説明

マルチマスタのチェーン接続された二線シリアルバス

【課題】マルチマスタ・二線シリアルバスの提供
【解決手段】
本開示の態様(200)では、第1のマスタ装置(202)と1以上のスレーブ装置(204、208)と有するホスト二線シリアルバス(210)に、1以上のチェーン接続された二線シリアルバス(220)が1以上のスレーブ装置(208)を介して結合されている。スレーブ装置(208)は、マスタ装置(302)に結合された二線シリアルスレーブコンポーネント(312)と、チェーン接続された二線シリアルバス(308)上のスレーブ装置(310)に結合された二線シリアルマスタコンポーネント(316)を含むディジタル状態機械(306)を有する。ディジタル状態機械(306)は、ホスト二線シリアルバス(210)上のスレーブ装置(208)と、チェーン接続された二線シリアルバス(220)上のマスタ装置(208)とをエミュレートしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
一般に、本明細書は、マルチマスタのチェーン接続された二線シリアルバスを提供する回路及び方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
2つの電気装置又はコンポーネント間におけるデータ伝送又は通信は、多くの場合に、「バス」と呼ばれるネットワークを介して実行される。バスは、複数の装置又はコンポーネントを相互接続すると共に、そのバスに接続されている1つ又は複数の装置による信号の送信もしくは受信またはそれらの両方を可能にする。バスシステムは、一般に、プロトコル、規格、又は既定の設計に従って機能している。
【0003】
このようなバスシステムの1つが二線シリアルバスである。例えば、I2C(inter−integrated circuit)バスは、二線シリアルバスである。単純化された二線シリアルバスシステム100が図1に示されている。二線シリアルバスシステムは、一般に、1つ又は複数のスレーブ装置104、106、及び108と相互接続されたマスタ装置102を含んでいる。マスタ装置102は、バス110を介し、スレーブ装置104、106、及び108との間においてデータ又はメッセージの送受信を可能にする。一般に、マスタ装置102が二線シリアルバスシステム100上におけるすべての通信を制御している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
残念ながら、図1の二線シリアルバスシステム100などの二線シリアルバスシステムは、多くの場合に、マルチマスタのバス(これは、バスを制御する複数のマスタ装置を具備したバスである)を実装するために複雑な設計を必要としている。又、例えば、GBIC(Gigabit Interface Converter)、SFP(Small Form Factor Pluggable)コンバータ、及びXFPコンバータなどのギガビットインターフェイスコンバータに対してルーターラインカードを接続するネットワーク装置などの多くのアプリケーションにおいては、単一マスタ/スレーブ構成のみが可能であり、マルチマスタバスがサポートされてはいない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一態様は、複数のチェーン接続された二線シリアルバスを有するマルチマスタの二線シリアルバスである。このチェーン接続された二線シリアルバスは、第1のマスタ装置と、1つ又は複数のスレーブ装置と、を有するホスト二線シリアルバスを含んでいる。1つ又は複数のチェーン接続された二線シリアルバスがホストバスに結合されている。チェーン接続された二線シリアルバスは、第2のマスタ装置(これは、ホスト二線シリアルバス上のスレーブ装置でもある)と、1つ又は複数のスレーブ装置と、を含んでいる。
【0006】
更なる態様は、ホスト二線シリアルバス上のスレーブ装置と、チェーン接続された二線シリアルバス上のマスタ装置の両方として機能するべく動作可能なディジタル状態機械(ステートマシン)である。このディジタル状態機械は、ホスト二線シリアルバス上のマスタ装置との間においてデータを送受信するべく動作可能な二線シリアルスレーブコンポーネントを含んでいる。ディジタル状態機械は、チェーン接続された二線シリアルバス上の1つ又は複数のスレーブ装置との間においてデータを送受信するべく動作可能な二線シリアルマスタコンポーネントを更に含んでいる。二線シリアルスレーブコンポーネントと二線シリアルマスタコンポーネントの両方は、エミュレーションメモリに結合されている。エミュレーションメモリは、ホスト二線シリアルバス上のマスタ装置から受信した又はチェーン接続された二線シリアルバス上のスレーブ装置から受信したデータを保存又は提供するべく動作可能である。
【0007】
更に別の態様は、チェーン接続された二線シリアルバス間においてデータを転送する方法である。この方法は、第1のバス(ホスト二線シリアルバス又はチェーン接続された二線シリアルバスのいずれか)上の第1の装置(スレーブ装置又はマスタ装置のいずれか)からデータを受信する段階を有している。次いで、このデータは、ディジタル状態機械のエミュレーションメモリ内に保存される。次いで、エミュレーションメモリ内のデータが抽出され、第2のバス上の第2の装置に対して送信される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
添付の図面を参照して様々な実施例について詳細に説明するが、これらいくつかの図面を通して、類似の参照符号は類似の部分及びアセンブリを表している。様々な実施例に対する参照は、添付の請求項の範囲を限定するものではない。又、本明細書に記述されている例は、限定を意図するものではなく、添付の請求項に伴う多数の可能な実施例の中のいくつかを示しているものに過ぎない。
【0009】
模範的な実施例において、図2に示されているマルチマスタの二線シリアルバスシステム200は、複数のチェーン接続されたバス210及び220を含んでいる。ホストバス210は、マスタ装置202と、3つのスレーブ装置204、206、及び208を含んでいる。マスタ装置は、ルーターラインカードなどのネットワーク装置であってよい。スレーブ装置も、GBIC、SFP、又はXFPなどのネットワーク装置であってよい。ホストバス210又はチェーン接続されたバスのその他の実施例は、図2に示されているものよりも多くの又は少ない数のスレーブ装置を包含することができる。第2の(又は、チェーン接続された)バス220は、別のマスタ装置208(これは、ホストバス210上のスレーブ装置でもある)と、2つのスレーブ装置216及び218を含んでいる。本明細書に記述されているすべての装置又はコンポーネントは、データ接続が有線であるか無線であるかを問わず、装置の相互運用が可能な任意のタイプの適切なデータ接続を使用して互いに結合又は接続可能である。
【0010】
更なる実施例は、1つ又は複数のチェーン接続されたバスを包含している。例えば、スレーブ装置204は、1つ又は複数のその他のスレーブ装置を含む更なるチェーン接続されたバスにおける更なるマスタ装置として機能することも可能である。スレーブ装置218も、スレーブ装置218に接続され、且つ、1つ又は複数のその他のスレーブ装置を含む更なるチェーン接続されたバスにおけるマスタ装置として機能可能である。従って、このマルチマスタの二線シリアルバスシステム200は、多数の構成が可能である。又、マルチマスタの二線シリアルバスシステム200は、マルチマスタの二線シリアルバスを提供してはいるが、ホスト二線シリアルバス210であるか、或いは、二線シリアルバス220などのチェーン接続された二線シリアルバスであるかを問わず、それぞれの二線シリアルバスごとに存在するマスタは、1つのみである。従って、このマルチマスタの二線シリアルバスシステム200は、ネットワーク装置などの二線シリアルバス上に単一マスタ装置のみを許容している装置を有するマルチマスタの二線シリアルバスシステム200を生成することができる。
【0011】
二線シリアルバスは、クロック回路(SCL)214とデータ回路(SDA)212という2つの回路を含んでいる。二線シリアルバスは、バス上の公称電圧がHigh(論理1)であり、装置が電圧をLow(論理0)にプルする「オープンドレイン」システムであってよい。二線シリアルバスアプリケーションの実施例においては、論理1は、3.5Vを上回る電圧であってよく、論理0は、0.6Vを下回る電圧であってよい。回路又はバスは、抵抗器226及び228などの「プルアップ抵抗器」により、電圧源222及び224などの電圧源に接続可能である。プルアップ抵抗器は、二線シリアルバス210上のマスタ装置202又はスレーブ装置204、206、又は208によってプルダウンされていない際に、これらの回路がHigh状態(論理1)を維持するのを支援している。
【0012】
複数の二線シリアルバスを共にチェーン接続するべく、スレーブ装置208(図2)などの1つのスレーブ装置は、図3に示されているディジタル状態機械306を実装している。このディジタル状態機械は、マイクロプロセッサ、FPGA(Field Programmable Gate Array)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、又は本明細書に記述されている機能を実行するべく動作可能なその他の装置などのネットワーク装置内において実装されている。スレーブ装置310は、ホスト二線シリアルバス304から切断されており、スレーブインターフェイスバス308に接続されている。二線シリアルホストインターフェイス304は、ディジタル状態機械306の二線シリアルスレーブコンポーネント312(これは、単にスレーブコンポーネントとも呼ばれる)に接続されている。同様に、スレーブインターフェイスバス308は、二線シリアルマスタコンポーネント316(これは、単にマスタコンポーネントとも呼ばれる)に接続されている。
【0013】
二線シリアルマスタコンポーネント及び二線シリアルスレーブコンポーネントの両方は、エミュレーションメモリ314に接続されている。このエミュレーションメモリは、RAM、PROM、磁気媒体、光学媒体、又はその他のシステムなどの本明細書に記述されている機能を実行可能な任意のタイプのメモリ装置又は技術によって提供された任意の外部又は内部メモリである。エミュレーションメモリ314は、1つ又は複数のスレーブ装置310によって維持又は生成されたすべてのデータを保存又は「エミュレート」している。模範的な実施例においては、スレーブ装置310と同一のデータを同一のアドレスにおいて同一のオフセットによって保存している。例えば、スレーブ装置がA0のアドレスを具備している場合には、このスレーブ装置のデータは、アドレスA0においてエミュレーションメモリ314内に保存される。従って、ホストバス304上のマスタ装置302は、スレーブインターフェイスバス308上のスレーブ装置310とインターフェイスしているかのように、ディジタル状態機械306とインターフェイスし、エミュレーションメモリ314との間においてデータの書き込み又は読み取りを実行することができる。
【0014】
二線シリアル通信の模範的なブロックダイアグラムが図4に示されている。二線シリアルトランザクション400は、START状態402の発行に伴って始まっている。マスタ装置がアドレス404を伝送する。更なる実施例においては、READ/WRITE(R/W)信号も伝送可能である。アドレス404を有するスレーブ装置は、アクノリッジ(ACK)信号406によって応答する。次いで、データワード408が伝送される。READトランザクションにおいては、スレーブ装置がデータワード408をマスタ装置に対して送信する。データワード408は、8ビットワード(これは、バイトとも呼ばれる)などの任意の数のビットであってよい。更なる実施例においては、マスタ装置は、マスタ装置がデータワードを受信したことを確認するアクノリッジ信号をスレーブ装置に対して送信することができる。WRITEトランザクションにおいては、マスタ装置がデータワード408を送信し、スレーブ装置がアクノリッジ信号を送信することができる。すべてのデータが伝送されるまで、更なるデータワード及びアクノリッジ信号は反復可能である。その他の実施例においては、データワードは、別個のパケットに分割されていないデータストリームであってよい。データが伝送された後に、マスタ装置は、STOP状態410を発行する。
【0015】
別の模範的な実施例においては、データをマスタ装置からスレーブ装置に対して送信する二線シリアルトランザクションが、ある時点t0において始まっている。二線シリアルトランザクションを開始するべく、マスタ装置は、クロックラインがHighに留まっている際にデータラインをLowにプルすることにより、START状態を発行する。このSTART状態は、データ転送の準備を整えるようにすべてのスレーブ装置に対して通知する「注意」信号として機能している。
【0016】
START状態の後に、クロックライン(SCL)がクロックの伝送を開始する。まず、マスタ装置がアドレスを送信する。スレーブ装置が、このアドレスを受信し、このアドレスをその独自のアドレスと比較する。アドレスがマッチングしない場合には、スレーブ装置は、STOP状態を待つことになる。アドレスがマッチングした場合には、スレーブ装置は、データを受信する準備を実行する。
【0017】
次いで、マスタ装置は、信号を送信することにより、そのトランザクションがWRITE動作であってREAD動作ではないことをスレーブ装置に対して通知する。一実施例においては、READ/WRITE信号は、単一ビットの通知である。アドレスを受信した後に、スレーブ装置は、アクノリッジ信号を送信する。次いで、マスタ装置は、バイトサイズのデータワードのスレーブ装置に対する伝送を開始することができる。スレーブ装置は、それぞれのデータワードの後に、アクノリッジ信号を送信することができる。
【0018】
データワードの伝送は、すべてのデータがマスタ装置からスレーブ装置に送信されるまで継続可能である。データ伝送が成功裏に完了した際に、マスタ装置は、STOP状態を発行することになる。一実施例においては、STOP状態は、クロックがHighである時にデータラインがHighになることをマスタ装置が許容した際に実現する。この時点において、二線シリアルバスが解放され、すべての装置は、更なるSTART状態の発行を待つことになる。
【0019】
READ動作においては、マスタ装置は、READビットを送信することができる。スレーブ装置は、バイトサイズのデータワードをマスタ装置に対して送信する。マスタ装置は、それぞれのデータワードの後に、アクノリッジ信号を送信する。すべてのデータの受信が完了した際に、マスタ装置はSTOP状態を発行する。
【0020】
図3を再度参照すれば、ディジタル状態機械306の模範的な実施例は、二線シリアルトランザクションをエミュレートすることができる。模範的な実施例においては、エミュレーションメモリ314が定期的に更新されている。例えば、二線シリアルマスタコンポーネント316は、スレーブバス308上の1つ又は複数のスレーブ装置310とのREADトランザクションを完了する。1つ又は複数のスレーブ装置310から受信されたデータは、同一のアドレス、オフセット、及びその他のフォーマットを使用してエミュレーションメモリ314に保存される。エミュレーションメモリ314の更新は、数秒ごと、数時間ごと、毎日、或いは、エミュレーションメモリ314が1つ又は複数のスレーブ装置に保存されているデータを正確に反映することを保証する任意のインターバルにおいて実行可能である。
【0021】
マスタバス304上のマスタ装置302がスレーブ装置310のREAD要求を発行した際には、READトランザクションが二線シリアルスレーブコンポーネント312によってエミュレートされる。二線シリアルスレーブコンポーネント312は、装置アドレスを受信し、このアドレスをエミュレーションメモリ314内に保存されているアドレスと比較する。アドレスがエミュレーションメモリ314内のアドレスとマッチングした場合には、二線シリアルスレーブコンポーネント312は、アクノリッジ信号を送信する。次いで、二線シリアルスレーブコンポーネント312は、定期的に更新されているエミュレーションメモリ314から適切なデータを判読する段階と、このデータをマスタ装置302に対して送信する段階を開始する。この結果、マスタ装置302は、スレーブ装置310と相互運用するのと同一の方式によってスレーブコンポーネント312と相互運用する。従って、スレーブコンポーネント312は、二線シリアルトランザクションを「エミュレート」している。
【0022】
その他の実施例においては、二線シリアルトランザクションにおいて(又は、このために)、エミュレーションメモリ314を更新することができる。即ち、二線シリアルスレーブコンポーネント312がREAD要求を受信する。二線シリアルスレーブコンポーネント312は、スレーブ装置310から現在のデータを取得するようにマスタコンポーネント316に対して信号を送る。現在のデータが、エミュレーションメモリ314に保存され、エミュレーションメモリ314から読み取られ、マスタ装置302に対して送信される。データをマスタ装置302に送信する前に、スレーブ装置310からエミュレーションメモリ314への情報の転送を確実に完了するように、マスタ装置302に対する通信に遅延が必要となる可能性がある。
【0023】
更にその他の実施例においては、マスタ装置302からのREAD要求に応答して(或いは、定期的に)、エミュレーションメモリ314内のデータをチェックしている。例えば、エミュレーションメモリ314とスレーブ装置310との間においてチェックサム又はその他のデータをチェックすることにより、エミュレーションメモリ314が最新の情報を保存しているかどうかを判定することができる。チェックサム又はその他の情報がマッチングしていない場合には、マスタコンポーネント316とスレーブ装置310との間におけるREADトランザクションにより、エミュレーションメモリ314の更新を実行することができる。
【0024】
WRITEトランザクションは、二線シリアルマスタ装置302がWRITE要求を発行することによって始まる。スレーブコンポーネント312は、エミュレーションメモリ314内に保存されているアドレスに照らして、そのアドレスをチェックする。アドレスがマッチングしている場合には、スレーブコンポーネント312は、アクノリッジ信号を発行し、WRITEトランザクションを完了させる。データがエミュレーションメモリ314に書き込まれる。次いで、二線シリアルマスタコンポーネントが、スレーブ装置310とのWRITEトランザクションを完了させ、エミュレーションメモリ314からのデータをスレーブ装置310に対して書き込む。実施例においては、データ存在フラグ又はその他の通知により、1つ又は複数のスレーブ装置310に対するデータ書き込み要求についてマスタコンポーネント316に通知している。
【0025】
二線シリアルバスシステム300(図3)などのチェーン接続された二線シリアルバスシステムのスレーブバス308(図3)上のスレーブ装置310(図3)などのスレーブ装置からデータを読み取る方法500が図5に示されている。判定動作502は、どのスレーブ装置からデータを受信するかを判定している。一実施例においては、エミュレーションメモリ314(図3)などのエミュレーションメモリ内のデータが定期的に更新されている。エミュレーションメモリ内においてエミュレートされているデータを具備したそれぞれの装置を選択し、エミュレーションメモリ内の関連するデータを更新している。
【0026】
送信動作504は、READ要求をスレーブ装置に対して送信している。模範的な実施例においては、マスタコンポーネント316(図3)は、図4と関連して説明したように、READ要求を発行している。このREAD要求により、二線シリアルトランザクションが起動される。受信動作506は、スレーブ装置からデータを受信している。スレーブ装置は、図4と関連して説明した二線シリアルトランザクションに従って、データ送信を開始する。マスタコンポーネントが、このデータを受信する。書き込み動作508は、このデータを、そのデータ及びスレーブ装置と関連付けられているエミュレーションメモリの部分に書き込む。図3と関連して説明したように、エミュレーションメモリは、エミュレートされているスレーブ装置におけるデータと同一のタイプ及び量のデータを同一のアドレス及びオフセットに具備している。模範的な実施例においては、同一のアドレス及びオフセットにおけるデータを置換することにより、スレーブ装置から受信されたデータを使用してエミュレーションメモリ内の関連したデータを更新している。
【0027】
バスシステム300(図3)などのチェーン接続された二線シリアルバスシステムのホスト二線シリアルバス304(図3)上のディジタル状態機械306(図3)などのディジタル状態機械からデータを読み取る方法600が図6に示されている。受信動作(602)は、ホスト二線シリアルバス上のマスタ装置302(図3)などのマスタ装置からREAD要求を受信している。模範的な実施例においては、ディジタル状態機械内のスレーブコンポーネント312(図3)などのスレーブコンポーネントがREAD要求を受信する。判定動作604は、データを要求する先のスレーブ装置を判定している。模範的な実施例においては、スレーブコンポーネントがマスタ装置から装置アドレスを受信している。スレーブコンポーネントは、エミュレーションメモリ314(図3)などのエミュレーションメモリ内に保存されているアドレスに照らして、このアドレスをチェックする。受信したアドレスがエミュレーションメモリ内のアドレスとマッチングした場合には、スレーブコンポーネントは、アクノリッジ信号を送信する。
【0028】
検出動作606は、要求されたデータを保存しているエミュレーションメモリの部分を見つけ出す。図3と関連して説明したように、エミュレーションメモリは、エミュレーションメモリがエミュレートしているスレーブ装置と同一のタイプ及び量のデータを同一のアドレス及びオフセットに格納している。従って、スレーブコンポーネントは、スレーブ装置からメモリを抽出するかのように、エミュレーションメモリ内のデータを見つけ出す。抽出動作608は、エミュレーションメモリからデータを読み取っている。模範的な実施例においては、スレーブコンポーネントがエミュレーションメモリからデータを読み取っている。送信動作610は、抽出されたデータを要求者(即ち、マスタ装置)に送信している。模範的な実施例においては、スレーブコンポーネントは、すべての要求されたデータのマスタ装置に対する送信が完了するまで、マスタ装置との二線シリアルトランザクションを維持している。
【0029】
以上において説明した様々な実施例は、例示を目的として提供されたものに過ぎず、添付の請求項の範囲を限定するものと解釈してはならない。当業者であれば、本明細書に図示及び説明されている実施例及びアプリケーションに準拠することなしに、且つ、添付の請求項の真の精神及び範囲を逸脱することなしに、実施可能となる様々な変更及び変形について容易に認識するであろう。念のため、本発明の実施の形態を以下に要約して例示列挙する。
【0030】
(実施態様1)
第1のマスタ装置(202)と、前記第1のマスタ装置(202)に結合された1つ又は複数のスレーブ装置(204)であって、それぞれが、前記第1のマスタ装置(202)との間においてデータを送受信するべく動作可能である1つ又は複数のスレーブ装置(204)と、を含むホスト二線シリアルバス(210)と、
前記ホスト二線シリアルバス(210)上のスレーブ装置(208)でもあり、前記第1のマスタ装置(202)との間においてデータを送受信するべく動作可能な第2のマスタ装置(208)と、前記第2のマスタ装置(208)に結合された1つ又は複数のその他のスレーブ装置(216)であって、それぞれが、前記第2のマスタ装置(208)との間においてデータを送受信するべく動作可能である1つ又は複数のその他のスレーブ装置(216)と、を含む前記ホスト二線シリアルバス(210)に結合された1つ又は複数のチェーン接続された二線シリアルバス(220)と、
を有するマルチマスタのチェーン接続された二線シリアルバス(200)。
【0031】
(実施態様2)
前記第1のマスタ装置(202)が、前記第2のマスタ装置(208)との間における二線シリアルトランザクションを完了することにより、前記1つ又は複数のその他のスレーブ装置(216)との間におけるデータの書き込み又はデータの読み取りを実行することを特徴とする実施態様1に記載のマルチマスタのチェーン接続された二線シリアルバス(200)。
【0032】
(実施態様3)
チェーン接続されたI2(inter−integrated)(二線シリアル)バス(300)上の二線シリアルマスタ装置及び二線シリアルスレーブ装置の両方をエミュレートするべく動作可能なディジタル状態機械(306)において、
ホスト二線シリアルバス(304)上のマスタ装置(302)との間においてデータを送受信するべく動作可能な二線シリアルスレーブコンポーネント(312)と、
第2の二線シリアルバス(308)上の1つ又は複数のスレーブ装置(310)との間においてデータを送受信するべく動作可能である二線シリアルマスタコンポーネント(316)と、
前記二線シリアルスレーブコンポーネント(312)に結合され、且つ、前記二線シリアルマスタコンポーネント(316)にも結合されているエミュレーションメモリコンポーネント(314)であって、前記ホスト二線シリアルバス(304)上のマスタ装置(302)から受信した又は前記第2の二線シリアルバス(308)上のスレーブ装置(310)から受信したデータを保存するべく動作可能なエミュレーションメモリコンポーネント(314)と、
を有するディジタル状態機械(306)。
【0033】
(実施態様4)
前記二線シリアルスレーブコンポーネント(312)が、前記ホスト二線シリアルバス(304)上の前記マスタ装置(302)との間における二線シリアルトランザクションをエミュレートし、前記エミュレートされた二線シリアルトランザクションにおいて、前記二線シリアルスレーブコンポーネント(312)が、前記エミュレーションメモリ(314)との間におけるデータの書き込み及びデータの読み取りを実行することを特徴とする実施態様3に記載のディジタル状態機械(306)。
【0034】
(実施態様5)
二線シリアルマスタコンポーネント(316)が、前記第2の二線シリアルバス(308)上のスレーブ装置(310)との間における二線シリアルトランザクションをエミュレートし、前記エミュレートされた二線シリアルトランザクションにおいて、前記二線シリアルマスタコンポーネント(316)が、前記エミュレーションメモリ(314)との間におけるデータの書き込み及びデータの読み取りを実行することを特徴とする実施態様3に記載のディジタル状態機械(306)。
【0035】
(実施態様6)
前記エミュレーションメモリ(314)が、前記第2の二線シリアルバス(308)上の前記1つ又は複数のスレーブ装置(310)と同一のタイプ及び量のデータを同一のアドレス及びオフセットに保存していることを特徴とする実施態様3に記載のディジタル状態機械(306)。
【0036】
(実施態様7)
第1の二線シリアルバス(308)上の第1の装置(310)と第2の二線シリアルバス(304)上の第2の装置(302)の間においてデータを転送する方法(500)において、
前記第1のバス(308)上の前記第1の装置(310)からデータを受信する段階(506)と、
ディジタル状態機械(306)のエミュレーションメモリ(314)内に前記データを保存する段階(508)と、
前記第2のバス(304)上の前記第2の装置(302)に対して送信するべく、前記エミュレーションメモリ(314)から前記データを抽出する段階(608)と、
前記データを前記第2のバス(304)上の前記第2の装置(302)に対して送信する段階(610)と、
を有する方法(500)。
【0037】
(実施態様8)
前記第1の装置がマスタ装置(302)であり、前記第1のバスがホスト二線シリアルバス(304)であり、前記第2の装置がスレーブ装置(310)であり、前記第2の二線シリアルバスが前記ホスト二線シリアルバス(304)にチェーン接続されたチェーン接続二線シリアルバス(308)であることを特徴とする実施態様7に記載の方法。
【0038】
(実施態様9)
前記第1の装置がスレーブ装置(310)であり、前記第1のバスがチェーン接続された二線シリアルバス(308)であり、前記第2の装置がマスタ装置(302)であり、前記第2の二線シリアルバスがホスト二線シリアルバス(304)であり、前記チェーン接続された二線シリアルバス(308)が前記ホスト二線シリアルバス(304)にチェーン接続されていることを特徴とする実施態様7に記載の方法。
【0039】
(実施態様10)
データが、定期的に、前記1つ又は複数のスレーブ装置(310)から受信され、前記エミュレーションメモリ(314)内に保存されることを特徴とする実施態様9に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】従来技術において既知の二線シリアルバスシステムの概略図である。
【図2】マルチマスタのチェーン接続された二線シリアルバスシステムの一実施例の概略図である。
【図3】第1の二線シリアルバス上のスレーブと第2の二線シリアルバス上のマスタの両方として機能するべく動作可能なディジタル状態機械の一実施例のブロックダイアグラムである。
【図4】二線シリアルバス上のデータ転送用の模範的なデータブロックダイアグラムである。
【図5】チェーン接続された二線シリアルバスに跨ってデータを受信する方法の模範的な実施例を示している。
【図6】チェーン接続された二線シリアルバスに跨ってデータを送信する方法の模範的な実施例を示している。
【符号の説明】
【0041】
200 二線シリアルバス
202 第1のマスタ装置
204 スレーブ装置
208 第2のマスタ装置
210 ホスト二線シリアルバス
216 その他のスレーブ装置
220 二線シリアルバス
300 チェーン接続されたI2(二線シリアル)バス
302 マスタ装置
304 ホスト二線シリアルバス
306 ディジタル状態機械
308 第2の二線シリアルバス
310 スレーブ装置
312 二線シリアルスレーブコンポーネント
314 エミュレーションメモリコンポーネント
316 二線シリアルマスタコンポーネント

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のマスタ装置と、前記第1のマスタ装置に結合された1つ又は複数のスレーブ装置であって、それぞれが、前記第1のマスタ装置との間においてデータを送受信するべく動作可能である1つ又は複数のスレーブ装置と、を含むホスト二線シリアルバスと、
前記ホスト二線シリアルバス上のスレーブ装置でもあり、前記第1のマスタ装置との間においてデータを送受信するべく動作可能な第2のマスタ装置と、前記第2のマスタ装置に結合された1つ又は複数のその他のスレーブ装置であって、それぞれが、前記第2のマスタ装置との間においてデータを送受信するべく動作可能である1つ又は複数のその他のスレーブ装置と、を含む前記ホスト二線シリアルバスに結合された1つ又は複数のチェーン接続された二線シリアルバスと、
を有するマルチマスタのチェーン接続された二線シリアルバス。
【請求項2】
前記第1のマスタ装置が、前記第2のマスタ装置との間における二線シリアルトランザクションを完了することにより、前記1つ又は複数のその他のスレーブ装置との間におけるデータの書き込み又はデータの読み取りを実行することを特徴とする請求項1に記載のマルチマスタのチェーン接続された二線シリアルバス。
【請求項3】
チェーン接続された二線シリアルバス上の二線シリアルマスタ装置及び二線シリアルスレーブ装置の両方をエミュレートするべく動作可能なディジタル状態機械において、
ホスト二線シリアルバス上のマスタ装置との間においてデータを送受信するべく動作可能な二線シリアルスレーブコンポーネントと、
第2の二線シリアルバス上の1つ又は複数のスレーブ装置との間においてデータを送受信するべく動作可能である二線シリアルマスタコンポーネントと、
前記二線シリアルスレーブコンポーネントに結合され、且つ、前記二線シリアルマスタコンポーネントにも結合されているエミュレーションメモリコンポーネントであって、前記ホスト二線シリアルバス上のマスタ装置から受信した又は前記第2の二線シリアルバス上のスレーブ装置から受信したデータを保存するべく動作可能なエミュレーションメモリコンポーネントと、
を有するディジタル状態機械。
【請求項4】
前記二線シリアルスレーブコンポーネントが、前記ホスト二線シリアルバス上の前記マスタ装置との間における二線シリアルトランザクションをエミュレートし、前記エミュレートされた二線シリアルトランザクションにおいて、前記二線シリアルスレーブコンポーネントが、前記エミュレーションメモリとの間におけるデータの書き込み及びデータの読み取りを実行することを特徴とする請求項3に記載のディジタル状態機械。
【請求項5】
二線シリアルマスタコンポーネントが、前記第2の二線シリアルバス上のスレーブ装置との間における二線シリアルトランザクションをエミュレートし、前記エミュレートされた二線シリアルトランザクションにおいて、前記二線シリアルマスタコンポーネントが、前記エミュレーションメモリとの間におけるデータの書き込み及びデータの読み取りを実行することを特徴とする請求項3に記載のディジタル状態機械。
【請求項6】
前記エミュレーションメモリが、前記第2の二線シリアルバス上の前記1つ又は複数のスレーブ装置と同一のタイプ及び量のデータを同一のアドレス及びオフセットに保存していることを特徴とする請求項3に記載のディジタル状態機械。
【請求項7】
第1の二線シリアルバス上の第1の装置と第2の二線シリアルバス上の第2の装置の間においてデータを転送する方法において、
前記第1のバス上の前記第1の装置からデータを受信する段階と、
ディジタル状態機械のエミュレーションメモリ内に前記データを保存する段階と、
前記第2のバス上の前記第2の装置に対して送信するべく、前記エミュレーションメモリから前記データを抽出する段階と、
前記データを前記第2のバス上の前記第2の装置に対して送信する段階と、
を有する方法。
【請求項8】
前記第1の装置がマスタ装置であり、前記第1のバスがホスト二線シリアルバスであり、前記第2の装置がスレーブ装置であり、前記第2の二線シリアルバスが前記ホスト二線シリアルバスにチェーン接続されたチェーン接続二線シリアルバスであることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の装置がスレーブ装置であり、前記第1のバスがチェーン接続された二線シリアルバスであり、前記第2の装置がマスタ装置であり、前記第2の二線シリアルバスがホスト二線シリアルバスであり、前記チェーン接続された二線シリアルバスが前記ホスト二線シリアルバスにチェーン接続されていることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項10】
データが、定期的に、前記1つ又は複数のスレーブ装置から受信され、前記エミュレーションメモリ内に保存されることを特徴とする請求項9に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−251947(P2007−251947A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−64090(P2007−64090)
【出願日】平成19年3月13日(2007.3.13)
【出願人】(399117121)アジレント・テクノロジーズ・インク (710)
【氏名又は名称原語表記】AGILENT TECHNOLOGIES, INC.
【Fターム(参考)】