説明

マルチブロック共重合体

マルチブロック共重合体は、少なくとも一つの親水性コラーゲン状ブロックおよび少なくとも一つのシルク状ブロックを有する。前記シルク状ブロックはアミノ酸配列((GA)GX)を有し、ここでGはグリシンであり、Aはアラニンであり、mおよびnは少なくとも2である。Xはイオン化可能アミノ酸である。正電荷を帯びた前記イオン化可能アミノ酸は好ましくはヒスチジンであり、負電荷を帯びたものは好ましくはグルタミン酸である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチブロック共重合体に関し、より詳細にはpHスイッチ可能マルチブロック共重合体に関し、さらに詳細にはトリブロック共重合体に関し、さらに詳細には超分子ナノファイバーを形成するトリブロック共重合体に関する。
【背景技術】
【0002】
非共有相互作用によって推進される複雑で明確に定義された(well−defined)構造の自己集合および自然形成は、化学、材料科学およびナノテクノロジーにおいて重要なテーマになっている。合成構成要素、超分子構造およびナノ構造材料のインスピレーションの多くは生物学から来ている。例えば、超分子化学の最も成功した「主力商品」のうちの一つであるウレイドピリミジノン四重水素結合性基はヌクレオチド塩基によって着想を与えられた。天然タンパク質の内部でまたそれらの間で、多くの異なった非共有相互作用間での繊細な相互作用が、膨大な種類の明確に定義された分子構造および集合体を決定する。知られた非共有相互作用を有する自然発生のペプチド配列を用いて新しい超分子構造を作ることは魅力的と思われる。分子生物学における最近の発展のため、設計されたDNAテンプレートの生物表現によって新規なペプチド共重合体を設計して作ることが現在実現可能である。ペプチド共重合体は、合成ポリマーと天然タンパク質との間の中間物として考えることができる。これらのペプチド共重合体のアミノ酸配列は、異なった複雑さを有するペプチド共重合体を作るのに調整することができる。ペプチド共重合体は、天然タンパク質の興味深いモデルとして考えることができる。これらはまた、完璧に定義された長さおよびモノマー配列として有用であることがわかった。
【0003】
通常、ブロック共重合体は、ホモポリマーのブロックから作られる。しかし、天然タンパク質生産バイオマシナリーを用いて、種々のモノマー(アミノ酸)の配列からなるブロックを作ることができ、ブロックが示す機能、形および物理的挙動のレパートリーを増やすことができる。ブロックに用いられる多くのアミノ酸配列は、天然配列にその起源を持つ。特定の挙動を有する天然配列は、所望の長さのブロックを達成するように合理的に再設計され繰り返される。興味深い挙動を持つこのような天然配列の例は、絹タンパク質におけるグリシン、アラニンリッチな繰り返しおよびプロリンリッチなコラーゲン分子である。
【0004】
アミノ酸配列(GAGAGAGX)(ここでGはグリシン、Aはアラニン、Xはグルタミン酸(E、pH約3−5より上でアニオン性または部分的にアニオン性)またはリジン(K、pH10より下でカチオン性))を含むシルク状ブロックが文献で報告されている。XがEであるシルク状ブロックは文献1に記載されている。同様に、XがKであるシルク状ブロックは文献2に、Xが交互にY、E、HおよびKであるシルク状ブロックは文献3、4に記載されている。グルタミン酸(E)を含むシルク状ブロックは負電荷を帯びており、酸性条件においてのみ超分子構造を形成する。一部のアプリケーションにおいては、中性のpHまたは塩基性条件で構造を形成することが必要でありうる。
【0005】
中間ブロック(mid block)(GAGAGAGE)を持ち両側に多分散PEG鎖が化学的に結合したポリマーが文献5、6に記載されている。中間ブロック(GAGAGAGE)を持ち片側に多分散PEG鎖が化学的に結合したポリマーの化学合成は、多くの処理ステップを伴い面倒でありうる。
【0006】
EP1790657A1はpHスイッチ可能な膜透過ペプチドを開示し、さらに、それらを含む複合体および膜融合の刺激剤としてのそれらの使用を開示する。ここで主張されている発明のペプチドは、治療上有効な物質を真核性細胞に導入するのに特に有用である。これは、式(A)(B)(C)(B)(A)を有するアミノ酸配列を持つペプチドを説明し、ここで、Aは本質的に親水性のアミノ酸、好ましくはグリシン(G)、リジン(K)またはアルギニン(R)であり、特に好ましくはヒスチジン(H)であり;Xは0または1であり;Bはヒスチジン(H)でありり;Yは1〜6の整数であり;またはYは0〜5の整数であり;(Aがヒスチジン(H)でありXが係数1のときには);Cは本質的に疎水性のアミノ酸であり、好ましくはバリン(V)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、プロリン(P)、グリシン(G)、システイン(C)、トリプトファン(W)、アラニン(A)、フェニルアラニン(F)およびメチオニンからなる群から選択され;Zは7から30の整数である。これらのペプチドは非常に小さく膜透過ペプチドとしてのみ用いられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、制御された自己集合が可能であり好ましくは任意のpHで超分子構造を形成することのできる大きなマルチブロック共重合体を合成することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の側面によれば、本発明は、少なくとも一つの親水性コラーゲン状ブロックおよび少なくとも一つのシルク状ブロックを有するマルチブロック共重合体であって、前記シルク状ブロックはアミノ酸配列((GA)GX)を有し、ここでGはグリシンであり、Aはアラニンであり、mおよびnは少なくとも2であり、Xはイオン化可能アミノ酸であり、前記イオン化可能アミノ酸は正電荷または負電荷を帯びるようにすることができる、共重合体に関する。
【0009】
本発明の第2の側面によれば、ナノワイヤ構造が上記のマルチブロック共重合体を有する。
【0010】
第3の側面によれば、上記共重合体は、ゲル、細胞培養、再生医療足場、ナノワイヤもしくはナノワイヤテンプレートを形成するために使用され、または、上記共重合体は、複合材料における材料として使用される。
【0011】
本発明は、少なくとも一つの親水性コラーゲン状ブロックおよび少なくとも一つのシルク状ブロックを有するマルチブロック共重合体であって、前記シルク状ブロックはアミノ酸配列((GA)GX)を有し、ここでGはグリシンであり、Aはアラニンであり、mおよびnは少なくとも2であり、Xはイオン化可能アミノ酸であり、前記イオン化可能アミノ酸は正電荷または負電荷を帯びるようにすることができる、共重合体に関する。ヒスチジンのプロトン化は酸性条件、すなわちpH<7で起こる。
【0012】
ヒスチジンは低いpKaを有し、マイルドなpHで電荷を操作することを可能にする。さらに、分子中全体で同じ電荷を有する(GAGAGAGH)のような分子は、電荷斥力のため分子を中性から酸性のpHで可溶にする。一種類の全ての分子の正確なアイデンティティ(等しい構造)および純粋なエナンチオマー構造は、特定の二次および三次構造へのより良くより速い折り畳み、さらには結晶性超分子構造への自己集合を可能にする。分子全体を通じての全モノマー配列は完全に定義されている。全モノマーは好ましくはL−a−アミノ酸である。全ての個別ブロックは、好ましくは各分子において完全に同じ構造および長さを有する。本発明の好ましい特徴として、サンプルは完全に単分散である。これは、pHまたは温度等の外部刺激によってトリガされて(反転可能な態様で制御される)、特定の一時的に安定な構造、例えば極端なアスペクト比(520nm x 5〜20μm)を有する個別のナノファイバーが自然に自己集合することを可能にする(ボトムアップ構造形成)。
【0013】
((GA)GX)ブロック中に電荷を帯びたアミノ酸を有することは、pHを用いてブロックを荷電および放電させることを可能にする。pHを低下させると、可溶で負電荷を帯びたブロックは非荷電になり、その配座を変化させ、超分子構造に自己集合する。pHを戻すことは、ブロックに電荷を帯びさせ、これらの構造を再び崩壊させる。正電荷を帯びたブロックの場合、反対のpH変化で同じ効果が達成される。この効果は、ブロックの配座および形成された超分子構造をpHスイッチ可能にする。また、中程度のpHにおいて、反対の電荷を有するブロックは、互いに集合し、二成分超分子構造を形成する。コラーゲン状ブロックは、シルク状ブロックを互いからスクリーンして、これらが集合体に凝結する代わりに規定された小繊維を形成するようにする。
【0014】
コラーゲンブロックはまた、小繊維を水溶液中で安定化させ、小繊維がゲルを形成することを可能にする。コラーゲン状ブロックは、好ましくは、高度に極性でありランダムにコイルを形成したブロックであって比較的少ない電荷を持つ。これらのブロックは、反対に荷電したブロックを混合したときに安定性を与える。コラーゲン状ブロックがマルチブロック共重合体の中間ブロックを形成するとき、コラーゲン状ブロックは小繊維間の架橋剤として働く。これらのマルチブロック共重合体は、非毒性、非アレルギー性、動物不使用であってよい。これらの分子の分解に際して毒性物質は形成されない。これらのブロック共重合体は大規模で比較的安価に作製可能である。
【0015】
マルチブロック共重合体は好ましくはトリブロック共重合体である。トリブロック共重合体はシルク状ブロックおよびコラーゲン状ブロックを有する。コラーゲン状ブロックが外側ブロックを形成しシルク状ブロックが中間ブロックを形成するか、または、コラーゲン状ブロックが中間ブロックを形成しシルク状ブロックが外側ブロックを形成する。シルク状ブロックはグルタミン酸を有してよい。このときトリブロック共重合体はSCCSおよびCSCとして表される。トリブロック共重合体はまた、ヒスチジンを有するシルク状ブロックを有してよく、このときSCCSおよびCSCとして表される。SはE、グルタミン酸を有するシルク状ブロックを表し、SはH、ヒスチジンを有するシルク状ブロックを表す。Cはコラーゲン状ブロックを表す。
【0016】
両端に正電荷を有するブロック共重合体(SCCS)は、好ましくは、中に負電荷を有するブロック共重合体(CSC)と組み合わせられ、両端に負電荷を有するブロック共重合体(SCCS)は、好ましくは、中に正電荷を有するブロック共重合体(CSC)と組み合わせられる。反対の構造を有する、これらの反対にチャージしたブロック共重合体を混合するとき、一方のブロック共重合体中の中間ブロックは、他方の反対に荷電したエンドブロックと高濃度で関連し、ブロックの部分的な重なりを強制し、したがってネットワーク形成に至る。SおよびSの2つのブロックは別々の構成要素としては水溶性であるが、混合されると凝集する。これらはコラーゲン状ブロックにより混合の最中一時的に安定化される。ゲル形成は数分で進行し、良好な混合を可能にする。
【0017】
アミノ酸配列((GA)GX)においては、mは好ましくは2〜10の範囲にあり、nは好ましくは3〜100の範囲にある。mが非常に大きいとき、凝集する傾向は増大する。電荷密度、すなわちストランドを離しておき可溶にしておく力は低下する。分子を可溶にし、さらにpHをスイッチ可能にするには、GA繰り返しの量と電荷の量とが釣り合っているべきである。さらに、nが非常に小さいとき、凝集/自己集合への駆動力は小さい。親水性の外側ブロックが支配的になり、フィブリルを引き離してAおよびBブロックの大きさが釣り合うようにする。mが2〜5の範囲にあり、nが25〜60の範囲にあることが好ましい。mが3に等しくnが48に等しいときよい釣り合いが取れることがわかったので、この組み合わせが最も好ましい。大きい分子を作り、これにより、形成されるフィブリルが深いエネルギー最小値を取ることが好ましい。反対の構造の分子ABBAおよびBAABが高濃度で組み合わせられると、ブロックは部分的に重なり合い架橋機構として働く可能性があり、これはマクロスコピックなファイバーを作ることを可能にしうる。マクロスコピックなファイバーを作るとき、長い分子(802アミノ酸)が短い分子よりも好ましい。共有結合は分子間相互作用よりも強い。大きな分子は物質の単位質量あたりより大量の共有結合を与える。共有結合に加えて、分子間絡み合いが長い分子では起こりえ、これは有利でありうる。長い分子が他の分子のファイバーマトリックスへの付着を分子当たりの分子間結合の量を短い分子と同じに保証すると、長い分子は、特に、ファイバーなどの配向した伸張した分子は、短い分子よりも、同じ量の分子当たり分子間結合でより長い距離に亘ることを可能にする。これは、より柔軟な(より脆さの低い)ファイバーにつながる可能性があり、このことは有利である。
【0018】
コラーゲンブロックは好ましくは非集合性ブロックである。非集合性コラーゲンブロックは、広範囲のpH、温度および浸透圧値下で変わらない挙動を有する。しかし、集合性コラーゲンも追加の物性のために用いられうる。なぜなら、これは、ファイバーの物性のために有利である、更なる絡み合いを加えることができるからである。当業者には、集合性コラーゲンブロックが用いられる場合特定のプロセス温度が必要になることは明らかであろう。
【0019】
本発明の他の側面によれば、本発明は、上記のブロック共重合体を有するナノワイヤ構造に関する。これらのブロック共重合体は、可逆性超分子自己集合性ナノサイズテープを形成することができる。これらのテープは、極端なアスペクト比を有する。グルタミン酸を含むシルク状ブロックは、負電荷を帯びており、低いpHにおいてまたは正に荷電した(場合により伝導性の)高分子電解質と混合されたときにしかテープを形成することができない。したがって、高いpHでまたは負電荷を帯びた(場合により伝導性の)高分子電解質と混合されたときにテープを形成する正電荷を帯びた対応物が必要である。この正電荷を帯びた対応物も、中性pHでSとともに凝集して複合体コアッセベレートテープ(complex co−asseverate tapes)を形成する。Sはそのような正電荷を帯びた対応物を形成する。このようにして形成されたナノワイヤ構造は生体適合性であってよい。生体模倣アミノ酸配列の挿入は、生体適合性を生じさせる。例えば、コラーゲン状の中間ブロックはヒト細胞と結合することができる。マルチブロック共重合体は、非免疫原性であり、非アレルギー性である。なぜならシルクおよびコラーゲンは両方ともこの点に関し有益だからである。原理的には、増大または減少した数の細胞結合部位、増大した、減少したまたは「トリガ可能な」生分解性(酵素的切断/プロテアーゼ認識部位)生体活性配列(成長因子状、抗菌性等)等の他の構造が、シルク状ブロックのフィブリル形成能力に影響を与えることなく遺伝子工学によってランダムコイルコラーゲン状ブロックに容易に挿入されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】一文字アミノ酸配列中におけるCSCの完全な配列を示す。
【0021】
【図2】一文字アミノ酸配列中におけるSCCSの完全な配列を示す。
【0022】
【図3】一文字アミノ酸配列中におけるCSCの完全な配列を示す。
【0023】
【図4】一文字アミノ酸配列中におけるSCCSの完全な配列を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明は、ここで以下の非制限的例により説明される。
【0025】
例1:SブロックのためのテンプレートDNAコーディングの作製
【0026】
負電荷を帯びたシルク状配列(Sブロック)をコードするための第1のテンプレートブロックが以下のようにコードされた。二重らせんDNAは以下のオリゴ核酸のアニーリングにより作製された。
【化1】

および
【化2】

【0027】
二重らせんDNAは、通常存在するBsaI部位を削除されたEcoRI/XhoI消化pMTL23ベクターに結紮された(ligated)(文献7)。挿入は、BsaI/BanIによる消化および方向性結紮(directional ligation)で六量体サイズ(アミノ酸配列GAGAGAGEの24繰り返しをコードする)に延長された。
【0028】
例2:SブロックのためのテンプレートDNAコーディングの作製
【0029】
正電荷を帯びたシルク状配列(Sブロック)をコードするための第2のテンプレートブロックが同様に作製された。二重らせんDNAは以下のオリゴ核酸のアニーリングにより作製された。
【化3】

および
【化4】

【0030】
二重らせんDNAは、上記のpMTL23ベクターのEcoRI/XhoI部位に結紮された。挿入は、BsaI/BanIおよび方向性結紮で六量体サイズ(アミノ酸配列GAGAGAGEの24繰り返しをコードする)に延長された。
【0031】
例3:コラーゲン状ブロック(C−ブロック)のためのテンプレートDNAコーディングの作製
【0032】
親水性コラーゲン状配列(C−ブロック)をコードするための第3のテンプレートブロックが以下のように作製された。二重らせんアダプタはオリゴ核酸のアニーリングにより作製された。
【化5】

および
【化6】

【0033】
次にアダプタは、上記の修正pMTL23ベクターのEcoRI/XhoI部位に結紮された。生じたベクターはDraIIIで線形化され、脱リン酸化された。親水性コラーゲン状配列(P2)をコードする遺伝子は上述のベクターpMTL23−P2からDraIII/Van91Iで切断されて(引用文献8)線形化ベクターに挿入され、C−ブロックテンプレートを生じた。
【0034】
例4:SおよびSのためのテンプレートDNAコーディングのコラーゲンブロックのためのDNAコーディングへの接続
【0035】
BsaIおよびBanIを用いて、3つのテンプレートブロックの(最初にジブロックSC、CS、SCおよびCSへの、次にテトラブロックSCCS、CSC、SCCSおよびCSCへの)消化および方向性結紮がなされた。最後に、テトラブロックはEcoRIおよびNotIを用いて発現ベクターpPIC9(Invitrogen)にクローニングされた。文献9に記載されたように、生じたベクターはSalIで線形化され、エレクトロポレーションによるPichiapastoris GS115の転換の際にhis4遺伝子座での同種統合を促進した。
【0036】
例5:ポリマー製造および精製
【0037】
2.5リットルBioflo 3000発酵槽(New Brunswick Scientific)中のPichia pastorisのフェッドバッチ発酵で、炭素源としてグリセロールから0.2体積%メタノールに切り替えることによりポリマー製造(文献10)が引き起こされた。pHは、負電荷を帯びたポリマーについてはpH5に維持され、正電荷を帯びたポリマーについてはpH3に維持された。ポリマーが製造され発酵媒体中に分泌され、2000g、4℃、15分の遠心分離(SLA1500ロータ付きSorval遠心分離機中)により細胞から分離され、これに上澄みの精密ろ過が続いた。ポリマーは、硫酸アンモニウムを最終濃度164(g/kg)(30%飽和)まで加え、21℃で30分間インキュベートし、8000g、4℃で20分間遠心分離(Sorval、SLA1500)することにより発酵上澄みから選択的に沈殿した。負電荷を帯びたポリマーのペレットは10mMアンモニア(pH9)に溶解された一方で、正電荷を帯びたポリマーのペレットは10mMギ酸に溶解された。ポリマーペレットは元の体積の20%に溶解され、沈殿工程は一回繰り返された。再懸濁されたポリマーは、最終濃度80%(体積)までアセトンを加えることにより選択的に沈殿させられた。再懸濁およびアセトン沈殿はもう一回繰り返され、その後ペレットは水に再懸濁され保存のためフリーズドライされた。塩を含むフリーズドライプロダクトは、それぞれが100mlの50mMアンモニア中に再懸濁され、4Lの10mMアンモニアに対し4回18時間透析され、その後ポリマーは再度フリーズドライされ実験に用いられた。
【0038】
文献1. Krejchi, M.T. et al. Chemical Sequence Control Of Beta−Sheet Assembly In Macromolecular Crystals of Periodic Polypeptides. Science 265,1427−1432(1994).(周期的ポリペプチドの高分子結晶中のベータシートアセンブリの化学的配列制御)
文献2. Cantor, EJ. et al. Effects of amino acid side−chain volume on chain packing in genetically engineered periodic polypeptides. Journal Of Biochemistry 122,217−225(1997).(遺伝子工学的周期的ポリペプチドにおける鎖パッキングへのアミノ酸側鎖体積の影響)
文献3. Topilina,N.I. et al. Bilayer fibril formation by genetically engineered polypeptides:Preparation and characterization.Biomacromolecules 7,1104−1111(2006).(遺伝子工学的ポリペプチドによる二層フィブリル形成)
文献4. Higashiya,S., Topilina,N.I., Ngo,S.C., Zagorevskii,D.&Welch,J.T. Design and preparation of beta−sheet forming repetitive and block−copolymerized polypeptides. Biomacromolecules 8,1487−1497(2007).(反復的・ブロック共重合ポリペプチドを形成するベータシートの設計および作製)
文献5. Smeenk,J.M. et al. Controlled assembly of macromolecular beta−sheet fibrils. Angewandte Chemie−International Edition 44,1968−1971(2005).(高分子ベータシートフィブリルの制御された集合)
文献6.Smeenk,J.M.et al.Fibril formation by triblock copolymers of silklike beta−sheet polypeptides and poly(ethylene glycol).Macromolecules 39,2989−2997(2006).(シルク状ベータシートポリペプチドおよびポリエチレングリコールのトリブロック共重合体によるフィブリル形成)
文献7. Chambers,S.P., Prior,S.E., Barstow,D.A.&Minton,N.P. The Pmtl Nic−Cloning Vectors.1.Improved Puc Polylinker Regions To Facilitate The Use Of Sonicated Dna For Nucleotide Sequencing. Gene 68,139−149(1988).(PmtlNicクローニングベクター1核酸配列のための超音波分解されたDNAの使用を促進するための改善されたPucポリリンカー領域)
文献8. Werten,M.W.T., Wisselink,W.H., van den Bosch,T.J.J., deBruin,E.C.&deWolf,F.A. Secreted production of acustom−designed, highly hydrophilic gelatin in Pichia pastoris. Protein Engineering 14,447−454(2001).(Pichia pastoris中のカスタムデザインされた高度に親水性のゼラチンの分泌製造)
文献9. Werten,M.W.T., Van den Bosch,T.J., Wind,R.D., Mooibroek,H.&DeWolf,F.A. High−yield secretion of recombinant gelatins by Pichia pastoris. Yeast 15,1087−1096(1999).(Pichia pastorisによる組み換え型ゼラチンの高収率分泌)
文献10.Werten,M.W.T.&de Wolf,F.A. Reduced proteolysis of secreted gelatin and Ypsl−mediated alpha−factor leader processing in a Pichia pastoris kex2 disruptant. Applied And Environmental Microbiology 71,2310−2317(2005).(分泌ゼラチンの低減されたタンパク質分解およびPichiapastoriskex2ディスラプタントにおけるYpsl仲介アルファファクターリーダ処理)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つの親水性コラーゲン状ブロックおよび少なくとも一つのシルク状ブロックを有するマルチブロック共重合体であって、前記シルク状ブロックはアミノ酸配列((GA)GX)を有し、ここでGはグリシンであり、Aはアラニンであり、mおよびnは少なくとも2であり、Xはイオン化可能アミノ酸であり、前記イオン化可能アミノ酸は正電荷または負電荷を帯びるようにすることができる、共重合体。
【請求項2】
請求項1に記載の共重合体において、前記イオン化可能アミノ酸は正電荷を帯びヒスチジンである、共重合体。
【請求項3】
請求項1に記載の共重合体において、前記イオン化可能アミノ酸は負電荷を帯びグルタミン酸である、共重合体。
【請求項4】
トリブロック共重合体である請求項1に記載の共重合体。
【請求項5】
請求項1ないし4の何れか一項に記載の共重合体において、前記コラーゲン状ブロックは外側ブロックを形成し、前記シルク状ブロックは中間ブロックを形成する、共重合体。
【請求項6】
請求項1ないし4の何れか一項に記載の共重合体において、前記コラーゲン状ブロックは中間ブロックを形成し、前記シルク状ブロックは前記外側ブロックを形成する、共重合体。
【請求項7】
請求項1ないし4の何れか一項に記載の共重合体において、mは好ましくは2〜10の範囲にある、共重合体。
【請求項8】
請求項1ないし4の何れか一項に記載の共重合体において、nは好ましくは3〜100の範囲にある、共重合体。
【請求項9】
請求項1ないし4の何れか一項に記載の共重合体において、mおよびnは好ましくは2〜10および3〜100の範囲にある、共重合体。
【請求項10】
請求項1ないし4の何れか一項に記載の共重合体において、前記コラーゲン状ブロックは非集合性ブロックである、共重合体。
【請求項11】
請求項1ないし10の何れか一項に記載の共重合体を有するナノワイヤ構造。
【請求項12】
ゲル、細胞培養、再生医療足場、ナノワイヤもしくはナノワイヤテンプレートを形成するためのまたは複合材料における材料としての請求項1ないし10の何れか一項に記載のマルチブロック共重合体の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2010−538056(P2010−538056A)
【公表日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−523617(P2010−523617)
【出願日】平成20年9月2日(2008.9.2)
【国際出願番号】PCT/IB2008/053539
【国際公開番号】WO2009/031095
【国際公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【出願人】(503322755)スティヒティング ダッチ ポリマー インスティテュート (1)
【Fターム(参考)】