説明

マンホール用鉄蓋の開放操作力測定装置

【課題】バールの引下げ速度を一定に安定しやすくすることで開放操作力の測定誤差が少ないマンホール用鉄蓋の開放操作力測定装置を提案する。
【解決手段】入力軸13a及び表示部13cを有し引張荷重を測定する荷重計13と、この荷重計13の入力軸13aに一端が掛止されバール9に他端が掛止される線材14と、荷重計13に掛止された線材14の一端側を当該荷重計13の入力軸線と略同一軸線で移動案内する第1の案内部材16と、バール9に掛止された線材14の他端側を当該バール9の梃子力点における作用方向と略同一方向に移動案内する第2の案内部材18と、これら第1の案内部材16と第2の案内部材18との間でバール9を引下げるべく線材14に張力を付与する張力付与部材45を有し当該張力付与部材45を進退移動させる移動操作機構4と、を備えて構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マンホール用鉄蓋の開放操作力測定装置に関し、さらに詳しくは、所定の受枠に形成された開口を閉塞する鉄蓋をバールの梃子作用により開放するための操作力を測定するマンホール用鉄蓋の開放操作力測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
受枠に形成された開口を閉塞するマンホール用の鉄蓋は、必要になる都度、作業者により受枠から開放されるものであり、こうした鉄蓋の開放作業にはバールが用いられる。これら受枠と鉄蓋との嵌合部は、内圧を外部へ漏洩させないために機密性が要求されるとともに、鉄蓋を受枠との嵌合から開放する際の操作力はできるだけ小さくしたいという矛盾した二面性を有しているために、受枠の開口にはテーパ状の内周面が形成され、鉄蓋の外周には、受枠の内周面と嵌合するテーパ状の外周面が形成されている。
【0003】
ところで、トラックや重機自動車等のような高重量車両が鉄蓋上を頻繁に走行するなどにより、受枠の開口のテーパ状の内周面に、鉄蓋のテーパ状の外周面が深く入り込むことによる喰い込み現象が生じやすく、鉄蓋を容易に開放できない場合がある。また、場合によっては、鉄蓋と受枠との間に砂、礫、金属片などが噛み込むことによる喰い込み現象が生じてしまい(以下、これらの現象を「喰い込み」という)容易に鉄蓋を開放できない場合もある。しかし、このように鉄蓋が受枠に喰い込んでしまった場合であっても、開放の必要時には作業者によりある程度の力によって鉄蓋を開放できることが好ましい。
【0004】
そこで、近年では、こうしたマンホール用の受枠と鉄蓋に対して、バールにより鉄蓋を開放する際に必要とされる開放操作力を一定以下とすることが要求されている。ここで、こうした従来の操作力の測定方法を説明すると、上記鉄蓋の開放用の開口部にバールの先端を係合させて、このバールの所定位置に荷重計(引張秤)の入力部を直接又は線材を介して掛止させ、その掛止された荷重計を人手によりバールの軸線に対して直角方向に牽引することで、バールの梃子作用により鉄蓋を開放するための操作力(引張荷重)の測定をしていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した人手による鉄蓋の開放操作力の測定方法では、バールに掛止された荷重計を人手により直接牽引するため、測定開始から測定終了までの間の牽引速度が一定に安定せず、開放操作力の測定値に誤差が生じやすい問題があった。すなわち、上記測定方法では、荷重計の測定値の表示が一定値を示さず動いてしまうとともに、荷重計を手に持って牽引するため当該荷重計が動いて読取り誤差が生じやすいので、開放操作力の測定誤差が大きくなるという問題があった。また、荷重計を人手により直接牽引するため、バールの軸線に対して荷重計の作動軸線を常時直角方向に維持することができず、開放操作力の測定誤差が大きくなるという問題があった。
【0006】
本発明は、上述した従来の鉄蓋の開放操作力の測定が有する課題を解決するために提案されたものであって、バールの引下げ速度を一定に安定しやすくすることで開放操作力の測定誤差が少なく、荷重計の読取り誤差が生じにくいとともに、バールの軸線に対して荷重計の入力軸線を常時直角方向に維持されるマンホール用鉄蓋の開放操作力測定装置を提案することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した目的を達成するため、第1の発明(請求項1記載の発明)に係るマンホール用鉄蓋の開放操作力測定装置は、受枠上に喰い込むように設置されたマンホール用の鉄蓋をバールの梃子作用により開放するための操作力を測定するマンホール用鉄蓋の開放操作力測定装置であって、測定する荷重を入力する入力軸及び入力された荷重を表示する表示部を有し引張荷重を測定する荷重計と、この荷重計の入力軸に一端が掛止され上記バールに他端が掛止される線材と、上記荷重計に掛止された線材の一端側を該荷重計の入力軸線と略同一軸線で移動案内する第1の案内部材と、上記バールに掛止された線材の他端側を該バールの梃子力点における作用方向と略同一方向に移動案内する第2の案内部材と、これら第1の案内部材と第2の案内部材との間で上記バールを引下げるべく上記線材に張力を付与する張力付与部材を有し該張力付与部材を進退移動させる移動操作機構とを備えてなることを特徴とするものである。
【0008】
この第1の発明では、移動操作機構により張力付与部材を移動させて第1の案内部材と第2の案内部材との間の線材に張力を付与することで、線材の他端側によりバールを引下げるとともに、線材の一端側を介して荷重計によりバールで鉄蓋を開放する(開蓋する)ための操作力を測定するものであって、従来のように荷重計をバールに直接取付けるものではないから、鉄蓋を開放するためのバールの引下げ速度が一定に安定しやすく、誤差の少ない開放操作力の測定結果を得ることができる。また、従来のように人手により荷重計を直接牽引しないから、荷重計の測定値の表示が動かず一定値を示すとともに、荷重計を動かさないので読取り誤差が僅少である。また、バールに掛止される線材は、第2の案内部材によりバールの軸線に対して常時直角方向に維持することができ、鉄蓋の開放操作力の正しい測定結果を得ることができる。
【0009】
なお、本発明を構成する荷重計は、少なくとも、バールにより鉄蓋を開放する際に必要とされた荷重を測定できるものであれば良いが、該バールに対して徐々に増大し最終的に開蓋されるまで(受枠と鉄蓋との噛み込みが解除されるまで)の間において、加重の最高値を測定し且つ表示できるものを用いることが好ましい。また、本発明の構成要件のうち、第1の案内部材、第2の案内部材及び張力付与部材は線材の摩擦抵抗を少なくするために、例えば滑車などのように回動自在な構成にすることが好ましい。
【0010】
また、線材の素材や断面形状は、特に限定されるものではなく、金属製線材、樹脂製線材、繊維製線材等や、これら素材の帯状材等が利用できる。また、移動操作機構の構成は、少なくとも、張力付与部材を移動させることができる構成であれば良く、例えば、ねじ機構、ラック・ピニオン機構、直動機構等を用いることができる。また、上記ねじ機構による場合には、そのねじ軸を手動、電動モータ等で回動させ、上記ラック・ピニオン機構による場合には、そのピニオン軸を手動、電動モータ等で回動させ、直動機構による場合は、空圧又は油圧シリンダにより直動させるものであっても良い。
【0011】
また、路上の受枠に設置されるマンホール用の鉄蓋は、トラックや重機自動車等のような高重量車両が鉄蓋上を頻繁に走行するなどにより、受枠の開口に形成されたテーパ状の内周面に、鉄蓋のテーパ状の外周面が深く入り込むことによる喰い込み現象が生じたり、鉄蓋と受枠との間に砂、礫、金属片などが噛み込むことによる喰い込み現象が生じる(本発明では、これらの現象を「喰い込み」という)。このため、マンホール用鉄蓋の開放操作力の測定前の準備として、路上の条件と近似する状態を再現するために、後述の荷重を受枠上の鉄蓋に負荷させて喰い込ませる。
【0012】
また、第2の発明(請求項2記載の発明)は、上記第1の発明において、前記第2の案内部材と前記バールとの間には、該バールに掛止された線材の他端側を該バールの梃子力点における作用方向と略同一方向に移動案内する第3の案内部材が着脱自在に設置されてなることを特徴とするものである。
【0013】
この第2の発明では、第2の案内部材とバールとの間には、第3の案内部材が着脱自在設置されてなるので、前記第2の案内部材により案内される線材ではバールの梃子力点における作用方向と略同一方向に掛止されない場合に、前記第3の案内部材により線材を案内させることでバールの梃子力点における作用方向と略同一方向に掛止できるので、鉄蓋やバールの種類により異なる複数の操作角度に対し容易に対応することができる。
【0014】
すなわち、鉄蓋の開放は、鉄蓋の外周の一部を切欠いた開放穴にバールの先端部を挿入して、その先端を開放穴の縁部に係合させることで、その梃子作用により開放するものであるが、鉄蓋に形成される開放穴には用途により構造・形状が相違するとともに、開放するバールの先端形状も相違する。そして、開放穴の構造・形状又はバールの太さ・先端形状等の相違により、開放時のバールの軸線と鉄蓋の上面とでなす操作角度が相違するので、第2の案内部材のみでは、バールの軸線に対して線材を直角に掛止できない場合があり、第3の案内部材を設置することにより、バールの異なる操作角度にも容易に対応することができる。したがって、鉄蓋やバールの種類が増加した場合には、さらに案内部材を増加することで、線材の他端側をバールの梃子力点における作用方向と略同一方向に案内させることができる。
【0015】
また、第3の発明(請求項3記載の発明)は、上記第1又は第2の発明において、前記荷重計はその入力軸線が鉛直であるように設置されるとともに、前記移動操作機構は前記張力付与部材の移動方向が鉛直であるように設置されてなることを特徴とするものである。
【0016】
この第3の発明では、鉄蓋を開放する際にはバールを重力方向に引下げるものであるから、荷重計の入力軸線方向と、移動操作機構の張力付与部材の移動方向とを同一の鉛直方向にすることで、荷重計からバールまでの間の線材の移動軸線を同一面内にすることができるから、線材の移動方向を変換する機構が不要となり無駄な機械的損失が生じることなく正確な開放操作力の測定ができるとともに、装置の構成が簡素にできる。
【0017】
また、第4の発明(請求項4記載の発明)は、上記第1、2又は3の発明において、前記移動操作機構は、前記張力付与部材が一端部に取付けられ進退移動する移動体と、この移動体の他端部に取付けられ該移動体の移動方向と同じ方向に一方のねじが螺刻されたねじ部材と、このねじ部材に螺刻された一方のねじと螺合する他方ねじが螺刻され回動自在に配置された操作軸と、この操作軸の回動による前記移動体の共回りを抑止するとともに該移動体を進退方向に案内する移動案内部材と、前記操作軸を回動させる回動手段とを備えてなることを特徴とするものである。
【0018】
この第4の発明では、前記操作軸を回動操作すると、前記移動体が移動案内部材に案内されながら移動し、この回動操作により該移動体に取付けられた張力付与部材が進退移動するが、張力付与部材を移動させる方法ないし機構としては、前述したように、ねじ機構、ラック・ピニオン機構、直動機構等を利用することができる。そして、この第4の発明では、ねじ機構を利用して操作軸が手動で操作できるようにしたので、装置を安価に製造することができる。なお、回動手段は、電動モータや手回しハンドルとしても良い。
【0019】
また、第5の発明(請求項5記載の発明)は、上記第4の発明において、前記ねじ部材に螺刻された一方のねじは一方の台形ねじであるとともに、前記操作軸に螺刻された他方のねじは他方の台形ねじであることを特徴とするものである。この第5の発明では、一方及び他方のねじは台形ねじにしたので、螺合するねじ部の抵抗が少なく、作業者は簡単に操作・測定できる。
【0020】
また、第6の発明(請求項6記載の発明)は、上記第1、2、3、4又は5の何れかの発明において、前記第2の案内部材の上方には、前記移動操作機構による引下げ動作によりバールが下げられ前記喰い込み状態が解除された後の前記バールを受けるバール受け部材が配置されていることを特徴とするものである。
【0021】
この第6の発明では、喰い込み状態が解除された後の前記バールが降下又は落下する際に、不安定な位置に遊動することなくバール受け部材により受けられるので、バールによって不用意に作業者が怪我をすることを防止できる。
【発明の効果】
【0022】
上記第1の発明では、従来のように荷重計をバールに直接取付けるものではないので、鉄蓋を開放するための引下げ速度が一定に安定しやすく、誤差の少ない開放操作力の測定結果を得ることができ、また、従来のように人手により荷重計を直接牽引しないので、荷重計の測定値の表示が動かず一定値を示すとともに、荷重計を動かさないので読取り誤差が僅少であり、さらに、バールに掛止される線材は、第2の案内部材によりバールの軸線に対して常時直角方向に維持することができ、鉄蓋の開放操作力の正しい測定結果を得ることができることで、開放操作力の測定精度の向上と、鉄蓋の品質の向上を図ることができる。
【0023】
また、第2の発明では、第2の案内部材とバールとの間には、第3の案内部材が着脱自在に設置されてなり、鉄蓋やバールの種類により異なる複数の操作角度に対し容易に対応することができるので、マンホール用鉄蓋の開放操作力測定装置の多用途化を図ることができる。
【0024】
また、第3の発明では、鉄蓋を開放する際にはバールを重力方向に引下げるものであるから、荷重計の入力軸線方向と、移動操作機構の張力付与部材の移動方向とを同一の鉛直方向にすることで、荷重計からバールまでの間の線材の移動軸線を同一面内にすることができる。その結果、線材の移動方向を変換する機構が不要となり無駄な機械的損失が生じることなく正確な開放操作力の測定ができ、開放操作力の測定精度の向上を図ることができる。また、装置の構成が簡素で安価にできる。
【0025】
また、第4の発明では、張力付与部材を移動させる方法ないし機構としては、ねじ機構、ラック・ピニオン機構、直動機構等を利用することができが、ねじ機構を利用して操作軸が手動で操作できるようすることで、装置を安価に製造することができる。
【0026】
また、第5の発明では、ねじ部材に螺刻された一方のねじ及び操作軸に螺刻された他方のねじは台形ねじにしたので、螺合するねじ部の抵抗が少なく、操作軸の回動力を小さくすることで、操作速度の安定性と操作の容易性を図ることができる。
【0027】
また、第6の発明では、喰い込み状態が解除された後の前記バールが降下又は落下する際に、不安定な位置に遊動することなくバール受け部材により受けられ、バールによって不用意に作業者が怪我をすることを防止できるので、作業の安全性を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。まず、この実施の形態に係るマンホール用鉄蓋の開放操作力測定装置1は、受枠上に設置されたマンホール用の鉄蓋をバールの梃子作用により開放するための操作力を測定する装置であって、図1に示す供試体である鉄蓋Wを受枠6上に設置する鉄蓋載荷部2と、受枠6上に設置された鉄蓋の開放に要する操作力を測定する操作力測定部3とが隣接して構成される。
【0029】
これらのうち操作力測定部3は、引張荷重を測定する荷重計13と、この荷重計13の測定する荷重を入力する入力軸13aの先端に固定されたフック13bに一端が掛止されバール9に他端が掛止される線材14と、荷重計13側の線材14を移動案内する第1の案内車16と、バール9側の線材14を移動案内する第2の案内車18と、線材14に張力を付与する張力付与車45を進退移動させる移動操作機構4とを備えてなるものである。
【0030】
まず、鉄蓋載荷部2は、床上に載荷台5が設置され、この載荷台5の上面には受枠6が、図2に示す位置決め部材7と締着部材8,8とにより固定されている。この受枠6はマンホールの入口に設置されるものと同様の構成であって、上面開口部にテーパ状の受座(内周面)6aが形成され、この受座6aに鉄蓋Wが嵌合されている。この鉄蓋Wには、外周の一部を切欠いた開放穴Waが、バール9の先端部9aを挿入可能に形成されている。
【0031】
そして、鉄蓋Wを受枠6から開放するには、鉄蓋Wの開放穴Waにバール9の先端部9aを挿入して、その先端を開放穴Waの縁部に係合させるとともに、バール9の先端よりもやや中央部側の受部9bを受枠6の受座6aの上面(符号は省略する)に係合させて、バール9の梃子操作部9cを梃子力点における作用方向(重力方向)へ移動させることで、その梃子作用により鉄蓋Wは受枠6から開放される。
【0032】
この鉄蓋Wに形成される開放穴Waは、用途によりその構造・形状が相違し、この構造・形状の相違により、開放時のバール9の軸線と鉄蓋Wの上面とでなす操作角度が相違する。図1においては、操作角度が35度の場合の実線で示すバール9と、69度の場合の仮想線で示すバール9Aとを示し、以下の説明において、バール9Aに係る要件以外の説明に際しては、実線で示すバール9により説明する。
【0033】
また、鉄蓋Wを受枠6から開放する開放操作力を正しく測定するためには、線材14をバール9又は9Aの軸線に対して直角に掛止する必要があり、そのために、バール9又は9Aに掛止される線材14は、後述する第2の案内車18によりバール9の軸線に対して直角に案内されるとともに、後述する第3の案内車21によりバール9Aの軸線に対して直角に案内されるように構成されている。
【0034】
なお、バール9の梃子操作部9cには、操作力測定の設定位置に線材掛止部材10が固定され、後述する線材14の他端側が、バール9の軸線に対して直角に掛止されている。また、線材掛止部材10に掛止された線材14を牽引することで、バール9の梃子作用により鉄蓋を開放するための開放操作力Poは、バール9の先端部9aの作用点により鉄蓋を開放するために要する負荷荷重Piに対して、バール9の先端部9aの作用点から受部9bの支点までの距離Liと、受部9bの支点からバール9に固定された線材掛止部材10の操作力測定位置までの距離Loとに反比例する。すなわち、開放操作力Po=負荷荷重Pi×距離Li÷距離Loであって、この開放操作力Poを後述する操作力測定部3により測定する。
【0035】
次いで、操作力測定部3は、図1ないし図3に示すように、鉄蓋載荷部2と隣接する載荷台5の上面にパイプ材でなる枠体11,12が図2に示すように平行に立設され、この枠体11,12の図1に示す右側面には、引張荷重を測定する荷重計13が取付けられている。この荷重計は、下端部に備えた入力軸13aのフック13bに線材14の一端部が掛止され、その線材14に引張荷重が付与されると、その測定値が表示部13cにデジタル表示されるとともに、測定経過時間内の最高測定値を表示することができるものである。また、この荷重計13は、予め負荷される入力軸13aの付属部材(符号は省略する)、線材14、線材14の末端締結部材(符号は省略する)等の風袋はリセットの際に差し引かれ、表示部13cには正味の荷重が表示される機能を備えている。
【0036】
この荷重計13の下方の枠体11,12には、図1及び図2に示す取付け台15が横設され、その上面に軸受17が取付けられ、この軸受17には、第1の案内部材である第1の案内車16が回動可能に支承され、その外周には線材14を案内可能な半円凹溝16aが形成されている。この第1の案内車16の位置関係は、その半円凹溝16aにより、荷重計13の入力軸13aのフック13bに掛止された線材14を鉛直の状態で受け入れるとともに、その線材14をバール9又は9A方向に案内可能な位置関係で取付けられている。
【0037】
また、取付け台15の第1の案内車16と反対側には軸受19が取付けられ、この軸受19には、第2の案内部材である第2の案内車18が回動可能に支承され、その外周には線材14を案内可能な半円凹溝18aが形成されている。この第2の案内車18の位置関係は、その半円凹溝18aにより、第1の案内車16の半円凹溝16aに案内される線材14を受け入れるとともに、その線材14をバール9に向かって直角に案内可能な位置関係で取付けられている。
【0038】
また、第2の案内車18の上方で、枠体11,12の図1に示す左内側には軸受ブラケット22が取付けられ、この軸受ブラケット22には、第3の案内車21が回動可能に支承され、その外周には線材14を案内可能な半円凹溝21aが形成されている。この第3の案内車21の位置関係は、その半円凹溝21aにより、第2の案内車18の半円凹溝18aに案内される線材14を受け入れるとともに、その線材14をバール9Aに向かって直角に案内可能な位置関係で取付けられている。
【0039】
そして、第2の案内車18に案内される線材14は、一端が荷重計13の入力軸13aのフック13bに掛止され、他端がバール9の操作力測定の設定位置に止着された掛止金具10に掛止され、その線材14の中間部分は各案内車16,18により案内されている。したがって、一端側と他端側との間の軸線14の軸線は、同一面内に形成されるとともに、線材14の他端は、鉄蓋Wの上面とでなす操作角度が35度のバール9の軸線に対して、第2の案内車18の案内により直角に掛止金具10に掛止される。
【0040】
また、第3の案内車21に案内される線材14は、一端が荷重計13の入力軸13aのフック13bに掛止され、他端がバール9Aの操作力測定の設定位置に止着された掛止金具10Aに掛止され、その線材14の中間部分は各案内車16,18,21により案内されている。したがって、一端側と他端側との間の軸線14の軸線は、同一面内に形成されるとともに、線材14の他端は、鉄蓋Wの上面とでなす操作角度が69度のバール9Aの軸線に対して、第3の案内車21の案内により直角に掛止金具10Aに掛止される。
【0041】
なお、バール9又は9Aの操作角度が上記35度又は69度以外の場合には、その操作角度において線材14が、バール9又は9Aの軸線に対して直角に掛止できるように、第2の案内車18若しくは第3の案内車21の設定位置を変更するか、又は新たな案内車を設置すればよい。
【0042】
また、第2の案内車19の上方位置にはバール受け部材50が配置されており、図5に示す枠体11,12の間には、支持板51が固定され、この支持板51の上面中央部には、鉄蓋Wの喰い込み状態が解除された後に降下又は落下してくるバール9又は9Aを受け止め、その衝撃を吸収する弾性素材でなる第1の受け部材52が突設されている。この第1の受け部材52を挟む両側には、支持台53,54が固定され、その上面は第1の受け部材52に向かってそれぞれ下降する傾斜面(符号は省略する)が形成されており、それぞれの傾斜面には、鉄蓋Wの開放後に降下又は落下してくるバール9又は9Aを受け止め、その衝撃を吸収する弾性素材でなる第2の受け部材55と、第3の受け部材56とが貼付されている。
【0043】
ところで、図1に示す受枠6と鉄蓋Wとの喰い込み状態が解除された後には、鉄蓋Wの開放穴Waに係合されていたバール9又は9Aは、その受部9bが受枠6の上端面から外れるので、図5に示す枠体11,12の間のどの位置に降下又は落下するか特定できない。そこで、本実施の形態に係るバール受け部材50は、複数個の受け部材52,55,56が設置されているので、バール9又は9Aがどの位置に降下又は落下した場合でも受け止め、衝撃を吸収することができる。また、複数個の受け部材55,56の両端部には、枠体11,12が立設されているので、バール9又は9Aが飛散することも防止される。なお、複数個の受け部材52,55,56は、ウレタン樹脂、硬質ゴム等の弾性素材が好ましい。
【0044】
次いで、操作力測定部3の移動操作機構4は、図1に示す第1の案内車16と第2の案内車18との間で、バール9又は9Aを引下げるべく線材14に張力を付与する張力付与部材である張力付与車45を有し、この張力付与車45を進退移動させるものであって、第1の案内車16と第2の案内車18との中間の上方で、枠体11,12に取付けられている。その枠体11,12の上端には天板25が横設され、その中央部には図4に示す挿通穴25aが穿孔され、この挿通穴25aには操作軸26が上下に突出して挿通されている。
【0045】
この操作軸26は、図4に示す上端側に小径の操作軸部26aが形成され、この操作軸部26aの下部から操作軸26の下端近傍までの間には、操作軸部26aよりも大径で台形の雄ねじを螺刻した雄ねじ部26bが連設され、この雄ねじ部26bの下部から操作軸26の下端までの間には、雄ねじ部26bよりも小径の支承部26cが形成されている。
【0046】
この操作軸26の操作軸部26aと雄ねじ部26bとの段部(符号は省略する)には、受け座金27が嵌入され、この受け座金27の上面側で天板25には、軸受板28が、受け座金27と摺接可能にボルト28A,28Aにより螺着されている。この軸受板28よりも上方の操作軸26の操作軸部26aには、平座金29が、下方の受け座金27との協働で軸受板28を挟み、軸受板28と摺接可能に挿通されている。この平座金29よりも上方の操作軸26の操作軸部26aには、手回しハンドルであるハンドル車31が挿通されるとともに、その上端面は止め座金32と当接可能に、ボルト33が操作軸26の上端部に螺合することで締着されている。
【0047】
このボルト33の締め加減により、受け座金27と止め座金32との間の各摺接部の摺接力を調整することができ、本実施の形態においては、操作軸26が回動自在であるとともに、受け座金27と止め座金32との間の各摺接部の軸方向への移動が僅少であるように調整されている。また、ハンドル車31の胴部(符号は省略する)には止めねじ34が螺合され、操作軸26がハンドル車31と一体的に回動するように、止めねじ34により操作軸26の操作軸部26aが押圧されている。
【0048】
また、操作軸26の下端部は、軸受36により支承部26cが支承されている。この軸受36は、図3に示す枠体11,12の内側に取付け板37が横架され、その図示中央部に軸受36がボルト36D,36Dにより螺着されている。この軸受36の図4に示す中央部には、紙面の表側に向かって突出する(図1参照)突出部36aが立設され、その先端中心部に軸受穴36bが形成されて、この軸受穴36bにより操作軸26の支承部26cが回動可能に支承されている。なお、軸受36の突出部36aは、その側面の案内面36c,36cにより後述する移動板44,44の共回りを抑止するとともに、当該移動板44,44を進退(上下)方向に案内する移動案内部材でもある。
【0049】
また、操作軸26の雄ねじ部26bには、図4に示すように、ねじ部材であるナット41が、その内周に操作軸26の雄ねじ部26bと螺合する台形の雌ねじ41aが螺刻され、その下端にはフランジ部41bが形成されて、操作軸26の雄ねじ部26bに螺合されている。このナット41のフランジ部41bの下面には、支持板42がボルト41C,41Cにより螺着され、その下面には、移動体である2枚の移動板44,44が固定されている。
【0050】
この移動板44,44は、図1に示す左右の側部が開口され、操作軸26の軸心に対して平行で対称に固定され、それぞれの下端部に軸46が支持されている。この軸46の中央部には転がり軸受47が嵌入され、この転がり軸受47の外輪により、線材14に張力を付与する張力付与車45が回動自在に保持され、その外周には、線材14を案内可能な半円凹溝45aが形成されている。なお、上述した第1の案内車16、第2の案内車18及び第3の案内車21の回動自在な保持部の構成も、前記張力付与車45と同様の構成である。
【0051】
そして、上記構成による操作力測定部3は、図1に示す荷重計13の入力軸13aのフック13bに一端が掛止され、バール9に他端が掛止された線材14に対して、第1の案内車16と第2の案内車18との間の線材14の下面側に張力付与車45を掛合させ、ハンドル車31とともに操作軸26を回動操作して、操作軸26の雄ねじ部26bと螺合するナット41を上昇させることで、支持板42及び移動板44とともに、張力付与車45を上昇させると線材14に張力が付与される。
【0052】
このようにして線材14に張力が付与されると、荷重計13の入力軸13aのフック13bに掛止された線材14の一端側は、荷重計13により移動が制限されるから、線材14は、張力付与車45の上昇によりバール9に掛止された他端が、第2の案内車18方向へ引き寄せられ、バール9を下方へ引下げる。この引下げによりバール9が梃子力点における作用方向(重力方向)へ移動して、上述した梃子作用により鉄蓋Wが受枠6から開放される。
【0053】
この開放作動に際して線材14に付与された張力は、線材14の他端側に掛止された荷重計13に表示され、鉄蓋Wの開放操作力として測定することができる。この開放操作力の測定値は、荷重計13の表示部13cにデジタル表示されるとともに、測定経過時間内の最高操作力を表示することができるものであるから、測定開始から測定終了までの間の時間経過ごとの開放操作力と最高操作力を測定できる。
【0054】
次いで、上述したマンホール用鉄蓋の開放操作力測定装置1の使用方法を説明しながら作用効果を説明する。開放操作力を測定しようとする鉄蓋Wの設置及び準備は、図1において、受枠6の受座6aに鉄蓋Wを嵌合させ、水平になるように調整する。次に所定の測定基準に基づく測定準備として、路上に設置された鉄蓋が受ける外力と同様の負荷を加えて、鉄蓋Wを受枠6の受座6aに喰い込ませるために、鉄蓋Wの中央に厚さ6mmのゴム板を載せ、さらにその上に直径360mmの鉄製載荷板を載置し、その上に鉄製やぐらを載置する。その後、一様な速さで5分以内に鉛直方向に210kNの試験荷重を加え、10秒静止した後、除荷をする。これを10回繰返した後、鉄蓋W上からすべての載置物を除去する。なお、この測定基準及び後述する開放操作力の規定は、鉄蓋を敷設・管理する自治体や企業等により、または、その用途によって相違し、本実施の形態における例は、A市の消火栓用鉄蓋に関する例を示す。
【0055】
次に、鉄蓋Wの開放穴Waにバール9の先端部9aを挿入して、その先端を開放穴Waの縁部に係合させるとともに、バール9の先端よりもやや中央部側の受部9bを受枠6の受座6aの上面に係合させる。このバール9が係合された後、線材14の一端側を荷重計13の入力軸13aのフック13bに掛止し、その線材14の中間部分は、第1の案内車16の半円凹溝16a、張力付与車45の半円凹溝45a及び第2の案内車18の半円凹溝18aに順次係合させ、鉄蓋Wの開放穴Waに先端部9aが挿入されたバール9の掛止金具10に、線材14の他端側を掛止させる。
【0056】
次に、回転ハンドル31を回動させて張力付与車45を上方へ移動させ、当該張力付与車45により線材14の弛みを最小限にするとともに、バール9の軸心に対して線材14の掛止角度が直角であることを確認する。この状態において、荷重計13をリセットして表示部13cの表示値を零にするとともに、測定開始から測定終了までの間の最高測定値の表示が残存するように設定する。これで、測定準備は終了である。
【0057】
次に、回転ハンドル31を例えば、1乃至2秒/回の回動速度で回動させて張力付与車45を上方へ移動させ、当該張力付与車45により、第1の案内車16と第2の案内車18との間の線材14に張力を付与することで、当該線材14によりバール9の梃子操作部9cを梃子力点における作用方向(重力方向)へ移動させて、その梃子作用により鉄蓋Wを受枠6から開放させるとともに、枠体11,12に取付けられた荷重計13の表示部13cに表示された測定値を読み取り記録する。
【0058】
なお、測定経過時間内の最高測定値は表示部に残存しているので、測定作業が終了した後において読み取ることができる。また、荷重計13は、上述のように予め入力軸13aに負荷される風袋はリセットの際に差し引かれて零復帰するが、バール9の自重、線材掛止部材10の自重、線材14の自重等は差し引かれないので、上述した開放操作力Poは、前記各自重に基づき表示部13cに表示された測定値を補正して、正味の開放操作力Poを算出する。この開放操作力Poは、上記消火栓用鉄蓋Wの場合において、490N以下に規定されている。
【0059】
上記のように、本発明に係るマンホール用鉄蓋の開放操作力測定装置は、線材14の一端が枠体11,12に取付けられた荷重計13に掛止され、他端は鉄蓋Wを開放するバール9に掛止され、移動操作機構4により張力付与車45を移動させて、第1の案内車16と第2の案内車18との間の線材14に張力を付与することで、線材14の他端側によりバール9を引下げるとともに、線材14の一端側を介して荷重計13によりバール9で鉄蓋Wを開放するための操作力を測定するものである。
【0060】
すなわち、荷重計13は、従来のようにバール9に直接取り付けるものではないから、鉄蓋Wを開放するためのバールの引下げ速度が一定に安定しやすく、誤差の少ない開放操作力の測定結果を得ることができる。また、従来のように人手により荷重計を直接牽引しないから、荷重計13の測定値の表示が動かず一定値を示すとともに、荷重計13を動かさないので読取り誤差が僅少である。また、バール9に掛止される線材14は、第2の案内車18又は第3の案内車22によりバール9の軸線に対して常時直角方向に維持することができ、鉄蓋Wの開放操作力の正しい測定結果を得ることができる。
【0061】
なお、本発明に係るマンホール用鉄蓋の開放操作力測定装置の実施の形態においては、荷重計13はその入力軸線が鉛直であるように設置されるとともに、移動操作機構4は張力付与部材45の移動方向が鉛直であるように設置されてなる構成としたが、鉛直以外の例えば、水平にも構成できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の実施の形態に係るマンホール用鉄蓋の開放操作力測定装置の全体を示す正面図である。
【図2】図1の平面図である。
【図3】図1の右側面図である。
【図4】移動操作機構を示し、図1のA−A矢視断面図である。
【図5】バール受け部材を示し、図1のB矢視斜視図である。
【符号の説明】
【0063】
1 マンホール用鉄蓋の開放操作力測定装置
3 操作力測定部
4 移動操作機構
6 受枠
9 バール
13 荷重計
13a 入力軸
13c 表示部
14 線材
16 第1の案内車
18 第2の案内車
21 第3の案内車
26 操作軸
26b 雄ねじ部
31 ハンドル車
41 ナット
41a 雌ねじ
44 移動板
45 張力付与車
50 バール受け部材
W 鉄蓋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受枠上に喰い込むように設置されたマンホール用の鉄蓋をバールの梃子作用により開放するための操作力を測定するマンホール用鉄蓋の開放操作力測定装置であって、
測定する荷重を入力する入力軸及び入力された荷重を表示する表示部を有し引張荷重を測定する荷重計と、
この荷重計の入力軸に一端が掛止され上記バールに他端が掛止される線材と、
上記荷重計に掛止された線材の一端側を該荷重計の入力軸線と略同一軸線で移動案内する第1の案内部材と、
上記バールに掛止された線材の他端側を該バールの梃子力点における作用方向と略同一方向に移動案内する第2の案内部材と、
これら第1の案内部材と第2の案内部材との間で上記バールを引下げるべく上記線材に張力を付与する張力付与部材を有し該張力付与部材を進退移動させる移動操作機構と、
を備えてなることを特徴とするマンホール用鉄蓋の開放操作力測定装置。
【請求項2】
前記第2の案内部材と前記バールとの間には、該バールに掛止された線材の他端側を該バールの梃子力点における作用方向と略同一方向に移動案内する第3の案内部材が着脱自在に設置されてなることを特徴とする請求項1記載のマンホール用鉄蓋の開放操作力測定装置。
【請求項3】
前記荷重計はその入力軸線が鉛直であるように設置されるとともに、前記移動操作機構は前記張力付与部材の移動方向が鉛直であるように設置されてなることを特徴とする請求項1又は2記載のマンホール用鉄蓋の開放操作力測定装置。
【請求項4】
前記移動操作機構は、前記張力付与部材が一端部に取付けられ進退移動する移動体と、この移動体の他端部に取付けられ該移動体の移動方向と同じ方向に一方のねじが螺刻されたねじ部材と、このねじ部材に螺刻された一方のねじと螺合する他方ねじが螺刻され回動自在に配置された操作軸と、この操作軸の回動による前記移動体の共回りを抑止するとともに該移動体を進退方向に案内する移動案内部材と、前記操作軸を回動させる回動手段とを備えてなることを特徴とする請求項1,2又は3の何れかに記載のマンホール用鉄蓋の開放操作力測定装置。
【請求項5】
前記ねじ部材に螺刻された一方のねじは一方の台形ねじであるとともに、前記操作軸に螺刻された他方のねじは他方の台形ねじであることを特徴とする請求項4記載のマンホール用鉄蓋の開放操作力測定装置。
【請求項6】
前記第2の案内部材の上方には、前記移動操作機構による引下げ動作によりバールが下げられ前記喰い込み状態が解除された後の前記バールを受けるバール受け部材が配置されていることを特徴とする請求項1,2,3,4又は5の何れかに記載のマンホール用鉄蓋の開放操作力測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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