説明

マットセンサ

【課題】上面シートの表面に凹凸が浮き出る事象及びシート材であるゴム材料の経年劣化による硬化の影響を可能な限り低減した構造を有するマットセンサを提供する。
【解決手段】下面シート11と、下面シート11の表面に配置されたコードスイッチ12と、下面シート11の表面に設けられ、コードスイッチ12の両側を挟み込む構成からなる複数のゴム製柱状部材13と、コードスイッチ12を覆うように配置された上面シート14とを備えたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人や物による加圧を検知する感圧式のマットセンサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
侵入者検知用又は人や物の出入りなどを検知する感圧式のマットセンサとして、下面シートと上面シートとの間に長尺のコードスイッチを設置したものがある。これまでコードスイッチをマットセンサ内に固定するために様々な方法が考えられてきた。
【0003】
その一例としては、図5に示すように、下面シート51と上面シート52との間に加圧により弾性変形する発泡樹脂材を貼り合わせて発泡樹脂層53を設け、さらに発泡樹脂層53に切れ込みを入れて収納溝54を形成し、その収納溝54にコードスイッチ55を這わせる方法がある(特許文献1参照)。
【0004】
また、他の例としては、図6に示すように、厚手の上面シート61の内面に溝62を設け、その溝62にコードスイッチ55を這わせる方法がある(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−192487号公報
【特許文献2】特開2008−153005号公報
【特許文献3】特公平6−16117号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、発泡樹脂層53を使用してコードスイッチ55を固定した場合、図7(a)に示すように、製造当初は支持力を有していた発泡樹脂層53が経年劣化及び度重なる加圧の繰り返しによって、図7(b)に示すように、徐々に復元力が失われていく可能性がある。発泡樹脂層53の復元力が低下した場合、マット厚が減少し、上面シート51の表面にコードスイッチ形状に応じた凹凸71が浮き出て平坦性を損ねる不具合が生じる。
【0007】
また、厚手の上面シート61の内面に溝62を設けてコードスイッチ55を固定した場合も、数年に及ぶ長期間実使用環境に曝されるとシート材料であるゴム材も劣化が促進されていく。このゴム材は、経年劣化によって徐々に弾性が失われ硬化していくことが考えられる。その結果、図8(a)に示すように、経年劣化前のマットセンサにある圧力Fを印加した場合のマットの沈み込み量81(コードスイッチの変形量)に比べ、図8(b)に示すように、経年劣化後の沈み込み量82が小さくなり、最悪の場合検知不可となる事態に陥る可能性がある。
【0008】
そこで、本発明の目的は、これらの問題を改善するために、上面シートの表面に凹凸が浮き出る事象及びシート材であるゴム材料の経年劣化による硬化の影響を可能な限り低減した構造を有するマットセンサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的を達成するために創案された本発明は、下面シートと、該下面シートの表面に配置されたコードスイッチと、前記下面シートの表面に設けられ、前記コードスイッチの両側を挟み込む構成からなる複数のゴム製柱状部材と、前記コードスイッチを覆うように配置された上面シートとを備えたマットセンサである。
【0010】
前記ゴム製柱状部材は、前記コードスイッチをガイドする位置に設けられると良い。
【0011】
前記ゴム製柱状部材は、円柱、角柱、或いは円錐又は角錐が対向したくびれ形状であると良い。
【0012】
前記ゴム製柱状部材は、前記コードスイッチの長手方向に対して前記ゴム製柱状部材同士間に空間部が生ずるように離間して設けられると良い。
【0013】
前記ゴム製柱状部材は、前記下面シートの表面に対して突起形状となると良い。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、上面シートの表面に凹凸が浮き出る事象及びシート材であるゴム材料の経年劣化による硬化の影響を可能な限り低減した構造を有するマットセンサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係るマットセンサを示す図であり、(a)は上面図、(b)はB−B線断面図、(c)はC部斜視図である。
【図2】(a),(b)はゴム製柱状部材の斜視図、(c)はゴム製柱状部材を配置したときのマットセンサの断面図である。
【図3】本発明の作用を説明する図である。
【図4】本発明の変形例に係るマットセンサの上面図である。
【図5】従来技術に係るマットセンサの断面図である。
【図6】従来技術に係るマットセンサの断面図である。
【図7】図5のマットセンサの問題を説明する図である。
【図8】図6のマットセンサの問題を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好適な実施の形態を添付図面にしたがって説明する。
【0017】
図1は、本発明の好適な実施の形態に係るマットセンサを示す図であり、(a)は上面図、(b)はB−B線断面図、(c)はC部斜視図である。
【0018】
図1(a),(b)に示すように、本実施の形態に係るマットセンサ10は、下面シート11と、下面シート11の表面に配置されたコードスイッチ12と、下面シート11の表面に設けられ、コードスイッチ12の両側を挟み込む構成からなる複数のゴム製柱状部材13と、コードスイッチ12を覆うように配置された上面シート14とを備えたものである。
【0019】
下面シート11と上面シート14に使用するシート材は、可撓性、弾性及び難燃性を有するゴム材を選択すると良く、例えば、クロロプレンゴム、天然ゴム、エチレンプロピレンゴムといったゴム材を選択することができる。
【0020】
コードスイッチ12は、長尺であり、復元性ゴム又は復元性プラスチックからなる中空絶縁体15と、相互に電気的に接触しない状態でもって中空絶縁体15の内面に沿って長手方向に螺旋状に配置された4本の導電部材16とを有する。
【0021】
中空絶縁体15は、4本の導電部材16を電気的に接触しない状態で螺旋状に保持固定すると共に、外力により容易に変形し、外力が無くなれば直ちに復元するものである。
【0022】
中空絶縁体15を構成する復元性ゴムとしては、ウレタンゴム、シリコーンゴム、エチレンプロピレンゴム、スチレンブタジエンゴム、クロロプレンゴムといったものを挙げることができる。
【0023】
また、復元性プラスチックとしては、ポリエチレン、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレンエチルアクリレート共重合体、エチレンメチルメタクリレート共重合体、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、オレフィン系或いはスチレン系の熱可塑性エラストマーを挙げることができ、更に、ポリイミドやポリアミド等のエンジニアリングプラスチックでも形状、厚さ、他の材料との積層を工夫することにより使用可能である。
【0024】
導電部材16は、導体の外周に導電性ゴム又は導電性プラスチックからなる導電層を形成したものである。
【0025】
導体は、優れた可撓性及び復元性を得るため、金属素線を複数本撚り合わせた金属撚線からなることが好ましい。
【0026】
導電層は、中空絶縁体15を形成する復元性ゴム又は復元性プラスチックにカーボンブラック等の導電性充填剤を配合した導電性ゴム又は導電性プラスチックを導体の外周に押出被覆して形成される。
【0027】
コードスイッチ12の一端側にはリード線17が接続されており、そのリード線17がマットセンサ10の外部に引き出される構造となっている。
【0028】
コードスイッチ12とリード線17との接続部には、外部からの圧力及び浸水を防ぐためのゴムスペーサ18が設置される。
【0029】
ゴム製柱状部材13は、コードスイッチ12の逸脱及び検知感度の低下を防ぐためにコードスイッチ12を固定及びその配線を決定するためのコードスイッチ固定部材であり、下面シート11の表面に対して突起形状となるものである。
【0030】
ゴム製柱状部材13は、複数個(例えば、2個)を1組として、コードスイッチ12をガイドする位置に設けられると共に、コードスイッチ12の長手方向に対してゴム製柱状部材13同士間に空間部Sが生ずるように離間して設けられる。特に、図1(c)に示すように、ゴム製柱状部材13の配列パターンを単一とすることで、製作において長尺一括製造が可能となる。
【0031】
ゴム製柱状部材13としては、コードスイッチ12を確実に固定し、高いセンサ性能を維持できるよう、突垂直方向への強度と水平方向への強度とが最適化された形状のものを用いると良い。例えば、図2(a),(b)に示すように、円錐又は角錐が対向したくびれ形状のものや、図3に示すように、加圧時に容易に変形できるほどの細さ(ゴムの材質や突起形状による)の円柱や角柱形状のものを用いることができる。特に、図2(c)に示すように、くびれ形状のゴム製柱状部材13を用いることで、コードスイッチ12をより強固に固定することができる。
【0032】
このゴム製柱状部材13の材質としては、従来のような凹凸発生を防ぐため発泡樹脂材ではなく、コードスイッチ12及び上面シート14を支持する従来の役割を果たすと共に、より高い環境耐久性を有し感圧検知を妨げない弾性を有する材料を選択すると良い。この要求性能を満たす材料としては、例えば、クロロプレンゴム、天然ゴム、エチレンプロピレンゴムといったゴム材が挙げられる。
【0033】
また、マットセンサ10には、ゴム製柱状部材13の他にも上面シート14を支持するための支持部材19が設けられる。支持部材19としては、上面シート14を支持する保持力を持ち、センサ性能を低下させることのない形状のものを用いることが好ましい。支持部材19は、ゴム製柱状部材13と異なり1組にする必要性はない。
【0034】
本実施の形態に係るマットセンサ10では、コードスイッチ12を設置する際に用いる部材の材質を発泡樹脂材からゴム材に変更しているので、環境耐久性や支持力が向上し、上面シート14の表面に凹凸が浮き出る不具合が解消される。
【0035】
また、本実施の形態に係るマットセンサ10によれば、コードスイッチ12を下面シート11の表面に設けられたゴム製柱状部材13により位置決めすることにより、感圧検知部であるコードスイッチ12の周囲に空間部Sを確保できると共にコードスイッチ12の周囲から可能な限り経年劣化によって硬化するゴム材の割合を減少させることができる。そのため、上面シート14が経年的劣化により徐々にゴム材料としての弾性が失われ硬化することによるマットの沈み込み量の低下を容易に防止でき、検知に必要な圧力の増加を抑えることができる。その結果として、経年劣化によるセンサ性能の低下を防ぐことが可能となる。
【0036】
このマットセンサ10の用途としては、侵入者検知用などのホームセキュリティ用途、工場内における立ち入り禁止区域や危険区域への侵入防止用インターロック用途などがある。
【0037】
また、今後、少子高齢化が進むことが予想され、そのため認知症患者への介護負荷の増大が懸念されているが、このマットセンサ10を設置することで、認知症患者の立ち歩き検知装置として応用が可能であり、この応用により、介護の負担軽減に貢献することができる。
【0038】
なお、本発明は前述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。
【0039】
例えば、図4に示すように、複数本のコードスイッチ12を用いたマットセンサ40とすることも可能である。
【0040】
また、本発明は、前述の実施の形態で説明した有線式のマットセンサ10だけでなく、無線通信式のマットセンサにも応用可能である。
【符号の説明】
【0041】
10 マットセンサ
11 下面シート
12 コードスイッチ
13 ゴム製柱状部材
14 上面シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下面シートと、
該下面シートの表面に配置されたコードスイッチと、
前記下面シートの表面に設けられ、前記コードスイッチの両側を挟み込む構成からなる複数のゴム製柱状部材と、
前記コードスイッチを覆うように配置された上面シートとを備えたことを特徴とするマットセンサ。
【請求項2】
前記ゴム製柱状部材は、前記コードスイッチをガイドする位置に設けられる請求項1に記載のマットセンサ。
【請求項3】
前記ゴム製柱状部材は、円柱、角柱、或いは円錐又は角錐が対向したくびれ形状である請求項1又は2に記載のマットセンサ。
【請求項4】
前記ゴム製柱状部材は、前記コードスイッチの長手方向に対して前記ゴム製柱状部材同士間に空間部が生ずるように離間して設けられる請求項1〜3のいずれかに記載のマットセンサ。
【請求項5】
前記ゴム製柱状部材は、前記下面シートの表面に対して突起形状となる請求項1〜4のいずれかに記載のマットセンサ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate