説明

マルチバンドアンテナ装置及びそれを用いた無線通信機器

【課題】 無線通信機器内で、広帯域で使用される複数のアンテナのアイソレーションをはかりつつ、省スペース化したるマルチバンドアンテナ装置並びにそれを用いた無線通信機器を提供する。
【解決手段】第1のアンテナと第2のアンテナとを近接して設け、前記第1、第2のアンテナと第1、第2のアンテナの送受信信号を分ける分波素子の間に、目的とする周波数帯域のみ通過させる第1、第2のフィルタを各々設けるので、第1のアンテナで送受信する信号と、第2のアンテナで送受信する信号とのアイソレーションを高くすることができる。したがって、前記第1のアンテナと前記第2のアンテナ間の相互干渉を少なくすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信機能を備えた電子機器、特に携帯電話、携帯端末装置などの通信機器に用いるアンテナに関し、特にはアンテナを用いたマルチバンドアンテナ装置、通信機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話等の無線通信機器が急速に普及し、通信に使用する帯域も多岐に亘っている。特に、最近の携帯電話では、デュアルバンド、トリプルバンド、クワッドバンド等の呼ばれるマルチバンド方式のように、複数の送受信周波数帯域での通信を一つの携帯電話機器で行う例が多くなっている。かかる状況下、携帯電話等の内蔵アンテナ回路を構成するアンテナ装置として、広周波数帯域に亘って、複数の送受信周波数帯域に対応できる小型のマルチバンドアンテナ装置の開発が急がれている。そして携帯電話等の無線通信機器の更なる小型化とマルチバンド化の要請の中でより高い性能を持つ必要が生じている。
【0003】
このようなマルチバンドアンテナ装置の例として、特許文献1には、携帯電話等の内蔵アンテナ回路において、使用する送受信周波数帯域毎に異なるアンテナを設け、これらのアンテナを隣接して配置し、基板上に実装する技術(以下、従来例と称する)が記載されている。
【特許文献1】特開2003−124730号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら携帯電話で使用する周波数帯域はGSM帯(824〜960MHz)や、DCS/PCSおよびUMTS帯(1710〜2170MHz)であり、各々の周波数帯域幅は136MHz、460MHzと広く、かつGSM帯の略3倍の周波数がDCS/PCSおよびUMTS帯に相当するので、通常2つのアンテナの相互干渉が生じ、動作時および非動作時共にアンテナ特性が低下する。従来例のマルチバンドアンテナ装置では、各アンテナ同士の相互干渉が問題となり、これを小さくなるように離間して配置する構成となるため、基板上のスペースや筺体の空間をアンテナ装置のスペースとして大きく取る必要があり、無線通信機器の更なる小型化を困難にするといった問題点があった。
【0005】
そこで本発明の課題は、マルチバンド方式の無線通信機器内で、複数のアンテナ間のアイソレーションをはかりつつ、省スペース化したマルチバンドアンテナ装置並びにそれを用いた無線通信機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、送受信回路と接続する給電点と、一端が開放又は短絡され他端が前記給電点に接続された複数のアンテナと、前記アンテナのいずれかの短絡端側又は給電点側と接続するフィルタとを備え、前記フィルタは給電点を介して分波素子と接続するとともに、他の経路のアンテナに対応する周波数帯の信号を減衰する特性を有することを特徴とする。
【0007】
分波素子までの経路に、目的とする周波数帯域のみ通過させるフィルタを設けることで、他の経路のアンテナに共振電流が漏れ込むことが無く、また、送受信回路からの送信信号に含まれる高調波等のノイズが除かれる。このため送受信する信号が他の経路にまわり込むの防ぎ、信号のアイソレーションを高くすることができる。
したがって、複数のアンテナを近接して設けてもアンテナ間の相互干渉を少なくすることができ、省スペースにも拘わらず高利得でVSWRが低いマルチバンドアンテナ装置を構成することができる。
【0008】
またアンテナの非給電端を開放端とすることで、導体部の形状を筐体のスペースや形状に合わせて形成することが容易となる。また、アンテナの非給電端を削ることができるので共振周波数の微調整が容易にできる。
【0009】
本発明においては優れたアイソレーション特性が得られるため、前記フィルタを単一の給電点を介して分波素子と接続する構成とすることができる。この場合には部品点数を少なく構成できるので無線通信機器を小型化することが出来る。
【0010】
また部品点数は増加するが、フィルタをそれぞれ異なる給電点を介して分波素子と接続しても良い。かかる構成によれば、分波素子からアンテナの間の経路を共有することがなく、アンテナ間のアイソレーションを更に高くすることができる。
【0011】
前記アンテナは単一の導体部で形成される場合が多いが、その一部に密接して磁性体または誘電体からなる基体を配置したり、導体部の一部を前記基体に設けられた他の導体部としたりして構成しても良い。かかる構成では、磁性体または誘電体をアンテナの一部として設けることで波長短縮効果が生じ、アンテナを構成する線路の線路長を短くすることができ、平面的にも空間的にも省スペースとすることができる。また、アンテナをガラスエポキシ基板などの樹脂基板に設け、第1のアンテナの導体部と第2のアンテナの導体部を略重なるように所定の間隔を介して配置するのも好ましい。かかる構成では、第1のアンテナと第2のアンテナが容量結合して多重共振を起こす事で周波数帯域を広くとることができる。
【0012】
アンテナはモノポール型やダイポール型を用いることができる。ダイポール型であれば、ダイポールアンテナはλ/2で共振し、接地部の大きさを必要としない。携帯電話などのモバイル機器では、時に接地部が電波の入射・放射を妨げる場合がある。また携帯電話の筐体は、その内幅寸法が専ら4cm程度に構成される場合が多く、ダイポールアンテナが必要とする長さと、良く一致しており、筐体の内側の形状に沿って、配置することが出来る。特に高い周波数帯域のアンテナを高利得で広帯域とすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、互いに周波数が大きく離れた低い周波数帯域と、高い周波数帯域のアンテナを狭いスペースに、近接して搭載するにもかかわらず、各周波数帯域間において高いアイソレーションを実現できる。したがって、このマルチバンドアンテナ装置を携帯電話等の無線通信機器に用いた場合、該無線通信機器の筐体内におけるアンテナ装置の配置(レイアウト)の自由度も大きくなり、当該無線通信機器の小型化を達成し易くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明について具体的な実施形態を示しつつ説明するが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。
【0015】
(第1の実施形態)
はじめに本発明の第1の実施形態について図1〜図4を用いて説明する。図1〜図3は本発明の一実施例を示すマルチバンドアンテナ装置の構成を示すブロック図である。また図4は本発明の実施形態の具体的構成を示す図であり、図4(a)は鳥瞰図、図4(b)は平面図(第1、第2のアンテナが基板に実装されている場合の基板面の主(表)面1aと裏面1bから見た図)及び図4(c)は立面図である。
【0016】
第1の実施形態における基本構成は、ブロック図に示すように、送受信回路50と接続する給電点2と、一端が開放され他端が前記給電点2に接続された複数のアンテナ11,21と、前記アンテナ11,21の給電点側と接続するフィルタ31、32と、前記アンテナ11,21と給電端2を介して接続する分波素子40を備えるものである。
前記フィルタ31は、他の経路のアンテナに対応する周波数帯の信号を減衰する特性を有するローパスフィルタ、バンドパスフィルタの何れかであって、マイクロストリップ線路などを用いた分布定数回路や、空芯コイルやチップインダクタ等の集中定数素子を用いた集中定数回路で、静電サージ等の影響も考慮して適宜構成される。
【0017】
図2はマルチバンドアンテナ装置の他の態様を示す図であり、第1のアンテナ11の一部に誘電体もしくは磁性体からなる基体10を設けて、波長短縮効果によって第1のアンテナ11を、より小型に形成したものである。更に図3は、第2のアンテナ21にフィルタ32を接続したマルチバンドアンテナ装置である。
前記フィルタ32もまた他の経路のアンテナに対応する周波数帯の信号を減衰する特性を有し、ハイパスフィルタ、バンドパスフィルタの何れかで、前記フィルタ31と同様に構成される。
【0018】
図4を基に具体的なマルチバンドアンテナ装置の構成を説明する。図4のマルチバンドアンテナ装置Aは、基板1と、基体10と、基板1の表面に設けられた導体部(導体部100aおよび導体部100bからなる)を有する第1のアンテナ11と、板金からなる導体部102のみからなる第2のアンテナ21と、第1のフィルタ(ローパスフィルタ)31と、第2のフィルタ(ハイパスフィルタ)32から構成される。第1のフィルタ31および第2のフィルタ32は、それぞれチップ素子(積層型フィルタ)を用いて、基板1に実装している。
【0019】
第1のアンテナ11は、基板1に実装された基体10の外周部に巻回された導電箔101と、基板1上に設けられたある導体部(100a、100b)を備えている。
基板1の表面の略中央に設けられた給電点2に接続する第1のフィルタ31と導電箔101の給電側が半田付けなどの手段によって電気的に接続され、さらにその非給電側の端部に導体部100aが接続される。
第1のアンテナ11の導体部100a、100bは、両面配線基板に銅をエッチングして形成された導電箔で形成される。セラミック基板にAg、Cu、Ag−Pdなどの導電性に優れた金属・合金をペースト状にして印刷、焼付け良いし、めっき等による形成も可能である。
基板1の主面1aに設けた導体部100aの非給電側は、スルーホール100abを介して基板1の裏面1bに及び、裏面の縁部に沿って設けられた箔状の導体部100bに接続する。導体部100bの先端は開放端となって構成されている。基体10に巻回された導電箔101は、導体部と連続した1本の導体で構成したものであっても良い。
第1のアンテナ11の全体形状は、基体10と導体部100bが略直線状になるように配置されるのが好ましいが、マルチバンドアンテナ装置が配置される携帯電話等の筺体形状に合わせるように、略円弧やコ字状でもかまわない。前記導電箔101は基体10に印刷して構成しているが、薄板状のCu等による板金を近接して配置したり、導電線を巻設して構成したりしても良い。
【0020】
第2のアンテナ21は導体部102で構成され、基板1の主面1aの略中央に設けられた給電点2から第2のフィルタ32を介して接続される。ここで図中破線で示したように、導体部102に基体10‘を設けたり、第1のアンテナの様に、第2のフィルタ32と導体部102の間に基体10‘を配置し、その外周部に導電箔101を巻き回して接続することもできる。なお、場合の導体部102は短く構成される。
前記導体部102は薄板状の板金で構成され、給電端側と非給電端側は主要部よりも細くピン状に形成されており、基板に設けられたスルーホールに挿入し、その周囲の電極にハンダ付けされ、立設配置可能な構造となっている。また非給電端側は他の回路と接続されず開放端となっている。第2のアンテナ21は、給電点2を中心として、第1のアンテナ21の導体部100aと略180°対称となる側に導体部102を立設し、略直線状に構成されている。基板1の裏面1bにある第1のアンテナ11の導体部100bと前記主面1a第2のアンテナ21の導体部102は基板1を挟んで長手方向において略並行に近接して設けられている。前記導体部102は薄板状の板金で構成しているが、第1のアンテナと同様に樹脂基板1にエッチングで構成しても良いし、基板をセラミック基板として印刷して構成しても良い。
【0021】
マルチバンドアンテナ装置Aでは、第1、第2のアンテナ11、21の給電側に第1、第2のフィルタ31、32が挿入されているが、アンテナの非給電側にそれぞれ挿入することもできる。
【0022】
第1のフィルタ31の給電側と接続する給電線路と、第2のアンテナ21の給電側と接続する給電線路は、基板上の分岐・合流点204で電気的にひとつの給電線路となった後、給電点2、分波素子40を介して送受信回路50に接続される。送受信信号は分波素子40によって適宜分波・合成される。尚、分波素子はダイプレクサ、デュプレクサ、マルチプレクサと呼ばれる通過帯域の異なるフィルタの一端を並列に接続した無接点型の固体素子や、ダイオードやトランジスタといったスイッチング素子を用いた接点型の切り替えスイッチが用いられる。
【0023】
第1のフィルタ31は例えばDVB−H(Digital Video Broadcasting for Handheld)帯(470〜770MHz)とGSM(Global System for Mobile Communications)帯(824〜960MHz)の高周波信号を選択的に通過させるように設計したLC素子である。また第2のアンテナ21は、たとえばDCS(Digital Communication System)/PCS(Personal Communications Service)およびUMTS(Universal Mobile Telecommunications System)帯(1710〜2170MHz)を選択的に通過させるようにLCを設計したフィルタ素子である。このように目的とする周波数帯域を通過させ、目的としない周波数帯域の信号を阻止するフィルタを各々のアンテナの給電側経路に挿入することで、アンテナ間でのアイソレーションを高めることが出来る。このため、第1のアンテナ11と第2のアンテナ21を近接させて構成しても、第1のアンテナで送受信する場合は、第2のアンテナの干渉を受ける事が少なく、第2のアンテナで送受信する場合は、第1のアンテナの干渉を受ける事が少ない。また、本実施態様のように、第1のフィルタ31と第2のフィルタ32の給電側まで給電線を共用できるため、部品点数が減じられて装置が小型化される。
【0024】
第1のアンテナ1の基体10は、外形形状が直方体状もしくは円柱状の磁性体や誘電体からなる。基体10が磁性体からなる場合、その材質はNi−Zn系フェライト、Li系フェライトに代表されるスピネル型フェライト、プラーナと呼ばれるZ型、Y型等の六方晶フェライト、これらフェライト材料を含む複合材等を用いることができる。これらのフェライト焼結体は体積抵抗率が高く、導体との絶縁を図るうえで有利である。なかでも高周波特性に優れる六方晶フェライト、特にY型フェライトを用いるのが好ましい。
フェライトをアンテナに用いた場合、アンテナの損失は磁気損失tanδ×透磁率μに比例するが、Y型フェライトは1GHz程度の使用周波数帯であれば磁気損失tanδが小さく、透磁率μは2〜3程度で安定しており、優れたアンテナを得ることが出来る。
【0025】
基体が誘電体からなる場合、その比誘電率εrが6〜20程度のセラミックスを用いるのが好ましい。DCS/PCSおよびUMTS帯などの高い周波数帯域で高利得とするために、ダイポール型のアンテナとする場合があるが、その線路長はλ/2の長さが必要となり、狭い携帯電話の筐体には収納し難いといった問題が生じる。そこで、アンテナの放射電極と給電点の経路間に誘電体チップを挿入して波長短縮効果を得ることによりアンテナ長の短縮をすることができる。
【0026】
基体10に設ける導電箔の構成例を図13(a)(b)に示す。図13(a)は矩形の基体10に一続きの導電箔101を巻回して構成されたものである。また図13(b)は、矩形の基体10の一面において導電箔101aを長さ方向に形成し、端部を他の側面側に折り曲げて基体10の底部に至るようにし、更に導電箔101aの他端部を他の面に形成された導電箔101bと対向して、容量結合するようにして構成されたものである。ギャップを介して容量結合している場合は、アンテナの先端部(非給電側)を直接接地することが出来る。
【0027】
第2のアンテナ21の板金で設けられた導体部102は、主にDCS/PCSおよびUMTS帯である高い周波数帯域に共振させる放射電極部分である。導体部102は導電箔を用いることもできるが、電波の放射効率をより高めるため薄板状の導電板金や導電線を接続して構成することが好ましい。材質はCu、Ag、Ni、Pt、Au、Al等の金属の他、42アロイ、コバール、リン青銅、黄銅、コルソン系銅合金等の合金を用いることができる。
【0028】
また第1、第2のアンテナ及び基体を、樹脂体に形成した凹部にそれぞれ金型ないに装着固定して、インサート成型するなどして一体化し、アンテナキャリア70としてサブ基板化することもできる。
【0029】
(第2の実施形態)
次に本発明の第2の実施形態について図5〜9を用いて説明する。図5〜8は本発明の他の実施例を示すマルチバンドアンテナ装置の構成を示すブロック図である。また図9は本発明に係る第2の実施形態の具体的構成を示す図であり、図9(a)は鳥瞰図、図9(b)は平面図(第1、第2のアンテナが基板に実装されている場合の基板面の主(表)面1aと裏面1bから見た図)及び図9(c)は立面図である。
【0030】
第2の実施形態は、図5に示すように第1の実施形態と基本的な構成は同一であるが、第1のフィルタ31を第1のアンテナ11の非給電側に接続するとともに、フィルタ31の他端を短絡する点で相違する。第1のフィルタ31は前記した第1の実施態様よ同様に、他の経路のアンテナに対応する周波数帯の信号を減衰する特性を有しており、アイソレーションに優れたマルチバンドアンテナ装置を得ることが出来る。
【0031】
図6は第2のアンテナ21と給電点2との間にフィルタ32を配置したマルチバンドアンテナ装置のブロック図を示し、図7は第2のアンテナ21として図13で示した容量結合型のアンテナを用いたものである。また図8は、第2のアンテナの非給電側に第2のフィルタ32を接続するものである。このように本発明のマルチバンドアンテナ装置は様々な組み合わせで構成可能である。
【0032】
次に図9を用いて、第2の実施形態のマルチバンドアンテナ装置の具体的な構成を説明する。図9のマルチバンドアンテナ装置Bは、図4で示したマルチバンドアンテナ装置Aと同様に、基板1と、基体10と導体部100a、100bを有する第1のアンテナ11と、導体部102からなる第2のアンテナ21と、第1のアンテナ11と接続する第1のフィルタ(ローパスフィルタ)31から構成される。
第1のアンテナは、一部を基体に10に導電箔101を巻き回して構成し、他部を基板に形成した導体部100a、100bで構成し、第2のアンテナは基板1に実装した板金を用いている。
【0033】
本実施態様においても、第1のアンテナ11の給電線路と、第2のアンテナ21の給電線路が基板1上の分岐・合流点204で電気的にひとつの給電線路となった後、給電点2を経て分波素子40を介して送受信回路50に接続される。
第1のアンテナ11は、基板1の主面1aにおいて基体10の外周部に巻回された導電箔101と、その非給電側の端部に放射電極である導体部100が接続され、導体部100aの非給電側はスルーホール100abを介して基板1の裏面1bに設けられた箔状の導体部100bと接続された構成となっている。
導体部100bは、更に基板1の裏面1bの他端でスルーホール100aaを介して基板1の主面1aに設けられた箔状の導体部100cと接続した後、第1のフィルタ31を介して接地されている。また第2のアンテナ21は、第2のフィルタ32を介さずに給電点2と給電線で接続される以外は、第1の実施態様と同様な構成となっている。もちろん第1の実施態様と同様な構成とすることも出来る。
【0034】
(第3の実施形態)
次に本発明の第3の実施形態について図10〜12を用いて説明する。図10〜11は、本発明の他の実施例を示すマルチバンドアンテナ装置の構成を示すブロック図である。また図12は本発明に係る第2の実施形態の具体的構成を示す図であり、図12(a)は鳥瞰図、図12(b)は平面図(第1、第2のアンテナが基板に実装されている場合の基板面の主(表)面1aと裏面1bから見た図)及び図12(c)は立面図である。
【0035】
第3の実施形態は図10に示すように、第1のアンテナ11と第2のアンテナ21の給電線路に、それぞれ別の分波素子を設け、給電経路を分ける点で前述の態様と相違する。このような構成によれば部品点数が増加するものの、異なる帯域の送受信信号を電気的に完全に分離することができ、送受信する信号のアイソレーションをより高くすることができる。図11はフィルタをアンテナの非給電側に接続する構成としたマルチバンドアンテナ装置のブロック図である。本実施態様においても、基体を用いたり、容量結合型のアンテナを用いたりするなど、様々な組み合わせでマルチバンドアンテナ装置が構成可能である。
【0036】
図12を用いて第3の実施形態のマルチバンドアンテナ装置について、その具体的な構成を説明する。図12のマルチバンドアンテナ装置Cは、図4、図9で示したマルチバンドアンテナ装置A、Bと同様に、基板1と、基体10と導体部100a、100bを有する第1のアンテナ11と、第1のフィルタ(ローパスフィルタ)31と、導体部102からなる第2のアンテナ21から構成される。
第1のアンテナは、一部を基体に10に導電箔101を巻き回して構成し、他部を基板に形成した導体部100a、100bで構成し、基板1と、基体10と、基板1の表面に設けられた導体部(導体部100aおよび導体部100bからなる)を有する第1のアンテナ11と、板金からなる導体部102を備えた第2のアンテナ21と、第1のフィルタ(ローパスフィルタ)31と、第2のフィルタ(ハイパスフィルタ)32から構成され、第1のアンテナ11と第2のアンテナ21の給電線路に、それぞれ別の分波素子50a、50bを設けている。
【実施例】
【0037】
以下本発明に係るマルチバンドアンテナ装置について詳細に説明する。本実施例のマルチバンドアンテナ装置は図1で示したものと同様の構成であるが、フィルタは第2のアンテナ側にのみ設けたものであって、第1のアンテナ11は、Y型フェライトからなる一辺が10mm、幅が3mm、厚さが2mmの基体10を備え、その外周部に印刷により幅0.5mmで6回巻回されて設けられた導電箔101と、前記基板1の主面1aに設けたCu箔からなる電極長さ10mm、幅2mm、厚さ0.1mmの導体部100aと、該導体部100aの非給電端側とスルーホール100abを介して接続する裏面1bに設けたCu箔からなる電極長さ30mm、幅2mm、厚さ0.1mmの導体部100bとを接続して構成される。
前記基体10の長手方向(導電箔101で構成されるコイルの巻軸方向)と導体部100bが略直線状になるように配置されている。この構成により、GSM帯を含む低い周波数帯域に略λ/4で共振させることができる。
【0038】
第2のアンテナ21は、基板1の前記第1のアンテナ11が設けられた領域の給電点を中心として180°回転対称な領域の主面に設けるが、前記導体部102は薄板状の板金で構成され、給電端側と非給電端側に突出して設けられたピンにより基板上の電極にハンダ付けで立設される。電極の長さは30mm、幅2mm、厚さ0.2mmの薄板状のCu板金からなる。この構成により、DCS/PCSおよびUMTS帯を含む高い周波数帯域に略λ/4で共振させることができる。
【0039】
図14は第1、第2のフィルタに構成例を示す回路図である。第1のアンテナ11と接続する第1のフィルタ31は例えばローパスフィルタとして構成され、線路上にインダクタンス素子L1とインダクタンス素子L2を挿入し、L1とL2の間に接地コンデンサとしてキャパシタンス素子C1が接続される。また第2のアンテナ21と接続する第2のフィルタ32は例えばハイパスフィルタとして構成されている。線路上にキャパシタンス素子C2を挿入し、インダクタンス素子L3とキャパシタンス素子C2からなる直列共振回路で接地している。なお、各フィルタの前後には整合素子としてインダクタンス素子L10、L11とキャパシタンス素子C10,C11が配置される。
【0040】
このような構成におけるアンテナ間のアイソレーション特性について、フィルタ31,32部をPCB基板に構成してネットワークアナライザで評価した。図15に回路ブロックを示す。各フィルタ、整合素子の回路構成、素子定数は前記インダクタンスL1〜L3、L10,L11及びキャパシタC1〜C3、C10,C11と同じとしている。ポート1を入力、ポート2を出力とし、ポート3を50Ωで終端して、SパラメータS11、S22を評価した。図16に通過損失をアイソレーション特性として示す。結果、GSM帯において略―20dB以下、DCS/PCSおよびUMTS帯において略―25dB以下を達成している。このような構成によれば、第1のフィルタ31を挿入することによりDVBH帯とGSM帯のみを選択的に通過させることができ、第2のフィルタ32を挿入することによりDCS/PCSおよびUMTS帯のみを選択的に通過させることができる。
本実施例では、前記ハイパスフィルタを第2のフィルタとして用いた。
【0041】
次に、マルチバンドアンテナ装置の性能について説明する。電波暗室内にマルチバンドアンテナ装置から3m離れた位置に測定用アンテナを設け、該測定用アンテナを50Ωの同軸ケーブルを介してネットワークアナライザに接続して、アンテナ特性を測定した。具体的には基板の短辺方向をX、それに直角な方向である基板の長手方向をY、それらに垂直な方向すなわち基板の面に垂直な方向をZとし、ZX面での平均利得と、VSWRを測定した。測定した周波数帯域は平均利得については824〜960MHzと1710〜2170MHzであり、VSWRについては600〜2200MHzである。この周波数帯域はGSM帯(824〜960MHz)および、DCS/PCSおよびUMTS帯(1710〜2170MHz)をそれぞれ含む。
また比較例としてフィルタを設けず、各アンテナが給電線路を介して給電点と接続するマルチバンドアンテナ装置を作成して測定に供した。
【0042】
図18(a)及び図18(b)に実施例と従来例での平均利得と周波数の関係を示す。また図19(a)及び図19(b)にVSWRと周波数の関係の測定データを示す。平均利得を比較してみると、低周波側はあまり変化ないが、高周波側では1.5dBi程度、利得が向上した。
また、図19(a)、図19(b)に示すVSWRを比較してみると、図19(a)に示す様に、従来技術では各帯域のVSWRが低い範囲は狭いが、本願発明のマルチバンドアンテナ装置では、図19(b)に示す様に低域側も高域側もフラットでかつ低く、GSM帯、DCS/PCSおよびUMTS帯で3.0以下となっている。以上の結果から本願発明のマルチバンドアンテナ装置はGSM帯、DCS/PCS帯、UMTS帯において利得は高く、VSWRは低い優れたアンテナ特性を示していることがわかる。
【0043】
このように本発明では、各々のアンテナと送受信回路間に目的とする周波数帯域の信号のみを通過させるフィルタを挿入するため、第1のアンテナ11と第2のアンテナ21を近接して設けているが、目的としない周波数の信号はブロックされるため、送信時および受信時共に互いのアンテナの影響を受けることが少ない。従って、第1のアンテナ11の導体部100bと第2のアンテナ21の導体部102とを、基板1を介して基板1の上面から見て透過的に略重なるように、近接して設けることが出来、平面的にも空間的にも省スペースとすることができる。本発明に係るマルチバンドアンテナ装置を用いて携帯電話等の通信機器を構成すれば、省スペースにもかかわらず、相互干渉が少なく、送受信と特性に優れた通信機器とすることが出来る。
【0044】
本発明のマルチバンドアンテナ装置を用いてクワッドバンド対応の携帯電話などの通信機器に地上デジタルテレビも搭載する場合には、分波素子40にGSM帯/DVBH帯用の第1のアンテナ11からの信号と、DCS/PCSおよびUMTS帯用の第2のアンテナ21からの信号とが供給される。DVBH帯はGSM帯よりも帯域が低く、地上デジタルテレビ専用の高周波回路が必要となるが、分波素子40を、通過帯域がDVBH帯に対応したローパスフィルタ(LPF)、GSM帯に対応したバンドパスフィルタ(BPF)、DCS/PCSおよびUMTS帯に対応したハイパスフィルタ(HPF)のアンテナ側を接続してなるトリプレクサとすれば、携帯電話のシステムと独立して地上デジタルテレビを受信することが出来る。
【0045】
本発明のマルチバンドアンテナ装置は、携帯電話、無線LAN、パーソナルコンピュータ、地上デジタルテレビ放送関連の通信機器に用いることができる。特に、本発明に係るマルチバンドアンテナ装置を用いることにより広帯域であるにもかかわらず、実装面積、実装空間の増加を抑えることができるので、地上デジタルテレビ放送を送受信する携帯電話、携帯端末等の小型の機器にも容易に用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
以上のとおり、本発明によれば小型でアイソレーション特性に優れたマルチバンドアンテナ装置を得ることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るマルチバンドアンテナ装置のブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る他のマルチバンドアンテナ装置のブロック図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る他のマルチバンドアンテナ装置のブロック図である。
【図4】本発明の第1の実施態様を示す図であり、図4(a)は鳥瞰図、図4(b)は平面図及び図4(c)は立面図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係るマルチバンドアンテナ装置のブロック図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る他のマルチバンドアンテナ装置のブロック図である。
【図7】本発明の第2の実施形態に係る他のマルチバンドアンテナ装置のブロック図である。
【図8】本発明の第2の実施形態に係る他のマルチバンドアンテナ装置のブロック図である。
【図9】本発明の第2の実施態様を示す図であり、図9(a)は鳥瞰図、図9(b)は平面図及び図9(c)は立面図である。
【図10】本発明の第3の実施形態に係るマルチバンドアンテナ装置のブロック図である。
【図11】本発明の第2の実施形態に係る他のマルチバンドアンテナ装置のブロック図である。
【図12】本発明の第3の実施態様を示す図であり、図12(a)は鳥瞰図、図12(b)は平面図及び図12(c)は立面図である。
【図13】本発明に用いる基体に形成される導電箔の構成を示す図である。
【図14】本発明に用いる第1のフィルタと第2のフィルタの構成を示す回路図である。
【図15】本発明に用いる第1のフィルタと第2のフィルタの構成を示す回路ブロック図である。
【図16】本発明に係るマルチバンドアンテナ装置のアイソレーション特性図である。
【図17】本発明に用いる分波素子の構成を示すブロック図である。
【図18】(a)本発明に係るマルチバンドアンテナ装置の低周波側の利得(ゲイン)周波数特性図である。(b)本発明に係るマルチバンドアンテナ装置の高周波側の利得(ゲイン)周波数特性図である。
【図19】(a)従来のマルチバンドアンテナ装置のVSWR周波数特性図である。(b)本発明に係るマルチバンドアンテナ装置のVSWR周波数特性図である。
【符号の説明】
【0048】
1 基板
2 給電点
10 基体
11 第1のアンテナ
21 第2のアンテナ
31 第1のフィルタ
32 第2のフィルタ
40 分波素子
50 送受信回路



【特許請求の範囲】
【請求項1】
送受信回路と接続する給電点と、一端が開放又は短絡され他端が前記給電点に接続された複数のアンテナと、前記アンテナのいずれかの短絡端側又は給電点側と接続するフィルタとを備え、
前記フィルタは給電点を介して分波素子と接続するとともに、他の経路のアンテナに対応する周波数帯の信号を減衰する特性を有することを特徴とするマルチバンドアンテナ装置。
【請求項2】
前記フィルタが単一の給電点を介して分波素子と接続することを特徴とする請求項1に記載のマルチバンドアンテナ装置。
【請求項3】
前記フィルタがそれぞれ異なる給電点を介して分波素子と接続することを特徴とする請求項1に記載のマルチバンドアンテナ装置。
【請求項4】
複数のアンテナの内、第1のアンテナに対応する周波数帯f1は第2のアンテナに対応する周波数帯f2よりも低周波であって、第1のアンテナと接続する第1のフィルタがローパスフィルタ又はバンドパスフィルタであり、第2のアンテナと接続する第2のフィルタがハイパスフィルタ又はバンドパスフィルタであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のマルチバンドアンテナ装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のマルチバンドアンテナ装置を搭載したことを特徴とする通信機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2009−253959(P2009−253959A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−103448(P2008−103448)
【出願日】平成20年4月11日(2008.4.11)
【出願人】(000005083)日立金属株式会社 (2,051)
【Fターム(参考)】