説明

マルチスタック光記憶媒体

【課題】製造するのがより容易である少なくとも2つの記録スタックを有する光記憶媒体を実施する解決策を提供する。
【解決手段】入射面EFの下に、上層記録層Lを有する上層記録スタックSTと、少なくとも下層記録スタックSTとを有する光記憶媒体に関わり、下層記録スタックは、波長λを有して入射面を通り該光記憶媒体に入り、下層記録スタック上に焦点が合わされ、上層記録スタック内を透過する放射ビーム4によって記録又は読出しされ、上層記録層の記録は、該第1の記録層の記録領域と非記録領域との間で光学厚さの偏差をもたらし、偏差は、0.03ラムダ乃至0.125ラムダの範囲内にある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチスタック光記憶媒体に係る。本発明は更に、そのような光記憶媒体を製造する方法に係る。
【0002】
本発明は特に、DVDフォーマットを用いるデュアルスタックライトワンス光記憶媒体に関連する。
【背景技術】
【0003】
最近では、デジタル・バーサタイル・ディスク(DVD)は、CDより非常に高いデータ記憶容量を有する媒体として市場を拡大してきている。現在、このフォーマットは、読出し専用(ROM)、記録可能又はライトワンス(R)、及びリライタブル(RW)バージョンにおいて利用可能である。
【0004】
DVDといったライトワンス又はリライタブル光記憶媒体は、記録層を有する記録スタックを有する。光記憶媒体への情報の記録は、強烈なレーザビームによって記録層の光特性を局所的に変更することによって行われる。記録が行われた部分は、通常ピット又はマークと呼ばれる。ライトワンス及びリライタブルDVDフォーマットの両方の問題は、制限された容量と結果として得られる記録時間である。何故なら、4.7GBの最大容量を有するシングルスタックのみの媒体があるからである。
【0005】
ROMディスクであり、8.5GB容量を有するデュアルスタック媒体であるDVDビデオは、しばしば、DVD−9と称され、既に相当の市場シェアを有するが、このようなDVD上には情報を書込みすることができない。
【0006】
従って、約8.5GBの容量を提供し、少なくとも2つのスタックを有するライトワンスDVDが、非常に望まれる。
【0007】
デュアルスタックライトワンス光記憶媒体によって発生する問題は、データの記録は不可避的に、記録スタックの光特性における局所的な変化をもたらすことである。書込みされた上層記録スタックを介して記録スタックにアクセスするとき、上層記録スタックの光特性における局所的な変化は、その下部の記録スタックの読出し及び書込みに使用される集束光ビームを劣化させ得る。上層記録スタックによってもたらされた異常が厳しすぎる場合、下部のスタックの書込み及び/又は読出しは、不可能となるか又は許容不可能な品質となり得る。
【0008】
上層記録スタックによってもたらされる異常を許容可能なレベルに制限するために光記憶媒体のスタックによって満たされなければならない条件のうちの1つは、上層記録スタックの書込み部と非書込み部とを透過する光の位相差の低減である。
【0009】
図1a及び1bは、上層記録スタックUST、RST、及び下層記録スタックSTを有する光記録媒体を示す。下層記録スタックSTの記録層は、レーザビーム4によって記録又は読出しされる。レーザビーム4は、下層記録スタックST上に焦点が合わされる。このレーザビーム4は、波面5、7と、焦点6、8を有する。図1aでは、上層記録スタックUSTは記録されておらず、集束レーザビーム4は、その波面5又は焦点6の異常を示さない。図1bでは、上層記録スタックRSTは、記録データを有し、集束レーザビーム4は、その波面7及びその焦点8において幾らかの異常を示す。
【0010】
2つの記録スタックを有するライトワンスDVD(DVD−R)は、2001年4月13日に公開された特許文献1に開示される。この記録スタックは、いわゆるMIM構造を有し、この構造は、上部の薄い金属記録層Mと、干渉層Iと、別の薄い金属層Mを有する。この提案されている解決策は、波長λを有する集束レーザビームを使用することによって、上層記録スタックの書込みされた部分と書込みされていない部分を透過する光の位相差が、常に10度未満、又は、同等に0.02×λ未満であることを確実にする。これは、記録層を十分に薄くすることによって得られる。例えば、655nmの波長を用いる場合、第1の記録層の屈折率と光学厚さの積に等しい第1の記録層の光学厚さは、13nm未満でなければならない。
【0011】
この解決策の主な欠点は、このような薄い金属記録層の製造は、非常に困難なことである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特願第2001−101709号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、製造するのがより容易である少なくとも2つの記録スタックを有する光記憶媒体を実施する解決策を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この目的は、入射面の下に、厚さdと屈折率nを有する上層記録層を有する上層記録スタックと、少なくとも下層記録スタックとを有する光記憶媒体であって、下層記録スタックは、波長を有して入射面を通り該光記憶媒体に入り、下層記録スタック上に焦点が合わされ、上層記録スタック内を透過する放射ビームによって記録又は読出しされ、上層記録層の記録は、該第1の記録層における記録が行われた領域と記録が行われていない領域との間で光学厚さの偏差Δ(n.d)をもたらし、偏差は、0.03λ乃至0.125λの範囲内にある光記憶媒体によって達成される。
【0015】
本発明では、波長λを有する集束放射ビームを用いると、上層記録層のデータ記録は、下層記録スタックの記録又は読出しが劣化される程度に放射ビームの光学特性を変更しないことを確実にする光記憶媒体が提供される。特に、本発明の光記憶媒体は、放射ビームは、常に0.03λ乃至0.125λの範囲にある局所的波面位相偏差ΔΦで、記録が行われた領域及び記録が行われていない領域を有する上層記録層のゾーンを透過されることを確実にする。上層記録層は、厚さd及び屈折率nを有する。本発明の光記憶媒体では、上層記録層の記録は、光学厚さの変更をもたらす。これは、上層記録層の厚さdと屈折率nの積である。局所的波面位相差ΔΦは、主に、透過における位相差をもたらす上層記録層の光学厚さΔ(n.d)における変化であることを認識することによって推定可能である。従って、以下の式EQが得られる。即ち、
【0016】
【数1】

上層記録層は、例えば、有機染料材料である記録材料を有する。尚、有機染料材料については、データ記録は、屈折率における変化Δn(減少)によって主にもたらされる。従って、式EQは、式EQ1Bに変換される。
【0017】
【数2】

両方の場合において、ΔΦに課される条件は、上層記録層の適切な厚さdを選択することによって満たされる。
【0018】
記録されたデータを有する上層記録層内を透過される波長λを有する収束放射ビームを考慮するに、0.125λのΔΦへの上限は、以下のように導出可能である。マレシャルの基準(Marechal criterion)は、焦点は、局所的波面位相差ΔΦによってもたらされる2乗平均平方根(RMS)波面エラーWeRMS=√|〈W〉−〈W〉|が、0.072λより小さければ、「回折が制限され」たままであると述べている。記録が行われた領域では、記録層の一部xは、マークを有し、一般的に、1/6<x<1/4である。波面が、記録データを有する記録層を透過されるとき、記録されたマークのそれぞれは、そのマークに入射する波面の一部に位相シフトΔΦをもたらす。波面全体に亘って平均化されると、RMS波面エラーは、WeRMS=ΔΦ.√(x−x)となる。
【0019】
最大許容可能なΔΦの保守的な推定は、x=1/4を取ることによって得られ、これは、ΔΦ<0.072λ/√(3/16)、即ち、ΔΦ<0.125λをもたらす。ΔΦの下限は、変調を考慮することによって決定される。変調は、ディスクから来る信号の最大振幅を意味する。信号の変調は、最高信号レベルと最低信号レベルとの間の差として決定され、ディスクから来る最高信号レベルによって正規化される。記録処理によってその屈折率が変化される有機染料材料といった記録材料について、ΔΦが0.03λより小さいと、変調は、記録されたディスクの信頼性のある読出しを可能にするには弱すぎるようになってしまう。
【0020】
上層記録層の光学厚さΔ(n.d)は、0.05λ乃至0.09λの値の範囲内で選択されることが好適であり、最も好適には、0.06λ乃至0.08λの値の範囲内、例えば、0.073λで選択される。何故なら、これらの値は、信号の変調と局所的波面位相偏差との間の最良の妥協点を与えるからである。
【0021】
上述したような局所的波面位相変化についての条件の結果は、本発明の光記憶媒体の上層記録層は、従来技術によるMIM構造において使用される上層記録層ほど薄くする必要がないということである。従って、このような上層記録層は、製造するのが容易である。例えば、上層記録層における記録が行われていない領域において2.2の屈折率を有し、記録が行われた領域において1.6の屈折率を有する有機染料材料を用いることによって、DVDフォーマットを使用する本発明の光記憶媒体、即ち、約655nmの波長を有する放射ビームを用いる光記憶媒体は、28nm<d<115nmの範囲にある上層記録層の厚さdを有さなければならない。
【0022】
本発明の第1の実施例では、上層記録層(L)は、有機染料材料から形成される。薄い金属から形成される上層記録層ではなく有機染料から形成される上層記録層の使用の利点は、有機染料は、記録を達成するために薄い金属膜(少なくとも300−400℃)より低い温度(200−300℃)を必要とするからである。更に、有機染料は、非常に低い熱伝導性を有し、即ち、有機染料は、熱を比較的低い速度で失う。一方で、金属は、高い熱伝導性を有し、従って、熱を高い速度で失う。従って、本発明の第1の実施例による上層記録スタック構造は、MIMスタック構造より低い記録電力を必要とする。例えば、1X速度、即ち、DVDについての3.49m/sの標準速度では、有機染料材料は、一般的に、10mW未満を必要とし、一方で、MIM構造は、12mWを必要とする。従って、上述の上層記録層は、電力消費量が少ない。これは、ポータブル適用には有利である。
【0023】
第2の実施例では、上層記録スタック(SR)は、薄い金属反射層(M)を有する。従来技術において使用する上層記録スタックのMIM構造とは対照的に、本発明の第2の実施例による光記憶媒体では1つの薄い金属層しか使わない。これは、レーザ光のより高い透過を可能にし、つまり、光のより多くの部分が、上層記録スタックを通り、下層の記録スタックに到達可能である。
【0024】
本発明の別の実施例では、この薄い金属層は、銀合金から形成される。一方で、MIM構造は、略純粋な銀を有する。従って、本発明の光記憶媒体によって使用される上層記録スタック構造はより安価である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1a】下層記録層に焦点が合わされ光記憶媒体の非記録上層記録層を通過するレーザビームを示す図である。
【図1b】光記憶媒体の上層記録層を通過する際に下層記録層に焦点が合わされるレーザビームによって生成される波面異常を示す図である。この上層記録層は、記録されたデータを有する。
【図2】本発明のデュアルスタック光記憶媒体の概略的な設計を示す図である。
【図3a】上層記録スタックの詳細な構造を示す図である。
【図3b】上層記録層の空のグルーブ、空のランド、又は記録されたグルーブを透過する光の光路における差を示す図である。
【図4a】シアン有機染料材料の光学定数を波長の関数として示す図である。
【図4b】AZO有機染料材料の光学定数を波長の関数として示す図である。
【図5】屈折率変動及び上層記録層の厚さの積の関数として変調を示す図である。
【図6】部分的に記録された上層記録層を通り開記録層から読出しされるデータのジッタ測定を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明を、添付図面を参照しながら更に説明する。
【0027】
本発明の光記憶媒体を図2に示す。この光記憶媒体は、入射面EFの下に、基板1、上層記録スタックST、スペーサ層2、下層記録スタックST、及び第2の基板3を有する。上層記録スタックSTは、上層記録層Lと、薄い金属反射層Mを有する。下層記録スタックSTは、下層記録層Lと、厚い金属反射層Mを有する。
【0028】
本発明の第1の実施例では、上層記録層Lは、例えば、屈折率nと、記録層Lにおける記録が行われていない部分と記録が行われた部分との間の屈折率の偏差Δnとを有する有機染料から形成される。しかし、これは限定的ではない。何故なら、上層記録層Lは、記録処理がその屈折率における変化に基づく任意の記録材料からも同様に形成され得るからである。
【0029】
尚、本発明のこの実施例では、記録スタックは、1つの記録層Lと、1つの薄い金属層Mだけを有するが、本発明は更に、より複雑な記録スタックにも適用される。
【0030】
上述した有機染料材料は、ライトワンスデータ記録を可能にする。何故なら、有機染料材料は、記録処理によって、データ記録を繰り返すことができないような方法で劣化されるからである。従って、本発明の第1の実施例は、ライトワンス光記憶媒体に係る。しかし、本発明は、上層記録層がリライタブル材料から形成され、データ記録は、このリライタブル材料の光学厚さにおける変化を引き起こすリライタブル光記憶媒体も関係する。
【0031】
図3aは、本発明の第1の実施例の上層記録スタックSTの構造を示す。有機染料材料は、例えば、AZO又はシアニン染料である。上層記録層Lは、透明の予めグルーブの付けられた基板1に付けられる。基板1は、0.30ミリメートル乃至1.2ミリメートルの範囲内にあることが好適である厚さ値を有し、例えば、0.575ミリメートルの厚さ値を有する。尚、0.56ミリメートル乃至0.60ミリメートルのより小さい範囲の認可された厚さ値が、DVDには使用されることが好適である。
【0032】
上層記録層Lは、グルーブGと、ランドLを有する。グルーブGは、例えば、160ナノメートルの深度10と、320ナノメートルの幅15を有する。トラックピッチ19とも称する2つのグルーブ間の距離は、740ナノメートルであることが好適である。上層記録層Lは、通常、少なくとも2つの異なる厚さ値dを有し、この厚さは、例えば、60、80、又は100ナノメートル(上限は、115ナノメートル)であるグルーブでの厚さ13と、15、25、又は40ナノメートルのランドでの厚さ14である。薄い金属層Mは、5ナノメートル乃至25ナノメートルの範囲であることが好適である厚さ値12を有し、例えば、12ナノメートルである。矢印6は、光記憶媒体上に記録する及び光記憶媒体から読出しするために使用される集束レーザビームの方向と位置を示す。記録可能DVDについては、集束レーザビームは、約655ナノメートルである波長λと、0.65である開口数NAを有する。透明スペーサ層2は、集束放射ビームの焦点の深度より実質的に大きい深度値を有し、これは、0.03ミリメートル乃至0.07ミリメートルの範囲にあることが好適であり、より好適には、0.05ミリメートルである。
【0033】
本発明の第1の実施例の光ディスクは、以下のように製造され得る。即ち、ポリカーボネート基板1がスタンパによってモールドされ、スタンパによって基板1にグルーブGが形成される。上層記録層Lを形成するための有機染料材料が、例えば、スピンコーティングによって、グルーブが付けられた基板1上に塗布される。次に、薄い金属反射層Mと呼ぶ銀合金から形成された半透明ミラーが、例えば、スパッタリングによって塗布される。薄い金属層Mの上には、スペーサ層2が、UV硬化可能ラッカーを塗布することによって製造される。基板1のグルーブGは、スタンパ(例えば、ゼオノア(Zeonor))を押すことによってラッカー内で複写される。ラッカーは次に、それを硬化させるためにUVが照射される。スペーサ層2のグルーブの上には、新しい染料に基づいた記録層Lが塗布される。次に、厚い金属反射層Mが塗布される。光ディスクは、ダミー基板3を厚い金属層の背面に糊で付けることによって仕上げられる。
【0034】
有機染料から形成される上層記録層の使用の利点は、有機染料は、スピンコーティングで塗布可能である点であり、一方で、MIM構造は、干渉層及び薄い金属記録層のために追加のスパッタリング堆積段階を必要とする。スピンコーティングは、スパッタリングより実施するのが容易である。従って、本発明の光記憶媒体の製造方法は、より安価である。
【0035】
尚、上述した製造方法は、デュアルスタック光媒体に関連するが、当業者は、マルチスタック光媒体用の同様の方法を導き出すことが可能であるべきである。
【0036】
図3bは、空のグルーブ20、ランド21、及び記録されたグルーブ22を透過する光路長における差を示す。染料に基づいた記録スタックSTの場合、レベリングとも称する第1の記録層Lがグルーブ及びランドを有するという事実は、3つの異なる透過位相をもたらす。これらの位相は、ランド21を通過するときの集束光ビーム24のランドの位相Φと、空のグルーブ20を通過するときの集束光ビーム23の空グルーブの位相ΦGEと、記録されたグルーブ25を通過するときの集束光ビーム25の記録されたグルーブの位相ΦGRである。得られる位相差は、以下の通りである。
【0037】
‐ ΦGE−ΦGR=Δn.d(EQ
ただし、dは、グルーブ深度13であり、Δnは、染料に基づいた記録層の屈折率nの偏差である。
【0038】
‐ ΦGE−Φ=(n−n).(d−d)(EQ
ただしnは、基板1の屈折率であり、dは、ランド深度14である。
【0039】
‐ Φ−ΦGR=Δn.d−(n−n).(d−d)(EQ
式EQは、式EQと同等である。もう1つの点は、0.125.λより小さい位相差が、これら3つの式に必要である点である。しかし、染料に基づいた記録材料では、
【0040】
【数3】

である。従って、最大位相差は、式EQ及びEQによって与えられるということになる。これは、式EQのみが、第1の記録層Lの設計では考慮されればよいということを意味する。
【0041】
図4a及び4bは、波長λの関数として2つのタイプの有機染料材料の光学定数を示す。材料の光学定数は、複素屈折率
【0042】
【数4】

である。本発明の第1の実施例では、655ナノメートルである波長λと、また、約2.3である屈折率の実数部nR1を有するAZO染料か、又は、約2.2である屈折率の実数部nR2を有するシアニン染料が使用される。記録層にデータが記録されると、屈折率は、約1.6に下がる。
【0043】
図5は、屈折率偏差と第1の記録層の厚さの積の関数としての変調を示す。DVDについては、変調は、0.6以上であることが期待される。他の適用では、0.6より下の値も許容可能である。
【0044】
0.06.λ以上の厚さΔn.dを有する第1の記録層Lを選択することは、0.6以上の変調値を保証することが分かった。
【0045】
図6は、部分的に記録された記録層Lを通り第2の記録層Lから読出しされたデータのジッタ測定を示す図である。グレイのバンドは、第1の記録層L上にデータが記録された光ディスクの半径を示す。
【0046】
光ディスクにおいて、データは、ディスク上に記録されたピットの長さ、及び、ピット間にある記録が行われていない領域(スペースと呼ばれる。)の長さで符号化される。尚、マークの実際の記録は、グルーブ内で必ずしも行われず、ランドとも呼ばれるグルーブ間の領域Lにおいて行われ得る。この場合、ガイドグルーブGは、サーボトラッキング手段としてのみ機能し、実際の放射ビーム記録点は、ランド上にある。
【0047】
長さは、所定のチャネルビット長の整数の倍数であるべきである。例えば、所定のチャネルビット長は、デュアル層密度DVDについては、146.7ナノメートルである。そのような長さを正確に記録することはできないので、長さの記録の際に発生したエラーの評価は特に必要となる。
【0048】
このようなエラーの可能な測定は、ジッタによって与えられる。ジッタは、チャネルビット長によって与えられる、ピット及びスペースのリーディングエッジ及びトレイリングエッジの期待又は理想位置についてそれらのエッジの分布の幅として定義される。実験において実際に測定されるのは、期待タイミングに対して読出し時にディスクから来る信号のリーディング及びトレイリングエッジのタイミングエラーにおける分布である。このタイミングは、ビット長と読出し速度との比で与えられる。平均ジッタ曲線30は、本発明の光記憶媒体の第1の記録層Lの記録は、ジッタ値の小さな増加だけを引き起こし、これは、第2の記録層Lの読出しのための状態のほんの小さな劣化に対応する。
【0049】
尚、上述した実施例は制限的ではなく、当業者は、特許請求の範囲から逸脱することなく多くの代替の実施例を設計することが可能であるべきである。請求項において、括弧内の任意の参照符号は、請求項を制限すると解釈すべきではない。「有する」という用語は、請求項に列挙される素子又は段階以外の素子又は段階の存在を排除するものではない。単数形で示される素子は、その素子が複数存在することを排除するものではない。特定の手段が相互に異なる従属項に記載されるというだけで、それらの手段の組み合わせが有利となるよう使用可能ではないということを示すものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機染料材料で作られる上層記録層であり、データの記録が該有機染料材料の光学厚さの変化を生じさせるようにし、28ナノメートル以上115ナノメートル以下の厚さdと屈折率nとを有する上層記録層を有する上層記録スタックと、少なくとも一つの下層記録スタックとを入射面の下に有する、DVDフォーマットを有するライトワンス光記憶媒体であって、
前記下層記録スタックは、波長λで前記入射面を通り該光記憶媒体に入り、前記下層記録スタック上に焦点が合わされ、前記上層記録スタック内を透過される放射ビームによって記録又は読出しされ、
前記上層記録層の記録は、前記上層記録層における記録が行われた領域と記録が行われていない領域との間で光学厚さの偏差Δ(n・d)をもたらし、前記偏差は、0.03λ乃至0.125λの範囲内にあり、
前記波長λは、約655ナノメートルである、
ライトワンス光記憶媒体。
【請求項2】
前記上層記録スタックは、前記上層記録層と前記下層記録スタックとの間に形成される薄い金属反射層を有する請求項1記載のライトワンス光記憶媒体。
【請求項3】
前記下層記録スタックは、有機染料材料を有する下層記録層と、該下層記録層の下に形成される厚い金属反射層とを有する請求項1記載のライトワンス光記憶媒体。
【請求項4】
前記薄い金属反射層は、5ナノメートルより大きく25ナノメートルより小さい厚さを有し、銀合金から形成される請求項2記載のライトワンス光記憶媒体。
【請求項5】
前記入射面の下に、前記入射面と前記上層記録層との間に形成され、0.3ミリメートルより大きく1.2ミリメートルより小さい厚さを有する透明基板を有する請求項1記載のライトワンス光記憶媒体。
【請求項6】
有機染料材料で作られる上層記録層であり、データの記録が該有機染料材料の光学厚さの変化を生じさせるようにする上層記録層と少なくとも一つの下層記録層とを有する、DVDフォーマットを有するライトワンス光記憶媒体を製造する方法であり、該下層記録層が、波長λを有する集束放射ビームによって記録又は読出しされる方法であって、
当該製造方法は、予めグルーブが付けられた半透明基板を形成する段階と、
前記上層記録層の記録が、該上層記録層における記録が行われた領域と記録が行われていない領域との間で光学厚さの偏差をもたらすよう、28ナノメートル以上115ナノメートル以下の厚さdと屈折率nとを有する前記上層記録層を形成するために、前記予めグルーブが付けられた基板上に有機染料をスピンコーティングする段階と、
を有し、
前記偏差は、0.03λ乃至0.125λの範囲内にあり、
前記波長λは、約655ナノメートルである、
製造方法。

【図1a】
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【図1b】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4a】
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【図4b】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−84224(P2012−84224A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−271271(P2011−271271)
【出願日】平成23年12月12日(2011.12.12)
【分割の表示】特願2006−530687(P2006−530687)の分割
【原出願日】平成16年5月17日(2004.5.17)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】