説明

マヨネーズ組成物

【課題】生のキノコ類を使用し、マヨネーズと均一に混じり合った新たな風味を有する調味料を得ようとする。
【課題手段】生のエノキタケやナメコを物理的に破砕してペースト状とする。このペーストをマヨネーズと均一的に混合することによって新規なマヨネーズ組成物とする。
上記のエノキタケやナメコは、菌の不活性化処理をしたものをペーストにして用いることができる。菌の不活性化処理は、蒸気加熱処理,蒸煮処理,レトルト処理,冷凍処理,調味加工処理などによって行うことができる。上記エノキタケやナメコのペーストの含有量はマヨネーズ組成物中の10〜80質量%程度とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として生のエノキタケおよび/又はナメコの破砕物を含むマヨネーズ組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、マヨネーズは多くの人に広く好まれている食品であるが、卵と油脂を主成分とするものであり、植物油脂が約65質量%以上含まれていることもあって高カロリーで、高コレステロールの調味料であることから、一部で使用が控えられる傾向も見られる。そのために、油脂含量や卵含量を減少させた低カロリー、低コレステロールのマヨネーズタイプの調味料の需要も急速に増大し、1999年から5年間で約2倍近い伸びを示している。
【0003】
また、マヨネーズに対する味の多様性を求めて、キムチ入りのマヨネーズ(特許文献1)、ケチャップとマヨネーズを混ぜ合したソース(特許文献2)、マヨネーズにわさびを混合したわさびソース(特許文献3)、マヨネーズに海苔を配合した調味料(特許文献4)なども提案されている。これらの食品はマヨネーズを使用しつつ、マヨネーズとは趣を異にする調味料を得ようとするものである。
一方、キノコ類についてこれを食品中に配合しようとするものも知られているが、これはキノコ類を乾燥して粉末化し、食品に混ぜようとするものである(特許文献5)。
【0004】
一般的に食べられているキノコ類は、施設栽培されるキノコであり、年間を通じて生産が行われているが、その需要期には季節性があって、年間を通してコンスタントに消費されるものではない。一般的に、鍋物や汁物などの温かな食べ物が好まれる秋季から冬季にかけての需要が多く、その他の季節には需要が少ないことから、これを有効に利用するために年間を通じて需要のある新規な食材及び加工用の用途の開発が求められている。
【0005】
本発明者らは、こうしたキノコ類の有効活用について種々検討を行い、特に、キノコ類を使用することによって新しい風味の調味料が得られるのではないかと種々研究していたが、なかなか良好なものが得られないでいた。
そうした中で、いわゆるフレッシュな状態の生のキノコをマヨネーズに混合することを着想したが、とりわけ、生のキノコを破砕して微粒子化したものをマヨネーズに混合すると、滑らかなクリーム状で口当たりも良好な美味しい調味料が得られることが判った。
しかしながら、キノコの種類によっては、一度はマヨネーズと混じり合ったものが、分離してしまい、事実上使用に耐えないものとなってしまうものも見られた。
【0006】
そこで、どのような種類のキノコが、どのような状態において好適であるか否かについて種々検討したところ、生のキノコの破砕物について、均一な懸濁状態を保っていることができるものと、均一な懸濁状態を保つことができないものとがあり、均一な懸濁状態を保っていることができるものは、マヨネーズと混合した場合にもマヨネーズと均一な混合状態を維持することができ、全体にまろやかな状態の調味料とすることができることが判った。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−275610号公報
【特許文献2】特開2002−095440号公報
【特許文献3】特開平6−339359号公報
【特許文献4】特開2000−152766号公報
【特許文献5】特開2006−238733号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、本発明者らによる上記知見に基づき、基本的に生のキノコ類を使用し、マヨネーズと均一に混じり合って安定状態を保ち、従来にない新たな風味を有する調味料を得ようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、エノキタケおよび/又はナメコの生のもの又は菌の不活性化処理を施したものについて、これを物理的に破砕してペースト状としたものをマヨネーズと均一的に混合することによってマヨネーズ組成物としたものである。
上記のエノキタケやナメコに対する菌の不活性化処理としては、蒸気加熱処理,蒸煮処理,レトルト処理,冷凍処理,調味加工処理などの少なくとも1つの処理によって行われる。
このマヨネーズ組成物は、冷凍処理したり、殺菌処理したりすることによって、長期間安定的に保存し使用することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、エノキタケやナメコの生のもの又は菌の不活性化処理を施したものを物理的に破砕してペースト状としたものは、均一な分散状態を保持しており、これをマヨネーズに混合したものは、全体が均一で滑らかなクリーム状態を長期間保っており、全体の味の調和も取れていて、調味料として有用に使用することができる。また、油脂分や卵の含有量が相対的に低下することによって低カロリーで低コレステロールの調味料を得ることができる。更に、不需要期に生産されるキノコを有効に活用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
通常、栽培用の瓶によって施設栽培されたエノキタケやナメコは、石突きを取除いて可食部を得てから、物理的な破砕処理によってペースト状にする。エノキタケは、加熱すると軟らかくなってヘタリ感のあるものになるが、生の状態であると張りがあって破砕処理し易いので、1〜2cm程度の長さに切ってからミキサー、磨砕装置などによって破砕処理を行うとよい。また、ナメコは、加熱処理を行っても外観的な変化はほとんど起きない。形状もエノキタケと比べると柄が短い為、そのままで或いは2等分に切る程度でミキサー、磨砕装置などによって破砕処理を行うことができる。
【0012】
上記した生のエノキタケはそのものだけで破砕処理するとよいが、場合によっては適宜量の加水を行って破砕処理することができる。エノキタケに加水して磨砕した後に冷凍し、その後解凍したりすると分離を生じることがあるので、その加水量は、エノキタケの重量対比で20%までに抑えるとよい。
こうしてペースト状にしたエノキタケは全体が滑らかな状態であり、多くの水分が含まれているけれども、これを放置しておいても離水も起こらず、分離状態になることもなく、全体が均一なペースト状態を保持しておくことができる。そして、このエノキタケのペーストは、凍結と融解を繰り返したとしても離水、分離現象が殆ど現れず、水分保持能力が高いものであることが判る。
【0013】
こうしたエノキタケのペーストは、マヨネーズと混合することによってマヨネーズ組成物とする。このエノキタケのペーストとマヨネーズは適宜の割合で混合することができるが、エノキタケのペーストの量をマヨネーズ組成物全量に対して1〜99質量%、好ましくは10〜80質量%、更に好ましくは20〜70質量%程度となるように混合することができる。
本発明において、上記エノキタケのペーストと混合されるマヨネーズは、JAS法で規定されているマヨネーズの他、マヨネーズタイプの粘ちょう状の各種ドレッシング類を含むものである。
上記したマヨネーズには、一般耐性のもの、耐熱性のもの、耐冷性のものなどがあるが、用途に応じての適当な性質を備えているものを使用することができる。
【0014】
こうして得られたマヨネーズ組成物は、エノキタケのペーストとマヨネーズがよく混じり合って均一で滑らかなクリーム状態を保持しており、分離したりすることはない。
このマヨネーズ組成物は、冷凍したり、殺菌したりすると長期間の保存が可能となり、こうしたマヨネーズ組成物を保存しておいても、離水が起こったり、分離したりするようなことはないし、腐敗するようなこともない。
【0015】
上記エノキタケは、上に述べたように生のものを破砕してペースト状にするほか、生のエノキタケにおける菌の活性を不活性化処理したものをペースト状にすることもできる。こうした菌の不活性化処理としては、生のエノキタケを蒸気加熱処理したり、蒸煮処理したり、レトルト処理したり、冷凍処理したり、調味加熱加工処理その他の処理によって行うことができ、場合によってはこれらの処理を適宜に組合せて行うことができる。
特に、生のエノキタケを冷凍処理したものを破砕処理すると、凍結状態によって硬くなっている状態で物理的に破砕処理されるので、破砕作用が一層効率的に行われ、より滑らかなペースト状態を得ることができる。
【0016】
このマヨネーズ組成物は、エノキタケのペーストがクセの無い味を有していることもあって、マヨネーズと良く調和し、全体として味覚上もやや淡白でマイルドな調味料が得られ、各種の食品や料理に広く用いることができる。
そして、このマヨネーズ組成物は通常のマヨネーズと同様にして使用することができるが、エノキタケのペーストの混入によって、全体としてマヨネーズ成分の含有量が少なくなるので、植物繊維が豊富であり、低カロリーであり、また低コレステロールであるし、エノキタケには抗癌活性成分が含まれていると言われているので、健康的な調味料、食品としてその用途も一層拡大することができる。
【0017】
上記マヨネーズに混合できるものとしては、エノキタケの他に上記のナメコを用いることができる。生のナメコの破砕物は、上記エノキタケと同様にそのペースト状態が安定であって、離水したり、分離したりすることが無いので、このペーストをマヨネーズに混合してマヨネーズ組成物を同様に得ることができる。
また、ナメコの菌の不活性化処理を行ったものも、同様にして用いることができる。そして、上記エノキタケのペーストとナメコのペーストは、適宜の割合で混合して用いることもできる。
【0018】
本発明者らは、上記したようにエノキタケ及びナメコのペーストについては、マヨネーズと混合して良好なマヨネーズ組成物を得ることができることが判ったが、現在の処、他のキノコによっては同様の効果を得ることができない。
上記したように、エノキタケやナメコのペーストについては、−20℃で凍結してこれを保存し、7日後に40℃の温水で融解したところ、離水現象は全く見られなかったが、例えば、マッシュルームやシイタケについて同様の処理したものでは、なぜかはっきりとした理由は判らないが離水現象が見られ、安定的なペースト状態を保持することができなかった。
【実施例】
【0019】
(実施例1)
生のエノキタケ5.96kgについてその石突きを取除き、可食部を1〜2cmの長さにカットし、これを袋に詰めて−18℃以下で凍結処理した。
このエノキタケの冷凍品を磨砕機(スーパーマスコロイダー:増幸産業株式会社製・MKZA6−5)にかけ、1パス目を0.2mm、2パス目を0.06mmとして、4.60kgのペースト状物を得た。
このエノキタケのペースト300gにマヨネーズ(キューピー株式会社製の業務用耐熱マヨネーズ205)300gを加え、ミキサーを使用して良く混合して容器に充填し、95℃で30分間の加熱殺菌を行ってマヨネーズ組成物を得た。このマヨネーズ組成物は、全体が均一な状態を呈しており、そのpHは4.84であった。
【0020】
(実施例2)
上記実施例1に示したエノキタケペースト200gに上記マヨネーズ(キューピー株式会社製の業務用耐熱マヨネーズ205)400gを加え、ミキサーを使用して良く混合し,他は実施例1と同様にしてマヨネーズ組成物を得た。このマヨネーズ組成物は、全体が均一な状態を呈しており、そのpHは4.63であった。
【0021】
(実施例3)
上記実施例1に示したエノキタケペースト400gに上記マヨネーズ(キューピー株式会社製の業務用耐熱マヨネーズ205)200gを加え、ミキサーを使用して良く混合し、他は実施例1と同様にしてマヨネーズ組成物を得た。このマヨネーズ組成物は、全体が均一な状態を呈しており、そのpHは5.23であった。
【0022】
(実施例4)
上記実施例1のマヨネーズ組成物を500gに、唐辛子に食塩を加えて発酵させ、アミノ酸含有量豊富で辛味低減タイプの多宝塔種のラー醤(ラージャン)60gと、アリシン量を低減しアリイン(アミノ酸)の含有量を増加させたにんにく加工品(旨味調味料、こく味にんにく)5gを混合したものを、加えてミキサーにてよく混合した。これを袋詰めして、95℃で30分間の加熱殺菌を行ってマヨネーズ組成物を得た。
このマヨネーズ組成物は、全体が均一な状態を呈しており、エノキタケの食物繊維とアミノ酸豊富な唐辛子とにんにくの添加によって旨味が増強され、やや辛味のある調味料として各種食品に用いることができる。
【0023】
(実施例5)
上記実施例1のマヨネーズ組成物500gに、にんにく加工品17.5gと荒挽き黒胡椒3gと、粉末黒胡椒2gを加えてミキサーにてよく混合した。これを袋詰めして、95℃で30分間の加熱殺菌を行ってマヨネーズ組成物を得た。
このマヨネーズ組成物は、全体が均一な状態を呈しており、エノキタケの食物繊維とにんにくの旨味と黒胡椒の味と香りによって、独特の洋風の風味を有している。
【0024】
(成分分析)
上記実施例1、実施例2、実施例3、エノキタケペースト、マヨネーズ(キューピー株式会社製の業務用耐熱マヨネーズ205)について、その内容を知るためにカロリー及び成分(全100g)を分析した。
その分析結果を表1に示す。
【0025】
【表1】

【0026】
(微生物検査)
実施例1〜実施例5のマヨネーズ組成物について微生物検査を行った。実施例1〜実施例5のものについて、10℃以下に9日間保存した後の標準寒天培地による一般性菌数の検査において、いずれも300個/g以下であった。また、大腸菌群(XM−G培地による)においても、いずれも陰性であった。
【0027】
(貯蔵安定性試験)
実施例1〜実施例5の各マヨネーズ組成物について貯蔵安定性を見るために、製造後2月間に亘って常温下において観察を続けたところ、何れのものもエノキタケとマヨネーズ成分の分離は見られず、クリーム状の均一状態が保持されていた。
【0028】
(考察)
実施例1では、マヨネーズに比較して脂質が1/2、たんぱく質が約1.4倍、カロリーが約1/2になっており、実施例2では、マヨネーズに比較して脂質が2/3、たんぱく質が約1.3倍、カロリーが約2/3になっており、実施例3では、マヨネーズに比較して脂質が1/3、たんぱく質が1.5倍、カロリーが約1/3になっており、マヨネーズに比べてたんぱく質が多く、低カロリーのマヨネーズ組成物になっており、多様な用途に向けて利用できることが判る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生又は菌不活性化処理を施したエノキタケおよび/又はナメコを破砕して得たペーストをマヨネーズと均一的に混合し冷凍処理又は殺菌処理をしたマヨネーズ組成物。
【請求項2】
上記菌不活性化処理が蒸気加熱処理,蒸煮処理,レトルト処理,冷凍処理,調味加工処理の少なくともいずれかである請求項1に記載のマヨネーズ組成物。
【請求項3】
上記マヨネーズは、一般耐性、耐冷性、耐熱性の少なくとも一つの性質を備えているものである請求項1又は2に記載のマヨネーズ組成物。
【請求項4】
上記エノキタケおよび/又はナメコを粉砕して得たペーストが、マヨネーズ組成物中に10〜80質量%含有されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のマヨネーズ組成物。
【請求項5】
生のエノキタケおよび/又はナメコを冷凍処理し、この冷凍物を破砕してペースト状にし、このペーストをマヨネーズに均一的に混合し冷凍処理又は加熱殺菌処理をしたことを特徴とするマヨネーズ組成物。

【公開番号】特開2012−90560(P2012−90560A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−240270(P2010−240270)
【出願日】平成22年10月27日(2010.10.27)
【出願人】(591062146)社団法人長野県農村工業研究所 (12)
【出願人】(503353025)株式会社アセラ (10)
【出願人】(509078539)株式会社マルトウ (1)
【Fターム(参考)】