マッサージ装置
【課題】本発明は振動子を施療部に押し当ててマッサージを行うマッサージ装置に関し、マッサージ効果及び使用感の向上を図ることを課題とする。
【解決手段】基部11Aと、使用者の施療部に当接され当該施療部を振動によりマッサージを行う接触部17(振動モータ15を内設)と、一端が固定部13に固定されると共に他端部に接触部17が取り付けられるコイルばね14(14A〜14D)とを有し、このコイルばね14(14A〜14D)のばね定数を施療部の皮膚応力に基づき設定する。この際、一の施療部に対応するコイルばね14Aのばね定数を、この施療部よりも小さい皮膚応力を有する他の施療部に対応するコイルばね14Aのばね定数に比べて大きく設定する。
【解決手段】基部11Aと、使用者の施療部に当接され当該施療部を振動によりマッサージを行う接触部17(振動モータ15を内設)と、一端が固定部13に固定されると共に他端部に接触部17が取り付けられるコイルばね14(14A〜14D)とを有し、このコイルばね14(14A〜14D)のばね定数を施療部の皮膚応力に基づき設定する。この際、一の施療部に対応するコイルばね14Aのばね定数を、この施療部よりも小さい皮膚応力を有する他の施療部に対応するコイルばね14Aのばね定数に比べて大きく設定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はマッサージ装置に係り、特に振動子を施療部に押し当ててマッサージを行うマッサージ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、肩,腰,足等の凝りを解消するマッサージ装置が知られている。また近年、美顔の方法の一つとして、顔のつぼを指圧したりマッサージしたりすることも行われている。このマッサージの手法としては、施術者或いは本人がつぼや凝っている位置(以下、施療部という)を指で指圧したり振動させたりしてマッサージを行うことが一般的である。これにより施療部における血行の増進及び代謝の向上等を図ることができ、当該施療部における適応症状の改善を図ることができる。
【0003】
しかしながら、施術者或いは本人等による人の指による指圧では、一度に多数のつぼを指圧することはできない。また、人の指による指圧では、施術者や本人の負担が大きくなってしまう。そこで、これを改善するために複数個所に振動子を設けたマッサージ装置が提供されている(特許文献1,2)。このマッサージ装置を用いることにより、複数の施療部を同時にマッサージできるため、指で指圧する方法に比べて施術を行う者の負担を軽減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−000503号公報
【特許文献2】特開2001−346845号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のマッサージ装置は振動子が発生する振動の強弱は調整可能なものはあっても、振動子を施療部に押圧する押圧力については均一とされていた。具体的には、特許文献1に開示されたマッサージ器では、施療部に向け突出した突起の長さは均一とされている。よって、突起の施療部に対する押圧力は、使用者の施療部における皮膚の物理特性に拘わらず均一となる。このため施療部では、均一の力で押圧された状態でマッサージが実施される。
【0006】
また、特許文献2に開示されたマッサージ器は、圧縮コイルばねに装着された振動突起を筐体に複数個配置した構成とされているが、複数の圧縮コイルばねは全て同一のばね定数とされている。このため、マッサージ器を施療部に押し当てた際、圧縮コイルばねは施療部の形態に倣って変形するため、全ての振動突起を確実に施療部に押し当てることができる。しかしながら、各圧縮コイルばねのばね定数が同じであることにより、特許文献2のマッサージ器においても、施療部における振動突起の施療部に対する押圧力は、施療部における皮膚の物理特性に拘わらず均一の力で押圧される。
【0007】
しかしながら、皮膚の物理特性は均一ではなく、人の部位によって異なっている。よって、このように異なる皮膚の物理特性を有する施療部に均一の押圧力でマッサージを実施した場合、強いマッサージ効果を得られる施療部と、逆にマッサージ効果が低下する施療部が発生してしまう。これにより、所望するマッサージ効果を得ることができず、また使用者にとってはマッサージが強いと感じる施療部とマッサージが弱いと感じる施療部が混在し使用感が不良となるという問題点があった。
【0008】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、確実にマッサージ効果を得られると共に使用感の向上を図ったマッサージ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題は、第1の観点からは、
基部と、
使用者の施療部に当接され、当該施療部を振動によりマッサージを行う振動子と、
一端が前記基部に固定されると共に他端部に前記振動子が取り付けられるばね部材とを有し、
前記ばね部材のばね定数を、前記施療部の皮膚応力に基づき設定したことを特徴とするマッサージ装置により解決することができる。
【0010】
また、上記発明において、一の前記施療部に対応する前記ばね部材のばね定数を、前記一の施療部よりも小さい皮膚応力を有する他の前記施療部に対応する前記ばね部材のばね定数に比べて大きく設定することができる。
【0011】
また、上記発明において、前記振動子の前記施療部と当接する位置に、隣接する間隔が5mm以下1mm以上とされた複数の突起部を形成することができる。
【0012】
また、上記発明において、前記振動子は、円盤型の振動モータを有する構成とすることができる。
【発明の効果】
【0013】
開示のマッサージ装置は、施療部の皮膚応力に適合したマッサージを行うことができるため、マッサージ効果の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明の第1実施形態であるマッサージ装置の斜視図である。
【図2】図2は、本発明の第1実施形態であるマッサージ用マスクを装着している状態を示す部分断面図である。
【図3】図3は、振動体が被装着者の肌に触れた状態を拡大して示す図である。
【図4】図4は、本発明の第1実施形態であるマッサージ用マスクに用いる振動体を拡大して示す斜視図である。
【図5】図5は、接触部の種々の構成例を示す図である。
【図6】図6は、振動体と皮膚を弾性体として示したモデル図である。
【図7】図7は、真皮をマッサージする場合と表皮をマッサージする場合におけるばね定数の選定を説明するための図である。
【図8】図8は、頬近傍の皮膚応力を測定した結果の一例を示す図である(その1)。
【図9】図9は、頬近傍の皮膚応力を測定した結果の一例を示す図である(その2)。
【図10】図10は、頬近傍の皮膚応力を測定した結果の一例を示す図である(その3)。
【図11】図11は、頬近傍の皮膚応力を測定した結果の一例を示す図である(その4)。
【図12】図12は、頬近傍の皮膚応力を測定した結果の一例を示す図である(その5)。
【図13】図13は、頬近傍の皮膚応力を測定した結果の一例を示す図である(その6)。
【図14】図14は、頭骨と皮膚応力の関係を示す図である。
【図15】図15は、コイルばねのばね定数及びばね定数と皮膚応力の相関関係を示す図である。
【図16】図16は、本発明の第1実施形態であるマッサージ装置の内側を示す図である。
【図17】図17は、本発明の第2実施形態であるマッサージ装置の斜視図である。
【図18】図18は、目下領域における皮膚応力の測定位置を示す図である。
【図19】図19は、目下領域の皮膚応力を測定した結果の一例を示す図である(その1)。
【図20】図20は、目下領域の皮膚応力を測定した結果の一例を示す図である(その2)。
【図21】図21は、目下領域の皮膚応力を測定した結果の一例を示す図である(その3)。
【図22】図22は、目下領域の皮膚応力を測定した結果の一例を示す図である(その4)。
【図23】図23は、目下領域の皮膚応力を測定した結果の一例を示す図である(その5)。
【図24】図24は、目下領域の皮膚応力を測定した結果の一例を示す図である(その6)。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明の実施の形態について図面と共に説明する。
【0016】
図1乃至図4は、本発明の第1実施形態であるマッサージ装置10Aを説明するための図である。図1はマッサージ装置10Aの斜視図であり、図2はマッサージ装置10Aの装着状態を示す図であり、図3は接触部17が皮膚AAに接触している状態を拡大して示す図であり、図4は振動体12を拡大して示す斜視図である。
【0017】
マッサージ装置10Aは、基部11Aと振動体12A〜12D(各振動体12A〜12Dを総称する場合には、振動体12と示す)とを有した構成とされている。本実施形態に係るマッサージ装置10Aは、図2に示すように使用者Aの顔に装着して使用される。
【0018】
尚、振動体12A〜振動体12Dは基部11Aの中心位置(使用者Aが装着したときの鼻の位置に対応する)に対し、左右対称となるよう配置されているが、以下の説明では説明及び図示の便宜上、片側(図中右側)の振動体12A〜12Dについてのみ説明するものとする。
【0019】
基部11Aは、アクリロニトリルスチレンブタジエン共重合体(ABS)、ポリカーボネート(PC)、ポリプロピレン(PP)等の樹脂により形成されている。また、本実施形態に係るマッサージ装置10Aの形状は、基部11Aの内面10aが使用者Aの顔形状に対応した形状となるよう構成されている。尚、基部11Aの使用者Aの鼻及び口に対向する位置に通気孔を設け、マッサージ装置10Aの装着時に使用者Aが息苦しくならないよう構成してもよい。
【0020】
振動体12(振動体12A〜12D)は、図3及び図4に示すようにマッサージ装置10Aの内面10aに複数個配設されている。この振動体12は接触部17が振動することにより、施療部(例えば、顔のつぼ)を振動によりマッサージする機能を奏するものである。振動体12が使用者Aの顔の施療部を振動によりマッサージすることにより、使用者Aの血行の増進及び代謝の向上等を図ることができる。
【0021】
この振動体12は、固定部13、コイルばね14A〜14D(各コイルばね14A〜14Dを総称する場合には、コイルばね14と示す)、振動モータ15、及び接触部17等を有した構成とされている。固定部13は樹脂により形成されており、基部11Aに固定される。基部11Aの振動体12が配設される部位には有底筒状に窪んだ装着部11aが形成されており、固定部13はこの装着部11aの底部に固定される(図3参照)。これにより、振動体12は基部11Aに固定される。
【0022】
コイルばね14は、バネ材よりなる線材をコイル状に巻回した構成とされている。本実施例では、固定部13と接触部17との間に配設されるばね部材としてコイルばね14を用いている。しかしながら、ばね定数を可変できるもので、かつ接触部17を皮膚AAに押圧付勢できるばね部材であれば、他の構成のばねを用いることも可能である。
【0023】
コイルばね14は、その基部11A側の端部が固定部13に固定され、他端部には接触部17が取り付けられている。本実施形態では、振動体12A〜12Dに設けられる各コイルばね14A〜14Dのばね定数は、振動体12A〜12D(接触部17)が接触する皮膚AAの皮膚応力に応じて設定されている。尚これについての詳細は、説明の便宜上後述するものとする。
【0024】
接触部17は、球形状の本体部に複数の突起部18を有している。使用者Aがマッサージ装置10Aを装着した際、図3に示すように接触部17(突起部18)は使用者Aの肌に当接する。また、接触部17の側部には装着溝19が形成されており、振動モータ15はこの装着溝19内に装着される。振動モータ15は小型円盤形状を有し、内設された偏重心とされた回転子を回転させることにより振動を生成する構成とされている。よって、振動モータ15が作動することにより接触部17は振動する。またバネによってその振動は増幅される。
【0025】
振動体12の配設位置は、接触部17が使用者Aが望む施療部に当接するよう設定されている。一般に顔には30箇所以上のつぼが存在するといわれており、各つぼのマッサージ効果は各つぼの位置により異なっている。そこで、振動体12の配設位置は、使用者Aが所望する療養効果を得られる皮膚上の位置(この位置を施療部という)に設定されている。
【0026】
ここで、本願の発明者(以下、本発明者という)が先に提案した圧刺激条件と血管拡張因子である一酸化窒素(NO)の生産量との関係について簡単に述べる(特開2009-204452公報参照)。
【0027】
本発明者はその研究において、皮膚に対して圧刺激を与えることにより血管拡張因子である一酸化窒素(NO)の生産量が増大することを発見するに至り、これに基づき圧刺激条件による一酸化窒素(NO)の生産量を調べる各種実験を行った。具体的な皮膚に与える圧刺激条件としては、以下の(a)〜(d)を実施した。
(a)皮膚に対する圧点数の増減する
(b)皮膚に印加する温度を変化させる
(c)皮膚に刺激を与える速度を変化させる
(d)皮膚に印加する重さを変化させる
上記(a)〜(d)のいずれにおいても、下記の条件に基づき実験を行った。即ち、先ず10〜13週齢のへアレスマウスの腹腔内に25%Carbomic acid ethyl ester溶液を4ml/kg投与して麻酔した状態で、背部の皮膚を採取し、安楽死させた後、筋層、血管をメスで整形して、1.5cm×15cmの皮膚組織片を得た。
【0028】
皮膚組織片をメッシュ状のテフロン(登録商標)上に載せた後、培地MCDB153(シグマ社製)が2mL入った培養皿に浮かせて、CO2インキュベーター(37℃、5%CO2、湿度95%)で2時間培養した。次に、10μMのDAF−2(第一化学薬品社製)を添加したBalanced Salt Solution(BSS)に培地を交換し、更に1時間培養した。
【0029】
ここで、BSSはNaCl(150mM)、KCl(5mM)、CaCl2(1.8mM)、MgCl2(1.2mM)、HEPES(25mM)、NaH2PO4(1.2mM)及びD−グルコース(10mM)からなり、pHは7.4である。そして、この時に得られた培養液400μLを回収して遠心分離した後、上清を回収し、刺激前の試料とした。
【0030】
更に、培養した皮膚組織片の角層の上に、ウレタンゴムシートを敷き、その上から、円柱形状のおもり(直径2cm、高さ2cm、53g)を用いて、後述する所定の条件下で押圧刺激した。また、比較のため、CO2インキュベーター(37℃、5%CO2、湿度95%)内で10分間押圧刺激しない場合(無刺激)も実施した。得られた培養液400μLを回収して遠心分離した後、上清を回収し、刺激後の試料とした。得られた刺激前後の試料を室温(23℃)で1時間インキュベートした後、蛍光測定専用96穴プレートに移し、マイクロプレートリーダーを用いて蛍光測定した。
【0031】
上記の実験条件下、上記(a)の実験結果について述べる。(a)の実験では、おもりに複数の突起を設けることにより、圧点数を増大させた。具体的には、圧点数が4.5、12.5、30又は81cm−2であるおもりを用いた。その結果、圧点数が多い程、NO産生量の増加率が増大していることがわかった。よって、圧点数を多くした方が、血管拡張が増大しマッサージ効果を向上できることが判明した。
【0032】
次に、上記の実験条件下、上記(b)の実験結果について述べる。(b)の実験では、刺激の印加時の環境温度を37℃,33℃,及び23℃(室温)とした。その結果、刺激印加時の環境温度が23℃(室温)である場合に比べ、33℃又は37℃である場合の方がNO産生量の増加率が増大していることがわかった。よって、刺激を与える(即ち、マッサージを行う)環境の温度を高くした方が、血管拡張が増大しマッサージ効果を向上できることが判明した。
【0033】
次に、上記の実験条件下、上記(c)の実験結果について述べる。(c)の実験では、刺激を与えるおもりを転がす速度を1分間に8.5往復、1分間に23.5往復、1分間に38.5往復とした。その結果、1分間に8.5往復である場合に比べ、1分間に23.5往復とした方がNO産生量の増加率が増大していることがわかった。また、1分間に8.5往復である場合に比べ、1分間に38.5往復とした方がNO産生量の増加率が増大していることがわかった。よって、刺激を与える速度を速くした方が、血管拡張が増大しマッサージ効果を向上できることが判明した。
【0034】
次に、上記の実験条件下、上記(d)の実験結果について述べる。(d)の実験では、刺激を与えるおもりとして重さが53gのおもりと、重さが17gのおもりの二種類を用いた。その結果、無刺激の場合に比べておもりの重さが17gである場合の方がNO産生量の増加率が増大し、またおもりの重さが17gである場合に比べておもりの重さが53gである場合の方がNO産生量の増加率が増大していることがわかった。よって、皮膚に印加する重さ(即ち、マッサーの強さ)を大きく(強く)した方が、血管拡張が増大しマッサージ効果を向上できることが判明した。
【0035】
次に、本発明者は上記した実験結果を本発明の対象となるマッサージ装置に応用するための考察を行った。
【0036】
上記の(a)の実験結果は、マッサージ装置10Aを構成する振動体12の接触部17に適用が可能である。即ち、接触部の形状を図5(A)に示す単なる球形状の接触部17a、或いは図5(B)に示す平面形状の接触部17bとすることができる。しかしながら、単なる球形状の接触部17a或いは平面形状の接触部17bでは、皮膚に対する圧点数が少なくなり、血管拡張の増大(マッサージ効果の向上)を望むことはできない。
【0037】
しかしながら、図5(C)〜(D)に示すように平面形状の接触部の本体部分に複数の突起18を設けた接触部17c〜17e、或いは球面状の接触部の本体部分に複数の突起部18を設けた17fとすることにより、接触部17c〜17fが皮膚AAに接触する際の圧点数は増大し、血管拡張が増大しマッサージ効果を向上されることができる。
【0038】
また、上記の(b)の実験結果は、接触部17にヒータを設けること等によりマッサージ装置に適用することが可能である。また、上記の(c)の実験結果は、振動モータ15に印加する電圧を調整し、振動モータ15が発生する振動の強弱を調整すること等により、マッサージ装置に適用することが可能である。
【0039】
これに対し、上記の(d)の実験結果は、マッサージ装置10Aを構成する振動体12のコイルばね14に適用が可能である。即ち、コイルばね14のばね定数を大きくすることにより、振動を行う(即ち、刺激を与える)接触部17を強く皮膚AAに押圧することが可能となり、血管拡張の増大(即ち、マッサージ効果の向上)を図れるようにも思われる。
【0040】
しかしながら本発明者の実験では、基部11Aに複数個配設される振動体12のコイルばね14のばね定数を一律に大きくした場合、良好な血管拡張の増大(即ち、マッサージ効果の向上)は期待できない。
【0041】
この理由について、図6を用いて説明する。図6は、振動体12と皮膚AAを弾性体として示したモデル図である。使用者Aの皮膚AAは、例えば顔を例に挙げると骨格上に真皮,表皮等が積層された構造を有し、またこの真皮,表皮等は弾性的に変形が可能なものであり、よってばね定数(K2)を有した一種のばねと等価なものと考えることができる。従って、これをばねのモデルとして描くと、図6に示すように、振動モータ15(接触部17)の一方にばね定数K1のコイルばね14が接続し、他方にばね(ばね定数K2)としての皮膚AAが接続したモデルが形成される。
【0042】
ここで、図6に示すモデルにおいて、皮膚AAのばね定数が所定値であると仮定し(K2=一定)、この条件の下でコイルばね14のばね定数(K1)を変化させることを考える。先ず、皮膚AAのばね定数K2に対してコイルばね14のばね定数K1が大きい場合(K1>K2)を想定する。図7(A)はこの状態を示している。
【0043】
コイルばね14のばね定数K1が皮膚AAのばね定数K2よりも大きい(K1>K2)場合、振動モータ15は強く皮膚AAに対して押圧されることとなる。また、振動モータ15で発生する振動は、コイルばね14で減衰されることなく皮膚AAに伝達され、よって皮膚AAの奥まで振動が印加されることとなる。よって、皮膚AAの深層まで振動モータ15の振動は作用し、血管拡張が増大しマッサージ効果の向上を図ることができる。
【0044】
一方、コイルばね14のばね定数K1が皮膚AAのばね定数K2よりも小さい(K1<K2)場合、振動モータ15の皮膚AAに対する押圧力は小さくなる。図7(B)は、この状態を示している。またこの状態では、振動モータ15で発生する振動は、コイルばね14のばね定数K1が小さいことによりコイルばね14で減衰され、皮膚AAへの伝達は小さくなる。よって振動モータ15の振動は、皮膚AAの表層のみに作用することとなり、皮膚AAの深層には作用しない。このため、皮膚AAの深層における血管拡張の増大は期待できない。
【0045】
尚、近年の研究(Jouranal of Investigative Dermotology 2009 Ikeyama ら)において、皮膚AAの表皮に対して圧刺激を行うことにより、皮膚AAの表皮から血管拡張因子(NO)が産生され、真皮に存在する血管やリンパ管を拡張させることが明らかになった。よって、コイルばね14のばね定数K1を皮膚AAのばね定数K2よりも小さく設定することにより、血行促進などの美容効果の増進を期待することができる。
【0046】
ところで、上記の説明では皮膚AAのばね定数K2を一定であると仮定して説明を行ってきたが、実際に使用者Aの皮膚AAの状態は各部位で異なり、それぞれの物理特定(上記のばね定数も含む)も異なる。そこで本発明者は、マッサージ装置10Aを使用する使用者Aの皮膚AAの物理特性を測定し、その測定結果に基づきコイルばね14のばね定数K1を求めることを試みた。
【0047】
図6及び図7に示したモデル図からすると、使用者Aの皮膚AAのばね定数K2を直接測定することができることが望ましい。しかしながら、実際は使用者Aの皮膚AAのばね定数K2を直接測定することは困難である。そこで、本発明者は皮膚AAの物理特性として皮膚AAの応力(以下、これを皮膚応力という)を測定し、この皮膚応力に基づきコイルばね14のばね定数K1を設定することとした。具体的には、本実施形態では1秒間に10mm皮膚を押したときに、得られる応力を皮膚応力と定義する。
【0048】
一般に、皮膚AAが柔らかい部分は皮膚応力が小さく、よって皮膚AAのばね定数K2は小さい。逆に皮膚AAが硬い部分は皮膚応力が大きく、よって皮膚AAのばね定数K2は大きい。このように、皮膚AAの皮膚応力と皮膚AAのばね定数K2は相関関係があるため、皮膚AAの皮膚応力に基づきコイルばね14のばね定数K1を設定することが可能である。
【0049】
本実施形態に係るマッサージ装置10Aは使用者Aの顔に装着し、顔をマッサージするものであるため、本発明者は図8(A)〜図13(A)に示す被験者に対し、顔の皮膚応力を測定する実験を行った。顔の皮膚応力を測定する具体的な方法としては、測定装置としてフォースケージを用い、これを顔の目,鼻,口,耳で囲まれる領域(だいたい頬の位置となる)に縦7点、横4点の合計28点の測定位置を設定し、この各測定点にフォースケージを押し当てて皮膚応力の測定を行った。具体的には、フォースケージを各部位に対して1秒間に10mm皮膚を押したときに得られる応力を皮膚応力として測定した。
【0050】
その結果を図8(B)〜図13(B)に示す。各図に示す数値はフォースケージによる測定値(単位、g)を示している。また、測定値を0.1g未満(柔らかい)、0.1g以上0.2g未満(やや柔らかい)、0.2g以上0.3g未満(やや硬い)、0.3g以上(硬い)の四分類に区分し、それぞれを濃淡を分けて付すことにより表示している。
【0051】
尚、図8(A)〜図13(A)に示す被験者の顔には、図8(B)〜図13(B)に示した実験結果である皮膚応力の分布が、図8(B)〜図13(B)に示した濃淡と同様の濃淡を付すことにより示されている。
【0052】
この皮膚応力を測定する実験結果より、個人的なばらつきは存在するものの、各被験者は大略的には共通した皮膚応力を有していることが判明した。図14は、頭蓋骨上に上記した実験結果の平均値を図8(B)〜図13(B)に示した濃淡と同様の濃淡を付すことにより示されている。同図より、下顎骨と上顎骨の間は「柔らかい」領域となっており、下顎骨周辺は「やや柔らかい」領域となっており、上顎骨周辺は「やや硬い」領域となっており、頬骨周辺は「硬い」領域となっていることがわかる。
【0053】
図15は、皮膚応力とコイルばねの線径との関係、及び皮膚応力とコイルばねのばね定数との関係を示している。
【0054】
本発明者は、皮膚応力とコイルばねの線径との関係を求めるため、次のような実験を行った。皮膚応力については、上記したようにフォースケージを所定の顔の測定点に押し当てて皮膚応力の測定を行った。そこで、外径及び自由長を一定値とした上で、線径を変化させた各種コイルばねを用意し、皮膚応力を測定するのと同様の方法で各種コイルばねを押圧したときに発生する応力をフォースケージで測定した。具体的には、各種コイルばねをフォースケージで1秒間に10mm押し、この時にフォースケージで測定される応力を求めた。この際、本実施形態で、コイルばねの外径を10mmとし、自由長を20mmとして応力測定を行った。
【0055】
前記のように本実施形態では皮膚応力を0.1g未満(柔らかい)、0.1g以上0.2g未満(やや柔らかい)、0.2g以上0.3g未満(やや硬い)、0.3g以上(硬い)の四分類に区分した。そこで、コイルばねの線径と応力との関係についても、測定されたコイルばねの応力を皮膚応力の四分類に対応するよう分類したところ、図15に示すように線径が分類された。
【0056】
即ち、皮膚応力が0.1g未満(柔らかい)に対応するコイルばねの線径は0.53mm未満であった。また、皮膚応力が0.1g以上0.2g未満(やや柔らかい)に対応するコイルばねの線径は0.53mm以上0.65mm未満であった。また、皮膚応力が0.2g以上0.3g未満(やや硬い)に対応するコイルばねの線径は0.65mm以上0.75mm未満であった。更に、皮膚応力が0.3g以上(硬い)に対応するコイルばねの線径は0.75mm以上であった。
【0057】
ところで、上記した皮膚応力とばね線径との相関関係では、コイルばねの外径及び自由長が一定に規定されたものであるため、コイルばね選定に際し一般化されていないため使用し難い面がある。このため本実験者は、コイルばねの線径とばね定数との相関についても求めることとした。周知のようにばね定数と線径は相関しているため、この相関関係に基づき線径からばね定数を求めることができる。このようにして求めたばね定数の値を、図15に皮膚応力の分類に対応するよう記載した。
【0058】
その結果、皮膚応力が0.1g未満(柔らかい)に対応するコイルばねのばね定数は0.2N/mm未満であった。また、皮膚応力が0.1g以上0.2g未満(やや柔らかい)に対応するコイルばねのばね定数は0.2N/mm以上0.4N/mm未満であった。また、皮膚応力が0.2g以上0.3g未満(やや硬い)に対応するコイルばねのばね定数は0.4N/mm以上1.0N/mm未満であった。更に、皮膚応力が0.3g以上(硬い)に対応するコイルばねのばね定数は1.0N/mm以上であった。
【0059】
このように、ばね定数と皮膚応力が対応付けされることにより、コイルばねの線径、外径、自由長の設定に自由度を持たせることができ、コイルばねの選定が容易となる。具体的には、図15に参考例1に示す線径が0.9mm、外径が12mm、自由長が17mmのコイルばねは、ばね定数が1,37N/mmであるため、皮膚応力が0.3g以上の硬い場合に適用することができる。また、図15に参考例2に示す線径が0.29mm、外径が3.5mm、自由長が6.5mmのコイルばねは、ばね定数が0.46N/mmであるため、皮膚応力が0.2g以上0.3g未満のやや硬い場合に適用することができる。
【0060】
また、図15に参考例3に示す線径が0.32mm、外径が3.2mm、自由長が14.0mmのコイルばねは、ばね定数が0.33N/mmであるため、皮膚応力が0.1g以上0.2g未満のやや柔らかい場合に適用することができる。更に、図15に参考例4に示す線径が0.35mm、外径が6.0mm、自由長が14.0mmのコイルばねは、ばね定数が0.14N/mmであるため、皮膚応力が0.1g未満の柔らかい場合に適用することができる。
【0061】
次に、図15を用いてマッサージ装置10Aに配設される各振動体12A〜12Dのコイルばね14A〜14Bの線径(ばね定数K2)の設定の方法について説明する。以下の説明では、マッサージ装置10Aを血管拡張の増大させマッサージ効果の向上を図るために用いる場合について説明する。
【0062】
図16は、本実施形態に係るマッサージ装置10Aを内側から見た図である。振動体12Aは、マッサージ装置10Aを使用者Aが装着した場合、使用者Aの皮膚AAで下顎骨と上顎骨の間の位置に接触する。即ち、振動体12Aは下顎骨と上顎骨の間の位置を施療部とする。この下顎骨と上顎骨との間位置における皮膚応力は、柔らかい0.1g未満である。よって本実施形態では、図15より振動体12Aに適用するコイルばね14Aの線径を0.53mm未満(本実施形態では0.5mm)、ばね定数としては0.2N/mm未満に設定した。
【0063】
また、振動体12Bは、下顎骨周辺を施療部とする。この下顎骨周辺の位置における皮膚応力は、やや柔らかい0.1g以上0.2g未満である。よって本実施形態では、図15より振動体12Bに適用するコイルばね14Bの線径を0.53mm以上0.65mm未満(本実施形態では0.6mm)、ばね定数としては0.2N/mm以上0.4N/mm未満に設定した。
【0064】
また、振動体12Cは、上顎骨周辺を施療部とする。この上顎骨周辺の位置における皮膚応力は、やや硬い0.2g以上0.3g未満である。よって本実施形態では、図15より振動体12Cに適用するコイルばね14Cの線径を0.65mm以上0.75mm未満(本実施形態では0.7mm)、ばね定数としては0.4N/mm以上1.0N/mm未満に設定した。
【0065】
また、振動体12Dは、頬骨周辺を施療部とする。この頬骨周辺の位置における皮膚応力は、硬い0.3g以上である。よって本実施形態では、図15より振動体12Dに適用するコイルばね14Dの線径を0.75mm以上(本実施形態では0.8mm)、ばね定数としては1.0N/mm以上に設定した。
【0066】
上記のようにマッサージ装置10Aに配設されるコイルばね14A〜14Dの線径,ばね定数を設定することにより、全ての振動体12A〜12Dに対応する施療部において、振動モータ15の振動を皮膚AAの深層まで作用させることができ、血管拡張の増大及びマッサージ効果の向上を図ることができる。
【0067】
図17は、本発明の第2実施形態であるマッサージ装置10Bを示している。
【0068】
前記した第1実施形態に係るマッサージ装置10Aは、主に使用者Aの頬近傍を施療部とするものであった。これに対して本実施形態に係るマッサージ装置10Bは、図18に示す使用者Aの目Eの下部の領域(目下領域EKという)を施療部とするものである。この目下領域EKは、目のくまが発生する領域として知られている。尚、図17〜図24において、図1乃至図16に示した構成と対応する構成については同一符号を付し、その説明を適宜省略する。
【0069】
マッサージ装置10Bは、使用者Aの目の近傍の顔形状に対応した基部11Bと、振動体12E,12Fにより構成されている。
【0070】
尚、振動体12E,12Fは基部11Bの中心位置(使用者Aが装着したときの両目の中心位置に対応する)に対し、左右対称となるよう配置されているが、以下の説明では説明及び図示の便宜上、片側(図中右側)の振動体12E,12Fについてのみ説明するものとする。
【0071】
本実施形態に係るマッサージ装置10Bを作成するに際し、目下領域EKの皮膚応力を測定した。測定位置は、図18に示すように、目Eの下部で目頭から目の中心位置との間の中間位置(図中、P1で示す位置)と、目尻の下(図中、P2で示す位置)とを測定した。皮膚応力の測定方法は、図19(A)〜図24(A)に示す被験者に対し、目下領域EKの皮膚応力を測定する実験を行った。この皮膚応力の測定は、第1実施形態と同様にフォースケージを用いて行った。
【0072】
その結果を図19(B)〜図24(B)に示す。各図に示す数値は第1実施形態と同様であり、測定値を0.1g未満(柔らかい)、0.1g以上0.2g未満(やや柔らかい)、0.2g以上0.3g未満(やや硬い)、0.3g以上(硬い)の四分類に区分し、それぞれを濃淡を分けて付すことにより表示している。
【0073】
本実施形態では、図24に示す被験者に対応したマッサージ装置10Bを例に挙げて説明する。図24に示す被験者(以下、使用者Aという)は、位置P1の皮膚応力が0.25gであり、位置P2における皮膚応力が0.30gである。また、図15に示した皮膚応力とコイルばねの線径及びばね定数との相関図は顔を対象としたものであり、本実施形態においても使用することができる。
【0074】
そこで、本実施形態では位置P1を施療部とする振動体12Eのコイルばね14Eの線径を0.2g以上0.3g未満のやや硬い領域に対応した0.65mm以上0.75mm未満(本実施形態では0.7mm)、ばね定数としては0.4N/mm以上1.0N/mm未満に設定した。また、位置P2を施療部とする振動体12Fのコイルばね14Fの線径を0.3g以上の硬い領域に対応した0.75mm以上(本実施形態では0.8mm)、ばね定数としては1.0N/mm以上に設定した。
【0075】
このように設定することにより、目下領域EKにおける表皮近傍における血行の促進を図ることができ、目にくまが発生してもこれを確実に療養することが可能となる。
【0076】
以上、本発明の好ましい実施例について詳述したが、本発明は上記した特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能なものである。
【符号の説明】
【0077】
10A,10B マッサージ装置
11A,11B 基部
12,12A〜12F 振動体
13 固定部 名詞
14,14A〜14F コイルばね
15 振動モータ
17 接触部
A 被装着者
AA 皮膚
E 目
EK 目下領域
【技術分野】
【0001】
本発明はマッサージ装置に係り、特に振動子を施療部に押し当ててマッサージを行うマッサージ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、肩,腰,足等の凝りを解消するマッサージ装置が知られている。また近年、美顔の方法の一つとして、顔のつぼを指圧したりマッサージしたりすることも行われている。このマッサージの手法としては、施術者或いは本人がつぼや凝っている位置(以下、施療部という)を指で指圧したり振動させたりしてマッサージを行うことが一般的である。これにより施療部における血行の増進及び代謝の向上等を図ることができ、当該施療部における適応症状の改善を図ることができる。
【0003】
しかしながら、施術者或いは本人等による人の指による指圧では、一度に多数のつぼを指圧することはできない。また、人の指による指圧では、施術者や本人の負担が大きくなってしまう。そこで、これを改善するために複数個所に振動子を設けたマッサージ装置が提供されている(特許文献1,2)。このマッサージ装置を用いることにより、複数の施療部を同時にマッサージできるため、指で指圧する方法に比べて施術を行う者の負担を軽減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−000503号公報
【特許文献2】特開2001−346845号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のマッサージ装置は振動子が発生する振動の強弱は調整可能なものはあっても、振動子を施療部に押圧する押圧力については均一とされていた。具体的には、特許文献1に開示されたマッサージ器では、施療部に向け突出した突起の長さは均一とされている。よって、突起の施療部に対する押圧力は、使用者の施療部における皮膚の物理特性に拘わらず均一となる。このため施療部では、均一の力で押圧された状態でマッサージが実施される。
【0006】
また、特許文献2に開示されたマッサージ器は、圧縮コイルばねに装着された振動突起を筐体に複数個配置した構成とされているが、複数の圧縮コイルばねは全て同一のばね定数とされている。このため、マッサージ器を施療部に押し当てた際、圧縮コイルばねは施療部の形態に倣って変形するため、全ての振動突起を確実に施療部に押し当てることができる。しかしながら、各圧縮コイルばねのばね定数が同じであることにより、特許文献2のマッサージ器においても、施療部における振動突起の施療部に対する押圧力は、施療部における皮膚の物理特性に拘わらず均一の力で押圧される。
【0007】
しかしながら、皮膚の物理特性は均一ではなく、人の部位によって異なっている。よって、このように異なる皮膚の物理特性を有する施療部に均一の押圧力でマッサージを実施した場合、強いマッサージ効果を得られる施療部と、逆にマッサージ効果が低下する施療部が発生してしまう。これにより、所望するマッサージ効果を得ることができず、また使用者にとってはマッサージが強いと感じる施療部とマッサージが弱いと感じる施療部が混在し使用感が不良となるという問題点があった。
【0008】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、確実にマッサージ効果を得られると共に使用感の向上を図ったマッサージ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題は、第1の観点からは、
基部と、
使用者の施療部に当接され、当該施療部を振動によりマッサージを行う振動子と、
一端が前記基部に固定されると共に他端部に前記振動子が取り付けられるばね部材とを有し、
前記ばね部材のばね定数を、前記施療部の皮膚応力に基づき設定したことを特徴とするマッサージ装置により解決することができる。
【0010】
また、上記発明において、一の前記施療部に対応する前記ばね部材のばね定数を、前記一の施療部よりも小さい皮膚応力を有する他の前記施療部に対応する前記ばね部材のばね定数に比べて大きく設定することができる。
【0011】
また、上記発明において、前記振動子の前記施療部と当接する位置に、隣接する間隔が5mm以下1mm以上とされた複数の突起部を形成することができる。
【0012】
また、上記発明において、前記振動子は、円盤型の振動モータを有する構成とすることができる。
【発明の効果】
【0013】
開示のマッサージ装置は、施療部の皮膚応力に適合したマッサージを行うことができるため、マッサージ効果の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明の第1実施形態であるマッサージ装置の斜視図である。
【図2】図2は、本発明の第1実施形態であるマッサージ用マスクを装着している状態を示す部分断面図である。
【図3】図3は、振動体が被装着者の肌に触れた状態を拡大して示す図である。
【図4】図4は、本発明の第1実施形態であるマッサージ用マスクに用いる振動体を拡大して示す斜視図である。
【図5】図5は、接触部の種々の構成例を示す図である。
【図6】図6は、振動体と皮膚を弾性体として示したモデル図である。
【図7】図7は、真皮をマッサージする場合と表皮をマッサージする場合におけるばね定数の選定を説明するための図である。
【図8】図8は、頬近傍の皮膚応力を測定した結果の一例を示す図である(その1)。
【図9】図9は、頬近傍の皮膚応力を測定した結果の一例を示す図である(その2)。
【図10】図10は、頬近傍の皮膚応力を測定した結果の一例を示す図である(その3)。
【図11】図11は、頬近傍の皮膚応力を測定した結果の一例を示す図である(その4)。
【図12】図12は、頬近傍の皮膚応力を測定した結果の一例を示す図である(その5)。
【図13】図13は、頬近傍の皮膚応力を測定した結果の一例を示す図である(その6)。
【図14】図14は、頭骨と皮膚応力の関係を示す図である。
【図15】図15は、コイルばねのばね定数及びばね定数と皮膚応力の相関関係を示す図である。
【図16】図16は、本発明の第1実施形態であるマッサージ装置の内側を示す図である。
【図17】図17は、本発明の第2実施形態であるマッサージ装置の斜視図である。
【図18】図18は、目下領域における皮膚応力の測定位置を示す図である。
【図19】図19は、目下領域の皮膚応力を測定した結果の一例を示す図である(その1)。
【図20】図20は、目下領域の皮膚応力を測定した結果の一例を示す図である(その2)。
【図21】図21は、目下領域の皮膚応力を測定した結果の一例を示す図である(その3)。
【図22】図22は、目下領域の皮膚応力を測定した結果の一例を示す図である(その4)。
【図23】図23は、目下領域の皮膚応力を測定した結果の一例を示す図である(その5)。
【図24】図24は、目下領域の皮膚応力を測定した結果の一例を示す図である(その6)。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明の実施の形態について図面と共に説明する。
【0016】
図1乃至図4は、本発明の第1実施形態であるマッサージ装置10Aを説明するための図である。図1はマッサージ装置10Aの斜視図であり、図2はマッサージ装置10Aの装着状態を示す図であり、図3は接触部17が皮膚AAに接触している状態を拡大して示す図であり、図4は振動体12を拡大して示す斜視図である。
【0017】
マッサージ装置10Aは、基部11Aと振動体12A〜12D(各振動体12A〜12Dを総称する場合には、振動体12と示す)とを有した構成とされている。本実施形態に係るマッサージ装置10Aは、図2に示すように使用者Aの顔に装着して使用される。
【0018】
尚、振動体12A〜振動体12Dは基部11Aの中心位置(使用者Aが装着したときの鼻の位置に対応する)に対し、左右対称となるよう配置されているが、以下の説明では説明及び図示の便宜上、片側(図中右側)の振動体12A〜12Dについてのみ説明するものとする。
【0019】
基部11Aは、アクリロニトリルスチレンブタジエン共重合体(ABS)、ポリカーボネート(PC)、ポリプロピレン(PP)等の樹脂により形成されている。また、本実施形態に係るマッサージ装置10Aの形状は、基部11Aの内面10aが使用者Aの顔形状に対応した形状となるよう構成されている。尚、基部11Aの使用者Aの鼻及び口に対向する位置に通気孔を設け、マッサージ装置10Aの装着時に使用者Aが息苦しくならないよう構成してもよい。
【0020】
振動体12(振動体12A〜12D)は、図3及び図4に示すようにマッサージ装置10Aの内面10aに複数個配設されている。この振動体12は接触部17が振動することにより、施療部(例えば、顔のつぼ)を振動によりマッサージする機能を奏するものである。振動体12が使用者Aの顔の施療部を振動によりマッサージすることにより、使用者Aの血行の増進及び代謝の向上等を図ることができる。
【0021】
この振動体12は、固定部13、コイルばね14A〜14D(各コイルばね14A〜14Dを総称する場合には、コイルばね14と示す)、振動モータ15、及び接触部17等を有した構成とされている。固定部13は樹脂により形成されており、基部11Aに固定される。基部11Aの振動体12が配設される部位には有底筒状に窪んだ装着部11aが形成されており、固定部13はこの装着部11aの底部に固定される(図3参照)。これにより、振動体12は基部11Aに固定される。
【0022】
コイルばね14は、バネ材よりなる線材をコイル状に巻回した構成とされている。本実施例では、固定部13と接触部17との間に配設されるばね部材としてコイルばね14を用いている。しかしながら、ばね定数を可変できるもので、かつ接触部17を皮膚AAに押圧付勢できるばね部材であれば、他の構成のばねを用いることも可能である。
【0023】
コイルばね14は、その基部11A側の端部が固定部13に固定され、他端部には接触部17が取り付けられている。本実施形態では、振動体12A〜12Dに設けられる各コイルばね14A〜14Dのばね定数は、振動体12A〜12D(接触部17)が接触する皮膚AAの皮膚応力に応じて設定されている。尚これについての詳細は、説明の便宜上後述するものとする。
【0024】
接触部17は、球形状の本体部に複数の突起部18を有している。使用者Aがマッサージ装置10Aを装着した際、図3に示すように接触部17(突起部18)は使用者Aの肌に当接する。また、接触部17の側部には装着溝19が形成されており、振動モータ15はこの装着溝19内に装着される。振動モータ15は小型円盤形状を有し、内設された偏重心とされた回転子を回転させることにより振動を生成する構成とされている。よって、振動モータ15が作動することにより接触部17は振動する。またバネによってその振動は増幅される。
【0025】
振動体12の配設位置は、接触部17が使用者Aが望む施療部に当接するよう設定されている。一般に顔には30箇所以上のつぼが存在するといわれており、各つぼのマッサージ効果は各つぼの位置により異なっている。そこで、振動体12の配設位置は、使用者Aが所望する療養効果を得られる皮膚上の位置(この位置を施療部という)に設定されている。
【0026】
ここで、本願の発明者(以下、本発明者という)が先に提案した圧刺激条件と血管拡張因子である一酸化窒素(NO)の生産量との関係について簡単に述べる(特開2009-204452公報参照)。
【0027】
本発明者はその研究において、皮膚に対して圧刺激を与えることにより血管拡張因子である一酸化窒素(NO)の生産量が増大することを発見するに至り、これに基づき圧刺激条件による一酸化窒素(NO)の生産量を調べる各種実験を行った。具体的な皮膚に与える圧刺激条件としては、以下の(a)〜(d)を実施した。
(a)皮膚に対する圧点数の増減する
(b)皮膚に印加する温度を変化させる
(c)皮膚に刺激を与える速度を変化させる
(d)皮膚に印加する重さを変化させる
上記(a)〜(d)のいずれにおいても、下記の条件に基づき実験を行った。即ち、先ず10〜13週齢のへアレスマウスの腹腔内に25%Carbomic acid ethyl ester溶液を4ml/kg投与して麻酔した状態で、背部の皮膚を採取し、安楽死させた後、筋層、血管をメスで整形して、1.5cm×15cmの皮膚組織片を得た。
【0028】
皮膚組織片をメッシュ状のテフロン(登録商標)上に載せた後、培地MCDB153(シグマ社製)が2mL入った培養皿に浮かせて、CO2インキュベーター(37℃、5%CO2、湿度95%)で2時間培養した。次に、10μMのDAF−2(第一化学薬品社製)を添加したBalanced Salt Solution(BSS)に培地を交換し、更に1時間培養した。
【0029】
ここで、BSSはNaCl(150mM)、KCl(5mM)、CaCl2(1.8mM)、MgCl2(1.2mM)、HEPES(25mM)、NaH2PO4(1.2mM)及びD−グルコース(10mM)からなり、pHは7.4である。そして、この時に得られた培養液400μLを回収して遠心分離した後、上清を回収し、刺激前の試料とした。
【0030】
更に、培養した皮膚組織片の角層の上に、ウレタンゴムシートを敷き、その上から、円柱形状のおもり(直径2cm、高さ2cm、53g)を用いて、後述する所定の条件下で押圧刺激した。また、比較のため、CO2インキュベーター(37℃、5%CO2、湿度95%)内で10分間押圧刺激しない場合(無刺激)も実施した。得られた培養液400μLを回収して遠心分離した後、上清を回収し、刺激後の試料とした。得られた刺激前後の試料を室温(23℃)で1時間インキュベートした後、蛍光測定専用96穴プレートに移し、マイクロプレートリーダーを用いて蛍光測定した。
【0031】
上記の実験条件下、上記(a)の実験結果について述べる。(a)の実験では、おもりに複数の突起を設けることにより、圧点数を増大させた。具体的には、圧点数が4.5、12.5、30又は81cm−2であるおもりを用いた。その結果、圧点数が多い程、NO産生量の増加率が増大していることがわかった。よって、圧点数を多くした方が、血管拡張が増大しマッサージ効果を向上できることが判明した。
【0032】
次に、上記の実験条件下、上記(b)の実験結果について述べる。(b)の実験では、刺激の印加時の環境温度を37℃,33℃,及び23℃(室温)とした。その結果、刺激印加時の環境温度が23℃(室温)である場合に比べ、33℃又は37℃である場合の方がNO産生量の増加率が増大していることがわかった。よって、刺激を与える(即ち、マッサージを行う)環境の温度を高くした方が、血管拡張が増大しマッサージ効果を向上できることが判明した。
【0033】
次に、上記の実験条件下、上記(c)の実験結果について述べる。(c)の実験では、刺激を与えるおもりを転がす速度を1分間に8.5往復、1分間に23.5往復、1分間に38.5往復とした。その結果、1分間に8.5往復である場合に比べ、1分間に23.5往復とした方がNO産生量の増加率が増大していることがわかった。また、1分間に8.5往復である場合に比べ、1分間に38.5往復とした方がNO産生量の増加率が増大していることがわかった。よって、刺激を与える速度を速くした方が、血管拡張が増大しマッサージ効果を向上できることが判明した。
【0034】
次に、上記の実験条件下、上記(d)の実験結果について述べる。(d)の実験では、刺激を与えるおもりとして重さが53gのおもりと、重さが17gのおもりの二種類を用いた。その結果、無刺激の場合に比べておもりの重さが17gである場合の方がNO産生量の増加率が増大し、またおもりの重さが17gである場合に比べておもりの重さが53gである場合の方がNO産生量の増加率が増大していることがわかった。よって、皮膚に印加する重さ(即ち、マッサーの強さ)を大きく(強く)した方が、血管拡張が増大しマッサージ効果を向上できることが判明した。
【0035】
次に、本発明者は上記した実験結果を本発明の対象となるマッサージ装置に応用するための考察を行った。
【0036】
上記の(a)の実験結果は、マッサージ装置10Aを構成する振動体12の接触部17に適用が可能である。即ち、接触部の形状を図5(A)に示す単なる球形状の接触部17a、或いは図5(B)に示す平面形状の接触部17bとすることができる。しかしながら、単なる球形状の接触部17a或いは平面形状の接触部17bでは、皮膚に対する圧点数が少なくなり、血管拡張の増大(マッサージ効果の向上)を望むことはできない。
【0037】
しかしながら、図5(C)〜(D)に示すように平面形状の接触部の本体部分に複数の突起18を設けた接触部17c〜17e、或いは球面状の接触部の本体部分に複数の突起部18を設けた17fとすることにより、接触部17c〜17fが皮膚AAに接触する際の圧点数は増大し、血管拡張が増大しマッサージ効果を向上されることができる。
【0038】
また、上記の(b)の実験結果は、接触部17にヒータを設けること等によりマッサージ装置に適用することが可能である。また、上記の(c)の実験結果は、振動モータ15に印加する電圧を調整し、振動モータ15が発生する振動の強弱を調整すること等により、マッサージ装置に適用することが可能である。
【0039】
これに対し、上記の(d)の実験結果は、マッサージ装置10Aを構成する振動体12のコイルばね14に適用が可能である。即ち、コイルばね14のばね定数を大きくすることにより、振動を行う(即ち、刺激を与える)接触部17を強く皮膚AAに押圧することが可能となり、血管拡張の増大(即ち、マッサージ効果の向上)を図れるようにも思われる。
【0040】
しかしながら本発明者の実験では、基部11Aに複数個配設される振動体12のコイルばね14のばね定数を一律に大きくした場合、良好な血管拡張の増大(即ち、マッサージ効果の向上)は期待できない。
【0041】
この理由について、図6を用いて説明する。図6は、振動体12と皮膚AAを弾性体として示したモデル図である。使用者Aの皮膚AAは、例えば顔を例に挙げると骨格上に真皮,表皮等が積層された構造を有し、またこの真皮,表皮等は弾性的に変形が可能なものであり、よってばね定数(K2)を有した一種のばねと等価なものと考えることができる。従って、これをばねのモデルとして描くと、図6に示すように、振動モータ15(接触部17)の一方にばね定数K1のコイルばね14が接続し、他方にばね(ばね定数K2)としての皮膚AAが接続したモデルが形成される。
【0042】
ここで、図6に示すモデルにおいて、皮膚AAのばね定数が所定値であると仮定し(K2=一定)、この条件の下でコイルばね14のばね定数(K1)を変化させることを考える。先ず、皮膚AAのばね定数K2に対してコイルばね14のばね定数K1が大きい場合(K1>K2)を想定する。図7(A)はこの状態を示している。
【0043】
コイルばね14のばね定数K1が皮膚AAのばね定数K2よりも大きい(K1>K2)場合、振動モータ15は強く皮膚AAに対して押圧されることとなる。また、振動モータ15で発生する振動は、コイルばね14で減衰されることなく皮膚AAに伝達され、よって皮膚AAの奥まで振動が印加されることとなる。よって、皮膚AAの深層まで振動モータ15の振動は作用し、血管拡張が増大しマッサージ効果の向上を図ることができる。
【0044】
一方、コイルばね14のばね定数K1が皮膚AAのばね定数K2よりも小さい(K1<K2)場合、振動モータ15の皮膚AAに対する押圧力は小さくなる。図7(B)は、この状態を示している。またこの状態では、振動モータ15で発生する振動は、コイルばね14のばね定数K1が小さいことによりコイルばね14で減衰され、皮膚AAへの伝達は小さくなる。よって振動モータ15の振動は、皮膚AAの表層のみに作用することとなり、皮膚AAの深層には作用しない。このため、皮膚AAの深層における血管拡張の増大は期待できない。
【0045】
尚、近年の研究(Jouranal of Investigative Dermotology 2009 Ikeyama ら)において、皮膚AAの表皮に対して圧刺激を行うことにより、皮膚AAの表皮から血管拡張因子(NO)が産生され、真皮に存在する血管やリンパ管を拡張させることが明らかになった。よって、コイルばね14のばね定数K1を皮膚AAのばね定数K2よりも小さく設定することにより、血行促進などの美容効果の増進を期待することができる。
【0046】
ところで、上記の説明では皮膚AAのばね定数K2を一定であると仮定して説明を行ってきたが、実際に使用者Aの皮膚AAの状態は各部位で異なり、それぞれの物理特定(上記のばね定数も含む)も異なる。そこで本発明者は、マッサージ装置10Aを使用する使用者Aの皮膚AAの物理特性を測定し、その測定結果に基づきコイルばね14のばね定数K1を求めることを試みた。
【0047】
図6及び図7に示したモデル図からすると、使用者Aの皮膚AAのばね定数K2を直接測定することができることが望ましい。しかしながら、実際は使用者Aの皮膚AAのばね定数K2を直接測定することは困難である。そこで、本発明者は皮膚AAの物理特性として皮膚AAの応力(以下、これを皮膚応力という)を測定し、この皮膚応力に基づきコイルばね14のばね定数K1を設定することとした。具体的には、本実施形態では1秒間に10mm皮膚を押したときに、得られる応力を皮膚応力と定義する。
【0048】
一般に、皮膚AAが柔らかい部分は皮膚応力が小さく、よって皮膚AAのばね定数K2は小さい。逆に皮膚AAが硬い部分は皮膚応力が大きく、よって皮膚AAのばね定数K2は大きい。このように、皮膚AAの皮膚応力と皮膚AAのばね定数K2は相関関係があるため、皮膚AAの皮膚応力に基づきコイルばね14のばね定数K1を設定することが可能である。
【0049】
本実施形態に係るマッサージ装置10Aは使用者Aの顔に装着し、顔をマッサージするものであるため、本発明者は図8(A)〜図13(A)に示す被験者に対し、顔の皮膚応力を測定する実験を行った。顔の皮膚応力を測定する具体的な方法としては、測定装置としてフォースケージを用い、これを顔の目,鼻,口,耳で囲まれる領域(だいたい頬の位置となる)に縦7点、横4点の合計28点の測定位置を設定し、この各測定点にフォースケージを押し当てて皮膚応力の測定を行った。具体的には、フォースケージを各部位に対して1秒間に10mm皮膚を押したときに得られる応力を皮膚応力として測定した。
【0050】
その結果を図8(B)〜図13(B)に示す。各図に示す数値はフォースケージによる測定値(単位、g)を示している。また、測定値を0.1g未満(柔らかい)、0.1g以上0.2g未満(やや柔らかい)、0.2g以上0.3g未満(やや硬い)、0.3g以上(硬い)の四分類に区分し、それぞれを濃淡を分けて付すことにより表示している。
【0051】
尚、図8(A)〜図13(A)に示す被験者の顔には、図8(B)〜図13(B)に示した実験結果である皮膚応力の分布が、図8(B)〜図13(B)に示した濃淡と同様の濃淡を付すことにより示されている。
【0052】
この皮膚応力を測定する実験結果より、個人的なばらつきは存在するものの、各被験者は大略的には共通した皮膚応力を有していることが判明した。図14は、頭蓋骨上に上記した実験結果の平均値を図8(B)〜図13(B)に示した濃淡と同様の濃淡を付すことにより示されている。同図より、下顎骨と上顎骨の間は「柔らかい」領域となっており、下顎骨周辺は「やや柔らかい」領域となっており、上顎骨周辺は「やや硬い」領域となっており、頬骨周辺は「硬い」領域となっていることがわかる。
【0053】
図15は、皮膚応力とコイルばねの線径との関係、及び皮膚応力とコイルばねのばね定数との関係を示している。
【0054】
本発明者は、皮膚応力とコイルばねの線径との関係を求めるため、次のような実験を行った。皮膚応力については、上記したようにフォースケージを所定の顔の測定点に押し当てて皮膚応力の測定を行った。そこで、外径及び自由長を一定値とした上で、線径を変化させた各種コイルばねを用意し、皮膚応力を測定するのと同様の方法で各種コイルばねを押圧したときに発生する応力をフォースケージで測定した。具体的には、各種コイルばねをフォースケージで1秒間に10mm押し、この時にフォースケージで測定される応力を求めた。この際、本実施形態で、コイルばねの外径を10mmとし、自由長を20mmとして応力測定を行った。
【0055】
前記のように本実施形態では皮膚応力を0.1g未満(柔らかい)、0.1g以上0.2g未満(やや柔らかい)、0.2g以上0.3g未満(やや硬い)、0.3g以上(硬い)の四分類に区分した。そこで、コイルばねの線径と応力との関係についても、測定されたコイルばねの応力を皮膚応力の四分類に対応するよう分類したところ、図15に示すように線径が分類された。
【0056】
即ち、皮膚応力が0.1g未満(柔らかい)に対応するコイルばねの線径は0.53mm未満であった。また、皮膚応力が0.1g以上0.2g未満(やや柔らかい)に対応するコイルばねの線径は0.53mm以上0.65mm未満であった。また、皮膚応力が0.2g以上0.3g未満(やや硬い)に対応するコイルばねの線径は0.65mm以上0.75mm未満であった。更に、皮膚応力が0.3g以上(硬い)に対応するコイルばねの線径は0.75mm以上であった。
【0057】
ところで、上記した皮膚応力とばね線径との相関関係では、コイルばねの外径及び自由長が一定に規定されたものであるため、コイルばね選定に際し一般化されていないため使用し難い面がある。このため本実験者は、コイルばねの線径とばね定数との相関についても求めることとした。周知のようにばね定数と線径は相関しているため、この相関関係に基づき線径からばね定数を求めることができる。このようにして求めたばね定数の値を、図15に皮膚応力の分類に対応するよう記載した。
【0058】
その結果、皮膚応力が0.1g未満(柔らかい)に対応するコイルばねのばね定数は0.2N/mm未満であった。また、皮膚応力が0.1g以上0.2g未満(やや柔らかい)に対応するコイルばねのばね定数は0.2N/mm以上0.4N/mm未満であった。また、皮膚応力が0.2g以上0.3g未満(やや硬い)に対応するコイルばねのばね定数は0.4N/mm以上1.0N/mm未満であった。更に、皮膚応力が0.3g以上(硬い)に対応するコイルばねのばね定数は1.0N/mm以上であった。
【0059】
このように、ばね定数と皮膚応力が対応付けされることにより、コイルばねの線径、外径、自由長の設定に自由度を持たせることができ、コイルばねの選定が容易となる。具体的には、図15に参考例1に示す線径が0.9mm、外径が12mm、自由長が17mmのコイルばねは、ばね定数が1,37N/mmであるため、皮膚応力が0.3g以上の硬い場合に適用することができる。また、図15に参考例2に示す線径が0.29mm、外径が3.5mm、自由長が6.5mmのコイルばねは、ばね定数が0.46N/mmであるため、皮膚応力が0.2g以上0.3g未満のやや硬い場合に適用することができる。
【0060】
また、図15に参考例3に示す線径が0.32mm、外径が3.2mm、自由長が14.0mmのコイルばねは、ばね定数が0.33N/mmであるため、皮膚応力が0.1g以上0.2g未満のやや柔らかい場合に適用することができる。更に、図15に参考例4に示す線径が0.35mm、外径が6.0mm、自由長が14.0mmのコイルばねは、ばね定数が0.14N/mmであるため、皮膚応力が0.1g未満の柔らかい場合に適用することができる。
【0061】
次に、図15を用いてマッサージ装置10Aに配設される各振動体12A〜12Dのコイルばね14A〜14Bの線径(ばね定数K2)の設定の方法について説明する。以下の説明では、マッサージ装置10Aを血管拡張の増大させマッサージ効果の向上を図るために用いる場合について説明する。
【0062】
図16は、本実施形態に係るマッサージ装置10Aを内側から見た図である。振動体12Aは、マッサージ装置10Aを使用者Aが装着した場合、使用者Aの皮膚AAで下顎骨と上顎骨の間の位置に接触する。即ち、振動体12Aは下顎骨と上顎骨の間の位置を施療部とする。この下顎骨と上顎骨との間位置における皮膚応力は、柔らかい0.1g未満である。よって本実施形態では、図15より振動体12Aに適用するコイルばね14Aの線径を0.53mm未満(本実施形態では0.5mm)、ばね定数としては0.2N/mm未満に設定した。
【0063】
また、振動体12Bは、下顎骨周辺を施療部とする。この下顎骨周辺の位置における皮膚応力は、やや柔らかい0.1g以上0.2g未満である。よって本実施形態では、図15より振動体12Bに適用するコイルばね14Bの線径を0.53mm以上0.65mm未満(本実施形態では0.6mm)、ばね定数としては0.2N/mm以上0.4N/mm未満に設定した。
【0064】
また、振動体12Cは、上顎骨周辺を施療部とする。この上顎骨周辺の位置における皮膚応力は、やや硬い0.2g以上0.3g未満である。よって本実施形態では、図15より振動体12Cに適用するコイルばね14Cの線径を0.65mm以上0.75mm未満(本実施形態では0.7mm)、ばね定数としては0.4N/mm以上1.0N/mm未満に設定した。
【0065】
また、振動体12Dは、頬骨周辺を施療部とする。この頬骨周辺の位置における皮膚応力は、硬い0.3g以上である。よって本実施形態では、図15より振動体12Dに適用するコイルばね14Dの線径を0.75mm以上(本実施形態では0.8mm)、ばね定数としては1.0N/mm以上に設定した。
【0066】
上記のようにマッサージ装置10Aに配設されるコイルばね14A〜14Dの線径,ばね定数を設定することにより、全ての振動体12A〜12Dに対応する施療部において、振動モータ15の振動を皮膚AAの深層まで作用させることができ、血管拡張の増大及びマッサージ効果の向上を図ることができる。
【0067】
図17は、本発明の第2実施形態であるマッサージ装置10Bを示している。
【0068】
前記した第1実施形態に係るマッサージ装置10Aは、主に使用者Aの頬近傍を施療部とするものであった。これに対して本実施形態に係るマッサージ装置10Bは、図18に示す使用者Aの目Eの下部の領域(目下領域EKという)を施療部とするものである。この目下領域EKは、目のくまが発生する領域として知られている。尚、図17〜図24において、図1乃至図16に示した構成と対応する構成については同一符号を付し、その説明を適宜省略する。
【0069】
マッサージ装置10Bは、使用者Aの目の近傍の顔形状に対応した基部11Bと、振動体12E,12Fにより構成されている。
【0070】
尚、振動体12E,12Fは基部11Bの中心位置(使用者Aが装着したときの両目の中心位置に対応する)に対し、左右対称となるよう配置されているが、以下の説明では説明及び図示の便宜上、片側(図中右側)の振動体12E,12Fについてのみ説明するものとする。
【0071】
本実施形態に係るマッサージ装置10Bを作成するに際し、目下領域EKの皮膚応力を測定した。測定位置は、図18に示すように、目Eの下部で目頭から目の中心位置との間の中間位置(図中、P1で示す位置)と、目尻の下(図中、P2で示す位置)とを測定した。皮膚応力の測定方法は、図19(A)〜図24(A)に示す被験者に対し、目下領域EKの皮膚応力を測定する実験を行った。この皮膚応力の測定は、第1実施形態と同様にフォースケージを用いて行った。
【0072】
その結果を図19(B)〜図24(B)に示す。各図に示す数値は第1実施形態と同様であり、測定値を0.1g未満(柔らかい)、0.1g以上0.2g未満(やや柔らかい)、0.2g以上0.3g未満(やや硬い)、0.3g以上(硬い)の四分類に区分し、それぞれを濃淡を分けて付すことにより表示している。
【0073】
本実施形態では、図24に示す被験者に対応したマッサージ装置10Bを例に挙げて説明する。図24に示す被験者(以下、使用者Aという)は、位置P1の皮膚応力が0.25gであり、位置P2における皮膚応力が0.30gである。また、図15に示した皮膚応力とコイルばねの線径及びばね定数との相関図は顔を対象としたものであり、本実施形態においても使用することができる。
【0074】
そこで、本実施形態では位置P1を施療部とする振動体12Eのコイルばね14Eの線径を0.2g以上0.3g未満のやや硬い領域に対応した0.65mm以上0.75mm未満(本実施形態では0.7mm)、ばね定数としては0.4N/mm以上1.0N/mm未満に設定した。また、位置P2を施療部とする振動体12Fのコイルばね14Fの線径を0.3g以上の硬い領域に対応した0.75mm以上(本実施形態では0.8mm)、ばね定数としては1.0N/mm以上に設定した。
【0075】
このように設定することにより、目下領域EKにおける表皮近傍における血行の促進を図ることができ、目にくまが発生してもこれを確実に療養することが可能となる。
【0076】
以上、本発明の好ましい実施例について詳述したが、本発明は上記した特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能なものである。
【符号の説明】
【0077】
10A,10B マッサージ装置
11A,11B 基部
12,12A〜12F 振動体
13 固定部 名詞
14,14A〜14F コイルばね
15 振動モータ
17 接触部
A 被装着者
AA 皮膚
E 目
EK 目下領域
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基部と、
使用者の施療部に当接され、当該施療部を振動によりマッサージを行う振動子と、
一端が前記基部に固定されると共に他端部に前記振動子が取り付けられるばね部材とを有し、
前記ばね部材のばね定数を、前記施療部の皮膚応力に基づき設定したことを特徴とするマッサージ装置。
【請求項2】
一の前記施療部に対応する前記ばね部材のばね定数を、
前記一の施療部よりも小さい皮膚応力を有する他の前記施療部に対応する前記ばね部材のばね定数に比べて大きく設定してなることを特徴とする請求項1記載のマッサージ装置。
【請求項3】
前記振動子の前記施療部と当接する位置に、隣接する間隔が5mm以下1mm以上とされた複数の突起部を形成してなることを特徴とする請求項1又は2に記載のマッサージ装置。
【請求項4】
前記振動子は、円盤型の振動モータを有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のマッサージ装置。
【請求項1】
基部と、
使用者の施療部に当接され、当該施療部を振動によりマッサージを行う振動子と、
一端が前記基部に固定されると共に他端部に前記振動子が取り付けられるばね部材とを有し、
前記ばね部材のばね定数を、前記施療部の皮膚応力に基づき設定したことを特徴とするマッサージ装置。
【請求項2】
一の前記施療部に対応する前記ばね部材のばね定数を、
前記一の施療部よりも小さい皮膚応力を有する他の前記施療部に対応する前記ばね部材のばね定数に比べて大きく設定してなることを特徴とする請求項1記載のマッサージ装置。
【請求項3】
前記振動子の前記施療部と当接する位置に、隣接する間隔が5mm以下1mm以上とされた複数の突起部を形成してなることを特徴とする請求項1又は2に記載のマッサージ装置。
【請求項4】
前記振動子は、円盤型の振動モータを有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のマッサージ装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【公開番号】特開2011−130809(P2011−130809A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−290418(P2009−290418)
【出願日】平成21年12月22日(2009.12.22)
【出願人】(000001959)株式会社 資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月22日(2009.12.22)
【出願人】(000001959)株式会社 資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】
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