挟持位置となって、ふくらはぎLを強く締め付けるようになる。
反対に、図20に示す如く、このリンク機構180の操作で、レール部材171を、長丸状断面の長軸側が前後方向に向くようにしたときには、支持アーム40の従節ピン50が前後方向で外向きに傾斜し、前押し用の施療部材160は裏押し用の施療部材161から開いた(離れた)挟持位置となって、ふくらはぎLを締め付ける力が緩和されるようになる。
【0110】
このリンク機構180の操作は、使用者の体型(ふくらはぎLの太さ)やマッサージ感に対する好みによって適宜選択すればよいものである。
次に、マッサージ機1に備えられた水平マッサージ機構150を説明する。
水平マッサージ機構150は、片脚の足部Fを嵌め入れる程度に左右方向に離れた状態として対向配置された横押し用の施療部材154,155と、これら施療部材154,155に対して足部Fへの揉み動作を付与させるための揉み機構185とを有している。
【0111】
横押し用の施療部材154,155は互いに対を成した状態として構成され、この構成がが、使用者(身体)の左右の下肢に各対応させて設けられている。
足部Fの内側に向く配置とされた施療部材154も、また足部Fの外側に向く配置とされた施療部材155も、足部Fの高さ(床面から足部Fの甲までの高さ)を超える程度に突出する板状に形成されている。いずれの施療部材154,155も、その形成素材には、軟質又は硬質の樹脂やゴムなど、厚み方向に弾性を有するものが採用可能である。また、各施療部材154,155が対向する内面には、足部Fへの接触感を和らげるクッション材やカバー材等を配備しておくのが好適とされている。
【0112】
この水平マッサージ機構150の揉み機構185は、垂直マッサージ機構151の移動機構26(昇降駆動部31)が装備する正逆回転可能なモータ33を駆動源とする。すなわち、図15〜図18に示すように、このモータ33の前部側にはギアボックス187が連結されており、このギアボックス187に施療部材154,155を左右に亘って貫通する1本の回転軸186が回転自在に支持されている。ギアボックス187内には、ウォームギア及びウォームホイルが内蔵されていて、これらを介してモータ33の動力が回転軸186に伝えられるようになっている。
【0113】
この回転軸186が施療部材154,155を貫通している貫通部分には、回転軸186の回転力を施療部材154,155によるマッサージ動作に変換する変換部188が設けられている。
この変換部188は、回転軸186の軸方向中途部に回転軸186と一体回転するように固定された回転ボス部189と、施療部材154,155に設けられて前記回転ボス部189を相対回転自在な状態で外嵌するハウジング部190と、回転ボス部189に対してハウジング部190が供回りすることを規制する規制部191(図18参照)とを備えている。
【0114】
回転ボス部189は、回転軸186に対して傾斜して設けられた円盤であって、その外周部には、ベアリングなどの滑り軸受具が装着されている。回転ボス部189の傾きは、施療部材154,155間において相対逆向きとなっている。
規制部191は、ハウジング部190から下向きに突出する係合突起を有したもので、この係合突起が、支持フレーム15の台フレーム部16に形成された左右に延びる摺動ガイド溝に係合するようになっている。
【0115】
これらのことにより、回転軸186の回転時には、摺動ガイド溝に係合した係合突起が左右方向へのみ摺動を許容される状態となって、ハウジング部190の供回りは阻止され、施療部材154,155は前後動と左右動とが所定角度範囲に規制された状況下で前後・左右に揺動するものとなる。前記したように、左右の施療部材154,155間において、回転軸186に対する回転ボス部189の傾きは相対逆向きとなっているので、施療部材154,155の前側が互いに近接している状態では、施療部材154,155の後側が離反した状態となる。即ち、施療部材154,155は平面視して略逆V字状となる。
【0116】
そして、回転軸186が回転するにしたがい、施療部材154,155は前側が互いに離反する動作を生じ、これに伴って施療部材154,155の後側は互いに近接する動作を生じる。その後は、また施療部材154,155の前側が互いに近接すると共に後側が互いに離反し、以後、施療部材154,155は前記したサイクル動作を繰り返すことになる。
【0117】
なお、施療部材154,155の相互間には、足部Fの土踏まずや、足部Fのつま先裏及び踵裏を支える足支持部材195が配置されている。この足支持部材195の上面には、複数の突起部196が形成されている。これら突起部196の配置、突設高さ、材質、個数などは足部裏にあるツボ位置などに応じて適宜に選択可能である。
次に、第3実施形態に係るマッサージ機1の使用状況に基づき、その作用を説明する。
【0118】
マッサージ機1は、電源スイッチ又は運転操作スイッチがオフの状態にあるときには、図15に示すように、垂直マッサージ機構151における前押し用の施療部材160及び裏押し用の施療部材161は、最も下方位置で停止している。
最も下方位置で停止している前押し用の施療部材160及び裏押し用の施療部材161は、それらの相互間隔が最も広く開いており、その相互間に対して容易にふくらはぎLを出し入れすることができる。
【0119】
そこでまず、使用者は、左右のふくらはぎLを前押し用の施療部材160及び裏押し用の施療部材161の間にそれぞれ嵌め入れると共に、左右の足部Fを、水平マッサージ機構150における横押し用の施療部材154,155の間にそれぞれ嵌め入れる。
この状態で電源スイッチ又は運転操作スイッチをオン操作すると、モータ33が作動し、垂直マッサージ機構151では、昇降駆動部31の減速ギヤ部34を介して移動機構26が垂直動スライダ30を上方へ向けて移動開始させる。また、水平マッサージ機構150では、揉み機構185のギアボックス187を介して回転軸186が回転を始める。
【0120】
垂直マッサージ機構151において、垂直動スライダ30が上方へ移動し始めると、支持アーム40の従節ピン50が解放レール48からカムレール47側へ移動し、これら従節ピン50とカムレール47とが当接するようになる。これにより、前押し用の施療部材160及び裏押し用の施療部材161の相互間隔が狭くなる。
すなわち、前押し用の施療部材160によってふくらはぎLの斜め前面(向こう脛の横)が押圧されると共に、裏押し用の施療部材161によってふくらはぎLの後面が押圧され、効果的に指圧マッサージされる状態となる。
【0121】
この状態のまま、垂直動スライダ30は、支持アーム40の従節ピン50がカムレール47に当接し続ける範囲内(解放レール48を除いた領域)で少なくとも1サイクル、所望に応じて複数サイクルにわたり、上下往復動を繰り返すようになっている。複数サイクルの繰り返しを行う場合は、タイマー回路や計数回路に基づくものとしたり、或いは人為的なスイッチ操作に基づくものとすればよい。
【0122】
一方、水平マッサージ機構150においては、回転軸186の回転によって横押し用の施療部材154,155が、互いの前側を離反させると共に互いの後側を近接させ、また反対に、互いの前側を近接させると共に互いの後側を離反させるといった繰り返しの揉みマッサージを、足部Fに対して左右両側から施すことになる。
これらのことから、斬新で快適なマッサージ感が得られ、また血流やリンパの流れに対して実質的且つ直接的な活性化を期待できるようになる。
【0123】
なお、垂直マッサージ機構151と水平マッサージ機構150とは、常に同期して動作するようにしてもよいし、いずれか一方だけを独立して動作するようにしてもよい。これらは、使用者の所望するところに応じて、適宜選択できるようにしておくとよい。
第3実施形態においても、第1実施形態と同様に、バイブレーション機構を設けてもよい。
【0124】
カムレール47は、例えば、上下方向で太さを異ならせるようにすることで、ふくらはぎLの形状(太さの変化)に対応させて、裏押し用の施療部材161に対する前押し用の施療部材160の相互間距離が変化するようにしてもよい。
停電時などの対応として、水平マッサージ機構150によるふくらはぎLの拘束状態や、垂直マッサージ機構151による足部Fの拘束状態を、使用者が手で強制的に解除できるような機構(脱出用の機構)を装備させることも可能である。
【0125】
例えば、第3実施形態では、脱出用の機構として、モータ33の前側に連結されたギアボックス187に対し、その前面で突出する状態で脱出用ダイヤル197を設けてある。この脱出用ダイヤル197を回転操作すると、ギアボックス187内を介してモータ33のモータ軸を回転させることができるようになっている。これにより、水平マッサージ機構150によるふくらはぎLの拘束状態や、垂直マッサージ機構151による足部Fの拘束状態を解除させることができる。また、このような機構は、各部機構のメンテナンスの際にも有効に利用可能となる。
【0126】
ところで、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
例えば、施療部材や押圧部材は、それぞれ、移動方向に沿って回転自在又は駆動回転するローラやボール(球体)などによって形成することも可能である。
【0127】
また、挟持機構は、一対の施療部材の両方を、嵌め入れられた身体の幅方向に向かって移動させて挟持するものとしていたが、一対の施療部材の一方のみを移動させ、身体を挟持するように構成されていても何ら問題はない。
また、本発明に係るマッサージ機は、腕用(上肢用)として構成することもできる。
また、本発明に係るマッサージ機は、椅子型マッサージ装置の座部前方に設けることで、フットレストとして兼用可能な状態に設けることも可能である。
【符号の説明】
【0128】
1 マッサージ機
2 ケーシング
4 第1施療凹部
5 第2施療凹部
6 内張材
10 垂直横押しマッサージ機構
11 垂直裏押しマッサージ機構
12 水平横押しマッサージ機構
13 水平裏押しマッサージ機構
15 支持フレーム
16 台フレーム部
16a 脚桟
16b 水平桟
17 背フレーム部
17a 垂直桟
20 水平レール
21 垂直レール
22 移動機構
23 施療部材
24 施療部材
25 指圧機構
26 移動機構
27 ツボ押し部材
30 垂直動スライダ
31 昇降駆動部
32 ネジ軸
33 モータ
34 減速ギヤ部
35 ナット部材
37 出退駆動部
40 支持アーム
41 支持アーム
43 揺動軸
44 揺動軸
45 解放付勢具
46 解放付勢具
47 カムレール
47a カム面
47b 誘導面
47c 頂点部
47d カム解放領域
50 従節ピン
51 従節ピン
53 施療部材
54 施療部材
55 指圧機構
56 移動機構
57 ツボ押し部材
60 水平動スライダ
61 進退駆動部
62 ネジ軸
64 減速ギヤ部
65 ナット部材
67 出退駆動部
70 支持アーム
71 支持アーム
73 揺動軸
74 揺動軸
75 解放付勢具
76 解放付勢具
77 カムレール
77a カム面
77b 誘導面
77c 頂点部
77d カム解放領域
80 従節ピン
81 従節ピン
85 孔
86 従節子
88 カム面
90 バイブレーション機構
91 振動発生モータ
100 緩衝脚
101 水平振動板
102 緩衝脚
103 垂直振動板
105 小開口
106 指圧突起
107 大開口
108 小開口
109 指圧突起
110 大開口
112 振動受け台
113 偏心分銅
120 モータ支持台
121 防振脚
122 モータブラケット
F 足部
L ふくらはぎ
S 動作領域
T 動作領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
身体の一部を嵌め入れ可能に離れた状態で対向配置された一対の施療部材と、
前記一対の施療部材の少なくとも一方又は両方を、当該一対の施療部材の相互間に嵌め入れられた身体の幅方向に向かって移動させて、身体を挟持し且つ押圧する挟持機構と、
前記挟持機構による施療部材の挟持状態を持続しつつ、前記施療部材を身体の長手方向に沿って移動させる移動機構と、
を有していることを特徴とするマッサージ機。
【請求項2】
前記挟持機構には、前記一対の施療部材を挟持位置へと進出させると共に、解放位置へと退行させる出退駆動部が備えられており、
前記挟持位置は、一対の施療部材が互いに近接して身体を挟持し且つ押圧した状態となる位置とされ、前記解放位置は、一対の施療部材が互いに最も離反した状態となる位置とされていることを特徴とする請求項1に記載のマッサージ機。
【請求項3】
前記移動機構による施療部材の移動範囲の一方端側又は他方端側が、前記一対の施療部材の解放位置となるように設定されていることを特徴とする請求項2に記載のマッサージ機。
【請求項4】
前記施療部材は、拳状の大きさを備えていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のマッサージ機。
【請求項5】
前記一対の施療部材の間には、当該施療部材とは別位置で身体を押圧する押圧部材が設けられており、
前記移動機構は、一対の施療部材の移動に連動して、前記押圧部材を身体の長手方向に沿って移動可能としていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のマッサージ機。
【請求項6】
前記身体の一部が、膝と足首との間に位置する「ふくらはぎ」であって、
前記挟持機構は、前記一対の施療部材でふくらはぎの左右両側を挟持しつつ押圧するように構成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のマッサージ機。
【請求項7】
前記身体の一部が、膝と足首との間に位置する「ふくらはぎ」であって、
前記挟持機構は、前記一対の施療部材でふくらはぎに対し、前面から左右の斜め外方にずれた箇所とふくらはぎの裏面とを挟持しつつ押圧するように構成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のマッサージ機。
【請求項8】
前記身体の一部が、くるぶしより下側の「足部」であって、
前記挟持機構は、前記一対の施療部材で足部の左右両側を挟持しつつ押圧するように構成されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のマッサージ機。
【請求項9】
前記身体の一部が、上肢であって、
前記挟持機構は、前記一対の施療部材で上肢の左右両側を挟持しつつ押圧するように構成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のマッサージ機。
【請求項10】
前記一対の施療部材間で構成される施療凹部が左右一対設けられ、前記一対の施療凹部は、当該凹部の長手方向が同方向となるように並設されていることを特徴とする請求項6〜9のいずれかに記載のマッサージ機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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