説明

マラリアの治療のための置換されたテトラサイクリン化合物

【課題】被験者においてマラリアを治療または予防する方法を提供する。
【解決手段】一つの局面において、本発明は、有効量の置換されたテトラサイクリン化合物を投与することによって、被験者においてマラリアを治療又は予防するための方法に関する。一つの局面において、本発明は、被験者におけるマラリアを治療するための有効量のテトラサイクリン化合物及び薬学的に許容される担体を含む薬学的組成物に関する。本発明の置換されたテトラサイクリン化合物は、1つもしくは複数の抗マラリア化合物と組み合わせて使用することができ、又は、1つもしくは複数の他の抗マラリア化合物に耐性のあるマラリアを治療もしくは予防するために使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願 本願は、2001年4月24日に出願された「マラリアの治療のための置換されたテトラサイクリン化合物(”Substituted Tetracycline Compounds for the Treatment of Malaria”)」と題された米国仮特許出願第60/286,193号の優先権を主張する。この出願の内容全体を本明細書中に完全に援用する。
【背景技術】
【0002】
毎年、約3億〜5億のマラリアの臨床的症例がある。世界人口の約40%がこの疾患に罹患する危険にさらされている(Croft(2000)BMJ 321: 154−160)。マラリアは、頭痛、倦怠感、貧血、脾腫、ならびに亜寒期、灼熱期及び発汗期を伴う発熱発作が特徴である(Winstanley(1998)Journal of the Royal College of Physicians of Lond on 32(3): 203−207)。溶血と虚血が急性マラリアで見られる大部分の症状の原因となっている。マラリアは、Plasmodium属マラリア原虫によって引き起こされる。100余の種が存在し、そのうち22種がヒト以外の霊長類に感染し、82種が爬虫類及び鳥類を発病させる。通常、熱帯熱マラリア原虫(P. falciparum)、四日熱マラリア原虫(P. malariae)、三日熱マラリア原虫(P. vivax)、及び卵型マラリア原虫(P. ovale)の4種がヒトに感染する。マラリアは、ハマダラカ属の蚊に刺されて伝染したり、感染血の輸血、胎盤経由及び実験室での誤接種によって感染することがある。
【0003】
マラリア原虫は、複雑な生活環を持っている。ハマダラカ属の蚊においては有性生殖期が起こり、脊椎動物の宿主(すなわち、ヒト)においては無性生殖期が起こる(Randallら、(1985)Pediatric Clinics of North America 32 (4): 893−916)。蚊における有性生殖過程は、スポロゴニーと呼ばれ、生殖母細胞の成熟からスポロゾイトの発達までの期間を含む。ハマダラカ属の雌蚊は、摂餌の際、感染した宿主の血液中に存在する生殖母細胞を吸入する。蚊によって吸入された生殖母細胞は、蚊の消化管に移動する。小配偶子と大配偶子の接合により接合子が形成され、12〜24時間後、その接合子は、伸張し、運動性を持つようになる。それは、オーキネートと呼ばれる。その後、オーキネートは、蚊の胃を突き破り、オーシストを形成し、それは数千もの紡錐形のスポロゾイトに分裂し、蚊の体全体に放出される。
【0004】
感染したハマダラカ属の蚊によって血粉が取られる際、蚊の唾液腺からスポロゾイトが脊椎動物宿主(すなわち、ヒト)の血流に播種され、肝臓に運ばれる。発達段階の肝臓期の末期には、数千ものメロゾイトが血液循環中に放出され、赤血球と結合し、赤血球中に入る。無性生殖の赤血球期は、シゾゴニー(Schizogeny)と呼ばれる。感染した赤血球が破裂すると、より多くの赤血球を侵襲し得るメロゾイトを放出する。放出された他のメロゾイトは、それを摂餌する蚊を感染させ得る配偶体となり、マラリア原虫の生活環が再び始まる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は例えば、以下の項目を提供する:
(項目1)
マラリアが被験者において治療されるように有効量の置換されたテトラサイクリン化合物を前記被験者に投与することを含む、被験者においてマラリアを治療又は予防する方法。
(項目2)
前記テトラサイクリン化合物は、式Iによって表される、項目1に記載の方法:
【化1】

式中、XはCHC(R13Y’Y)、CR’R、S、NR、又はOであり、R、R’、R’、及びR”は、それぞれ個別に、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アルキルアミノ、アリールアルキル、アリール、複素環、複素環式芳香族、又はプロドラッグ成分であり、 Rは、NR’R”、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヒドロキシル、ハロゲン、又は水素であり、R、R11、及びR12は、それぞれ水素又はプロドラッグ成分であり、R10は、水素、プロドラッグ成分であるか、又はRと結合して環を形成しており、Rは、ヒドロキシル、水素、チオール、アルカノイル、アロイル、アルカロイル、アリール、複素環式芳香族、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アルキルアミノ、アリールアルキル、アルキルカルボニルオキシ、又はアリールカルボニルオキシであり、R及びR’は、個別に、水素、メチレン、非存在、ヒドロキシル、ハロゲン、チオール、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アルキルアミノ、又はアリールアルキルであり、 Rは、水素、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、又はマラリア相互作用部分(malaria−interacting moiety)であり、Rは、水素又はマラリア相互作用部分であり、Rは、水素、ヒドロキシル、ハロゲン、チオール、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アルキルアミノ、又はアリールアルキルであり、 R13は、水素、ヒドロキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アルキルアミノ、又はアリールアルキルであり、Y’及びYは、それぞれ個別に、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、シアノ、スルフヒドリル、アミノ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アルキルアミノ、又はアリールアルキルであり、但し、式Iで表される化合物は、オキシテトラサイクリン、デメクロサイクリン、ドキシサイクリン、クロロテトラサイクリン、ミノサイクリン、又はテトラサイクリン、及び薬学的に許容されるそれらの塩ではない。
(項目3)
、R’、R、R、R10、R11、及びR12が水素であり、RがNR’R”であり、R’及びR”がアルキルであり、XがCR’である、項目2に記載の方法。
(項目4)
、R及びR’が水素であり、Rがジメチルアミノである、項目3に記載の方法。
(項目5)
がヒドロキシまたはプロドラッグ部分であり、Rがメチルであり、R’が水素であり、Rが水素である、項目3に記載の方法。
(項目6)
がマラリア相互作用部分である、項目4又は5に記載の方法。
(項目7)
前記マラリア相互作用部分は、置換された又は置換されていないアリール基を含む、項目6に記載の方法。
(項目8)
前記マラリア相互作用部分が置換されたフェニルである、項目7に記載の方法。
(項目9)
前記マラリア相互作用部分が、アルコキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アミノ、シアノ、ヒドロキシ、ニトロ、又はハロゲンで置換されている、項目8に記載の方法。
(項目10)
前記マラリア相互作用部分がメチレンジオキシフェニルである、項目9に記載の方法。
(項目11)
前記アリール基がアルキルで置換されている、項目9に記載の方法。
(項目12)
前記アルキルがヘテロ環で置換されている、項目11に記載の方法。
(項目13)
前記マラリア相互作用部分が、置換された又は置換されていない、アルケニル又はアルキニルである、項目4又は5に記載の方法。
(項目14)
前記マラリア相互作用部分がNR9CC(=Z’)ZR9aである、項目4または5に記載の方法。
(項目15)
ZがNであり、Z’がOである、項目14に記載の方法。
(項目16)
9aがアリールである、項目14または15に記載の方法。
(項目17)
ZがOであり、Z’がOであり、R9aがアルキルである、項目14に記載の方法。
(項目18)
及びR’が水素であり、Rがプロドラッグ部分または水素である、項目3に記載の方法。
(項目19)
がマラリア相互作用部分である、項目18に記載の方法。
(項目20)
は、炭素、窒素、硫黄、及び酸素からなる群から選択される4個〜20個の原子を含む、項目19に記載の方法。
(項目21)
前記マラリア相互作用部分は、アリール基を含む、項目19に記載の方法。
(項目22)
前記アリール基が置換された又は置換されていないフェニルである、項目20に記載の方法。
(項目23)
前記フェニル基がハロゲン、アルコキシ、アミノ、アシル、アルキル、ニトロ、ホルミル、アミド、アルキル、アルケニル、アルキニル、又はアリールで置換されている、項目22に記載の方法。
(項目24)
前記アルコキシ基がメトキシ、エトキシ、プロポキシ、メチレンジオキシ、又はエチレンジオキシで置換されている、項目23に記載の方法。
(項目25)
前記アルキル基が置換されている、又は置換されたメチル、エチル、プロピル、ブチルもしくはペンチルである、項目23に記載の方法。
(項目26)
前記アルキル基がアミノ、カルボキシル、又は複素環式基で置換されている、項目25に記載の方法。
(項目27)
前記アシル基がアセチルである、項目23に記載の方法。
(項目28)
前記アリール基が置換された又は置換されていないヘテロアリールである、項目21に記載の方法。
(項目29)
前記ヘテロアリールがチエニル、イミダゾリル、ピロリル(pyrolyl)、ピリジニル、フラニル、ピリミジニル、又はベンゾフラニルである、項目28に記載の方法。
(項目30)
前記マラリア相互作用部分が置換された又は置換されていないアルキニル基である、項目19又は20に記載の方法。
(項目31)
前記アルキルが置換された又は置換されていないアリール基で置換されている、項目30に記載の方法。
(項目32)
前記マラリア相互作用部分がアルキル又はアルケニルである、項目19に記載の方法。
(項目33)
前記マラリア相互作用部分がC〜C15である、項目32に記載の方法。
(項目34)
前記Rがアルキルエステルである、項目3〜33のいずれか1項に記載の方法。
(項目35)
前記Rがヒドロキシである、項目3〜33のいずれか1項に記載の方法。
(項目36)
前記Rが水素である、項目19〜35のいずれか1項に記載の方法。
(項目37)
がマラリア相互作用部分である、項目19〜35のいずれか1項に記載の方法。
(項目38)
前記化合物は、以下の式からなる群から選択される式で表される化合物である、項目2に記載の方法。
【化2】

【化3】

【化4】

(項目39)
前記化合物は、以下の式からなる群から選択される式で表される化合物である、項目2に記載の方法。
【化5】

【化6】

【化7】

(項目40)
前記化合物が、表1に示されている化合物である、項目2に記載の方法。
(項目41)
前記被験者がヒトである、項目1〜40のいずれか1項に記載の方法。
(項目42)
前記置換されたテトラサイクリン化合物が抗グラム陽性菌活性を有している、項目1〜41のいずれか1項に記載の方法。
(項目43)
前記抗グラム陽性菌活性が約0.05μg/mlより大きい、項目42に記載の方法。
(項目44)
前記抗グラム陽性菌活性が約5μg/mlより大きい、項目43に記載の方法。
(項目45)
前記置換されたテトラサイクリン化合物が25μg/ml以上の細胞毒性を有している、項目1〜44のいずれか1項に記載の方法。
(項目46)
前記置換されたテトラサイクリン化合物が150nM以下の最小発育阻止濃度を有している、項目1〜45のいずれか1項に記載の方法。
(項目47)
前記置換されたテトラサイクリン化合物が50nM以下の最小発育阻止濃度を有している、項目46に記載の方法。
(項目48)
前記置換されたテトラサイクリン化合物が10nM以下の最小発育阻止濃度を有している、項目47に記載の方法。
(項目49)
前記置換されたテトラサイクリン化合物が5nM以下の最小発育阻止濃度を有している、項目48に記載の方法。
(項目50)
前記マラリアが、熱帯熱マラリア原虫、三日熱マラリア原虫、卵型マラリア原虫、及び四日熱マラリア原虫からなる群から選択されるマラリア原虫によって引き起こされる、項目1〜49のいずれか1項に記載の方法。
(項目51)
前記マラリアは、プログアニル、クロルプログアニル、トリメトプリム、クロロキン、メフロキン、ルメファントリン、アトバクオン、ピリメタミン−スルファドキシン、ピリメタミン−ダプソン、ハロファントリン、キニーネ、キニジン、アモジアキン、アモプロキン(amopyroquine)、スルホンアミド、アルテミシニン、アルテフレン(arteflene)、アルテムエーテル、アルテスネート、プリマキン、及びピロナリジン(pyronaridine)からなる群から選択される抗マラリア化合物の1つ又は複数に耐性を有している、項目1〜50のいずれか1項に記載の方法。
(項目52)
前記マラリアがプログアニル、クロルプログアニル、ピリメタミン、クロロキン、メフロキン、ハロファントリン、キニーネ、及びキニジンからなる群から選択される抗マラリア化合物の1つ又は複数に耐性を有している、項目1〜51のいずれか1項に記載の方法。
(項目53)
補足化合物を投与することをさらに含む、項目1〜52のいずれか1項に記載の方法。
(項目54)
前記補足化合物が、頭痛、倦怠感、貧血、脾腫、及び発熱からなる群から選択される症状を治療する、項目53に記載の方法。
(項目55)
前記補足化合物が抗マラリア化合物である、項目53に記載の方法。
(項目56)
前記抗マラリア化合物が、プログアニル、クロルプログアニル、トリメトプリム、クロロキン、メフロキン、ルメファントリン、アトバクオン、ピリメタミン−スルファドキシン、ピリメタミン−ダプソン、ハロファントリン、キニーネ、キニジン、アモジアキン、アモプロキン(amopyroquine)、スルホンアミド、アルテミシニン、アルテフレン(arteflene)、アルテムエーテル、アルテスネート、プリマキン、ピロナリジン(pyronaridine)、プログアニル、クロロキン、メフロキン、ピリメタミン−スルファドキシン、ピリメタミン−ダブソン、ハロファントリン、キニーネ、プログアニル、クロロキン、メフロキン、1,16−ヘキサデカメチレンビス(N−メチルピロリジニウム)ジブロミド、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、項目55に記載の方法。
(項目57)
哺乳動物においてマラリアを予防するための方法であって、前記方法は、前記哺乳動物においてマラリアが治療されるように有効用量の置換されたテトラサイクリン化合物を前記哺乳動物に投与することを含み、前記化合物は、化学式1によって表される方法。
【化8】

式中、XはCHC(R13Y’Y)、CR6’、S、NR、又はOであり、 R、R2’、R4’、及びR4”は、それぞれ個別に、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アルキルアミノ、アリールアルキル、アリール、複素環、複素環式芳香族、又はプロドラッグ成分であり、 Rは、NR4’4”、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヒドロキシル、ハロゲン、又は水素であり、R、R11、及びR12は、それぞれ水素又はプロドラッグ成分であり、R10は、水素、プロドラッグ成分であるか、又はRと結合して環を形成しており、Rは、ヒドロキシル、水素、チオール、アルカノイル、アロイル、アルカロイル、アリール、複素環式芳香族、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アルキルアミノ、アリールアルキル、アルキルカルボニルオキシ、又はアリールカルボニルオキシであり、 R及びR6’、個別に、水素、メチレン、非存在、ヒドロキシル、ハロゲン、チオール、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アルキルアミノ、又はアリールアルキルであり、 Rは、水素、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、又はマラリア相互作用部分であり、Rは、水素又はマラリア相互作用部分であり、Rは、水素、ヒドロキシル、ハロゲン、チオール、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アルキルアミノ、又はアリールアルキルであり、 R13は、水素、ヒドロキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アルキルアミノ、又はアリールアルキルであり、Y’及びYは、それぞれ個別に、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、シアノ、スルフヒドリル、アミノ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アルキルアミノ、又はアリールアルキルであり、但し、式1で表される化合物は、オキシテトラサイクリン、デメクロサイクリン、ドキシサイクリン、クロロテトラサイクリン、ミノサイクリン、又はテトラサイクリン、及び薬学的に許容されるそれらの塩ではない。
(項目58)
前記置換されたテトラサイクリン化合物は、以下の式からなる群から選択される式で表される化合物である、項目57に記載の方法。
【化9】

【化10】

【化11】

【化12】

【化13】

(項目59)
前記置換されたテトラサイクリン化合物は、表1に示されている化合物である、項目57に記載の方法。
(項目60)
前記置換されたテトラサイクリン化合物が抗グラム陽性菌活性を有している、項目57〜59のいずれか1項に記載の方法。
(項目61)
前記抗グラム陽性菌活性が約0.05μg/mlより大きい、項目60に記載の方法。
(項目62)
前記抗グラム陽性菌活性が約5μg/mlより大きい、項目61に記載の方法。
(項目63)
前記置換されたテトラサイクリン化合物が25μg/ml以上の細胞毒性を有している、項目57〜62のいずれか1項に記載の方法。
(項目64)
前記置換されたテトラサイクリン化合物が150nM以下の最小発育阻止濃度を有している、項目57〜63のいずれか1項に記載の方法。
(項目65)
前記置換されたテトラサイクリン化合物が50nM以下の最小発育阻止濃度を有している、項目64に記載の方法。
(項目66)
前記置換されたテトラサイクリン化合物が10nM以下の最小発育阻止濃度を有している、項目65に記載の方法。
(項目67)
前記置換されたテトラサイクリン化合物が5nM以下の最小発育阻止濃度を有している、項目66に記載の方法。
(項目68)
哺乳類におけるマラリアを治療するための有効量の置換されたテトラサイクリン化合物及び薬学的に許容される担体を含む薬学的組成物であって、前記テトラサイクリン化合物は、式1で表される薬学的組成物。
【化14】

式中、XはCHC(R13Y’Y)、CR6’、S、NR、又はOであり、R、R2’、R4’、及びR4”は、それぞれ個別に、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アルキルアミノ、アリールアルキル、アリール、複素環、複素環式芳香族、又はプロドラッグ成分であり、 Rは、NR4’4”、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヒドロキシル、ハロゲン、又は水素であり、R、R11、及びR12は、それぞれ水素又はプロドラッグ成分であり、R10は、水素、プロドラッグ成分であるか、又はRと結合して環を形成しており、Rは、ヒドロキシル、水素、チオール、アルカノイル、アロイル、アルカロイル、アリール、複素環式芳香族、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アルキルアミノ、アリールアルキル、アルキルカルボニルオキシ、又はアリールカルボニルオキシであり、 R及びR6’は、個別に、水素、メチレン、非存在、ヒドロキシル、ハロゲン、チオール、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アルキルアミノ、又はアリールアルキルであり、 Rは、水素、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、又はマラリア相互作用部分であり、Rは、水素又はマラリア相互作用部分であり、Rは、水素、ヒドロキシル、ハロゲン、チオール、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アルキルアミノ、又はアリールアルキルであり、 R13は、水素、ヒドロキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アルキルアミノ、又はアリールアルキルであり、Y’及びYは、それぞれ個別に、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、シアノ、スルフヒドリル、アミノ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アルキルアミノ、又はアリールアルキルであり、但し、式1で表される化合物は、オキシテトラサイクリン、デメクロサイクリン、ドキシサイクリン、クロロテトラサイクリン、ミノサイクリン、又はテトラサイクリン、及び薬学的に許容されるそれらの塩ではない。
(項目69)
前記置換されたテトラサイクリン化合物は、以下の式からなる群から選択される式で表される化合物である、項目68に記載の薬学的組成物。
【化15】

【化16】

【化17】

【化18】

【化19】

(項目70)
前記置換されたテトラサイクリン化合物が表1に示されている化合物である、項目68に記載の方法。
(項目71)
補足の抗マラリア化合物をさらに含む、項目68〜70のいずれか1項に記載の薬学的組成物。
(項目72)
前記抗マラリア化合物が、プログアニル、クロルプログアニル、トリメトプリム、クロロキン、メフロキン、ルメファントリン、アトバクオン、ピリメタミン−スルファドキシン、ピリメタミン−ダプソン、ハロファントリン、キニーネ、キニジン、アモジアキン、アモプロキン(amopyroquine)、スルホンアミド、アルテミシニン、アルテフレン(arteflene)、アルテムエーテル、アルテスネート、プリマキン、1,16−ヘキサデカメチレンビス(N−メチルピロリジニウム)ジブロミド)、及びピロナリジン(pyronaridine)からなる群から選択される、項目71に記載の薬学的組成物。
(項目73)
置換されたテトラサイクリン化合物が有効量のテトラサイクリン化合物を使用するための指示書とともに包装されている、包装されたマラリア治療薬および予防薬。
本発明は、少なくとも部分的に、有効量の置換されたテトラサイクリン化合物を投与することによって、被験者において、マラリアを治療又は予防するための方法に関する。本発明の方法は、下記式Iで表される、有効量の置換されたテトラサイクリン化合物を投与することを含む。
【0006】
【化20】

【0007】
式中、XはCHC(R13Y’Y)、CR6’、S、NR、又はOであり、 R、R2’、R4’、及びR4”は、それぞれ個別に、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アルキルアミノ、アリールアルキル、アリール、複素環、複素環式芳香族、又はプロドラッグ成分であり、 Rは、NR4’4”、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヒドロキシル、ハロゲン、又は水素であり、R、R11、及びR12は、それぞれ水素又はプロドラッグ成分であり、R10は、水素、プロドラッグ成分であるか、又はRと結合して環を形成しており、Rは、ヒドロキシル、水素、チオール、アルカノイル、アロイル、アルカロイル、アリール、複素環式芳香族、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アルキルアミノ、アリールアルキル、アルキルカルボニルオキシ、又はアリールカルボニルオキシであり、 R及びR6’は、個別に、水素、メチレン、非存在、ヒドロキシル、ハロゲン、チオール、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アルキルアミノ、又はアリールアルキルであり、 Rは、水素、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、又はマラリア相互作用部分であり、Rは、水素又はマラリア相互作用部分であり、Rは、水素、ヒドロキシル、ハロゲン、チオール、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アルキルアミノ、又はアリールアルキルであり、R13は、水素、ヒドロキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アルキルアミノ、又はアリールアルキルであり、Y’及びYは、それぞれ個別に、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、シアノ、スルフヒドリル、アミノ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アルキルアミノ、又はアリールアルキルであり、但し、式Iで表される化合物は、オキシテトラサイクリン、デメクロサイクリン、ドキシサイクリン、クロロテトラサイクリン、ミノサイクリン、又はテトラサイクリン、及び薬学的に許容されるそれらの塩ではない。
【0008】
本発明はまた、少なくとも部分的に、被験者、例えば、哺乳動物において、マラリアを治療又は予防するための薬剤の調製における、式Iで表される、置換されたテトラサイクリン化合物の使用に関する。
【0009】
本発明は、少なくとも部分的に、例えば、プログアニル、クロルプログアニル、トリメトプリム、クロロキン、メフロキン、ルメファントリン、アトバクオン、ピリメタミン−スルファドキシン、ピリメタミン−ダプソン、ハロファントリン、キニーネ、キニジン、アモジアキン、アモプロキン(amopyroquine)、スルホンアミド、アルテミシニン、アルテフレン(arteflene)、アルテムエーテル、アルテスネート、プリマキン、及びピロナリジン(pyronaridine)のような、抗マラリア化合物の1つ又は複数に耐性のあるマラリアを治療又は予防するための方法に関する。
【0010】
別の局面において、本発明はまた、有効量の上記置換されたテトラサイクリン化合物の1つ及び薬学的に許容される担体を含む薬学的組成物に関する。
【0011】
本発明はまた、マラリアを治療するための化合物を使用するための指示書とともに包装された、1つ又は複数の本発明の置換されたテトラサイクリン化合物を含む、包装されたマラリア治療薬を特徴とする。
【発明を実施するための形態】
【0012】
一つの局面において、本発明は、有効量の置換されたテトラサイクリン化合物を投与することによって、被験者において、マラリアを治療又は予防するための方法に関する。
【0013】
「マラリア」という用語は、「マラリア」として知られている当該技術分野で認識されている状態、例えば、Plasmodium属マラリア原虫によって引き起こされる障害を含む。マラリアは一般的に、頭痛、倦怠感、貧血、脾腫、ならびに亜寒期、灼熱期及び発汗期を伴う発熱発作等の症状を特徴とし、蚊によって伝播される(Winstanley(1998)Journal of the Royal College of Physicians of London 32(3): 203−207)。さらなる態様において、原虫は、熱帯熱マラリア原虫、三日熱マラリア原虫、卵型マラリア原虫、及び四日熱マラリア原虫からなる群から選択される。
【0014】
「治療される」、「治療する」、又は「治療」という用語は、マラリアに関連する、又はマラリアによって引き起こされる、少なくとも1つの症状、例えば、頭痛、倦怠感、貧血、脾腫、ならびに亜寒期、灼熱期及び発汗期を伴う発熱発作の軽減又は緩和を含む。例えば、治療は、マラリアの1つもしくはいくつかの症状の軽減でもあり得るし、又はマラリアの完全な根治でもあり得る。
【0015】
「予防される」又は「予防する」という用語は、本発明の置換されたテトラサイクリン化合物を現時点でマラリアに罹患していない被験者に投与し、該被験者が投与後、マラリアに曝露された後、一定期間マラリアに罹らないようにすることを含む。
【0016】
「テトラサイクリン化合物」という用語は、メタサイクリン、サンサイクリン、アピサイクリン(apicycline)、クロモサイクリン(clomocycline)、グアメサイクリン(guamecycline)、メグルサイクリン(meglucycline)、メピルサイクリン(mepylcycline)、ペニメサイクリン(penimepicycline)、ピパサイクリン(pipacycline)、エタモサイクリン(etamocycline)、ペニモサイクリン(penimocycline)等のテトラサイクリンファミリーの物質、ならびに、特徴的なナフタセンA−B−C−D環構造を有するテトラサイクリン化合物を含む。さらに別のテトラサイクリン化合物は、例えば、米国特許出願第09/234,847号、及び米国特許第5,834,450号、第5,532,227号、第5,789,395号、第5,639,742号、及びドイツ特許第28 14 974号及び第28 20 983号に記載がある。前述の特許出願及び特許の全ての内容を引用によって本明細書中に明確に援用する。
【0017】
最近の研究では、さまざまな治療条件及び投与経路において有効な新規テトラサイクリン抗生物質組成物の開発ならびに、1948年以来導入されてきた従来のテトラサイクリンファミリーの抗生物質と比較して同等、又はより有効なことが証明される可能性のある新規テトラサイクリン類似体の開発に努力が傾けられている。このような開発の代表的なものは、米国特許第3,957,980号、第3,674,859号、第2,980,584号、第2,990,331号、第3,062,717号、第3,557,280号、第4,018,889号、第4,024,272号、第4,126,680号、第3,454,697号、及び第3,165,531号に含まれている。これら発行された特許は、薬理学的に活性を有するテトラサイクリン及びテトラサイクリン類似体の組成物を探索する調査の多様性の範囲を単に代表するものであって、個々の内容を明確に引用によって援用する。
【0018】
歴史的には、初期の開発及び導入の直後に、その特異的な剤形や化学構造にかかわらず、テトラサイクリンがリケッチア、数種のグラム陽性細菌及びグラム陰性細菌、ならびに結膜炎及びオウム病を含む性病性リンパ肉芽腫(lymphogranuloma venereum)の原因となる病原体に対して薬理学的に極めて有効であることが判明した。こうしてテトラサイクリンは「広域」抗生物質として知られるようになった。続いて、テトラサイクリンのインビトロでの抗菌活性、実験的感染における有効性、及び薬理学的特性の確立により、一つのクラスとしてのテトラサイクリンは、急速に治療目的で広く使用されるようになった。しかし、重度及び軽度の、疾患及び疾病の全てに対してテトラサイクリンが広く使用されたことにより、共生性及び病原性両方の高感受性細菌種(例えば、肺炎球菌及びサルモネラ)においてさえ、これらの抗生物質に対する耐性が出現するに至った。テトラサイクリン耐性生物の増加により、選択用の抗生物質としてのテトラサイクリン及びテトラサイクリン類似体の組成物の使用は、総体的に低下する結果となった。
【0019】
「置換されたテトラサイクリン」及び「置換されたテトラサイクリン化合物」という用語は、式Iで表されるテトラサイクリン化合物を含む。一つの態様においては、「置換されたテトラサイクリン化合物」という用語は、オキシテトラサイクリン、デメクロサイクリン、ドキシサイクリン、クロロテトラサイクリン、ミノサイクリン、及びテトラサイクリンを含まない。さらなる態様においては、「置換されたテトラサイクリン化合物」は、メタサイクリン及びサンサイクリンを含まない。別のさらなる態様においては、「置換されたテトラサイクリン化合物」は、例えば、引用によって本明細書中に完全に援用されている米国特許第6,043,231号、第5,919,775号、及び第5,789,395号に記載の化合物を含まない。本発明の置換されたテトラサイクリン化合物は、一定の生物学的または身体的特性が向上するように、例えば、置換されたテトラサイクリン化合物がその意図された機能、例えば、マラリアの治療または予防を行うことができるように、置換されてもよい。
【0020】
一つの態様において、本発明の置換されたテトラサイクリン化合物は、当該技術において公知のアッセイ又は実施例6に記載されたアッセイで測定されるように、抗グラム陽性菌活性を有していることもある。一つの態様において、置換されたテトラサイクリン化合物の抗グラム陽性菌活性は、約0.0001μg/mlより大きい、約0.05μg/mlより大きい、約0.5μg/mlより大きい、約1.0μg/mlより大きい、又は約5.0μg/mlより大きい。ここに含まれる数値及び範囲、及び/又はここに記載の数値の中間値も、本発明の範囲に含まれることが意図されている。
【0021】
別の態様において、本発明の置換されたテトラサイクリン化合物は、被験者に対して有効量の化合物を重い細胞毒性副作用を引き起こすことなく投与できる細胞毒性を有している。一つの態様において、本発明の置換されたテトラサイクリン化合物の細胞毒性は、実施例5に記載されたアッセイのような当該技術において公知の細胞毒性アッセイによって測定されているように、約10μg/ml、約15μg/ml、約20μg/ml、又は約25μg/mlより大きい。
【0022】
別の態様において、本発明の置換されたテトラサイクリンは、その意図した機能、例えば、被験者におけるマラリアの治療又は予防を行うことができるような最小発育阻止濃度(MIC)を有している。MICは、マラリア寄生虫を阻止するのに必要な化合物の濃度の測定値である。MICは、当該技術において公知の方法、ならびに実施例3に記載のインビトロ法又は実施例4に記載のインビボ法を用いて調べることができる。一つの態様において、インビトロで測定された、置換されたテトラサイクリン化合物のMICは、約1000nM以下、約900nM以下、約800nM以下、約700nM以下、約600nM以下、約500nM以下、約450nM以下、約400nM以下、約350nM以下、約300nM以下、約250nM以下、約200nM以下、約190nM以下、約180nM以下、約170nM以下、約160nM以下、約150nM以下、約140nM以下、約130nM以下、約120nM以下、約110nM以下、約100nM以下、約90nM以下、約80nM以下、約70nM以下、約60nM以下、約50nM以下、約45nM以下、約40nM以下、約35nM以下、約30nM以下、約25nM以下、約20nM以下、約15nM以下、約12.5nM以下、約10nM以下、約9nM以下、約8nM以下、約7nM以下、約6nM以下、約5nM以下、約4.5nM以下、約4.0nM以下、約3.5nM以下、約3.0nM以下、約2.5nM以下、約2.0nM以下、約1.5nM以下、約1.0nM以下、約0.5nM以下、約0.4nM以下、約0.3nM以下、約0.2nM以下、又は約0.1nM以下である。
【0023】
別の態様において、インビボで測定された、置換されたテトラサイクリン化合物のMICは、約500mg/kg以下、約250mg/kg以下、約200mg/kg以下、約190mg/kg以下、約180mg/kg以下、約170mg/kg以下、約160mg/kg以下、約150mg/kg以下、約140mg/kg以下、約130mg/kg以下、約120mg/kg以下、約110mg/kg以下、約100mg/kg以下、約95mg/kg以下、約90mg/kg以下、約85mg/kg以下、約80mg/kg以下、約75mg/kg以下、約70mg/kg以下、約65mg/kg以下、約60mg/kg以下、約55mg/kg以下、約50mg/kg以下、約45mg/kg以下、約40mg/kg以下、約35mg/kg以下、約30mg/kg以下、約29mg/kg以下、約28mg/kg以下、約27mg/kg以下、約26mg/kg以下、約25mg/kg以下、約24mg/kg以下、約23mg/kg以下、約22mg/kg以下、約21mg/kg以下、約20mg/kg以下、約19mg/kg以下、約18mg/kg以下、約17mg/kg以下、約16mg/kg以下、約15mg/kg以下、14mg/kg以下、13mg/kg以下、12mg/kg以下、11mg/kg以下、10mg/kg以下、約9mg/kg以下、約8mg/kg以下、約7mg/kg以下、約6mg/kg以下、約5mg/kg以下、約4.5mg/kg以下、約4mg/kg以下、約3.5mg/kg以下、約3mg/kg以下、約2.5mg/kg以下、約2mg/kg以下、約1.5mg/kg以下、約1mg/kg以下、約0.8mg/kg以下、約0.6mg/kg以下、約0.4mg/kg以下、約0.2mg/kg以下、約0.1mg/kg以下、約0.05mg/kg以下、又は約0.01mg/kg以下である。
【0024】
本発明は、マラリアが被験者において治療又は予防されるように有効量の置換されたテトラサイクリン化合物を被験者に投与することを含む、被験者においてマラリアを治療又は予防する方法を提供する。置換されたテトラサイクリン化合物は、下記式Iで表される。
【0025】
【化21】

【0026】
式中、XはCHC(R13Y’Y)、CR6’、S、NR、又はOであり、 R、R2’、R4’、及びR4”は、それぞれ個別に、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アルキルアミノ、アリールアルキル、アリール、複素環、複素環式芳香族、又はプロドラッグ成分であり、 Rは、NR4’4”、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヒドロキシル、ハロゲン、又は水素であり、R、R11、及びR12は、それぞれ水素又はプロドラッグ成分であり、R10は、水素、プロドラッグ成分であるか、又はRと結合して環を形成しており、Rは、ヒドロキシル、水素、チオール、アルカノイル、アロイル、アルカロイル、アリール、複素環式芳香族、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アルキルアミノ、アリールアルキル、アルキルカルボニルオキシ、又はアリールカルボニルオキシであり、 R及びR6’は、個別に、水素、メチレン、非存在、ヒドロキシル、ハロゲン、チオール、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アルキルアミノ、又はアリールアルキルであり、 Rは、水素、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、又はマラリア相互作用部分であり、Rは、水素又はマラリア相互作用部分であり、Rは、水素、ヒドロキシル、ハロゲン、チオール、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アルキルアミノ、又はアリールアルキルであり、R13は、水素、ヒドロキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アルキルアミノ、又はアリールアルキルであり、Y’及びYは、それぞれ個別に、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、シアノ、スルフヒドリル、アミノ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アルキルアミノ、又はアリールアルキルであり、但し、式Iで表される化合物は、オキシテトラサイクリン、デメクロサイクリン、ドキシサイクリン、クロロテトラサイクリン、ミノサイクリン、又はテトラサイクリン、及び薬学的に許容されるそれらの塩ではない。
【0027】
本発明の方法に用いることができる式Iで表される化合物の例には、R2’、R、R、R10、R11、及びR12が水素であり、RがNR’R”及びR4”であり、R4”がアルキル(例えば、メチル)であり、XがCR6’である、置換されたテトラサイクリン化合物が含まれる。本発明の置換されたテトラサイクリン化合物はまた、例えば、R、R及びR6’が水素であり、Rがジアルキルアミノである、置換されたミノサイクリン誘導体を含んでいてもよい。本発明はまた、置換されたドキシサイクリン誘導体、例えば、Rがアルキルであり、R6’が水素であり、Rが水素である、本発明の置換されたテトラサイクリン化合物を使用する方法を含む。Rは、ヒドロキシル又はプロドラッグ成分であってもよい。本発明また、R、R及びR6’が水素である、置換されたサンサイクリン化合物を含む。いくつかの態様において、置換されたサンサイクリン化合物は、R及びRの少なくとも1つがマラリア相互作用部分である化合物を含む。別の態様において、Rは水素である。
【0028】
一つの態様において、本発明の置換されたテトラサイクリン化合物は、少なくとも7位置もしくは9位置において、水素以外の置換基(9位置もしくは7位置)で置換されている、又は、7位置において、ジメチルアミノで置換されている。
【0029】
別の態様において、本発明の置換されたテトラサイクリン化合物は、7位置もしくは9位置において、マラリア相互作用部分で置換されている。「マラリア相互作用部分」という用語は、本発明の置換されたテトラサイクリン化合物に、その意図された機能、例えば、治療又は予防を行わせる部分である。一つの態様において、マラリア相互作用部分は、約3〜20の炭素、窒素、酸素及び硫黄原子を含む部分であるが、これに限定されない。マラリア相互作用部分は、水素及び3〜20の原子の中に数えられていないその他の置換基(例えば、ハロゲン)でさらに置換されていてもよい。さらなる態様において、マラリア相互作用部分は、アリール又はヘテロアリール部分を含む。さらに、アリール又はヘテロアリール部分は、その意図された機能を行うことを可能とするあらゆる置換基で置換されることができる。マラリア相互作用部分はまた、アルケニル、アルキニル、及びアルキル部分を含み、それもまた置換されていてもよい。別の態様において、マラリア相互作用部分は、約4〜16の炭素、硫黄、窒素、及び酸素原子、又は、約5〜約15の炭素、硫黄、窒素及び酸素原子を含む。マラリア相互作用部分の例には、置換された、及び置換されていないアリール(例えば、置換されたフェニル及び置換されていないフェニル)、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールアルキニル等が含まれるが、これらに限定されない。別の態様において、マラリア相互作用部分は、置換されたアミノアルキル、例えば、アルキルアミノアルキル、ジアルキルアミノアルキル、アルケニルアミノアルキル、アルキニルアミノアルキル、アラルキルアミノアルキル、アリールアミノアルキル等である。
【0030】
一つの態様において、Rがマラリア相互作用部分であるとき、マラリア相互作用部分は、ハロゲン、チオール、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アリールアルキル、アミノ、アリールアルケニル、アリールアルキニル、アルコキシカルボニルアルキルアミノ、又は−(CHO−3NR7CC(=W’)WR7a(但し式中、Wは、CR7d7e、NR7b、S、又はOであり、W’は、O又はSであり、ならびにR7a、R7b、R7c、R7d、及びR7eは、それぞれ個別に、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アルキルアミノ、アリールアルキル、アリール、複素環、複素環式芳香族、又はプロドラッグ成分である)でもよい。
【0031】
一つの態様において、Rがマラリア相互作用部分であるとき、マラリア相互作用部分は、ヒドロキシル、ハロゲン、チオール、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アリールアルキル、アミノ(例えば、置換されていないアミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アルコキシカルボニルアルキルアミノ等)、アリールアルケニル、アリールアルキニル、又は−(CHO−3NR9CC(=Z’)ZR9a(但し、式中Zは、CR9d9e、NR9b、又はOであり、Z’は、O又はSであり、ならびにR9a、R9b、R9c、R9d、及びR9eは、それぞれ個別に、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アルキルアミノ、アリールアルキル、アリール、複素環、複素環式芳香族、又はプロドラッグ成分である)でもよい。一つの態様において、Zは、窒素であり、Z’は、酸素であり、R9aは、任意のアリールである。別の態様において、Z及びZ’は、Oであり、R9aは、例えば、アルキルである。Rのさらに別の例には、−NR9CC(=Z’)ZR9a(但し式中、Zは、CR9d9e、NR9b、又はOであり、Z’は、O又はSであり、R9a、R9b、R9c、R9d、及びR9eは、それぞれ個別に、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アルキルアミノ、アリールアルキル、アリール、複素環、複素環式芳香族、又はプロドラッグ成分である)が含まれる。別の態様において、マラリア相互作用部分は、置換されたアミノアルキル、例えば、アルキルアミノアルキル、ジアルキルアミノアルキル、アラルキルアミノアルキル、アルケニルアミノアルキル、アルキニルアミノアルキル、アリールアミノアルキル等で置換されている。
【0032】
マラリア相互作用部分の例には、フェニルのようなアリール基、及びヘテロアリール基(例えば、フラニル、イミダゾリル、ベンゾチオフェニル、ベンゾフラニル、キノリニル、イソキノリニル、ピリジニル、ピラゾリル、ベンゾジオキサゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾイミダゾリル、メチレンジオキシフェニル、インドリル、チェニル、ピリミジル、ピラジニル、プリニル、ピラゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、ナフチリジニル(naphthridinyl)、チアゾリル、イソチアゾリル、及びデアザプリニル(deazapurinyl))が含まれる。アリール基は、置換されていても、置換されていなくてもよい。置換基の例には、アミノ、ニトロ、シアノ、ハロゲン(例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等)、ヒドロキシ、チオール、ホルミル、アセチル、アシル、アルコキシ(例えば、メチレンジオキシ、メトキシ、エトキシ、プロポキシ等)、及び複素環(例えば、モルホリノ、ピペラジン等)が含まれるが、これらに限定されない。
【0033】
マラリア相互作用部分の他の例には、置換された、及び置換されていないアルキニル基が含まれる。置換されたアルキニルの例には、アリールアルキニル(例えば、メトキシ置換型アリールアルキニル、シクロアルケニル置換型アルキニル、アミノ置換型アルキニル等)が含まれる。マラリア相互作用基の他の例には、例えば、アリールアルケニル基のような置換された、及び置換されていないアルケニル基が含まれる。さらに、R基は、置換された、又は置換されていないアルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、t−ブチルのような低級アルキル基)であってもよい。Rはまた、複素環(例えば、チアゾール、アミノチアゾール等)、又は置換されたアミノアルキル、アミノアルケニルであってもよい。
【0034】
マラリア相互作用部分は、意図された機能、例えば、マラリアの治療又は予防を行わせる、1つ又は複数の置換基で置換されていてもよい。置換基の例には、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロゲン、ヒドロキシル、アルコキシ、アルキルカルボニルオキシ、アルキルオキシカルボニル、カルボキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルアミノ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシレート、アルキルカルボニル、アルキルアミノカルボニル(alkylaminoacarbonyl)、アリールアルキルアミノカルボニル、アルケニルアミノカルボニル、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アミノアルキル、アリールアルキルカルボニル、アルケニルカルボニル、アルコキシカルボニル、シリル、アミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、ホスフェート、アラルキル、ホスホナート、ホスフィナート、シアノ、アミノ、アシルアミノ、アミド、イミド、スルフヒドリル、アルキルチオ、スルフェート、アリールチオ、チオカルボキシレート、アルキルスルフィニル、スルホナート、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキルアリール、アリール、及びヘテロアリールが含まれるが、これらに限定されない。いくつかの態様において、フェニルは、少なくとも1つのアルキル、アミノ、複素環、アルコキシ、ハロゲン、ニトロ、アルコキシカルボニル、ジアルキルアミノ、又はアルキルアミノで置換されている。
【0035】
本発明の方法はまた、例えば、R、R及びR6’が水素であるサンサイクリン誘導体である、置換されたテトラサイクリン化合物を使用することを含む。サンサイクリン誘導体の例には、Rがマラリア相互作用部分であるテトラサイクリン化合物が含まれる。本発明の置換されたサンサイクリン化合物として用いることができるマラリア相互作用部分の例には、上記したものが含まれる。さらに、マラリア相互作用部分の他の例には、置換された、又は置換されていない、フェニル部分又はヘテロアリール部分のようなアリール基が含まれるが、これに限定されない。置換基の例には、ハロゲン(例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)、アルコキシ(例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、メチレンジオキシ等)、アミノ、及びアルキル(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、t−ブチル等)が含まれる。他の態様において、本発明の置換されたサンサイクリン化合物には、Rがアルキル(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル等)、アルキニル(例えば、アリール置換型、例えば、アミノ置換型アリールアルキニル等)、ハロゲン(例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)、置換された、又は置換されていないメチルアミドが含まれる。他の置換されたサンサイクリン化合物には、Rが水素又はマラリア相互作用部分である化合物が含まれる。
【0036】
本発明の方法はまた、置換されたテトラサイクリン化合物として、置換されたドキシサイクリンを使用する方法を含む。置換されたドキシサイクリンの例には、Rがヒドロキシ又はアルキルエステル類等のエステル基(すなわち、アルキルカルボニルオキシ基、シクロヘキサンエステル、シクロヘプタンエステル、ペンチルエステル、及びエチルエステル)である化合物が含まれる。
【0037】
本発明の置換されたテトラサイクリン化合物の例には、表1に示す化合物が含まれる。本発明の置換されたテトラサイクリン化合物のいくつかを以下に示す。
【0038】
【化22】

【化23】

【化24】

【化25】

【化26】

【0039】
本発明の方法に用いることができる、他の置換されたテトラサイクリン化合物には、米国特許出願第60/346,930号、第60/346,929号、第60/347,065号、第60/346,956号、第60/367,048号、第60/366,915号、第60/367,045号、第09/823,884号、第09/852,908号、第09/882,505号、第09/882,273号、第09/894,805号、第09/883,137号、第09/895,797号、第09/895,857号、第09/895,812号、第10/097,095号、及び第10/097,135号に記載の化合物が含まれるが、これらに限定されない。上記各出願を引用によって本明細書中に完全に援用する。
【0040】
さらなる態様において、置換されたテトラサイクリン化合物は、マラリアの治療に適した経口生物学的利用能を有している。例えば、置換されたテトラサイクリン化合物は、被験者に経口投与された後、例えば、マラリアの治療といった、その意図された機能を行うことができる。特別の化合物の生物学的利用能を計算するのに用いられる方法の例には、当該技術において公知の方法、及び米国特許出願第60/318,580号に記載された方法が含まれる。これを引用によって本明細書中に完全に援用する。
【0041】
一つの態様において、置換されたテトラサイクリン化合物は、米国特許第6,043,231号に記載のアッセイによって測定される余剰のホスホリパーゼA活性又は産生を阻害する化合物を含まない。別の態様において、本発明の置換されたテトラサイクリン化合物は、米国特許第5,919,395号に記載のアッセイによって測定される、誘導性酸化窒素シンターゼ発現を阻害する化合物を含まない。別の態様において、本発明の置換されたテトラサイクリン化合物は、米国特許第5,789,395号に記載の方法によって測定される哺乳動物系において内因的に生成される酸化窒素の量を減少させる化合物を含まない。これら3つの特許のそれぞれを引用によって本明細書中に完全に援用する。
【0042】
「被験者」という用語は、マラリアに感受性のある動物、例えば、爬虫類、鳥類、及び哺乳動物(例えば、イヌ、ウシ、ブタ、ネコ、ウマ、クマ、ヒツジ、マウス、ラット、ウサギ、リス、及び最も有利には、ヒト)を含む。
【0043】
さらなる態様において、本発明の組成物及び方法を用いる治療の対象となるマラリアは、1つもしくは複数の抗マラリア化合物、例えば、プログアニル、クロルプログアニル、トリメトプリム、クロロキン、メフロキン、ルメファントリン、アトバクオン、ピリメタミン−スルファドキシン、ピリメタミン−ダプソン、ハロファントリン、キニーネ、キニジン、アモジアキン、アモプロキン(amopyroquine)、スルホンアミド、アルテミシニン、アルテフレン(arteflene)、アルテムエーテル、アルテスネート、プリマキン、及びピロナリジン(pyronaridine)に耐性がある。
【0044】
本発明の方法はまた、本発明の化合物を補足化合物と組み合わせて投与することを含む。「補足化合物」には、抗マラリア化合物及びマラリアの症状を治療する化合物が含まれる。補足化合物は、マラリアを直接治療することもあるし、頭痛、倦怠感、貧血、脾腫、及び/又は発熱を治療することもある。
【0045】
補足化合物と「組み合わせて」という表現は、置換されたテトラサイクリン化合物と補足化合物とを同時に投与すること、置換されたテトラサイクリン化合物を最初に投与し、次に補足化合物を投与すること、ならびに補足化合物を最初に投与し、次に置換されたテトラサイクリン化合物を投与することを含むことを意図している。
【0046】
例えば、「補足化合物」には、プログアニル、クロルプログアニル、トリメトプリム、クロロキン、メフロキン、ルメファントリン、アトバクオン、ピリメタミン−スルファドキシン、ピリメタミン−ダプソン、ハロファントリン、キニーネ、キニジン、アモジアキン、アモプロキン(amopyroquine)、スルホンアミド、アルテミシニン、アルテフレン(arteflene)、アルテメチル(artemether)、アルテスネート、プリマキン、ピロナリジン(pyronaridine)、及びG25(1,16−ヘキサデカメチレンビス(N−メチルピロリジニウム)ジブロミド)のようなホスファチジルコリン合成阻害剤を含むことができる。例えば、将来において開発されるかもしれないもの、及び現在研究中のもの等、ここに記載されていない他の抗マラリア化合物を投与することもできる。
【0047】
本発明はまた、1つ又は複数の置換されたテトラサイクリン化合物が、マラリアを治療するための化合物の有効量を用いるための使用指示書とともに包装されている、包装されたマラリア治療薬を特徴とする。一つの態様において、置換されたテトラサイクリン化合物は、オキシテトラサイクリン、デメクロサイクリン、ドキシサイクリン、クロロテトラサイクリン、ミノサイクリン、又はテトラサイクリンではない。
【0048】
本発明の置換されたテトラサイクリン化合物は、実施例1及び2ならびに下記のスキームに記載の方法を用いて合成することができる。ここに記載されている全ての新規な置換されたテトラサイクリン化合物を、本発明の化合物に含有する。方法は、7−置換型テトラサイクリン化合物の合成のための方法として一般的に示されているが、類似の処置を用いて、対応する9位置が置換されたテトラサイクリン化合物を生成することができることを当該技術分野の当業者であれば理解するであろう。さらに、スキームには、一般的に1つの特別の置換されたテトラサイクリン化合物(例えば、サンサイクリン)が示されているが、スキーム及び方法は、一般的に他の置換されたテトラサイクリン化合物(例えば、テトラサイクリン、ミノサイクリン、ドキシサイクリン等)にも適用可能である。
【0049】
【化27】

【0050】
9−置換型及び7−置換型テトラサイクリンは、スキーム1に示す方法で合成することができる。スキーム1に示されているように、9−置換型及び7−置換型テトラサイクリン化合物は、テトラサイクリン化合物(例えば、ドキシサイクリン、1A)を硫酸及び硝酸ナトリウムで処理することにより合成することができる。得られた生成物は、7−ニトロ異性体及び9−ニトロ異性体(それぞれ1B及び1C)の混合物である。7−ニトロ(1B)誘導体及び9−ニトロ(1C)誘導体を水素ガスと白金触媒を用いて水素化処理してアミン1D及び1Eを得る。この時点で、異性体を従来の方法を用いて単離する。7−置換型又は9−置換型アルケニル誘導体を合成するには、7−アミノテトラサイクリン化合物又は9−アミノテトラサイクリン化合物(それぞれ1E及び1F)をHONOで処理してジアゾニウム塩(1G及び1H)を得る。塩(1G及び1H)を適切なハロゲン化試薬(例えば、RBr(式中、Rは、アリール部分、アルケニル部分、又はアルキニル部分))で処理して所望の化合物(例えば、スキーム1における7−シクロペンタ−1−エニルドキシサイクリン(1H)及び9−シクロペンタ−1−エニルドキシサイクリン(1I))を得る。
【0051】
【化28】

【0052】
スキーム2に示されているように、Rがカルバメート又は尿素誘導体である、本発明の置換されたテトラサイクリン化合物は、下記のプロトコルを用いて合成することができる。サンサイクリン(2A)を酸性条件下でNaNOを用いて処理し、7−ニトロサンサイクリン(2B)を位置異性体の混合物中に生成する。次に、7−ニトロサンサイクリン(2B)を水素ガスと白金触媒を用いて処理し、7−アミノサンサイクリン誘導体(2C)を生成する。尿素誘導体(2E)を生成するために、イソシアネート(2D)を7−アミノサンサイクリン誘導体(2C)と反応させる。カルバメート(2G)を生成するために、適切な酸クロリドエステル(2F)と2Cを反応させる。
【0053】
【化29】

【0054】
スキーム3に示されているように、Rが複素環(すなわち、チアゾール)置換型アミノ基である、本発明の置換されたテトラサイクリン化合物は、上記プロトコルで合成することができる。7−アミノサンサイクリン(3A)をFmoc−イソチオシアネ−ト(3B)と反応させ、保護されたチオ尿素(3C)を得る。次に、保護されたチオ尿素(3C)を脱保護し、活性サンサイクリンチオ尿素(3D)化合物を産生する。サンサイクリンチオ尿素(3D)をα−ハロケトン(3E)と反応させ、チアゾール置換型7−アミノサンサイクリン(3F)を得る。
【0055】
【化30】

【0056】
7−アルキニルサンサイクリン(4A)や7−アルケニルサンサイクリン(4B)のような7−アルケニル置換型テトラサイクリン化合物は、水素化してアルキル7−置換型テトラサイクリン化合物(例えば、7−アルキルサンサイクリン、4C)を生成することができる。スキーム4は、パラジウム/炭素触媒を用いたメタノールと塩酸飽和溶液中における、加圧状態での、7位置の二重結合もしくは三重結合の選択的水素化による生成物の産生を示している。
【0057】
【化31】

【0058】
スキーム5は、7位置アリール誘導体を合成するための一般的な合成スキームを示す。アリールボロン酸とヨードサンサイクリン化合物とのSuzukiカップリング反応が示されている。ヨードサンサイクリン化合物(5B)は、サンサイクリン(5A)を少なくとも1つの等価N−ヨードスクシニミド(NIS)を用いて酸性条件下で処理することによって合成することができる。この反応をクエンチングし、その後、得られた7−ヨードサンサイクリン(5B)を、当該技術において公知の標準的な技法を用いて精製することができる。アリール誘導体を生成するために、7−ヨードサンサイクリン(5B)を塩基水溶液(例えば、NaCO)と適切なボロン酸(5C)とを用いて、不活性雰囲気で処理する。その反応をパラジウム触媒(例えば、Pd(OAc))によって触媒する。生成物(5D)は、当該技術において公知の方法(高速液体クロマトグラフィー等)で精製することができる。他の7−アリール及びアルキニル置換型テトラサイクリン化合物は、類似のプロトコルを用いて合成することができる。
【0059】
本発明の7−置換型テトラサイクリン化合物は、Stilleクロスカップリング反応によって合成することもできる。Stilleクロスカップリング反応は、適切なスズ試薬(例えば、R−SnBu)とハロゲン化テトラサイクリン化合物(例えば、7−ヨードサンサイクリン)とを用いて行うことができる。スズ試薬及びヨードサンサイクリン化合物は、パラジウム触媒(例えば、Pd(PPhCl又はPd(AsPhCl)及び、任意に、追加の銅塩、例えばCuIを用いて処理することができる。次に、得られた化合物は、当該技術において公知の技法によって精製することができる。
【0060】
【化32】

【0061】
本発明の化合物は、Heck型クロスカップリング反応を用いて合成することもできる。スキーム6に示されているように、Heck型クロスカップリング反応は、ハロゲン化テトラサイクリン化合物(例えば、6−ヨードサンサイクリン、6A)及び適切なパラジウムもしくは他の遷金属触媒(例えば、Pd(OAc)及びCuI)を適切な溶媒(例えば、脱ガスしたアセトニトリル)に懸濁させることによって行うことができる。次に、基剤、反応性アルケン(6B)又はアルキン(6D)、及びトリエチルアミンを加え、その合成物を数時間加熱し、その後室温に冷却する。次に、得られた7−置換型アルケニル(6C)又は7−置換型アルキニル(6E)テトラサイクリン化合物を当該技術において公知の技法により精製することができる。
【0062】
【化33】

【0063】
7−(2’−クロロ−アルケニル)−テトラサイクリン化合物を調製するために、適切な7(アルキニル)−サンサイクリン(7A)を飽和メタノール及び塩酸中に溶解し、攪拌する。次に溶媒を除去し、生成物(7B)を得る。
【0064】
【化34】

【0065】
スキーム8に記載のように、9−置換型テトラサイクリン化合物の5−エステルは、9−置換型化合物(8A)を強い酸(例えば、HF、メタンスルホン酸、及びトリフルオロメタンスルホン酸)中に溶解し、適切なカルボン酸を添加し、対応するエステル(8B)を生成させることによって形成することができる。
【0066】
【化35】

【0067】
13−置換型チオールは、スキーム9に概説した方法で合成することができる。一般的に、13−置換型チオールエステル(9B)は、テトラサイクリン塩(9A)(例えば、メタサイクリン塩酸塩)、AlBN(2,2’−アゾビスイソブチロニトリル)、及びチオールを、エタノール中において不活性雰囲気で6時間還流させることによって合成することができる。
【0068】
下記スキーム10に示すように、7及び9アミノメチルテトラサイクリンは、ヒドロキシメチルカルバミン酸ベンジルエステル等の試薬を用いて合成してもよい。
【0069】
【化36】

【0070】
「アルキル」という用語は、直鎖状アルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル等)、分枝状アルキル基(イソプロピル、第三ブチル、イソブチル等)、シクロアルキル(脂環)基(シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル)、アルキル置換型シクロアルキル基、及びシクロアルキル置換型アルキル基を含む飽和脂肪族基を含む。アルキルという用語には、炭化水素基本骨格の1つ又は複数の炭素に置き換わった酸素原子、窒素原子、硫黄原子、又はリン原子をさらに含むことができるアルキル基がさらに含まれる。好ましい態様において、直鎖状アルキル又は分枝鎖状アルキルは、10個以下の炭素原子、かつより好ましくは6個以下の炭素原子を基本骨格(例えば、直鎖の場合C〜C10、分枝鎖の場合C〜C10)に有する。同様に、好ましいシクロアルキルは、その環構造に4個〜7個の炭素原子を有し、かつより好ましくは環構造に5個又は6個の炭素原子を有する。
【0071】
また、アルキルという用語は、「置換されていないアルキル」及び「置換されたアルキル」の両方を含み、後者は、炭化水素基本骨格の1つ又は複数の炭素上の水素を置き換える置換基を有するアルキル部分を言う。このような置換基は、例えば、アルケニル、アルキニル、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシレート、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシル、ホスフェート、ホスホナート、ホスフィナート、シアノ、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、及びアルキルアリールアミノを含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイル、及びウレイドを含む)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシレート、スルフェート、アルキルスルフィニル、スルホナート、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキルアリール、又は芳香族部分もしくはヘテロ芳香族部分を含むことができる。シクロアルキルはさらに、例えば、上述の置換基で置換されることができる。「アルキルアリール」部分又は「アラルキル」部分は、アリール(例えばフェニルメチル(ベンジル))で置換されたアルキルである。「アルキル」という語はまた、天然及び非天然のアミノ酸の側鎖を含む。ハロゲン化されたアルキル基の例には、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、クロロメチル、ジクロロメチル、トリクロロメチル、ペルフルオロメチル、ペルクロロメチル、ペルフルオロエチル、ペルクロロエチル等が含まれる。
【0072】
「アリール」という用語は、0個〜4個のヘテロ原子を含み得る五員環及び六員環の単環芳香族基、例えば、ベンゼン、フェニル、ピロール、フラン、チオフェン、チアゾール、イソチアゾール、イミダゾール、トリアゾール、テトラゾール、ピラゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、及びピリミジン等を含む基を含む。さらに、「アリール」という用語は、例えば、ナフタレン、ベンゾオキサゾール、ベンゾジオキサゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾチオフェン、メチレンジオキシフェニル、キノリン、イソキノリン、ナフチリジン(napthridine)、インドール、ベンゾフラン、プリン、ベンゾフラン、デアザプリン、又はインドリジン等の、例えば、三環式、二環式の、多環アリール基を含む。環構造にヘテロ原子を有するこのようなアリール基は、「アリールヘテロ環」、「ヘテロ環」、「ヘテロアリール」、又は「ヘテロ芳香族」と呼ばれることもある。芳香環は、1箇所又は複数箇所の環の位置において、例えば、ハロゲン、ヒドロキシル、アルコキシ、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシレート、アルキルカルボニル、アルキルアミノカルボニル、アラルキルアミノカルボニル、アルケニルアミノカルボニル、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アラルキルカルボニル、アルケニルカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、ホスフェート、ホスホナート、ホスフィナート、シアノ、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、及びアルキルアリールアミノを含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイル、及びウレイドを含む)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシレート、スルフェート、アルキルスルフィニル、スルホナート、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキルアリール、又は芳香族部分もしくはヘテロ芳香族部分のような上述した置換基で置換され得る。アリール基は、多環(例えば、テトラリン、メチレンジオキシフェニル)を形成するために、芳香族でない脂環又はヘテロ環と、融合又は架橋されることもできる。
【0073】
「アルケニル」という用語は、長さが類似しており、上記アルキルに置換があってもよいが、少なくとも1つの二重結合を含む不飽和脂肪族基を含む。
【0074】
例えば、「アルケニル」という用語は、直鎖アルケニル基(例えば、エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、ノネニル、デセニル等)、分枝鎖アルケニル基、シクロアルケニル(脂環)基(シクロプロペニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロヘプテニル、シクロオクテニル)、アルキル又はアルケニル置換型シクロアルケニル基、及びシクロアルキル又はシクロアルケニル置換型アルケニル基を含む。アルケニルという用語には、炭化水素基本骨格の1つ又は複数の炭素に置き換わった酸素原子、窒素原子、硫黄原子、又はリン原子を含むアルケニル基がさらに含まれる。いくつかの好ましい態様において、直鎖状アルケニル基又は分枝鎖状アルケニルは、6個以下の炭素原子をその基本骨格に有する(例えば、直鎖の場合C〜C、分枝鎖の場合C〜C)。同様に、好ましいシクロアルケニル基は、その環構造に3個〜8個の炭素原子を有し、かつより好ましくは環構造に5個又は6個の炭素原子を有する。C〜Cという表現は、2個〜6個の炭素原子を含むアルケニル基である。
【0075】
また、アルケニルという用語は、「置換されていないアルケニル」及び「置換されたアルケニル」の両方を含み、後者は、炭化水素基本骨格の1つ又は複数の炭素上の水素を置き換える置換基を有するアルケニル部分を言う。このような置換基は、例えば、アルキル基、アルキニル基、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシレート、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシル、ホスフェート、ホスホナート、ホスフィナート、シアノ、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、及びアルキルアリールアミノを含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイル、及びウレイドを含む)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシレート、スルフェート、アルキルスルフィニル、スルホナート、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキルアリール、又は芳香族部分もしくはヘテロ芳香族部分を含むことができる。
【0076】
「アルキニル」という用語は、長さが類似しており、上記アルキルに置換があってもよいが、少なくとも1つの三重結合を含む不飽和脂肪族基を含む。
【0077】
例えば、「アルキニル」という用語は、直鎖アルキニル基(例えば、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル、ヘプチニル、オクチニル、ノニニル(nonynyl)、デシニル(decynyl)等)、分枝鎖アルキニル基、及びシクロアルキル又はシクロアルケニル置換型アルキニル基を含む。アルキニルという用語には、炭化水素基本骨格の1つ又は複数の炭素に置き換わった酸素原子、窒素原子、硫黄原子、又はリン原子を含むアルキニル基がさらに含まれる。いくつかの態様において、直鎖状アルキニル基又は分枝鎖状アルキニル基は、6個以下の炭素原子をその基本骨格に有している(例えば、直鎖の場合C〜C、分枝鎖の場合C〜C)。C〜Cという表現は、2個〜6個の炭素原子を含むアルキニル基である。
【0078】
また、アルキニルという用語は、「置換されていないアルキニル」及び「置換されたアルキニル」の両方を含み、後者は、炭化水素基本骨格の1つ又は複数の炭素上の水素を置き換える置換基を有するアルキニル部分を言う。このような置換基は、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシレート、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシル、ホスフェート、ホスホナート、ホスフィナート、シアノ、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、及びアルキルアリールアミノを含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイル、及びウレイドを含む)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシレート、スルフェート、アルキルスルフィニル、スルホナート、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アリールアルキル、又は芳香族部分もしくはヘテロ芳香族部分を含むことができる。
【0079】
炭素数を特に明記しない限り、ここで用いる「低級アルキル」とは、基本骨格構造に1個〜5個の炭素原子を有する、上記で定義したアルキル基を意味する。「低級アルケニル」及び「低級アルキニル」は、例えば、炭素原子2個〜5個の鎖長を有する。
【0080】
「アシル」という用語は、アシルラジカル(CHCO−)又はカルボニル基を含有する化合物及び部分を含む。「置換型アシル」という用語には、1つ又は複数の水素原子が、例えば、アルキル基、アルキニル基、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシレート、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシル、ホスフェート、ホスホナート、ホスフィナート、シアノ、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、及びアルキルアリールアミノを含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイル、及びウレイドを含む)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシレート、スルフェート、アルキルスルフィニル、スルホナート、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキルアリール、又は芳香族部分もしくはヘテロ芳香族部分で置換されているアシル基が含まれる。
【0081】
「アシルアミノ」という用語は、アシル部分がアミノ基に結合している部分を含む。例えば、この用語には、アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイル、及びウレイドが含まれる。
【0082】
「アロイル」という用語は、カルボニル基に結合したアリールもしくはヘテロ芳香族部分を有する化合物又は部分を含む。アロイル基の例には、フェニルカルボキシ、ナフチルカルボキシ等が含まれる。
【0083】
「アルコキシアルキル」、「アルキルアミノアルキル」、及び「チオアルコキシアルキル」という用語は、炭化水素基本骨格(例えば、酸素原子、窒素原子、または硫黄原子)の1つ又は複数の炭素に置き換わった酸素原子、窒素原子、または硫黄原子をさらに含む、上述のアルキル基を含む。
【0084】
「アルコキシ」という用語は、酸素原子と共有結合した、置換された及び置換されていないアルキル基、アルケニル基、及びアルキニル基を含む。アルコキシ基の例には、メトキシ基、エトキシ基、イソプロピルオキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、及びペントキシ基を含み、また、シクロペントキシ基のような環状基を含んでもよい。置換されたアルコキシ基の例には、ハロゲン化アルコキシ基が含まれる。アルコキシ基は、例えば、アルケニル、アルキニル、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシレート、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシル、ホスフェート、ホスホナート、ホスフィナート、シアノ、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、及びアルキルアリールアミノを含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイル、及びウレイドを含む)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシレート、スルフェート、アルキルスルフィニル、スルホナート、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキルアリール、又は芳香族部分もしくはヘテロ芳香族部分のような基で置換されることができる。ハロゲン置換型アルコキシの例には、フルオロメトキシ、ジフルオロメトキシ、トリフルオロメトキシ、クロロメトキシ、ジクロロメトキシ、トリクロロメトキシ等が含まれるが、これらに限定されない。
【0085】
「アミン」又は「アミノ」という用語は、窒素原子が少なくとも1つの炭素又はヘテロ原子と共有結合した化合物を含む。「アルキルアミノ」という用語は、窒素が少なくとも1つのさらなるアルキル基と結合した基を含む。「ジアルキルアミノ」という用語は、窒素原子が少なくとも2つのさらに別のアルキル基と結合した基を含む。「アリールアミノ」及び「ジアリールアミノ」という用語は、窒素が少なくとも1つ又は2つのアリール基とそれぞれ結合した基を含む。「アルキルアリールアミノ」、「アルキルアミノアリール」、又は「アリールアミノアルキル」は、少なくとも1つのアルキル基及び少なくとも1つのアリール基と結合したアミノ基を言う。「アルクアミノアルキル(alkaminoalkyl)」という用語は、同様にアルキル基とも結合した窒素原子と結合したアルキル、アルケニル、又はアルキニル基を言う。
【0086】
「アミド」又は「アミノカルボキシ」という用語は、カルボニル基又はチオカルボニル基の炭素と結合した窒素原子を含有する化合物又は部分を含む。この用語は、カルボキシ基と結合したアミノ基と結合したアルキル基、アルケニル基、又はアルキニル基を含む「アルクアミノカルボキシ(alkaminocarboxy)」を含む。それは、カルボニル基又はチオカルボニル基の炭素と結合したアミノ基と結合したアリール部分もしくはヘテロアリール部分を含むアリールアミノカルボキシ基を含む。「アルキルアミノカルボキシ」、「アルケニルアミノカルボキシ」、「アルキニルアミノカルボキシ」、及び「アリールアミノカルボキシ」という用語は、アルキル、アルケニル、アルキニル、及びアリール部分がそれぞれ、カルボニル基の炭素とさらに結合した窒素原子と結合した部分を含む。
【0087】
「カルボニル」又は「カルボキシ」という用語は、酸素原子及びその互変異性型と二重結合によって結合した炭素を含有する化合物及び部分を含む。カルボニルを含有する部分の例には、アルデヒド、ケトン、カルボン酸、アミド、エステル、無水物等が含まれる。「カルボキシ部分」又は「カルボニル部分」という用語は、アルキル基がカルボニル基と共有結合した「アルキルカルボニル」基、アルケニル基がカルボニル基と共有結合した「アルケニルカルボニル」基、アルキニル基がカルボニル基と共有結合した「アルキニルカルボニル」基、アリール基がカルボニル基と共有結合した「アリールカルボニル」基のような基を言う。さらに、この用語は、1つ又は複数のヘテロ原子がカルボニル部分と共有結合した基も意味する。例えば、この用語には、アミノカルボニル部分(窒素原子がカルボニル基の炭素と結合している。例えば、アミド)、酸素原子及び窒素原子の両方がカルボニル基の炭素と結合しているアミノカルボニル部分(例えば、「カルバメート」とも称する)が含まれる。さらに、ヘテロ原子(例えば、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、及び炭素原子)と結合したカルボニル基の他の組み合わせと同様、アミノカルボニルアミノ基(例えば、尿素)も含まれる。さらに、ヘテロ原子は、さらに1つ又は複数のアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキル、アシル等の部分で置換されることができる。
【0088】
「尿素」という用語は、2つの窒素と結合したカルボニル基を含有する化合物を含む。例えば、NH(C=O)NHArは、芳香族尿素基である。
【0089】
「チオカルボニル」又は「チオカルボキシ」という用語は、硫黄原子と二重結合で結合した炭素を含有する化合物及び部分を含む。「チオカルボニル」部分という用語は、カルボニル部分と類似の部分である。例えば、「チオカルボニル」部分には、アミノ基がチオカルボニル基の炭素原子と結合したアミノチオカルボニルが含まれる。さらに、他のチオカルボニル部分には、オキシチオカルボニル(酸素が炭素原子に結合したもの)、アミノチオカルボニルアミノ基等が含まれる。
【0090】
「エーテル」という用語は、2つの異なる炭素原子又はヘテロ原子と結合した酸素を含有する化合物又は部分を含む。例えば、この用語は、「アルコキシアルキル」を含み、それは、他のアルキル基と共有結合した酸素原子と共有結合したアルキル基、アルケニル基、又はアルキニル基を言う。
【0091】
「エステル」という用語は、カルボニル基の炭素と結合した酸素原子と結合した炭素原子又はヘテロ原子を含有する化合物及び部分を含む。「エステル」という用語は、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、ペントキシカルボニル等のアルコキシカルボキシ基を含む。アルキル基、アルケニル基、又はアルキニル基は、上記で定義したとおりである。
【0092】
「チオエーテル」という用語は、2つの異なる炭素原子又はヘテロ原子と結合した硫黄原子を含有する化合物及び部分を含む。チオエーテルの例には、アルクチオアルキル(alkthioalkyls)、アルクチオアルケニル(alkthioalkenyls)、及びアルクチオアルキニル(alkthioalkynyls)が含まれるが、これらに限定されない。「アルクチオアルキル(alkthioalkyls)」という用語は、アルキル基と結合した硫黄原子と結合したアルキル基、アルケニル基、又はアルキニル基を持つ化合物を含む。同様に、「アルクチオアルケニル(alkthioalkenyls)」及び「アルクチオアルキニル(alkthioalkynyls)」という用語は、アルキニル基と共有結合した硫黄原子と結合したアルキル基、アルケニル基、又はアルキニル基を持つ化合物又は部分を言う。
【0093】
「ヒドロキシ」又は「ヒドロキシル」という用語は、−OH又は−O−を持つ基を含む。
【0094】
「ハロゲン」という用語は、フッ素、臭素、塩素、ヨウ素等を含む。「ペルハロゲン化」という用語は、一般的に、全ての水素がハロゲン原子で置換された部分を言う。
【0095】
「多環」又は「多環式」という用語は、2つ以上の炭素が2つの隣接する環に共有されている、例えば、環が「融合環」である、2つ以上の環を持つ部分(例えば、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、及び/又はヘテロ環)を含む。隣接していない原子を介して結合している環は、「架橋された」環と呼ばれる。多環の環のそれぞれは、上記置換基、例えば、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシレート、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アルキルアミノカルボニル(alkylaminoacarbonyl)、アラルキルアミノカルボニル、アルケニルアミノカルボニル、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アラルキルカルボニル、アルケニルカルボニル、アミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシル、ホスフェート、ホスホナート、ホスフィナート、シアノ、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、及びアルキルアリールアミノを含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイル、及びウレイドを含む)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシレート、スルフェート、アルキルスルフィニル、スルホナート、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキル、アルキルアリール、又は芳香族部分もしくはヘテロ芳香族部分で置換され得る。
【0096】
「ヘテロ原子」という用語は、炭素又は水素以外のあらゆる元素の原子を含む。好ましいヘテロ原子は、窒素、酸素、硫黄及びリンである。
【0097】
「複素環」又は「複素環式」という用語は、飽和、不飽和芳香族(「ヘテロアリール」又は「ヘテロ芳香族」)及び、1つ又は複数のヘテロ原子を含有する多環を含む。ヘテロ環の例には、例えば、ベンゾジオキサゾール、ベンゾフラン、ベンゾイミダゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾチオフェン、ベンゾジオキサゾール、デアザプリン、フラン、インドール、インドリジン、イミダゾール、イソオキサゾール、イソキノリン、イソチアゾール、メチレンジオキシフェニル、ナフチリジン(napthridine)、オキサゾール、プリン、ピラジン、ピラゾール、ピリダジン、ピリジン、ピリミジン、ピロール、キノリン、テトラゾール、チアゾール、チオフェン及びトリアゾールが含まれる。他の複素環には、モルホリン、ピプラジン、ピペリジン、チオモルホリン、及びチオアゾルジン(thioazolidine)が含まれる。複素環は、置換されていてもよいし、置換されていなくてもよい。置換基の例には、例えば、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシレート、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アルキルアミノカルボニル、アラルキルアミノカルボニル、アルケニルアミノカルボニル、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アラルキルカルボニル、アルケニルカルボニル、アミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシル、ホスフェート、ホスホナート、ホスフィナート、シアノ、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、及びアルキルアリールアミノを含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイル、及びウレイドを含む)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシレート、スルフェート、アルキルスルフィニル、スルホナート、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキル、アルキルアリール、又は芳香族部分もしくはヘテロ芳香族部分が含まれる。
【0098】
尚、本発明のいくつかの化合物の構造は、非対称の炭素原子を含む。したがって、他に特に記載のない限り、そのような非対称から生じる異性体(例えば、全ての鏡像異性体及びジアステレオマー)が本発明の範囲に含まれることが理解できる。そのような異性体は、典型的な分離技法及び立体化学的に制御された合成によって、ほぼ純粋な形状で得ることができる。さらに、本願に記載されている構造ならびに他の化合物及び部分は、全てその互変体を含む。「プロドラッグ部分」という用語は、インビボでヒドロキシル基に代謝される得る部分、及びインビボで有利にエステル化し得る部分を含む。プロドラッグ部分は、エステラーゼによって、又は他の機序によって、ヒドロキシル基もしくは他の有利な基に代謝されることが好ましい。プロドラッグ及びそれらの使用の例は、当該技術において公知である(例えば、Bergeら、(1977年)″Pharmaceutical Salts″,J.Pharm.Sci.66:1−19を参照されたい)。プロドラッグは、化合物の最終的な単離及び精製の間に、又は、遊離酸の形状の精製された化合物もしくはヒドロキシルを好適なエステル化剤と別個に反応させることによって、インサイチュで調製することができる。ヒドロキシル基は、カルボン酸で処理することによってエステルに変換することができる。プロドラッグ部分の例には、置換された及び置換されていない、分枝鎖状又は未分枝鎖状の、低級アルキルエステル部分(例えば、プロピオン酸エステル)、低級アルケニルエステル、ジ低級アルキルアミノ低級アルキルエステル(例えば、ジメチルアミノエチルエステル)、アシルアミノ低級アルキルエステル(例えば、アセチルオキシメチルエステル)、アシルオキシ低級アルキルエステル(例えば、ピバロイルオキシメチルエステル)、アリールエステル(フェニルエステル)、アリール低級アルキルエステル(例えば、ベンジルエステル)、(例えば、メチル、ハロ、又はメトキシ置換基により)置換されたアリール及びアリール低級アルキルエステル、アミド、低級アリールアミド、ジ低級アルキルアミド、ならびにヒドロキシアミドが含まれる。好ましいプロドラッグ部分は、プロピオン酸エステル及びアシルエステルである。
【0099】
別の局面において、本発明はさらに、被験者においてマラリアを治療するための有効量の置換されたテトラサイクリン化合物及び薬学的に許容される担体を含む薬学的組成物に関する。
【0100】
本発明はまた、被験者においてマラリアを治療又は予防するための薬物を調製する際に、式Iで表される化合物の使用することにも関する。
【0101】
薬学的組成物は、補足化合物を含むことができる。「補足化合物」は、抗マラリア化合物及びマラリアの症状を治療する化合物を含む。補足化合物は、マラリアを直接治療することもあるし、頭痛、倦怠感、貧血、脾腫、及び/又は発熱を治療することもある。抗マラリア補足化合物の例には、プログアニル、クロルプログアニル、トリメトプリム、クロロキン、メフロキン、ルメファントリン、アトバクオン、ピリメタミン−スルファドキシン、ピリメタミン−ダプソン、ハロファントリン、キニーネ、キニジン、アモジアキン、アモプロキン(amopyroquine)、スルホンアミド、アルテミシニン、アルテフレン(arteflene)、アルテムエーテル、アルテスネート、プリマキン、及びピロナリジン(pyronaridine)、及びそれらの組み合わせが含まれる。
【0102】
「薬学的に許容される担体」という用語は、置換されたテトラサイクリン化合物(類)と同時投与される(co−administered)ことができ、置換されたテトラサイクリン化合物が、例えば、マラリアの治療又は予防といった、その意図された機能を行うことを可能にする物質を含む。そのような担体の例には、溶液、溶媒、分散媒、遅延剤(delay agent)、エマルジョン等がある。薬学的に活性な物質のためのこのような媒介物を使用することは、当技術において公知である。また本発明の置換されたテトラサイクリン化合物とともに使用することが好適なその他の任意の従来の担体が含まれる。
【0103】
例えば、本発明の1つ又は複数の化合物は、被験者に単独で投与することができるし、または、より一般的には、本発明の化合物は、従来の添加剤、すなわち非経口、経口、又は他の望ましい投与法に適していて、かつ活性化合物と有害な反応をせずに、そのレシピエントに有害でない、薬学的に許容される有機担体物質もしくは無機担体物質との混合物中の薬学的組成物の一部として投与することができる。薬学的に許容される適切な担体は、水、塩溶液、アルコール、植物油、ポリエチレングリコール、ゼラチン、ラクトース、アミロース、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ケイ酸、高粘性パラフィン、香油、脂肪酸モノグリセリド及び脂肪酸ジグリセリド、ペトロエスラル(petroethral)脂肪酸エステル、ヒドロキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン等を含むが、これらに限定されない。薬学的調製物は、無菌化することができ、かつ望ましいならば助剤、例えば、活性化合物と有害に反応しない、潤滑剤、保存剤、安定剤、湿潤剤、乳化剤、浸透圧に影響を及ぼす塩、緩衝剤、着色剤、香味料、及び/又は芳香性物質等と混合することができる。
【0104】
本発明の置換されたテトラサイクリン化合物のいくつかは、プロトン化されかつ水溶性の形状で、例えば薬学的に許容される有機酸又は無機酸の塩(例えば、ヒドロクロリド、スルフェート、ヘミスルフェート、ホスフェート、硝酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、クエン酸塩、マレイン酸塩、メシレート等)として、被験者に適切に投与することができる。同様に、適切な酸性基が本発明の化合物上に存在する場合、薬学的に許容される無機塩基又は有機塩基の塩を、アンモニウム塩、又は有機アミンの塩、又は、カリウム、カルシウム、もしくはナトリウムの塩等のアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の塩の状態として使用することができる。
【0105】
置換されたテトラサイクリン化合物は、本発明により、例えば、局所投与(経皮、頬側、又は舌下を含む)、及び非経口投与(腹腔内、皮下、静脈内、皮内、又は筋肉内の注射を含む)といった、任意のさまざまな経路で被験者に投与することができる。一つの態様において、置換されたテトラサイクリン化合物は、経口投与される。
【0106】
非経口投与の場合、溶液、好ましくは油性溶液又は水溶液、ならびに懸濁液、エマルジョン、又はインプラント(坐剤を含む)が特に適している。治療用化合物は、複数回投与又は単回投与のフォーマット(例えば、注射液に通常使用されている滅菌済みの生理食塩水又は5%生理食塩水−デキストロース溶液等の流動性担体中に分散させた状態)で無菌的な状態で製剤化される。
【0107】
腸内投与又は経口投与の場合、タルク及び/又は炭化水素の担体結合剤等を含む錠剤、糖衣丸、又はカプセル剤が特に適しており、担体は、ラクトース及び/又はコーンスターチ及び/又はバレイショデンプンが好ましい。甘味を加えた賦形剤を用いるときは、シロップやエリキシル等を使用することができる。徐放性の組成物は、例えば、マイクロカプセル化や多層コーティング法等により、活性成分が差動的に(differentially)崩壊可能なコーティングで保護するように製剤することができる。
【0108】
局所投与の場合、置換されたテトラサイクリン化合物を、ゲル、軟膏、ローション、又はクリーム等の薬理学的に不活性な局所用担体中に適切に混合することができる。そのような局所用担体には、水、グリセロール、アルコール、プロピレングリコール、脂肪アルコール、トリグリセリド、脂肪酸エステル、又はミネラルオイル等が含まれる。他の潜在的局所用担体には、液体ワセリン、パルミチン酸イソプロピル、ポリエチレングリコール、95%エタノール、5%モノラウリル酸ポリオキシエチレン水溶液、5%ラウリル硫酸ナトリウム水溶液等がある。また、抗酸化剤、湿潤剤、粘度安定化剤等の物質も望ましいならば添加することができる。
【0109】
所与の治療法に使用される活性化合物の実際に好ましい量は、使用される特定の化合物、製剤化された特定の組成物、投与様式、特定の投与部位等により変わると考えられる。所与の投与プロトコルにおける最適投与速度を、当該技術の当業者は、前出のガイドラインにしたがって行われる従来の投与量決定試験で容易に確認することができる。
【0110】
一般に、治療のための本発明の化合物は、従来のテトラサイクリン療法で使用されている投与量で被験者に投与することができる。例えば、Physicians’ Desk Referenceを参照されたい。例えば、本発明の1つ又は複数の化合物の適切な有効量は、0.01〜100mg/kg(レシピエント体重)/日の範囲にあり、好ましくは0.1〜50mg/kg(レシピエント体重)/日の範囲にあり、より好ましくは1〜20mg/kg(レシピエント体重)/日の範囲にある。好ましい用量を1日1回投与するか、又はいくつかの副用量(sub−dose)、例えば、2〜5の副用量を、1日のうち適切な間隔をおいて、又は適切なスケジュールに基づいて、投与する。
【0111】
比較の目的のために、特別のテトラサイクリン関連化合物の他の用量について要約する。テトラサイクリン、オキシテトラサイクリン、及びクロルテトラサイクリンの成人用量は、通常6時間毎に250mg経口投与、重篤な感染の場合には500mgとする。50kg以下の小児には、通常ドキシサイクリンを初日は4mg/kg、翌日からは2mg/kgを投与する。筋肉内テトラサイクリンの場合、適切な成人用量は、通常100mgを1日2〜3回投与する。静脈内/胸膜腔内テトラサイクリンの場合、通常成人用量は、一般的に1日2回500mgである。
【0112】
一般に、通常の使用環境でその効力を確実にするために、テトラサイクリンの投与に関して、標準的で従来から知られている予防措置を講じることもまた理解されるであろう。特にヒト及び動物のインビボ治療処置に使用する場合、従来から知られている禁忌(contradictions)及び毒性作用を回避するためにあらゆる賢明な措置を施術者は講じる必要がある。したがって胃腸障害及び炎症、腎毒性、過敏反応、血液変化、ならびにアルミニウムイオン、カルシウムイオン、及びマグネシウムイオンによる吸収異常について従来から認識されている副作用を、従来の方法で正しく考慮すべきである。
【0113】
置換されたテトラサイクリン化合物の「有効量」という用語は、被験者におけるマラリアを制御するために必要又は十分な量、例えば、マラリアのさまざまな形態的及び身体的な症状を防ぐ又は改善するための量を意味する。有効量は、被験者の大きさや体重、疾患の種類、又は置換されたテトラサイクリン化合物の特性等の要因により変わる。例えば、置換されたテトラサイクリン化合物の選択は、「有効量」の構成要素に影響を及ぼし得る。当該技術の当業者であれば前述の要因群を調べ、置換されたテトラサイクリン化合物の有効量に関する判断を過度の実験を行うことなく下すことができるであろう。インビボアッセイを行って、置換されたテトラサイクリン化合物の「有効量」を決定することもできる。当業者であれば、前述のインビボアッセイに使用する置換されたテトラサイクリン化合物の適切な量を選択することができるであろう。有効量の置換されたテトラサイクリンは、マラリアに罹患している被験者、例えば、ヒトの治療に有効であることが好ましい。
【0114】
「被験者」という用語は、マラリアに罹患しうる動物を含む。被験者の例には、鳥類(ガチョウ、アヒル)、爬虫類、反芻動物(例えば、ウシ及びヤギ)、マウス、ラット、ハムスター、イヌ、ネコ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ライオン、トラ、クマ、サル、チンパンジー、及び好ましい態様ではヒトが含まれるが、これらに限定されない。
【0115】
以下の実施例により本発明をさらに説明する。これらの実施例は、本発明をさらに制限するものと解釈されるべきではない。本明細書の随所において引用された、全ての参考文献、係属中の特許出願、および公開された特許を引用によって本明細書中に援用する。
【0116】
本発明の化合物は、下記のように作製することができる。当該技術の当業者の技量の範囲内で下記の処置に変更を加えてもよい。
【実施例1】
【0117】
7−置換型テトラサイクリンの合成7ヨードサンサイクリン 1gのサンサイクリンを25mLのTFA(トリフルオロ酢酸)に溶解し、0℃に冷却(氷上)した。1.2等量のN−ヨードスクシニミド(NIS)を反応混合物に添加し、40分間反応させた。氷浴から取り出し、常温でさらに5時間反応させた。次にその混合物を高速液体クロマトグラフィー及び薄層クロマトグラフィーによって分析し、NISを徐々に加えることにより完了させた。反応の完了後、真空中でTFAを除き、3mLのメタノールを添加して残留物を溶解した。ジエチルエーテル溶液をすばやく攪拌しながら、そこへメタノール溶液をゆっくりと添加し、緑色がかった褐色の沈殿を形成させた。7−ヨード生成物を活性炭で処理することによって、サンサイクリンの7−ヨード異性体を精製し、セライトを通して濾過し、続けて真空中で溶媒を除き、7−異性体化合物を純粋な黄色の固形物として収率75%で得た。MS(M+H)(ギ酸溶媒)541.3╲Rt: Hypersil C18 BDS(商標)カラム、11.73H NMR(メタノールd−300MHz)δ7.87−7.90(d、1H)、6.66−6.69(d、1H)、4.06(s、1H)、2.98(s、6H)、2.42(m、1H)、2.19(m、1H)、1.62(m、4H)、0.99(m、2H)
【0118】
7−フェニルサンサイクリン 150mg(0.28mM)の7−ヨードサンサイクリン、Pd(OAc)及び10mLのメタノールを攪拌棒の付いたフラスコに添加し、アルゴンを用いてその系を3回脱気した。水に溶解し、アルゴンにより脱気したNaCO(87mg、0.8mM)をフェニルボロン酸(68mg、0.55mM)と一緒に注射器を用いて同様に脱気したメタノール中に添加した。反応後、2時間高速液体クロマトグラフィーを行い、室温まで冷却した。溶液を濾過し、乾燥させ、粗混合物を得た。固形物をジメチルホルムアミドに溶解し、C18逆相シリカを用いた調整用の高速液体クロマトグラフィー系に注入した。36〜38分で分画が単離された。真空中で溶媒を除き、生成物及び塩を得た。水、ブタノール、エチル酢酸塩(50:25:25)中に抽出することによって塩を除き、真空中で乾燥させた。固形物をメタノールに溶解し、塩酸ガス中で泡立てることによって塩酸塩を作製した。溶媒を除き、生成物を黄色の固形物として収率42%で得た。Rt 21.6分:MS(M+H、ギ酸溶媒):491.3H NMR(メタノールd−300MHz)δ7.87(d、J=8.86Hz、1H),7.38(m、5H)、6.64(d、8.87Hz、1H)、4.00(s、1H)、3.84(s、2H)、3.01(s、6H)、2.46(m、2H)、1.63(m、4H)、0.95(m、2H)
【0119】
7−(4’−クロロフェニル)サンサイクリン 500mg(0.91mM)の7−ヨードサンサイクリン、21mgのPd(OAc)、及び20mLのメタノールを攪拌棒の付いたフラスコに添加し、アルゴンを用いて系を3回脱気した。水に溶解し、アルゴンにより脱気したNaCO(293mg、2.8mM)を、注射器を用いて添加し、4−C1−フェニルボロン酸(289mg、1.85mM)と一緒に、同様に脱気したメタノール中に添加する。反応後、45分間高速液体クロマトグラフィーを行い、室温まで冷却した。溶液を濾過し、乾燥させ、粗混合物を得た。固形物をジメチルホルムアミドに溶解し、C18逆相シリカを用いた調整用の高速液体クロマトグラフィー系に注入した。39分で分画が単離された。真空中で溶媒を除き、生成物及び塩を得た。水、ブタノール、エチル酢酸塩(50:25:25)中に抽出することによって塩を除き、真空中で乾燥させた。固形物をメタノールに溶解し、塩酸ガス中で泡立てることによって塩酸塩を作製した。溶媒を除き、生成物を黄色の固形物として収率57%で得た。Rt 20.3分:MS(M+H、ギ酸溶媒):525.7H NMR(メタノールd−300MHz)δ7.49−7.52(d、J=8.54Hz、1H),6.99−7.01(d、8.61Hz、1H)、4.12(s、1H)、3.67(m、1H)、3.06(s、6H)、2.58(m、2H)、1.62(m、4H)、1.01(m、2H)
【0120】
7−(4’−フルオロフェニル)サンサイクリン 200mg(0.3mM)の7−ヨードサンサイクリン、8.3mgのPd(OAc)、及び10mLのメタノールを攪拌棒の付いたフラスコに添加し、アルゴンを用いてその系を3回脱気した。水に溶解し、アルゴンにより脱気したNaCO(104mg、1.1mM)を注射器によって添加し、4−F−フェニルボロン酸(104mg、0.7mM)と一緒に、同様に脱気したメタノール中に添加する。反応後、20分間高速液体クロマトグラフィーを行い、室温まで冷却した。溶液を濾過し、乾燥させ、粗混合物を得た。固形物をジメチルホルムアミドに溶解し、C18逆相シリカを用いた調整用の高速液体クロマトグラフィー系に注入した。19〜20分で分画が単離された。真空中で溶媒を除き、生成物及び塩を得た。水、ブタノール、エチル酢酸塩(50:25:25)中に抽出することによって塩を除き、真空中で乾燥させた。固形物をメタノールに溶解し、塩酸ガス中で泡立てることによって塩酸塩を作製した。溶媒を除き、生成物を黄色の固形物として収率47%で得た。Rt 19.5分:MS(M+H、ギ酸溶媒):509.4H NMR(メタノールd−300MHz)δ6.92〜6.95(d、1H)、7.45〜7.48(d、1H)、7.15〜7.35(m、4H)、4.05(s、1H)、3.62(m、1H)、3.08(s、6H)、2.55(m、2H)、1.65(m、4H)、1.00(m、2H)
【0121】
7−(4’−ヨード−1’、3’−カルボエトキシ−1’、3’−ブタジエン)サンサイクリン 7−1−サンサイクリン(1gm、1.86mmol)を25mLのアセトニトリルに溶解し、窒素を用いて脱気及びパージを行った(3回)。この懸濁液に、Pd(OAc)(20mg、.089mmol)、CuI(10mg、.053mmol)、(o−トリル)P(56mg、.183mmol)を添加し、窒素を用いてパージを行った。エチルプロピオレート(ethyl propiolate)(1mL)及びトリエチルアミン(1mL)を懸濁液に添加した。さらにEtNを添加すると、褐色の溶液になった。次にその反応混合物を70℃に2時間加熱した。反応の進行を高速液体クロマトグラフィーでモニターした。その後、室温まで冷却し、セライトを通して濾過した。溶媒を蒸発させ、褐色の固形物を得た。さらに調整用の高速液体クロマトグラフィーにかけて精製し、黄色の固形物を得た。
【0122】
7−(2’−クロロエチニル(chloroethenyl))−サンサイクリン 0.65g(1mmol)の7−ヨード−サンサイクリン溶液/懸濁液に、0.05gのテトラキストリフェニルホスフィナートパラダート、0.012gのパラジウム酢酸塩、10mLアセトニトリル中の0.05gのヨウ化第1銅、2mLのトリエチルアミン、及び0.5gのトリメチルシリルアセチレンを常温で添加した。2時間反応させて、セライトベッド(celite bed)を通して濾過し、濃縮した。粗生成物を調整用の高速液体クロマトグラフィーにかけて精製した。収集した分画を濃縮し、残留物を約1mLのメタノール及び2mLの塩酸飽和メタノール中に入れた。エーテルを用いて、生成物を沈殿させた。固形物を濾過して取り除き、減圧乾燥した。核磁気共鳴分光法及び液体クロマトグラフィー・質量分析により、化合物が7−(2−クロロエチニル(chloroethenyl))サンサイクリンであることがわかった。
【0123】
7−(4’−アミノフェニル)サンサイクリン 200mgの7−(4−ニトロフェニル)サンサイクリンを溶解した50mLのメタノール溶液に、10mgの10%パラジウム−活性炭触媒を添加した。その反応混合物を水素圧40psiで2時間振盪させ、その後濾過し、続いて濃縮した。残留物を調整用の高速液体クロマトグラフィーにかけてさらに精製した。35mgを塩酸塩として単離した。核磁気共鳴分析法及び液体クロマトグラフィー・質量分析により、その構造は、7−(4−アミノフェニル)サンサイクリンであることがわかった。
【0124】
7−(NN−ジメチルプロピニル)−サンサイクリン
【0125】
【化37】

【0126】
7−I−サンサイクリン(1gm、1.86mmol)をアセトニトリル25mL中に入れ、窒素を用いて脱気及びパージを行った(3回)。この懸濁液に、Pd(OAc)(20mg、.089mmol)、CuI(10mg、.053mmol)、(o−トリル)P(56mg、0.183mmol)を添加し、数分間窒素を用いてパージを行った。NN−ジメチルプロピン(Dimethylpropyne)(308mg、3.72mmol)、及びトリエチルアミン(1mL)を懸濁液に添加した。さらにEtNを添加すると、褐色の溶液になった。次に反応混合物を70℃に3時間加熱した。反応の進行を高速液体クロマトグラフィーでモニターした。その後、室温まで冷却し、セライトを通して濾過した。溶媒を蒸発させ、褐色の固形物を得た。さらにそれを調整用の高速液体クロマトグラフィーにかけて精製し、黄色の固形物を得た。1H核磁気共鳴分析法、高速液体クロマトグラフィー、及び質量分析によって、その化合物の構造の特徴を調べた。
【0127】
7−(2’−クロロ−3−ヒドロキシプロペニル)−サンサイクリン
【0128】
【化38】

【0129】
7−(アルキニル)−サンサイクリン(100mg)を20mlの飽和メタノール/塩酸に入れ、20分間攪拌した。次に溶媒を蒸発させ、黄色の粉末を得た。1H核磁気共鳴分析法、高速液体クロマトグラフィー、及び質量分析によって、その化合物の構造の特徴を調べた。
【0130】
7−(3’−メトキシフェニルエチル)−サンサイクリン
【0131】
【化39】

【0132】
7−(3’−メトキシフェニルエチル)−サンサイクリン(1mmol)を、メタノール/塩酸の飽和溶液中に入れた。この溶液に、10%Pd/Cを添加し、50psiで12時間水素化処理した。その後セライトを通して濾過した。溶媒を蒸発させ、黄色の粉末を得た。最後に、メタノール/ジエチレンエーテルで沈殿させた。1H核磁気共鳴分析法、高速液体クロマトグラフィー、及び質量分析を用いて、この化合物の構造の特徴を調べた。
【0133】
(2−ジメチルアミノ−アセチルアミノ)−サンサイクリン
【0134】
【化40】

【0135】
NN−ジメチルグリシン(1.2mmol)をDMF(5mL)に添加し、O−ベンゾトリアゾール(Benzotriazol)−1−イル−N,N,N’,N’,−テトラメチルウロニウム(tetramethyluronlum)ヘキサフルオロホスフェート(HBTU、1.2mmol)を添加した。次にこの溶液を室温で5分間攪拌した。この溶液に、7−アミノサンサイクリン(1mmol)を添加し、続いてジイソプロピルエチルアミン(DIEA、1.2mmol)を添加した。反応を室温で2時間攪拌して行い、そして溶媒、DMFを真空中で除いた。粗物質を5mLのメタノールに溶解し、オートバイアルを用いて濾過し、調整用の高速液体クロマトグラフィーにかけて精製した。1H核磁気共鳴分析法、高速液体クロマトグラフィー、及び質量分析を行って、この化合物の構造の特徴を調べた。
【0136】
7−(N−メチルスルホンアミドプロパルジルアミン)サンサイクリン
【0137】
【化41】

【0138】
7−ヨードサンサイクリンモノトリフルオロ酢酸塩(1g、1.53mmol)と、パラジウムII酢酸塩(17.2mg;0.076mmol)と、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(176.8mg、0.153mmol)と、銅(I)ヨウ化物(49mg;0.228mmol)の混合物に、15mlの試薬級アセトニトリルを清潔な乾燥した2口丸底フラスコ中で添加した。反応をアルゴンガス蒸気を用いて、攪拌しながら、5分間ゆっくりパージを行い、その後(固形物としての)N−メチルスルホンアミドプロパルジルアミン(の一部)を添加した。当該技術で公知の方法(J.Med. Chem 31 (3) 1988 ; 577−82)によってスルホンアミドを調製した。続いて、1mlのトリエチルアミン(1ml;0.726mg;7.175mmol)を添加し、アルゴン雰囲気で約1時間、常温で攪拌して反応を行った。反応混合物を珪藻土のパッドを通して吸引濾過し、アセトニトリルで洗浄した。濾過物を真空中で減圧乾燥し、残留物をトリフルオロ酢酸のアセトニトリル希釈溶液で処理してpHを約2に調節した。その残留物をトリフルオロ酢酸のさらに希釈したアセトニトリル溶液で処理して沈殿を形成させ、それを吸引濾過によって除去した。固相としてDVBを用いた逆相高速液体クロマトグラフィーを、メタノール/アセトニトリル1%トリフルオロ酢酸及び1%トリフルオロ酢酸の1:1水溶液の勾配を利用して行い、粗濾過物を精製した。適切な分画を減圧下で減圧乾燥し、固形物を集めた。H核磁気共鳴分析法、質量分析法、及び液体クロマトグラフィー逆相によって、この化合物の構造の特徴を調べた。
【0139】
7−(2’−メトキシ−5’−ホルミルフェニル)−サンサイクリン
【0140】
【化42】

【0141】
7−ヨード−サンサイクリン(1g、1.53mmol)、Pd(OAc)(34mg、0.153mmol)、及びメタノール(50mL)を、250mLの2口丸底フラスコ中で濃縮剤及びアルゴンラインと混合した。その後、溶液を、油浴で約70℃に加熱しながら、アルゴンを用いてパージを行った(15分)。水中(3〜5mL)に炭酸ナトリウム(482mg、4.58mmol)を溶解し、反応フラスコに添加した。その後フラスコをアルゴンを用いて更に5分間パージを行った。2−メトキシ−5−ホルミルフェニルボロン酸(333mg、1.83mmol)をメタノール(5mL)に溶解し、反応フラスコに添加した。次にそのフラスコを、アルゴンを用いて10分間再度パージした。反応をモニターし、3時間以内に完了させた。フラスコの内容物を濾紙を通して濾過し、残りの溶媒を蒸発させた。塩酸塩を作製するために、残留物をメタノール(飽和塩酸)に溶解し、塩酸塩を作製した。その後溶液を濾過し、溶媒を蒸発させた。H核磁気共鳴分析法及び液体クロマトグラフィー・質量分析を用いて、生成物の特徴を調べた。
【0142】
7−(2’−メトキシ−5’−N,N’−ジメチルアミノメチルフェニル)−サンサイクリン
【0143】
【化43】

【0144】
7−(2’−メトキシ−5’−ホルミルフェニル)−サンサイクリン(1g、1.82mmol)、ジメチルアミン塩酸(297mg、3.64mmol)、トリエチルアミン(506μL、3.64mmol)、及び1,2−DCE(7mL)を40mLのバイアル中で混合した。数分間の振盪又は攪拌によって内容物を溶解させた。その後、トリアセトキシボロンヒドリドナトリウム(772mg、3.64mmol)を固形物として添加した。反応を高速液体クロマトグラフィー及び液体クロマトグラフィー・質量分析法によってモニターし、3時間以内に完了させた。反応をメタノール(20mL)を用いてクエンチングし、続けて溶媒を除いた。残留物を3mLのDMF中に再度溶解し、C−18カラム上に単離した。調整用のカラムからの分画を真空中で乾燥させ、内容物をメタノール中(飽和塩酸)に溶解することによって塩酸塩を作製した。溶媒を減少させ、黄色の粉末を得た。H核磁気共鳴分析法、液体クロマトグラフィー・質量スペクトロメトリ、高速液体クロマトグラフィーによって特徴を調べた。
【0145】
7−フラニル−サンサイクリン 7−ヨード−サンサイクリン(1.3mg)及びPd(OAc)を100mLのメタノール中に入れ、アルゴンを用いて約70℃で5分間パージした。この溶液に、炭酸ナトリウム水溶液(44mg)(あらかじめアルゴンでパージしておいたもの)を添加し、黄色の沈殿物を得た。混合物をさらに10分間加熱した。次に3−フラニルボロン酸(333mg、DMFに溶かした溶液、アルゴンでパージしておいたもの)を添加し、さらに2時間70℃で加熱した。反応を中圧液体クロマトグラフィー/質量分析でモニターした。反応が完了したとき、その混合物をセライトを通して濾過し、溶媒を除いて、粗物質を得た。その粗物質を、エーテル(200ml)で沈殿させることによって精製した。黄色の沈殿物を濾過し、調整用の高速液体クロマトグラフィーによって精製した。物質をメタノール/塩酸中に溶解し、蒸発乾燥させることによって塩酸塩を得た。得られた固形物の特徴を、高速液体クロマトグラフィー、質量分析、及び核磁気共鳴分析法によって確認した。
【実施例2】
【0146】
9−置換型ミノサイクリンの調製9−ヨードミノサイクリンの調製 200mLの97%メタンスルホン酸に、常温で、ミノサイクリン−ビス−塩酸塩を一部ずつ[30g;56.56mM]、ゆっくりと添加した。次に暗黄褐色の溶液を常温で攪拌しながら、[38g;169.7mM]のN−ヨードスクシニミドを6等分して3時間かけて添加した。分析液体クロマトグラフィーによってその反応をモニターし、開始物質の消失をみとめた。
【0147】
反応を[17.88g;1134.1mM]のチオスルファトナトリウムを含有する2Lの氷冷水にて、すばやく攪拌しながら、ゆっくりとクエンチングし、常温で約30分間攪拌した。水層を6x200mLのエチル酢酸塩を用いて抽出し、300mLのn−ブタノールを含有する[259.8g;3.08M]の炭酸水素ナトリウムに注いだ。相を分割し、水層を4x250mlのn−ブタノールを用いて抽出した。有機分画を集め、3x250mlの水で洗浄し、250mlの飽和塩水で一度洗浄した。得られた有機相を減圧下で減圧乾燥した。残留物をメタノール(〜600ml)中に懸濁させ、無水塩酸ガスをこの混合物中で、溶液が発生するまで泡立てた。この溶液を減圧下で減圧乾燥した。濾過物を減圧下で減圧乾燥した。得られた物質を、300mlのメチルt−ブチルエーテルを用いて倍散し、濾過により単離した。この物質を、300mlのメタノールに再度溶解し、0.5gの木炭(wood carbon)で処理し、濾過し、濾過物を減圧下で減圧乾燥した。物質を再び、メチルt−ブチルエーテルのもとで粉末化し、吸引濾過により単離し、より多くのエーテル、最終的にはヘキサンを用いて洗浄した。この物質を真空乾燥し、22.6gの明黄褐色の粉末を得た。
【0148】
9−アルキニルミノサイクリン化合物の調製のための一般的な処置 1mmolの9−ヨードミノサイクリン、50mgのテトラキストリフェニルホスフィナートパラダート、12mgのパラジウム酢酸塩、32mgのヨウ化第一銅を、10mlのアセトニトリルに溶解/懸濁する。2〜5mlのトリエチルアミン及び3〜5mmolのアルキニル誘導体を添加する。その反応混合物を常温から70℃の間で勢いよく攪拌する。反応時間は、2〜24時間とする。反応が完了すると、暗色の懸濁液をセライトベッドを通して濾過し、濃縮する。粗生成物を調整用の高速液体クロマトグラフィーにかけて精製する。集めた分画を濃縮し、〜1mlのメタノール中に取り込む。〜3ml塩酸飽和メタノールを添加し、エーテルを用いて生成物を沈殿させる。
【0149】
9−アリールミノサイクリン化合物の調製のための一般的な処置 0.15mmolの9−ヨードミノサイクリン、PdOAc(3.2mg)、229μl 2M NaCO、及び2等量のフェニルボロン酸を10mlのメタノールに溶解/懸濁した。アルゴンを用いて反応フラスコをパージし、最低4時間、又は高速液体クロマトグラフィーによるモニターで開始物質の消費及び/又は生成物の出現がみとめられるまで、反応を行った。懸濁液を、セライトを通して濾過し、ジビニルベンゼン又はCIE逆相カラム上で調整用の高速液体クロマトグラフィーにかけて精製した。
【0150】
9−(4−トリフルオロメトキシフェニルウレイド)−メチルミノサイクリン
【0151】
【化44】

【0152】
3mLのジメチルホルムアミドに、150mg(0.25mmol)の9−メチルアミノミノサイクリントリヒドロクロリド及び67mL(0.50mmol)のトリエチルアミンを25℃で添加した。攪拌しながら、75mL(0.50mmol)の4−トリフルオロメトキシフェニルイソシアネートを添加し、得られた反応混合物を25℃で2時間攪拌した。分析高速液体クロマトグラフィー(4.6x50mm、逆相Luna C18カラム、5分間、1〜100%B緩衝剤の線勾配、A緩衝剤は、0.1%のトリフルオロ酢酸塩と混合した水とし、B緩衝剤は、0.1%のトリフルオロ酢酸塩と混合したアセトニトリルとした)によりモニターした。完了後、反応を1mLの水にてクエンチングし、濃縮塩酸を用いてpHを約2.0に調整した。溶液を濾過し、化合物を調整用の高速液体クロマトグラフィーにかけて精製した。生成物の産出量は64mgであった(収率37%)。生成物の純度が95%であることが液体クロマトグラフィー・質量分析(M+I=690)によって判明した。
【0153】
9−(4’−カルボキシフェニル)ミノサイクリン
【0154】
【化45】

【0155】
清潔な、乾燥した反応容器内に、9−ヨードミノサイクリン[500mg;0.762mmol]ビス塩酸塩、パラジウム(II)酢酸塩[17.2mg;0.076mmol])を10mlの試薬級メタノールと一緒に添加した。その溶液を約5分間、アルゴンガスの蒸気を用いて攪拌しながら、すばやくパージした。反応容器を還流し、そこに2Mの炭酸カリウム溶液[1.91ml;3.81mmol]を注射器を用いて連続的に添加し、続いてp−カルボキシフェニルボロン酸の溶液[238.3mg;1.53mmol]を5mlの試薬DMF中に溶解した溶液を添加した。これら両方の溶液をあらかじめアルゴンガスを用いて約5分間脱気しておいた。その反応を45分間加熱して行い、進行を逆相高速液体クロマトグラフィーによってモニターした。その反応を珪藻土のパッドを通して吸引濾過し、DMFで洗浄して行った。濾過物を真空中で油に変換し、残留物をt−ブチルメチルエーテルで処理した。粗物質を、水及び1.0%のトリフルオロ酢酸塩を含有したメタノール/アセトニトリルの勾配を用いて、逆相高速液体クロマトグラフィーにかけてDVB上で精製した。生成物を質量分析法によって確認し、M+1 578.58を認めた。構造を1H核磁気共鳴分析法によって確認した。
【実施例3】
【0156】
インビトロでの抗マラリア活性の評価 以下のプロトコルは、Antimicrob.Agents Chemother. 40: 1600−1603,1996から採用し、簡単な例において使用した。
【0157】
寄生虫の調製:熱帯熱マラリア原虫の菌株を培養液中で継続的に育てた。ヒトA+型赤血球の6%懸濁液を、25mMのHEPES、32mMのNaCO3、及び10%の熱不活化ヒトA+型凍結血漿(酸−クエン酸−ブドウ糖抗凝結剤中)を含む殺菌水で希釈した粉末RPMI1640を含有する培養培地中で調製した。保存培養液を25mLの組織培養フラスコ中の5mLの6%赤血球懸濁液中に維持した。フラスコを5%二酸化炭素、5%酸素及び90%窒素の混合気体で流した。次にそのフラスコを密閉し、37℃でインキュベートした。培養液は、いつでも2%未満の赤血球が感染するように維持した。実験として、保存培養のサンプルを十分な感染していないヒトA+型赤血球を含有する培養培地中に希釈し、マイクロタイタープレートに添加した調製物中に、最終生成物として1.5%ヘマトクリット及び0.25〜0.5%の寄生虫血症を産生した。
【0158】
薬物の調製:まず、全ての化合物を保存濃度20mg/mLのDMSO(ジメチルスルホキシド)に溶解した。最終的な希釈液は、この系の寄生虫に測定可能な効果を及ぼさない1%未満のDMSOを含有していた。
【0159】
マイクロタイタープレートの設定:25μlの培養培地を96ウェルマイクロタイタープレートの各ウェルに入れた。25μlのDMSO薬液をプレート中の2つの別個のウェルに添加した。薬物をウェルに添加した後、自動希釈装置を用いて連続2倍希釈液を作製した。一定容量(200μl)の、寄生された赤血球懸濁液をマクロタイタープレートの、対照を除く各ウェルに添加した。対照は、200μlの寄生されていないヒトA型赤血球の等量懸濁液で処理した。全てのウェルの総容量は225μlであった。調製後、プレートを5%酸素、5%二酸化炭素及び90%窒素の混合物の入った加湿された気密容器に入れ、密閉し、30℃で24〜48時間インキュベートした。
【0160】
寄生虫の収集とシンチレーション計数:2度目のインキュベーションの終わりに、自動細胞ハーベスターを用いて各プレートを収集した。この機器は、本質的に各ウェルの粉末内容物を小さなディスク形の濾紙上に吸引して置き、次に希釈液で完全に洗浄するものである。その後シンチレーションカウンタを用いて各ディスクを計数する。
【0161】
以下の表1は、本発明の、ある置換されたテトラサイクリン化合物の相対的なMIC(発育最小阻止濃度)を示す。「*」は、寄生虫の成長に対する良好な阻害を示し、「**」は、寄生虫の成長に対する非常に良好な阻害を示し、「***」は、寄生虫の成長に対する極めて良好な阻害を示している。MICは、30℃で24〜48時間インキュベートした後の、熱帯熱マラリア原虫の成長を阻害する化合物の最小濃度を表す。
【0162】
【表1】













【実施例4】
【0163】
インビボにおける抗マラリア活性の評価 評価は、常に急激な致命的なマラリアを引き起こし、かつ薬効に関して優れたモデルであるマウス寄生虫P.vinckeiを用いて行った。しかしながら、入手可能な他のマウス寄生虫(例えば、P.berghei)を類似の方法論を用いて検討することもできる。
【0164】
20gmのスイスウェブスターマウスに、他の感染マウスから得た10個のP.vinckei感染赤血球を腹腔内投与で接種した。感染の12時間後、試験化合物の腹腔内注射による治療を開始した。4日間2日に一度(BID)治療を続けた。実験マウス及び対照マウス(希釈液のみを注射)におけるマラリア感染の進行を、尾の静脈から得た血液スメアを毎日調べることにより経過観察した。寄生虫血症>50%を薬理学的指標とする。この期間に感染しなかったマウスを6週間経過観察し、期間を通じて感染しないままのマウスを長期治癒とみなす。
【0165】
試験化合物は、試験マウスの胃の中に胃管栄養法として注射する。標準的なインビボプロトコルの多くのバリエーションを、特定の目的のために使用することができる。例えば、投薬間隔は、公知の薬物動態論又は化合物の観察された初期薬効データに基づいて変えることができる。同様にプロトコルも、より細密に模倣した真の治療(寄生虫接種後の治療を遅らせる)、又は化学的予防法(寄生虫接種前に治療を行う)に変えることができる。
【0166】
全てのインビボ実験について、実験の少なくとも最初の2週間は、血液スメアを用いてマウスを毎日モニターする。赤血球1000個毎に寄生虫血症の計数を行い、続いて寄生虫血症を経時的にプロットし、対照マウスでの結果と実験マウスでの結果を比較する。
【実施例5】
【0167】
哺乳動物細胞毒性アッセイ COS−1及びCHO細胞懸濁液を調製し、96ウェル組織培養処理用ブラックウォールマイクロタイタープレート(細胞ラインによって濃度を測定)に蒔き、5%二酸化炭素中で、温度37℃、湿度約95%で一晩インキュベートした。次の日、薬物の連続希釈液を無菌状態で調製し、細胞プレートに移す。細胞/薬物プレートを上記条件の下で24時間インキュベートする。インキュベート期間の後、培地/薬物を吸引し、50μlのレサズリンを添加する。その後プレートを上記条件の下で2時間、さらに暗室で常温で30分間インキュベートする。蛍光測定法を行い(励起:535nm、発光:590nm)、その後IC50(50%の成長阻害を引き起こす薬物の濃度)を計算する。置換されていないミノサイクリンとドキシサイクリンの両方の細胞毒性は、25を超えていることが判明した。表1では、良好な細胞毒性をもつ置換されたテトラサイクリン化合物が「*」で表され、非常に良好な細胞毒性をもつ置換されたテトラサイクリン化合物が「**」で表されている。
【実施例6】
【0168】
インビボ抗菌活性アッセイ 以下のアッセイを用いて、テトラサイクリン化合物の一般的な細菌に対する薬効を決定する。各化合物を2mgずつ100μlのDMSOに溶解する。次に溶液を陽イオン調整Mueller Hinton broth(CAMHB)に添加する。その結果、最終化合物の濃度は200μg/mlとする。テトラサイクリン化合物溶液を、試験化合物濃度.098μg/mlで、50μL容量に希釈する。光学密度(OD)測定は、試験菌株の新鮮な対数期(log−phase)ブロス培養液で行う。希釈を行い、最終的な細胞濃度を1x10CFU/mlとする。OD=1において、異なる属の細胞濃度は、ほぼ以下のとおりとする必要がある。大腸菌(E.coli):1x10 CFU/ml黄色ブドウ球菌(S.aureus):5x10 CFU/ml腸球菌(Enterococcus sp.) 2.5x10 CFU/ml
【0169】
マイクロタイタープレートのそれぞれのウェルに50μlの細胞懸濁液を添加する。最終的な細胞密度は、約5x10CFU/mlとする必要がある。これらのプレートを大気のインキュベータ中で、35℃で約18時間インキュベートする。プレートをマクロプレートリーダーで読み、必要であれば、目視検査を行う。MICは、成長を阻害するテトラサイクリン化合物の最低濃度として定義される。
【0170】
等化物: 当業者であれば、ルーチンの実験法を用いるのみで、本明細書に記載された特定の態様及び方法の数多くの等価物を認識し、又は確かめることができるであろう。このような等価物は、添付の特許請求の範囲の包含するところである。
【0171】
本出願全体にわたって引用された全ての参考文献、特許、及び特許出願の内容を、引用によって本明細書に援用する。これらの特許、出願、及び他の文書の適切な構成要素、過程、及び方法を、本発明及びその態様に応じて選択することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象においてマラリアを治療または予防するための医薬品の製造における、置換されたテトラサイクリン化合物の使用であって、前記置換されたテトラサイクリン化合物は、式Iによって表される化合物または薬学的に許容されるそれらの塩である:
【化1】

式中、XはCHC(R13Y’Y)、CR6’、S、NR、又はOであり、
、R2’、R4’、及びR4”は、それぞれ個別に、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アルキルアミノ、アリールアルキル、アリール、複素環、複素環式芳香族、又はプロドラッグ成分であり、
は、NR4’4”、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヒドロキシル、ハロゲン、又は水素であり、
、R11、及びR12は、それぞれ水素又はプロドラッグ成分であり、
10は、水素、プロドラッグ成分であるか、又はRと結合して環を形成しており、
は、ヒドロキシル、水素、チオール、アルカノイル、アロイル、アルカロイル、アリール、複素環式芳香族、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アルキルアミノ、アリールアルキル、アルキルカルボニルオキシ、又はアリールカルボニルオキシであり、
及びR6’は、個別に、水素、メチレン、非存在、ヒドロキシル、ハロゲン、チオール、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アルキルアミノ、又はアリールアルキルであり、
は、水素、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、又はマラリア相互作用部分(malaria−interactingmoiety)であり、
は、水素又はマラリア相互作用部分であり、
は、水素、ヒドロキシル、ハロゲン、チオール、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アルキルアミノ、又はアリールアルキルであり、
13は、水素、ヒドロキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アルキルアミノ、又はアリールアルキルであり、
Y’及びYは、それぞれ個別に、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、シアノ、スルフヒドリル、アミノ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アルキルアミノ、又はアリールアルキルであり、
但し、式Iで表される化合物は、オキシテトラサイクリン、デメクロサイクリン、ドキシサイクリン、クロロテトラサイクリン、ミノサイクリン、又はテトラサイクリンではない。
【請求項2】
哺乳動物においてマラリアを予防するための医薬品の製造における置換されたテトラサイクリン化合物の使用であって、前記置換されたテトラサイクリン化合物は、化学式Iによって表される化合物又は薬学的に許容されるそれらの塩である:
【化2】

式中、XはCHC(R13Y’Y)、CR6’、S、NR、又はOであり、
、R2’、R4’、及びR4”は、それぞれ個別に、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アルキルアミノ、アリールアルキル、アリール、複素環、複素環式芳香族、又はプロドラッグ成分であり、
は、NR4’4”、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヒドロキシル、ハロゲン、又は水素であり、
、R11、及びR12は、それぞれ水素又はプロドラッグ成分であり、
10は、水素、プロドラッグ成分であるか、又はRと結合して環を形成しており、
は、ヒドロキシル、水素、チオール、アルカノイル、アロイル、アルカロイル、アリール、複素環式芳香族、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アルキルアミノ、アリールアルキル、アルキルカルボニルオキシ、又はアリールカルボニルオキシであり、
及びR6’は、個別に、水素、メチレン、非存在、ヒドロキシル、ハロゲン、チオール、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アルキルアミノ、又はアリールアルキルであり、
は、水素、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、又はマラリア相互作用部分であり、
は、水素又はマラリア相互作用部分であり、
は、水素、ヒドロキシル、ハロゲン、チオール、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アルキルアミノ、又はアリールアルキルであり、
13は、水素、ヒドロキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アルキルアミノ、又はアリールアルキルであり、
Y’及びYは、それぞれ個別に、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、シアノ、スルフヒドリル、アミノ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アルキルアミノ、又はアリールアルキルであり、
但し、式1で表される化合物は、オキシテトラサイクリン、デメクロサイクリン、ドキシサイクリン、クロロテトラサイクリン、ミノサイクリン、又はテトラサイクリンではない。
【請求項3】
、R2’、R、R、R10、R11、及びR12が水素であり、RがNR4’4”であり、R及びR4”がアルキルであり、XがCR6’である、請求項1に記載の使用。
【請求項4】
前記化合物は、以下の式からなる群から選択される式で表される、請求項1または2に記載の使用。
【化3】





【請求項5】
前記化合物は、表1に示される化合物である、請求項1または2に記載の使用。
【請求項6】
前記マラリアが、熱帯熱マラリア原虫、三日熱マラリア原虫、卵型マラリア原虫、及び四日熱マラリア原虫からなる群から選択されるマラリア原虫によって引き起こされる、請求項1〜5のいずれか1項に記載の使用。
【請求項7】
前記医薬品はさらに、抗マラリア化合物を含み、前記抗マラリア化合物は、プログアニル、クロルプログアニル、トリメトプリム、クロロキン、メフロキン、ルメファントリン、アトバクオン、ピリメタミン−スルファドキシン、ピリメタミン−ダプソン、ハロファントリン、キニーネ、キニジン、アモジアキン、アモプロキン(amopyroquine)、スルホンアミド類、アルテミシニン、アルテフレン(arteflene)、アルテムエーテル、アルテスネート、プリマキン、ピロナリジン(pyronaridine)、プログアニル、クロロキン、メフロキン、ピリメタミン−スルファドキシン、ピリメタミン−ダプソン、ハロファントリン、キニーネ、プログアニル、クロロキン、メフロキン、1、16−ヘキサデカメチレンビス(N−メチルピロリジニウム)ジブロミド、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1〜6のいずれか1項に記載の使用。
【請求項8】
哺乳類におけるマラリアを治療するための、有効量の置換されたテトラサイクリン化合物及び薬学的に許容される担体を含む薬学的組成物であって、前記置換されたテトラサイクリン化合物は、式Iで表される化合物又は薬学的に許容されるそれらの塩である:
【化4】

式中、XはCHC(R13Y’Y)、CR6’、S、NR、又はOであり、
、R2’、R4’、及びR4”は、それぞれ個別に、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アルキルアミノ、アリールアルキル、アリール、複素環、複素環式芳香族、又はプロドラッグ成分であり、
は、NR4’4”、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヒドロキシル、ハロゲン、又は水素であり、
、R11、及びR12は、それぞれ水素又はプロドラッグ成分であり、
10は、水素、プロドラッグ成分であるか、又はRと結合して環を形成しており、
は、ヒドロキシル、水素、チオール、アルカノイル、アロイル、アルカロイル、アリール、複素環式芳香族、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アルキルアミノ、アリールアルキル、アルキルカルボニルオキシ、又はアリールカルボニルオキシであり、
及びR’は、個別に、水素、メチレン、非存在、ヒドロキシル、ハロゲン、チオール、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アルキルアミノ、又はアリールアルキルであり、
は、水素、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、又はマラリア相互作用部分であり、
は、水素又はマラリア相互作用部分であり、
は、水素、ヒドロキシル、ハロゲン、チオール、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アルキルアミノ、又はアリールアルキルであり、
13は、水素、ヒドロキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アルキルアミノ、又はアリールアルキルであり、
Y’及びYは、それぞれ個別に、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、シアノ、スルフヒドリル、アミノ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アルキルアミノ、又はアリールアルキルであり、
但し、式Iで表される化合物は、オキシテトラサイクリン、デメクロサイクリン、ドキシサイクリン、クロロテトラサイクリン、ミノサイクリン、又はテトラサイクリンではない。
【請求項9】
前記置換されたテトラサイクリン化合物は、以下の式からなる群から選択される式で表される化合物である、請求項8に記載の薬学的組成物。
【化5】





【請求項10】
前記置換されたテトラサイクリン化合物が表1に示されている化合物である、請求項8に記載の薬学的組成物。
【請求項11】
式Iの置換されたテトラサイクリン化合物または薬学的に許容されるそれらの塩を含む、パッケージ化されたマラリアの治療剤または予防剤。
【化6】

式中、XはCHC(R13Y’Y)、CR’R、S、NR、又はOであり、
、R’、R’、及びR”は、それぞれ個別に、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アルキルアミノ、アリールアルキル、アリール、複素環、複素環式芳香族、又はプロドラッグ成分であり、
は、NR’R”、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヒドロキシル、ハロゲン、又は水素であり、
、R11、及びR12は、それぞれ水素又はプロドラッグ成分であり、
10は、水素、プロドラッグ成分であるか、又はRと結合して環を形成しており、
は、ヒドロキシル、水素、チオール、アルカノイル、アロイル、アルカロイル、アリール、複素環式芳香族、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アルキルアミノ、アリールアルキル、アルキルカルボニルオキシ、又はアリールカルボニルオキシであり、
及びR’は、個別に、水素、メチレン、非存在、ヒドロキシル、ハロゲン、チオール、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アルキルアミノ、又はアリールアルキルであり、
は、水素、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、又はマラリア相互作用部分であり、
は、水素又はマラリア相互作用部分であり、
は、水素、ヒドロキシル、ハロゲン、チオール、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アルキルアミノ、又はアリールアルキルであり、
13は、水素、ヒドロキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アルキルアミノ、又はアリールアルキルであり、
Y’及びYは、それぞれ個別に、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、シアノ、スルフヒドリル、アミノ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アルキルアミノ、又はアリールアルキルであり、
但し、式Iで表される化合物は、オキシテトラサイクリン、デメクロサイクリン、ドキシサイクリン、クロロテトラサイクリン、ミノサイクリン、又はテトラサイクリンではなく、
前記パッケージ化されたマラリア治療または予防には、マラリアを治療又は予防するための前記テトラサイクリン化合物の有効量を使用するための説明書が添付されている。

【公開番号】特開2013−10806(P2013−10806A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−232354(P2012−232354)
【出願日】平成24年10月1日(2012.10.1)
【分割の表示】特願2009−128388(P2009−128388)の分割
【原出願日】平成14年4月24日(2002.4.24)
【出願人】(503334194)パラテック ファーマシューティカルズ, インク. (5)
【氏名又は名称原語表記】PARATEK PHARMACEUTICALS, INC.
【住所又は居所原語表記】75 Kneeland Street, Boston, MA 02111 (US)
【Fターム(参考)】