説明

マンホールの補修構造

【課題】 ポリエチレン等の接着性に劣る樹脂で製作した筒体であっても強固に接着してマンホールの補修を作業性良く行うことができ、施工費を節約することもできる、マンホールの補修構造を提供する。
【解決手段】 端部内周面に繊維マット3cを半溶着させたポリエチレン、ポリプロピレンその他の熱可塑性合成樹脂製の筒体31,32,33を、マンホール1の内壁面に沿って積上げ、上下に隣接する半溶着繊維マットに接合用繊維マット4を内側から重ね、硬化性樹脂を接合用繊維マット4及び半溶着繊維マット3cに含浸させて硬化させたマンホールの補修構造とし、筒体とマンホールの内壁面との間にグラウト材45を注入する。筒体の端部内周面の半溶着繊維マットに接合用繊維マットを重ねて硬化性樹脂を含浸、硬化させると、筒体が接着性に劣るポリエチレン等からなるものでも強固に接合して補修を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、施工性が良く資材コストも安いマンホールの補修構造に関する。
【背景技術】
【0002】
マンホールの補修構造の一つとして、外面に突起を多数形成したポリエチレン等の合成樹脂製の筒体をマンホールに挿入して内壁面に沿わせ、この筒体と内壁面との隙間にセメント系グラウト材を注入して硬化させた補修構造が提案されている(特許文献1)。
【0003】
しかしながら、この補修構造は、マンホールの大きさに見合った突起付きの合成樹脂製筒体の製造が容易でないという問題があり、特に、ポリエチレン等の接着性に劣る合成樹脂で製造した筒体を用いる場合は、接着により筒体を継ぎ足してマンホールを補修することが難しいという問題があった。
【特許文献1】特開2001−248177号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記の問題に対処すべくなされたもので、ポリエチレン等の接着性に劣る熱可塑性合成樹脂で製作した筒体であっても強固に接着してマンホールの補修を作業性良く行うことができ、且つ、筒体を容易かつ安価に製造できるため施工費を節約することができる、マンホールの補修構造を提供することを解決課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するため、本発明のマンホールの補修構造は、端部内周面に繊維マットを半溶着させた熱可塑性合成樹脂製の筒体を、マンホールの内壁面に沿って積上げ、上下に隣接する半溶着繊維マットに接合用繊維マットを内側から重ね、硬化性樹脂を接合用繊維マット及び半溶着繊維マットに含浸させて硬化させたことを特徴とするものである。ここに「半溶着」とは、繊維マットの厚みの略半分が熱可塑性合成樹脂製の筒体の端部内周面に埋め込まれて固着されていることを意味する。
【0006】
本発明のマンホールの補修構造においては、熱可塑性合成樹脂製の筒体としてポリエチレン又はポリプロピレン製の筒体を使用し、筒体とマンホールの内壁面との間にグラウト材を注入し、筒体の外面にリブを形成し、筒体の内周面の所定箇所に繊維マットを半溶着させることが好ましい。
【発明の効果】
【0007】
本発明の補修構造に用いる熱可塑性合成樹脂製の筒体は、その端部内周面に繊維マットが半溶着されているため、この筒体をマンホールの内壁面に沿って積上げ、上下に隣接する半溶着繊維マットに接合用の繊維マットを内側から重ねて硬化性樹脂を含浸、硬化させると、筒体自体が接着性に劣る合成樹脂製のものであっても、積上げた筒体を強固に接合することができる。従って、接着性に劣るけれども他の物性が良好なポリエチレンやポリプロピレンからなる筒体を好ましく使用することが可能となる。そして、接合された筒体とマンホールの内壁面との隙間にグラウト材を注入すると、筒体の接合箇所からグラウト材が漏れ出すことなく硬化するため、施工不良を生じることなくマンホールの補修を行うことができる。その場合、筒体の外面にリブが形成されていると、このリブがグラウト材に埋入されてアンカーとして働くため、筒体が剥離することもない。また、筒体の内周面の所定箇所に繊維マットが半溶着されていると、この箇所に例えば下水管などを接続するような場合に、下水管などの端部に固着した接合用の繊維マットを半溶着繊維マットに重ねて硬化性樹脂を含浸、硬化させることにより、下水管などを強固に接続固定することも可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明の具体的な実施形態を詳述する。
図1は本発明の一実施形態に係るマンホールの補修構造を示す縦断面図、図2は同補修構造の横断面図、図3は同補修構造における上下の筒体の接合部分を示す拡大部分断面図、図4は同補修構造に用いる筒体を示す斜視図、図5は同補修構造に用いるもう一つの筒体を示す一部切欠斜視図、図6は同補修構造におけるマンホールと下水管との接続部分を示す拡大部分断面図である。
【0009】
図1において、1はコンクリート製のマンホール、2はマンホール1の下部に接続された下水管、31,32,33はマンホール1の内壁面に沿って積上げられた筒体、4は筒体31,32,33を接合するための接合用繊維マット、5はマンホール1の内壁面と筒体31,32,33との間に注入されたグラウト材を示している。
【0010】
筒体31,32はポリエチレン又はポリプロピレンを回転成形したものであって、マンホール1の筒状部の内径より少し小さい均一な外径を有しており、図4、図5に示すように、これらの筒体31,32の外周面には、軸線方向に延びるリブ3a,3bが形成されている。リブ3aは回転成形の二分割成形型の突合わせ部分に形成されるT字形断面を備えたリブであり、リブ3bは二分割成形型の離反方向に突き出すI字形断面を備えたリブであって、これらのリブ3a,3bが形成されていると、図2に示すように、筒体32(31)とマンホール1の内壁面との間に注入されたグラウト材5にリブ3a,3bが食い込んでアンカーとして働くため、筒体32(31)の剥離を防止することができる。
【0011】
筒体31,32の上下の端部内周面には、図4,図5に示すように、筒体相互の接続を可能にするための帯状の繊維マット3cが半溶着されている。この半溶着繊維マット3cは、筒体31,32の回転成形時に繊維マット3cの厚みの略半分を溶融状態のポリエチレン又はポリプロピレンに埋め込んで冷却することにより、筒体31,32の端部内周面に固着一体化したものである。繊維マット3bとしては有機繊維、無機繊維、金属繊維など各種の繊維からなるマットが使用可能であるが、その中でも強度に優れたガラス繊維マットが特に好ましく使用される。
【0012】
マンホール1の下部に配置される筒体31は、図5に示すように、端部内周面に帯状の繊維マット3cが半溶着されているだけでなく、下水管の接続が予定される内周面の二箇所にも方形の繊維マット3d,3dが半溶着されている。この繊維マット3dは円形でもよく、また筒体31の内周面の全周に亘って帯状に半溶着されていてもよい。
【0013】
マンホール1の上部内壁面に沿って配置される筒体33は、図1に示すようにマンホール1の上部内壁面の形状に対応する截頭円錐形の筒体に成形されている。この筒体33もポリエチレン又はポリプロピレンの成形品であって、その外周面には前記と同様のリブが形成されており、また、下端部内周面には前記と同様の帯状の繊維マットが半溶着されている。なお、この筒体33及び前記の筒体31,32は、ポリエチレン又はポリプロピレン以外のポリカーボネートその他の汎用熱可塑性合成樹脂製のものであっても勿論よい。
【0014】
上記筒体31,32,33の上下に隣接する半溶着繊維マット3a,3aに重ねて筒体の接合に用いる接合用繊維マット4は、半溶着繊維マット3cと同じものであり、ガラス繊維マットが特に好ましく使用される。そして、この接合用繊維マット4及び半溶着繊維マット3cに含浸させる硬化性樹脂は、自然硬化型、熱硬化型、光硬化型など各種の硬化性樹脂が使用可能であるが、その中でも自然硬化型のポリエステル樹脂、エポキシ樹脂等が特に好ましく使用される。
【0015】
また、筒体31,32,33とマンホール1の内壁面との間に注入されるグラウト材5としては、セメントと、骨材(各種の砂など)と、混和剤(高分子エマルジョンなど)を主成分とするセメント系グラウト材が好ましく使用される。
【0016】
図1に示すマンホールの補修構造は、比較的コストが易い前記の資材を用いて次のように施工されるものである。即ち、前記の筒体31を図1に示すようにマンホール1の下部に配置して、その上に前記の筒体32,33をマンホール1の内壁面に沿って積上げ、図3に示すように、上下に隣接する半溶着繊維マット3c,3cの内側から前記の接合用繊維マット4を重ねて、ハンドレーアップ法で硬化性樹脂を接合用繊維マット4及び半溶着繊維マット3cに含浸、硬化させることにより、各筒体31,32,33を互いに接合すると共に、マンホール1の下部に配置した筒体31の下水管接続箇所(前記繊維マット3dを半溶着した箇所)をホールソー等でくり抜いて、図6に示すように、接合用繊維マット4を筒体31内周面の半溶着繊維マット3dと下水管2内面の樹脂ライニング層2aに重ね、これに硬化性樹脂を含浸、硬化させることによって筒体31と下水管2を接合する。そして、筒体31,32,33の内側にエアーバッグ(不図示)を挿入して筒体31,32,33を内側から支えた状態で、マンホール1の内壁面と筒体31,32,33との間に前記のグラウト材5を注入して硬化させ、図2に示すように、筒体32(31,33)のリブ3a,3bをグラウト材5に埋め込んで、そのアンカー効果により筒体31,32,33を剥離しないように張り付けてマンホール1を補修する。
【0017】
上記のように、このマンホールの補修構造は比較的安価な資材を用いて簡単な現場作業で施工できるため、施工性が良好で施工費を節約することができ、筒体が接着性に劣るポリエチレン又はポリプロピレンからなるものでも確実かつ強固に接合できるので、筒体の接合不良その他の施工不良を生じる心配もないといった効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態に係るマンホールの補修構造を示す縦断面図である。
【図2】同補修構造の横断面図である。
【図3】同補修構造における上下の筒体の接合部分を示す拡大部分断面図である。
【図4】同補修構造に用いる筒体を示す斜視図である。
【図5】同補修構造に用いるもう一つの筒体を示す一部切欠斜視図である。
【図6】同補修構造におけるマンホールと下水管との接続部分を示す拡大部分断面図である。
【符号の説明】
【0019】
1 マンホール
2 下水管
31,32,33 筒体
3a,3b リブ
3c,3d 繊維マット(半溶着繊維マット)
4 接合用繊維マット
5 グラウト材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
端部内周面に繊維マットを半溶着させた熱可塑性合成樹脂製の筒体を、マンホールの内壁面に沿って積上げ、上下に隣接する半溶着繊維マットに接合用繊維マットを内側から重ね、硬化性樹脂を接合用繊維マット及び半溶着繊維マットに含浸させて硬化させたことを特徴とするマンホールの補修構造。
【請求項2】
熱可塑性合成樹脂製の筒体がポリエチレン又はポリプロピレン製の筒体であることを特徴とする請求項1に記載のマンホールの補修構造。
【請求項3】
筒体とマンホールの内壁面との間にグラウト材を注入したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のマンホールの補修構造。
【請求項4】
筒体の外面にリブを形成したことを特徴とする請求項3に記載のマンホールの補修構造。
【請求項5】
筒体の内周面の所定箇所に繊維マットを半溶着させたことを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のマンホールの補修構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2006−97368(P2006−97368A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−285823(P2004−285823)
【出願日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(000108719)タキロン株式会社 (421)
【Fターム(参考)】