説明

ミクロトーム及びそのレバー装置

【課題】レバー装置の操作の際に、実質的に反対の2つの方向で送りが可能であるように構成する。
【解決手段】レバー装置(10)は第1のレバー(11)と第2のレバー(12)を有する。第1のレバー(11)は第1の軸(13)に回転可能に支承され、操作可能である。第2のレバー(12)は、第2の軸(14)に回転可能に支承されている。第1の軸(13)は第2の軸(14)に対して実質的に平行に配置されている。第1のレバー(11)は、2つの案内面(17,18)を有する。第2のレバー(12)は案内区間(20)を有し、案内区間(20)は2つの案内面(17,18)と共働し、第1の方向(23)での前記第1のレバー(11)の旋回が前記第2のレバー(12)を目標方向(25)に旋回させ、前記第1の方向(23)とは反対の方向(24)での前記第1のレバー(11)の旋回は前記第2のレバー(12)を同様に目標方向(25)に旋回させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レバー装置を備えたミクロトーム及び、レバー装置に関し、特に第1のレバーと第2のレバーを備える、ミクロトーム用のレバー装置に関する。前記第1のレバーは第1の軸を中心に回転可能に支承されており、操作によって旋回可能である。前記第2のレバーは第2の軸を中心に回転可能に支承されており、例えばミクロトームの送り機構を作動する。
【背景技術】
【0002】
冒頭に述べたミクロトーム用のレバー装置は、とりわけ本出願人の滑走式(スライダ式)ミクロトームで使用される。すなわちモデル名「Leica SM2000R」で使用される。図1も参照されたい。この滑走式ミクロトームは、2003年3月の広報用パンフレットに刊行物として記載されている。滑走式ミクロトームでは、試料を切断するナイフが、可動に配置されたスライドキャリッジ上で往復運動し、これにより試料ホルダに配置された試料を切断する。試料ホルダは相応の機構を介して、すなわちマイクロメータ機構を介してナイフに対して直角に運動する。このことは「送り」(Zustellung, advance)とも称される。試料がナイフの方向に送られる増分は、目盛りの設けられた回転ノブを介して0.5μmまでの精度で調整される。別の操作エレメントとしてハンドルが上記の滑走式ミクロトームに設けられている。このハンドルによって、ナイフに対して試料が接近または離脱する運動のための粗駆動部、すなわち実質的に垂直方向の運動に対する粗駆動部が実現可能である。このことによりプレパラートの交換後に、試料ホルダを試料と共にナイフに対して迅速に送ることが可能であり、これにより設定可能な所望の切断厚さによる切断過程を直接連続させることができる。別の操作エレメントとして、長穴内を案内されるノブ付きレバー(操作レバー)が設けられており、このレバーにより試料ホルダのナイフに対する手動での送り運動を作動(操作)することができる。このノブないしはレバーは通常は切断モード(Schnittbetrieb, sectioning mode)での送りにだけ使用される。このとき送りは、目盛りの設けられた回転ノブにより実際に調整された増分だけ行われる。この滑走式ミクロトームのレバ―は一方向にだけ可動であり、具体的には滑走式ミクロトームの前方に存在する操作者に対して右へ可動である。この滑走式ミクロトームはまた自動送りによる動作モードを有している。この場合、これに関連する操作エレメントがミクロトームキャリッジに配置されている。この自動送りは通常、試料(プレパラート)の初期切断時に使用され、操作レバーの操作に代って行われる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
操作レバーないしは手動送りのためのレバー、並びにこれと結合した送り機構は一方向でだけ旋回可能である。しかし試料の送りをレバーの旋回により反対方向でも可能にすることが所望される。例えば複数の操作者が1つの同じ滑走式ミクロトームを操作するときに、一人の操作者が左利きであり、別の操作者が右利きである場合があるからである。このような要求はこれまで次のことによってしか満たされていなかった。すなわち2つの異なる滑走式ミクロトームが準備され、一方の滑走式ミクロトームではレバーの旋回が右への送りに作用し、他方の滑走式ミクロトームではレバーの旋回が左への同様の送りに作用し、レバーの旋回方向は構造的観点で固定的に設定されることによってしか満たされていなかった。
【0004】
したがって本発明の基礎とする課題は、冒頭に述べた形式のミクロトーム用のレバー装置の上記欠点を克服すること、即ち、レバー装置の操作の際に、実質的に反対の2つの操作方向への操作により送りが可能であるように構成することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
冒頭に述べた形式の本発明のレバー装置はこの課題を請求項1に記載の構成(基本構成)によって解決する。これによればレバー装置は第1のレバーと第2のレバーを有する。前記第1のレバーは第1の軸を中心に回転可能に支承されており、操作(者)によって旋回可能である。前記第2のレバーは第2の軸を中心に回転可能に支承されており、(例えば)ミクロトームの送り機構を作動(ないし駆動)する。前記第1のレバーおよび/または第2のレバーはそれぞれ軸を中心に旋回可能に支承することもできる。前記第1の軸は第2の軸に対して実質的に平行に配置されている。2つのレバーの一方は2つの案内面(カム面)を有し、これら2つの案内面は相互に隣接して配置することができる。2つのレバーの他方は1つの案内区間を有する。この案内区間は前記2つの案内面と共働し、これにより、第1の方向での第1のレバーの旋回が第2のレバーを目標方向に旋回させ、また、第1の方向とは反対の方向での第1のレバーの旋回が第2のレバーを同様に前記目標方向に旋回させる。さらに本発明は、上記レバー装置を備えたミクロトームを提供する。
【発明の効果】
【0006】
本発明の基本構成に基づき、上記課題が達成される。即ち、レバー操作の際、反対の2つの操作方向への操作により、一方向への送りが可能である。これにより、ミクロトーム装置の操作性が大幅に改善される。さらに従属請求項の構成により、各形態毎に特有の効果が付加される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明によれば、構造的に異なる構成の2つのミクロトームを、例えば左利きの人が最適に操作可能なミクロトームを提供するために準備する必要のないことがまず認識される。むしろこれまで存在するレバー装置に対して、請求項1の特徴部分によるレバー装置を使用する。したがって従来技術から公知のミクロトームの操作レバーを第1と第2のレバーにより置換することができ、ここで2つのレバーは相対的に相互に回転可能または旋回可能に配置される。第1のレバーは第1の方向または第1の方向とは反対の方向に旋回可能であるが、その際第2のレバーは第1のレバーの旋回方向には依存せずに常に1つの同じ目標方向に旋回される。したがって第2のレバーが共働することのできるミクロトームの送り機構は常に同じように操作され、最終的に試料の送りが行われる。
【0008】
有利な実施形態では第1および/または第2のレバーが夫々ワンピース(一体)に構成されている。相応にして第1および/または第2のレバーは切欠部(ないし孔)またはピン(軸)を有することができ、切欠部(ないし孔)またはピン(軸)はそれぞれのレバーの回転軸を規定し、この切欠部(ないし孔)またはピンによりそれぞれのレバーはミクロトームのケーシング部分に取付けられる。第1のレバーは、このレバーと一体的に構成された操作エレメントを有することもでき、この操作エレメントで操作者がレバーを旋回する。第1のレバーには操作ノブを取付けることもできる。この操作ノブは別の材料から形成されており、場合により耐久性のある被覆部(操作者の手が接触するため)が設けられている。この場合、第1のレバーはその機能に関しては一体的に構成されているが、付加的に操作ノブを有する。
【0009】
2つのレバーの一方は切り欠きまたは凹部を有することができ、この切り欠きまたは凹部に案内面(カム面、複数)が設けられている。切り欠きまたは凹部は実質的にV字形またはC字形に構成することができる。案内面は、切欠部または凹部の内側に設けることができる。
【0010】
少なくとも1つの案内面は少なくとも部分領域にわたって、有利には全領域にわたって実質的に平坦(plan)に構成されている。この場合、とりわけ第1のレバーを機械加工する場合には第1のレバーを簡単かつ精確に作製することができる。これにより達成可能な操作特性ないしは伝達特性もミクロトームでの使用時に有利である。
【0011】
特に有利な実施形態では、2つのレバー、2つの軸、案内面および案内区間が次のように構成されかつ相互に(連携して)配置される。すなわち案内区間の一部が少なくとも1つの案内面に常に当接するように構成され、相互に(連携して)配置される。これにより2つのレバーの共働作用がほとんど遊びなしで達成される。さらに第1のレバーの旋回運動の際には第2のレバーが常に案内される。なぜなら案内区間の一部は常に少なくとも1つの案内面に当接しているからである。これにより第2のレバーは同形(同様)に、かつスムーズに旋回運動を実行する。このことはミクロトームのマイクロメータ機構の操作の際に有利である。
【0012】
2つのレバーの一方は実質的にステップ状にまたは階段状に構成することができ、他方のレバーに向いた側の領域を他方のレバーの上方または下方に配置することができる。このことはとりわけ、ミクロトームに2つのレバーが取付けられた状態に対して当てはまる。他方のレバーの、一方のレバーに向いた側の領域を他方のレバーの上方または可能に配置することは、レバーが回転することのできる軸の方向にとりわけ関連する。したがって一方のレバーの一部は他方のレバーの一部に係合する。すなわち2つのレバーの相互に向き合う領域で係合する。
【0013】
他方のレバーの、一方のレバーに向いた側の領域には少なくとも1つの軸を設けることができ、この軸にはキャスタ(ローラ)が回転可能に配置される。キャスタは案内面の1つと当接することができる。キャスタは案内区間の一部を形成する。有利には案内区間は2つのキャスタを有し、1つのキャスタは案内面と係合することができる。とりわけ第1のキャスタは第1の案内面(カム面)と、第2のキャスタは第2の案内面(カム面)と係合することができる。
【0014】
代替的にまたは付加的に案内区間は少なくとも1つのスライド手段または少なくとも1つのボールを有することができ、このスライド手段またはボールは少なくとも1つの案内面に係合することができる。このことにより第2のレバーの旋回ないしは操作を、第1のレバーの旋回によって小さな摩擦で実行することができる。
【0015】
本発明によれば2つのレバーを有するレバー装置が、従来技術から公知のミクロトームの上記操作レバーを置換することができるから、第2のレバーの、第1のレバーとは反対側の領域と、第1のレバーとが実質的に同じ高さに配置されていると有利である。「同じ高さ」とはこの関連で、レバーがそれぞれ回転可能に支承されている軸の方向に関係する。相応にして、ミクロトームの他の送り機構はほぼ(殆んど)変更なしで使用することができる。したがって有利には従来技術から公知のミクロトームの操作レバーの個所にだけ構造的変更が加えられる。言い替えると、2つのレバーはそれぞれ上方、下方、および/または側方の面を1つ有し、この面が実質的に1つの平面にまたは1つの平面の近傍に配置されている。
【0016】
有利な実施形態では、2つの反対の方向に関して(を基準にして)第1のレバーの中央位置に相当する位置に2つのレバーを付勢する(押圧する)ことのできる(付勢)手段が設けられており、この中央位置を中心(初期位置)にして第1のレバーは旋回可能である。したがって第1のレバーはその中央位置(試料の送りが行われない位置)に位置決めされる。第1のレバーが旋回され、これにより第2のレバーも旋回される場合、このことは前記手段によって2つのレバーに及ぼされる力に抗して行われる。
【0017】
コスト的に有利な実施形態では、前記付勢手段がばねを有し、このばねはその一方の端部を第1のレバーに、その他方の端部を第2のレバーに係止される。ここでばねの両端部は適切な個所で2つのレバーに係止される。これにより第1のレバーはその中央位置へ付勢(押し付け)されるか、ないしはその中央位置で予付勢(プレバイアス)されて保持される。
【0018】
或いはこれに代り、前記付勢手段はばねを有し、このばねがその一方の端部をケーシング部分に、その他方の端部を2つのレバーの一方に係止されることもできる。このばねがその一方の端部を以てケーシング部分に、その他方の端部を以て、第2のレバーと結合されている別の構成部材に係止されることも考えられる。このような構成部材は例えばマイクロメータ機構の送り機構の支柱とすることができる。この場合ばねの係止点は、これによって第1のレバーがその中央位置に付勢されるように選択できる。
【0019】
特に有利な実施形態では、2つのレバーが取付けられた状態でレバーの軸、案内面(カム面)および案内区間(カムガイド区間)は、第1のレバーが第1の方向に所定の大きさないしは角度だけ旋回すると、第2のレバーが目標方向に所定の大きさないしは角度だけ旋回するように構成されかつ相互に連携して配置されている。第1のレバーが第1の方向とは反対の方向に同じ大きさないしは角度だけ旋回すると、第2のレバーは目標方向に同じ大きさないしは角度だけ旋回する。ここに述べた要素をこのように配置構成することによって、第2のレバーが目標方向へそれぞれ同じ大きさないしは角度だけ、第1のレバーが所定の大きさ/角度だけ、第1の方向に旋回されたか、または第2の方向に旋回されたかに関係なく旋回することが達成される。相応にしてレバー装置は、ミクロトームのマイクロメータ機構の送り機構をそれぞれ同じように駆動する。すなわち第1のレバーの旋回方向には関係なく同じように駆動(作動)する。
【0020】
同様に特に有利な実施形態では、2つのレバーが取付けられた状態でレバーの軸、案内面および案内区間は、第1のレバーが所定の大きさだけ旋回すると、第2のレバーがこれに依存する大きさだけ旋回するように構成されかつ相互に連携して配置されており、これにより第1のレバーの旋回の減速または増速を(予)設定することができる。言い替えると、第1のレバーが例えば10cmだけ旋回するとき、第2のレバーはミクロトームの送り機構に向いた側のその端部を以て5cmだけ旋回することができ、これによりレバー運動は減速される。同様にして、レバー運動の増速も達成することができる。例えば第1のレバーが5cm旋回すると第2のレバーは10cm旋回する。結局、変速比の選択は、ミクロトームの送り機構の全体構成と、ミクロトームを人間工学的に操作することのできる所望の操作特性に依存する。
【0021】
本発明の技術思想を有利に構成し、展開するには種々の手段が存在する。これについては一方では請求項1の従属請求項を、他方では図面に基づく本発明の有利な実施例の以下の説明を参照されたい。図面に基づく本発明の有利な実施例の説明と関連して、一般的に有利な構成および展開形態も説明する。
【実施例】
【0022】
図面中、同じまたは類似の構成部材ないし構成群は同じ参照符号により示されている。
【0023】
図1は、本出願人の滑走(スライダ)式ミクロトーム1、すなわちモデル「Leica SM2000R」を示す。この滑走式ミクロトームは従来技術からすでに公知であり、本発明のレバー装置を有していない。滑走式ミクロトーム1では、試料2を切断するナイフ3が、可動に配置されたキャリッジ(スライダ)4上で往復運動し、これにより試料ホルダ5に配置された試料2を切断する。試料2は通常の組織学的プレパラートであり、このプレパラートはパラフィンブロックに埋設され、試料ホルダ5に張架される。試料ホルダ5は相応の機構を介して、すなわち滑走式ミクロトーム1のケーシング内に設けられており、図1には示されていないマイクロメータ機構を介してナイフ3に対し垂直に往復運動される。試料2がナイフ3の方向で上方に送られる増分は、目盛りの設けられた回転ノブ6を介して0.5μmまでの精度で調整される。別の操作エレメントとしてハンドル(クランク)7が図1に示された滑走式ミクロトーム1に設けられている。このハンドルによって、ナイフ3に対して試料が接近または離脱する運動ための粗運動部、すなわち実質的に垂直方向の運動に対する粗駆動部が実現可能である。このことによりプレパラートの交換後に、試料ホルダ5を試料2と共にナイフ3に対して迅速に送ることが可能であり、これにより(予)設定可能な所望の切断厚による切断過程を直接継続することができる。別の操作エレメントとして、長穴8内を案内される操作レバー9が設けられており、この操作レバーにより試料ホルダ5のナイフ3に対する手動での送り運動を作動(操作)することができる。この操作レバー9は通常は(薄片)切断モード(Schnittbetrieb, sectioning operation)での送りにだけ使用される。このとき送りは、目盛りの設けられた回転ノブ6により実際に調整された増分だけ行われる。この滑走式ミクロトーム1はまた自動送りによる動作モードも有している。この場合、これに関連する操作エレメントがミクロトームキャリッジ4に配置されている。すなわち図1では見ることのできない、キャリッジ4の裏側に配置されている。この自動送りは通常、試料(プレパラート)の初期切断時(Anschneiden, initial cutting)に使用され、操作レバー9の操作に代って行われる。
【0024】
図2と3は、本発明のレバー装置10の実施例を示す。このレバー装置は図1の滑走式ミクロトーム1の操作レバー9の代わりに使用することができる。図2と3のレバー装置10はその中央位置ないしはセンタリング位置(初期位置)で示されている。レバー装置10は第1のレバー11と第2のレバー12を有する。第1のレバー11は一体的に構成されており、第1の軸13を中心に回転可能に支承されている。第2のレバー12も同様に一体的に構成されており、第2の軸14を中心に回転可能に支承されている。第1の軸13と第2の軸14は相互に平行に配向されており、2つのレバー11,12の旋回運動は、2つの軸13,14に対して垂直の方向(面内)で行われる。第1の軸13も第2の軸14もそれぞれねじによって規定されており、ねじはケーシング15にネジ留めされる。第2のレバー12は、第1のレバー11とは反対側の端部16(そこには孔部が設けられている)を以て、ミクロトームの送り機構の図示しない支柱と回転可能/旋回可能に接続されている。
【0025】
第1のレバー11は2つの案内面(カム面)17,18を有する。これらの案内面は第1のレバー11の実質的にV字形ないしはC字形の切欠部19に形成されている。2つの案内面17、18はそれぞれ大きな部分領域を介して平坦に構成されており、約75゜の角度を包囲している。第2のレバー12は案内区間(カムのガイド区間)20を有し、この案内区間は2つのキャスタ(ローラ)21,22を介して形成されている。第1のレバー11は第1の方向23に旋回可能である。すなわち図2では右へ、図3では下方へ旋回することができる。この旋回方向は、図1の操作レバー9のただ1つの可能な旋回方向に相当する。第1のレバー11はまた第2の方向24に旋回可能である。ここで第2の方向24は第1の方向23とは反対に配向されている。したがって図2の例では第1のレバー11は左へ、図3では上方へ旋回することができる。
【0026】
案内区間20および第2のレバー12の2つのキャスタ21,22は、第1のレバー11の2つの案内面17,18と共に、第1のレバー11の第1の方向23での旋回が第2のレバー12を目標方向に旋回させるように共働する。第1のレバー11の、第1の方向23と反対の方向24での旋回も、同様に第2のレバー12を目標方向25に旋回させる。
【0027】
2つのレバー11,12、2つの軸13,14の配置構成、2つの、第2、第1案内面17,18および案内区間20(すなわち2つのキャスタ21,22)は次のように構成され、かつ相互に連携して配置される。すなわち案内区間20の一部(21,22)が少なくとも1つの案内面(17,18)に常に当接するように構成され、かつ相互に連携した関係に配置される。図2および3に示されたレバー位置では、キャスタ21が(第1)案内面18と、キャスタ22が(第2)案内面17と当接する。
【0028】
図4と5には、本発明のレバー装置10の図2と3による実施例が、第1のレバー11が第1の方向23に旋回されている動作状態で示されている。図4と5の図示から、(第1)キャスタ21が(第1)案内面18と当接することが分る。図6と7には、本発明のレバー装置10の図2と3による実施例が、第1のレバー11が第2の方向24に旋回されている動作状態で示されている。図6と7の図示から、(第2)キャスタ22が(第2)案内面17と当接することが分る。第1キャスタ21は、第1のレバー11が第1の方向23に旋回運動するときに第1案内面18で転動し、この転がり運動の間は第1案内面18と常に接触している。第2キャスタ22は、第1のレバー11が第2の方向24に旋回運動するときに第2案内面17で転動し、この転がり運動の間は第2案内面17と常に接触している。
【0029】
第2のレバー12はステップ形状に構成されている。第2のレバー12は第1の端部26と第2の端部27を有する。第2のレバー12の第1の端部26は、第1のレバー11に向いた側に配置されている。第2のレバー12の第2の端部27は、第1のレバー11とは反対の側に配置されている。第1の端部26は図2の図示では、第2のレバー12の第2の端部27の上方に形成されている。第1のレバー11とは反対側の領域を以て、すなわち第2のレバー12の第1の端部26は第1のレバー11の上方に配置されている。
【0030】
第2のレバー12の第1の端部26には2つのピン軸28,29が設けられている。第1ピン軸28を中心に第1キャスタ21は回転可能に支承されている。第2ピン軸29を中心に第2キャスタ22は回転可能に支承されている。
【0031】
図2で第1のレバー11の下方領域と第2のレバー12の第2の端部27の下方領域は、ケーシング15に取付けられた状態で実質的に同じ高さに(同じ高さの平面に)配置されている。
【0032】
図2から7の実施例では、ばね(コイルスプリング)30が設けられている。このばねは、その一方の端部がピン31に、他方の端部がピン32に固定されているか、または係合している。ピン31は第1のレバー11に、ピン32は第2のレバー12の第1の端部領域26に配置されている。したがってばね30は、第1のレバー11が中央位置へ付勢(押圧)されるように配置および構成されている。このことは図2と3に示されている。この中央位置で2つのキャスタ21,22は切欠部19内で、第1キャスタ21が第1案内面18と接続面33(例えば図6参照)との接続領域に配置されるように当接する。接続面33は、2つの案内面17,18の間に延在している。第2キャスタ22は、第2案内面17と接続面33との接続領域に配置されている。第1のレバー11が第1の方向23または第2の方向24に旋回されると、このことはばね30のバネ力に抗して行われる。このことは図4から7に示されている。これらの図では、ばね30がそれぞれ図2および3と比較して引き伸ばされた状態で示されている。図2から7に示されたばね30は2つのレバー11,12にまたがって(即ち、機能的に見て2つのレバー11、12の間に)配置されており、したがって2つのレバー11,12に係合しているが、ばねが例えば第2のレバー12の第1の端部26にその一方の端部を以て係合し、ケーシング15の領域34にその他方の端部を以て係合ないしは固定されていても良い。ただしこのことは図示されていない。これによっても第2のレバー12、およびひいては第1のレバー11もそれぞれ旋回しない位置(初期位置)に付勢される。
【0033】
2つのレバー11,12が取付けられた状態で、2つのレバー11,12の各軸13,14、両案内面17,18および案内区間20(ないしは両キャスタ21,22)は、第1のレバー11が第1の方向23に所定の大きさだけ旋回すると、第2のレバー12が目標方向25に所定の大きさだけ旋回されるように構成され、相互に連携して配置されている(即ち、所定の力伝達比ないしレバー比をもって互いに配置されている。)。図示の例では、第1のレバー11が第1の方向23とは反対の方向24に同じ大きさだけ旋回すると、第2のレバー12は目標方向25に同じ大きさだけ旋回する。
【0034】
第1のレバー11が第1の方向23に所定の大きさだけ旋回することは図4と5に示されており、図5では二重矢印35により示されている。この旋回は、第1の軸13を中心にした旋回方向23での第1のレバー11の最大旋回可能角度35に相当する。第1のレバー11の最大旋回可能角度35でのこの旋回は、第2のレバー12を目標方向25に所定の大きさだけ旋回させることになる。この目標方向25は図5に二重矢印36により示されている。第2のレバー12の旋回状態は、第2のレバー12の最大旋回領域(角度範囲)に相当する。
【0035】
第1のレバー11が第2の方向24に所定の大きさだけ旋回することは図6と7に示されており、図7では二重矢印37により示されている。この旋回状態は、第1の軸13を中心にした旋回方向24での第1のレバー11の最大旋回可能角度37に相当する。第1のレバー11の最大旋回可能角度37でのこの旋回は、第2のレバー12を目標方向25に所定の大きさだけ旋回させることになる。この目標方向25は図7に二重矢印36により示されている。図7に示した第2のレバー12の旋回も、図5に示した第2のレバー12の最大旋回領域に同様に相当する。
【0036】
したがって第2のレバー12は、第1のレバー11が第1の角度35だけ第1の方向23へ旋回しても、第2の角度37だけ第2の方向24へ旋回しても、それぞれ同じ角度36だけ同じ方向へ旋回される。第1のレバー11の角度35と角度37の大きさは同じである。
【0037】
2つのレバー11,12が取付けられた状態で、両レバー11,12の各軸13,14、両案内面17,18および案内区間20は、第1のレバー11が所定の大きさないし角度35,37だけ旋回すると、第2のレバー12がこれに依存する大きさないしは角度36だけ旋回されるように構成され、かつ相互に連携して配置されるよう構成することもできる(但し、図示せず)。これにより所定の減速または増速が可能である。図2から7の実施例で、設定可能な増速比は近似的に値1としてある。すなわち第1のレバー11の所定の大きさないし角度35,37だけの旋回は、第2のレバー12の同じ大きさないし角度36だけの旋回に実質的に相当する。
【0038】
第1のレバー11には操作ノブ38が取付けられている。
【0039】
本発明によれば、上述のレバー装置を従来のミクロトームのレバー装置に置換することにより、レバー操作性の高いミクロトームが実現される。
【0040】
最後に、前記の実施例の説明は請求される本発明の理解のためにだけ用いるものであり、本発明はこの実施例に制限されるものではないことを述べておく。また、特許請求の範囲に付記した図面参照符号は、専ら本発明の理解を助けるためのものであり、図示の態様に本発明を限定することを意図するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】従来技術から公知の滑走式ミクロトームの斜視図である。
【図2】本発明のレバー装置の実施例を、それぞれ異なるレバー位置で概略的に示す斜視図である。
【図3】本発明のレバー装置の図2,4および6に示されたそれぞれの実施例を、異なるレバー位置で概略的に示す平面図である。
【図4】本発明のレバー装置の実施例を、それぞれ異なるレバー位置で概略的に示す斜視図である。
【図5】本発明のレバー装置の図2,4および6に示されたそれぞれの実施例を、異なるレバー位置で概略的に示す平面図である。
【図6】本発明のレバー装置の実施例を、それぞれ異なるレバー位置で概略的に示す斜視図である。
【図7】本発明のレバー装置の図2,4および6に示されたそれぞれの実施例を、異なるレバー位置で概略的に示す平面図である。
【符号の説明】
【0042】
1 滑走式ミクロトームまたはミクロトーム
2 試料
3 ナイフ
4 キャリッジ(スライダ)
5 試料ホルダ
6 回転ノブ
7 ハンドル(クランク)
8 長穴
9 手動送りの操作レバー
10 レバー装置
11 第1のレバー
12 第2のレバー
13 (11)の第1の軸
14 (12)の第2の軸
15 ケーシング
16 第1のレバー(11)とは反対側の(12)の端部
17、18 (11)の案内面ないしカム面(第2、第1)
19 (11)のV字形切欠部
20 (12)の案内区間
21,22 キャスタないしローラ(第1、第2)
23 第1の方向
24 第1の方向とは反対の第2の方向
25 (12)の目標方向
26 (12)の第1の端部
27 (12)の第2の端部
28 (12)にある(21)に対するピン軸(第1)
29 (12)にある(22)に対するピン軸(第2)
30 (11)と(12)の間のばね
31 (11)にあるピン
32 (26、12)にあるピン
33 (17)と(18)の間の接続面
34 ばねを取付けることのできる(15)にある領域
35 (11)が第1の方向(23)に旋回する際の角度
36 (12)が目標方向(25)に旋回する角度
37 (11)が第2の方向(24)に旋回する際の角度
38 (11)の操作ノブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のレバーと第2のレバーを備える、ミクロトーム用のレバー装置であって、
前記第1のレバー(11)は第1の軸(13)を中心に回転可能に支承されており、操作によって旋回可能であり、
前記第2のレバー(12)は第2の軸(14)を中心に回転可能に支承されており、かつミクロトームの送り機構を作動し、
前記第1の軸(13)は前記第2の軸(14)に対して実質的に平行に配置されており、
前記2つのレバーの一方(11)は、2つの案内面(17,18)を有し、
前記2つのレバーの他方(12)は、1つの案内区間(20)を有し、
前記案内区間(20)は前記2つの案内面(17,18)と次のように共働する、すなわち第1の方向(23)での前記第1のレバー(11)の旋回が前記第2のレバー(12)を目標方向(25)に旋回させ、前記第1の方向(23)とは反対の方向(24)での前記第1のレバー(11)の旋回は前記第2のレバー(12)を同様に前記目標方向(25)に旋回させるように共働するよう構成されることを特徴とするレバー装置。
【請求項2】
請求項1記載のレバー装置であって、
前記2つのレバーの一方(11)は切欠部(19)を有し、該切欠部には前記案内面(17,18)が設けられており、
前記切欠部(19)は実質的にV字形またはC字形に構成されている、レバー装置。
【請求項3】
請求項1または2記載のレバー装置であって、
前記2つのレバー(11,12)、前記2つの軸(13,14)の配置構成、前記2つの案内面(17,18)および前記案内区間(20)は、前記案内区間(20)の一部が少なくとも1つの案内面(17,18)に常に当接するように構成されかつ相互連携して配置されている、レバー装置。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか一項記載のレバー装置であって、
前記2つのレバーの一方(12)は実質的にステップ状に構成されており、他方のレバー(11)に向いた側の領域(26)が他方のレバー(11)の上方または下方に配置されている、レバー装置。
【請求項5】
請求項4記載のレバー装置であって、
前記他方のレバー(12)の、前記一方のレバー(11)に向いた側の前記領域(26)には少なくとも1つのピン軸(28,29)が設けられており、該ピン軸にはキャスタ(21,22)が回転可能に配置されており、
前記キャスタ(21,22)は前記案内面(18,17)の1つと当接可能に配されている、レバー装置。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれか一項記載のレバー装置であって、
前記案内区間(20)は2つのキャスタ(21,22)を有し、
一方のキャスタ(21,22)は前記案内面(18,17)の1つと係合可能に配されているか、
または前記案内区間(20)は少なくとも1つのスライド手段または少なくとも1つのボールを有し、該スライド手段またはボールは少なくとも1つの案内面に係合可能に配されている、レバー装置。
【請求項7】
請求項1から6までのいずれか一項記載のレバー装置であって、
2つの反対の方向(23,24)に関して中央位置に相当する位置に前記2つのレバー(11,12)を付勢することのできる手段(30)が設けられており、前記中央位置を中心に前記第1のレバー(11)は旋回可能である、レバー装置。
【請求項8】
請求項7記載のレバー装置であって、
前記手段(30)はばねを有し、該ばねはその一方の端部が前記第1のレバー(11)に、その他方の端部が第2のレバー(12)に係合するか、
または前記手段(30)はばねを有し、該ばねはその一方の端部がケーシング部分(34)に、その他方の端部が前記2つのレバーの一方(12)に係合するか、もしくは前記第2のレバー(12)と結合した別の構成部材に係合するか、する、レバー装置。
【請求項9】
請求項1から8までのいずれか一項記載のレバー装置であって、
前記2つのレバー(11,12)が取付けられた状態で、前記レバー(11,12)の軸(13,14)、前記案内面(17,18)および前記案内区間(20)は、
前記第1のレバー(11)が第1の方向(23)に所定の大きさだけ旋回すると、前記第2のレバー(12)が目標方向(25)に所定の大きさだけ旋回されるように構成されかつ相互連携して配置されており、かつ
前記第1のレバー(11)が第1の方向(23)とは反対の方向(24)に同じ大きさだけ旋回すると、前記第2のレバー(12)は目標方向(25)に同じ大きさだけ旋回されるように構成されかつ相互連携して配置されている、レバー装置。
【請求項10】
請求項1から9までのいずれか一項記載のレバー装置であって、
前記2つのレバー(11,12)が取付けられた状態で、前記レバー(11,12)の軸(13,14)、前記案内面(17,18)および前記案内区間(20)は、前記第1のレバー(11)が所定の大きさだけ旋回すると、前記第2のレバー(12)が前記所定の大きさに依存する大きさだけ旋回されるように構成されかつ相互連携して配置されており、これにより所定の減速または増速が可能である、レバー装置。
【請求項11】
請求項1から10までのいずれか一項記載のレバー装置を備えたミクロトーム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−32714(P2008−32714A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−193037(P2007−193037)
【出願日】平成19年7月25日(2007.7.25)
【出願人】(500113648)ライカ ビオズュステムス ヌスロッホ ゲーエムベーハー (45)
【Fターム(参考)】