説明

マットレス装置及びベッド装置

【課題】 この発明は連続ばね体によって形成されたスプリングユニットの柔軟部のばね部が絡み合うことがないマットレス装置を提供することにある。
【解決手段】 1本の線材によって複数のばね部37及び隣り合うばね部の上端と下端とをそれぞれ上部連結杆部38と下部連結杆部39とで連結するとともに、隣り合うばね部を絡ませた連続ばね体36を形成し、その連続ばね体を並設したスプリングユニット33とし、このスプリングユニットの長手方向中途部に、上記連続ばね体の隣り合う一対のばね部を上部連結杆部だけによって連結した柔軟部41を上記スプリングユニットの幅方向に沿って形成し、この柔軟部を形成した一方のばね部の軸方向中途部に、スプリングユニットの幅方向に沿って第2のヘリカル線43を連結して設けたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は1本の線材によって複数のばね部が連続して形成された連続ばね体によって構成されるスプリングユニットを有するマットレス装置及びそのマットレス装置を備えたベッド装置に関する。
【0002】
【従来の技術】ベッド装置には、老人や病人などのように自力で起き上がることが困難な利用者や利用者が上半身を起した姿勢を容易に維持できるようにするためなどに、いわゆる起床式のベッド装置が用いられる。
【0003】この種のベッド装置は、ベッド本体を有し、このベッド本体には床板体が設けられる。この床板体は、上記ベッド本体に固定された固定床部、この固定床部の一端に回動可能に連結された背床部及び他端に回動可能に連結された脚床部からなる。
【0004】上記ベッド本体には駆動機構が設けられている。この駆動機構は、上記背床部や脚床部を起伏駆動するようになっている。背床部が起上されれば、利用者は上半身を起すことができ、それと同時に脚床部をへの字状に屈曲起上させることで、上半身が起された利用者の脚部を持ち上げ、身体の臀部が前方にずれ動きにくいようにしている。
【0005】このような起床式のベッド装置においては、上記床板体上にマットレス装置が載置される。このマットレス装置は、床板体の起上に応じて屈曲し易い構造が採用されている。
【0006】屈曲し易い構造のマットレス装置としては、連続ばね体を用いた構造が知られている。上記連続ばね体は、1本の線材によって複数のばね部及び隣り合うばね部の上端と下端とをそれぞれ上部連結杆部と下部連結杆部とで連続形成するとともに、隣り合うばね部を絡ませた構造となっている。
【0007】そして、複数の連続ばね体を並設し、並設方向と交差する方向に上部連結杆部と下部連結杆部とをそれぞれヘリカル線で連結することでスプリングユニットとし、このスプリングユニットに弾性材を積層し、この積層体を外装地で被覆してマットレス装置としている。
【0008】このような構成のマットレス装置を、床板体の起伏に応じて屈曲可能な構成とするためには、上記ばね体の隣り合う一対のばね部を、スプリングユニットの幅方向全長にわたってこれらばね部を絡ませることなく、上部連結杆部だけによって連結した柔軟部に形成する。それによって、その柔軟部では、スプリングユニットを上部連結杆部を弾性変形させて屈曲できることになる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】ところで、このような構成のマットレス装置を起床式のベッド装置に適用する場合、マットレス装置には床板体の起上に応じて屈曲可能な構造、つまり固定床部と背床部との連結部分及び固定床部と脚床部との連結部分にそれぞれ柔軟部を有する構造が採用されることになる。
【0010】柔軟部は、隣り合う一対のばね部を上部連結杆部だけによって連結するため、スプリングユニットが上方に向かって屈曲される場合には、柔軟部の下端側が開くため、この柔軟部を形成する、対向する一対のばね部がぶつかり合うことがない。しかしながら、スプリングユニットが下方に向かって屈曲された場合、つまり柔軟部が閉じる方向に屈曲されると、柔軟部を形成する一対のばね部がぶつかあり合うことになる。その際、一対のばね部の下端部が絡み合い、スプリングユニットの屈曲状態を解除しても、その絡み合いが外れなくなるということがある。
【0011】図5(b)は、連続ばね体1の柔軟部2を形成した一対のばね部3の下端部が絡み合った状態を示している。この連続ばね体1は、図5(a)に示すように、複数のばね部3の上端と下端とがそれぞれ上部連結杆部4と下部連結杆部5によって交互に連結されていて、下部連結杆部5によって連結されずに隣り合う一対のばね部3a,3b及び3c,3dは、連結状態を上部連結杆部4だけとすることで、柔軟部6に形成されている。
【0012】スプリングユニットは複数の連続ばね体1が並設され、これら連続ばね体1は、並設方向と交差する方向に設けられたヘリカル線7によって上部連結杆部4の箇所が結合されている。
【0013】このような構成において、上記連続ばね体1が下方に向かって折り曲げられる、つまり柔軟部6の下端側が閉じる方向に折り曲げられると、図5(b)に示すように一方のばね部3bの下端部が対向する他方のばね部3aの下端部に絡んでしまうことがある。そして、この絡んだ状態は、スプリングユニットの折り曲げ状態を解除しても解けなくなるため、スプリングユニットの性能低下を招くことになる。
【0014】この発明は、連続ばね体を用いてスプリングユニットを形成し、さらにそのスプリングユニットに隣り合う一対のばね部が上部連結杆部だけによって連結された柔軟部を形成した場合、この柔軟部を閉じる方向に折り曲げたときに、対向する一対のばね部が絡み合うことがないようにしたマットレス装置及びそのマットレス装置が用いられるベッド装置を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】請求項1の発明は、1本の線材によって複数のばね部及び隣り合うばね部の上端と下端とをそれぞれ上部連結杆部と下部連結杆部とで連結するとともに、隣り合うばね部を絡ませた連続ばね体を形成し、その連続ばね体を並設してスプリングユニットとし、このスプリングユニットの上下面の少なくとも上面に弾性材を積層し、その積層体を外装体で被覆してなるマットレス装置において、上記スプリングユニットの長手方向中途部に、上記連続ばね体の隣り合う一対のばね部を上部連結杆部だけによって連結した柔軟部を上 記スプリングユニットの幅方向に沿って形成し、この柔軟部を形成した一方のばね部の軸方向中途部を、スプリングユニットの幅方向に沿って設けた絡み防止部材によって連結したことを特徴とするマットレス装置にある。
【0016】請求項2の発明は、上記スプリングユニットには長手方向中途部の複数箇所に柔軟部が形成され、そのうちの少なくとも下方に向かって屈曲される部分に上記絡み防止部材が設けられていることを特徴とする請求項1記載のマットレス装置にある。
【0017】請求項3の発明は、ベッド本体と、このベッド本体に固定された固定床部及びこの固定床部の一端に回動可能に連結された背床部及び他端に回動可能に連結された脚床部とに分割された床板体と、上記背床部及び脚床部を起伏駆動する駆動機構と、上記床板体上に載置されるマットレス装置とを具備し、上記マットレス装置は請求項1記載の構成であることを特徴とするベッド装置にある。
【0018】請求項1と請求項2の発明によれば、柔軟部を形成する一対のばね部のうちの一方の軸方向中途部に、絡み防止部材をスプリングユニットの幅方向に沿って設けたので、この絡み防止部材によってスプリングユニットを折り曲げたときに、他方のばね部が一方のばね部に絡むのを防止することができる。
【0019】請求項3の発明によれば、床板体の背床部や脚床部を起伏駆動してマットレス装置を屈曲させても、そのマットレス装置を構成するスプリングユニットの柔軟部のばね部が絡み合うのを防止できる。
【0020】
【発明の実施の形態】以下、この発明の一実施の形態を図面を参照して説明する。
【0021】図4は起床式のベッド装置を示し、このベッド装置はベッド本体11を備えている。このベッド本体11はベースフレーム12を有し、このベースフレーム12にはベッドフレーム13がリンク14によって連結されている。このリンク14は図示しない上下駆動機構によって同図に矢印で示す方向に回動駆動されるようになっている。それによって、上記ベッドフレーム13の支持高さを変えることができる。
【0022】上記ベッドフレーム13には床板体15が設けられている。この床板体15は、複数の床部に分割されている。つまり、ベッドフレーム13の長手方向中央部には固定床部16が固定され、この固定床部16の一端には腰床部17と背床部18とが順次回動可能に連結されている。上記固定床部16の他側には、第1の脚床部19と第2の脚床部21とが順次回動可能に連結されている。
【0023】上記ベッドフレーム13の下面側には背上げ駆動機構22が設けられている。この背上げ駆動機構22は、回転駆動される第1のアーム23と第2のアーム24を有する。第1のアーム23の先端にはローラ25が回転自在に設けられ、このローラ25は上記背床部18の下面に設けられた断面コ字状のレール部材26に転動自在に係合している。
【0024】したがって、第1のアーム23が上昇方向に回動駆動されると、背床部18が起上方向に駆動される。背床部18が起上すると、それに腰床部17が連動して上昇方向に回動する。
【0025】上記第2のアーム24の先端部にはローラ27が回転自在に設けられ、このローラ27は第1の脚床部19の下面に当接している。したがって、第2のアーム24が駆動されると、第1の脚床部19が起上し、それに第2の脚床部21が連動するようになっている。第2の脚床部21の一端部にはリンク28の一端が回動自在に連結されている。このリンク28の他端はベッドフレーム13に回動自在に連結されている。
【0026】したがって、第1の脚床部19が起上し、それに第2の脚床部21が連動すると、第2の脚床部21は上記リンク28によってほぼ水平に上昇した状態で保持されるようになっている。
【0027】なお、ベッドフレーム13の長手方向一端にはヘッドボード29が設けられ、他端にはフットボード31が設けられている。
【0028】上記床板体15上にはマットレス装置32が載置される。このマットレス装置32は、スプリングユニット33を有し、このスプリングニット33の上下面にはシート状の弾性材34が積層され、この積層体は外装地35によって被覆されている。
【0029】上記スプリングユニット33は、図2(a)、(b)に示すように複数の連続ばね体36がスプリングユニット33の幅方向に沿って並設されている。上記連続ばね体36は、複数のばね部37の上端と下端とがそれぞれ上部連結杆部38と下部連結杆部39によって交互に連結されている。
【0030】スプリングユニット33の長手方向中途部には、下部連結杆部39によって連結されずに隣り合う一対のばね部37の連結状態を上部連結杆部38だけにすることで、上部連結杆部38を弾性的に変形させながらスプリングユニット33を屈曲可能とする柔軟部41に形成されている。
【0031】この実施の形態において、柔軟部41は、上記床板体15の固定床部16と腰床部17との連結部部分及び第1の脚床部19と第2の脚床部21との連結部分に対応する位置に形成されている。また、柔軟部41は図1(a)に示すように下部連結下部39によって連結された2つのばね部37(便宜上37aとする)にそれぞれ対向する2つのばね部37(便宜上37bとする)の絡み合いを解除することで形成されている。
【0032】なお、柔軟部41以外の箇所では、図1(b)に示すように隣り合うばね部37は軸方向中途部及び下部連結杆部39が絡み合わされ、それによってスプリングユニット33は大きく屈曲させることができないようになっている。
【0033】柔軟部41及びそれ以外の箇所において、隣り合う上部連結杆部38の端部は絡み合わされている。また、柔軟部41以外の箇所では、下部連結杆部39も絡み合わされている。そして、並設された連続ばね体36は、上部連結杆部38及び柔軟部41以外の下部連結杆部39の絡み合った箇所がそれぞれ第1のヘリカル線42によって連結されている。つまり、第1のヘリカル線42は、図2(a)、(b)に示すようにスプリングユニット33の幅方向に沿って設けられている。
【0034】上記柔軟部41の箇所においては、絡み合いが解除された一対のばね部37のうちの一方のばね部37の軸方向中途部には、スプリングユニット33の幅方向ほぼ全長にわたって絡み防止部材としての第2のヘリカル線43が上記ばね部37に連結されて設けられている。この第2のヘリカル線43によって、スプリングユニット33を柔軟部41が閉じる方向に屈曲させたときに、この柔軟部41の一対のばね部37のうちの一方のばね部37に、他方のばね部37が絡まるのが阻止されるようになっている。
【0035】図3(a)は、柔軟部41が開く状態にスプリングユニット33が屈曲された場合を示しており、その場合には柔軟部41の連結されていない隣り合うばね部37が離れるから、これらばね部37が絡み合うことはない。
【0036】一方、図3(b)に示すように、柔軟部41が閉じる状態にスプリングユニット33が屈曲されると、この柔軟部41を形成する対向した一対のばね部37はぶつかる方向に変位するから、これらばね部37が絡み合う虞がある。
【0037】しかしながら、一対のばね部37のうちの一方には、軸方向中途部にスプリングユニット33の幅方向に沿う第2のヘリカル線43が設けられている。そのため、他方のばね部37は上記第2のヘリカル線43にぶつかり、それ以上一方のばね部37に接近するのが阻止されるから、この他方のばね部37が一方のばね部37に図5(b)に示すように絡み合うのが防止されることになる。
【0038】上記構成のマットレス装置32を起床式のベッド装置に用いた場合、スプリングユニット33の柔軟部41は背床部18を起上させたときや第1の脚床部19を起上させたときに屈曲される。
【0039】通常、固定床部16と背床部18との連結部分に対応する柔軟部41は、背床部18を起上させることで開く方向に変形するから、柔軟部41の対向する一対のばね部37が絡み合うことはない。しかしながら、マットレス装置32は通常、上下両面が使用できるようになっているから、間違って床板体15上に柔軟部41の開放端が上向きになるようマットレス装置32を載置しまうことがあり、そのような場合などには柔軟部41が閉じる方向にスプリングユニット33が屈曲されるから、柔軟部41の対向する一対のばね部37が絡み合うことになる。
【0040】また、柔軟部41の開放端が下向きになるよう、マットレス装置32が床板体15上に載置された場合でも、第1の脚床部19と第2の脚床部21との連結部分に対応位置する柔軟部41は、第1の脚床部19と第2の脚床部21とがへの字状に屈曲されることで、柔軟部41が閉じる方向にスプリングユニット33が屈曲されるから、対向する一対のばね部37が絡み合う方向に変位する。
【0041】いずれの場合であっても、上述したように、柔軟部41の一対のばね部37の一方の軸方向中途部には、スプリングユニット33の幅方向に沿って第2のヘリカル線43を設けたから、このヘリカル線43によって一方のばね部37に他方のばね部37が絡み合うのを防止することができる。
【0042】
【発明の効果】請求項1と請求項2の発明によれば、柔軟部を形成する一対のばね部のうちの一方のばね部の軸方向中途部に、絡み防止部材をスプリングユニットの幅方向に沿って連結して設けるようにした。
【0043】そのため、絡み防止部材によってスプリングユニットを折り曲げたときに、柔軟部の対向する一対のばね部のうちの、絡み防止部材が設けられていない他方のばね部が上記絡み防止部材に当たるから、その他方のばね部が一方のばね部に絡むのを防止することができる。
【0044】請求項3の発明によれば、床板体の背床部や脚床部を起伏駆動してマットレス装置を屈曲させても、そのマットレス装置を構成するスプリングユニットの柔軟部のばね部が絡み合うのを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)はこの発明の一実施の形態を示すスプリングユニットの柔軟部が形成された部分の斜視図、(b)は同じく柔軟部以外の部分の一部を示す斜視図。
【図2】(a)は同じくスプリングユニットの上面側を示す平面図、(b)は同じく下面側を示す平面図、(c)は同じく側面図。
【図3】(a)は同じく柔軟部が開く状態にスプリングユニットを屈曲させた状態の側面図、(b)は同じく閉じる方向に屈曲させた状態の側面図。
【図4】同じく床板体上に載置されたマットレス装置を断面したベッド装置の側面図。
【図5】(a)は従来の柔軟部の斜視図、(b)は同じく柔軟部のばね部が絡んだ状態の斜視図。
【符号の説明】
11…ベッド本体
15…床板体
16…固定床部
18…背床部
19,21…脚床部
22…駆動機構
33…スプリングユニット
34…弾性材
35…外装地
36…連続ばね体
37…ばね部
38…上部連結杆部
39…下部連結杆部
41…柔軟部
43…第2のヘリカル線(絡み防止部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】 1本の線材によって複数のばね部及び隣り合うばね部の上端と下端とをそれぞれ上部連結杆部と下部連結杆部とで連結するとともに、隣り合うばね部を絡ませた連続ばね体を形成し、その連続ばね体を並設してスプリングユニットとし、このスプリングユニットの上下面の少なくとも上面に弾性材を積層し、その積層体を外装体で被覆してなるマットレス装置において、上記スプリングユニットの長手方向中途部に、上記連続ばね体の隣り合う一対のばね部を上部連結杆部だけによって連結した柔軟部を上記スプリングユニットの幅方向に沿って形成し、この柔軟部を形成した一方のばね部の軸方向中途部を、スプリングユニットの幅方向に沿って設けた絡み防止部材によって連結したことを特徴とするマットレス装置。
【請求項2】 上記スプリングユニットには長手方向中途部の複数箇所に柔軟部が形成され、そのうちの少なくとも下方に向かって屈曲される部分に上記絡み防止部材が設けられていることを特徴とする請求項1記載のマットレス装置。
【請求項3】 ベッド本体と、このベッド本体に固定された固定床部及びこの固定床部の一端に回動可能に連結された背床部及び他端に回動可能に連結された脚床部とに分割された床板体と、上記背床部及び脚床部を起伏駆動する駆動機構と、上記床板体上に載置されるマットレス装置とを具備し、上記マットレス装置は請求項1記載の構成であることを特徴とするベッド装置。

【図1】
image rotate


【図3】
image rotate


【図2】
image rotate


【図4】
image rotate


【図5】
image rotate


【公開番号】特開2001−137075(P2001−137075A)
【公開日】平成13年5月22日(2001.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平11−321267
【出願日】平成11年11月11日(1999.11.11)
【出願人】(000010032)フランスベッド株式会社 (95)
【Fターム(参考)】