説明

マンホールの断熱防臭シート

【課題】 路面下に埋設された下水道のマンホールからの熱気と悪臭を遮断し、何等の操作を必要とせずに雨水などの流入を許容して通年で使用でき、かつ転落を防止できるマンホールの断熱防臭シートを提供する。
【解決手段】 倒立した頭切円錐形状の鋼板製の基板11と、基板11の中心の孔を侵入水や土砂の通過を許容してふさぐ鋼板製の塞板12と、基板11の外周部と受枠3の取付座の突起状の係止部の間に複数の鋼製の取付腕13を設け、基板11の外周部から下方に倒立円錐形状に胴部14を設け、胴部14の下端頂部から下方に弁部15を連設した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、路面下に埋設された下水道のマンホールからの熱気と悪臭を遮断する断熱防臭シートに関する。
【背景技術】
【0002】
路面下に埋設された下水道の汚水管には生活排水や地熱により熱気がたまり、そのマンホールから熱気が地上に放出される。その熱気により、積雪地帯ではマンホール蓋の上の雪が融けて穴となり、その段差により車両等の通行に障害が生じていた。
【0003】
また、夏季には汚水管から発生する悪臭がマンホール蓋の孔から外気に放出される。
【0004】
そこで、本発明者らは、マンホール蓋の下に設置する薄くて軟質かつ気密性のシートからなる断熱防臭シートを、特許第4036293号として提案している。
【0005】
この断熱防臭シートは、シート生地を略扇形の所要の形状に裁断し、その2枚を融着や縫製などにより形成され、リング状の取付部と、取付部から下方に倒立円錐又は角錐形状に胴部を設け、胴部の下端頂部から下方に弁部を連設し、取付部をマンホールの蓋と受枠の間に固定し、弁部はシートを2枚合わせとし両側部を止着し上下を開放したものである。
【0006】
この断熱防臭シートによれば、マンホールからの熱気により蓋の上の雪が融けて穴となり段差により車両等の通行に障害が生じることがなく、その悪臭が蓋の孔から外気に放出されることがない。また、蓋の孔から流入した雨水などが胴部により下端頂部に集められ、2枚合わせの弁部を押し開いてマンホール1内に流下するから、何等の操作を必要とせずに通年で使用できるとされている。
【0007】
一方、マンホールの受枠に種々の器具を取付けられる取付座を設けたものが、実用新案登録第2525650号として提案されている。
【0008】
この取付座付きのマンホール受枠は、受枠の嵌合面を切削加工するのにチャッキング可能な最小限度の突き出し長さの弓形状で且つ前記受枠の中心側に臨む弦を前記受枠の中心線と直交する直線状とした平坦な棚部と、前記弦の略中央部分で前記棚部の上部に形成され且つ前記器具を係合することのできる突起状の係止部とからなるものである。
【0009】
さらに、突起状の係止部による取付座に係合する転落防止及び昇降用の梯子を備えた受枠が、実用新案登録第2592154号として提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第4036293号公報
【特許文献2】実用新案登録第2525650号公報
【特許文献3】実用新案登録第2592154号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記の断熱防臭シートは、取付部をマンホールの蓋と受枠の間に固定し、薄くて軟質のシートからなるもので、万一人がその上に落ちると破れてしまいマンホール内へ転落するおそれがある。
【0012】
また、取付座に係合する転落防止及び昇降用の梯子を備えたものには、取付座の方が下に位置するため干渉して取り付けられない。
【0013】
そこで本発明では、マンホールからの熱気と悪臭を遮断し、何等の操作を必要とせずに雨水などの流入を許容して通年で使用でき、かつ転落を防止できるマンホールの断熱防臭シートを提供する事を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
請求項1の発明のマンホールの断熱防臭シート10は、倒立した頭切円錐形状の鋼板製の基板11と、基板11の中心の孔11aを侵入水や土砂の通過を許容してふさぐ鋼板製の塞板12と、基板11の外周部と受枠3の取付座3aの突起状の係止部3bの間に複数の鋼製の取付腕13を設け、基板11の外周部から下方に倒立円錐形状に胴部14を設け、胴部14の下端頂部から下方に弁部15を連設し、基板11の外径は受枠3の内径よりやや小径とし、取付腕13は基板11に起伏自在に取り付けられ、取付腕13の先端部の取付孔13aが受枠3の係止部3bに嵌まり、胴部14と弁部15は薄くて軟質かつ気密性のシートからなり、胴部14の外径は受枠3の内径よりやや大径とし、弁部15はシートを2枚合わせとし両側部を止着し上下を開放したものである。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明によれば、基板11の外周部から下方に倒立円錐形状に胴部14を設け、胴部14の下端頂部から下方に弁部15を連設し、胴部14と弁部15は薄くて軟質かつ気密性のシートからなり、胴部14の外径は受枠3の内径よりやや大径としたことにより、マンホール1からの熱気と悪臭を遮断できるから、その熱気により蓋4の上の雪が融けて穴となり段差により車両等の通行に障害が生じることがなく、その悪臭が蓋4の孔から外気に放出されることがない。
【0016】
また、基板11の外周部から下方に倒立円錐形状に胴部14を設け、胴部14の下端頂部から下方に弁部15を連設し、胴部14と弁部15は薄くて軟質かつ気密性のシートからなり、弁部15はシートを2枚合わせとし両側部を止着し上下を開放したことにより、蓋4の孔から流入した雨水などが胴部14により下端頂部に集められ、2枚合わせの弁部15を押し開いてマンホール1内に流下するから、何等の操作を必要とせずに通年で使用できる。
【0017】
また、倒立した頭切円錐形状の鋼板製の基板11と、基板11の中心の孔11aを侵入水や土砂の通過を許容してふさぐ鋼板製の塞板12と、基板11の外周部と受枠3の取付座3aの突起状の係止部3bの間に複数の鋼製の取付腕13を設け、基板11の外径は受枠3の内径よりやや小径とし、取付腕13は基板11に起伏自在に取り付けられ、取付腕13の先端部の取付孔13aが受枠3の係止部3bに嵌まることにより、基板11と塞板12は受枠3の取付座3aに固定され、マンホール1内への転落を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】マンホールの断熱防臭シートの一実施例を示す縦断面図である。
【図2】断熱防臭シートの平面図である。
【図3】図1の取付腕を示す部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
マンホール1からの熱気と悪臭を遮断し、何等の操作を必要とせずに雨水などの流入を許容して通年で使用でき、かつ転落を防止できるマンホールの断熱防臭シート10を提供するという目的を、倒立した頭切円錐形状の鋼板製の基板11と、基板11の中心の孔11aを侵入水や土砂の通過を許容してふさぐ鋼板製の塞板12と、基板11の外周部と受枠3の取付座3aの突起状の係止部3bの間に複数の鋼製の取付腕13を設け、基板11の外周部から下方に倒立円錐形状に胴部14を設け、胴部14の下端頂部から下方に弁部15を連設して実現した。
【実施例1】
【0020】
図1は、本発明の実施例1に係るマンホールの断熱防臭シート10と、路面5下に埋設された下水道の分流式の汚水管のマンホール1である。
【0021】
下水道の雨水管には融雪水や雨水のみが流れ、熱気と悪臭の問題は少ない。合流式の雨水汚水混合管には生活排水も流れ、熱気と悪臭の問題があり、本発明の断熱防臭シート10が適用できる。
【0022】
マンホール1には、マンホール直壁の上にマンホール斜壁2が設けられ、マンホール斜壁2の上に調整リングや無収縮モルタルを介して受枠3がアンカーボルトで固定される。
【0023】
受枠3の上にマンホール1の蓋4が載せられる。蓋4は通常の円形のものを示しており、その外径が約60cmである。
【0024】
受枠3の取付座3aは、弓形状で受枠3の中心側に臨む弦を直線状とした平坦な棚部と、弦の略中央部分で棚部の上部に形成された突起状の係止部3bを、六等配に設ける。
【0025】
断熱防臭シート10は、蓋4の下で受枠3の間から設けられる。
【0026】
断熱防臭シート10には、倒立した頭切円錐形状の鋼板製の基板11と、基板11の中心の孔11aを侵入水や土砂の通過を許容してふさぐ鋼板製の塞板12と、基板11の外周部と受枠3の取付座3aの突起状の係止部3bの間に複数の鋼製の取付腕13を設け、基板11の外周部から下方に倒立円錐形状に胴部14を設け、胴部14の下端頂部から下方に弁部15を連設する。
【0027】
基板11は、倒立した頭切円錐形状、つまり中心に孔11aを有する皿形状であり、基板11の外径は受枠3の内径よりやや小径とする。基板11はその中心の孔11a方向に傾斜することになり、蓋4の孔から流入した雨水などが自重により孔11aに向かう。実施例では、受枠3の内径約60cmに対して、基板11の外径を58cmとし、中心の孔11aの径を25cmとし、厚さ1mmの鋼板製とした。
【0028】
塞板12は、基板11の中心の孔11aより大な略円形の板であり、侵入水や土砂の通過を許容する孔12aを多数設ける。基板11を流下した雨水などが塞板12の孔12aを通って落下する。塞板12は基板11にリベットで固定される。実施例では、塞板12の外径を約29cmとし、厚さ1mmの鋼板製とした。
【0029】
取付腕13は、上端部に外方に曲げた略矩形の板であり、その上端の曲げ部に取付孔13aを設け、取付腕13は自由に回転する蝶番16を介して基板11にリベットで固定される。つまり、取付腕13は蝶番16により基板11に起伏自在に取り付けられる。取付腕13の先端部の取付孔13aが受枠3の係止部3bに嵌まり、基板11と塞板12は受枠3の取付座3aに固定される。実施例では取付腕13を基板11の外周部上面に三等配に設けた。
【0030】
胴部14は、倒立円錐形状の上端部の外径は受枠3の内径よりやや大径とし、つまり基板11の外径より大としてはみ出させ、基板11の外周部にリベットで固定される。はみ出した胴部14は柔軟に変形して受枠3や調整リングなどに密着する。この胴部14は、蓋4の孔から流入した雨水などを下端頂部に集め、マンホール1からの熱気と悪臭を遮断する。
【0031】
弁部15は、四角形状のシートを2枚合わせとし、両側部を融着や縫製などにより止着する。弁部15の上端は胴部14に連通し開放され、下端は開放して雨水などが流下する。通常の弁部15はそのシート生地の張りにより密着している状態が望ましい。
【0032】
断熱防臭シート10の胴部14と弁部15は薄くて軟質かつ気密性のシートからなり、保温材質としてよく使われているアルミ箔/PE織布の複合材質などである。
【0033】
胴部14と弁部15は、このシート生地を略扇形の所要の形状に裁断又は型抜きし、その2枚を融着や縫製などにより形成される。
【0034】
次に、断熱防臭シート10の装着方法について説明する。
【0035】
マンホール1の蓋4を取り外し、受枠3の取付座3aの無い部分に断熱防臭シート10を斜めにして挿入する。このとき、取付腕13は折り畳んでおく。全体が取付座3aの下に入れば水平として、取付腕13の先端部の取付孔13aを受枠3の係止部3bに嵌めて固定する。
【0036】
なお、断熱防臭シート10の胴部14の外径は受枠3の内径よりやや大径としているから、断熱防臭シート10をマンホール1内に落とす心配はない。
【0037】
受枠3の蓋4の載置部に蓋4を載せて完了する。
【0038】
以上の実施例では、断熱防臭シート10の胴部14と弁部15として、アルミ箔/PE織布の複合材質のを示したが、断熱防臭シート10の胴部14と弁部15は薄くて軟質かつ気密性のシートで形成されていれば良く、単層の合成樹脂シート又はフィルムや帆布入りゴムシートなどでも良い。
【符号の説明】
【0039】
3 受枠
3a 取付座
3b 係止部
10 断熱防臭シート
11 基板
11a 孔
12 塞板
13 取付腕
13a 取付孔
14 胴部
15 弁部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
倒立した頭切円錐形状の鋼板製の基板11と、基板11の中心の孔11aを侵入水や土砂の通過を許容してふさぐ鋼板製の塞板12と、基板11の外周部と受枠3の取付座3aの突起状の係止部3bの間に複数の鋼製の取付腕13を設け、基板11の外周部から下方に倒立円錐形状に胴部14を設け、胴部14の下端頂部から下方に弁部15を連設し、基板11の外径は受枠3の内径よりやや小径とし、取付腕13は基板11に起伏自在に取り付けられ、取付腕13の先端部の取付孔13aが受枠3の係止部3bに嵌まり、胴部14と弁部15は薄くて軟質かつ気密性のシートからなり、胴部14の外径は受枠3の内径よりやや大径とし、弁部15はシートを2枚合わせとし両側部を止着し上下を開放したマンホールの断熱防臭シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−172435(P2012−172435A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−36529(P2011−36529)
【出願日】平成23年2月23日(2011.2.23)
【出願人】(000137063)株式会社ホクエイ (29)
【出願人】(501361286)
【Fターム(参考)】