説明

マルチノズル装置及びこれを備えたガス消火システム

【課題】消火ガスの噴出圧力と速度を低減させることなく騒音と乱流を低減できる。
【解決手段】マルチノズル装置23は、ガス配管25bに設けて消火ガスを圧縮して噴出させる主ノズル部30と、主ノズル部30の先端側に接続して先端側に噴出口を有する流路を備えたノズル部35が複数配列されたマルチノズル31とを設ける。マルチノズル31は、主ノズル部30に連通する基部空間と、基部空間に連通して略筒状に形成したほぼ同一長さの複数のノズル部35とを有する。主ノズル部30から噴出した消火ガスはマルチノズル31内の基部空間で膨張し、複数のノズル部35に供給されて各流路で整流されて各噴出口35aから噴出され、騒音を低減させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室内にガスを供給して消火等を行うためのマルチノズル装置及びこのマルチノズル装置を備えたガス消火システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、大型コンピュータやサーバ等の精密機器、或いは各種の通信機器等を備えた通信設備や精密機器を多く設置した半導体製造装置等を備えた部屋やクリーンルーム等では、室内に火災等が発生した場合、機器を保護するために消火を行って機器を保護する。消火の際、水や化学消化剤で消火すると機器に損傷を生じたり故障や誤作動したりするため、消化剤として一般に消火ガスが用いられている。
例えば特許文献1に記載された消火システムでは、窒素ガス、二酸化炭素ガス、ハロゲンガス等の不活性ガスや不燃性ガスからなる消火ガスを室内に噴射して充満させるガス消火設備が用いられている。
このようなガス消火設備は、大型コンピュータや通信機器等の精密機器類が設置された室内での消火に有効である。このガス消火設備においては、短時間のうちに大量の消火ガスを対象室内に充満させることができるように、室内に開口するノズルから高圧の消火ガスを高速で噴出させている。
【0003】
ところで、従来のガス消火システムに用いられるノズルとして、例えば図8に示すものが採用されている。このノズル1は例えば通信機器等を設置した室内に配設され、ガスボンベ等のガス供給源からガス配管2を通して消火ガスが供給されており、ガス配管2の先端にノズル1が取り付けられている。ノズル1にはガス配管2の先端開口を絞り込んで縮径した小径の噴出口(オリフィス)3が形成されている。そして、ガス配管2からノズル1に供給されたガスは噴出口3で圧縮されて外部へ噴出されて膨張し、室内に充満される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−60984号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のガス消火システムでは、迅速な消火のために短時間で大量の消火ガスを噴出させて室内に充満させる必要がある。そのため、ノズル1からのガス噴出速度が非常に高速に設定され衝撃波が生じて騒音が発生する。しかも、ガス配管2内の噴出口3で圧縮されたガスは室内に噴出された直後に噴出口3付近で急激に膨張するため、非常に大きな騒音が発生する。また、噴出口3の近傍において高速で噴出する消火ガスは室内の空気と干渉することで乱流が発生し、消火ガスの円滑な充満を妨げるとともに、この乱流に基づく騒音(いわゆる乱流騒音)が発生することがある。
【0006】
本発明は、このような実情に鑑みて、消火ガスの噴出に起因する乱流と騒音を低減できるようにしたマルチノズル装置及びこれを備えたガス消火システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によるマルチノズル装置は、室内に消火ガスを噴出するマルチノズル装置であって、消火ガスを供給する配管に設けられていて消火ガスを圧縮して噴出させる主ノズル部と、主ノズル部の先端側に設けられていて先端側に噴出口を有する流路を備えたノズル部が複数配列されてなるマルチノズルとを設けたことを特徴とする。
本発明によるマルチノズル装置によれば、配管を通して供給された消火ガスを主ノズル部で圧縮して噴出させることで消火ガスの噴出速度が高くなり衝撃波で騒音が発生するが、この消火ガスをマルチノズルに流入させることで消火ガスの急激な膨張による騒音の発生を抑制すると共に、消火ガスを複数のノズル部の流路に分割して流通させることで整流化させ、各ノズル部の噴出口から室内に噴出する消火ガスの整流効果を高めて騒音と乱流の発生を低減させる。
【0008】
また、マルチノズルには、主ノズル部に連通する膨張室が設けられており、主ノズル部からマルチノズルに噴出された消火ガスが膨張室で膨張させられて、前記複数のノズル部に供給されてなることを特徴とする。
本発明によるマルチノズル装置によれば、消火ガスを主ノズル部で圧縮して噴出させてマルチノズルの膨張室に流入させ、膨張室から複数のノズル部に消火ガスを分割して流通させる。これにより、消火ガスを整流させて騒音と乱流の発生を低減できる。
【0009】
また、複数のノズル部はそれぞれ略筒状に形成されていてほぼ同一長さに形成されていることが好ましい。
これによって主ノズル部から噴出された消火ガスは、マルチノズルの複数のノズル部でそれぞれ略筒状の流路を流通することで整流化を促して、各ノズル部の噴出口から消火ガスが噴出する際に消火ガスの整流効果を高めることができて騒音発生を低減できる。
【0010】
また、複数のノズル部は、流路が異なる長さに設定されていることが好ましい。
複数のノズル部の流路が異なる長さに設定されていて、各噴出口が流路の長手方向に前後した位置に配設されていることで、各噴出口から消火ガスを噴出させる際に発生する騒音の帯域を高音域から低音域まで広い範囲に分散させることができるので、騒音を低減できる。
【0011】
また、複数のノズル部はスプリッターによって複数に分割されて配列形成され、各ノズル部を流通する消火ガスはスプリッターによって整流されるようにしたことが好ましい。
これによって主ノズル部から噴出された消火ガスは、マルチノズルのスプリッターで分割された複数のノズル部における流路をそれぞれ流通することで整流化を促して、各ノズル部の噴出口から消火ガスが噴出する際に消火ガスの整流効果を高めることができて騒音発生を低減できる。
特にスプリッターが断面流線形状に形成されていることで、スプリッターで仕切られたノズル部を流通する消火ガスはスプリッターの流線形状に沿って流れることで整流効果が一層高められ、各ノズル部の噴出口から消火ガスが噴出する際に整流効果を更に高めることができて騒音発生を一層低減できる。
【0012】
本発明によるガス消火システムは、消火ガスの供給源と、供給源から配管を通して供給された消火ガスを室内に噴出させる上述したいずれかに記載されたマルチノズル装置とを備えたことを特徴とする。
本発明によるガス消火システムによれば、供給源から供給された消火ガスがマルチノズル装置によって整流化を促進させられて、各ノズル部の噴出口から噴出することで整流効果を高めることができるので、騒音発生を低減できる。
なお、室内に供給された消火ガスの圧力が過大になった場合に外部に排出させる避圧孔が設けられていると内部圧力の上昇を抑制できて、高圧の消火ガスによる悪影響を与えることを防止できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によるマルチノズル装置とこれを用いたガス消火システムによれば、消火ガスを主ノズル部で圧縮して噴出させると消火ガスの噴出速度が高くなり衝撃波と膨張によって騒音が発生するが、消火ガスをマルチノズルに流入させることで消火ガスの急激な膨張による騒音の発生を抑制すると共に、複数のノズル部の流路に分割して流通させることで整流化させ、各ノズル部の噴出口から噴出する消火ガスの整流効果を高めて騒音と乱流の発生を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態によるガス消火システムを示す要部構成図である。
【図2】図1に示すガス消火システムで用いた第一の実施形態によるマルチノズル装置を示す要部分解斜視図である。
【図3】図2に示すマルチノズル装置の中央縦断面図である。
【図4】本発明の第二の実施形態によるマルチノズル装置を示す要部分解斜視図である。
【図5】図4に示すマルチノズル装置の中央縦断面図である。
【図6】本発明の第三の実施形態によるマルチノズル装置を示す要部分解斜視図である。
【図7】図6に示すマルチノズル装置の中央縦断面図である。
【図8】従来のノズルを示す要部縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態によるガス消火システムとこれに用いたマルチノズル装置について説明する。
図1は本発明の実施形態によるガス消火システムを示すものである。
本実施形態によるガス消火システム10は、図1に示すように、内部に大型コンピュータや通信機器等の各種の精密機器11が設置された施設12と、この施設12内に消火ガスを供給する消火ガス供給機構13とで概略構成されている。施設12において、大型コンピュータや通信機器等の各種精密機器11が設置された部屋15(室)が設けられ、部屋15内でこれら精密機器11が稼働される。
部屋15に設けた床面16の下側には空間からなる床下領域17が設けられ、二重床を構成する。また、部屋15の天井18の上側には空間からなる天井領域19が設けられており、二重天井を構成している。天井領域19と床下領域17は、例えば天井18と床面16の一方の端部に設けた連通路20、20を通して部屋15の空間に連通している。
【0016】
次に、消火ガス供給機構13について説明する。
施設12の一方の側壁12aには、各部屋15、床下領域17,天井領域19内にそれぞれ消火ガスを噴出させるための本実施形態によるマルチノズル装置23がそれぞれ取り付けられている。
消火ガス供給機構13では、例えば高圧状態で消火ガスを貯蔵するガスボンベ等の耐圧容器からなる消火ガス供給源24が供給源として設けられている。消火ガスは、例えば窒素ガス、二酸化炭素ガス、ハロゲンガス等の不活性ガスや不燃性ガスが用いられる。本実施形態では窒素ガスが好適に用いられる。
消火ガス供給源24から延びるガス配管25は例えば3つに分岐されており、これら各分岐管25a、25b、25cは部屋15、床下領域17,天井領域19の側壁12aにそれぞれ設けたマルチノズル装置23に接続されている。
分岐される前のガス配管25には、ガス配管25を開閉制御する制御弁27が設けられているが、これに代えて各分岐管25a,25b,25cに設けられていてもよい。制御弁27は、例えば部屋15内で火災が発生した際、部屋15内に設けた図示しない火災報知器等のセンサーで感知して制御弁27を開放させ、消火ガスを各マルチノズル装置23を通して部屋15、床下領域17,天井領域19内にそれぞれ噴出させるようになっている。
そして、施設12において側壁12aに対向すると共に連通路20を設けた側の側壁12bには避圧口28が設けられている。避圧口28は、部屋15内の消火ガス圧や気圧が過大になった時に外部に圧力を逃がして部屋15の内部圧力を調整するようになっている。これによって、部屋15内に充満する消火ガス圧によって人や各種の精密機器11に悪影響を与えることを防止できる。
【0017】
次に、本発明の第一実施形態としてマルチノズル装置23について図2及び図3により説明する。部屋15、床下領域17,天井領域19に設けた各マルチノズル装置23はいずれも同一構成を有しており、部屋15に設けたマルチノズル装置23で代表して説明する。マルチノズル装置23は分岐管25b(ガス配管25)の先端に設けた主ノズル部30と、その先端側に装着したマルチノズル31とで構成されている。
図2及び図3に示すマルチノズル装置23において、円筒状の分岐管25b(ガス配管25)の先端に設けた主ノズル部30は、例えば先端側に向けて縮径した二段の円筒形状とされ、拡大円筒部30aには分岐管25bが嵌合され、縮径円筒部30bは開口を絞り込んで縮径した小径の噴出口(オリフィス)32が形成されている。
【0018】
マルチノズル31は、基部33と本体34とで概略構成されている。基部33には、例えば略小径円筒状とされていて主ノズル部30の噴出口32を形成した縮径円筒部30bを嵌合する嵌合部33aと、嵌合部33aより拡径された基部空間36とが設けられている。
基部33の先端側に設けた本体34は例えば略角筒形状とされている。本体34には、例えば略角筒状を成す複数のノズル部35が縦横方向に密着して束をなして配列形成されている。各ノズル部35はその基端部が基部空間36にそれぞれ連通しており、基部空間36と嵌合部33aを介して主ノズル30の噴出口32に接続されている。なお、基部空間36は主ノズル部30から噴出した消火ガスが膨張する膨張室を構成する。
マルチノズル31に設けた複数のノズル部35は同一長さ寸法で、その先端の噴出口35aはほぼ面一に形成されている。また、各ノズル部35は角筒形状としたが、六角筒形状や八角筒形状等、任意の多角筒形状を採用できる。或いは円筒形状であってもよく、ノズル部35の断面形状は任意である。
【0019】
そして、主ノズル部30の噴出口32で圧縮され噴出された消火ガスはガスの流れを加速させ、マルチノズル31に流動してその基部空間36で膨張するが、複数のノズル部35で分割されて各ノズル部35の流路を流通して噴出口35aから外部へ噴出される。そのため、基部空間36で消火ガスの膨張が過大になることを抑制して騒音を低減すると共に、複数のノズル部35で消火ガスが分割されると共に各流路を整流されて流動する。そのため、各ノズル部35から噴出される消火ガスは高速で流出し、整流効果を高めて乱流を防止して騒音を低減できる。
【0020】
本実施形態によるマルチノズル31を含むマルチノズル装置23は上述の構成を備えており、次にこのマルチノズル装置23を備えたガス消火システム10の作用を説明する。
施設12内の機器11を備えた部屋15内で火災が発生した場合、これを火災報知器等のセンサーで検知して消火ガス供給機構13の制御弁27に信号入力して開弁させ、消火ガスを消火ガス供給源24からガス配管25を経由して各マルチノズル装置23に供給する。各マルチノズル装置23からそれぞれマルチノズル31を通して天井領域19、部屋15、床下領域17へ消火ガスを噴出して室内に充満させる。
【0021】
即ち、部屋15に設けたマルチノズル装置23では、ガス配管25から分岐管25bを通して消火ガスが主ノズル部30に供給される。主ノズル部30の噴出口32によって消火ガスが圧縮されて噴出口32を通過することで高速に加速して噴射され、マルチノズル31の基部空間36に至ると消火ガスは膨張するが、基部33内に形成された基部空間36によって過大な膨張は抑制される。そして、消火ガスは基部空間36から複数のノズル部35へそれぞれ流入することで分割され、各ノズル部35の直線状の流路を流通して整流されながら外部へ噴出される。
そのため、消火ガスは、主ノズル部30の噴出口32を通過してもマルチノズル31の基部33に形成された基部空間36によって膨張が抑制されることで騒音の発生を抑制する。そして、消火ガスは、マルチノズル31の本体34に設けた複数のノズル部35へ流入することで、基部空間36内の消火ガスが分割されると共に整流されて各噴出口35aから噴出されるから、消火ガスの膨張や乱流や衝撃波に起因する騒音の発生を抑制することができる。
【0022】
そして、消火ガスはマルチノズル31で整流効果を高めて部屋15内へ噴出することで、消火ガスの噴出圧力と速度を維持しながら膨張と(空気との干渉による)乱流の発生とを抑制して大きな騒音の発生を抑制できる。従って、消火ガス噴出時に発生する過大な膨張、乱流、過大な噴出速度による衝撃波の発生等による騒音のエネルギーを抑制できる。
しかも、主ノズル部30からマルチノズル31の複数のノズル部35を通してそれぞれ消火ガスを噴出することで、高い噴出速度を確保して部屋15内に消火ガスを充満させることができる。これによって、部屋15内の火災を速やかに消火して通信機器やコンピュータ等の精密な機器11を保護できる。
【0023】
なお、上述の説明では、部屋15に設けたマルチノズル装置23について述べたが、天井領域19、床下領域17に設けたマルチノズル装置23についても同様な作用により騒音が低減された消火ガスが噴出される。
また、部屋15、天井領域19、床下領域17内に充満した消火ガスによって内部圧力が上昇し、設定圧力を超えると避圧口28が開口して大気に連通させることができる。これによって、施設12の消火ガスを排気して内部圧力を低下させ、作業員や機器11に悪影響を与えない。
【0024】
上述のように、本実施形態によるマルチノズル装置23及びこれを備えたガス消火システム10によれば、火災発生時に、マルチノズル装置23によって施設12内に噴出する消火ガスの膨張、乱流と衝撃波の発生、過大な噴出速度を抑制すると共に複数のノズル部35によって整流させて噴出できるから、騒音と乱流を低減できる。
【0025】
次に本発明の他の実施形態によるマルチノズル装置23について説明するが、上述した実施形態と同一または同様な部材、部分については同一の符号を用いてその説明を省略する。
図4及び図5は本発明の第二実施形態によるマルチノズル装置23を示すものである。本第二実施形態によるマルチノズル装置23におけるマルチノズル38は内部に基部空間36を有する基部33と、その前側に設けられていて複数のノズル部40が配列された本体39とを備えている。そして、これら複数のノズル部40は、例えば略角筒状をなしていて、基端部は基部空間36に連通する同一位置即ち面一に設けられているが、その長さはランダム或いは不等長あり、先端吐出口40aは任意の異なる長さ方向位置に配設されている。
【0026】
そのため、本第二実施形態によるマルチノズル装置23によれば、消火ガスが主ノズル部30からマルチノズル38を通して噴出する際、主ノズル30の噴出口32を通過して速度が増した消火ガスは嵌合部33aを介してマルチノズル38の基部空間36で膨張させられて各ノズル部40を通して噴出されるが、各ノズル部40の長さが相違する。そのため、各ノズル部40から噴出させられる消火ガスは各ノズル部40の長さに応じて発生する騒音の帯域が異なる。比較的長さの長いノズル部40では騒音の発生帯域は低音域であるが、長さの短いノズル部40では比較的高音域の騒音が発生する。
従って、長さが種々相違するノズル部40を複数配列したことで、騒音の発生帯域を分散させることができて高周波帯域でのピーク音圧を低減させることができる。
【0027】
なお、上述の第二実施形態によるマルチノズル装置23では、マルチノズル38における長さの異なるノズル部40をランダムな長さまたは不等長に形成・配列したが、長さの異なるノズル部40の配列は任意であり、長さの同一または近接する複数のノズル部40を一方向に配列させると共にこれに直交する方向にノズル部40の長さを順次変えることで、階段状に配列して構成してもよい(図4参照)。
また、上述の第二実施形態では、各ノズル部40の基端部を基部空間36に連通する同一位置に面一に設けたが、この構成に代えて基端部が面一にそろわないようにランダムな位置に設けてもよい。この場合、先端の開口40aについてもランダムな長さ位置に設けてもよいし、面一に配列させてもよい。
【0028】
上述のように、本第二実施形態によるマルチノズル装置23によれば、主ノズル部30からマルチノズル38へ流入する消火ガスを複数のノズル部40に分割して整流させ、流路長さの異なる複数のノズル部40から噴出させるようにしたから、発生する騒音を高音域から低音域まで分散させて低減できる。
【0029】
図6及び図7は本発明の第三実施形態によるマルチノズル装置23を示すものである。
本第三実施形態によるマルチノズル装置23におけるマルチノズル42は、本体43が例えば略直方体箱状に形成されている。マルチノズル42の本体43の基端面43aには主ノズル30の縮径円筒部30bを嵌合させるための略円筒状の嵌合部44が接続されている。
マルチノズル42の本体43には例えば略水平方向に配設された略板状のスプリッター45が垂直方向に所定間隔で複数枚配列され、その各両側部が本体43の対向する側壁43b、43bに固定されている。本体43の基端面43aに対向する先端面は開口46とされ、複数のスプリッター45によって開口46が上下方向に分割されてそれぞれ噴出口46aを構成する。
【0030】
図7に示すマルチノズル42の縦断面図において、本体43内のスプリッター45と嵌合部44を設けた基端面43aとの間は基部空間36とされ、その前方側に形成された複数のスプリッター45によって上下方向に層状に仕切られた複数の幅広の流路はノズル部47を形成する。
ここで、スプリッター45は図7の縦断面で示すように例えば翼型の流線形に形成されており、これによって主ノズル30から噴出された消火ガスがスプリッター45で仕切られたノズル部47で分割されてスプリッター45の表面に沿って流通することで整流させられて噴出口46aから噴出される。
【0031】
本第三実施形態によるマルチノズル装置23は上述の構成を備えているから、消火ガスがガス配管25の分岐管25b(25a、25c)を流通し、主ノズル部30の噴出口32を通して圧縮されて噴出速度が増大して衝撃波が発生する。そして、速度が増した消火ガスはマルチノズル42に流入して拡径して形成された基部空間36内で膨張して騒音が発生する。
更に、消火ガスはマルチノズル42内で基部空間36からスプリッター45で複数の層状に分割されてノズル部47を流動するが、スプリッター45の上下面が流線形に形成されているために整流効果が大きく、消火ガスは層状の整流となって開口46の各噴出口46aから噴出される。消火ガスはスプリッター45で整流化が促進されることで乱流を抑えて騒音が低減される。
そのため、マルチノズル42から室15内に噴出させられる消火ガスは整流化されているから、乱流が抑えられて騒音エネルギーが低減されて騒音の発生を抑制できる。
【0032】
上述のように、本第三実施形態によるマルチノズル装置23によれば、マルチノズル42の本体43内に流入して小さく膨張させられた消火ガスが、複数のスプリッター45で層状に分割させられた複数のノズル部47を流通する際にスプリッター45によって整流化が促進させられて消火ガスが噴出し、主ノズル部30において膨張、乱流、衝撃波によって発生する騒音を抑制できる。
【0033】
なお、上述の第三実施形態によるマルチノズル42では、スプリッター45を本体43内で水平方向に配設して上下方向に層状をなす複数のノズル部47を配設したが、スプリッター45は必ずしも水平方向に配設する必要はなく、垂直方向に配列させて水平方向に層状をなす複数のノズル部を配列してもよい。また、本体43内のスプリッター45は一方向のみに配列する構成に限定されることなく、例えば格子状に配設して格子状の複数のノズル部47を形成してもよい。
【0034】
上述の各実施形態によるガス消火システム10では、部屋15、天井領域17、床下領域19にそれぞれ騒音を低減させた状態で、消火ガスを噴出して充満させるようにしたが、これに限定されることはない。少なくとも機器11を設けた部屋15にマルチノズル装置23を設けて、騒音を低減させた消火ガスを噴射させて充満できればよい。また、施設12において、二重天井を構成する天井領域17や二重床を構成する床下領域19はなくてもよいことはいうまでもない。
また、ノズル30による消火ガス噴出に起因する騒音発生原因の他に、高速な消火ガス流がガス配管25、25a、25b、25cを通過することによって配管自体に共振が発生してその振動が施設12内の空気中を伝播して騒音発生の一因になっている。このような共振による配管振動を抑制するために配管25、25a、25b、25cの外周面に配管と異なる素材の金属や合成樹脂やゴム等、適宜の材質からなる吸音性能を持つ素材を被覆して吸音性能を付加するようにしてもよい。
【0035】
上述の各実施形態において、ガス消火システムとして、大型コンピュータや通信機器等を配設した部屋15を有する施設12に採用した消火ガス供給機構13について説明したが、本発明によるガス消火システムはこのような施設12に限定されることはなく、適宜の他の施設に適用できることはいうまでもない。例えば、半導体製造装置やその他の埃等を嫌う施設内の装置を機器11として備えたクリーンルーム等に、本発明によるガス消火システム10やマルチノズル31,38,42を備えたマルチノズル装置23を採用してもよい。
【符号の説明】
【0036】
10 ガス消火システム
11 機器
12 施設
13 消火ガス供給機構
15 部屋(室)
23 マルチノズル装置
24 消火ガス供給源
25 ガス配管
25a、25b、25c 分岐管(ガス配管)
30 主ノズル部
31、38、42 マルチノズル
32 噴出口
35、40、47 ノズル部
35a、40a、46a 噴出口
36 基部空間
45 スプリッター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内に消火ガスを噴出するマルチノズル装置であって、
消火ガスを供給する配管に設けられていて消火ガスを圧縮して噴出させる主ノズル部と、
該主ノズル部の先端側に設けられていて先端側に噴出口を有する流路を備えたノズル部が複数配列されてなるマルチノズルと
を設けたことを特徴とするマルチノズル装置。
【請求項2】
前記マルチノズルには、主ノズル部に連通する膨張室が設けられており、主ノズル部からマルチノズルに噴出された消火ガスが膨張室で膨張させられて、前記複数のノズル部に供給されてなることを特徴とする請求項1に記載されたマルチノズル装置。
【請求項3】
前記複数のノズル部はそれぞれ略筒状に形成されていてほぼ同一長さに形成されている請求項1または2に記載されたマルチノズル装置。
【請求項4】
前記複数のノズル部は、流路が異なる長さに設定されている請求項1または2に記載されたマルチノズル装置。
【請求項5】
前記複数のノズル部はスプリッターによって複数に分割されて配列形成され、前記各ノズル部を流通する消火ガスはスプリッターによって整流されるようにした請求項1または2に記載されたマルチノズル装置。
【請求項6】
消火ガスの供給源と、
該供給源から配管を通して供給された消火ガスを室内に噴出させる請求項1乃至5のいずれかに記載された前記マルチノズル装置と
を備えたことを特徴とするガス消火システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−115339(P2011−115339A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−274808(P2009−274808)
【出願日】平成21年12月2日(2009.12.2)
【出願人】(593063161)株式会社NTTファシリティーズ (475)
【Fターム(参考)】