説明

ミクロスフィアを含む化粧品又は皮膚外用組成物

【課題】睫毛の長さ及び/又はボリュームを増大させ、毛髪/睫毛の形の保持性を改善し、再形成を可能にし、又は持続性を増加させる等の、改善された化粧品又は皮膚外用剤の提供。
【解決手段】粘着性ミクロスフィアと皮膜形成成分を含有する化粧品又は皮膚外用組成物。該ミクロスフィアはアクリレート類、メタクリレート類、アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド類、アクリルニトリル類、ピロリドン類、ビニルエステル類、及びそれらの混合物からなる群から選択される単量体、好ましくはアクリル酸エチルヘキシル、の重合によって調製されるものである。また、該皮膜形成成分はTgが少なくとも約20℃の差がある少なくとも二種の皮膜形成剤を含み、皮膜形成剤の少なくとも一種が、アクリレート類、メタクリレート類、アクリル酸、メタクリル酸、及びそれらの混合物からなる群から選択される単量体の重合によって調製される重合体である。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
(関連出願に対するクロスリファレンス)
本出願は、出典明示により全内容が援用される2006年3月21日出願の米国仮出願第60/783826号に基づく優先権を主張する。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、一般に、ミクロスフィアと皮膜形成成分を含有する化粧品又は皮膚外用組成物に関する。このような組成物は、例えば、睫毛の長さ及び/又はボリュームを増大させ、毛髪/睫毛の形の保持性を改善し、毛髪又は睫毛スタイリング用組成物及び/又は熱を再度適用しないで、毛髪又は睫毛を元のスタイルにスタイリングし直すことを可能にし、又は耐移り性、耐水性及び/又は持続性を増加させる等の、改善された化粧品又は皮膚外用剤の性質と特徴を有する。
【0003】
(発明の背景)
毛髪や睫毛のようなケラチン物質を所定位置に固定することはスタイリングにおいて重要な要素であり、これには既にスタイリングされている形を固定するか、あるいはケラチン物質を同時にシェーピングし固定することを一般に含む。現在市場に出ているスタイリング用組成物はケラチン物質を所望の形又は配置に保持するのに効果的であるが、多くは、スタイリング用組成物及び/又は熱を再度適用しないで、スタイルを所望の形に後で修正したり元のスタイルにスタイリングし直すことを可能にするようには設計されていない。更に、様々な種類のストレス下で、従来の製品を使用して得られるスタイルは、望ましくない永久的な状態をとる傾向があり、これを容易には修正できない。
【0004】
米国特許第6548051号及び米国特許出願公開第2002/0059941号及び第2006/0024255号は再成形可能な毛髪スタイリング用組成物を提供することにより伝統的なスタイリング用組成物のこのような不具合を解決しようとしている。
【0005】
そのような再成形可能な毛髪ケア系の導入により毛髪スタイリング製品において先駆的な進歩があったが、更なる改良がなおも望まれている。粘着度合いの調節と全体の外観、毛髪の感触及び扱い性の改善における更なる進歩は、高い目標ではないにしても、なお価値があることである。
【0006】
従って、本発明の一側面は、例えば再成形ができない、耐移り性又は粘着性が乏しい、保持特性が乏しい等々のような、化粧品又は皮膚外用組成物に一般に伴う問題の少なくとも幾らかを解決又は克服できる毛髪、睫毛、皮膚、唇及び爪のようなケラチン物質のための手入れ及び/又はメークアップ及び/又はトリートメント組成物である。
【0007】
(発明の概要)
本発明は、ミクロスフィアと皮膜形成成分を含有する化粧品又は皮膚外用(皮膚科学的)組成物に関する。
【0008】
本発明は、ミクロスフィアと皮膜形成成分を含有する非粘着性粒子を含まないか、本質的に含まないか、又は実質的に含まない化粧品又は皮膚外用組成物に関する。
【0009】
本発明はまたミクロスフィアと皮膜形成成分を含有するマスカラ、トップコート及びベースコートのような睫毛のための組成物にも関する。
【0010】
本発明はまたミクロスフィアと皮膜形成成分を含有するスプレー、ムース、スタイリングジェル、リーブオンコンディショナー、シャンプー、コンディショナー、パーマネントウェーブ組成物、ヘアケア製品、ヘアトリートメント製品及びヘアスタイリング製品のような毛髪のための組成物にも関する。
【0011】
本発明はまたミクロスフィアと皮膜形成成分を含有するファンデーション、リップスティック、リキッドリップカラー、トップコート又はベースコートのような皮膚又は唇のための組成物にも関する。
【0012】
本発明はまたミクロスフィアと皮膜形成成分を化粧品又は皮膚外用組成物において組み合わせることを含む、例えば耐移り性、持続性及び/又は耐水性のようなケラチン物質のための組成物の性能特性を改善する方法にも関する。
【0013】
本発明はまたミクロスフィアと皮膜形成成分を含有する組成物の睫毛又は毛髪ボリューム、強度及び/又は長さ増大有効量を睫毛又は毛髪に適用することを含む、睫毛又は毛髪ボリューム、強度及び/又は長さを増加させる方法にも関する。
【0014】
本発明はまたミクロスフィアと皮膜形成成分を含有する組成物のケラチン物質スタイリング有効量をケラチン物質に適用することを含む、毛髪又は睫毛のようなケラチン物質のスタイリング方法にも関する。
【0015】
本発明はまたミクロスフィアと皮膜形成成分を含有する組成物のケラチン物質スタイリング有効量をケラチン物質に最初に適用し、ついでケラチン物質に組成物を再適用することなくケラチン物質を再スタイリングし、再成形し、又は繰り返して固定することを含む、毛髪又は睫毛のようなケラチン物質を再スタイリングし、再成形し、又は繰り返して固定する方法にも関する。
【0016】
本発明はまたミクロスフィアと皮膜形成成分を含有する組成物の形又はカール保持有効量をケラチン物質に適用することを含む毛髪又は睫毛のようなケラチン物質の形又はカール保持方法にも関する。
【0017】
本発明は更にミクロスフィアと皮膜形成成分を含有する組成物の睫毛、爪、皮膚又は唇メークアップ有効量をそのようなメークアップが必要な睫毛、爪、皮膚又は唇に適用することを含む睫毛、爪、皮膚又は唇のようなケラチン物質をメークアップする方法にも関する。
【0018】
本発明はまた本発明の組成物を睫毛、爪、毛髪、皮膚又は唇のトリートメント及び/又は手入れに十分な量で睫毛、爪、毛髪、皮膚又は唇に適用することによって、睫毛、爪、毛髪、皮膚又は唇のようなケラチン物質をトリートメント又は手入れする方法にも関する。
【0019】
本発明は更に本発明の組成物を睫毛、爪、毛髪、皮膚又は唇の外観を向上させるのに十分な量で睫毛、爪、毛髪、皮膚又は唇に適用することによって、睫毛、爪、皮膚又は唇のようなケラチン物質の外観を向上させる方法に関する。
【0020】
ある実施態様では、本発明はケラチン物質に、限定しないが、べとつき感の低減、つや、輝き、絹のような感触又は外観のような少なくとも一つの所望される性質を付与することを容易にする。特定の好適な実施態様では、本発明は、限定しないが、べとつき感の低減、つや、輝き、絹のような感触及び/又は外観のような少なくとも一つの所望される性質を、ケラチン物質の固定性及び再成形性(reshapability)を実質的に維持しながら、毛髪及び睫毛のようなケラチン物質に付与することを容易にする処方物を提供する。
【0021】
上記の一般的な説明と次の詳細な説明は双方とも例示で説明のためだけのものであって、本発明を限定するものではないことが理解されなければならない。
【0022】
(発明の詳細な説明)
ここで使用される場合、「少なくとも一種の」なる表現は一又は複数を意味し、よって、個々の成分並びに混合物/組合せ物を含む。
【0023】
「化粧品として許容可能な媒体」は、皮膚、毛髪、爪、睫毛、眉、唇及び体又は顔の皮膚の任意の他の領域のような任意のケラチン物質に適合性のある媒体を意味する。
【0024】
ここで使用される「耐移り性」とは、例えば食事又は飲用の際に、例えばガラス、衣類又は皮膚等の他の物質と接触することで直ぐには除去されないという組成物が示す品質を意味する。耐移り性は、その評価のための当該分野で知られている任意の方法により評価することができる。例えば、組成物の耐移り性は「キス」テストにより評価することができる。「キス」テストは、ヒトの唇に組成物を適用し、所定時間の経過後、例えば適用2分後に、ペーパーシート等の物質に「キスする」ことを含むものでありうる。同様に、組成物の耐移り性は、適用に続いて所定時間の経過後、つけている者から任意の他の基体に移った製品の量、例えば個人の首から襟に移った製品の量によって評価することができる。ついで、基体(例えば、襟又は紙)に移った組成物の量を評価し、比較することができる。例えば、製品の大部分がつけている者、例えば唇、首等に残っているならば、組成物は耐移り性があると言える。更に、移った量は、市販の組成物のような他の組成物から移った量と比較することができる。
【0025】
ここで使用される「長い持続性」組成物とは、コンシステンシー、テクスチャー、及び色調から選択される少なくとも一つの性質が、裸眼で見たとき、長い時間、例えば1時間、2時間、更には8時間後でも、適用時と同じまま残っている組成物を意味する。長い持続性は、このような性質を評価するための当該分野で知られている任意の方法により評価することができる。例えば、長い持続性は、(唇を含む)ヒトの皮膚に組成物を適用し、長い時間経過後の組成物のコンシステンシー、テクスチャー及び色調を評価することを含むテストにより評価することができる。例えば、唇用組成物のコンシステンシー、テクスチャー及び色調を適用直後に評価し、個人が所定時間、唇用組成物をつけたままにした後、これらの特性を再評価し比較することができる。更に、これらの特性は、市販組成物のような他の組成物に対して評価することができる。
【0026】
ここで使用される「耐水性」とは、撥水能力と水に対する残留性(permanence)を意味する。耐水性は、このような性質を評価する当該分野で知られている任意の方法により評価することができる。例えば、マスカラ組成物はつけ睫毛に適用することができ、ついで、所定時間、例えば20分間、水中に配することができる。予め定められた時間の経過後、つけ睫毛を水から取り出し、例えばペーパーシート等の物質上に移す。物質上に残った残留物の程度を評価し、例えば市販組成物のような他の組成物と比較することができる。同様に、例えば、組成物を皮膚に適用し、所定時間、皮膚を水に浸してもよい。ついで、予め定められた時間後、皮膚上に残留する組成物の量を評価し、比較することができる。例えば、製品の大部分がつけている者、例えば睫毛、皮膚等に残っているならば、組成物は耐水性であるとされる。
【0027】
ここで使用される「粘着性(tackiness)」とは、2つの面を分離する間に、必要とされる最大張力Fmaxを測定することを意味する。考えられる適用及び設計される処方物に応じて、Fmaxの所望値は変わりうる。ある実施態様では、実質的に非粘着性の組成物は、約4ニュートン(N)未満、約1N未満、約0.5N未満、約0.3N未満、約0.2N未満、又は約0.1N未満のFmaxを有する。当業者であれば、2つの面を剥離させるのに必要な、LLOYDモデルLR5K型の圧下率計(extensiometer)で測定される、最大牽引力を決定することにより、組成物のFmaxを決定することができる。
【0028】
例えば、固体状の硬質で不活性な非吸収性の2つの38mmの面A及びBを、互いに対向させて可動マウントに搭載する。双方の面は互いに接近し又は離間するように移動可能とすることができ、又は面Aが面Bに対して独立して移動するか、又はその逆であってもよい。圧下率計内に挿入する前に、約10から約30%、好ましくは20%の濃度の例えば水性、水性アルコール性、炭化水素、シリコーン及びアルコール性溶媒のような溶媒に溶解させることができる測定する組成物で面Aを被覆し、面Aを1〜10ミル、好ましくは1ミルの厚さに被覆し、その面を室温、例えば22〜25℃、約50%の相対湿度で24時間乾燥させる。圧下率計に挿入したところで、面Aに3Nの圧縮力を20秒かけて面Bに押しつけ、ついで20mm/分の速度で張力を30秒かける。次に、分離開始に要した力の量Fmaxを記す。平均Fmaxは、複数対、好ましくは少なくとも6対の面A及び面Bで前記手順を実施することにより、決定する。
【0029】
「再成形可能(reshapable)」という用語は付加的な物質又は熱を適用することなく回復され又は修復され得るヘアスタイル(固定性)及び/又は保持性を提供することを意味する。これは、更なる製品及び/又は熱を適用してはいけないということを意味するものではない。もし毛髪が過度に湿ったり又は汚れたり、過度に櫛を入れられ、ブラッシングされ又は扱われ、洗浄されるならば、又は毛髪が劇的に再スタイリングされる場合、速度、使用の容易性の点で熱及び/又は更なるスタイリング組成物を加えることが望ましい場合がある。本発明に係る組成物の少なくとも幾つかは、最初の適用後、少なくとも4時間で24時間又はそれ以上の間、通常の技量の専門のヘアスタイリストが判断して、再成形可能でなければならない。好ましくは、単に例示的には、「垂れている」か又はセットが失われている(乱れている)場合にヘアスタイルを回復させ又は変更するために、水や任意の形態の固定化剤などの新しい物質又は熱は必要とはされない。再成形可能と同義語である他の用語には、再位置決め可能(repositionable)、再成形できる(remoldable)、再スタイリング可能(restyleable)、再アレンジ可能(rearrangeable)及び再モデル化可能(remodellable)が含まれる。「再成形可能」という用語はまた水、熱、時間及び/又は物理的な接触が所望の形又は形態を損なうまで、所望の形又は形態を保ち又は保持することができるヘアスタイルを提供することを意味する。
【0030】
本発明の化粧品用組成物及び方法は、ここに記載された本発明の必須構成要件及び制限、並びにここに記載された付加的な又は任意的な成分、要素又は制限、もしくはケラチン物質への適用を意図したパーソナルケア用組成物に見いだされる任意の他の有用な成分を含有し、それらからなり、又は本質的にそれらからなり得る。
【0031】
本発明の組成物は任意の形態でありうる。例えば、それは、ペースト、固形物又はクリームでありうる。本発明の組成物は、例えば顔料を含まない組成物を含む、透明又は清澄なものでありうる。組成物はまた成型組成物であり得、又はスティック又はディッシュとして成型されてもよい。一実施態様の組成物は成型スティック又は注ぎ込みスティックのような固体である。本発明の組成物はまた唇用組成物、例えばリップスティック又はリキッドリップカラー、ファンデーション、マスカラ製品、ヘアジェル、ヘアムース、又はヘアスプレー(エアロゾル又は非エアロゾル)の形態であってもよい。
【0032】
ここで定義される安定性は25℃で8週間、制御された環境チャンバーに組成物を配することでテストされる。このテストにおいて、サンプルの物理的状態を、それをチャンバーに配した時点で検査する。次に、サンプルを24時間、3日、1週間、2週間、4週間及び8週間の時点で再び検査する。各検査では、サンプルを、組成物の異常性、例えば組成物がエマルジョン形態の場合は相分離について検査する。安定性は40℃、37℃、45℃、50℃及び/又は凍結解凍状態で8週間テストを繰り返すことにより更にテストする。これらのテストの何れかで組成物の機能を妨害する異常が観察された場合、組成物は安定性を欠くものと考えられる。当業者であれば、意図される用途に基づき、組成物の機能を妨害する異常を直ぐに認識するであろう。
【0033】
ミクロスフィア
【0034】
本発明によれば、少なくとも一種のミクロスフィアを含有する組成物が提供される。好ましくは、ミクロスフィアは粘着性を有し、及び/又は皮膜形成剤ではない。最も好ましくは、ミクロスフィアは粘着性を有し、皮膜形成剤ではない。好適なミクロスフィアには、限定されるものではないが、Gel Tacミクロスフィア(APIから入手可能)、例えばGel Tac市販製品Gel Tac100A、Gel Tac100B、Gel Tac100C、Gel Tac100K及びGel Tac205Dに見いだされるもの、並びに双方の全内容が出典明示によりここに援用される米国特許出願公開第2006/0024255号及び同第2002/0041858号に開示されているミクロスフィアが含まれる。
【0035】
本発明のミクロスフィアは、界面活性剤、重合開始剤及び/又は懸濁安定剤の存在下で一又は複数種のフリーラジカル重合性単量体を懸濁重合させることによって調製するのが好ましい。より好ましくは、ミクロスフィアは重合開始剤の存在下でアクリル単量体を懸濁重合させることによって調製される。ミクロスフィアを調製する好適な方法は、全ての全内容が出典明示によりここに援用される米国特許第3691140号、米国特許第4166152号、米国特許第4495318号、米国特許第4598112号、米国特許第4786696号、米国特許第4839416号、米国特許第4968562号、米国特許第5045569号、米国特許第5571617号、米国特許第5409977号、米国特許第5656705号、米国特許第5719247号及び/又は米国特許出願公開第2003/0109630号に開示されている。
【0036】
好ましくは、単量体は−20℃より低いガラス転移温度(Tg)を有するミクロスフィアを生じるように選択されなければならない。そのような単量体を選択することにより、改善された粘着性を有するミクロスフィアが提供される。
【0037】
好適な実施態様によれば、ミクロスフィアは、アクリレート類、メタクリレート類、アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド類、アクリルニトリル類、ピロリドン類、ビニルエステル類、及びそれらの混合物の単独重合又は共重合によって調製される。例えば、ミクロスフィアを調製するために使用することができる単量体には、限定するものではないが、アクリル酸アルキル、例えばアクリル酸ブチル、アクリル酸エチル、アクリル酸メチル及びアクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸アルキル、例えばメタクリル酸メチル及びメタクリル酸ブチル、極性共単量体、例えばアクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、N-tert-オクチルアクリルアミド、アクリロニトリル、アクリルアミド、1-ビニル-2-ピロリドン、ビニルスルホン酸ナトリウム、ビニルエステル、例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ネオデカン酸ビニル、ステアリン酸ビニル及びピバリン酸ビニル(ピバル酸ビニル)が含まれる。例えばジアクリル酸ブタンジオール及びジアクリル酸ヘキサンジオールのような架橋単量体もまた使用することができる。本発明の実施に使用することができる他の有用な単量体及びその組合せは当業者には明らかであろう。
【0038】
ミクロスフィア重合に有用な重合開始剤には、限定されるものではないが、過酸化ジアルキル、例えば過酸化ラウロイル(Akzo NobelのLaurox)、過酸化ジアシル、例えば過酸化ジベンゾイル(Elf AtochemのLucidol A75)、ペルオキシ酸エステル、例えばペルオキシピバル酸t-アミル(Elf AtochemのLupersol 554-M50)、ペルオクチル酸t-ブチル(Elf AtochemのLuperox 26及びAkzo ChemicalsのTrigonox 21)、アゾ化合物、例えば全てDuPontの2,2'-アゾビス(イソブチロニトリル)(VAZO 64)及び2,2'-アゾビス(2-メチルブタンニトリル)(VAZO 67)及び2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルペンタンニトリル)(VAZO 52)が含まれる。本発明の実施に使用することができる他の有用な開始剤及びその組合せは当業者には明らかであろう。
【0039】
本発明の特に好適な実施態様によれば、全体の内容を出典明示によりここに援用する米国特許出願公開第2003/0109630号に記載されているようにミクロスフィアを調製するために開示アクリル酸2-エチルヘキシル(単量体)及びペルオクチル酸t-ブチル(開始剤)が使用される。
【0040】
本発明のミクロスフィアは、非常に様々な形状、例えば球状、楕円状、板状、及び不規則形状粒子でありうる。ミクロスフィアのサイズは通常はその長さ及び/又は幅によって記述される。本発明の文脈において、ミクロスフィアの「長さ」は、適切な顕微鏡技術によって測定することが可能なミクロスフィアの対向する二点間の最大距離を意味することを意図している。ミクロスフィアの「幅」は、適切な顕微鏡技術によって測定することが可能なミクロスフィアの対向する二点間の最小距離を意味することを意図している。
【0041】
他の実施態様では、ミクロスフィアは約1:1以上の長さの幅に対する比を有している。
【0042】
他の実施態様では、ミクロスフィアは、約1から約1000ミクロン、好ましくは約1から30ミクロン未満、好ましくは30から1000ミクロン、好ましくは30から100ミクロン、より好ましくは約30から約50ミクロンの平均長を有している。ミクロスフィアの平均長は、次の方法:光学顕微鏡法、篩法、沈降法、放射拡散法、吸収法、コールター原理法、レーザ光回折法、X線法、及びセンシングゾーン法によって測定することができ、これらはClyde Orrの「Size Measurement of Particles」, Kirk-Othmer Encyclopedia of Chemical Technology, vol.21, pp.106-131 (3版 1983)及びTerry Allenの「Analyse et Caracterisation, Technique de l'ingenieur」, Etudes de Structure-Granulometrie, Vo.12, pp.1040-9から1040-26 (1996)によって記載されている。一実施態様では、光学顕微鏡法がミクロスフィアの平均長を測定するために使用される。
【0043】
好ましくは、ミクロスフィアは、組成物の全重量の約0.5%から約40%、より好ましくは組成物の全重量の約1%から約30%、より好ましくは組成物の全重量の約2%から約20%、最も好ましくは約3%から約15%でその間の全ての範囲及び部分的範囲を含む範囲の量で存在する。
【0044】
皮膜形成成分
【0045】
本発明によれば、皮膜形成成分を含有する組成物が提供される。皮膜形成成分は少なくとも一種の皮膜形成剤、おそらくは二種、三種以上の皮膜形成剤を含有する。好適な一実施態様では、一種の皮膜形成剤が存在する。他の好適な実施態様では、二種の皮膜形成剤が存在する。ケラチン物質への適用時に皮膜を形成することができガラス転移温度(Tg)を有する任意の物質を、本発明に係る皮膜形成剤として使用することができる。
【0046】
如何なる特定の理論にも拘束されることを望むものではないが、本発明に係る皮膜形成剤はケラチン物質の上又はその周りにマトリックス様環境をもたらし、この環境によりミクロスフィアがケラチン物質の上又は周りに残るようになり、長い時間の間、ケラチン物質にその特性を付与すると考えられる。よって、本発明の好適な実施態様によれば、組成物が適用されているケラチン物質に対するミクロスフィアの効果を改善し及び/又は長くするために十分な皮膜形成成分が本発明の組成物中に存在する。また皮膜形成成分はミクロスフィアを含む組成物の化粧品的効果を改善すると考えられる。例えば、本発明の皮膜形成成分は本発明のミクロスフィアを含む組成物の粘着性を低減させる。
【0047】
好適な実施態様によれば、皮膜形成成分は少なくとも二種の皮膜形成剤を含む。そのような実施態様では、その少なくとも二種の皮膜形成剤は、好ましくは、本発明の組成物が適用されているケラチン物質に対するミクロスフィアの効果を改善し及び/又は長くし、及び/又は本発明の組成物の化粧品的効果を改善する環境をつくり出すために選択される。
【0048】
そのような一実施態様によれば、その少なくとも二種の皮膜形成剤は実質的に異なるガラス転移温度(Tg)を有している。例えば、その二種の皮膜形成剤のTgは、全ての範囲とその間の部分範囲を含み、少なくとも約20℃、30℃、40℃、50℃、60℃、70℃、80℃、90℃異なる。最も好ましくは、一方の皮膜形成剤は約−20℃より低いTgを有しており、他の皮膜形成剤は約0℃より高いTgを有している。
【0049】
他のそのような実施態様によれば、皮膜形成剤の一方は0℃より高いガラス転移温度(Tg)を有しており、他の皮膜形成剤は0℃未満のTgを有している。0℃より高い皮膜形成剤のTgの例には、限定するものではないが、全ての範囲とその間の部分範囲を含み、10℃、20℃、30℃、40℃、50℃、60℃、70℃、80℃、90℃が含まれる。0℃より低い皮膜形成剤のTgの例には、限定するものではないが、全ての範囲とその間の部分範囲を含み、−10℃、−20℃、−30℃、−40℃、−50℃、−60℃、−70℃、−80℃、−90℃が含まれる。
【0050】
他の好適な実施態様によれば、皮膜形成成分は少なくとも一種の皮膜形成剤を含む。特に好適な実施態様では、その一種の皮膜形成剤のTgは0℃未満である。0℃未満の皮膜形成剤のTgの例には、限定するものではないが、全ての範囲とその間の部分範囲を含み、−10℃、−20℃、−30℃、−40℃、−50℃、−60℃、−70℃、−80℃、−90℃が含まれる。そのような実施態様では、その少なくとも一種の皮膜形成剤は、好ましくは、本発明の組成物が適用されているケラチン物質に対するミクロスフィアの効果を改善し及び/又は長くし、及び/又は本発明の組成物の化粧品的効果を改善する環境をつくり出すために選択される。
【0051】
本発明での使用に適した皮膜形成剤には、限定されるものではないが、ポリオルガノシロキサン含有重合体、例えばポリシリコーンポリアミド又はポリシリコーンポリウレタン;シリコーン樹脂(好ましくはMK又はMQ樹脂)、シリコーン/(メタ)アクリレート共重合体、アクリレート/ジメチコーン共重合体、液状シロキシシリケート及びシリコーンエステル、例えばその開示が出典明示によりここに援用される米国特許第5334737号に記載されているもの、ビニル重合体、メタクリル重合体、及びアクリル重合体から選択される骨格とペンダントシロキサン基及びペンダントフルオロ化学基から選択される少なくとも一つの鎖を含むシリコーン重合体、例えばその開示の全体が出典明示によりここに援用される米国特許第5209924号及び同第4972037号、及び国際公開第01/32737号に記載されているもの、ビニル-シリコーングラフト共重合体から選択される共重合体、例えばその開示が出典明示によりここに援用される米国特許第5468477号に記載されている重合体が含まれる。
【0052】
本発明での使用に適した皮膜形成剤はまた出典明示によりその全内容がここに援用される米国特許出願公開第2004/0170586号に開示されている。
【0053】
特に好適な実施態様によれば、皮膜形成剤の少なくとも一種は、アクリレート類、メタクリレート類、アクリル酸、メタクリル酸、及びそれらの混合物からなる群から選択される単量体の重合によって調製される重合体である。更に好適な実施態様によれば、皮膜形成剤の双方が、アクリレート類、メタクリレート類、アクリル酸、メタクリル酸、及びそれらの混合物からなる群から選択される単量体の重合によって調製される重合体である。
【0054】
そのような皮膜形成剤の好適な例には、限定されるものではないが、感圧接着剤である水性エマルジョン重合されたアクリル又はビニル-アクリル重合体、エチレン-酢酸ビニルエマルジョン、ポリウレタン分散体及び天然ゴムラテックスが含まれる。特定の例には、限定されるものではないが、Carbotac26222(BF Goodrich)、Nacrylic78-6408(National Starch and Chemical)、Rhoplex N580(Rohm and Haas)、Acronal NV146CR(BASF)、Acronal NV155CR(BASF)、Acronal NV189CR(BASF)、Acronal NV162CR(BASF)、Acronal NN171CR(BASF)、Acronal NA182CR(BASF)、NACRYLIC CP3600(National Starch)、NACRYLIC CP2550(National Starch)、NACRYLIC CP3650(National Starch)、Luphen D259U(BASF)、DUROSET C-325(National Starch)、RESYN1025(National Starch)、及びDUROSET E-200(National Starch)が含まれる。
【0055】
最も好適な実施態様によれば、皮膜形成剤はミクロスフィアと適合性/混和性があり、一より多く存在する場合には互いに適合性/混和性がある。
【0056】
好適な実施態様によれば、皮膜形成成分は組成物の全重量に対して0.3重量%から50重量%の範囲の量で組成物中に存在する。好ましくは、皮膜形成成分は組成物の全重量に対して1.0重量%から40重量%、より好ましくは2%から30%の範囲の量で存在する。当業者には、これらの重量百分率は皮膜形成剤の乾燥重量基準であり、本発明の皮膜形成剤は希釈溶液の形で供給者から商業的に入手することができることは認識される。よって、ここに開示された皮膜形成剤の量は活性物質の重量百分率を反映する。
【0057】
二種の皮膜形成剤が存在している好適な実施態様によれば、第一皮膜形成剤の第二皮膜形成剤に対する比は、全ての範囲とその間の部分範囲を含み、約1:10から20:1、約1:10から10:1、約1:5から5:1の間である。
【0058】
本発明によれば、ミクロスフィアと皮膜形成成分は、調製中に組成物に同時に又は別個に添加することができる。本発明の特に好適な実施態様によれば、ミクロスフィアと皮膜形成成分は、最も好ましくは、その全内容が出典明示によりここに援用される米国特許出願公開第2003/0109630号に記載された組成物のような、ミクロスフィアと好適な皮膜形成成分を含む組成物の形態で、同時に添加される。組成物の好適な例はミクロスフィアと好適な皮膜形成成分Multi-Lok38-454A(National Starch)を含む。
【0059】
着色剤
【0060】
本発明によれば、組成物は少なくとも一種の着色剤を含有していてもよい。適した着色剤には、限定されないが、顔料(ゴニオクロマティック及び単色型)、染料、例えば脂溶性染料、真珠光沢顔料、及びパール剤が含まれる。典型的には、組成物が着色料を含む場合、それはマスカラ、リップスティック又はファンデーションのような着色組成物である。あるいは、組成物が着色料を含まない場合は、ケラチン物質への着色組成物の適用前(又は適用後)にベースコート(又はトップコート)として使用することができる透明又は清澄な組成物である。しかしながら、トップコート又はベースコートが着色料を含むことは可能である。
【0061】
本発明で使用することができる代表的な脂溶性染料には、スーダンレッド、DCレッド17、DCグリーン6、β-カロテン、大豆油、スーダンブラウン、DCイエロー11、DCバイオレット2、DCオレンジ5、アナトー及びキノリンイエローが含まれる。脂溶性染料は、存在する場合は、組成物の全重量に対して、一般的に20重量%まで、例えば0.0001%〜6%の範囲の濃度を有する。
【0062】
本発明で使用することができる真珠光沢顔料は、白色の真珠光沢顔料、例えば、チタン又はオキシ塩化ビスマスで被覆されたマイカ、有色の真珠光沢顔料、例えば、酸化鉄を含むチタンマイカ、フェリックブルー又は酸化クロムを含むチタンマイカ、上述のものから選択される有機顔料を含むチタンマイカ、及びオキシ塩化ビスマスをベースとした真珠光沢顔料から選択され得る。真珠光沢顔料は、存在する場合は、組成物の全重量に対して50重量%まで、例えば0.1%〜20%、好ましくは0.1%〜15%の範囲の濃度で組成物に存在する。
【0063】
本発明で使用することができる顔料は、白色、有色、無機物、有機物、重合体、非重合体の被覆及び非被覆顔料から選択することができる。それらはまた単色型又はゴニオクロマティック(例えば多層干渉構造)、例えば全体の開示が出典明示によりここに援用される米国特許第6451294号に開示されたものでありうる。無機顔料の代表的な例には、表面処理されていてもよい二酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化鉄、酸化クロム、マンガンバイオレット、ウルトラマリンブルー、クロム水和物及びフェリックブルーが含まれる。有機顔料の代表的な例には、カーボンブラック、D&C型顔料、アルミニウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、コチニールカルミンをベースとしたレーキ類が含まれる。
【0064】
存在する場合、顔料は、組成物の全重量に対して50重量%まで、例えば0.5重量%〜40重量%、更には2重量%〜30重量%の範囲の濃度で組成物に存在し得る。ある製品の場合、顔料は、真珠光沢顔料も含めて、例えば、組成物の50重量%まで存在し得る。
【0065】
本発明の特定の側面では、組成物はエマルジョン形態でありうる。適したエマルジョン形態には、限定されないが、水中油型、油中水型、油中水中油型、水中油中水型、及びナノエマルジョン(油球が非常に微細な粒子サイズのエマルジョン、すなわち、平均サイズが約100ナノメートル(nm)未満のエマルジョン)が含まれる。エマルジョンは、少なくとも一の油相と少なくとも一の水相を含む。典型的には、エマルジョンは、エマルジョンの相分離を抑制し、エマルジョンに安定性を付与する界面活性剤又は界面活性剤様材料を含む。
【0066】
更なる成分
【0067】
本発明の組成物はまた考慮下の分野で通常使用される任意の添加剤を更に含有可能である。例えば、分散剤、酸化防止剤、精油、保存料、香料、媒体に分散性である脂溶性ポリマー、フィラー、中和剤、化粧品用及び皮膚科学用活性剤、例えばエモリエント、保湿剤、ビタミン類、抗皺剤、必須脂肪酸、サンスクリーン剤、及びそれらの混合物を添加することができる。このような成分の非限定的例は、ここにその全内容が出典明示により援用される米国特許出願公開第2004/0170586号に見出すことができる。適切な付加的成分の更なる例は、限定されないが本出願が優先権を主張する出願を含むこの出願に出典明示により援用される他の文献に見出すことができる。このような付加的成分の更なる例は、International Cosmetic Ingredient Dictionary and Handbook(第9版、2002)に見出すことができる。
【0068】
当業者であれば、考えられる添加により、本発明の組成物の有利な特性が悪影響を受けないか、実質的に受けないように留意して、任意の付加的な添加剤及び/又はその量を選択するであろう。
【0069】
これらの物質は、所望する特性、例えばコンシステンシー又はテクスチャーを有する組成物を調製するために、当業者により様々に選択され得る。
【0070】
これらの添加剤は、組成物の全重量に対して、0%〜99%(例えば、0.01%〜90%)、更には例えば0.1%から50%の割合で(存在するならば)、組成物中に存在してよい。
【0071】
言うまでもなく、本発明の組成物は化粧品的又は皮膚科学的に許容可能、すなわち無毒で生理学的に許容可能な媒体を含有しており、人間の睫毛に適用することができるものでなければならない。本発明の目的において、「化粧品的に許容可能な」なる表現は、好ましい外観、匂い、感触及び/又はテイストの組成物を意味する。
【0072】
特に、毛髪及び/又は睫毛への適用のための組成物に関し、更なる任意的な成分には、限定されるものではないが、全内容が出典明示によりここに援用される米国特許第6548051号及び米国特許出願公開第2002/0059941号及び同第2006/0024255号に記載されているものが含まれる。そのような更なる成分の例には、限定するものではないが、粘着剤粒子、非粘着剤粒子、固定重合体、及び噴霧剤(エアロゾル組成物用)が含まれる。
【0073】
しかしながら、本発明の特に好適な実施態様では、非粘着粒子を含まないか、本質的に含まないか、又は実質的に含まない化粧品又は皮膚外用組成物が提供される。「非粘着粒子を含まない」とは、非粘着粒子が組成物中に存在していないことを意味する。「非粘着粒子を本質的に含まない」とは、0.01%未満の非粘着粒子が組成物中に存在することを意味する。「非粘着粒子を実質的に含まない」とは、0.03%未満の非粘着粒子が組成物中に存在することを意味する。ここで使用される「非粘着」粒子は、米国特許第6548051号、米国特許出願公開第2002/0059941号及び米国特許出願公開第2006/0024255号に記載されている粘着剤で被覆されていない粒子である。より詳細には、非粘着粒子は、粘着性ではなく、粘着性コーティングで全体が又は部分的に被覆されておらず、コア/シェル構造であるときコア又はシェル物質として粘着剤を含まない個別の基体である。
【0074】
更なる成分の特定の例には、特に組成物が無水組成物又はエマルジョンであるならば、油が含まれる。本発明において任意の油を使用することができる。油は、揮発性又は非揮発性、シリコーンベ−ス及び/又は炭化水素ベース等々でありうる。よって、例えば、外部の油相は、独立して又は組合せで、揮発性シリコーン油、非揮発性シリコーン油、揮発性非シリコーン油及び非揮発性非シリコーン油を含みうる。
【0075】
一実施態様では、本発明の組成物は、シリコーン油を実質的に含まないものである(すなわち、約1%未満のシリコーン油を含む)。他の実施態様では、本発明の組成物は、非シリコーン油を実質的に含まないものである(すなわち、約1%未満の非シリコーン油を含む)。他の実施態様では、本発明の組成物は、非揮発性油を実質的に含まないものである(すなわち、約1%未満の非揮発性油を含む)。更に他の実施態様で、組成物は、揮発性油を実質的に含まないものである(すなわち、約1%未満の揮発性油を含む)。
【0076】
本発明の一実施態様によれば、油相は、一以上の揮発性シリコーン油を含みうる。このような揮発性シリコーン油の例には、室温での粘度が6cSt以下で、場合によっては、1〜10の炭素原子のアルキル又はアルコキシ基で置換されていてもよい2〜7のケイ素原子を有する直鎖状又は環状シリコーン油が含まれる。本発明で使用可能な好適な油には、オクタメチルテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、ヘプタメチルオクチルトリシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、ドデカメチルテトラシロキサン、ドデカメチルペンタシロキサン及びこれらの混合物が含まれる。使用可能な他の揮発性油は、6cStの粘度と94℃の引火点を有する信越(Shin Etsu)社の市販品であるKF96Aを含む。好ましくは、揮発性シリコーン油は、少なくとも40℃の引火点を有する。
【0077】
揮発性シリコーン油類の非限定的例を下記の表1に示す。
【0078】
【表1】

【0079】
更に、揮発性の直鎖状シリコーン油を本発明の組成物に使用することができる。適切な揮発性で直鎖状シリコーン油には、その内容が出典明示によりここに援用される米国特許第6338839号及び国際公開第03/042221号に記載されているものが含まれる。一実施態様では、揮発性直鎖状シリコーン油はデカメチルテトラシロキサンである。他の実施態様では、デカメチルテトラシロキサンは、デカメチルテトラシロキサンよりも揮発性である他の溶剤と更に組合せられる。
【0080】
溶媒/油の揮発性は米国特許第6338839号に記載された蒸発速度を使用して決定することができる。
【0081】
本発明で使用することができる他のシリコーン油の例には、室温で液状の非揮発性の直鎖状ポリジメチルシロキサン類(PDMS);シリコーン鎖に垂下して及び/又はその末端に存在するアルキル、アルコキシ又はフェニル基を有するポリジメチルシロキサン類で、該基がそれぞれ2〜24の炭素原子を有するもの;フェニルシリコーン類、例えばフェニルトリメチコーン類、フェニルジメチコーン類、フェニルトリメチルシロキシジフェニルシロキサン類、ジフェニルジメチコーン類、ジフェニルメチルジフェニルトリシロキサン類、及び2-フェニルエチルトリメチルシロキシシリケート類が含まれる。
【0082】
他の好ましい実施態様では、油相は、一又は複数の非シリコーン揮発性油を含み、揮発性炭化水素油、アルコール、揮発性エステル及び揮発性エーテルから選択されうる。そのような揮発性非シリコーン油の例には、限定されるものではないが、8から16の炭素原子を有する揮発性炭化水素油とその混合物、特に分枝状C〜C16アルカン類、例えばC〜C16イソアルカン類(イソパラフィンとしても知られている)、イソドデカン、イソデカン、イソヘキサデカン、及び例えばアイソパー(Isopar)又はパーメチル(Permethyl)の商品名で販売されている油、C〜C16分枝エステル、例えばネオペンタン酸イソヘキシル又はイソデシル及びその混合物が含まれる。好ましくは、揮発性非シリコーン油は少なくとも40℃の引火点を有する。
【表2】

【0083】
本発明の組成物において使用することができる他の非シリコーン油の例には、極性油、例えば:
−脂肪酸が多様な鎖長を有してもよく、これらの鎖が直鎖状又は分枝状で飽和又は不飽和であってもよい、グリセロールの脂肪酸エステルからなる高トリグリセリド含量の炭化水素系植物性油で;これらの油には、特に小麦胚芽油、コーン油、ヒマワリ油、カリテバター、ヒマシ油、スイートアーモンド油、マカダミア油、アプリコット油、大豆油、菜種油、綿種油、アルファルファ油、ケシ油、カボチャ油、ゴマ油、ゼニアオイ(marrow)油、アボカド油、ヘーゼルナッツ油、グレープシード油、クロフサスグリの種油、月見草油、雑穀油、大麦油、キノア(quinoa)油、オリーブ油、ライ麦油、ベニバナ油、ククイノキ油、トケイソウ油及びジャコウバラ油;又はカプリル酸/カプリン酸トリグリセリド、例えばステアリネリデュボア(Stearineries Dubois)社から販売されているもの、又はダイナミットノーベル(Dynamit Nobel)社からミグリオール(Miglyol)810、812及び818の商品名で販売されているもの;
−式RCOORの合成油又はエステルであって、Rは7〜19の炭素原子を含む、1〜40の炭素原子を含む直鎖状又は分枝状の高級脂肪酸残基を表し、Rは3〜20の炭素原子を含む1〜40の炭素原子を有する分枝状炭化水素ベース鎖を表し、R+R≧10のもの、例えばプルセリン油(オクタン酸ケトステアリル)、イソノナン酸イソノニル、安息香酸C12〜C15アルキル;ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸2-エチルヘキシル、アルコール類又はポリアルコール類のオクタノアート類、デカノアート類又はリシノレアート類;ヒドロキシエステル、例えば乳酸イソステアリル又はリンゴ酸ジイソステアリル;及びペンタエリトリトールエステル;
−10〜40の炭素原子を含む合成エーテル;
−C〜C26脂肪アルコール類、例えばオレイルアルコール;及び
−それらの混合物、
が含まれる。
【0084】
好ましくは、油は、存在する場合、組成物の全重量の約5%〜約80%、より好ましくは組成物の全重量の約10%〜約60%、最も好ましくは約15%〜約50%を占め、その間の全ての範囲と部分的範囲を含む。
【0085】
水は、存在する場合、好ましくは、組成物の全重量の約1〜約70%、より好ましくは組成物の全重量の約5%〜約60%、最も好ましくは約10%〜約50%を占め、その間の全ての範囲と部分的範囲を含む。
【0086】
好ましい実施態様では、化粧品又は皮膚外用組成物においてミクロスフィアと皮膜形成成分を組み合わせることを含んでなる、ケラチン物質のための組成物の性能特性、例えば耐移り性、長い持続性及び/又は耐水性などを改善する方法が提供される。組成物は、必要に応じて、好ましくは一日に1又は2回、更に好ましくは一日に1回、ケラチン物質に適用され、ついで、好ましくは衣服又は他の物体等に接触する前に乾燥させることができる。
【0087】
特に好ましい実施態様では、十分なミクロスフィアを、組成物の性能特性が、何れかの成分を個々に含む組成物の性能特性よりも優れるように十分な皮膜形成成分と組み合わせる。よって、そのような特に好ましい実施態様では、ケラチン物質用の組成物は、耐移り性、長い持続性及び/又は耐水性を高める有効量のミクロスフィア及び/又は皮膜形成成分を含む。
【0088】
他の好適な実施態様では、ミクロスフィアと皮膜形成成分を含有する組成物の睫毛又は毛髪のボリューム、強度及び/又は長さを増加させる有効量を睫毛又は毛髪に適用することを含む睫毛又は毛髪のボリューム、強度及び/又は長さを増加させる方法が提供される。組成物は、必要に応じて、好ましくは一日に1又は2回、更に好ましくは一日に1回、ケラチン物質に適用され、ついで、好ましくは衣服又は他の物体等に接触する前に乾燥させることができる。
【0089】
本発明の更に他の実施態様では、ミクロスフィアと皮膜形成成分を含有する組成物のケラチン物質のスタイリング有効量をケラチン物質に適用することを含む睫毛又は毛髪のようなケラチン物質のスタイリング方法が提供される。
【0090】
本発明の更に他の実施態様によれば、ミクロスフィアと皮膜形成成分を含有する組成物のケラチン物質スタイリング有効量をケラチン物質に最初に適用し、ついでケラチン物質に組成物を再適用することなくケラチン物質を再スタイリングし、再成形し、又は繰り返して固定することを含む、毛髪又は睫毛のようなケラチン物質を再スタイリングし、再成形し、又は繰り返して固定する方法が提供される。
【0091】
好適な実施態様によれば、ミクロスフィアと皮膜形成成分を含有する組成物の形又はカール保持有効量をケラチン物質に適用することを含む毛髪又は睫毛のようなケラチン物質の形又はカール保持方法が提供される。
【0092】
本発明の他の実施態様によれば、ミクロスフィアと皮膜形成成分を含有する組成物の睫毛、爪、皮膚又は唇メークアップ有効量をそのようなメークアップが必要な睫毛、爪、皮膚又は唇に適用することを含む睫毛、爪、皮膚又は唇のようなケラチン物質をメークアップする方法が提供される。
【0093】
更に他の実施態様によれば、本発明の組成物を睫毛、爪、毛髪、皮膚又は唇のトリートメント及び/又は手入れに十分な量で睫毛、爪、毛髪、皮膚又は唇に適用することによって、睫毛、爪、毛髪、皮膚又は唇のようなケラチン物質をトリートメント又は手入れする方法が提供される。
【0094】
他の好適な実施態様によれば、本発明の組成物を睫毛、爪、毛髪、皮膚又は唇の外観を向上させるのに十分な量で睫毛、爪、毛髪、皮膚又は唇に適用することによって、睫毛、爪、皮膚又は唇のようなケラチン物質の外観を向上させる方法が提供される。
【0095】
前の好適な実施態様によれば、本発明の組成物は、ケラチン物質のトリートメント、手入れ及び/又はメークアップするか、又は睫毛の外観を向上させるために十分な量を、ケラチン物質に局所適用される。組成物は、必要に応じて、好ましくは一日に1回又は2回、より好ましくは一日に1回睫毛に適用し、ついで、好ましくは、衣服又は他の物体等と接触する前に乾燥させることができる。
【0096】
本発明はまたここでの記載に係る一又は複数の組成物を含む消費者の使用に適したキット及び/又は包装材料(例えば、(1)マスカラと(2)ベースコート及び/又はトップコートを含むキット)を想定する。本発明の任意の主題のための包装及び塗布装置は、当業者自身の知識に基づき選択及び製造でき、包装される組成物の種類に応じて改良できる。実際、使用される装置の種類は、組成物のコシステンシー、特にその粘度に関連しており;組成物に存在する成分の種類、例えば揮発性化合物の存在に依存し得る。
【0097】
特に示さない限りは、明細書及び特許請求の範囲に使用されている成分量、反応条件、及びその他を表す全ての数値は、何れの場合においても、「約」なる用語により変更されると理解される。従って、反対のことが示されていない場合、以下の明細書及び添付の特許請求の範囲に記載している数的パラメータは、本発明により得ることが求められている所望の特性に応じて変化し得る近似値である。
【0098】
本発明の広い範囲を規定している数的範囲及びパラメータは近似値であるが、特定の実施例に記載されている数値は、可能な限り正確に報告している。しかしながら、任意の数値は、そのそれぞれの測定に見出される標準偏差から必然的に生じる所定の誤差を本来的に含む。以下の実施例は、本発明を例証することを意図しており、結果としてその範囲を限定するものではない。百分率は重量基準で与えられる。
【0099】
実施例1−ミクロスフィア
A.米国特許出願公開第2003/0109630号に従って懸濁フリーラジカル重合によってミクロスフィアを調製するために使用することができる成分
【表3】

B.Multi-Lok38-454Aの処方物
【表4】

実施例2
A.組成物(ムース)の調製
【表5】

*Empicol BSD52はラウレス-8硫酸ナトリウム、ラウレス硫酸ナトリウム、ラウレス-8硫酸マグネシウム、ラウレス硫酸マグネシウム、オレス硫酸ナトリウム、オレス硫酸マグネシウムを含む。
【0100】
水性相は適切な攪拌速度で脱イオン水中に界面活性剤を溶解させることによって調製した。ついで、重合体(任意成分−実施例Aには存在せず)を加えてよく混合した。最後に、連続して攪拌しながらMulti-Lok38-454Aを滴下して加えた。上記の水性相の94部を6部の噴霧剤A-46と混合してエアロゾルボトルに入れた。[缶:Exal PAM2P8460N(50×125);バルブ:YL31974;アクチュエータ:Mars]
B.塗布
2gのムースを湿った頭髪の1/2に塗布した後、ブロー乾燥した。
【0101】
C.評価
組成物は良好な持続性と再成形性をもたらした。
【0102】
実施例3
実施例2に記載した手順に従って次の組成物を調製した。
【表6】





【0103】
これらの組成物を湿った毛髪に塗布した後、ブロー乾燥させた。実施例2の組成物と同様に、これらの組成物は持ちと再成形性をもたらした。また、組成物は毛髪になめらかでべとつかない感触を付与した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化粧品として許容可能な媒体と粘着性ミクロスフィアと皮膜形成成分を含有する組成物。
【請求項2】
皮膜形成成分が少なくとも二種の皮膜形成剤を含む請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
少なくとも二種の皮膜形成剤のTgが少なくとも約20℃の差がある請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
少なくとも二種の皮膜形成剤のTgが少なくとも約60℃の差がある請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
二種の皮膜形成剤の一方のTgが25℃より高く、二種の皮膜形成剤の他方のTgが25℃より低い請求項2に記載の組成物。
【請求項6】
組成物の全重量に対して乾燥重量基準で約0.3%から約50%の皮膜形成成分を含有する請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
組成物の全重量に対して乾燥重量基準で約2%から約30%の皮膜形成成分を含有する請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
第一皮膜形成剤の第二皮膜形成剤に対する比が1:10から20:1である請求項2に記載の組成物。
【請求項9】
粘着性ミクロスフィアが、アクリレート類、メタクリレート類、アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド類、アクリルニトリル類、ピロリドン類、ビニルエステル類、及びそれらの混合物からなる群から選択される単量体の重合によって調製される請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
粘着性ミクロスフィアが、アクリレート類、メタクリレート類、アクリル酸、メタクリル酸、及びそれらの混合物からなる群から選択される単量体の重合によって調製される請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
粘着性ミクロスフィアがアクリル酸エチルヘキシルの重合によって調製される請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
皮膜形成剤の少なくとも一種が、アクリレート類、メタクリレート類、アクリル酸、メタクリル酸、及びそれらの混合物からなる群から選択される単量体の重合によって調製される重合体である請求項2に記載の組成物。
【請求項13】
皮膜形成剤の双方が、アクリレート類、メタクリレート類、アクリル酸、メタクリル酸、及びそれらの混合物からなる群から選択される単量体の重合によって調製される請求項2に記載の組成物。
【請求項14】
少なくとも一種のサンスクリーン剤、少なくとも一種の顔料、又はそれらの混合物を更に含有する請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
非粘着性粒子を本質的に含まない請求項1に記載の組成物。
【請求項16】
粘着性ミクロスフィアが約30から約1000ミクロンの平均長を有する請求項1に記載の組成物。
【請求項17】
粘着性ミクロスフィアが約30から約100ミクロンの平均長を有する請求項1に記載の組成物。
【請求項18】
化粧品として許容可能な媒体と、粘着性ミクロスフィアと、皮膜形成成分を含有する組成物のケラチン物質スタイリング有効量をケラチン物質に適用することを含むケラチン物質のスタイリング方法。
【請求項19】
ケラチン物質が毛髪である請求項18に記載の方法。
【請求項20】
ケラチン物質が睫毛である請求項18に記載の方法。
【請求項21】
化粧品として許容可能な媒体と、粘着性ミクロスフィアと、皮膜形成成分を含有する組成物の形又はカール保持有効量をケラチン物質に適用することを含むケラチン物質の形又はカール保持方法。
【請求項22】
ケラチン物質が毛髪である請求項21に記載の方法。
【請求項23】
ケラチン物質が睫毛である請求項21に記載の方法。

【公開番号】特開2007−254469(P2007−254469A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−74550(P2007−74550)
【出願日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【出願人】(391023932)ロレアル (950)
【Fターム(参考)】