説明

マレイミジル基含有材料およびその製造方法

【課題】 水性媒体に対する分散性が良好なマレイミジル基含有材料およびその製造方法を提供する。
【解決手段】 マレイミジル基を含む下記構造式(1)で表される置換基を、表面または表面および内部に有することを特徴とするマレイミジル基含有材料である。
【化1】


(上記構造式(1)中、「A」はアミノ酸またはペプチドのスペーサーPを含むスペーサーを示す。)
上記マレイミジル基含有材料の製造方法であって、アミノ酸またはペプチド鎖含有材料にヒドロキシメチルマレイミドを反応させる工程を含むことを特徴とするマレイミジル基含有材料の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はマレイミジル基含有材料およびその製法に関し、特に、診断薬および医薬品担体、抗原/抗体固定化用担体、クロマトグラフィ担体、粘性調整剤、樹脂成形材料、塗料添加剤、架橋/硬化剤および化粧品添加剤として使用可能なマレイミジル基含有材料およびその製法に関する。
【背景技術】
【0002】
イオン交換樹脂やキレート樹脂のような機能性材料は、種々の化学物質の担体として従来から広く用いられている。このような機能性材料は、材料の表面に種々の反応性基を有する。従来からカルボキシル基、水酸基、および1級および2級アミノ基のような種々の活性水素含有基が導入された機能性材料が種々の用途に用いられてきた。近年では、核酸やペプチド、抗体のような生体分子あるいは生体分子類似の合成分子を、活性を保持したまま材料に固定し、アフィニティクロマトグラフィや診断薬、検査薬などに用いられるようになった。このような用途では、担体としては、生体分子あるいは生体分子類似の合成分子中のSH基との間に温和な反応条件で選択的にかつ安定な結合の形成が可能なマレイミド基を有するものが望まれていた。このように選択性の高い担体として用いる場合は、所望量のマレイミド基を均一かつ確実に担持する必要があり、また親生体分子材料で、生体分子の可溶な水性媒体に対する良好な分散性を有する必要がある。
【0003】
マレイミド基含有化合物として、Fulka社2001/2002製品カタログ(909ページ)には、マレイミド基を含有するポリスチレン粒子が掲載されている。しかしながらこの材料は、疎水性が高いため、水性媒体中での分散性が非常に悪いものであった。
【0004】
このような中、特許文献1には、生体分子の生理活性を低下させないためにマレイミド基を含有するリン脂質膜を表面に存在させた微粒子が開示されている。この材料は、N−(6−マレイミドカプロイロキシ)サクシンイミドのような一分子中にサクシンイミド基とマレイミド基を含有する二価性試薬をリン脂質と反応させ、カラムクロマトグラフィなどの方法で精製してマレイミド基含有リン脂質をあらかじめ作製し、さらに多段の処理を経てマレイミド基を含有するリン脂質膜を作製し、これを磁性粒子のごとき核粒子上に形成するというものである。この材料は、核粒子とマレイミド基を含有するリン脂質膜とは化学結合していないため耐溶剤性が低いなど物理的に弱いという欠点がある。また製造工程がきわめて複雑であり、原料である二価性試薬は高価な試薬であるためコストが高くなるという欠点がある。
【0005】
また、他の製造方法としては、4,4’−ビスマレイミドジフェニルメタン、1,2−ビスマレイミドエタン、1,6−ビスマレイミドヘキサンなどのように、一分子中にマレイミド基を二分子含有する化合物とSH基を含有する材料との反応によりマレイミジル基含有材料を製造する方法がある。
【0006】
この方法によると一分子のマレイミド基導入時にさらにもう一分子イミド基が導入されるため、水性媒体への分散性が悪い材料となる。また、一分子中にマレイミド基を二分子含有する化合物は高価な試薬であるためコストが高くなり、また、化学的に不安定なSH基を含有する材料を予め作製しなければなら無いという欠点がある。
【0007】
さらに、非特許文献1に記載の方法では、ポリスチレンとN−クロロメチルマレイミドの反応によりマレイミジル基含有材料を作製している。この方法によると一段階の反応によりマレイミド基の導入を行うことができるが、母材がポリスチレンであるため疎水性が高くなる。また、N−クロロメチルマレイミドは有毒な三塩化リンを使用して合成するため、製造上良い方法ではない。
【0008】
このように、今までのマレイミジル基含有材料は水性媒体に対する分散性が不十分であり、また簡易な工程で、原料コストが低いマレイミジル基含有材料の製造方法はなかった。
【特許文献1】特開平11−106391号公報
【非特許文献1】J.Polym.Sci.:Polymer Chemistry Edition,Vol.17,3675−3685(1979)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記従来の問題を解決するものであり、その目的とするところは、水性媒体に対する分散性が良好なマレイミジル基含有材料およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的は下記本発明により達成することができる。すなわち、本発明のマレイミジル基含有材料は、マレイミジル基を含む下記構造式(1)で表される置換基を、表面または表面および内部に有することを特徴とする。
【0011】
【化1】

【0012】
(上記構造式(1)中、「A」はアミノ酸またはペプチドのスペーサーPを含むスペーサーを示す。)
【0013】
本発明のマレイミジル基含有材料には、下記第1〜12の態様のうち少なくとも1の態様が適用されていることが好ましい。
【0014】
(1)第1の態様は、前記構造式(1)中の「A」で表されるスペーサーが、前記スペーサーPとスペーサーXとからなり、前記スペーサーXが前記スペーサーPよりもマレイミジル基側にあり、前記スペーサーXが、脂肪族、芳香族、脂環式、脂環式−脂肪族、または芳香族−脂肪族を含むスペーサーである態様である。
(2)第2の態様は、前記スペーサーXがエーテル結合を含む態様である。
(3)第3の態様は、前記スペーサーXがエステル結合を含む態様である。
(4)第4の態様は、前記スペーサーXがアミド結合を含む態様である。
(5)第5の態様は、前記スペーサーXが1以上のメチレン基(「−(CH2n−」(nは1以上の自然数))を含む態様である。
【0015】
(6)第6の態様は、前記構造式(1)で表される置換基が、ポリマー粒子の「表面」または「表面および内部」に存在するである態様である。
(7)第7の態様は、前記構造式(1)で表される置換基が、架橋ポリマー粒子の「表面」または「表面および内部」に存在する態様である。
【0016】
(8)第8の態様は、前記ポリマー粒子が、(メタ)アクリレート重合体、スチレン重合体、(メタ)アクリレートとスチレンとの共重合体、および、(メタ)アクリレートとアクリルアミドとの共重合体からなる群から選択される少なくとも1つである態様である。
(9)第9の態様は、前記架橋ポリマー粒子が(メタ)アクリレート重合体、スチレン重合体、(メタ)アクリレートとスチレンとの共重合体、および、(メタ)アクリレートとアクリルアミドとの共重合体からなる群から選択される少なくとも1つである態様である。
(10)第10の態様は、前記ポリマー粒子の平均粒径が0.01μm〜500μmである態様である。
(11)第11の態様は、前記架橋ポリマー粒子の平均粒径が0.01μm〜500μmである態様である。
(12)第12の態様は、前記スペーサーPが、セリン及びチロシンの少なくともいずれかを含むペプチド、または、セリン及びチロシンの少なくともいずれかを含むアミノ酸である態様である。
【0017】
また、本発明のマレイミジル基含有材料の製造方法は、下記の通りである。すなわち、第1のマレイミジル基含有材料の製造方法は、アミノ酸またはペプチド鎖含有材料にヒドロキシアルキルマレイミドを反応させる工程を含むことを特徴とするマレイミジル基含有材料の製造方法である。
【0018】
本発明の第2のマレイミジル基含有材料の製造方法は、アミノ酸またはペプチド鎖含有材料にヒドロキシメチルマレイミドを反応させる工程を含むことを特徴とするマレイミジル基含有材料の製造方法である。
【0019】
本発明の第3のマレイミジル基含有材料の製造方法は、アミノ酸またはペプチド鎖含有材料にカルボキシルアルキルマレイミドを反応させる工程を含むことを特徴とするマレイミジル基含有材料の製造方法である。
【0020】
本発明の第4のマレイミジル基含有材料の製造方法は、アミノ酸またはペプチド鎖含有材料に無水マレイン酸を反応させる工程を含むことを特徴とするマレイミジル基含有材料の製造方法である。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、水性媒体に対する分散性が良好なマレイミジル基含有材料およびその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明は、マレイミジル基(マレイミド基ともいう)を含む下記構造式(1)で表される置換基を、表面または表面および内部に有することを特徴とするマレイミジル基含有材料である。
【0023】
【化2】

【0024】
(上記構造式(1)中、「A」はアミノ酸またはペプチドのスペーサーPを含むスペーサーを示す。)
【0025】
上記構造式(1)で表される置換基を有することで、水性媒体(例えば、純水、緩衝液)に対する分散性を良好なものとすることができる。特に、親生体分子の母材を元に作製すれば、生体分子と生体分子の可溶な水系媒体とに良好な分散性を有する材料が提供することができる。そして、診断薬および医薬品担体、抗原/抗体固定化用担体、クロマトグラフィ担体、粘性調整剤、樹脂成形材料、塗料添加剤、架橋/硬化剤および化粧品添加剤等のような用途に好適に使用することができる。
【0026】
上記「A」の長さは、1〜12500であることが好ましい。また、「A」の分子量は、75〜1500000であることが好ましい。
【0027】
構造式(1)中の「A」で表されるスペーサーは、スペーサーPとスペーサーXとからなり、スペーサーXがスペーサーPよりもマレイミジル基側にある態様であることが好ましい。すなわち、構造式(1)で示される置換基は、下記構造式(2)で示される置換基であることが好ましい。このように、スペーサPとマレイミジル基との間にスペーサXを存在させることで、簡易な方法でマレイミジル基含有材料を製造することができる。
【0028】
【化3】

【0029】
スペーサーXは、脂肪族、芳香族、脂環式、脂環式−脂肪族、または芳香族−脂肪族を含むスペーサーであることが好ましい。
【0030】
また、スペーサーXは、エーテル結合、エステル結合、アミド結合および1以上のメチレン基(「−(CH2n−」(nは1以上の自然数))のいずれかを含むことが好ましい。これらのいずれかを含むことで、安価に製造することができる。
【0031】
本発明のマレイミジル基含有材料の形状は、球状、板状、針状、紡錘状、無定形のいずれでもよい。また、大きさも限定されないが、表面積が大きい方が良い場合はその平均粒径は、球状、板状、無定形のものの場合で、実用性を考慮すると、0.01μm〜500μmが好ましく、10μm〜200μmがより好ましい。針状、あるいは紡錘状のものの場合は、長軸長が0.01μm〜500μmで、軸比が3〜20であるものが好ましい。この中で球形の形状は製造しやすいため好ましい。また、上記材料は架橋構造を有していなくてもかまわないが、材料の耐溶剤性を上げるために架橋構造のある材料の方がより好ましい。製造の簡易性と粒度分布の制御のしやすさを考慮すると、本発明のマレイミジル基含有材料は、ポリマー粒子もしくは架橋ポリマー粒子に上記構造式(1)で表される置換基を有することが好ましい。なお、好ましい平均粒径等は上記の通りである。平均粒径は、光学顕微鏡や電子顕微鏡を使用し、その写真から測定することができる。
【0032】
既述のように、マレイミジル基は、アミノ酸またはペプチドのスペーサーPを含むスペーサーを介して存在する。上記アミノ酸またはペプチド鎖含有材料(マレイミジル基が置換されていない状態の材料)としては、アミノ酸またはペプチド鎖(スペーサP)が、「表面」、または、「表面および内部」に存在するものであればよく、アミノ酸またはペプチド鎖を含有する架橋(メタ)アクリレート重合体、スチレン重合体、架橋ポリスチレン重合体、架橋アクリルアミド重合体、架橋(メタ)アクリレート−スチレン−アクリルアミド共重合体、コア・シェル型有機ポリマー、シリカゲル、架橋シリコーン樹脂、架橋アガロース、架橋セルロースまたは架橋デキストラン、KLHあるいはBSA、OVAなどのタンパク、またそれらの変性タンパクなどを挙げることができる。なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」等の記載は、「メタアクリレート」および「アクリレート」等を意味するものとする。
【0033】
これらの中でも、架橋(メタ)アクリレート重合体、スチレン重合体、架橋アクリルアミド重合体、架橋(メタ)アクリレート−スチレン共重合体は材料組成の制御が容易なのでより好ましい。
【0034】
ポリマー粒子および架橋ポリマー粒子の場合は、(メタ)アクリレート重合体、スチレン重合体、(メタ)アクリレートとスチレンとの共重合体、および、(メタ)アクリレートとアクリルアミドとの共重合体からなる群から選択される少なくとも1つであるが好ましい。
【0035】
アミノ酸またはペプチド鎖含有材料の1つであるアミノ酸またはペプチド鎖含有重合体は、WangResinに代表されるようなヒドロキシル基やカルボキシル基、アミノ基を含有する重合体を作製した後、アミノ酸あるいはペプチド鎖を結合させればよい。
【0036】
本発明においてアミノ酸またはペプチド鎖は、セリンやチロシンのようなヒドロキシル基を含有するものであればかまわない。また、そのアミノ末端側あるいはカルボキシル末端側のいずれで、後述する重合体に結合しても構わない。
【0037】
本発明に使用されるアミノ酸またはペプチド鎖を構成するアミノ酸として代表的に用いられるのは、天然に存在するα−アミノ酸であり、具体的には、グリシン(3文字表記Gly,1文字表記G;以下同様)、アラニン(Ala,A)、バリン(Val,V)、ロイシン(Leu,L)、イソロイシン(Ile,I)、セリン(Ser,S)、トレオニン(Thr,T)、システイン(Cys,C)、メチオニン(Met,M)、プロリン(Pro,P)、シスチン等の非芳香族モノアミノモノカルボン酸(中性アミノ酸)、グルタミン酸(Glu,E)、アスパラギン酸(Asp,D)、グルタミン(Gln,Q)、アスパラギン(Asn,N)等の非芳香族モノアミノジカルボン酸(酸性アミノ酸)類、リシン(Lys,K)やアルギニン(Arg,R)等の非芳香族ジアミノモノカルボン酸(塩基性アミノ酸)、フェニルアラニン(Phe,F)、トリプトファン(Trp,W)、チロシン(Tyr,Y)等の芳香族中性アミノ酸、ヒスチジン(His,H)等の芳香族塩基性アミノ酸である。
【0038】
前記に例示の天然に存在するα−アミノ酸の誘導体として、ヒドロキシプロリン、β,β−ジメチルシステイン、フェニルグリシン、メチルヒスチジン、アセチルリシン、メチオニンS−オキシド、メチオニンS,S−ジオキシド、ピログルタミン、γ−カルボキシグルタミン等のα−アミノ酸類誘導体も使用可能である。これら例示のα−アミノ酸及びその誘導体は、生物活性を有する点でL型光学異性体であることが好ましい。この他、β−アラニン等のβ−アミノ酸類、γ−アミノ酪酸(略称GABA)、カルニチン等のγ−アミノ酸類、δ−アミノレブリン酸、δ−アミノ−n−吉草酸等のδ−アミノ酸類、あるいはムラミン酸(Muramic acid)等のアミノ糖カルボン酸類を使用しても構わない。また、マロン酸、コハク酸、リンゴ酸等のジカルボン酸をペプチド結合連鎖に含有させてレトロ疑似ペプチド構造を与えても構わない。これら例示したアミノ酸のうち好適に用いられるのは、天然に存在する20種のα−アミノ酸である。
【0039】
また、構造式(1)中のスペーサPは、複数種のペプチド鎖を結合していても構わない。ペプチドの含有量(アミノ酸またはペプチド鎖含有材料の含有量)は、通常、全有機成分における重量百分率として0.001〜99%、材料の基質特異的親和性の制御の点で好ましくは0.01〜90%とする。かかる重量百分率は、半導体超微粒子の元素分析、熱重量分析(TG)、あるいは核磁気共鳴スペクトル(NMR)や赤外吸収スペクトル(IR)等のスペクトル測定を組み合わせて決定される。
【0040】
スペーサーPは、エーテル化反応により簡易にマレイミジル基含有材料を製造することができる点から、セリン及びチロシンの少なくともいずれかを含むペプチド、または、セリン及びチロシンの少なくともいずれかを含むアミノ酸であることが好ましい。
【0041】
重合体にアミノ酸またはペプチド鎖を導入する方法としては、以下のような方法が挙げられる。
【0042】
[アミド化反応によるペプチド鎖の導入]
まず、母材(スペーサPが導入される前の材料)が結合するアミノ基又はカルボキシル基に対してアミド化反応を行う方法が挙げられる。これは、アミノ基又はカルボキシル基を末端基とし、これを出発反応点としたアミド化反応(以下、アミド化法と呼ぶ)を利用する方法である。
【0043】
このアミド化法は更に2つに分類される。即ち、一方は、既に用意されたペプチドのカルボキシル基末端又はアミノ基末端を、材料に結合されたアミノ基又はカルボキシル基に対してアミド結合させる方法(以下、OPアミド化法と呼ぶ)であり、他方は、材料に結合された連結有機残基のアミノ基又はカルボキシル基を出発点とし、これにアミノ酸のカルボキシル基又はアミノ基を逐次アミド結合していく方法(以下、逐次アミド化法と呼ぶ)である。なお、材料中に、所望のペプチド残基の部分構造(部分ペプチド残基又は単一アミノ酸残基)をあらかじめ含有せしめても構わない。
【0044】
本発明に係る材料に所望のペプチド鎖を導入するために、前記2種のアミド化法を、任意の段階数及び任意の順序で組み合わせて利用しても構わない。即ち、例えば、(i)まず、OPアミド化法により所望のペプチド鎖の部分構造を結合し次いでこの部分構造の末端に残りの部分構造をOPアミド化法で結合する方法(所望のペプチド鎖を各部分構造に分割する方法に制限はなく任意のペプチド結合箇所で任意数の部分構造に分割して構わない)、(ii)まず、OPアミド化法により所望のペプチド鎖の部分構造を結合し次いでこの部分構造の末端から残りの部分構造を構築すべく逐次アミド化法を繰り返す方法(所望のペプチド鎖を部分構造に分割する方法に制限はなく任意のペプチド結合箇所で分割して構わない)、(iii)まず、逐次アミド化法により所望のペプチド鎖の部分構造を構築し次いでこの部分構造の末端に残りの部分構造をOPアミド化法で結合する方法(所望のペプチド鎖を各部分構造に分割する方法に制限はなく任意のペプチド結合箇所で分割して構わない)等が可能である。なお、必要に応じ所望のペプチド鎖を更に多数の部分構造に分割して全体のペプチド合成反応を設計し、前記(i)〜(iii)に例示した3種のアミド化法の順序に対して、更に任意の段階数及び任意の順序で前記2種のアミド化法を付け加えても構わないのは言うまでもない。
【0045】
かかるアミド化反応は、カルボキシル基あるいはその誘導基(エステル、酸無水物、酸塩化物に代表される酸ハロゲン化物等)とアミノ基との縮合により行われる。酸無水物や酸ハロゲン化物を用いる場合には塩基を共存させる。カルボン酸のメチルエステルやエチルエステル等のエステルを用いる場合には、生成するアルコールを除去するために加熱や減圧が有効である場合がある。カルボキシル基を直接アミド化する場合には、任意のアミド化試薬、縮合添加剤、あるいは活性エステル剤等のアミド化反応を促進する物質を、反応に共存させたりあらかじめ予備反応させておいても良い。
【0046】
アミド化試薬としては、例えばN,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(通称DCC)、N,N’−ジイソプロピルカルボジイミド(通称DIC)、1−シクロヘキシル−3−(2−モルホリノエチル)カルボジイミドmetho−p−トルエンスルホナート(通称Morpho−CDI)、1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミドメチオジド、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(通称Water−solubleカルボジイミド)等のカルボジイミド類が代表的であり、中でも1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩は、含水系やアルコール性の反応系で好ましく用いられる。
【0047】
また、縮合添加剤として3,4−ジヒドロキシ−3−ヒドロキシ−4−オキソ−1,2,3−ベンゾトリアジン、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(通称HOBT)、N−ヒドロキシ−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミド等が例示され、活性エステル剤としては、N,N’−ジスクシンイミジルカーボネート、N,N’−ジスクシンイミジルオキサレート、N−ヒドロキシフタルイミド、N−ヒドロキシスクシンイミド、等のイミジルエステルを与える化合物、p−ニトロフェニルトリフルオロアセテート等の電子吸引性基を結合したフェニルエステルを与える化合物、あるいはペンタクロロフェノール、ペンタフルオロフェノール、2,4,5−トリクロロフェノール等のハロフェノール類等が例示される。
【0048】
[アミド化反応における保護基の使用]
前記2種のアミド化法においては、母材とのアミド化反応を選択的に行うために、アミド化により結合させるオリゴペプチドやアミノ酸のアミノ基又はカルボキシル基のいずれかを適当な保護基で保護することが通常好ましい。かかる保護基には、後で選択的に除去(脱保護)できる限りにおいて制限はない。
【0049】
かかるアミノ基の具体的な保護基としては、ホルミル基、アセチル基、クロロアセチル基、ジクロロアセチル基、トリクロロアセチル基、トリフルオロアセチル基、アセトアセチル基、o−ニトロフェニルアセチル基等の脂肪族アミド結合を形成して保護するアシル基、ベンゾイル基やo−ニトロベンゾイル基等の芳香族アシル基、メチル基、ベンジル基、アリル基等のアルキル基、メトキシカルボニル基、ジイソプロピルメチルオキシカルボニル基、イソブチルオキシカルボニル基、tert−ブチルオキシカルボニル基(以下、BOC基と略)、ベンジルオキシカルボニル基(以下、CBZ基と略)等のアルコキシカルボニル基、2,2,2−トリクロロエチルオキシカルボニル基、2−ヨードエチルオキシカルボニル基、1,1−ジメチル−2−クロロエチルオキシカルボニル基等の2−ハロエチルオキシカルボニル基、1,1−ジメチル−2−シアノエチルオキシカルボニル基、1,1−ジメチル−2−ニトロエチルオキシカルボニル基等の電子吸引性基を結合したBOC基、2,4−ジクロロベンジルオキシカルボニル基、p−ニトロベンジルオキシカルボニル基、p−シアノベンジルオキシカルボニル基等の耐酸性を向上しBOC基の脱保護条件での安定性を向上したCBZ基誘導体、ビニルオキシカルボニル基、アリルオキシカルボニル基等の不飽和結合を有するアルコキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基、m−ニトロフェノキシカルボニル基等のアリールオキシカルボニル基等のカーバメート結合を形成して保護する保護基、あるいはフタルイミド基として保護する方法、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル基(以下Fmoc基と略)等が例示される。これらのうち、BOC基、Fmoc基が好適に用いられる。
【0050】
一方、カルボキシル基の具体的な保護形態としては、メチルエステル、エチルエステル、tert−ブチルエステル、2,2,2−トリクロロエチルエステル、ベンジルエステル等のアルキルエステル結合、フェニルエステルやp−ニトロフェニルエステル等のアリールエステル結合、トリメチルシリルエステルやtert−ブチルジメチルシリルエステル等のシリルエステル結合等が一般的であり、これらのうちメチルエステル、エチルエステル、tert−ブチルエステル、ベンジルエステル等のアルキルエステル結合、p−ニトロフェニルエステル等のアリールエステル結合が好ましく用いられ、中でもメチルエステルとエチルエステルは更に好ましい。
【0051】
[保護基を利用した逐次アミド化法]
前記の逐次アミド化法は、前記のような保護基を駆使する方法により特に効率的に実施できる。即ち、保護基によりアミノ基又はカルボキシル基が保護されたアミノ酸を縮合するアミド化反応、該アミド化反応を経た材料を分離する第1精製工程、該保護基を除去する脱保護反応、及び該脱保護反応を経た材料を分離する第2精製工程をこの順序で繰り返すことにより、アミノ酸残基を逐次アミド結合しペプチド残基を形成する方法である。
【0052】
つまり、1つのアミノ酸残基がアミド結合され、このアミノ酸残基構造に含まれるアミノ基又はカルボキシル基が次のアミド化反応の反応点となる。好ましくは、保護基によりアミノ基が保護されたアミノ酸を該アミド化反応に使用する。これは、例えば、天然α−アミノ酸のみを原料として使用した場合、形成されるペプチド残基がアミノ末端を有するものとなるので、生物活性の点で好ましい場合があるためである。
【0053】
以上のようにして得られたペプチド含有母材(アミノ酸またはペプチド鎖含有材料)にマレイミド化合物を反応させることによって、スペーサP(スペーサXがある場合には、当該スペーサX)にマレイミド基が結合し、本発明のマレイミジル基含有材料(マレイミド基含有ポリマー粒子)が得られる。当該反応はペプチド中のヒドロキシル基、カルボキシル基、あるいはアミノ基とマレイミド化合物を反応させることで行うことができる。具体的には、アミノ酸またはペプチド鎖含有材料に、ヒドロキシアルキルマレイミド、ヒドロキシメチルマレイミド、カルボキシルアルキルマレイミドおよび無水マレイン酸のいずれか反応させる工程を経て製造される。
【0054】
ヒドロキシアルキルマレイミドと反応させるときの反応温度は、25〜180℃することが好ましく、カルボキシルマレイミドと反応させるときの反応温度は、0〜180℃することが好ましく、また、無水マレイン酸と反応させるときの反応温度は、0〜100℃することが好ましい。反応は、不活性ガス下で行うことが好ましい。本発明のマレイミジル基含有材料中のマレイミジル基は、全量の0.001〜5mmol/gであることが好ましい。
【0055】
ペプチド中のヒドロキシル基に対しては、ヒドロキシル基含有マレイミド化合物とのエーテル化、あるいは、カルボキシル基含有マレイミドとのエステル化方法が挙げられる。ペプチド中のカルボキシル基に対しては、ヒドロキシル基含有マレイミド化合物とのエステル化が挙げられる。ペプチド中のアミノ基に対しては、カルボキシル基含有マレイミドとのエステル化、無水マレイン酸を使用した方法が挙げられる。
【0056】
上記ヒドロキシル基含有マレイミド化合物としては、ヒドロキシアルキルマレイミド類が挙げられる。前記ヒドロキシアルキルマレイミドにおけるアルキルとしては、良好な水分散性が得られる点で、炭素数が2以上20以下のアルキルであることが好ましく、炭素数が1又は2又は3のアルキル基がより好ましい。つまり前記ヒドロキシアルキルマレイミドとしては、ヒドロキシルメチルマレイミド、ヒドロキシエチルマレイミド及びヒドロキシプロピルマレイミドが好ましい。
【0057】
上記カルボキシル基含有マレイミドとしては、アミノ酸と無水マレイン酸との反応後に脱水縮合して得られるN−マレロイルアミノ酸類が挙げられる。この中でも、N−カルボキシメチルマレイミド、N−カルボキシエチルマレイミド、N−カルボキシプロピルマレイミドは原料が安価であるため好ましい。
【0058】
上記エーテル化、エステル化、アミド化反応は、触媒の存在下で行う。この反応には酸性あるいは塩基性の公知の触媒が使用できる。例えば、塩基性の触媒としては、アルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化物、酸化物、炭酸塩、重炭酸塩等が使用でき、単独又は2種類以上混合して使用できる。酸性の触媒としては、硫酸、塩酸、硝酸、リン酸等の無機酸やp−トルエンスルホン酸、トリクロロ酢酸、酢酸等の有機酸が使用できる。また、ハイドロタルサイト類の固体触媒でも使用が可能である。
【0059】
塩基性触媒や酸性触媒を使用する場合は、その使用量は、対応する塩基又は酸として、マレイミドに対して、0.01〜40重量%、好ましくは0.1〜15重量%が良い。固体触媒の場合は、マレイミドに対して、0.001〜100重量%、好ましくは0.1〜50重量%が良い。前記触媒等は、反応液に均一に溶解した状態で使用しても不溶の状態で使用しても良いが、均一溶解状態では、使用量を少なくすることができる。一方、不溶の状態では、反応後に反応液から常法により容易に触媒を分離回収することができる。
【実施例】
【0060】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の部は質量部を示す。
【0061】
〔合成例1:ヒドロキシメチルマレイミドの合成〕
24部のマレイミド(アルドリッチ(株)製)、21部の35%HCOH(和光純薬(株)製)、5%NaOH水溶液を0.7部入れ、40℃で2時間反応させたところ、ヒドロキシメチルマレイミドの白色結晶が析出した。減圧濾過後、常温で真空乾燥した。このようにして得たヒドロキシメチルマレイミドの粗結晶を酢酸エチルで再結晶し、22部のヒドロキシメチルマレイミドを得た。
【0062】
〔合成例2:カルボキシメチルマレイミドの合成〕
32部のグリシンと510部の酢酸分散液中に、175部の酢酸に溶解させた42部の無水マレイン酸(和光純薬(株)製)溶液を加えた。室温で3時間反応させた後、析出した白色固体であるマレアミック酸をろ別した。固体を冷水で洗浄後、乾燥させて71部を得た。マレアミック酸3部をトリエチルアミン3.6部とトルエン500部中に分散させ、還流脱水を1h行った。放冷後トルエンをデカント分離し、オレンジ色の油相を減圧乾固した。塩酸溶液に溶解させて溶液をPH2以下にした後、酢酸エチルで抽出を行った。抽出液を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧留去により溶媒を除去し、カルボキシメチルマレイミド1.2部を得た。
【0063】
〔合成例3:ペプチド含有材料の合成−OPアミド化法〕
3部のワングレジン(1%DVB,38〜75μm,和光純薬(株)製)を30部のN,N’−ジメチルアセトアミド(DMA)中に分散させた。6部のN,N’−ジイソプロピルカルボジイミドと9部のグルタチオン(和光純薬(株)製)を加え、40℃で18時間反応させた。反応後に得られた粒子をろ別し、DMAとメタノールで繰り返し洗浄を行った。得られた粒子を60℃の真空乾燥機で6時間乾燥させ、グルタチオン粒子2部を得た。
【0064】
〔合成例4:ペプチド含有材料の合成−逐次アミド化法1〕
(Fmocアミノ酸縮合反応)
4.5部のFmocロイシン(和光純薬(株)製)と1.5部の1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBT)を25部のN,N’−ジメチルホルムアミド(DMF)中に分散させた。氷浴上に移し、1.6部のN,N’−ジイソプロピルカルボジイミドを入れて30分攪拌した。そこへ5部のワングレジン(1%DVB,38〜75μm,和光純薬(株)製)を入れ、25℃で18時間反応させた。反応後に得られた粒子をろ別し、塩化メチレンと2−プロパノールで繰り返し洗浄を行った。
【0065】
(脱Fmoc反応)
50部の50%ピペリジン/DMF溶液中に粒子を分散させ、ろ過を行う操作を2回繰り返し、Fmoc基をはずした。その後、粒子をろ別して塩化メチレンと2−プロパノールで繰り返し洗浄を行った。
【0066】
Fmocグリシン、Fmocフェニルアラニン、Fmocチロシン(tBu)を順次にFmocアミノ酸縮合反応と脱Fmoc反応を繰り返した。得られた粒子をTFA溶液でチロシンのtBu基をはずした後、60℃の真空乾燥機で6時間乾燥させ、ペプチド粒子3.5部を得た。
【0067】
〔合成例5:ペプチド含有材料の合成−逐次アミド化法2〕
合成例4で、Fmocアミノ酸をFmocロイシン、Fmocグリシン、Fmocフェニルアラニン、Fmocリシン(Boc)の順で縮合した。得られた粒子をTFA溶液でリシンのBoc基をはずしてペプチド粒子を得た。
【0068】
〔材料中のマレイミジル基定量方法〕
下記操作および計算により材料中のマレイミド基の定量を行った。
【0069】
[操作]
(1)反応試薬の調製:100mlメスフラスコに、0.5mmol/リットルの2−メルカプトエチルアミン溶液を20ml、0.1mol/リットルのりん酸二水素ナトリウム水溶液を5mlを入れ、50mmol/リットルのEDTA/2Na水溶液で目盛りまで満たした。
(2)サンプルを0.05g量り取り、30mlサンプル管に入れた。
(3)サンプル管に反応試薬20mlを入れ、25℃でスターラーで1h攪拌した。
(4)反応後、サンプル管を遠心分離にかけて、粒子を遠枕沈殿させた。
(5)50mlメスフラスコに溶液の上澄み0.08mlを入れた。0.1mol/リットルのりん酸二水素ナトリウム水溶液2ml、5mmol/リットルの4−PDS−EtOH溶液1mlを入れ、メスフラスコの線まで水を入れた。
(7)50mlメスフラスコから、50mlサンプル管に溶液を移し、25℃、20min攪拌した。
(8)溶液を吸光光度計で324nmのピーク強度を計測した。この値を値1とした。
(9)※値1測定の他、サンプルを入れないで同様の操作を行い、これを値0とした。
【0070】
[計算]
(1)値0から、値1を差し引いて値Aを出した。
(2)値Aを、B=(A−0.0198)/25800に代入し、値Bを出した。
(3)値Bを、C=B×(50×15/(0.08×1000))×1000に代入し、Cを出した。
(4)Cを使用したサンプル量(g)で割った値を、材料中のマレイミド基量(mmol/g)とした。
【0071】
〔実施例1〕
(エーテル結合を有するマレイミジル基含有材料)
合成例4で得られたOH基含有ペプチド粒子10部に、合成例1で合成したヒドロキシメチルマレイミド17部、トルエン500部を入れ60−70℃に加熱撹拌し、触媒のp−トルエンスルホン酸一水和物0.4部を入れ、温度を上げて8時間加熱還流を行うことにより反応させた。得られた微粒子をメタノールに分散/洗浄しさらにイオン交換水及び溶剤で洗浄後、単離乾燥してマレイミジル基含有材料を得た。このようにして得られたマレイミジル基含有材料のマレイミジル基量を上記方法で測定した。
【0072】
この材料のマレイミジル基量は0.3mmol/gであった。この粒子1部を10部の純水に入れ、30秒間超音波処理して顕微鏡観察したところ良好に分散していることを確認した。
【0073】
〔実施例2〕
(エステル結合を有するマレイミジル基含有材料)
合成例4で得られたOH基含有ペプチド粒子10部に、合成例2で合成したカルボキシメチルマレイミド10部、トルエン500部を入れ、触媒のりん酸0.5部を入れて10時間還流下を行うことにより反応させた。この材料(マレイミジル基含有材料)のマレイミジル基量は0.2mmol/gであった。この粒子1部を10部の純水に入れ、30秒間超音波処理して顕微鏡観察したところ良好に分散していることを確認した。
【0074】
〔実施例3〕
(アミド結合を有するマレイミジル基含有材料)
合成例5で得られたNH2基含有ペプチド粒子10部に、合成例2で合成したカルボキシメチルマレイミド10部、トルエン500部を入れ、触媒のりん酸0.5部を入れて10時間還流下を行うことにより反応させた。この材料(マレイミジル基含有材料)のマレイミジル基量は0.3mmol/gであった。この粒子1部を10部の純水に入れ、30秒間超音波処理して顕微鏡観察したところ良好に分散していることを確認した。
【0075】
〔実施例4〕
(無水マレイン酸を反応させることにより作製するマレイミジル基含有材料)
合成例5で得られたNH2基含有ペプチド粒子10部を酢酸100部中に入れ、更に無水マレイン酸10部を入れて室温中で18時間反応させた。得られた微粒子をメタノールに分散/洗浄しさらにイオン交換水及び溶剤で洗浄後、単離乾燥して粒子(中間体)を得た。
【0076】
前記反応で得られた粒子10部をトルエン50部中に分散させて、更にトリエチルアミン10部を入れ、130℃で還流を3時間行った。得られた微粒子をメタノールに分散/洗浄しさらにイオン交換水及びメタノールで洗浄後、単離乾燥して粒子(マレイミジル基含有材料)を得た。
【0077】
〔比較例〕
(ペプチド鎖を含有しないマレイミジル基含有材料)
ワングレジン(1%DVB,38〜75μm,和光純薬(株)製)を10部に、合成例1で合成したヒドロキシメチルマレイミド17部、トルエン500部を入れ60−70℃に加熱撹拌し、触媒のp−トルエンスルホン酸一水和物0.4部を入れ、温度を上げて8時間加熱還流を行うことにより反応させた。得られた微粒子をメタノールに分散/洗浄しさらにイオン交換水及び溶剤で洗浄後、単離乾燥してマレイミジル基含有材料を得た。
【0078】
この材料のマレイミジル基量は0.1mmol/gであった。この粒子1部を10部の純水に入れ、30秒間超音波処理して顕微鏡観察したところ粒子の凝集は全くほぐれず分散状態が悪いものであった。
【0079】
上記実施例の結果からも明らかなように、本発明のマレイミジル基含有材料は、水分散性が良好である。低コストで安全性が高く、マレイミジル基量の制御が容易で、さらに水系媒体に良好な分散性を有するマレイミジル基含有ポリマー粒子を得ることができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マレイミジル基(マレイミド基)を含む下記構造式(1)で表される置換基を、表面または表面および内部に有することを特徴とするマレイミジル基含有材料。
【化1】

(上記構造式(1)中、「A」はアミノ酸またはペプチドのスペーサーPを含むスペーサーを示す。)
【請求項2】
前記構造式(1)中の「A」で表されるスペーサーが、前記スペーサーPとスペーサーXとからなり、前記スペーサーXが前記スペーサーPよりもマレイミジル基側にあり、前記スペーサーXが、脂肪族、芳香族、脂環式、脂環式−脂肪族、または芳香族−脂肪族を含むスペーサーであることを特徴とする請求項1に記載のマレイミジル基含有材料。
【請求項3】
前記スペーサーXがエーテル結合を含むことを特徴とする請求項2に記載のマレイミジル基含有材料。
【請求項4】
前記スペーサーXがエステル結合を含むことを特徴とする請求項2に記載のマレイミジル基含有材料。
【請求項5】
前記スペーサーXがアミド結合を含むことを特徴とする請求項2に記載のマレイミジル基含有材料。
【請求項6】
前記スペーサーXが1以上のメチレン基(「−(CH2n−」(nは1以上の自然数))を含むことを特徴とする請求項2に記載のマレイミジル基含有材料。
【請求項7】
前記構造式(1)で表される置換基が、ポリマー粒子の表面または表面および内部に存在することを特徴とする請求項1に記載のマレイミジル基含有材料。
【請求項8】
前記構造式(1)で表される置換基が、架橋ポリマー粒子の表面または表面および内部に存在することを特徴とする請求項1に記載のマレイミジル基含有材料。
【請求項9】
前記ポリマー粒子が(メタ)アクリレート重合体、スチレン重合体、(メタ)アクリレートとスチレンとの共重合体、および、(メタ)アクリレートとアクリルアミドとの共重合体からなる群から選択される少なくとも1つであることを特徴とする請求項7に記載のマレイミジル基含有材料。
【請求項10】
前記架橋ポリマー粒子が、(メタ)アクリレート重合体、スチレン重合体、(メタ)アクリレートとスチレンとの共重合体、および、(メタ)アクリレートとアクリルアミドとの共重合体からなる群から選択される少なくとも1つであることを特徴とする請求項8に記載のマレイミジル基含有材料。
【請求項11】
前記ポリマー粒子の平均粒径が0.01μm〜500μmであることを特徴とする請求項7に記載のマレイミジル基含有材料。
【請求項12】
前記架橋ポリマー粒子の平均粒径が0.01μm〜500μmであることを特徴とする請求項8に記載のマレイミジル基含有材料。
【請求項13】
前記スペーサーPが、セリン及びチロシンの少なくともいずれかを含むペプチド、または、セリン及びチロシンの少なくともいずれかを含むアミノ酸であることを特徴とする請求項1に記載のマレイミジル基含有材料。
【請求項14】
請求項1に記載のマレイミジル基含有材料の製造方法であって、
アミノ酸またはペプチド鎖含有材料にヒドロキシアルキルマレイミドを反応させる工程を含むことを特徴とするマレイミジル基含有材料の製造方法。
【請求項15】
請求項1に記載のマレイミジル基含有材料の製造方法であって、
アミノ酸またはペプチド鎖含有材料にヒドロキシメチルマレイミドを反応させる工程を含むことを特徴とするマレイミジル基含有材料の製造方法。
【請求項16】
請求項1に記載のマレイミジル基含有材料の製造方法であって、
アミノ酸またはペプチド鎖含有材料にカルボキシルアルキルマレイミドを反応させる工程を含むことを特徴とするマレイミジル基含有材料の製造方法。
【請求項17】
請求項1に記載のマレイミジル基含有材料の製造方法であって、
アミノ酸またはペプチド鎖含有材料に無水マレイン酸を反応させる工程を含むことを特徴とするマレイミジル基含有材料の製造方法。

【公開番号】特開2006−169369(P2006−169369A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−363266(P2004−363266)
【出願日】平成16年12月15日(2004.12.15)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】