説明

マンホール内水位測定装置

【課題】マンホール内に簡単な器具を予め設置しておき、かつその器具の変動状態を外部から測定することで、マンホール蓋を開けることなく、内部に溜まった水の水位について迅速かつ正確に測定する。
【解決手段】マンホール51の床面に垂直に縦かける筒体3と、筒体3の上下端に天井板7と底板6をそれぞれ設け、筒体3内に水を流通可能にして上下動自在に収納したフロート5から成る水位測定具1と、水位測定具1に向けて、底板6に設けた底部反射板6aと、フロート5に設けたフロート反射板5aを個別に測距する距離測定器2と、から成り、マンホール51の外上部において、マンホール蓋53を開けることなく、距離測定器2を水位測定具1へ向けて底板反射板6aとフロート反射板5aとをそれぞれ測距することによりマンホール51内の水位を測定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中設備であるマンホール内に流れ込んだ雨水等の溜水の水位を測定する技術に係り、特にマンホール蓋を開けることなく外部からマンホール内の水位を測定することができるマンホール内水位測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
マンホール51は、図3に示すように、電力供給用の電力ケーブル用、通信ケーブル用、又は上下水道管等を通す管路52を地中に敷設した地中設備である。このマンホール51内には雨水等が流れ込み、その水が溜まっていることが多い。工事・点検の際に、水量によってバキューム・水中ポンプ等の排水の手配が必要であるため、事前に水位の確認が必要である。マンホール51内の点検、工事前にマンホール蓋53を開け、スケール54等により水位の確認を実施している。マンホール蓋53を開けるまで水位がどの程度あるのかは判らないことが多かった。
【0003】
そこで、マンホール内の水位を測定する技術が提案されている。例えば、特許文献1の特開2008−286570公報「浸水量測定装置」に示すように、マンホール、ハンドホールや穴等の対象空間の浸水量を測定する浸水量測定装置であって、前記対象空間内に直立して設置され、表面に前記対象空間の浸水量を示す目盛が表示された柱状の量水標と、リング状の形状で内部に前記量水標が挿通され、前記対象空間における浸水の表面に浮遊してその水位を指示する指示体とを備え、前記目盛は前記指示体が指示する水位に応じた浸水量を表している浸水量測定装置が提案されている。
【特許文献1】特開2008−286570公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、長期間マンホール51内への出入りがないときは、その入溝の際の酸欠事故のおそれを回避するために、空気の入れ替え等の送風機の設置など大掛かりな酸欠対策作業が必要であり、その設置に時間がかかるという問題を有していた。
【0005】
また、特許文献1「浸水量測定装置」は、事前に水位を確認するために、浸水量を示す目盛が表示された柱状の量水標と、リング状の形状で内部に前記量水標が挿通され、マンホール内で浮遊してその水位を指示する指示体とを備えたものが必要で、そのコストと時間を要するという問題を有していた。
【0006】
本発明は、かかる問題点を解決するために創案されたものである。すなわち、本発明の目的は、マンホール内に簡単な器具を予め設置しておき、かつその器具の変動状態を外部から測定することで、マンホール蓋を開けることなく、内部に溜まった水の水位について迅速かつ正確に測定することができるマンホール内水位測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、電力供給用の電力ケーブル、通信ケーブル等を地中に設けた管路に敷設するマンホール(51)内に貯留した溜水の水位を測定するマンホール内水位測定装置であって、前記マンホール(51)の床面に垂直に縦かける筒体(3)と、該筒体(3)の上下端に天井板(7)と底板(6)をそれぞれ設け、該筒体(3)内に水を流通可能にして上下動自在に収納したフロート(5)から成る水位測定具(1)と、前記水位測定具(1)に向けて、前記底板(6)に設けた底部反射板(6a)と、前記フロート(5)に設けたフロート反射板(5a)を個別に測距する距離測定器(2)と、から成り、前記マンホール(51)の外上部において、マンホール蓋(53)を開けることなく、前記距離測定器(2)を前記水位測定具(1)へ向けて前記底板反射板(6a)とフロート反射板(5a)とをそれぞれ測距することによりマンホール(51)内の水位を測定し得るように構成したことを特徴とする。
【0008】
前記距離測定器(2)は、前記水位測定具(1)に向けてフロート反射板(5a)と底部反射板(6a)それぞれに異なる電波を発射し、該フロート反射板(5a)と底部反射板(6a)の各反射までの時間を計測することによりそれぞれの距離を測定ものである。
または、前記距離測定器(2)は、前記水位測定具(1)に向けてフロート反射板(5a)と底部反射板(6a)それぞれに異なる超音波を発射し、該フロート反射板(5a)と底部反射板(6a)の各反射までの時間を計測することによりそれぞれの距離を測定ものである。
前記水位測定具(1)の筒体(3)の天井板(7)にも天井反射板(7a)を設けることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、予めマンホール(51)内へ水位測定具(1)を取り付け、筒体(3)内部の水位により上下するフロート(5)のフロート反射板(5a)と底板反射板(6a)とをそれぞれ地上から電波又は長音波による距離測定器(2)で測距することにより、マンホール蓋(53)を開けることなく、外部からマンホール(51)内の水位を簡易に短時間で測定できる。従来のようにマンホール蓋(53)の開閉、酸欠等の作業が不要のため安全性の向上を図ることができる。更に、作業時間の短縮によりコストの低減につながる。
【0010】
水位測定具(1)の筒体(3)の天井板(7)にも天井反射板(7a)を設けることにより、マンホール(51)内に流れ込んだ雨水等の溜水の割合も計算でき、溜水が天井面に届きそうで緊急を要することを推測できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明のマンホール内水位測定装置を示し、(a)は水位測定具の正面図、(b)は水位測定具の断面図、(c)は距離測定器の正面図、(d)は距離測定器の平面図である。
【図2】水位測定具をマンホール内に取り付け、それをマンホールの外部上方から距離測定器を用いて測定する状態の説明断面図である。
【図3】従来の水位を測定する方法を示すマンホールの断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明のマンホール内水位測定装置は、電力供給用の電力ケーブル、通信ケーブル等を地中に設けた管路に敷設するマンホール内に貯留した溜水の水位を測定する装置である。
【実施例1】
【0013】
以下、本発明の好ましい実施の形態を図面を参照して説明する。
図1は本発明のマンホール内水位測定装置を示し、(a)は水位測定具の正面図、(b)は水位測定具の断面図、(c)は距離測定器の正面図、(d)は距離測定器の平面図である。図2は水位測定具をマンホール内に取り付け、それをマンホールの外部上方から距離測定器を用いて測定する状態の説明断面図である。
本発明のマンホール内水位測定装置は、図1に示すように、マンホール51内に設置する水位測定具1と、マンホール51の外部で用いる距離測定器2とから成り、マンホール51内部に貯留した溜水の水位をマンホール51の外部から測定する装置である。マンホール51の外部上部において、マンホール蓋53を開けることなく、距離測定器2をマンホール51の内部の水位測定具1へ向けて、距離測定器2と底板反射板6aとの距離、距離測定器2とフロート反射板5aとの距離をそれぞれ測距する。これによりマンホール51内の水位を測定することができる。
【0014】
図1(a)、(b)に示すように、水位測定具1は、マンホール51の床面に垂直に縦懸ける筒体3から成る。この筒体3は、例えばアクリル樹脂等の合成樹脂製のパイプ状の部材にその周囲に水が流通しやすいように貫通孔4を多数開けたものである。筒体3は合成樹脂製のパイプに限定されず、筒状の金網その他種々の形状から成るものを用いることができる。筒体3には目盛を表示しておくことが望ましい。
【0015】
この筒体3はマンホール51の床面(底部)から天井までの長さを有するものが好ましい。そのままマンホール51に容易に設置できるからである。しかし、全てのマンホール51は、その床面から天井面までの高さが同一ではない。そこで、筒体3は必ずしも天井までの長さを有する必要はない。水位が天井まで届くことはまれだからである。この水位測定具1は、予めマンホール51に設置しておくことが望ましい。後述するように距離測定器2を用いて外部からマンホール51内の水位を簡易に短時間で測定するためである。測定に際してマンホール蓋53を開ける必要がない。勿論、初めて水位を測定するマンホール51ではこの水位測定具1をマンホール51に設置し、その後距離測定器2を用いて測定する。
【0016】
この筒体3はその長さを伸縮自在に構成することもできる。このような構成にすれば、1種類の水位測定具1で天井の高さが異なる様々なマンホール51に設置でき、その汎用性を高めることができる。
【0017】
この筒体3内にフロート5を収納し、筒体3の上下端には、底板6と天井板7をそれぞれ設けた。このフロート5は、筒体3内に浸水してきた時に、筒体3において上下動する。これにより、マンホール51内の水位の変化に追従し、その位置を明示することができる。
【0018】
フロート5には後述する距離測定器2から発射される電波、超音波を反射するフロート反射板5aを設けた。同じく、底板6にも底部反射板6aを設けた。床面(底部反射板6a)と水面(フロート反射板5a)との距離を測定できれば、その差異を計算して水位を容易に計算できる。
【0019】
更に、天井板7にも天井反射板7aを設けることにより、マンホール51内に流れ込んだ雨水等の溜水の割合も計算でき、天井面に届きそうで緊急を要することを推測できるからである。測定しているマンホール51に関する高さ、横幅、縦幅等のデータがないときに適している。
【0020】
図1(c)、(d)に示すように、距離測定器2は、水位測定具1に向けて、底板6に設けた底部反射板6aとフロート5に設けたフロート反射板5aとを個別に測距する測定器である。電波式の距離測定器2は、送信器・受信器8とその計測信号を変換する変換器からなる装置である。送信器8が、フロート反射板5a、底部反射板6aと天井反射板7aそれぞれに異なる電波を発射し、このフロート反射板5a、底部反射板6aと天井反射板7aでそれぞれ反射し、再び受信器8に帰って来るまでの時間から、各底板反射板6a、フロート反射板5aまでの距離を計測する。
【0021】
超音波式の距離測定器2は、送信器8が、フロート反射板5a、底部反射板6aと天井反射板7aそれぞれに異なる超音波を発射し、このフロート反射板5a、底部反射板6aと天井反射板7aでそれぞれ反射し、再び受信器8に帰って来るまでの時間から、各底板反射板6a、フロート反射板5aまでの距離を計測する。
【0022】
この距離測定器2は、マンホール51の外部であって上部において、マンホール蓋53を開けることなく、水位測定具1へ向けて測距することによりマンホール51内の水位を測定する。また、この距離測定器2は、容易に運搬できるように軽量に構成することが好ましい。
【0023】
距離測定器2には、データ記憶装置、演算処理装置と表示部9を設ける。データ記憶装置に、予め各マンホール51の高さ、横幅、縦幅等に関するデータを入力し、各マンホール51の体積を計算しておく。このデータに基づき、現場で測定した水位から水量(体積)を求める。この測定後に表示部9にデータを表示する。更に、例えば測定年月日、測定時間、マンホール51内の水位長さ(高さ)、マンホール51内の水量(総水量)を表示する。
【0024】
なお、本発明のマンホール内水位測定装置は、マンホール51内に簡単な水位測定具1を設置し、かつそのフロート5の変動状態を外部から測定することで、マンホール蓋53を開けることなく、マンホール51内部に溜まった水の水位について迅速かつ正確に測定することができれば、上述した発明の実施の形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更できることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明のマンホール内水位測定装置は、電力供給用の電力ケーブル単独のマンホール、通信ケーブル単独のマンホール又は上下水道管専用のマンホール以外に、これら電力ケーブル、通信ケーブル及び上下水道管等を地中に設けた複数本の管路内に敷設した電線共同溝マンホールにも利用することができる。
【符号の説明】
【0026】
1 水位測定具
2 距離測定器
3 筒体
5 フロート
5a フロート反射板
6 底板
6a 底部反射板
7 天井板
7a 天井反射板
51 マンホール
53 マンホール蓋


【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力供給用の電力ケーブル、通信ケーブル等を地中に設けた管路に敷設するマンホール(51)内に貯留した溜水の水位を測定するマンホール内水位測定装置であって、
前記マンホール(51)の床面に垂直に縦かける筒体(3)と、該筒体(3)の上下端に天井板(7)と底板(6)をそれぞれ設け、該筒体(3)内に水を流通可能にして上下動自在に収納したフロート(5)から成る水位測定具(1)と、
前記水位測定具(1)に向けて、前記底板(6)に設けた底部反射板(6a)と前記フロート(5)に設けたフロート反射板(5a)とを個別に測距する距離測定器(2)と、から成り、
前記マンホール(51)の外上部において、マンホール蓋(53)を開けることなく、前記距離測定器(2)を前記水位測定具(1)へ向けて前記底板反射板(6a)と、フロート反射板(5a)をそれぞれ測距することによりマンホール(51)内の水位を測定し得るように構成した、ことを特徴とするマンホール内水位測定装置。
【請求項2】
前記距離測定器(2)は、前記水位測定具(1)に向けてフロート反射板(5a)と底部反射板(6a)それぞれに異なる電波を発射し、該フロート反射板(5a)と底部反射板(6a)の各反射までの時間を計測することによりそれぞれの距離を測定するものである、ことを特徴とする請求項1のマンホール内水位測定装置。
【請求項3】
前記距離測定器(2)は、前記水位測定具(1)に向けてフロート反射板(5a)と底部反射板(6a)それぞれに異なる超音波を発射し、該フロート反射板(5a)と底部反射板(6a)の各反射までの時間を計測することによりそれぞれの距離を測定するものである、ことを特徴とする請求項1のマンホール内水位測定装置。
【請求項4】
前記水位測定具(1)の筒体(3)の天井板(7)にも天井反射板(7a)を設けた、ことを特徴とする請求項1のマンホール内水位測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−58996(P2011−58996A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−210372(P2009−210372)
【出願日】平成21年9月11日(2009.9.11)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】