説明

マルチバンドアンテナ及び電子機器

【課題】折り返し構造のマルチバンドアンテナにおいて、任意の2つの周波数帯で共振することである。
【解決手段】マルチバンドアンテナ30は、給電点Pに接したアンテナエレメント部41と、グランドエレメント部42と、を備える。アンテナエレメント部41は、給電点Pに接し第1の周波数で共振する長さを有するポールエレメント411と、ポールエレメント411の先端に接続され、ポールエレメント411とともに第2の周波数で共振するL字型の折り返しエレメント412と、ポールエレメント411に接続され、給電点Pから先端までの長さが第1の周波数で共振する長さであるL字型の追加エレメント413と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチバンドアンテナ及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、無線通信機能を有するハンディターミナル、PDA(Personal Digital Assistant)等の携帯機器が知られている。この携帯機器に搭載される無線通信用のアンテナとして、複数の共振周波数を有するマルチバンドアンテナが知られている。
【0003】
また、マルチバンドアンテナとして、2つの共振周波数を有する平行2線アンテナが知られている(例えば、特許文献1参照)。平行2線アンテナは、同じ長さの2つの放射導体を折り返した形状で近接配置することで2つの共振周波数を持つことができる。
【0004】
また、平行2線アンテナよりも構造が簡単なモノポールアンテナをマルチバンドアンテナとして用いる構成が知られている。モノポールアンテナは、半波長ダイポールアンテナの2つのアンテナエレメントの片側をグランドにした構成を有する。
【0005】
図26に、従来のモノポールアンテナ80の構成を示す。図26に示すように、モノポールアンテナ80は、アンテナエレメント81と、グランド部82と、を備える。アンテナエレメント81とグランド部82との間に給電点Pが配置されている。アンテナエレメント81は、(1/4)λ0(λ0:所定の周波数の波長)の長さを有し、λ0に対応する周波数f0と、その3倍の周波数3f0で共振する。このため、モノポールアンテナは、周波数f0,3f0の2つで共振するマルチバンドアンテナとして機能する。
【0006】
また、1本のアンテナエレメントの先端を折り返した折り返し構造のモノポールアンテナが知られている(例えば、特許文献2参照)。この折り返し構造のモノポールアンテナは、折り返し部分の相互作用により、周波数f0より高い周波数と、周波数3f0より小さい周波数とで共振する。
【0007】
また、携帯機器の無線通信方式として、無線LAN方式が知られている。無線LAN方式の規格は、周波数帯が2.4GHz帯の802.11b/gと、周波数帯が5GHz帯の802.11aと、がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−124355号公報
【特許文献2】特開2001−223519号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、従来の折り返し構造のモノポールアンテナは、無線LAN通信の2つの周波数帯で共振するマルチバンドアンテナに適用できなかった。具体的には、折り返し構造のモノポールアンテナにおいて、周波数f0に対応する共振周波数を2.45[GHz]に合わせるようにアンテナエレメントの長さを調整すると、周波数3f0に対応する共振周波数が7.38[GHz]付近となった。
【0010】
802.11b/gの2.4GHz帯の必要周波数帯は、2.4〜2.5[GHz]である。また、802.11aの5GHz帯の必要周波数帯は、5.18〜5.7[GHz]である。このため、折り返し構造のモノポールアンテナでは、当該モノポールアンテナを筐体へ組み込んだときの周波数のずれを考慮しても、無線LAN通信の2つの必要周波数帯を満たす共振周波数が得られなかった。
【0011】
本発明の課題は、折り返し構造のマルチバンドアンテナにおいて、任意の2つの周波数帯で共振することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明のマルチバンドアンテナは、
給電点で給電されるアンテナエレメント部と、
前記給電点のグランドに接続されたグランドエレメント部と、を備え、
前記アンテナエレメント部は、
前記給電点を含み第1の周波数で共振する長さを有するポールエレメントと、
前記ポールエレメントの先端に接続され、前記ポールエレメントとともに第2の周波数で共振するL字型の折り返しエレメントと、
前記ポールエレメントに接続され、前記給電点から先端までの長さが前記第1の周波数で共振する長さであるL字型の追加エレメントと、を備える。
【0013】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のマルチバンドアンテナにおいて、
前記追加エレメントは、前記ポールエレメントに平行な第1のエレメントと、前記ポールエレメントに垂直な第2のエレメントと、を備え、
前記第1のエレメントの長さの調整により、前記第1の周波数の共振の深さが調整され、
前記給電点からの前記追加エレメント及び前記ポールエレメントの接続点までの長さの調整により、前記第1の周波数が調整されている。
【0014】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のマルチバンドアンテナにおいて、
前記グランドエレメント部は、矩形のグランドエレメントを備える。
【0015】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載のマルチバンドアンテナにおいて、
前記グランドエレメントは、前記第1の周波数で共振する長さの辺と、前記第2の周波数で共振する長さの辺と、を有する。
【0016】
請求項5に記載の発明は、請求項3に記載のマルチバンドアンテナにおいて、
前記グランドエレメント部は、前記グランドエレメントに接続され、当該グランドエレメントの周囲部分に対向する位置に配置されたスパイラルエレメントを備える。
【0017】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載のマルチバンドアンテナにおいて、
前記追加エレメントの先端から、前記ポールエレメント、前記給電点、前記グランドエレメントを介した前記スパイラルエレメントの先端までの長さが、前記第1の周波数及び前記第2の周波数に共振する長さである。
【0018】
請求項7に記載の発明は、請求項3に記載のマルチバンドアンテナにおいて、
前記グランドエレメント部は、前記グランドエレメントに接続され、当該グランドエレメントに対向する位置に配置されたグランドアンテナエレメント部を備え、
前記グランドアンテナエレメント部は、前記アンテナエレメント部と同じ形状を有し且つ前記アンテナエレメント部の延在方向と垂直な延在方向を有する。
【0019】
請求項8に記載の発明の電子機器は、
請求項1から7のいずれか一項に記載のマルチバンドアンテナと、
前記マルチバンドアンテナを介して外部機器と無線通信する無線通信部と、
前記無線通信部を制御する制御部と、
を備える。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、折り返し構造のマルチバンドアンテナにおいて、任意の2つの周波数帯で共振できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】(a)は、本発明の実施の形態のハンディターミナルの正面図である。(b)は、ハンディターミナルの側面図である。(c)は、ハンディターミナルの背面図である。
【図2】ケースを外した状態のハンディターミナルの背面図である。
【図3】ハンディターミナルの機能構成を示すブロック図である。
【図4】実施の形態のマルチバンドアンテナの平面図である。
【図5】実施の形態のマルチバンドアンテナの斜視図である。
【図6】実施の形態のマルチバンドアンテナと同軸ケーブルとの接続構成を示す図である。
【図7】マルチバンドアンテナの断面構成を示す図である。
【図8】実施の形態のマルチバンドアンテナの各部の長さを示す図である。
【図9】第1のパラメータを変化させた場合の実施の形態のマルチバンドアンテナ単体の周波数に対するSパラメータを示す図である。
【図10】第2のパラメータを変化させた場合の実施の形態のマルチバンドアンテナ単体の周波数に対するSパラメータを示す図である。
【図11】実施の形態のマルチバンドアンテナ単体の周波数に対するVSWR(Voltage Standing Wave Ratio)を示す。
【図12】実施の形態の筐体取り付け状態でのマルチバンドアンテナの周波数に対するVSWRを示す図である。
【図13】(a)は、実施の形態の筐体取り付け状態で第1のパラメータを14.7[mm]としたマルチバンドアンテナの周波数に対するVSWRを示す図である。(b)は、実施の形態の筐体取り付け状態で第1のパラメータを15.7[mm]としたマルチバンドアンテナの周波数に対するVSWRを示す図である。
【図14】(a)は、実施の形態の筐体取り付け状態で第1のパラメータを16.7[mm]としたマルチバンドアンテナの周波数に対するVSWRを示す図である。(b)は、実施の形態の筐体取り付け状態で第1のパラメータを17.7[mm]としたマルチバンドアンテナの周波数に対するVSWRを示す図である。
【図15】実施の形態のハンディターミナルを手に持った状態のマルチバンドアンテナの周波数に対するVSWRを示す図である。
【図16】(a)は、第1の変形例のマルチバンドアンテナの正面図である。(b)は、第1の変形例のマルチバンドアンテナの背面図である。
【図17】第1の変形例のマルチバンドアンテナの斜視図である。
【図18】5[GHz]の共振状態での第1の変形例のマルチバンドアンテナの電流の流れの分布を示す図である。
【図19】5[GHz]の共振状態での第1の変形例のマルチバンドアンテナの直線上の電流の流れの分布を示す図である。
【図20】2.5[GHz]の共振状態での第1の変形例のマルチバンドアンテナの電流の流れの分布を示す図である。
【図21】2.5[GHz]の共振状態での第1の変形例のマルチバンドアンテナの直線上の電流の流れの分布を示す図である。
【図22】(a)は、2.5GHz帯の周波数での第1の変形例のマルチバンドアンテナの電流量の分布を示す図である。(b)は、5GHz帯の周波数での第1の変形例のマルチバンドアンテナの電流量の分布を示す図である。
【図23】第1の変形例の筐体取り付け状態のマルチバンドアンテナの周波数に対するVSWRを示す図である。
【図24】(a)は、第2の変形例のマルチバンドアンテナの正面図である。(b)は、第2の変形例のマルチバンドアンテナの背面図である。
【図25】第2の変形例のマルチバンドアンテナの斜視図である。
【図26】従来のモノポールアンテナの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面を参照して本発明に係る好適な実施の形態、その第1、第2の変形例を順に詳細に説明する。なお、本発明は、図示例に限定されるものではない。
【0023】
(実施の形態)
図1〜図15を参照して本発明に係る実施の形態を説明する。先ず、図1〜図3を参照して本実施の形態のハンディターミナル1の装置構成を説明する。図1(a)に、本実施の形態のハンディターミナル1の正面構成を示す。図1(b)に、ハンディターミナル1の側面構成を示す。図1(c)に、ハンディターミナル1の背面構成を示す。図2に、ケース2Bを外した状態のハンディターミナル1の背面構成を示す。図3に、ハンディターミナル1の機能構成を示す。
【0024】
本実施の形態の電子機器としてのハンディターミナル1は、ユーザ操作による情報の入力、情報の記憶、バーコードのスキャン等の機能を有する携帯機器である。また、ハンディターミナル1は、無線LAN(Local Area Network)方式によりアクセスポイントを介して外部機器と通信を行う機能を有する。
【0025】
図1(a)に示すように、ハンディターミナル1は、正面側のケース2Aに、表示部14、各種キー12A等を備える。また、ハンディターミナル1は、ケース2Aの先端にスキャナ部19を備える。また、ハンディターミナル1は、図1(b)、図1(c)に示すように、背面側のケース2Bの両側面に、トリガキー12Bを備える。また、ハンディターミナル1は、ケース2A,2Bの内部に、マルチバンドアンテナ30を備える。
【0026】
各種キー12Aは、数字等の文字入力キー、各種機能キー、スキャナ部19の光照射及びバーコードスキャンのトリガ操作入力を受け付けるトリガキー等である。トリガキー12Bは、各種キー12Aのトリガキーと同様に、スキャナ部19のトリガキーである。スキャナ部19は、レーザ光等の光をバーコードに照射し、その反射光を受光及び二値化することにより、バーコードのデータを読み取る部品である。
【0027】
図2に示すように、ハンディターミナル1は、回路基板3を内蔵する。マルチバンドアンテナ30は、回路基板3上に設けられた無線LAN通信用モジュールに、同軸ケーブル70を介して接続されている。マルチバンドアンテナ30は、無線LAN通信の規格の802.11b/gの2.4GHz帯と、802.11aの5GHz帯と、の両方の周波数帯で通信が可能なマルチバンドアンテナである。
【0028】
図3に示すように、ハンディターミナル1は、CPU(Central Processing Unit)11と、操作部12と、RAM(Random Access Memory)13と、表示部14と、ROM(Read Only Memory)15と、マルチバンドアンテナ30と、無線通信部16と、フラッシュメモリ17と、I/F(InterFace)部18と、スキャナ部19と、電源部20と、を備える。CPU11、操作部12、RAM13、表示部14、ROM15、無線通信部16、フラッシュメモリ17、I/F部18、スキャナ部19は、バス21を介して接続されている。
【0029】
CPU11は、ハンディターミナル1の各部を制御する。CPU11は、ROM15に記憶されているシステムプログラム及び各種アプリケーションプログラムの中から指定されたプログラムをRAM13に展開し、RAM13に展開されたプログラムとの協働で、各種処理を実行する。
【0030】
CPU11は、各種プログラムとの協働により、操作部12を介する操作情報の入力を受け付け、ROM15から各種情報を読み出し、フラッシュメモリ17に各種情報の読み書きを行う。また、CPU11は、無線通信部16及びマルチバンドアンテナ30により、無線LAN方式でアクセスポイントを介して外部機器と通信を行い、スキャナ部19によりバーコードのデータを読み取り、I/F部18を介して外部機器と有線通信を行う。
【0031】
操作部12は、各種キー12A、トリガキー12Bを含み、操作者から押下入力された各キーの操作信号をCPU11に出力する。また、操作部12は、表示部14と一体的に設けられたタッチパネルのタッチパッドを含む構成としてもよい。
【0032】
RAM13は、情報を一時的に格納する揮発性のメモリであり、実行される各種プログラムやこれら各種プログラムに係るデータ等を格納するワークエリアを有する。表示部14は、LCD(Liquid Crystal Display)、ELD(ElectroLuminescent Display)等で構成され、CPU11からの表示信号に従って各種表示を行う。
【0033】
ROM15は、各種プログラム、各種データが読み出し専用に記憶される半導体メモリである。
【0034】
無線通信部16は、マルチバンドアンテナ30と接続され、マルチバンドアンテナ30を介して無線LAN通信方式によりアクセスポイントと情報の送受信を行う。無線通信部16は、変調部、復調部、信号処理部等を有する。アクセスポイントは、外部機器とハンディターミナル1との間の通信の中継を行う。つまり、ハンディターミナル1は、無線通信部16及びマルチバンドアンテナ30により、アクセスポイントに接続された外部機器と通信を行うことができる。
【0035】
フラッシュメモリ17は、各種データ等の情報が読み出し及び書き込み可能な半導体メモリである。
【0036】
I/F部18は、通信ケーブルを介して外部機器と有線接続され、この外部機器と情報を送受信する有線通信部である。
【0037】
スキャナ部19は、レーザ光等の発光部、受光部、ゲイン回路、二値化回路等を備える。スキャナ部19において、発光部から出射された光がバーコードに照射され、その反射光が受光部により受光されて電気信号に変換され、その電気信号がゲイン回路により増幅され、二値化回路により白黒のバーコードイメージのデータに変換される。このように、スキャナ部19は、バーコードイメージを読み取り、そのバーコードイメージのデータをCPU11に出力する。
【0038】
電源部20は、2次電池等で構成され、ハンディターミナル1の各部に電源供給を行う。
【0039】
次いで、図4〜図7を参照して、マルチバンドアンテナ30の装置構成を説明する。図4に、マルチバンドアンテナ30の平面構成を示す。図5に、マルチバンドアンテナ30の斜視構成を示す。図6に、マルチバンドアンテナ30と同軸ケーブル70との接続構成を示す。図7に、マルチバンドアンテナ30の断面構成を示す。
【0040】
図4及び図5に示すように、マルチバンドアンテナ30は、導体部40と、フィルム部50A,50Bと、を備える。但し、図5において、フィルム部50A,50Bは省略されている。平面状の導体部40の上側にフィルム部50Aが貼られ、導体部40の下側にフィルム部50Bが貼られている。フィルム部50A,50Bは、FPC(Flexible Print Circuit)のフィルムであり、ポリイミド等の絶縁体により構成されている。
【0041】
導体部40は、銅箔等の金属の導体からなる。導体部40は、アンテナエレメント部41と、グランドエレメント部42と、を有する。
【0042】
アンテナエレメント部41は、ポールエレメント411と、折り返しエレメント412と、追加エレメント413と、を有する。ポールエレメント411は、直線で帯状のアンテナエレメントであり、グランドエレメント部42の上辺に所定距離離間して垂直方向に配置されている。
【0043】
折り返しエレメント412は、L字型で帯状のアンテナエレメントであり、ポールエレメント411の先端に接続されている。折り返しエレメント412の接続部分は、ポールエレメント411の延在方向と垂直に配置されている。折り返しエレメント412により、ポールエレメント411が180度折り返されている。また、折り返しエレメント412の先端は、その延在方向に対しほぼ45°の切れ込みが入れられている。
【0044】
追加エレメント413は、L字型で帯状のアンテナエレメントであり、ポールエレメント411に接続されている。追加エレメント413のうち、ポールエレメント411の延在方向に平行に配置された部分を第1のエレメントとしてのエレメント4131とし、ポールエレメント411の延在方向に垂直に配置された部分を第2のエレメントとしてのエレメント4132とする。
【0045】
グランドエレメント部42は、グランドエレメント421を有する。グランドエレメント421は、長方形のエレメントである。
【0046】
図5に示すように、マルチバンドアンテナ30は、離間部60を介して回路基板3に取り付けられている。離間部60は、スポンジ状等の絶縁体で構成されている。例えば、離間部60の厚さを5[mm]にとる。
【0047】
次いで、図6を参照して、給電点Pにおけるマルチバンドアンテナ30と同軸ケーブル70との接続を説明する。但し、図6上、フィルム部50A,50Bが省略されている。
【0048】
同軸ケーブル70は、断面(延在方向に垂直な面)の中心から外側へ、銅線等の芯線71、ポリエチレン等の絶縁体72、網状の銅線等の外部導体73、絶縁体としての保護被覆部74、を順に同心円状に備える。同軸ケーブル70の一端の芯線71が、ポールエレメント411とハンダ付けにより接続されている。同じ一端の外部導体73が、グランドエレメント421とハンダ付けにより接続されている。この同軸ケーブル70と、導体部40との接続部分を給電点Pとする。
【0049】
フィルム部50Aには、予め上記ハンダ付け部分に対応する位置に穴部が開けられている。従って、フィルム部50Aが貼り付けられた導体部40に、上記穴部を介して同軸ケーブル70がハンダ付けされる。また、同軸ケーブル70の他端は、無線通信部16(の無線LAN通信用モジュール)に接続されている。無線通信部16(の無線LAN通信用モジュール)から同軸ケーブル70を介して、マルチバンドアンテナ30の給電点Pに高周波電力が給電される。
【0050】
また、図7に示すように、マルチバンドアンテナ30の端部において、導体部40よりもフィルム部50A,50Bが大きくとられており、その端部のフィルム部50A,50Bが貼り合わされている。このため、導体部40が露出することなく、外部部材と導体部40との接触によるマルチバンドアンテナ30のアンテナ特性の影響を低減できる。
【0051】
次に、図8〜図15を参照して、マルチバンドアンテナ30の特性を説明する。図8〜図11を参照して、マルチバンドアンテナ30単体(ハンディターミナル1の筐体に取り付けていない状態)の特性を説明する。図8に、マルチバンドアンテナ30の各部の長さを示す。図9に、パラメータP1を変化させた場合のマルチバンドアンテナ30単体の周波数に対するSパラメータを示す。図10に、パラメータP2を変化させた場合のマルチバンドアンテナ30単体の周波数に対するSパラメータを示す。図11に、マルチバンドアンテナ30単体の周波数に対するVSWRを示す。
【0052】
先ず、図8を参照してマルチバンドアンテナ30の各部の長さを説明する。図8に示すように、マルチバンドアンテナ30において、ポールエレメント411の延在方向の長さを、長さL1とする。また、追加エレメント413の長さ(エレメント4131,4132の長さ)と、ポールエレメント411のうち追加エレメント413との接続点から給電点Pまでの長さとの和を、長さL2とする。また、グランドエレメント421の長手方向の長さを、長さL3とする。また、グランドエレメント421の短手方向の長さを、長さL4とする。
【0053】
さらに、エレメント4131の延在方向の長さを、パラメータP1とする。また、ポールエレメント411と追加エレメント413との接続点から給電点Pまでのポールエレメント411の延在方向の長さを、パラメータP2とする。
【0054】
また、長さL1を、無線LAN通信の2.4GHz帯(2.4[GHz]〜2.5[GHz])の2.45[GHz]に対応する波長λを用いて、(1/4)λの長さにとっている。モノポールアンテナは、ポールのエレメントの(1/4)λの長さに対応する周波数と、その3倍の周波数とで共振する。このため、ポールエレメント411をモノポールアンテナとみたてて、2.45[GHz]で共振させるためである。この共振周波数を第1の共振周波数とする。
【0055】
しかし、ポールエレメント411は、折り返しエレメント412が接続されているため、2.45[GHz]よりも小さい周波数で共振する。折り返しエレメント412が接続されたポールエレメント411では、無線LAN通信の5GHz帯(5.18[GHz]〜5.7[GHz])で、3倍の共振周波数が得られるように折り返しエレメント412の長さ及び形状が調整されている。この共振周波数を第2の共振周波数とする。
【0056】
また、追加エレメント413をポールエレメント411に接続し、長さL2を、2.45[GHz]に対応する波長λを用いて、(1/4)λの長さにとっている。つまり、マルチバンドアンテナ30は、第1の共振周波数を有する。このため、マルチバンドアンテナ30は、無線LAN通信の2.4GHz帯及び5GHz帯の両方で共振周波数が得られる構成となっている。
【0057】
また、グランドエレメント421の長さL3を、2.45[GHz]に対応する波長λを用いて、(1/4)λの長さにとっており、グランドエレメント421の長さL4を、5GHz帯の周波数に対応する波長λを用いて、(1/4)λの長さにとっている。このため、マルチバンドアンテナ30は、無線LAN通信の2.4GHz帯及び5GHz帯の両方でグランドエレメント421が共振し、より高いゲインが得られる。
【0058】
また、マルチバンドアンテナ30は、ポールエレメント411に折り返しエレメント412を接続しているので、折り返しエレメント412の先端とグランドエレメント421との間のコンデンサ成分が増える。このため、マルチバンドアンテナ30は、第2の共振周波数の帯域が広帯域化したアンテナとなる。
【0059】
次いで、図9に示すように、パラメータP1を変化させてマルチバンドアンテナ30単体の周波数に対するSパラメータのシミュレーションを行った。すると、パラメータP1に応じて、Sパラメータの値(共振の深さ)が変化することが分かった。このため、パラメータP1を変化させることにより、マルチバンドアンテナ30の共振の深さを調整できる。
【0060】
というのは、パラメータP1を変化させることで、ポールエレメント411、折り返しエレメント412、追加エレメント413の重なり部分の長さが変わり、各エレメント間の容量結合及び誘導結合が変化するからである。
【0061】
次いで、図10に示すように、パラメータP2を変化させてマルチバンドアンテナ30単体の周波数に対するSパラメータのシミュレーションを行った。但し、パラメータP2を変化させる場合に追加エレメント413の長さを固定するので、長さL2も変化する。すると、パラメータP1に応じて、第1の共振周波数に対応するSパラメータが変化することが分かった。このため、パラメータP2を変化させることにより、マルチバンドアンテナ30の第1の共振周波数を調整できる。
【0062】
ここで、マルチバンドアンテナ30をハンディターミナル1の筐体に取り付けると、第1及び第2の共振周波数がともに低い方へずれる。このことを考慮し、第1の共振周波数が0.5[GHz]高くなるようマルチバンドアンテナ30が調整されているものとする。図11に示すように、第1の共振周波数が高く調整されたマルチバンドアンテナ30単体の周波数に対するVSWRを測定した。図11において、印▽1〜▽4を記載し、▽1:2.4[GHz]、▽2:2.25[GHz]、▽3:5.18[GHz]、▽4:5.7[GHz]としており、以下のVSWRの図においても同様である。図11では、第1及び第2の共振周波数が高い方にシフトされている。
【0063】
次いで、図12〜図15を参照して、マルチバンドアンテナ30をハンディターミナル1の筐体に取り付けた状態でのマルチバンドアンテナ30の特性を説明する。図12に、筐体取り付け状態でのマルチバンドアンテナ30の周波数に対するVSWRを示す。図13(a)に、筐体取り付け状態でパラメータP1を14.7[mm]としたマルチバンドアンテナ30の周波数に対するVSWRを示す。図13(b)に、筐体取り付け状態でパラメータP1を15.7[mm]としたマルチバンドアンテナ30の周波数に対するVSWRを示す。図14(a)に、筐体取り付け状態でパラメータP1を16.7[mm]としたマルチバンドアンテナ30の周波数に対するVSWRを示す。図14(b)に、筐体取り付け状態でパラメータP1を17.7[mm]としたマルチバンドアンテナ30の周波数に対するVSWRを示す。図15に、ハンディターミナル1を手に持った状態のマルチバンドアンテナ30の周波数に対するVSWRを示す。
【0064】
図12に示すように、図11で第1の共振周波数が高く調整されたマルチバンドアンテナ30をハンディターミナル1の筐体に取り付けた状態でのマルチバンドアンテナ30の周波数に対するVSWRを測定した。筐体取り付け状態でのマルチバンドアンテナ30は、2.4GHz帯と5GHz帯とで共振がとれていることが分かった。
【0065】
次いで、図13(a)、図13(b)、図14(a)、図14(b)に示すように、図11で第1の共振周波数が高く調整されたマルチバンドアンテナ30をハンディターミナル1の筐体に取り付けた状態で、パラメータP1を14.7[mm]、15.7[mm]、16.7[mm]、17.7[mm]に変化させたマルチバンドアンテナ30の周波数に対するVSWRを測定した。筐体取り付け状態で、パラメータP1を変化させた場合に、マルチバンドアンテナ30は、第1共振周波数のVSWRの値(共振の深さ)を調整できた。第1共振周波数のVSWRの値が2.5以下で最も小さいパラメータP1(=15.7[mm])に調整するのが好ましい。
【0066】
次いで、図15に示すように、ハンディターミナル1の筐体取り付け状態で、且つハンディターミナル1の筐体のマルチバンドアンテナ30搭載部分を操作者が手に持った状態のマルチバンドアンテナ30の周波数に対するVSWRを測定した。
【0067】
すると、図12における状態に比べて、図15における手に持った状態のマルチバンドアンテナ30は、第1及び第2の共振周波数が低い周波数にシフトしている。具体的には、第1の共振周波数は、2.45[GHz]から2.3[GHz]にシフトしている。第2の共振周波数は、5.35[GHz]から5.3[GHz]にシフトしている。その第1及び第2の共振周波数のシフト量は、50[MHz]と少なく、そこでのVSWRも2.5以下にあるので、通信性能に問題にならない程度である。なお、マルチバンドアンテナ30は、折り返しエレメント412により、第2の共振周波数が広帯域化したアンテナとなるため、第2の共振周波数がシフトしても、手に持った状態での影響を低減できる。
【0068】
また、図12における状態に比べて、図15における手に持った状態のマルチバンドアンテナ30は、第2の共振周波数の深さが浅くなっている。具体的には、第2の共振周波数のVSWRは、1.45から1.7にシフトしている。その変化後の第2の共振周波数のVSWR(共振の深さ)は、通信性能に問題にならない程度の範囲である。通信性能に問題にならない程度のVSWRとは、2.5以下である。
【0069】
また、図12における状態に比べて、図15における手に持った状態のマルチバンドアンテナ30は、第2の共振周波数の帯域幅が広がっている。具体的には、第2の共振周波数の帯域幅は、450[MHz]から620[MHz]にシフトしている。変化後の第2の共振周波数の帯域幅は、広がるため、通信性能に問題にならない。
【0070】
以上、本実施の形態によれば、マルチバンドアンテナ30は、アンテナエレメント部41と、グランドエレメント部42と、を備える。アンテナエレメント部41のポールエレメント411は、第1の共振周波数(2.4GHz帯の周波数)で共振する(1/4)λの長さを有する。同じく折り返しエレメント412は、ポールエレメント411とともに第2の共振周波数で共振する(第1の共振周波数の3倍が5GHz帯の周波数で共振する)長さを有する。同じく追加エレメント413は、給電点Pから先端までの長さが第1の共振周波数(2.4GHz帯の周波数)で共振する(1/4)λの長さを有する。
【0071】
このため、折り返し構造のマルチバンドアンテナ30において、任意の2つの周波数帯(2.4GHz帯、5GHz帯)で共振できる。また、第2の共振周波数の帯域を広帯域化することができる。
【0072】
また、追加エレメント413は、エレメント4131,4132を備える。エレメント4131の長さのパラメータP1を調整することにより、第1の共振周波数の共振の深さを調整できる。また、給電点Pから、追加エレメント413とポールエレメント411との接続点のまでの長さであるパラメータP2の調整により、第1の共振周波数を調整できる。
【0073】
また、グランドエレメント部42は、矩形のグランドエレメント421を備え、グランドエレメント421が、第1の共振周波数で共振する(1/4)λの長さの辺と、第2の共振周波数で共振する(1/4)λの長さの辺と、を有する。このため、第1及び第2の共振周波数の電波の放射及び受信時のマルチバンドアンテナ30のゲインを高めることができる。
【0074】
また、ハンディターミナル1は、マルチバンドアンテナ30、無線通信部16、CPU11等を備える。このため、折り返し構造のマルチバンドアンテナ30を用いて、任意の2つの周波数帯(2.4GHz帯、5GHz帯)で無線LAN通信を行うことができる。また、ハンディターミナル1のマルチバンドアンテナ30搭載部分を手に持った状態でも、適切な通信性能を得ることができる。
【0075】
(第1の変形例)
図16〜図23を参照して、上記実施の形態の第1の変形例を説明する。先ず、図16(a)、図16(b)及び図17を参照して、本変形例の装置構成を説明する。図16(a)に、本変形例のマルチバンドアンテナ30aの正面構成を示す。図16(b)に、マルチバンドアンテナ30aの背面構成を示す。図17に、マルチバンドアンテナ30aの斜視構成を示す。
【0076】
本変形例の装置構成は、上記実施の形態のハンディターミナル1において、マルチバンドアンテナ30をマルチバンドアンテナ30aに替えた構成を有する。このため、上記実施の形態と同じ部分に同じ符号を付し、マルチバンドアンテナ30aの構成を主として説明する。
【0077】
図16(a)、図16(b)及び図17に示すように、マルチバンドアンテナ30aは、導体部40aと、フィルム部50Aa,50Baと、を備える。但し、図17において、フィルム部50Aa,50Baは省略されている。フィルム部50Aa,50Baは、上記実施の形態のフィルム部50A,50Bと同様の装置構成を有し、導体部40aに貼り合わされ、導体部40aの露出を防いでいる。
【0078】
導体部40aは、銅箔等の金属の導体からなる。導体部40aは、アンテナエレメント部41と、グランドエレメント部42aと、を有する。グランドエレメント部42aは、グランドエレメント421aと、接続エレメント422と、スパイラルエレメント423と、を有する。
【0079】
グランドエレメント421aは、長方形のエレメントである。接続エレメント422は、グランドエレメント421aとスパイラルエレメント423とを接続する帯状のエレメントである。スパイラルエレメント423は、グランドエレメント421aから所定距離離間され、グランドエレメント421aの面と平行に配置された帯状のエレメントである。スパイラルエレメント423は、グランドエレメント421aに対向し且つグランドエレメント421aの周囲部分に対応する位置にスパイラル状に延在している。
【0080】
また、グランドエレメント421aとスパイラルエレメント423との間には、離間部60aが配置されている。離間部60aは、上記実施の形態の離間部60と同様に、スポンジ状等の絶縁体で構成されている。
【0081】
また、図16(a)に示すように、マルチバンドアンテナ30aをハンディターミナル1に取り付け、ハンディターミナル1の正面下方を重力方向に向けた状態でのマルチバンドアンテナ30aのグランドエレメント421aの上辺に平行な方向を水平方向とする。同じ状態で、マルチバンドアンテナ30aのポールエレメント411の延在方向に平行な方向を垂直方向とする。
【0082】
次に、図18〜図23を参照して、マルチバンドアンテナ30aの特性を説明する。図18に、5[GHz]の共振状態でのマルチバンドアンテナ30aの電流の流れの分布を示す。図19に、5[GHz]の共振状態でのマルチバンドアンテナ30aの直線上の電流の流れの分布を示す。図20に、2.5[GHz]の共振状態でのマルチバンドアンテナ30aの電流の流れの分布を示す。図21に、2.5[GHz]の共振状態でのマルチバンドアンテナ30aの直線上の電流の流れの分布を示す。図22(a)に、2.5GHz帯の周波数でのマルチバンドアンテナ30aの電流量の分布を示す。図22(b)に、5GHz帯の周波数でのマルチバンドアンテナ30aの電流量の分布を示す。図23に、筐体取り付け状態のマルチバンドアンテナ30aの周波数に対するVSWRを示す。
【0083】
上記実施の形態のマルチバンドアンテナ30は、逆Lアンテナの変形である。逆Lアンテナは、水平方向の電流から放射される電波が、アンテナエレメントとグランドエレメントとで逆方向であるため、キャンセルされて弱くなり、垂直方向の電流が放射する電波が主となる。
【0084】
ハンディターミナル1は、色々な向きで使用されるので、アクセスポイントの偏波と合わない状況も生じる。また、ハンディターミナル1が使用される室内は、棚や壁等、反射の多い環境であるので、偏波に対応するアンテナであると安定して電波を送受信できるようになる。このため、マルチバンドアンテナ30aに、接続エレメント422、スパイラルエレメント423を設けた。
【0085】
先ず、グランドエレメント部42aの各長さについて説明する。図18に示すように、グランドエレメント421aと接続エレメント422との接続点を点aとする。接続エレメント422とスパイラルエレメント423との接続点を点bとする。そして、スパイラルエレメント423において、点bから先端の点gまでの間の直角部分を順に、点c、点d、点e、点fとする。
【0086】
ここで、2.5[GHz]の周波数の波長λをλ1とし、5[GHz]の周波数の波長λをλ2とする。2.5[GHz]は、無線LAN通信の2.4GHz帯に含まれている。5[GHz]は、無線LAN通信の5GHz帯の範囲の近傍の値である。
【0087】
点aから点cまでの長さを(1/4)λ2=(1/8)λ1にとる。点cから点dまでの長さを(1/4)λ2=(1/8)λ1にとる。点dから点eまでの長さを(1/2)λ2=(1/4)λ1にとる。点eから点fまでの長さを(1/4)λ2=(1/8)λ1にとる。点fから点gまでの長さを(1/4)λ2=(1/8)λ1にとる。このようにして、給電点Pから、点a、点b、点c、点d、点e、点fを順に介した点gまでの長さを、長さL5=(3/2)λ2=(3/4)λ1にとる。
【0088】
マルチバンドアンテナ30aで5[GHz]の周波数の電波を受信した場合に、図18に示すような電流の共振及び電流の方向を示す。点cから点dまでの部分と、点eから点fまでの部分とで電流の向きが逆向きであるため、垂直偏波が打ち消される。逆に、点bから点cまでの部分と、点eから点dまでの部分と、点fから点gまでの部分とで、電流の向きが同じ向きであるため、水平偏波が強めあう。これにより、5[GHz]の周波数の電波を受信する場合に、水平偏波を受信できる。
【0089】
図19に示すように、追加エレメント413の先端から、ポールエレメント411、給電点P(、グランドエレメント421a)、接続エレメント422、スパイラルエレメント423を直線状にすると、その直線上で5[GHz]の周波数の電流で共振されることが分かる。
【0090】
また、マルチバンドアンテナ30aで2.5[GHz]の周波数の電波を受信した場合に、図20に示すような電流の共振及び電流の方向を示す。点cから点dまでの部分と、点eから点fまでの部分とで電流の向きが同じ向きであるため、垂直偏波が強めあう。逆に、点bから点cまでの部分と、点eから点dまでの部分と、点fから点gまでの部分とで、電流の向きが同じ又は逆の向きであるため、水平偏波が少し強めあう。これにより、2.5[GHz]の周波数の電波を受信する場合に、水平偏波を受信できる。
【0091】
図21に示すように、追加エレメント413の先端から、ポールエレメント411、給電点P(、グランドエレメント421a)、接続エレメント422、スパイラルエレメント423を直線状にすると、その直線上で2.5[GHz]の周波数の電流で共振されることが分かる。
【0092】
次いで、図22(a)に示すように、2.4GHz帯の周波数の電波受信時のマルチバンドアンテナ30aの電流量の分布のシミュレーションを行った。図22(a)では、電流量が大きくなるほど白く表されており、電流量が小さくなるほど黒く表されており、以下の電流量の分布の図でも同様である。図22(a)によると、2.4GHz帯の周波数の電波受信時に、接続エレメント422、スパイラルエレメント423に電流が流れていることが確認できる。
【0093】
図22(b)に示すように、5GHz帯の周波数の電波受信時のマルチバンドアンテナ30aの電流量の分布のシミュレーションを行った。図22(b)によると、5GHz帯の周波数の電波受信時に、接続エレメント422、スパイラルエレメント423に電流が流れていることが確認できる。
【0094】
次いで、図23に示すように、マルチバンドアンテナ30aをハンディターミナル1の筐体に取り付けた状態での周波数に対するVSWRを測定した。マルチバンドアンテナ30aは、無線LAN通信の2.4GHz帯と5GHz帯とで十分低いVSWRがとれており、共振がとれていることが分かる。
【0095】
以上、本変形例によれば、グランドエレメント部42aは、グランドエレメントに接続され、当該グランドエレメントの周囲に対向する位置に配置されたスパイラルエレメント423を備える。また、追加エレメント413の先端から、ポールエレメント411、給電点P、グランドエレメント421a、接続エレメント422を順に介したスパイラルエレメント423の先端までの長さが、第1及び第2の周波数に共振する長さである。このため、第1及び第2の共振周波数において、アンテナエレメント部41の主たる偏波方向と垂直な水平方向の偏波の電波の放射及び受信をすることができ、電波の放射及び受信を安定して行うことができる。
【0096】
(第2の変形例)
図24〜図25を参照して、上記実施の形態の第2の変形例を説明する。先ず、図24(a)、図24(b)及び図25を参照して、本変形例の装置構成を説明する。図24(a)に、本変形例のマルチバンドアンテナ30bの正面構成を示す。図24(b)に、マルチバンドアンテナ30bの背面構成を示す。図25に、マルチバンドアンテナ30bの斜視構成を示す。
【0097】
本変形例の装置構成は、上記実施の形態のハンディターミナル1において、マルチバンドアンテナ30をマルチバンドアンテナ30bに替えた構成を有する。このため、上記実施の形態と同じ部分に同じ符号を付し、マルチバンドアンテナ30bの構成を主として説明する。
【0098】
図24(a)、図24(b)及び図25に示すように、マルチバンドアンテナ30bは、導体部40bと、フィルム部50Ab,50Bbと、を備える。但し、図25において、フィルム部50Ab,50Bbは省略されている。フィルム部50Ab,50Bbは、上記実施の形態のフィルム部50A,50Bと同様の装置構成を有し、導体部40bに貼り合わされ、導体部40bの露出を防いでいる。
【0099】
導体部40bは、銅箔等の金属の導体からなる。導体部40bは、アンテナエレメント部41と、グランドエレメント部42bと、を有する。グランドエレメント部42bは、グランドエレメント421bと、接続エレメント424と、グランドアンテナエレメント部425と、を有する。
【0100】
グランドエレメント421bは、長方形のエレメントであり、上記実施の形態のグランドエレメント421と同様の形状を有する。接続エレメント424は、グランドエレメント421bとグランドアンテナエレメント部425とを接続する帯状のエレメントである。
【0101】
グランドアンテナエレメント部425は、グランドエレメント421bに対向する位置に配置され、アンテナエレメント部41と同様の形状を有する。具体的には、グランドアンテナエレメント部425は、ポールエレメント4251と、折り返しエレメント4252と、追加エレメント4253と、を有する。ポールエレメント4251、折り返しエレメント4252、追加エレメント4253は、順に、ポールエレメント411、折り返しエレメント412、追加エレメント413と同様である。
【0102】
また、グランドエレメント421bとグランドアンテナエレメント部425との間には、離間部60bが配置されている。離間部60bは、上記実施の形態の離間部60と同様に、スポンジ状等の絶縁体で構成されている。
【0103】
次いで、マルチバンドアンテナ30aの特性を説明する。上記第1の変形例で説明したように、アンテナエレメント部41は、主に図24(a)に示す垂直方向の電波(垂直偏波)を受信及び放射する。このため、マルチバンドアンテナ30bに、グランドアンテナエレメント部425を設けた。
【0104】
アンテナエレメント部41の延在方向(ポールエレメント411の延在方向)は、垂直方向であり、グランドアンテナエレメント部425の延在方向(ポールエレメント4251の延在方向)は、水平方向である。このため、アンテナエレメント部41とグランドアンテナエレメント部425とは、偏波面が90度異なる。よって、マルチバンドアンテナ30bは、アンテナエレメント部41により垂直偏波を受信(放射)でき、グランドアンテナエレメント部425により水平偏波を受信(放射)できる。
【0105】
以上、本変形例によれば、グランドエレメント部42bは、アンテナエレメント部41と同じ形状を有し且つアンテナエレメント部41の延在方向と垂直な延在方向を有するグランドアンテナエレメント部425を有する。このため、第1及び第2の共振周波数において、アンテナエレメント部41の主たる偏波方向と垂直な水平方向の偏波の電波の放射及び受信をすることができ、電波の放射及び受信を安定して行うことができる。
【0106】
なお、上記実施の形態及び各変形例における記述は、本発明に係るマルチバンドアンテナ及び電子機器の一例であり、これに限定されるものではない。
【0107】
また、上記実施の形態及び各変形例では、無線通信機能を有する電子機器としてハンディターミナルを用いる構成としたが、これに限定されるものではない。無線通信機能を有する電子機器としては、PDA(Personal Digital Assistant)、携帯電話機、PHS(Personal Handyphone System)端末、ネットブック、電子ブックリーダ等、他の電子機器としてもよい。
【0108】
また、上記実施の形態及び各変形例では、マルチバンドアンテナの導体部の両面が2層のフィルム部に貼り合わされている構成としたが、これに限定されるものではない。マルチバンドアンテナの導体部の片面が1層のフィルム部に貼り合わされている構成としてもよい。
【0109】
また、上記実施の形態及び各変形例では、マルチバンドアンテナの無線方式として、2つの通信帯域を有する無線LAN通信方式としたが、これに限定されるものではない。マルチバンドアンテナの無線方式として、他の通信帯域を有する無線通信方式とする構成としてもよい。
【0110】
また、上記各実施の形態及び各変形例におけるマルチバンドアンテナ、ハンディターミナルの各構成要素の細部構成及び細部動作に関しては、本発明の趣旨を逸脱することのない範囲で適宜変更可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0111】
1 ハンディターミナル
2A,2B ケース
11 CPU
12 操作部
12A 各種キー
12B トリガキー
13 RAM
14 表示部
15 ROM
16 無線通信部
17 フラッシュメモリ
18 I/F部
19 スキャナ部
20 電源部
21 バス
30,30a,30b マルチバンドアンテナ
41 アンテナエレメント部
411 ポールエレメント
412 折り返しエレメント
413 追加エレメント
4131,4132 エレメント
42,42a,42b グランドエレメント部
421,421a,421b グランドエレメント
422,424 接続エレメント
423 スパイラルエレメント
425 グランドアンテナエレメント部
4251 ポールエレメント
4252 折り返しエレメント
4253 追加エレメント
50A,50B,50Aa,50Ba,50Ab,50Bb フィルム部
60,60a,60b 離間部
70 同軸ケーブル
71 芯線
72 絶縁体
73 外部導体
74 保護被覆部
80 モノポールアンテナ
81 アンテナエレメント
82 グランド部
P 給電点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
給電点で給電されるアンテナエレメント部と、
前記給電点のグランドに接続されたグランドエレメント部と、を備え、
前記アンテナエレメント部は、
前記給電点を含み第1の周波数で共振する長さを有するポールエレメントと、
前記ポールエレメントの先端に接続され、前記ポールエレメントとともに第2の周波数で共振するL字型の折り返しエレメントと、
前記ポールエレメントに接続され、前記給電点から先端までの長さが前記第1の周波数で共振する長さであるL字型の追加エレメントと、を備えるマルチバンドアンテナ。
【請求項2】
前記追加エレメントは、前記ポールエレメントに平行な第1のエレメントと、前記ポールエレメントに垂直な第2のエレメントと、を備え、
前記第1のエレメントの長さの調整により、前記第1の周波数の共振の深さが調整され、
前記給電点からの前記追加エレメント及び前記ポールエレメントの接続点までの長さの調整により、前記第1の周波数が調整されている請求項1に記載のマルチバンドアンテナ。
【請求項3】
前記グランドエレメント部は、矩形のグランドエレメントを備える請求項1又は2に記載のマルチバンドアンテナ。
【請求項4】
前記グランドエレメントは、前記第1の周波数で共振する長さの辺と、前記第2の周波数で共振する長さの辺と、を有する請求項3に記載のマルチバンドアンテナ。
【請求項5】
前記グランドエレメント部は、前記グランドエレメントに接続され、当該グランドエレメントの周囲部分に対向する位置に配置されたスパイラルエレメントを備える請求項3に記載のマルチバンドアンテナ。
【請求項6】
前記追加エレメントの先端から、前記ポールエレメント、前記給電点、前記グランドエレメントを介した前記スパイラルエレメントの先端までの長さが、前記第1の周波数及び前記第2の周波数に共振する長さである請求項5に記載のマルチバンドアンテナ。
【請求項7】
前記グランドエレメント部は、前記グランドエレメントに接続され、当該グランドエレメントに対向する位置に配置されたグランドアンテナエレメント部を備え、
前記グランドアンテナエレメント部は、前記アンテナエレメント部と同じ形状を有し且つ前記アンテナエレメント部の延在方向と垂直な延在方向を有する請求項3に記載のマルチバンドアンテナ。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載のマルチバンドアンテナと、
前記マルチバンドアンテナを介して外部機器と無線通信する無線通信部と、
前記無線通信部を制御する制御部と、
を備える電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2012−39582(P2012−39582A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−180718(P2010−180718)
【出願日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)