説明

マルチフィラメント糸条用交絡装置およびそれを用いたマルチフィラメント糸条の製造方法

【課題】本発明の課題は、従来の装置および方法によっては達成されなかった、圧力空気の消費量が少なくてマルチフィラメント糸条に高度の均一な交絡をかけることができる新規な交絡装置を提供することである。
【解決手段】本発明の課題は、交絡ノズルを有するマルチフィラメント糸条用交絡装置において、該交絡ノズルは周囲が壁面によって囲まれ糸条導入部、連結部および糸条出口部を有し両端が開放された空洞から構成され、糸条導入部から連結部までの形状が、該導入部が広く該連結部が狭くなるような円錐台形状であって、該連結部から該出口部までが円筒形状であり、該交絡ノズルの円錐台形状の壁面には該交絡ノズル内部に流体を噴出させ糸条を交絡処理するための複数の噴射孔を設けた連結部からなることを特徴とするマルチフィラメント糸条用交絡装置によって達成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチフィラメント糸条用交絡装置に関する。詳しくは、圧力空気の消費量を抑えながら太繊度でフィラメント数の多い産業用繊維糸条に均一な交絡を高度にかけることができる新規な交絡装置、およびそれを用いた太繊度糸の高速製糸方法に関する。
【背景技術】
【0002】
太繊度でフィラメント数の多い産業用繊維は、糸条に交絡を付与して集束性を高めておくことが、製織、編網等の工程安定化のために極めて重要である。特に、シ−トベルト、エアバッグ、重布等の織物においては毛羽の減少と合わせ、糸条の集束性を高めておくことが製織速度、稼働率、収率等を高め、かつ製品の品位を良くするために効果的である。
【0003】
上記、製織性をよくするために、過去には撚糸したり、糊付けをしたりして集束性を高める方法が採用されていたが、近年、交絡処理技術が開発され、マルチフィラメントの集束性付与技術として広く採用されている。
【0004】
交絡処理技術は、均一な交絡であって、目的に合った交絡数を、少ない圧力空気消費量でマルチフィラメントに交絡を付与することが必要である。交絡の程度は、噴出する圧力空気の流量、圧力、マルチフィラメント間の摩擦係数、フィラメント数、フィラメントの剛性、繊度、張力、速度等の要因にも依存するが、交絡ノズルの性能に最も依存する。従って、糸条交絡技術が開発されて以来、高性能交絡ノズルの開発がなされてきた。しかしながら、近年益々産業用繊維の生産速度は高まり、更に産業用繊維の品種も多様化してきたこと、また製織、編網加工においても高速化等の効率的プロセスが採用されているため、交絡の均一性、交絡度を高めること、特に、高速製糸の下での交絡付与が必要となり、交絡技術の更なる改良が求められている。
【0005】
マルチフィラメントの交絡処理に関する基本技術およびその改良に関する技術として、例えば、特許文献1、特許文献2、および特許文献3等がある。
【0006】
特許文献1では、製糸速度が1500〜2500m/minの比較的高速下においても十分な交絡を付与できる産業用マルチフィラメント用交絡装置が提案されている。しかし、近年製糸速度は3000〜6000m/minとさらに高速化し、このような状況下では特許文献1に記載の交絡装置を用いても十分な交絡を付与することができない。また、内面が壁面で囲まれているため、実際に生産に使用する場合は糸掛時に糸条を通すための特別な配慮が必要であるが、特許文献1ではこのことを考慮していない。 本発明は、特許文献1と概ね目的を同じとするものであるが、3000〜7000m/minの高速下においても高度な交絡、より均一な交絡、そしてより流体消費量を抑えて交絡を付与するための好適な交絡処理装置およびそれを用いた製糸方法を提案するものである。
【0007】
特許文献2は、「マルチフィラメント糸のより均一な絡み合い(交絡)を、特に連続する交絡位置間のより均一な間隔と、メ−タ−当たりの交絡位置で測定したより高い交絡密度とを、達成することができるように構成することにある。」を課題とし、該課題は、「マルチフィラメントの糸通路を制限している両壁面の、少なくとも一方の壁面が曲げられていて、対称平面で測った両壁面間の間隔が吹付けノズルの開口部近傍の最小値から糸通路の両端部に向かって次第に増加するように構成されている。」ことによって達成されるとしている。
【0008】
特許文献3は、「撚りを付与した糸条と同等の操作性が得られる集束性を付与し、ル−プや毛羽の生成の少なく、従来のプロセスより少ない流体消費量で済む効率的な走行糸条の各フィラメントに交絡を付与する方法を提供すること。」を課題とし、該課題は、「流体を噴射してマルチフィラメント糸を交絡処理して集束せしめたマルチフィラメント糸の製造において、新タイプの高圧流体噴射装置を用いる方法を提供する。」ことによって達成されるとしている。
【0009】
特許文献3によって開示された新タイプ高圧流体噴射装置のうち、特許文献3の図7の高圧流体噴射孔は、糸条導入部から糸条処理部までが円筒形状であって、該糸条処理部から糸条出口までの形状が、該処理部が狭く該糸条出口部が広くなるような円錐台形状であることを特徴としている。更に、該特許文献の図7の該流体噴射孔の断面形状は走糸方向に対し噴出口が狭くなるような形状をしている。
【特許文献1】特開昭60−88146号公報
【特許文献2】特開平6−17359号公報
【特許文献3】米国特許第3286321号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、製糸速度が3000〜6000m/minという高速下において、従来の装置および方法によっては達成されなかった、圧縮空気の消費量を抑えてマルチフィラメント糸条に均一な交絡を高度にかけることができる新規な交絡装置を提供することである。およびそれを用いた製糸方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題は、以下の手段によって達成できる。
1.交絡ノズルを有するマルチフィラメント糸条用交絡装置において、該交絡ノズルは周囲が壁面によって囲まれ糸条導入部、連結部および糸条出口部を有し両端が開放された空洞から構成され、糸条導入部から連結部までの形状が、該導入部が広く該連結部が狭くなるような円錐台形状であって、該連結部から該出口部までが円筒形状であり、該交絡ノズルの円錐台形状の壁面には該交絡ノズル内部に流体を噴出させ糸条を交絡処理するための複数の噴射孔を設けた連結部からなることを特徴とするマルチフィラメント糸条用交絡装置。
2.交絡ノズルの円錐台形状の糸条導入部の開放端の直径Dと連結部の断面の直径dの比D/dが1.5〜10の円錐台形状であり、交絡処理部の噴射孔の中心位置が該連結部より10mm以内の糸条導入部側にあり、該連結部と糸条出口までが該連結部と同じ直径を有する円筒形状であって、かつ、交絡ノズルの該糸条導入部と連結部までの長さが5〜50mmであり、該連結部と糸条出口までの長さが5〜50mmであることを特徴とする請求項1記載のマルチフィラメント糸条用交絡装置。
3.噴射孔が、直径1〜5mmの孔が3つ同軸上に配置され、かつ該噴射孔の断面形状が円筒型であり噴出方向が糸条の走行方向に垂直であることを特徴とする請求項1または2記載のマルチフィラメント糸条用交絡装置。
4.上記1.記載のマルチフィラメント糸条用交絡装置を糸状の巻き取り前に設置して、3000〜6000/分の速度で繊度が200〜4000dtex、フィラメント数が30〜600、強度が6〜11cN/dtexの糸条を製糸することを特徴とするマルチフィラメント糸条の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、マルチフィラメント糸条に交絡を付与するに際し、圧縮空気の消費量を抑えても高度の均一な交絡を付与することができる糸条交絡装置を提供できる。また、従来均一な交絡を高度に付与することが困難であった太繊度、多フィラメントで高強度の繊維の高速製糸による製造方法が提供できる。
【0013】
本発明は、本発明の交絡装置を用いて、高圧空気を走行する合成繊維マルチフィラメント糸条に噴射させ、交絡を付与することによって集束性を与え、該合成繊維マルチフィラメントを織物、編物、組物等に製編織組するに際し、該加工工程の通過性が良好で、高速化や広幅化等の効率生産に適し、かつ稼働率や収率に優れた糸条を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明に適用されるマルチフィラメント糸条は、素材によらず広く適用することができるが、合成繊維を使用することが最も好ましい。例えば、ポリエチレンテレフタレ−ト、ポリブチレンテレフタレ−ト、ポリ乳酸等のポリエステル繊維、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46等ポリアミド繊維、ポリアラミド繊維、ポリフェニレンサルファイド繊維、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン繊維、ポリビニルアルコ−ル繊維、PAN繊維等である。特に本発明の効果を顕著に得ることができるのは、マルチフィラメント糸条の繊度が200〜4000dtex、好ましくは300〜3000dtex、フィラメント数が30〜600、好ましくは50〜500、強度が6〜11cN/dtx、好ましくは7〜9cN/dtexの糸条を、3000〜7000/分、好ましくは3000〜5000m/分の速度で製糸するプロセスに適用する場合である。従来、太繊度、多フィラメントで高強度の繊維を3000m/min以上の高速で製糸しながら、高度の交絡を均一に付与することは困難とされていたが、本発明の交絡処理装置を用いることによって初めて可能となった。
【0015】
マルチフィラメント糸条の繊度は200dtex未満でも本発明の効果を得ることができるが、従来の方法でもほぼ満足する交絡が得られることがある。一方、4000dtexを越えても本発明を適用できるが、4000dtexを越える太繊度糸条を高速で製糸するケ−スは通常少ない。フィラメント数が30未満の場合も、上記と同様、本発明効果を得ることができるが、従来技術でも効果が得やすいフィラメント数である。また、600フィラメントを越えるフィラメント数の多フィラメント糸を高速で製糸するケ−スも少ない。
【0016】
また、本発明のマルチフィラメント糸条の製糸速度が3000m/分未満であっても勿論本発明効果が得られるが、他の交絡装置を使用しても達成可能である。また、7000m/分を越える速度は、本発明の太繊度、多フィラメントで高強度のマルチフィラメント糸条は実用生産されていない。
【0017】
以下、図面に基づいて本発明のマルチフィラメント糸条用交絡装置を説明する。図1は本発明のマルチフィラメント糸条用交絡装置の一態様の平面図、図2は図1のA−A縦断面図、図3は圧縮空気噴射孔を含む平面でマルチフィラメント糸条用交絡装置を切断した断面図である。マルチフィラメント交絡装置の交絡ノズルは周囲が壁面1によって囲まれ、糸条導入部6、交絡処理部2および糸条出口部7を有し両端が開放された空洞から構成される。糸条導入部6から連結部3までの形状が、導入部6が広く連結部3が狭くなるような円錐形状であって、かつ、連結部3以降糸条出口部7までが円筒形状である。交絡ノズルの円錐形状の壁面1には交絡ノズル内部に流体を噴出させ糸条を交絡処理するための複数の圧縮空気噴射孔4を設けた交絡処理部2からなる。交絡処理部2に糸条Yを走行させ、該交絡処理部の壁面から圧縮空気噴射孔4を介して圧縮空気5を噴出させて前記走行糸条Yを交絡させる。交絡ノズルはノズル上部8aおよびノズル下部8bからなる。このような形状としたのは、糸条が気体乱流中を通過する際に、バックフロー作用により局所的に糸条張力を低下させると共に、交絡付与後の圧縮空気を効率良く外部に排出させるためである。こうすることにより製糸速度が3000〜6000m/minの高速化においても、太繊度でフィラメント数の多い産業用繊維にCF値で30を超える高度な交絡を均一にかけることができるようになった。
【0018】
また、前記交絡ノズルの糸条導入部6の開放端の直径Dと連結部3の断面の直径dの比D/dは1.5〜10の円錐台形状であり、交絡処理部2の圧縮空気噴射孔4の中心位置が連結部3より10mm以内の糸条導入部側にあり、該連結部3と糸条出口部7までが該連結部と同じ直径を有する円筒形状であって、かつ、交絡ノズルの該糸条導入部と連結部3までの長さが5〜50mmであり、該連結部3と糸条出口までの長さが5〜50mmであることが好ましい。
【0019】
また、前記交絡ノズルの交絡処理部2には、直径1〜5mm、好ましくは1.5〜3.5mmの圧縮空気噴射孔4が図3に示すように3つ同軸上に配置され、かつ該流体噴射孔の噴出方向は糸条の走行方向に垂直であることが好ましい。また上記3つの圧縮空気噴射孔は等間隔であることが好ましい。
【0020】
従来の交絡ノズルに設けられている流体噴射孔は、通常1または2孔であり、本発明のように圧縮空気噴射孔4および糸条導入部1と糸条出口部7以外は密閉している交絡ノズルにおいては、通常1または2孔のタイプが多い。圧縮空気噴射孔4が3孔タイプの場合は、交絡処理部2で糸条が壁面1に接触し難く、効率的に交絡が付与されるため好ましい。しかしながら、本発明交絡ノズルのように上記密閉タイプのものは加工が難しいため3孔以上の流体噴射孔を有するものは一部を除いて実用化されていなかった。そのため本発明の交絡ノズルは、密閉タイプではあるが、交絡処理時以外は2分割可能であり、即ち、圧縮空気噴射孔の加工は2分割して加工できることが好ましい。それにより3孔とすることが容易となる。交絡処理効果および圧縮空気噴射孔の加工性、圧空消費量を考慮すると、3孔タイプが最も好ましい。3孔タイプの圧縮空気噴射孔の配置は、2分割された交絡ノズルの一方8aに1孔、他方8bに2孔とし、それら3孔は同軸上に各120°間隔で、走行糸条軸に対し対称に配置することが好ましい。
【0021】
次に、本発明では、交絡ノズルの交絡処理部2に配置された圧縮空気噴射孔4は、連結部3から糸条導入部6側に設置されていることが好ましい。その最適な位置は、連結部3より0〜10mm糸条導入部6側であり、好ましくは0〜5mm糸条導入部6側である。また、連結部3と糸条出口部7までの長さは5〜50mmであることが好ましい。
【0022】
更に本発明の交絡ノズルは、糸掛け時には該交絡ノズルが上下に2分割され、糸条走行方向と同方向にスリット部が開口して糸掛けを容易にし、糸掛け後糸条の交絡処理時には該スリット部が閉口するよう、糸掛け用スリット部が手動又は自動的に開閉することが好ましい。
【0023】
本発明の2分割交絡ノズルは、例えば、上部ノズル8aと下部ノズル8bをOリングを介して締め付け、両ノズル間を密閉とするが、糸掛け時には、螺旋螺子など(図示せず)を弛めて上下交絡ノズル間にスリットを形成させ、糸掛けを行う。該螺旋螺子などは手動で操作できるようにしてもよいし、自動で操作できるようにしてもよい。
【0024】
本発明の交絡ノズルは、上記特定した交絡ノズル形状および寸法とすることによって本発明効果を得ることができる。即ち、上記交絡ノズルを用いてマルチフィラメント糸条の交絡処理をすると、圧力空気消費量が少なくても高度の交絡を均一に付与することができる。特に、太繊度の多フィラメント糸条を高速で製糸する場合は、交絡処理部で圧縮空気を噴射する際の走行糸条の張力は0.2〜0.3cN/dtexと高いにも関わらず高度の交絡を付与することができる。従来のように、高度の交絡を付与し易いように張力を低くするとル−プ状フィラメントが生成し、タルミを有する糸条となる。
【0025】
かかる本発明の交絡ノズルを用いると、従来の交絡ノズルの欠点であった、走行糸条に与えられる回転作用によって仮撚りが生ずることなく、高圧流体による交絡が効率的に付与される。
【0026】
次に、本発明のマルチフィラメント糸条交絡装置を用いて、圧力空気の消費量が少なくて、マルチフィラメント糸条に均一な交絡を高度にかけることができる交絡付与方法について述べる。
【0027】
本発明法は、本発明マルチフィラメント糸条の交絡装置を、糸条の巻き取り装置前に設置して、マルチフィラメント糸条にCN値で30〜60個/mの交絡を付与する。糸条の巻き取り装置前とは、製糸延伸工程の最終ロ−ル、通常は1対の弛緩ロ−ルを捲回させた後、巻取機に巻き取るまでの間であり、巻き取り機において巻き取りチ−ズを把持して回転するスピンドルより通常1m以上の振り支点長を確保し、その上部に交絡装置を設置する。該交絡装置の前後には、糸道を固定するためのガイドが設置されていても良い。
【0028】
糸条に付与する交絡数は、CN値で20〜60個/m、好ましくは30〜60個/m
である。15個/m個未満では、糸条の集束性が十分でなく、またこの程度の交絡数の場合は本発明効果が明確に得られないことがある。
【0029】
本発明交絡装置を用いて交絡付与を行うにあたり、マルチフィラメント糸条に、0.1〜1.0Paの圧力空気を前記マルチフィラメント糸条用交絡装置に供給し、該装置の交絡ノズルより流量0.1〜1.5m/分で圧力空気を噴出させながら、走行するマルチフィラメント糸条に交絡を付与することが好ましい。前記マルチフィラメント糸条用交絡装置に供給する圧力空気は、好ましくは、0.2から0.8Paである。0.1Pa未満では、十分な交絡が得られず、一方、1.0Paを越える圧力空気は、本発明交絡装置においては不要である。また、本発明の交絡装置の交絡ノズルから供給する圧力空気の流量は、好ましくは、0.2〜1.2m/分である。0.2m/分未満では交絡が十分かからず、一方1.5m/分を越える高流量は本発明では不要である。
【0030】
次に、本発明を実施例により更に具体的に説明する。
【実施例】
【0031】
本文および実施例に示した各特性の定義および測定法は以下の通りである。
【0032】
(1)繊度:JIS L1013(2002) 8.3.1 a)正量繊度 の方法で測定した。
【0033】
(2)強度・伸度:JIS L1017(2002)8.5 a)の方法で測定した。
【0034】
(3)固有粘度(IV):オストワルド粘度計を用いてオルソクロロフェノ−ル25mlに対して試料2gを溶解し、溶液の相対粘度ηrを25℃で測定し、次の近似式より極限粘度(IV)を求めた。
IV=0.0242ηr+0.2634
【0035】
(4)交絡数:CF値:JIS L1013(1999)の8.15交絡度に記載の方法に従って測定した。CN値:LAWSON−HEMPHILL社製EIB−Eを用い、非接触光学式測定を行った。測定は、CCDカメラ部での張力が0.04±0.01cN/dtexとなるように装置のヒステリシスブレーキロールおよび給糸部の皿テンサーを調整し、速度100m/分にて実施した。また、付属のENTANGLEMENTソフトを使用し、この際、交絡判定に用いる閾値(VT)はVariable threshold法にて(√(総繊度))×5に、フィルタースキャン(FS)は3に設定した。本発明で用いる交絡数は前記測定装置あるいは測定方法を用い、1m当たりの交絡数を連続して100m測定、即ちN=100の交絡数測定結果から、その平均値を交絡数とした。
【0036】
実施例1
固有粘度IV1.20のポリエチレンテレフタレ−トポリマをエクストル−ダ−型紡糸機によって溶融紡糸した。紡糸温度は295℃とした。紡糸パック中で20μmの金属不織布で濾過した後、φ0.5mm108ホ−ルの口金を通して紡出した。紡出糸条は、口金直下の300mm長さの加熱筒で囲まれた300℃の加熱雰囲気中を通過した後、その直下に取り付けられた長さ50cmの保温筒中を通過した後、20℃の冷風を吹き付けられて冷却され、固化した。次いで糸条は油剤を付与された後、600m/分の表面速度で回転するネルソン型の引取ロ−ル(1GR)に捲回して引き取った。該引取糸条は連続して2GRとの間で5%のストレッチをかけた後、2GRと3GR間で1段めの延伸を3.78倍、3GRと4GR間で2段めの延伸を1.36倍で行った。全延伸倍率は5.4倍である。次いで4GRと5GR間で4%弛緩した後、巻取機でチ−ズ状に巻き取った。1GRは70℃、2GRは130℃、3GRは200℃、4GRは230℃、5GRは140℃とした。全てのロ−ルはφ230の加熱ロ−ルからなるネルソンロ−ルであり、糸条の捲回数は、1GR:3、2GR:3、3GR:5、4GR:7、5GR:5とした。
【0037】
本発明の交絡装置は、5GRと巻取機間に設置した。製糸条件、交絡装置の仕様、交絡付与条件等を表1の実施例1に示した条件で行った。
【0038】
交絡装置直前の張力は、英光産業(株) 製 テンションスター P型 を使用して測定し、0.2±0.05cN/dtexとなるように管理した。
【0039】
その結果を表2に示すが、この時得られた本発明装置の性能および交絡性は良好であった。
【0040】
実施例2〜8
実施例1と同様にして、本発明の交絡付与装置(ノズルタイプA)の仕様および本発明の交絡付与方法の範囲で表1の実施例2〜8の通り種々条件を変更してテストを行った。その結果を表2に示すが、いずれも、CF値、CN値共に30を超えており、交絡装置の性能および交絡性は非常に良好であった。
【0041】
【表1】

【0042】
【表2】

【0043】
比較例1〜6
実施例1と同様にして、図5に示す特許文献1に記載の交絡付与装置に準ずる形状の交絡付与装置(ノズルタイプB)、ヘバライン社製PolyJet TG−45(HN403A/CN52R)(ノズルタイプC)、および特許文献3に記載の交絡付与装置に準ずる形状の交絡付与装置(ノズルタイプD)を用いて表3の比較例1〜6のテストを行った。その結果を表4に示すが、CF値、CN値共に30を超える物は無かった。
【0044】
【表3】

【0045】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の交絡処理装置は、マルチフィラメント糸条に交絡を付与するに際し、圧縮空気の消費量が少なくて高度の均一な交絡を付与することができるため、あらゆるマルチフィラメント糸条に交絡を付与することができる。特に、従来均一な交絡を高度に付与することが困難であった太繊度、多フィラメントで高強度の繊維の高速製糸方法に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明のマルチフィラメント糸条用交絡装置の一態様の平面図である。
【図2】図1におけるA−A縦断面図を示す。
【図3】噴射孔ノズルを含む平面でマルチフィラメント糸条用交絡装置を切断した断面図である。
【図4】従来の交絡ノズルを示したものである。
【図5】従来の交絡付与装置を示したものである。
【符号の説明】
【0048】
1 :壁面
2 :交絡処理部
3 :連結部
4 :圧縮空気噴射孔
5 :圧縮空気の流れ
6 :糸条導入部
7 :糸条出口部
8a:上部ノズル
8b:下部ノズル
76:従来例の交絡ノズルの糸条導入部
73:従来の交絡ノズルの圧縮空気噴射孔
72:従来の交絡ノズルの糸条の出口
Y :糸条

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交絡ノズルを有するマルチフィラメント糸条用交絡装置において、該交絡ノズルは周囲が壁面によって囲まれ糸条導入部、連結部および糸条出口部を有し両端が開放された空洞から構成され、糸条導入部から連結部までの形状が、該導入部が広く該連結部が狭くなるような円錐台形状であって、該連結部から該出口部までが円筒形状であり、該交絡ノズルの円錐台形状の壁面には該交絡ノズル内部に流体を噴出させ糸条を交絡処理するための複数の噴射孔を設けた連結部からなることを特徴とするマルチフィラメント糸条用交絡装置。
【請求項2】
交絡ノズルの円錐台形状の糸条導入部の開放端の直径Dと連結部の断面の直径dの比D/dが1.5〜10の円錐台形状であり、交絡処理部の噴射孔の中心位置が該連結部より10mm以内の糸条導入部側にあり、該連結部と糸条出口部までが該連結部と同じ直径を有する円筒形状であって、かつ、交絡ノズルの該糸条導入部と連結部までの長さが5〜50mmであり、該連結部と糸条出口部までの長さが5〜50mmであることを特徴とする請求項1記載のマルチフィラメント糸条用交絡装置。
【請求項3】
噴射孔が、直径1〜5mmの孔が3つ同軸上に配置され、かつ該噴射孔の断面形状が円筒型であり噴出方向が糸条の走行方向に垂直であることを特徴とする請求項1または2記載のマルチフィラメント糸条用交絡装置。
【請求項4】
請求項1記載のマルチフィラメント糸条用交絡装置を糸条の巻き取り前に設置して、3000〜6000/分の速度で繊度が200〜4000dtex、フィラメント数が30〜600、強度が6〜11cN/dtexの糸条を製糸することを特徴とするマルチフィラメント糸条の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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