説明

マルチチャンネル信号再生装置

【課題】 テレビ画面とセンターチャンネル定位位置とが異なることに起因する違和感を解消する。
【解決手段】 フロントLチャンネル、フロントRチャンネル、サラウンドLチャンネル及びサラウンドRチャンネル信号を再生するためのスピーカードライバー8〜11と、フロントLチャンネル、フロントRチャンネル、サラウンドLチャンネル及びサラウンドRチャンネル用スピーカードライバー8〜11を互いに定められた位置に取り付ける位置決め部材17、70と、フロントLチャンネル、フロントRチャンネル、サラウンドLチャンネル及びサラウンドRチャンネル用スピーカードライバー8〜11の設置場所とは異なる場所に設置可能とすべく、前記位置決め部材17とは独立して設けられたセンターチャンネル用スピーカードライバー2とからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、DVDや地上波デジタル放送を再生する際に使用されるマルチチャンネル信号再生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
5.1チャンネル又は6.1チャンネルといったマルチチャンネルサラウンド信号を再生する、所謂ホームシアターシステムが一般家庭に普及している。このシステムは、基本的には各チャンネル毎に独立したスピーカーによって各チャンネルの信号を再生する。従って、5.1チャンネル信号の再生の場合、前方にフロントLチャンネル、フロントセンターチャンネル、フロントRチャンネル用のスピーカーを3個、後方にリアLチャンネル、リアRチャンネル用のスピーカーを2個配置する必要がある。更に、低音再生用にサブウーファーもほとんどの場合に必要となる。
【0003】
一方、本出願人は特許文献1に開示されるとおり、5個のスピーカードライバーが一体に取り付けられたスピーカーボックスをリスナー近傍の位置まで移動させることができるスピーカーを提案している。かかるスピーカーを使用することにより、リスナーのリスニングポジションに応じてスピーカーを移動させることにより最適なリスニングポジションで再生音を聴取することが可能となる。
【特許文献1】特開2005−176053号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
リスニングポジション近傍にスピーカーを移動させた場合、センタースピーカーも同様にリスナーの近傍に移動するが、映画のセリフやニュース番組におけるアナウンサーの声など、テレビ画面の中央に定位すべきセンターチャンネルからの再生音がスピーカーの位置の定位するため、テレビ画面とセンターチャンネル定位位置とが異なることに起因する違和感が生じる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上述の課題を解決するために、フロントLチャンネル、フロントRチャンネル、サラウンドLチャンネル及びサラウンドRチャンネル信号を再生するためのスピーカードライバーと、フロントLチャンネル、フロントRチャンネル、サラウンドLチャンネル及びサラウンドRチャンネル用スピーカードライバーを互いに定められた位置に取り付ける位置決め部材と、フロントLチャンネル、フロントRチャンネル、サラウンドLチャンネル及びサラウンドRチャンネル用スピーカードライバーの設置場所とは異なる場所に設置可能とすべく、位置決め部材とは独立して設けられたセンターチャンネル用スピーカードライバーからなる。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、フロントLチャンネル、フロントRチャンネル、サラウンドLチャンネル及びサラウンドRチャンネル信号を再生するためのスピーカードライバー8〜11を備えたスピーカーを任意のリスニングポジションに対して移動した場合においても、センターチャンネル信号を再生するためのスピーカードライバーをテレビの設置場所近傍に配置できるため、映画のセリフやュース番組におけるアナウンサーの声などがテレビ画面の中心に定位し、違和感のない再生音を楽しむことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明による最良の実施形態を、添付図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0008】
以下、本発明の実施例を説明する。図1〜図3は本発明に使用するスピーカー1の正面図、上面図及び底面図である。スピーカー1は合計5個の外径が球形とされた密閉型のスピーカーボックス2〜6から構成され、それぞれのスピーカーボックス2〜6には各1個のスピーカードライバー7〜11が設けられている。各スピーカーボックス2〜6の底部にはそれぞれ台座12〜16が固定され、これら台座12〜16が板状のプレート17に取り付けられている。なお、センターチャンネル用のスピーカーボックス2用の台座12はプレート17に対して取り外し可能とすべく、通常の2個のネジ18、18で取り付けられているが、他のスピーカーボックス3〜6用の台座13〜16はユーザーによって取り外しができないよう、ネジ頭が特殊形状の2個のネジ19、19で固定されている。このプレートにスピーカーボックス3〜6が固定されることにより、それぞれのスピーカードライバー8〜11に対してプレート17が位置決め部材として作用し、互いに定められた位置関係で固定される。
【0009】
図示の集合状態において、フロントLチャンネル用スピーカードライバー8及びフロントRチャンネル用スピーカードライバー9の振動軸は互いに外側を向いているため、各スピーカードライバー8、9からの再生音は互いに反対方向に空間上に放射される。従って、この角度配置により、スピーカードライバー8、9が大きく間隔を空けて配置された状態と同じ効果を有する。もちろんこの角度配置によりスピーカードライバーの振動軸がリスナーに対して正対していないため、特に高域の周波数特性が劣化するという欠点が生じる場合もある。その場合は周知のイコライザ回路で減衰した高域を補えばよい。なお、図1〜3において、各スピーカードライバー7〜11に接続されるスピーカーケーブルは省略する。
【0010】
図4は上述のスピーカードライバー7〜11を駆動するアンプを含むホームシアターシステム40の回路ブロック図である。光学ピックアップ、ターンテーブル等の機構部及び各種サーボ回路やデータ復調回路を備えるDVDドライブ41からのデジタルデータは5.1チャンネルデコーダ42に入力され、フロントL、フロントセンター、フロントR、リアL、リアRチャンネル及びサブウーハーチャンネル信号にそれぞれデコード処理される。フロントL、フロントRおよびフロントセンターチャンネルのそれぞれのデジタル信号は、デジタルアンプ47に入力される。
【0011】
一方、リアL及びリアRチャンネル信号は、マイコン51によって制御されるスイッチ43、44を介して第1のバーチャライザー49に入力される。バーチャライザー49は例えばリアLチャンネル信号をリスナーのフロント側に設置したスピーカーによって再生しても、リスナーの後方左側から再生音が聞こえてくるようなインパルス応答となるフィルター特性を持つフィルターを備えるものである。一般にこのフィルター係数は頭部伝達関数(HRTF)と呼ばれ、畳み込み演算処理が行われることにより、入力された信号は位置情報を持つことになる。このバーチャライザー49自体の構成は当業界においては周知であり、本出願に直接関与するものではないため、その詳述は省略する。バーチャライザー49の出力はスイッチ45、46を介してデジタルアンプ47に入力されている。
【0012】
図4に示すごとく、スイッチ43〜46はそれぞれの固定端子が一方の可動端子に接続することで、5.1チャンネルデコーダ42のリアL及びリアRチャンネル信号は第1のバーチャライザー49によって信号処理された後、デジタルアンプ44に出力される。一方、スイッチ43〜46の固定端子が他方の可動端子に接続することで、5.1チャンネルデコーダ42のリアL及びリアRチャンネル信号は第2のバーチャライザー50によって信号処理された後、デジタルアンプ44に出力される。
【0013】
第1のバーチャライザー49はスピーカー1とリスナーの間の距離が約2mとされたことを前提に各種フィルター特性が調整されており、一方、第2のバーチャライザー50はスピーカー1とリスナーの間の距離が約0.5mとされたことを前提に各種フィルター特性が調整されている。マイコン51によって制御されるスイッチ43〜46は、どちらのバーチャライザー49又は50を使用するかを選択するものである。
【0014】
なお、CDなど2チャンネルソースを再生中においては、5.1チャンネルデコーダ11はフロントLチャンネル信号を出力していた端子にLチャンネル信号を、フロントRチャンネル信号を出力していた端子にRチャンネル信号を、また両チャンネルに含まれる低域信号をサブウーハーチャンネル信号に出力する。
【0015】
デジタルアンプ44によってPWM信号とされた各チャンネルの信号はローパスフィルタ(以下、LPFという)48を通過してアナログ信号とされた後、各スピーカードライバー7〜11及びサブウーファー31に入力される。
【0016】
図5はベース17に各スピーカーボックス2〜6が固定された状態で、テレビ20が設置されたテレビ台21上にスピーカー1が設置され、リスナー22がスピーカー1から約2m離れた位置に着座している状態を示す上面図である。この使用状態においては、デコーダー42のリアLチャンネル、リアRチャンネルがバーチャライザー49に入力されるよう、スイッチ43〜46のそれぞれの可動端子が一方の固定端子に接続される。従って、リアLチャンネル、リアRチャンネル信号はバーチャライザー49によってリスナー30がスピーカー1から2m離れた位置にいることを前提としたHTRFによる演算処理が施されるため、リスナー30の前方にリアLチャンネル、リアRチャンネル信号を再生するスピーカードライバー10、11が位置しても、リスナー61の後方に音像を定位させることが可能となる。
【0017】
一方、リスナー30がテレビ20の正面ではない位置でスピーカー1からの再生音を聴取する場合、スクリュー18を外してベース17からセンターチャンネル用スピーカーボックス2を取り外し、このスピーカーボックス2をテレビ台21における図5に示す位置とほぼ同じ位置に設置する。また、ベース17はリスナー30の正面に正対するよう設置する。この設置状態を図6に示す。
【0018】
図6に示す設置状態においては図4に示すスイッチ43〜46の可動端子を図示に示す位置ではなく、他方の固定端子に接続し、バーチャライザー50を使用する。これにより、使用するHRTFはリスナー30がスピーカー1から約50cm離間した位置にあることを前提とした各種フィルター特性が選択される。なお、スピーカー1からの再生音はリスナー30の耳に直接入ってくる直接音と、壁や天井で反射した後で入ってくる反射音の2種類があり、一般的に反射音が多い場合、音像定位が不明瞭になる。しかしながら、スピーカー1はリスナー30のすぐ近くに設置されるため、リスナー30の耳に直接音が入る割合が多くなるため、明確な音像定位が得られる。
【0019】
一方、センターチャンネル用スピーカーボックス2はテレビ20の画面中央に位置するため、映画のセリフやニュース番組におけるアナウンサーの声がテレビ20の画面中心に定位する。従って、スピーカーボックス2を取り外した後、スピーカー1を任意の位置に移動しても、本来、テレビ20の画面中心に定位する音像が移動しないため、違和感を生じることがない。
【実施例2】
【0020】
以下、本発明の第2の実施例を示す。第1の実施例においては、フロントLチャンネル、フロントRチャンネル、サラウンドLチャンネル及びサラウンドRチャンネルスピーカーボックス3〜6がそれぞれ独立していたが、第2の実施例においてはスピーカーボックスが一体に形成されている。図7はスピーカーボックス60の上面図であり、4個の密閉型のエンクロージャー61〜64が一体的に設けられている。このため、スピーカーボックス60が各スピーカードライバー8〜11の位置を定められた位置関係とする位置決め部材として作用する。
【0021】
フロントLチャンネル用スピーカードライバー8及びRチャンネル用スピーカードライバー9の振動軸は、互いに背中合わせとなるようスピーカー1に設けられている。従って、フロントLチャンネル用スピーカードライバー8及びフロントRチャンネル用スピーカードライバー9の振動軸は互いに180度の角度とされているため、各スピーカードライバー57、58からの再生音は互いに反対方向に空間上に放射される。これにより、スピーカードライバー8、9の間隔が短くてもステレオイメージが狭くなることはない。
【0022】
リアLチャンネル信号及びリアRチャンネル信号を再生するバーチャライザー用スピーカードライバー10、11は、フロントLチャンネル用スピーカードライバー8及びフロントRチャンネル用スピーカードライバー9の振動軸に対してそれぞれ30度、リスナー側に向けられた状態でエンクロージャー62、63に設けられている。なお、65はスピーカーボックス60内を4個のエンクロージャー61〜64に分離するための隔壁、66は各スピーカードライバー8〜11に接続されるスピーカーケーブルである。
【0023】
図8はセンターチャンネル用スピーカードライバー7が取り付けられた密閉型のスピーカーボックス70であり、第1の実施例と同様、このスピーカーボックス70をテレビの画面近傍に配置し、またスピーカーボックス60はリスナー30の近傍に設置するが、このとき、フロントLチャンネル用スピーカードライバー8及びRチャンネル用スピーカードライバー9の振動軸がリスナーに対してそれぞれ90度となるよう設置する。またこの第2の実施例においては、常にスピーカーボックス60がリスナー30の近傍に設置されるため、図4におけるバーチャライザー49、59を切り換え使用する必要はなく、例えばスピーカーボックス70からリスナー30までの距離が50cmとした場合に最適なフィルター特性となるようなバーチャラーザーを1個用意すればよい。
【0024】
なお、本発明は上述の実施例に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の態様を取り得る。例えば、センターチャンネル用スピーカードラーバー7をテレビ20に組み込むことも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】スピーカー1の正面図。
【図2】スピーカー1の上面図。
【図3】スピーカー1の底面図。
【図4】回路ブロック図。
【図5】スピーカー1の設置状態を示す上面図。
【図6】スピーカー1の設置状態を示す上面図。
【図7】スピーカー60の上面図。
【図8】スピーカー65の上面図。
【符号の説明】
【0026】
1 スピーカー
2〜6 スピーカーボックス
7〜11 スピーカードライバー
17 プレート
20 テレビ
40 ホームシアターシステム
60、70 スピーカーボックス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロントLチャンネル、フロントRチャンネル、サラウンドLチャンネル及びサラウンドRチャンネル信号を再生するためのスピーカードライバーと、
該フロントLチャンネル、フロントRチャンネル、サラウンドLチャンネル及びサラウンドRチャンネル用スピーカードライバーを互いに定められた位置に取り付ける位置決め部材と、
前記フロントLチャンネル、フロントRチャンネル、サラウンドLチャンネル及びサラウンドRチャンネル用スピーカードライバーの設置場所とは異なる場所に設置可能とすべく、前記位置決め部材とは独立して設けられたセンターチャンネル用スピーカードライバーとからなることを特徴とするマルチチャンネル信号再生装置。
【請求項2】
前記サラウンドLチャンネル及びサラウンドRチャンネル用スピーカードライバーをリスナー前方に設置した際、該設置場所とは異なる場所に音源を位置させるバーチャライザーを備えたことを特徴とする請求項1に記載のマルチチャンネル信号再生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−294577(P2008−294577A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−135799(P2007−135799)
【出願日】平成19年5月22日(2007.5.22)
【出願人】(398057961)株式会社niro1.com (7)
【Fターム(参考)】