説明

マルチビームリフレクトアレイ

【課題】入射した電波を所望の複数の方向に反射させることが可能なマルチビームリフレクトアレイを提供すること。
【解決手段】所定の方向に沿って整列した複数の素子を含む素子配列が2つ以上含まれているマルチビームリフレクトアレイは、素子配列の少なくとも1つに含まれている第1の素子群及び第2の素子群各々において、2つの素子各々が反射する電波の位相差は、2つの素子の間隔と素子による反射角に対する三角関数の値との積に比例し、第1の素子群における隣接する素子の間隔は、第2の素子群における隣接する素子の間隔の有理数倍に等しい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチビームリフレクトアレイに関連する。
【背景技術】
【0002】
無線通信において、電波の伝搬経路に建物等の障害物が存在すると、受信レベルが劣化してしまう。このため、その建物と同程度以上の高所に反射板(リフレクタ)を設け、電波が届きにくい場所に反射波を送る技術がある。反射板により電波を反射する場合において、垂直面内における電波の入射角が比較的小さかった場合、反射板は電波を所望方向に向けることが困難になってしまう(図1)。一般に、電波の入射角と反射角は等しいからである。この問題に対処するため、地面を覗き込むように反射板を傾斜させることが考えられる。そのようにすると、反射板に対する入射角及び反射角を大きくすることができ、到来波を所望方向に向けることができる。しかしながら、電波を遮るような建物と同程度に高い場所の反射板を、地面側に傾けて設置することは、安全性の観点からは好ましくない。このような観点から、電波の入射角と反射角が異なるリフレクタ、すなわち電波の入射角が比較的小さかったとしても所望方向に反射波を向けることが可能なリフレクタが望まれている。従来のリフレクタについては例えば非特許文献1に記載されている。このリフレクタは、多数の素子の各々が所定の反射位相の反射波を形成するようにすることで、電波が反射する角度を制御しようとしている。この種のリフレクタは、多数の素子を有するので、リフレクトアレイと言及されてもよい。
【0003】
リフレクトアレイを用いて、移動通信システムにおけるエリアの改善を行う場合において、反射波の受信レベルが強くなるように、リフレクトアレイの面積を大きくすることが考えられる。しかしながら、この種のリフレクトアレイのサイズ又は面積を単に大きくすると、反射波の強度が増加する反面、反射波のビーム幅が狭くなり、エリアを改善できる領域が狭くなってしまう問題が生じる。リフレクトアレイのサイズが小さかった場合、反射波のビーム幅は比較的広くなるが、反射波の受信レベルが弱くなってしまう問題が生じる。
【0004】
このような問題に関し、入射した電波を複数の方向に反射させようとすることも検討されている(非特許文献2)。しかしながら、非特許文献2に記載の方法は、反射波を所望の任意の方向に反射させるものではなく、電波環境を改善すべきエリアを十分に改善できないことが懸念される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、入射した電波を所望の複数の方向に反射させることが可能なマルチビームリフレクトアレイを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施例によるマルチビームリフレクトアレイは、
所定の方向に沿って整列した複数の素子を含む素子配列が2つ以上含まれているマルチビームリフレクトアレイであって、
前記素子配列の少なくとも1つに含まれている第1の素子群及び第2の素子群各々において、2つの素子各々が反射する電波の位相差は、該2つの素子の間隔と該素子による反射角に対する三角関数の値との積に比例し、
前記第1の素子群における隣接する素子の間隔は、前記第2の素子群における隣接する素子の間隔の有理数倍に等しい、マルチビームリフレクトアレイである。
【発明の効果】
【0007】
一実施例によれば、入射した電波を所望の複数の方向に反射させることが可能なマルチビームリフレクトアレイを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】従来の問題点を説明するための図。
【図2】リフレクトアレイを説明するための図。
【図3】リフレクトアレイの平面図。
【図4】適切な反射位相とともに電波が反射される様子を示す図。
【図5】リフレクトアレイを構成する素子として使用可能なマッシュルーム構造を示す図。
【図6】リフレクトアレイの拡大平面図。
【図7】マッシュルーム構造の等価回路図。
【図8】パッチサイズと反射位相との関係を示す図。
【図9】マルチビームリフレクトアレイを説明するための図。
【図10】パラメータの具体的な数値例を示す図。
【図11】反射位相と座標の関係を示す図。
【図12】360度の範囲内に換算された反射位相と素子の位置との関係を示す図。
【図13】70度の反射波を優先するように素子の反射位相が選択された様子を示す図。
【図14】45度の反射波を優先するように素子の反射位相が選択された様子を示す図。
【図15】1つの素子に対して2つの反射位相の選択肢が存在する様子を示す図。
【図16】別の観点から素子の反射位相が選択された様子を示す図。
【図17】シミュレーションに使用された解析モデルの斜視図。
【図18】解析モデルの平面図。
【図19】解析モデルの側面図。
【図20】反射波の遠方放射界を示す図。
【図21】金属板を使用した場合と使用しない場合との比較例を示す図。
【図22】素子の構造の代替例を例示する図。
【図23】素子の位置と反射位相の関係を示すグラフを示す図。
【図24】素子の位置と反射位相の関係を示すグラフをシフトした様子を示す図。
【図25】素子の配置例を示す図。
【図26】別のリフレクトアレイの平面図。
【図27】図26に示すリフレクトアレイの一例における拡大平面図。
【図28】図26に示すリフレクトアレイの別の例における拡大平面図。
【図29】図26に示すリフレクトアレイの別の例における拡大平面図。
【図30】反射位相の領域を考慮して素子の反射位相が選択された様子を示す図。
【図31】特定の反射角に合わせた素子の数と反射波との関係を示す図。
【図32】シミュレーションに使用された解析モデルの斜視図(H10金属板60素子12)。
【図33】シミュレーション結果を示す図(H10金属板60素子12)。
【図34】シミュレーションに使用された解析モデルの斜視図(H10金属板34素子38)。
【図35】シミュレーション結果を示す図(H10金属板34素子38)。
【図36】シミュレーションに使用された解析モデルの斜視図(V10金属板60素子12)。
【図37】シミュレーション結果を示す図(V10金属板60素子12)。
【図38】シミュレーションに使用された解析モデルの斜視図(V10金属板34素子38)。
【図39】シミュレーション結果を示す図(V10金属板34素子38)。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本実施例によるマルチビームリフレクトアレイは、入射して来た電波を所望の複数の制御角方向(α12,...,αJ)に反射させることができる。これにより、反射波を受けるエリアにおいて、ビーム強度及びビーム幅を適切に確保することができる。この点、単一の方向に強く狭いビーム又は弱く広いビームしか反射させることができなかった従来のリフレクトアレイと大きく異なる。
【0010】
以下、添付図面を参照しながら実施例を説明する。図中、同様な要素には同じ参照番号又は参照符号が付されている。実施例は次の観点から説明される。
【0011】
1.リフレクトアレイの原理
2.マルチビームリフレクトアレイの原理
3.マルチビームリフレクトアレイにおける素子の反射位相
4.シミュレーション
5.変形例
5.1 素子の代替例
5.2 グラフをシフトさせる
5.3 素子の配置例
【実施例1】
【0012】
<1.リフレクトアレイの原理>
本実施例によるマルチビームリフレクトアレイを説明する前に、リフレクトアレイの一般的な動作原理を説明する。
【0013】
図2はリフレクトアレイを説明するための説明図を示す。図示のリフレクトアレイは、y軸方向に並んだ複数の素子M1ないしMNを有し、これらN個の素子と同様な構造が、y軸方向及びx軸方向に反復的に設けられている。図3はリフレクトアレイの平面図を示す。素子の各々は電波を反射する何らかの素子であり、図示の例ではマッシュルーム構造である。この点については後述する。電波は、z軸∞方向から到来し、z軸方向に対して角度αをなして反射する。隣接する素子同士の間隔がΔyであったとすると、これらの素子による反射波の位相差Δφ及び反射角αは次式を満たす。
【0014】
Δφ=k×Δy×sin(α)
α=sin-1[(λΔφ)/(2πΔy)]
ただし、kは波数であり、2π/λに等しい。λは電波の波長である。波長に比べて十分大きなリフレクトアレイを構成する場合、y軸方向に整列するN個の素子M1ないしMNの全体による反射位相差N×Δφが、360度(2πラジアン)になるように、個々の素子の反射位相を設定することが望ましい。例えば、N=4の場合、Δφ=360/4=90度である。したがって、少なくとも理論上は、隣接する素子間の反射位相差が90度であるように素子を設計し、それらを4個並べたものを2次元的に反復的に並べることで、角度αの方向に電波を反射するリフレクトアレイを実現することができる。図4は、隣接する素子同士の位相差が90度である場合の反射波を模式的に示す。90度ずつ反射位相が変化する4つの素子を1つの単位として、周期的な構造を実現することで、所望のリフレクトアレイを実現することができる。図4には、各反射波における等位相面が破線で示されている。
【0015】
図5は、図2ないし4のリフレクトアレイにおける素子として使用可能なマッシュルーム構造を示す。マッシュルーム構造は、接地プレート51と、ビア52と、パッチ53とを有する。
【0016】
接地プレート51は、多数のマッシュルーム構造に対して共通の電位を供給する導体である。Δx及びΔyは、隣接するマッシュルーム構造におけるビア間のx軸方向の間隔及びy軸方向の間隔をそれぞれ示す。Δx及びΔyは、マッシュルーム構造1つ分に対応する接地プレート51のサイズを表す。一般に、接地プレート51は多数のマッシュルーム構造が並んだアレイと同程度に大きい。
【0017】
ビア52は、接地プレート51とパッチ53とを電気的に短絡するために設けられる。
【0018】
パッチ53は、x軸方向にWxの長さを有し、y軸方向にWyの長さを有する。パッチ53は、接地プレート51に対して平行に距離tを隔てて設けられ、ビア52を介して接地プレート51に短絡される。
【0019】
図示の簡明化のため、図5では2つのマッシュルーム構造しか示されていないが、リフレクトアレイには、このようなマッシュルーム構造がx軸及びy軸方向に多数設けられている。
【0020】
図6は、図3及び図5に示されているようなリフレクトアレイの拡大平面図を示す。線pに沿って一列に並んだ4つのパッチ53と、その列に隣接して線qに沿って並んだ4つのパッチ43とが示されている。パッチの数は任意である。
【0021】
図7は、図3、図5、図6に示すマッシュルーム構造の等価回路を示す。図6に示されるように、線pに沿って並ぶマッシュルーム構造のパッチ53と、線qに沿って並ぶマッシュルーム構造のパッチ53との間のギャップに起因して、キャパシタンスCが生じる。更に、線pに沿って並ぶマッシュルーム構造のビア52、及び線qに沿って並ぶマッシュルーム構造のビア52に起因して、インダクタンスLが生じる。したがって、隣接するマッシュルーム構造の等価回路は、図7右側に示されるような回路になる。すなわち、等価回路において、インダクタンスLとキャパシタンスCとが並列に接続されている。キャパシタンスC、インダクタンスL、表面インピーダンスZs及び反射係数Γは、次のように表すことができる。
【0022】
【数1】

数式(1)において、ε0は真空の誘電率を表し、εrはパッチ同士の間に介在する材料の比誘電率を表す。素子間隔は上記の例の場合、x軸方向のビア間隔Δxである。ギャップは隣接するパッチ同士の隙間であり、上記の例の場合、(Δx-Wx)である。Wxはx軸方向のパッチの長さを表す。すなわち、arccosh関数の引数は、素子間隔とギャップとの比率を表す。数式(2)において、μはビア同士の間に介在する材料の透磁率を表し、tはパッチ53の高さ(接地プレート51からパッチ53までの距離)を表す。数式(3)において、ωは角周波数を表し、jは虚数単位を表す。数式(4)において、ηは自由空間インピーダンスを表し、Φは位相差を表す。
【0023】
図8は、図5に示すようなマッシュルーム構造のパッチのサイズWxと反射位相との関係を示す。概して、マッシュルーム構造(素子)の反射位相は、共振周波数において0になり、共振周波数は上記のキャパシタンスC及びインダクタンスLにより決定される。従って、リフレクトアレイの設計においては、個々の素子が適切な反射位相を実現するように、キャパシタンスC及びインダクタンスLを適切に設定する必要がある。図中、実線は理論値を示し、丸印でプロットされているものは有限要素法解析によるシミュレーション値を示す。図8は、4種類のビアの高さ又は基板の厚みtの各々について、パッチのサイズWxと反射位相との関係を示す。t02は距離tが0.2mmである場合のグラフを表す。t08は距離tが0.8mmである場合のグラフを表す。t16は距離tが1.6mmである場合のグラフを表す。t24は距離tが2.4mmである場合のグラフを表す。ビア間隔Δx及びΔyは、一例として2.4mmである。
【0024】
グラフt02より、厚さを0.2mmとすることにより、反射位相を175度の周辺にできることがわかる。しかし、パッチのサイズWxが0.5mmから2.3mmまで変化しても、反射位相の差は1度以下となり、反射位相の値はほとんど変化しない。グラフt08より、厚さを0.8mmとすることにより、位相を160度の周辺とすることができる。またこのとき、パッチのサイズWxが0.5mmから2.3mmまで変化すると、反射位相は約162度から148度まで変化するが、変化の範囲は14度と、小さい。グラフt16より、厚さを1.6mmとすると位相は145度以下となり、パッチのサイズWxが0.5mmから2.1mmに変化する場合、反射位相は144度から107度に緩慢にしか減少していないが、サイズWxが2.1mmより大きくなると、反射位相は急激に減少し、サイズWxが2.3mmの場合に、反射位相は、シミュレーション値(丸印)で54度及び理論値(実線)で0度に達する。グラフt24の場合、パッチのサイズWxが0.5mmから1.7mmに変化する場合、反射位相は117度から90度に緩慢にしか減少していないが、サイズWyが1.7mmより大きくなると、反射位相は急激に減少し、サイズWxが2.3mmの場合に、反射位相は、-90度に達する。
【0025】
図5及び図6に示すようなマッシュルーム構造で素子を形成する場合、y軸方向のパッチサイズWyは全ての素子で同一であり、x軸方向のパッチサイズWxが素子の場所によって異なる。なお、パッチサイズWyが全ての素子で共通することは必須ではなく、素子毎に異なるように設計することも可能である。ただし、パッチサイズWyが全ての素子で同一であるマッシュルーム構造を用いてリフレクトアレイを設計する場合、設計が簡易になり、x軸方向のパッチサイズWxを、素子の場所に応じて決定すればよい。具体的には、様々なビアの高さ又は基板の厚みtの内、設計に使用するもの(例えば、t24)を選択し、整列する複数のパッチ各々のサイズが、そのパッチの位置で必要な反射位相に応じて決定される。例えば、t24が選択されていた場合において、あるパッチの位置で必要な反射位相が72度であった場合、パッチのサイズWxは約2mmである。同様にして、他のパッチについてもサイズが決定される。理想的には、リフレクトアレイの中で整列している1つの素子群全体による反射位相の変化が360度であるように、パッチサイズが設計されていることが好ましい。
【0026】
ところで、図3及び図6に示す構造において、電界がx軸方向を向いた電波がz軸∞方向から到来すると、反射波は電界の方向に対して横方向(y軸方向)に反射する。このようにして反射波を制御することを便宜上「水平制御」と言及する。しかしながら本発明は水平制御に限定されない。例えば、図3及び図6に示す構造の代わりに、図26に示すような構造でリフレクタを構成することで、電界がy軸方向を向いた電波を、電界の方向に対して縦方向(y軸方向)に反射させることが可能である。このようにして反射波を制御することを便宜上「垂直制御」と言及する。垂直制御を行う場合において、パッチサイズとギャップはいくつかの方法によって決めることができる。例えば、図27に示すように素子の間隔Δyを共通とし且つ個々のパッチを非対称にしてもよいし、図28に示すように個々のパッチを対称にし且つ素子の間隔を異ならせてもよいし、図29に示すように素子の間隔Δyを共通とし且つ個々のパッチを対称に設計してもよい。これらは一例に過ぎず、適切な如何なる方法でパッチサイズ及びギャップが決定されてもよい。
【0027】
<2.マルチビームリフレクトアレイの原理>
図9は、入射する電波を所望の複数の方向に反射させるマルチビームリフレクトアレイを説明するための図を示す。図示のリフレクトアレイは、y軸方向に並んだ12個(一般的には、N個)の素子M1ないしM12を少なくとも有し、これら12個(一般的には、N個)の素子と同様な構造が、y軸方向及びx軸方向に反復的に又は周期的に設けられている。この点は、図2に示す構成と同様であり、従って図9に示すマルチビームリフレクトアレイの平面図も概して図3に示すものと同様である。ただし、マルチビームリフレクトアレイを構成する素子の各々が、どのような反射位相を実現するように設計されているかが大きく異なる。
【0028】
素子の各々は電波を反射する何らかの素子であり、図示の例ではマッシュルーム構造であるが、他の構造が使用されてもよい。電波は、z軸∞方向から到来し、個々の素子により反射され、反射波が形成される。上述したように、あるnk個の素子の各々が、隣接する素子との間でΔφ=360/nk度異なる反射位相を実現する場合、α=sin-1[(λΔφ)/(2πΔy)]の反射角で電波が反射する。ただし、kは波数であり、2π/λに等しい。λは電波の波長である。Δyは隣接する素子間の間隔である。例えば、4個の素子の反射位相φ11、φ12、φ13、φ14に関し、隣接する素子同士の位相差Δφ1(=|φ1i−φ1i+1|)が360/4=90度であった場合、α1=sin-1[(λΔφ1)/(2πΔy)]の反射角で電波が反射する。また、6個の素子の反射位相φ21、φ22、φ23、φ24、φ25、φ26に関し、隣接する素子同士の位相差Δφ2(=|φ2i−φ2i+1|)が360/6=60度であった場合、α2=sin-1[(λΔφ2)/(2πΔy)]の反射角で電波が反射する。
【0029】
図9において「設計位相」として示されているように、
素子M1及びM2の反射位相は、第1の反射角α1に関する値φ11及びφ12に、
素子M3及びM4の反射位相は、第2の反射角α2に関する値φ23及びφ24に、
素子M5及びM6の反射位相は、第1の反射角α1に関する値φ11及びφ12に、
素子M7及びM8の反射位相は、第2の反射角α2に関する値φ21及びφ22に、
素子M9及びM10の反射位相は、第1の反射角α1に関する値φ11及びφ12に、
素子M11及びM12の反射位相は、第2の反射角α2に関する値φ25及びφ26にそれぞれ設定されている。図示の例の場合、12個の素子を含む素子配列は、第1の反射角α1方向に電波を反射させるための第1の素子群と、第2の反射角α2方向に電波を反射させるための第2の素子群とを含んでいる。従って、このような素子配列に電波が入射した場合、一部は反射角α1の方向に反射し、一部は反射角α2の方向に反射する。これにより、入射した電波をα1及びα2の方向にそれぞれ反射させるマルチビームリフレクトアレイを実現することができる。
【0030】
個々の素子の反射位相を、第1及び第2の反射角の何れに合わせて設定するかについては後述する。
【0031】
図示の例の場合、第1の反射角α1を実現する際に使用する素子の間隔Δy1と、第2の反射角α2を実現する際に使用する素子の間隔Δy2とは、等しいことが想定されている:
Δy1=Δy2=Δy。
Δy1=Δy2であることは必須ではないが、この関係が成立する場合、反射角及び素子数の間には次式が成立する。
【0032】
Δφ1/Δφ2=sin(α1)/sin(α2)
Δφ1=2π/nk1
Δφ2=2π/nk2
ただし、Δφ1は第1の反射角α1を実現するための第1の素子群に属する素子の内、隣接する素子同士の反射位相差である。Δφ2は第2の反射角α2を実現するための第2の素子群に属する素子の内、隣接する素子同士の反射位相差である。nk1は第1の素子群に含まれる素子数である。nk2は第2の素子群に含まれる素子数である。上記の数式が成立する場合、一方の反射角から他方の反射角を求めることができる。例えば、
α2=sin-1[nk1×sin(α1)/nk2]
である。
【0033】
以上示したように、図9は制御角α1については位相差90度,1周期は位相が360度(2πラジアン)回転する4素子で構成されるアレーと、制御角α2については位相差60度,1周期は位相が360度(2πラジアン)回転する6素子で構成されるアレーを、同じ素子間隔に並べて合成することによってα1とα2の二つの方向にビームを向ける実施例を示している(実施例A)。ここで、合成したアレーの1周期は、6素子と4素子の最小公倍数である12素子となる(α1については3周期分、α2については2周期分)。
【0034】
図10に示す表は、第1及び第2の素子群の素子数nk1、nk2、第1及び第2の反射角α1及びα2、α1を実現するための位相差Δφ1、α2を実現するためのΔφ2、α1とα2のマルチビームのための合成アレーの1周期の素子数(ただしΔy1=Δy2のとき)に関する具体的な数値例を示す。
【0035】
なお、上記の例ではΔy1=Δy2であったが、より一般的には、第1の反射角α1を実現する際に使用する素子の間隔Δy1の有理数倍が、第2の反射角α2を実現する際に使用する素子の間隔Δy2に等しければよい。
【0036】
Δy2=mf×Δy1
ただし、mfは有理数である。この場合、第1及び第2の反射角は次式を満たす。
【0037】
α2=sin-1[mf×nk1×sin(α1)/nk2]
更に、説明の便宜上、反射角は2種類だけでなく、3以上の所望の方向(α1,...,αJ)に電波が反射されるように、マルチビームリフレクトアレイを設計することが可能である。Jは2以上の自然数である。この場合、素子配列は、第1の反射角α1を実現するための第1の素子群、第2の反射角α2を実現するための第2の素子群、...第Jの反射角αJを実現するための第Jの素子群を含むことになる。ただし、1つの素子配列(一列分)がJ種類の素子群全てを含むことは必須ではなく、マルチビームリフレクトアレイの中にJ種類の素子群が何らかの配置方法で含まれていればよい。この点については変形例において説明する。
【0038】
<3.マルチビームリフレクトアレイにおける素子の反射位相>
図8を参照しながら説明したように、リフレクトアレイを設計する場合、設計に使用する厚みの基板に対するグラフ(例えば、t24)を選択し、整列する複数のパッチ各々のサイズが、そのパッチの位置で必要な反射位相に応じて決定される。理想的には、リフレクトアレイの中で整列している1つの素子群全体による反射位相の変化が360度であるように、パッチのサイズ等が設計されていることが好ましい。しかしながら、図8に示す例から分かるように、理論上及び製造上の理由から、実現困難な反射位相が存在する場合がある。例えば、(本実施例では)t16の場合、144度より大きな反射位相や、60度より小さな反射位相を実現できるパッチサイズWxは存在しない。t24の場合でも、117度より大きな反射位相や、-72度より小さな反射位相を実現することは困難である。更に、素子同士の間隔Δx及びΔyが2.4mmであることに起因して、パッチサイズWxが2.4mmに近づくと、ギャップ(Δx−Wx)が極めて狭くなり、製造することが困難になる。このように、実際に製造可能なパッチサイズ及び実現可能な反射位相の制約の下で、リフレクトアレイを設計する必要がある。
【0039】
なお、ここでα1とα2のマルチビームのための合成アレーは、必ずしもその最小公倍数ごとに周期的な構造である必要はない。たとえば、第一の周期で選択された構造(位相)と、任意のKに対して第kの周期で選択された構造(位相)は異なってもよい。
【0040】
次に、図10のNo.13の組み合わせ、すなわち、1周期が15素子と20素子でそれぞれ構成され、合成アレーの周期が60素子で構成される場合についての実施例を示す(実施例B)。このとき、各位相差は表に示すとおり、Δφ1=24度とΔφ2=18度となる。
【0041】
隣接する素子同士の間隔Δy及びΔxは、2.4mmであるとする。従って、1周期分の構造は、2.4×60=144mmの長さを有する。これら60個の素子各々が実現すべき反射位相は、次のようにして決定される。先ず、特定の反射角を実現するのに必要な反射位相の内、実現可能なものが何であるかが判定される。反射位相差Δφと反射角αとの間には、
Δφ=k×Δy×sin(α)
の関係があるので、反射位相と座標(y軸方向に並ぶ素子の位置)との間には、線形な関係が成立する。
【0042】
図11は、反射角α1=70度及び反射角α2=45度の各々について、そのような線形な関係が成立することを示す。(ここで上記式より、周波数fが8.8GHzのとき、反射角α1とα2はそれぞれ70度と45度となる。)横軸は座標(y軸)であり、単位はmmである。素子は2.4mm毎にy軸に沿って整列している。縦軸は反射位相を示す。単位は度であるが、ラジアンでもよい。反射位相は、実際には360度の範囲内の角度で表現されるが、線形な関係を強調するため、敢えて360度より大きな角度についても直線がそのまま延長されている。図中、□印は、その点に対応する座標の位置において、第1の反射角α1=70度を実現するように反射位相を実際に設定可能であることを示す。○印は、その点に対応する座標の位置において、第2の反射角α2=45度を実現するように反射位相を実際に設定可能であることを示す。更に、基板厚を一定(たとえば2.4mmt)とすると、先に示したグラフより製造上又は理論上の制約により、約100度ないし290度の範囲内の反射位相を実現する素子を作成することはできない。これは、直線上において、□印又は丸印が示されていない領域(実現不可能な反射位相)として図示されている。実現不可能な反射位相は、製造上及び理論上の制約から決定されるので、反射角によらない。このため、実現不可能な反射位相の範囲は、第1及び第2の反射角双方に共通している。
【0043】
図12は、図11のグラフにおいて、縦軸が360度の範囲内に収まるように、反射位相を換算したグラフを示す(縦軸=(反射位相)mod(360))。また、横軸はy軸方向に整列するM1ないしM60の60個の素子各々の場所を示す。これらの素子の内、M1-M6、M13-M26、M28-M34、M37-M49、M57-M60の44個の素子の反射位相は、何れかの反射角を実現するための値に決定できる。他の素子の場所については、実現可能な反射位相が存在しないので、このままの場合、それらの素子は第1及び第2の何れの反射波にも寄与することができない。ただし、変形例で説明するように、所望の反射波に寄与できない素子の数を或る程度調整することができる。
【0044】
個々の素子の反射位相は、例えば、次のような方法により決定することができる。
【0045】
[方法1]
素子の反射位相を決定する1つの方法は、第1及び第2の反射角をなす反射波の内、何れかを優先的に実現しようとする。例えば、第1の反射角α1=70度を優先的に実現しようとしたとする。この場合、先ず、図12のグラフにおいて、第1の反射角α1=70度を実現するための反射位相と座標の組(α1=70度に関する直線上にある□印の点)が全て選択される。「反射位相φと座標Mxの組を選択する」とは、素子Mxの反射位相がφに設計されることを意味する。次に、反射位相が決定されていない素子に関し、第2の反射角α2を実現するための反射位相と座標の組(α2=45度に関する直線上にある丸印の点)が存在すれば、それが選択される。このようにして反射位相と座標の組が選択された結果が、図13に示されている。図示されているように、第1の反射角α1=70度に関する点が28個選択され(塗りつぶされた四角印)、第2の反射角α2=45度に関する点が16個選択されている(塗りつぶされた丸印)。44個の素子の内、28個(64%)が第1の反射角に関連し、16個(36%)が第2の反射角に関連しているので、第1の反射角α1=70度の反射波が優先される。この例では、第1の反射角α1=70度を優先的に決定したが、逆に、第2の反射角α2=45度を優先的に決定することもできる。すなわち、先ず、第2の反射角α2=45度を実現するための反射位相と座標の組(α2に関する直線上にある○印の点)が全て選択される。次に、反射位相が決定されていない素子に関し、第1の反射角α1を実現するための反射位相と座標の組(α1に関する直線上にある□印の点)が存在すれば、それが選択される。このようにして選択した結果は、図14に示されている。図示されているように、第1の反射角α1=70度に関する点が14個選択され、第2の反射角α2=45度に関する点が30個選択されている。44個の素子の内、14個(32%)が第1の反射角に関連し、30個(68%)が第2の反射角に関連しているので、第2の反射角α2=45度の反射波が優先される。
【0046】
[方法2]
素子の反射位相を決定する別の方法は、素子同士の相対的な関係を考慮するものである。先ず、実現可能な反射位相が1つしか存在しない素子については、その反射位相が選択される。図15は、そのようにして反射位相が決定された直後の様子を示す。具体的には、M13-M16、M28-M34、M47-M49については、第1の反射角α1=70度を実現するための反射位相が設定される。M5、M6、M20-M26、M37-M42及びM57については、第2の反射角α2=45度を実現するための反射位相が設定される。M1-M4、M17-M19、M43-M46、M58-M60については、第1及び第2の反射角何れの反射位相も実現可能である。何れの反射位相を選択するかについては、少なくとも次の3つの観点から決定できるが、他の観点から決定されてもよい。概して、第1の反射角を実現するための反射位相の素子が多く選択された場合には、第1の反射角をなす反射波がより強くなる反面、第2の反射角を実現するための反射位相の素子が多く選択された場合には、第2の反射角をなす反射波がより強くなる傾向がある。
【0047】
素子M1-M4についての反射位相を決定する際に使用可能な方法の1つは、「同じ反射位相を実現する素子が複数個になるようにする」ことである。特定の値の反射位相を実現する素子が、1つしかない場合よりも複数個存在した方が、その反射位相の反射波をより確実に形成できるからである。例えば、図15に示すように、一部の素子の反射位相が一意に決定されたとする。この場合、素子M23、M24とそれぞれ同じ反射位相を実現する他の素子は未だ存在していない。このため、M3、M4が第2の反射角α2=45度を実現するための反射位相にそれぞれ設定される。M1、M2については、「同じ反射位相を実現する素子が複数個になるようにする」という判断基準からは反射位相を決定できない。この場合、例えば、「隣接する素子はなるべく同じ反射角を実現する」ように、反射位相が決定されてもよい。特定の反射角に関する複数の素子が連続的に整列している場合、各素子からの反射波の反射位相も連続的に変化することになり、特定の反射角が実現されやすくなるからである。このような観点によれば、連続的に並ぶM1-M6の反射位相は、第2の反射角α2=45度を実現するための反射位相に設定される。
【0048】
素子M17-M19については、「同じ反射位相を実現する素子が複数個になるようにする」観点から、反射位相を決定することができる。具体的には、図15において、素子M38、M39と同じ反射位相の他の素子は未だ存在していない。そこで、素子M18、M19が第2の反射角α2=45度を実現するための反射位相にそれぞれ設定される。「隣接する素子はなるべく同じ反射角を実現する」観点から、素子M17も第2の反射角α2=45度を実現するための反射位相に設定される。こうして、素子M17-M19は、第2の反射角α2=45度を実現するための反射位相にそれぞれ設定される。
【0049】
素子M43-M46については、「素子数の量的なバランスに配慮する」観点から、反射位相を決定することができる。素子M1-M42までに決定されている素子数を考慮すると、第1の反射角α1=70度を実現するための素子が、11個しかなく、割合が少ない。第2の反射角α2を優先するのであればそれでもよいが、第1の反射角α1の反射波の強度も或る程度強く確保する観点から、素子M43-M46については、第1の反射角α1=70度を実現するための反射位相にそれぞれ設定される。
【0050】
素子M58-M60については、「隣接する素子はなるべく同じ反射角を実現する」観点から、反射位相を決定することができる。すなわち、M58-M60の反射位相は、第2の反射角α2=45度を実現する反射位相に設定され、連続的に並ぶM57-M60の反射位相は、第2の反射角α2=45度を実現する反射位相に設定される。
【0051】
以上のようにして反射位相が決定された結果は、図16に示されている。図16に示す例では、第1の反射角α1=70度に関する点が18個選択され(41%)、第2の反射角α2=45度に関する点が26個選択され(59%)、第2の反射角α2=45度が優先されている。このような素子数の量的な割合は、図13に示す例と図14に示す例との間にある。すなわち、70度用の素子数:45度用の素子数は、図13(70度を優先した場合)、図16及び図14(45度を優先した場合)に示す例の順に、
28:16、18:26、14:30
である。60個の素子の内、図12に示すグラフを用いて反射位相を決定できる素子数は44個であったので、素子数の割合を%で表現した場合は、
64:36、41:59、32:68
となる。更に、図13、図14、図16に関する素子数の割合の比較例から分かるように、70度用の素子数と45度用の素子数との割合が、所定の値になるように、各素子の反射位相が決定されてもよい。上記の反射位相の決定法は単なる具体例に過ぎず、他の観点から決定されてもよい。また、複数の選択肢を有する素子の反射位相を決定する際、若番順に素子の反射位相が決定されたが、別の順序で反射位相が決定されてもよい。
【0052】
[方法3]
方法1及び方法2の場合、個々の素子の場所において何らかの反射位相を実現できる場合は常に、その素子の反射位相を何れかの値に設定し、できるだけ多くの素子が何れかの反射波に寄与するようにしていた。このため、図13、図14、図16に示す例の場合、●及び■の印で示されているように、60個の素子の内44個の素子の反射位相が何らかの値に設定されている。
【0053】
しかしながら、このようにすると、所望の反射波だけでなく不要な反射波や干渉が生じてしまうおそれが生じる。図16に示す例の場合、素子M24は約60度の反射位相を有し、第2の反射角α2=45度の反射波に寄与するように意図されている。第2の反射角に寄与し且つ素子M24と同様な反射位相を有する素子はM4であり、M24及びM4付近の素子が第2の反射角α2に寄与している。図16に示す例の場合、素子M24に対して素子M4よりも近い位置にある素子M33も約60度の反射位相を有するが、素子M33は第1の反射角α1に寄与するように意図されている。すなわち、第1の反射角α1に寄与すべきM24付近の素子と、第2の反射角α2に寄与すべきM33付近の素子とが比較的接近しており、それらが干渉してしまうおそれがある。
【0054】
[方法3]はこのような不都合に対処する。具体的には、図30左側に示されているように、先ず、0-360度の範囲の反射位相が2つの領域に分けられる(3つ以上の反射角が意図されている場合は、反射位相の範囲が3つの領域に分けられる)。図示の例の場合、反射位相が、0度から180度までの第1の領域R1と180度から360度までの第2の領域R2とに分けられている。次に、領域R1に属する反射位相が第1の反射角α1=70度に寄与するように、個々の素子の反射位相が決定される。同様に、領域R2に属する反射位相が第2の反射角α2=45度に寄与するように、個々の素子の反射位相が決定される。ただし、素子M17-19のように、領域R1及びR2の何れの反射位相でも設定可能な場合は、何れか一方が選択される。何れを選択すべきかについては、方法1又は2において説明した任意の方法を使用することができる。
【0055】
図30はこのような観点から素子の反射位相を決定した一例を示す。図示されているように、第1の領域R1に属する反射位相は、第1の反射角α1=70度を実現するように決定され、かつ同じ反射位相の素子がほぼ等間隔に並んでいる。また、第2の領域R1に属する反射位相は、第2の反射角α2=45度を実現するように決定され、かつ同じ反射位相の素子がほぼ等間隔に並んでいる。このようにして素子の反射位相を決定することで、上述したような不都合な干渉を効果的に抑制できる。図30に示す例の場合、19個の素子(M5、M6、M13-15、M21-26、M28-30、M41-45)は、実現可能な反射位相が存在するにもかかわらず、何れの反射位相にも設定されていない。このため、反射位相が何らかの値に設定されている素子の数(25個)は、図13、図14及び図16の場合(44個)より少なくなるが、望まれない干渉や不要な反射波を抑制できる等の観点から有利である。
【0056】
<4.シミュレーション>
マルチビームリフレクトアレイについてのシミュレーション結果を説明する。図17は、シミュレーションに使用された解析モデルの斜視図を示す。図18は図17に示す解析モデルの平面図を示し、y軸方向に沿ってM1-M60が整列している。ただし、反射位相を実現できない場所の素子は省略されているので、理想的には60個存在する素子の内、実際に実現可能な44個の素子が示されている。図19は図17に示す解析モデルの側面図を示す。電波はz軸∞方向から到来し、yz面内で反射する。図17-図19に示す解析モデルは、マルチビームリフレクトアレイを構成する周期構造1つ分を表す。実際のマルチビームリフレクトアレイでは、このような周期構造の1つ以上が、x軸方向及びy軸方向に反復的に設けられている。
【0057】
図20は、反射波の遠方放射界を示し、反射波の強度を反射角とともに示している。シミュレーションでは、第1の反射角α1=70度及び第2の反射角α2=45度としている。図示されているように、70度及び45度の方向に強い反射波(ビーム)が生じている。0度方向にも強いビームが生じているが、これは地板等に起因する鏡面反射の影響を示す。
【0058】
次に、所望の反射角をなす反射波の強度と素子数との関係を考察する。第1の反射角α1=70度、第2の反射角α2=0度及び第3の反射角α3=-70度とした場合、第2の反射角α2=0度をなす反射波は、意図的に設計してもしなくても生じる。鏡面反射は地板等の影響により生じるからである。従って、全ての素子の反射位相が、第1の反射角α1=70度又は第3の反射角α3=-70度に関する値に設定されていたとしても、或る程度強い鏡面反射波が生じる(図21の上半分)。しかしながら、一部の素子を鏡面反射用に確保することも考えられる。これは、例えば、y軸方向に並ぶ一部の素子を単なる金属板に置換することで実現できる。図21右下の解析モデルに示されているように、素子全体の内3分の2に相当する素子の反射位相が第1の反射角α1=70度又は第3の反射角α3=-70度に関する値に設定され、残りの3分の1に相当する素子が金属板に置換されたとする。図21上下で極座標表示された反射波の2つの強度グラフを参照すると、鏡面反射波は、そのような金属板が設けられていなかった場合は0dB程度に過ぎないが、金属板が設けられている場合は7dBに及ぶほど強くなっていることが分かる。第1の反射角α1=70度及び第3の反射角α3=-70度に関する反射波については、金属板を設けた場合、鏡面反射が強くなったことに応じて若干弱くなっている。このように、金属板を意図的に設けることで、鏡面反射の強度(すなわち、第2の反射角α2=0度の反射波)を強めることができる。1/3の領域を金属板にしたことは、第2の反射角α2=0度のための反射位相を実現する素子数を増やしたことに相当する。従って、第2の反射角を実現するための素子の数を調整することで、第2の反射角をなす反射波の強度を調整することができる。
【0059】
図31に示すシミュレーション結果は、第1の反射角α1=-10度の方向に反射される電波(反射波)と、第2の反射角α2=0度の方向に反射される電波(反射波)と、第1の反射角に寄与する素子数nα1との関係を表す。電波の周波数は11GHzであり、リフレクタの大きさは470mm×350mm程度である。横軸は、70個の素子の内、第1の反射角α1=10度に寄与するように設計された素子の数nα1を表し、残りの素子が、第2の反射角α2=0度に寄与するように設計されているものとする(nα2=70−nα1)。縦軸は、第1及び第2の反射方向それぞれにおける反射波の散乱断面積を示し、値が大きいほど強く反射されていることを示す。シミュレーションは、水平制御及び垂直制御の双方について行われた。
【0060】
図32は、水平制御により、nα1=12個及びnα2=70-12=60個の素子から電波を反射させる際のシミュレーションモデルを示す。第1の反射角α1=-10度に寄与する素子はそれぞれの位置に応じた反射位相を有するようにパッチサイズが定められている。第2の反射角α2=0度に寄与する素子全体は金属板として実現できる。図33は図32に示すモデルを用いて行われたシミュレーション結果を示す。図中、第2の反射角α2=0度の方向に最大の反射波m1が生じており、第1の反射角α1=10度の方向に次に強い反射波m2が生じている。
【0061】
図34も図32と同様に水平制御により電波を反射させる際のシミュレーションモデルを示すが、nα1=38個及びnα2=70-38=34個の素子から電波を反射させる場合のシミュレーションモデルである点が異なる。図35は図34に示すモデルを用いて行われたシミュレーション結果を示す。図中、第1の反射角α1=10度の方向に最大の反射波m1が生じており、第2の反射角α2=0度の方向に次に強い反射波m2が生じている。図31、図33及び図35に示されているように、第1の反射角α1=10度に寄与する素子数nα1が増えるにつれて、第1の反射角α1=10度の方向に反射される電波の強度が強くなっている反面、第2の反射角α2=0度の方向に反射される電波の強度は弱くなっていることが分かる。
【0062】
図36-39は、図32-35と同様であるが、垂直制御を行っている点が異なる。図36は、垂直制御により、nα1=12個及びnα2=70-12=60個の素子から電波を反射させる際のシミュレーションモデルを示す。第1の反射角α1=10度に寄与する素子はそれぞれの位置に応じた反射位相を有するようにパッチサイズが定められている。第2の反射角α2=0度に寄与する素子全体は金属板として実現できる。図37は図36に示すモデルを用いて行われたシミュレーション結果を示す。図中、第2の反射角α2=0度の方向に最大の反射波m1が生じており、第1の反射角α1=10度の方向に次に強い反射波m2が生じている。
【0063】
図38も図36と同様に垂直制御により電波を反射させる際のシミュレーションモデルを示すが、nα1=38個及びnα2=70-38=34個の素子から電波を反射させる場合のシミュレーションモデルである点が異なる。図39は図38に示すモデルを用いて行われたシミュレーション結果を示す。図中、第1の反射角α1=10度の方向に最大の反射波m1が生じており、第2の反射角α2=0度の方向に次に強い反射波m2が生じている。図31、図37及び図39に示されているように、第1の反射角α1=10度に寄与する素子数nα1が増えるにつれて、第1の反射角α1=10度の方向に反射される電波の強度が強くなっている反面、第2の反射角α2=0度の方向に反射される電波の強度は弱くなっていることが分かる。
【0064】
このように、水平制御及び垂直制御いずれの場合についても、特定の反射波を実現するための素子の比率を制御することで、α1方向及びα2方向の反射波のレベルの比率を制御できることがわかる。
【0065】
<5.変形例>
<5.1 素子の代替例>
上記の説明において、マルチビームリフレクトアレイを構成する素子は、図5に示すようなマッシュルーム構造であったが、電波を反射することが可能な適切な如何なる素子が使用されてもよい。例えば、正方形のパッチの代わりに、リング状の導電性パターン(図22(1))、十字型の導電性パターン(図22(2))、並列的な複数の導電性パターン(図22(3))等を有する素子が使用されてもよい。また、マッシュルーム構造において、パッチと接地プレートとを接続するビアがない構造(図22(4))が使用されてもよい。ただし、上記の実施例のように素子にマッシュルーム構造を採用することは、より小さな構造を簡易に設計できる等の観点から好ましい。
【0066】
<5.2 グラフをシフトさせる>
マルチビームリフレクトアレイを構成する複数の素子各々の反射位相は、図12に示されるようなグラフを用いて決定されていた。この場合において、特定の場所にある素子について実現可能な反射位相が存在しない場合、1つしか存在しない場合及び2つ存在する場合があった。所望の反射角が3つ以上の場合、3つ以上の選択肢が生じる可能性がある。これは、図11に示すようなグラフに基づいていたためである。図11に示す例では、第1及び第2の反射角のグラフ双方ともに、初期位相0度の反射位相が、最初の素子で実現されるようになっている。しかしながら、初期位相が最初の素子で実現されることは必須ではない。反射位相は素子に関して相対的なものであり、60個(実際には60個未満)の素子全体を通じて所定の反射位相が実現されればよいからである。すなわち、図11に示されている2つのグラフの内、一方を他方に対して横軸方向に循環的にずらしてもよい。
【0067】
図23は図11のようなグラフを簡略化したものである。反射角α1を実現するための反射位相は、直線a及びbに沿って示されている(四角印)。反射角α2を実現するための反射位相は、直線cに沿って示されている(丸印)。図示の例の場合、MPからMQまでの位置にある素子は、対応する反射位相がない。従って、このまま設計すると、これらの素子は何れの反射角にも寄与しないことになる。
【0068】
図24は図23のグラフにおいて、座標の軸方向におけるマイナス方向に直線cをずらした様子を示す。このようにすると、MPないしMQの間の素子について、直線c上に対応する反射位相が存在するようになる。直線cは第2の反射角α2を実現する反射位相を表す。従って、MPないしMQの間の素子が第2の反射角α2に寄与するように、MPないしMQの素子の反射位相を設定することができる。図24に示す例の場合、対応する反射位相が存在しない素子はないので、何れの素子も反射波に何らかの寄与をもたらすことができる。図示の例では、対応する反射位相が存在しない素子が少なくなるように(無くなるように)グラフがシフトされているが、このことは必須ではない。逆に、対応する反射位相が存在しない素子が多くなるようにグラフがシフトされてもよい。例えば、対応する反射位相が存在しない素子の場所を金属板にすることで、鏡面反射強度を強くすることができる。
【0069】
<5.3 素子の配置例>
第1の反射角α1及び第2の反射角α2の2つの方向に電波を反射させる場合、ある素子配列をx軸方向及びy軸方向に反復的に並べることで、2つの方向にビームを反射させるマルチビームリフレクトアレイを形成することができる。素子配列の各々は、第1の反射角α1を実現するように反射位相が設定された第1の素子群と、第2の反射角α2を実現するように反射位相が設定された第2の素子群とを含むものである。このような素子の配置方法については上述したとおりである。しかしながら、本願により開示される発明はそのような形態だけでなく、次のような配置例を使用することもできる。
【0070】
図25は、複数の素子配列を配置する具体例を示す。図示の例のマルチビームリフレクトアレイでは、第1のグループG1がy軸方向に反復的に設けられている。第1のグループG1は、第1の素子配列MG1を2つ以上含んでいる。第1の素子配列MG1に属する素子の反射位相は、1つ以上の反射角方向に電波を反射させるように設定されている。また、図示のマルチビームリフレクトアレイでは、第1のグループG1に隣接して第2のグループG2も設けられている。第2のグループG2は、第2の素子配列MG2を2つ以上含んでいる。第2の素子配列MG2に属する素子の反射位相は、1つ以上の反射角方向に電波を反射させるように設定されている。ただし、第2の素子配列MG2に属する素子の反射位相の1つ以上は、第1の素子配列MG1に属する素子の反射位相と異なる。図25に示す例では水平制御を行うことが意図されているが、図26−29を参照しながら説明した垂直制御を行うように素子配列が構成されてもよい。
【0071】
例えば、第1の素子配列MG1が、第1の反射角α1で反射波を実現するように反射位相が設定された第1の素子群のみを含み、第2の素子配列MG1が、第2の反射角α2で反射波を実現するように反射位相が設定された第2の素子群のみを含んでいてもよい。この場合、第1のグループG1により第1の反射角α1の反射波が形成され、第2のグループG2により第2の反射角α2の反射波が形成されることになる。マルチビームリフレクトアレイにおいて、第1のグループG1及び第2のグループG2を混在させることで、第1の反射角α1及び第2の反射角α2の2つの方向に電波を反射させることが可能になる。
【0072】
或いは、第1の素子配列MG1及び第2の素子配列MG2の各々が、2つの方向に電波を反射するように設計されていてもよい。一例として、第1の素子配列MG1においては、第1の反射角α1の反射波が第2の反射角α2の反射波よりも優勢であり、第2の素子配列MG2においては、逆に、第2の反射角α2の反射波が第1の反射角α1の反射波よりも優勢であるように設計されていてもよい。第1の反射角α1を実現するように反射位相が設定された素子数nk1が、第2の反射角α2を実現するように反射位相が設定された素子数nk2より多くなるようにすると、第1の反射角α1の反射波が第2の反射角α2の反射波よりも優勢になる。例えば、図13及び図14を参照しながら説明した方法を用いて、何れかの反射波を優勢にすることができる。
【0073】
なお、第1及び第2の個々のグループG1、G2に含まれる素子配列MG1、MG2の数は、一般的には2つ以上であればよいが、3つ以上であることが好ましい。図6及び図7を参照しながら説明したように、素子の反射位相を決定するキャパシタンスCは、隣接するパッチ同士のギャップ(隙間)に大きく依存し、ギャップは2つの素子配列同士の間に形成されるからである。
【0074】
更に、上記の[方法3]を使用する場合における第1の領域R1及び第2の領域R2の定義は、全ての素子配列に対して等しくてもよいが、異なる素子配列に対して異なる定義が使用されてもよい。例えば、第1のグループG1における第1のギャップの列(ある2つの素子配列MG1により形成されるギャップの列)について、第1の領域R1が0-180度であり第2の領域R2が180-360度であると規定される一方、第1のグループG1における第2のギャップの列(別の2つの素子配列MG1により形成されるギャップの列)について、第1の領域R1が180-360度であり第2の領域R2が0-180度であると規定されてもよい。360度=2πの反射位相の範囲を0-180度とそれ以外に分割することは、単なる一例に過ぎず、[方法3]を適用する場合の反射位相の範囲は、同一の素子配列に対して、排他的な任意の複数の範囲とすることができる。
【0075】
以上本発明は特定の実施例を参照しながら説明されてきたが、それらは単なる例示に過ぎず、当業者は様々な変形例、修正例、代替例、置換例等を理解するであろう。説明の便宜上、上記の実施例はマッシュルーム構造の素子を有するリフレクトアレイの観点から説明されてきたが、本発明はそのような実施例に限定されず、他の状況で使用されてもよい。例えば、左手系伝送線路理論、メタマテリアル、EBG(電気的バンドギャップ)構造を用いたリフレクトアレイの設計、リフレクトアレイを応用する伝搬環境改善技術、リフレクトアレイを応用する反射波の方向制御技術等のような様々な場面で本発明を使用することも可能である。更に、上記の説明においてマルチビームリフレクトアレイは、到来波を複数の方向に反射させていたが、逆に、複数の方向から到来する電波を1つの方向に反射させてもよい。発明の理解を促すため具体的な数値例を用いて説明がなされたが、特に断りのない限り、それらの数値は単なる一例に過ぎず適切な如何なる値が使用されてもよい。発明の理解を促すため具体的な数式を用いて説明がなされたが、特に断りのない限り、それらの数式は単なる一例に過ぎず適切な如何なる数式が使用されてもよい。実施例又は項目の区分けは本発明に本質的ではなく、2以上の実施例又は項目に記載された事項が必要に応じて組み合わせて使用されてよいし、ある項目に記載された事項が、別の項目に記載された事項に(矛盾しない限り)適用されてよい。本発明は上記実施例に限定されず、本発明の精神から逸脱することなく、様々な変形例、修正例、代替例、置換例等が本発明に包含される。
【符号の説明】
【0076】
M1-MN 素子
51 接地プレート
52 ビア
53 パッチ
α1 第1の反射角
α2 第2の反射角

【先行技術文献】
【非特許文献】
【0077】
【非特許文献1】T. Maruyama, T. Furuno, and S.Uebayashi,“Experiment and analysis of reflect beam direction control using a reflector having periodic tapered mushroom-like structure,”ISAP2008,MO-IS1,1644929,p.9.
【非特許文献2】John Huang, Jose A. Encinar,”Reflectarray”pp.169-179,IEEE press, 2007.

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の方向に沿って整列した複数の素子を含む素子配列が2つ以上含まれているマルチビームリフレクトアレイであって、
前記素子配列の少なくとも1つに含まれている第1の素子群及び第2の素子群各々において、2つの素子各々が反射する電波の位相差は、該2つの素子の間隔と該素子による反射角に対する三角関数の値との積に比例し、
前記第1の素子群における隣接する素子の間隔は、前記第2の素子群における隣接する素子の間隔の有理数倍に等しい、マルチビームリフレクトアレイ。
【請求項2】
前記第1及び第2の素子群各々において、2つの素子各々が反射する電波の位相差Δφiと、該2つの素子の間隔Δyiと、該素子による反射角αiとが、
Δφi=k×Δyi×sin(αi)
の関係を満たし、iは素子群を指定するパラメータであり、kは波数である、請求項1記載のマルチビームリフレクトアレイ。
【請求項3】
前記第1の素子群に属する素子の数nk1と前記第2の素子群に属する素子の数nk2との割合が、所定値であるように素子の数が決定されている、請求項2記載のマルチビームリフレクトアレイ。
【請求項4】
前記有理数mfと、前記第1の素子群に属する素子の数nk1と、前記第2の素子群に属する素子の数nk2とが、
mf=[nk1×sin(α1)]/[nk2×sin(α2)]
の関係を満たす、請求項3記載のマルチビームリフレクトアレイ。
【請求項5】
前記素子配列が第1ないし第JのJ個の素子群を含み、前記素子配列は、各素子群の素子の数(nk1,...,nkJ)の最大公倍数に等しい数の素子を単位とする周期構造を有し、Jは2以上の自然数である、請求項4記載のマルチビームリフレクトアレイ。
【請求項6】
2つ以上の前記素子配列の何れかにおいて、前記第1の素子群に属する素子の数nk1が、前記第2の素子群に属する素子の数nk2よりも多く含まれている、請求項5記載のマルチビームリフレクトアレイ。
【請求項7】
反射角α1、...、αJの各々に対応する素子の数の割合の大小によって、各反射角の方向の反射散乱電界のレベルの割合を決定する、請求項1ないし6の何れか1項に記載のマルチビームリフレクトアレイ。
【請求項8】
前記第1又は第2の素子群が、同一の反射位相で電波を反射する少なくとも2つの素子を有する、請求項5記載のマルチビームリフレクトアレイ。
【請求項9】
前記第1の素子群が前記第2の素子群よりも優先的に含まれている又は前記第1の素子群のみが含まれている複数の第1の素子配列と、
前記第2の素子群が前記第1の素子群よりも優先的に含まれている又は前記第2の素子群のみが含まれている複数の第2の素子配列と
が並列的に配置されている、請求項1ないし7の何れか1項に記載のマルチビームリフレクトアレイ。
【請求項10】
3つ以上の前記第1の素子配列と3つ以上の前記第2の素子配列とが並列的に配置されている、請求項9記載のマルチビームリフレクトアレイ。
【請求項11】
前記複数の第1又は第2の素子配列に属する素子配列の各々において、前記第1の素子群に属する素子の反射位相が2πより狭い第1の範囲R1内の値に設定され且つ前記第2の素子群に属する素子の反射位相が前記第1の範囲とは排他的な2πより狭い第2の範囲R2内の値に設定される、請求項9又は10に記載のマルチビームリフレクトアレイ。
【請求項12】
前記所定の方向に沿って整列した前記複数の素子が、複数のパッチと接地プレートとを少なくとも有するマッシュルーム構造により形成されている、請求項1ないし11の何れか1項に記載のマルチビームリフレクトアレイ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate

【図27】
image rotate

【図28】
image rotate

【図29】
image rotate

【図30】
image rotate

【図31】
image rotate

【図32】
image rotate

【図33】
image rotate

【図34】
image rotate

【図35】
image rotate

【図36】
image rotate

【図37】
image rotate

【図38】
image rotate

【図39】
image rotate


【公開番号】特開2013−48344(P2013−48344A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−185848(P2011−185848)
【出願日】平成23年8月29日(2011.8.29)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成23年度 総務省「超高速移動通信システムの実現に向けた要素技術の研究開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(392026693)株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ (5,876)
【Fターム(参考)】