説明

ミトコンドリア代謝を修飾するための形質導入可能なポリペプチド

対象の代謝を改変するための方法、及び組成物が提供される。一つの実施態様は、ポリヌクレオチド結合ドメイン、タンパク質形質導入ドメイン、及びターゲティングドメインを有する組換えポリペプチドを提供する。好ましい実施態様において、ポリヌクレオチド結合ドメインは、1つ以上のHMGボックスドメインを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(連邦によって後援された研究、又は開発に関する記載)
以下の開示の態様は、国立衛生研究所によって授与された助成金番号AG023443-02によって、部分的に支援された。従って、米国は、本開示における特定の権利を有する。
【0002】
(本発明の分野)
本開示は、一般に、形質導入可能なDNA結合タンパク質の細胞小器官への送達のための組成物、及び方法に、より詳細にはミトコンドリアを修飾する、例えばミトコンドリア生物発生、及び酸化的代謝を誘導するための組成物、及び方法に向けられる。
【背景技術】
【0003】
(背景)
進化の間において、多くの微生物は、巨大分子を生細胞に導入するという課題に取り組んだ。細胞特異的な、通常受容体を媒介するか、又は能動的取り込みメカニズムを除いて、多くの系統において独立して出現した一般的な解法は、脂質二重層膜と相互作用し、かつ脂質二重層内に挿入するように特異的に進化されたペプチドに依存する。従って、細菌コリシン、ヒトポーリン、及び多様な種からのタンパク質形質導入ドメイン(PTD)は、正に荷電したαヘリックスのモチーフを有し、両親媒性構造を持つことが多く、かつこれは、脂質膜内に挿入すること、及び細胞内により大きな積荷を送達することができる。最近の研究報告では、血液脳関門、及び胎盤を含む生物学的境界を超えるタンパク質の送達のためにこれらに融合されたPTDの良好な使用を確認している。
【0004】
ミトコンドリアは、全ての真核細胞におけるα-プロテオ細菌の、エネルギーを産生し、かつ細胞死を制御する内部共生体である(Fitzpatrickらの文献、Mol Biol Evol., 23(1):74-85(2006))。ミトコンドリア外膜は、真核生物血漿膜のものと同様の脂質組成を有するが、ミトコンドリア内膜は、独特の脂質、カルジオリピンを含み、細菌膜により近く似ている。ミトコンドリアは、酸化的リン酸化を行うために必要なタンパク質を産生することに関与する、これら自体のDNA、転写、及び翻訳機構を含む。多くの疾患は、ミトコンドリア数、ミトコンドリア機能、又はより具体的には、酸化的リン酸化の減退と関連している。更にまた、基底状態、若しくは健康な状態におけるミトコンドリアの機能、数、又は酸化的リン酸化を増加させると、脳、及び筋肉などのミトコンドリア代謝に非常に依存する細胞、及び組織の能力を増加させ得る。
従って、対象におけるミトコンドリア数、ミトコンドリア機能、及び/又は酸化的リン酸化を増加させるための組成物、及び方法を提供することが、本発明の目的である。
【発明の概要】
【0005】
(要旨)
ミトコンドリア生物学的活性、並びにミトコンドリアの数を増加させるための組成物、及び方法が提供される。一つの実施態様は、ポリヌクレオチド結合ドメイン、ターゲティングドメイン、例えば細胞小器官特異的なターゲティングシグナル、及びタンパク質形質導入ドメインを有する修飾ポリペプチドを提供する。特定の実施態様において、修飾ポリペプチドは、少なくとも1つのHMGボックスドメイン、より典型的には少なくとも2つのHMGボックスドメインを有する。ポリペプチドは、ミトコンドリアなどの細胞、及び標的特異的な細胞小器官に入るようにデザインされている。ターゲティングシグナルは、関心対象の部位、例えば細胞小器官にポリペプチドを向けるのを補助し、これにより細胞の細胞小器官の機能を改変する。
【0006】
好ましい実施態様において、組換えポリペプチドは、
【化1】

に対して少なくとも80、85、90、95、97、99、又は100%の配列同一性を有する。
【0007】
別の実施態様において、組換えポリペプチドは、
【化2】

に対して少なくとも80、85、90、95、97、99、又は100%の配列同一性を有する核酸によってコードされる。
【0008】
別の実施態様は、対照と比較してミトコンドリア生物発生を増大するために、細胞に対してポリヌクレオチド結合ドメイン、ターゲティングドメイン、及びタンパク質形質導入ドメインを有する組換えポリペプチドの有効な量を投与することにより、ミトコンドリア生物発生を誘導する、及びミトコンドリア酸化的代謝を増加させる組成物、並びに方法を提供する。一つの実施態様は、ポリヌクレオチド結合ドメイン、ターゲティングドメイン、及びタンパク質形質導入ドメインを有する組換えポリペプチド、並びに医薬として許容し得る担体、又は賦形剤から本質的になる医薬組成物を提供する。好ましくは、ポリヌクレオチド結合ドメインは、ポリヌクレオチドを結合することができるTFAM、又はその断片を含む。別の実施態様は、対象におけるミトコンドリア酸化的代謝を増大させるために、対象に対して開示されたポリペプチドの有効な量を投与することによって体重を減少させるための方法を提供する。
【0009】
好ましい実施態様は、3つのポリペプチド領域、又はドメインを有する融合タンパク質を提供する。第1の領域は、N末端基領域であり、PTDを含む。PTDは、ターゲティングシグナル、又はドメインを含む第2の領域に作動可能に連結される。第2の領域は、ミトコンドリアDNAに結合するか、又は凝縮するポリペプチドを含む第三部位に作動可能に連結される。好ましくは、ポリヌクレオチド結合ポリペプチドは、ミトコンドリア転写因子である。ミトコンドリアDNAを結合するか、又は凝縮する好ましいポリペプチドは、ミトコンドリアDNAを結合するか、若しくは凝縮すること、又はミトコンドリアDNAの転写を促進するか、若しくは誘導することかできるTFAM、又はその断片を含むが、限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1A-Cは、LHONサイブリッド細胞の基礎呼吸に対する組換えTFAMの効果を示す棒グラフである。図1Aは、対照基礎呼吸のパーセント対組換えTFAMで治療後の日数を示す。図1Bは、対照平均mtDNA遺伝子コピー数のパーセント対組換えTFAMで治療後の日数を示す。図1Cは、対照平均mtRNA(cDNA)コピー数のパーセントを示す。
【図2】図2は、マイトフィリン/b-アクチン、CI、CII、CIII、CIV、及びCVのパーセント緩衝液対照対組換えTFAMで治療後の日数の棒グラフを示す。
【図3】図3Aは、脳、心臓、肝臓、及び骨格筋における酸化的代謝のパーセント緩衝液対照の棒グラフを示す。図3Bは、TFAM/対照対mtDNA遺伝子cDNAの棒グラフを示す。
【図4】図4は、媒体、組換えTFAM、3月間の媒体、及び3月以上の組換えTFAMで治療したマウスにおける体重(グラム)の棒グラフを示す。
【図5】図5は、3月以上組換えTFAM、又は媒体を注射したマウスにおけるパーセント食物摂取の棒グラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(詳細な説明)
(1. 定義)
開示された主題を記述し、及び請求する際に、以下の用語法が下記の定義に従って使用されるだろう。
【0012】
「ポリペプチド」という用語は、タンパク質、及びその断片を含む。ポリペプチドは、アミノ酸残基配列として本明細書に開示される。これらの配列は、アミノからカルボキシ末端に向けて左から右に書き込まれる。標準的な命名法に従って、アミノ酸残基配列は、以下の通りに示されるような3文字、又は1文字コードのいずれによって命名される:アラニン(Ala、A)、アルギニン(Arg、R)、アスパラギン(Asn、N)、アスパラギン酸(Asp、D)、システイン(Cys、C)、グルタミン(Gln、Q)、グルタミン酸(Glu、E)、グリシン(Gly、G)、ヒスチジン(His、H)、イソロイシン(Ile、I)、ロイシン(Leu、L)、リジン(Lys、K)、メチオニン(Met、M)、フェニルアラニン(Phe、F)、プロリン(Pro、P)、セリン(Ser、S)、スレオニン(Thr、T)、トリプトファン(trp、W)、チロシン(Tyr、Y)、及びバリン(Val、V)。
【0013】
「変異体」は、参照ポリペプチド、又はポリヌクレオチドと異なるが、必須な特性を保持するポリペプチド、又はポリヌクレオチドをいう。典型的なポリペプチド変異体は、アミノ酸配列が別の参照ポリペプチドと異なる。一般に、相違は、参照ポリペプチド、及び変異体の配列が全体的に近似しており、多くの領域において同一であるように、限定される。変異体、及び参照ポリペプチドは、1つ以上の修飾(例えば、置換、付加、及び/又は欠失)によって、アミノ酸配列が異なってもよい。置換され、又は挿入されるアミノ酸残基は、遺伝子暗号によってコードされるものであっても、又はなくてもよい。ポリペプチドの変異体は、対立遺伝子変異体など天然に生じていてもよく、又はこれは、天然に存在することが知られていない変異体でもよい。
【0014】
修飾、及び改変を、開示におけるポリペプチドの構造に行うことができ、更にポリペプチドとして同様の特徴を有する分子(例えば、保存的アミノ酸置換)を得ることができる。例えば、特定のアミノ酸は、はっきりそれと分かる活性の喪失を伴わずに配列においてその他のアミノ酸に置換することができる。ポリペプチドの相互作用能、及び性質は、そのポリペプチドの生物学的機能活性を規定するので、特定のアミノ酸配列置換をポリペプチド配列に行って、そしてそれにも関わらず同様の特性を有するポリペプチドを得ることができる。
【0015】
このような変化を作製する際に、アミノ酸のヒドロパシーインデックスを考慮することができる。ポリペプチドに対して双方向性生物学的機能を与える際のヒドロパシーアミノ酸インデックスの重要性は、当該技術分野において一般に理解される。特定のアミノ酸を類似のヒドロパシーインデックス、又はスコアを有する他のアミノ酸に置換することができ、更に類似の生物学的活性を有するポリペプチドを生じることが知られている。それぞれのアミノ酸には、その疎水性、及び電荷特徴に基づいてヒドロパシーインデックスを割り当てられている。これらのインデックスは、以下の通りである:イソロイシン(+4.5);バリン(+4.2);ロイシン(+3.8);フェニルアラニン(+2.8);システイン/システイン(+2.5);メチオニン(+1.9);アラニン(+1.8);グリシン(-0.4);スレオニン(-0.7);セリン(-0.8);トリプトファン(-0.9);チロシン(-1.3);プロリン(-1.6);ヒスチジン(-3.2);グルタミン酸(-3.5);グルタミン(-3.5);アスパルテート(-3.5);アスパラギン(-3.5);リジン(-3.9);及びアルギニン(-4.5)。
【0016】
アミノ酸の相対的なヒドロパシーの特徴が、生じるポリペプチドの二次構造を決定し、そしてまた酵素、基質、受容体、抗体、抗原等などのその他の分子とポリペプチドの相互作用を定義すると考えられる。アミノ酸を、同様のヒドロパシーインデックスを有する別のアミノ酸によって置換することができ、更に機能的に同等なポリペプチドを得ることができることは、当該技術分野において公知である。このような変化において、そのヒドロパシーインデックスが±2以内であるアミノ酸の置換が好ましく、±1以内のものが、特に好ましく、±0.5以内のものは、更に、特に好ましい。
【0017】
また、アミノ酸の様な置換は、特にこれにより作製された生物学的に機能的な同等なポリペプチド、又はペプチドが免疫学的実施態様に使用するために意図される場合に、親水性に基づいて行うことができる。以下の親水性値がアミノ酸残基に割り当てられている:アルギニン(+3.0);リジン(+3.0);アスパルテート(+3.0±1);グルタミン酸(+3.0±1);セリン(+0.3);アスパラギン(+0.2);グルタミン(+0.2);グリシン(0);プロリン(-0.5±1);スレオニン(-0.4);アラニン(-0.5);ヒスチジン(-0.5);システイン(-1.0);メチオニン(-1.3);バリン(-1.5);ロイシン(-1.8);イソロイシン(-1.8);チロシン(-2.3);フェニルアラニン(-2.5);トリプトファン(-3.4)。アミノ酸を同様の親水性値を有する別のものに置換することができ、更に生物学的に同等な、及び特に、免疫学的に同等なポリペプチドを得ることができることが理解される。このような変化において、その親水性値が±2以内であるアミノ酸の置換が好ましく、±1以内のものが特に好ましく、及び±0.5以内のものが、更に、特に好ましい。
【0018】
上で概説したように、アミノ酸置換は、一般にアミノ酸側鎖置換基の相対的類似性、例えばそれらの疎水性、親水性、充電、サイズ等に基づいている。前述の種々の特徴が考慮される例示的な置換は、当業者に周知であり、摂取する、及び含む(元の残基:例示的な置換):(Ala:Gly、Ser)、(Arg:Lys)、(Asn:Gln、His)、(Asp:Glu、Cys、Ser)、(Gln:Asn)、(Glu:Asp)、(Gly:Ala)、(His:Asn、Gln)、(Ile:Leu、Val)、(Leu:Ile、Val)、(Lys:Arg)、(Met:Leu、Tyr)、(Ser:Thr)、(Thr:Ser)、(Tip:Tyr)、(Tyr:trp(Phe))、及び(Val:Ile、Leu)。従って、この開示の実施態様は、前述のようなポリペプチドの機能的、又は生物学的同等物を想定する。特に、ポリペプチドの実施態様は、関心対象のポリペプチドと約50%、60%、70%、80%、90%、及び95%の配列同一性を有する変異体を含むことができる。
【0019】
「同一性」は、当技術分野において公知のとおり、配列を比較することによって定まる、2つ以上のポリペプチド配列の関係である。当該技術分野において、「同一性」は、また、このような配列の列間のマッチによって決定されるポリペプチド間の配列相関性の程度を意味する。「同一性」、及び「類似性」は、限定されないが、(計算分子生物学(Computational Molecular Biology), Lesk, A. M.編, Oxford University Press, New York, 1988;バイオコンピューティング:情報科学、及びゲノムプロジェクト(Biocomputing: Informatics and Genome Projects), Smith, D. W.編, Academic Press, New York, 1993;配列データのコンピューター解析、I部(Computer Analysis of Sequence Data, Part I), Griffin, A. M., 、及び Griffin, H. G.編, Humana Press, New Jersey, 1994; 分子生物学における配列解析(Sequence Analysis in Molecular Biology), von Heinje, G., Academic Press, 1987;並びに配列解析プライマー(Sequence Analysis Primer), Gribskov, M. and Devereux, J.編, M Stockton Press, New York, 1991;並びにCarillo, H.、及び Lipman, D., SIAM J Applied Math., 48: 1073 (1988)に記述されたものを含む、公知の方法によって容易に算出することができる。
【0020】
同一性を決定するための好ましい方法は、試験される配列間で最も大きなマッチを与えるようにデザインされる。同一性、及び類似性を決定する方法は、一般に公開されているコンピュータプログラムにおいて体系化されている。2つの配列間のパーセント同一性は、Needelman、及びWunsch(J. Mol. Biol., 48:443-453、1970)アルゴリズム(例えば、NBLAST、及びXBLAST)を組み込む解析ソフトウェア(すなわち、遺伝学コンピュータグループの配列解析ソフトウェアパッケージ、Madison Wis.)を使用することにより決定することができる。本開示のポリペプチドのために同一性を決定するために、デフォルトパラメーターが使用される。
【0021】
例証として、ポリペプチド配列は、参照配列と同一、すなわち100%同一でもよく、又は%同一性が100%未満であるように参照配列と比較して特定の整数個のアミノ酸変異を含んでいてもよい。このような変化は、少なくとも1つのアミノ酸欠失、保存的、及び非保存的置換を含む置換、又は挿入から選択され、前記変化は、参照ポリペプチド配列のアミノ末端、若しくはカルボキシ末端の位置にて、又は個々に、参照配列におけるアミノ酸の間に、又は参照配列内の1つ以上の隣接する基のいずれか点在されてこれらの末端位置の間のどこでも存在してもよい。所与の%同一性のためのアミノ酸変異の数は、参照ポリペプチドにおけるアミノ酸の総数に、それぞれのパーセント同一性の数のパーセントを乗じる(100で割る)こと、次いで、その結果を参照ポリペプチドにおけるアミノ酸の前記総数から減算することによって決定される。
【0022】
本明細書に使用される、「低ストリンジェンシー」という用語は、ポリヌクレオチド、又はポリペプチドがほとんど、又は全く配列特異性がなく別の物質に結合することができる条件をいう。
【0023】
本明細書に使用される、「精製される」という用語、及び同様の用語は、天然の環境において通常は分子、又は化合物に付随するその他の成分が実質的にない(少なくとも60%ない、好ましくは75%ない、及び最も好ましくは90%ない)形態の、分子、又は化合物の単離に関する。
【0024】
本明細書に使用される、「医薬として許容し得る担体」という用語は、リン酸緩衝生理食塩溶液、水、及び油/水、又は水/油乳剤などの乳剤などの標準的な薬学的担体、並びに種々のタイプの湿潤剤のいずれかを包含する。
【0025】
本明細書に使用される、「治療」という用語は、特異的な障害、若しくは状態と関連している症候を軽減すること、及び/又は前記症候を予防し、又は排除することを含む。
【0026】
「作動可能に連結される」とは、成分がこれらの通常の機能を行うように構成される並置をいう。例えば、コード配列に作動可能に連結された制御配列、又はプロモーターは、コード配列の発現を遂行することができ、タンパク質に作動可能に連結された細胞小器官局在化配列は、連結されたタンパク質を特異的な細胞小器官にて局在化させるのを助けるだろう。
【0027】
「局在化シグナル、又は配列、又はドメイン」、又は「ターゲティングシグナル、又は配列、又はドメイン」は、同義的に使用され、特異的な細胞、組織、細胞小器官、細胞内領域、又は細胞状態に分子を向けるシグナルをいう。シグナルは、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、又は炭水化物部分であることができ、又は付着された分子を所望の位置に向けるために十分な有機、又は無機化合物であることができる。例示的なターゲティングシグナルは、表1に提供してあり、Wagnerらの文献、Adv Gen 53:333-354(2005)において記述されたものなどの当該技術分野において公知の細胞ターゲティングシグナルを含み、その開示は、これらの全体が本明細書に参考として組み込まれる。表1収載された全長配列が含まれる必要がないないこと、及びこれらの配列の切断を含む修飾が開示の範囲内であることが認識されるであろうが、ただし、配列は、連結された分子を特異的な細胞タイプに向けるように作動することを条件とする。本開示のターゲティングシグナルは、表1の配列と80〜100%の配列同一性を有することができる。適切なターゲティングシグナルの1つのクラスは、受容体:リガンドメカニズムにおいてターゲットされた細胞と相互作用しないものを含む。例えば、ターゲティングシグナルは、実効電荷、例えば正電荷を有する、又は与えるシグナルを含む。正に荷電したシグナルは、ニューロン、及び筋肉などの負に荷電した細胞タイプをターゲットするために使用することができる。負に帯電したシグナルは、正に荷電した細胞をターゲットするために使用することができる。
【0028】
「指向性」は、特異的な細胞、細胞タイプ、又は細胞状態に引きつけられる分子の性向をいう。当該技術分野において、指向性は、異なるウイルス及び病原体が優先して特異的な宿主種、又はこれらの種内の特異的な細胞タイプに対してターゲットするように進化した方法をいうことができる。特異的な細胞、細胞タイプ、又は細胞状態に引きつけられる分子の性向は、ターゲティングシグナルによって達成することができる。
【0029】
「細胞タイプ」は、当該技術分野において細胞をグループ化、又は分類する様式である。細胞タイプという用語は、部分的には共通の生物学的機能、位置、形態、構造、ポリペプチドの発現、ヌクレオチド、又は代謝産物を介して決定されるこれらの生物学的特徴に基づいた、細胞のグループ化をいう。
【0030】
「細胞状態」は、細胞タイプの状態をいう。細胞は、これらの生命の全体を通じて動的であり、分化、機能、形態、及び構造の種々の状態を達成することができる。本明細書に使用される、細胞状態は、その生涯の全体を通じた特異的な細胞タイプをいう。
【0031】
本明細書に使用される、「細胞表面マーカー」という用語は、タイプ、又は状態のいずれかにおいて独特のものと細胞を同定するために十分な細胞の表面上に、又は近くに存在した部分、ペプチド、タンパク質、炭水化物、核酸、抗体、抗原、及び/又は代謝産物などの任意の分子をいう。
【0032】
「タンパク質形質導入ドメイン」、又はPTDは、脂質二重層、ミセル、細胞膜、細胞小器官膜、又は小胞膜を横切るのを促進するポリペプチド、ポリヌクレオチド、炭水化物、又は有機、若しくは無機化合物をいう。別の分子に付着されたPTDは、分子が膜を横切る、例えば細胞外スペースから細胞内スペースに、又はサイトゾルから細胞小器官内に行くことを促進する。例示的なPTDは、
【化3】

11アルギニン残基、又は8〜15残基、好ましくは9〜11残基を有する正に荷電したポリペプチド、若しくはポリヌクレオチドを含むが、限定されない。
【0033】
(2. 修飾されたポリヌクレオチド結合、又はポリヌクレオチド-パッケージングポリペプチド)
(A. ポリヌクレオチド結合ドメイン)
本明細書において提供されるポリペプチド、例えばDNA結合性タンパク質の送達のための組成物、及び方法は、任意にPTDを有し、かつ任意にターゲティングシグナル、若しくはドメインを有するポリヌクレオチド結合ポリペプチド、又はポリヌクレオチド-パッケージングポリペプチドを含む。修飾、又は組換えポリペプチドは、ポリヌクレオチド、又はその変異体を結合し、又はパッケージすることが知られている任意のポリペプチドであることができる。組換えポリペプチドは、単独で、又はポリヌクレオチドと組み合わせて、いずれかで治療的薬剤として使用することができる。一つの実施態様において、ポリヌクレオチド結合ポリペプチドは、特に、少なくとも1つのHMGボックスドメインにおいて、ポリヌクレオチドを結合するために、少なくとも高移動群(HMG)タンパク質のメンバーの一部を含む。
【0034】
一般に、HMGドメインは、2つの疎水性コアによって「L字状」の配置において安定化される3つのヘリックスの球状の折りたたみを含む。全ての真核細胞に共通である高移動群染色体タンパク質HMG1、又はHMG2は、例えばクロマチン機能、及び遺伝子制御を促進するために、非配列特異的な様式においてDNAを結合する。これらは、ヌクレオソームと直接相互作用することができ、クロマチン構造のモジュレーターであると考えられる。これらは、また、DNAに対するこれらの親和性を増加させることによって、p53、Hox転写因子、及びステロイドホルモン受容体を含む遺伝子発現の多数の制御因子を活性化するのに重要である。HMGタンパク質は、HMG-1/2、HMG-I(Y)、及びHMG-14/17を含む。
【0035】
HMG-1/2-ボックスタンパク質は、タンパク質に存在するHMGドメインの数、これらの配列認識の特性、及びこれらの進化の関係に従って、3つのサブファミリーに更に区別することができる。第1のグループは、配列特異性をもたずにDNAに結合する染色体タンパク質(クラスI、HMG1、及びHMG2)を含み、第2は、DNAと結合するときに、別の関連因子の存在下において配列特異性を示す、リボソーム、及びミトコンドリア転写因子(クラスII、酵母ARS結合タンパク質ABF-2、UBF、及びミトコンドリア転写因子mtTF-1)を含み、かつ第3は、配列特異的なDNA結合を示す遺伝子特異的な転写因子(クラスIII、リンパ様エンハンサー-結合因子LEF-1、及びTCF-1;哺乳類性決定因子SRY、及び密接に関連したSOXタンパク質;及び真菌の調節性タンパク質Mat-MC、Mat-a1、Stel1、及びRox1)を含む。HMG1/2-ボックスDNA結合ドメインは、約75〜約80アミノ酸であり、高度に保存されたプロリン、芳香族、及び塩基性残基を含む。HMGドメインタンパク質の共通の特性は、DNAヘリックスの副溝との相互作用、不規則なDNA構造に対する結合、及び屈曲によってDNA構造を調整する能力を含む。
【0036】
SOX(SRY-型HMGボックス)タンパク質は、性の決定、骨格形成、プレB、及びT細胞発達、並びに神経誘導を含む多数の発達過程において重要な機能を有する。SOX9は、Col2a1遺伝子の軟骨細胞-特異的エンハンサーを結合し、かつ活性化することによって、軟骨形成の間に直接的な役割を果たす。SOX9遺伝子機能の喪失は、屈曲肢異形成症(CD)として知られる遺伝的状態、極度な骨格の形成異常によって特徴づけられる小人症の形態、及びXYの個体の3/4が間性、又は男性から女性への性転換のいずれかを示すものを引き起こす。SOXファミリーには、クローン化された20を超えるメンバーがある。その全てがHMGドメインを含み、これは、特異的に二重鎖DNAモチーフに結合することができ、ヒト精巣決定因子SRYのHMGドメインと50%以上の相同性を有している。SOX9の好ましいDNA結合部位は、
【化4】

であると定義され、これはSOXコア結合エレメント(SCBE)である
【化5】

を含み、隣接する5'AG、及び3'GGヌクレオチドはSOX9による結合を増強する。
【0037】
一つの実施態様において、組換えポリヌクレオチド結合タンパク質は、少なくとも1つのHMGボックスドメイン、一般には少なくとも2つ、より詳細には2-5つのHMGボックスドメインを有する。HMGボックスドメインは、例えば、DNAの副溝を結合するために、タンパク質の凹表面上の大きな表面を使用して、ATリッチなDNA配列に結合することができる。この結合は、接触の部位から離れて、DNA螺旋軸を曲げる。第1、及び第2のヘリックスは、DNAに接触し、これらのN末端が副溝に適合するのに対して、ヘリックス3は、主に溶媒に曝露される。ヘリックス2における脂肪族、及び芳香族残基の部分的なインターカレーションが、副溝において生じる。
【0038】
その他の実施態様において、ポリヌクレオチド結合ポリペプチドは、少なくとも1つのポリヌクレオチド結合ドメイン、典型的には2つ、又はそれ以上のポリヌクレオチド結合ドメインを有することができる。ポリヌクレオチド結合ドメインは、同じ、又は異なることができる。例えば、ポリヌクレオチド結合ポリペプチドは、HMGボックス、ホメオドメイン、及びPOUドメイン;C2H2、及びC2C2などのZnフィンガードメイン;ロイシンジッパー、及びヘリックスループヘリックスドメインなどの両親媒性ヘリックスドメイン;並びにヒストンの折りたたみからなる群から選択される1つ以上のDNA結合ドメインと組み合わせて、少なくとも一つのHMGボックスを含むことができる。ポリヌクレオチド結合ドメインは、特異的なポリヌクレオチド配列に特異的であり、又は好ましくはポリヌクレオチドに非特異的に結合する。或いは、ポリヌクレオチド結合ポリペプチドは、配列特異的な様式で結合する少なくとも1つのポリヌクレオチド結合ドメイン、及び非特異的にDNAを結合する少なくとも1つのポリヌクレオチド結合ドメインのより多くの組み合わせを有することができる。
【0039】
特定の実施態様は、ヘリックスターンヘリックスモチーフ、又は少なくともヘリックスターンヘリックスタンパク質のポリヌクレオチド結合領域を有する修飾されたポリヌクレオチド結合ポリペプチドを提供する。ヘリックスターンヘリックスタンパク質は、1リプレッサー、及びcroタンパク質などの細菌調節性タンパク質、lacリプレッサーなどと同様の構造を有し、これらは、二量体として結合し、かつその結合部位がパリンドロームである。これらは、短いターンによって分離された3つのらせん領域を含み、それが、これらがヘリックスターンヘリックスタンパク質と呼ばれている理由である。二量体の各サブユニットにおける1つのタンパク質ヘリックス(ヘリックス3)は、DNAヘリックスの2つの連続したターンの主溝を占める。従って、もう1つの実施態様において、開示されたポリヌクレオチド結合ポリペプチドは、二量体、又はその他の多成分複合体を形成することができ、1〜3個のヘリックスを有することができる。
【0040】
更に別の実施態様において、修飾されたポリヌクレオチド結合ポリペプチドは、ホメオドメイン、又はホメオドメインタンパク質の一部を含む。ホメオドメインタンパク質は、ホメオティック遺伝子と呼ばれている遺伝子の群において最初に同定された180塩基対の配列に結合する。従って、配列は、ホメオボックスと呼ばれた。180bpは、対応するタンパク質において60アミノ酸に対応する。このタンパク質ドメインは、ホメオドメインと呼ばれている。ホメオドメイン含有タンパク質は、それ以来、脊椎動物、及び植物を含む広範な生物において同定されてきた。ホメオドメインは、高度な配列保存を示す。ホメオドメインは、4つのαらせん領域を含む。ヘリックスII、及びIIIは、ターンを含む3つのアミノ酸によって接続される。この領域は、細菌DNA結合タンパク質のヘリックスII、及びIIIに非常に類似する構造を有する。
【0041】
更に別の実施態様は、Znフィンガードメイン、又は少なくともZnフィンガータンパク質の一部を有する修飾されたポリヌクレオチド結合ポリペプチドを提供する。Znフィンガータンパク質は、一般構造:Phe(時にはTyr)-Cys-2〜4アミノ酸-Cys-3アミノ酸-Phe(時にはTyr)-5アミノ酸-Leu-2アミノ酸-His-3アミノ酸-Hisをもつドメインを有する。不変の位置に存在するフェニルアラニン、又はチロシン残基は、DNA結合のために必要とされる。フィンガーの数が変化するにもかかわらず、同様の配列がその他のDNA結合タンパク質の範囲において見いだされた。例えば、多数の遺伝子のプロモーター基部領域において見いだされるGCボックスに結合するSP1転写因子は、3本のフィンガーを有する。2つのシステイン、及び2つのヒスチジンを有するこのタイプのZnフィンガーは、C2H2 Znフィンガーと呼ばれている。
【0042】
2対のシステインの間に亜鉛を結合するZnフィンガーの別の型タイプが、DNA結合タンパク質の範囲において見いだされた。この種のZnフィンガーの一般構造は、:Cys-2アミノ酸-Cys-13アミノ酸-Cys-2アミノ酸-Cysである。これは、C2C2 Znフィンガーと呼ばれている。これは、ステロイド受容体スーパーファミリーとして知られるタンパク質の群において見いだされ、それぞれ2つのC2C2 Znフィンガーを有する。
【0043】
別の実施態様は、ロイシンジッパー、又は少なくともロイシンジッパータンパク質の一部を有する修飾されたポリヌクレオチド結合ポリペプチドを提供する。最初のロイシンジッパータンパク質は、肝細胞の抽出物から同定され、これは、エンハンサー結合タンパク質であり、かつこれがCAATプロモーター近位配列に結合すると元来は考えられていたので、C/EBPと呼ばれていた。C/EBPは、二量体としてのみDNAに結合すだろう。2つの単量体が二量体を作製するために連結するタンパク質の領域は、二量体化ドメインと呼ばれている。これは、タンパク質のC末端の方にある。アミノ酸配列を調べたときに、35アミノ酸のひと配列にわたってロイシン残基が7アミノ酸ごとに存在することが判明した。この領域がαヘリックスを形成すると、次いでこれらのロイシンの全てがヘリックスの1つの表面上に整列するだろう。
【0044】
ロイシンは、疎水性側鎖を有するので、ヘリックスの1つの表面は、非常に疎水性である。逆の表面は、親水性である帯電側鎖をもつアミノ酸を有する。疎水性、及び親水性の特徴の組み合わせでは、分子が両親媒性の別名を与える。ロイシンジッパー領域に隣接して、塩基性(正に荷電した)アミノ酸リジン、及びアルギニンリッチな20〜30アミノ酸の領域がある。これは、DNA結合ドメインであり-しばしばbZIPドメイン-ロイシンジッパーの塩基性領域とも言われる。C/EBPは、DNAヘリックスの周囲を包むこれらのbZIP領域によってDNAに結合すると考えられる。
【0045】
ロイシンジッパー-bZIP構造は、jun、及びfos発癌遺伝子の産物を含むその他のタンパク質の範囲において見いだされた。C/EBPは、同一のサブユニットのホモダイマーとしてDNAに結合するのに対して、fosは、全くホモダイマーを形成することができず、jun/junホモダイマーは、不安定な傾向がある。しかし、fos/junヘテロ二量体は、ずっと安定である。これらのfos/junヘテロ二量体は、様々なプロモーター、及びエンハンサーに結合して転写を活性化するAP1と呼ばれる一般的な転写因子に対応する。コンセンサスなAP1結合部位は、パリンドロームの
【化6】

である。
【0046】
別の実施態様は、ヘリックスループヘリックスドメイン、又はヘリックスループヘリックスタンパク質のポリヌクレオチド結合部位を有する修飾されたポリヌクレオチド結合ポリペプチドを提供する。ヘリックスループヘリックスタンパク質は、これらが両親媒性ヘリックスを経て二量体を形成するという点で、ロイシンジッパーと同様である。類似性の領域が、E47、及びE12と呼ばれる2つエンハンサー結合タンパク質の間にあると気づいたときに、これらは、タンパク質のクラスとして最初に発見された。この保存された領域は、ループによって分離された2つの両親媒性、それゆえヘリックスループヘリックスを形成する能力がある。二量体化ドメインの隣には、DNA結合ドメインがあり、再び塩基性アミノ酸に富んでおり、bHLHドメインと言われる。また、これらの構造は、ショウジョウバエの神経系、Achaete-scute複合体の発達、及び哺乳動物の筋肉分化のために必要とされるMyoDと呼ばれるタンパク質において必要とされる多数の遺伝子において見いだされる。
【0047】
更に別の実施態様において、修飾されたポリヌクレオチド結合ポリペプチドは、ヒストンポリペプチド、ヒストンポリペプチドの断片、又は少なくとも1つのヒストンの折りたたみを含む。ヒストンの折りたたみは、二量体内に構築されるヒストンポリペプチド単量体に存在する。ヒストンポリペプチドは、H2A、H2B、H3、及びH4を含み、これらは、ヘテロ二量体H2A-2B、及びH3-H4を形成することができる。ヒストン様ポリペプチドが開示された組成物、及び方法においても使用することができることが認識されるであろう。ヒストン様ポリペプチドは、HMf、又はメタノサーモウス・フェルビヂュス(Methanothermous fervidus)からのヒストン、当該技術分野において公知のその他の古細菌ヒストン、並びにMJ1647、CBF、TAFII、又は転写因子IID、SPT3、及びDr1-DRAPなどのポリペプチドを含むヒストンの折りたたみを含むが、限定されない(その全体が参照により組み込まれるSanderman, K.らの文献、Cell. Mol. Life Sci.54:1350-1364(1998))。
【0048】
一つの実施態様は、とりわけ、非ヒストンポリヌクレオチド結合ポリペプチド、例えばミトコンドリア転写因子A(TFAM)ポリペプチド、その変異体、又はポリヌクレオチドを結合するのに十分なその断片を含むポリヌクレオチド結合ポリペプチドを提供する。変異体TFAMは、参照TFAM、例えば天然に存在するTFAMと80%、85%、90%、95%、99%、又はそれ以上の配列同一性を有することができる。
【0049】
TFAMは、2つのHMG-ボックスドメインを有する高移動群(HMG)タンパク質のメンバーである。TFAM、並びにその他のHMGタンパク質は、DNAを結合して、包み、曲げ、及び巻き戻す。従って、本開示の実施態様は、HMGファミリータンパク質の1つ以上のポリヌクレオチド結合領域を含むポリヌクレオチド結合ポリペプチドを含み、任意にポリペプチドがポリヌクレオチドと結合し、又は会合するときにポリヌクレオチドの構造的な変化を誘導する。ポリヌクレオチドにおける高次構造の変化を誘導することにより、ポリペプチドは、ポリヌクレオチドを包む。TFAMは、900:1の比率でミトコンドリアDNAに結合することが報告されている(Alam, T.I.らの文献、 Nucleic Acid Res. 31(6):1640-1645(2003))。本明細書に開示される組成物、及び方法に使用されるポリヌクレオチド結合ポリペプチドの量は、送達されるポリヌクレオチドのサイズ、及び量に応じて変化することができることが認識されるであろう。ポリヌクレオチド結合ポリペプチド対送達されるポリヌクレオチドの塩基対の適切な比は、約1:1〜1:1,000;より好ましくは、1:100;更に好ましくは、1:約10〜約20の送達されるポリヌクレオチドの対を含むが、限定されない。TFAM、別のポリヌクレオチド結合ポリペプチド、又は2つ以上のポリヌクレオチド結合ポリペプチドの組み合わせをポリヌクレオチドに付加して、ポリヌクレオチドを包み、又はカバーし、これによりをポリヌクレオチドを包み、これを分解から保護することができることが認識されるであろう。
【0050】
TFAMは、PTD、及び任意にターゲティングシグナルを含むように修飾することができる。ターゲティングシグナルは、特異的な組織、細胞、又は細胞小器官に対する分子の局在化を促進する単量体の配列を含むことができる。単量体は、アミノ酸、ヌクレオチド、若しくはヌクレオシド塩基、又はグルコース、ガラクトースなどの糖基、及び炭水化物ターゲティングシグナルを形成するようなものであることができる。
【0051】
(B. タンパク質形質導入ドメイン)
ポリヌクレオチド結合ポリペプチドは、細胞を貫通するペプチド(CPPS)としても知られているタンパク質形質導入ドメイン(PTD)を含むように修飾することができる。PTDは、当該技術分野において公知であり、受容体非依存的な機構で細胞膜を越えることができるタンパク質の小さな領域を含むが、限定されない(Kabouridisの文献、P., Trends in Biotechnology(11):498-503(2003))。PTDのいくつかが記述されているが、2つの最も一般的に使用されるPTDは、HIVのTATタンパク質(Frankel、及び Paboの文献、 Cell, 55(6):1189-93(1988))、及びショウジョウバエのアンテナペディア(Antennapedia)転写因子由来であり、そのPTDは、ペネトラチン(Penetratin)(Derossiらの文献、J Biol Chem., 269(14):10444-50(1994))として知られている。
【0052】
アンテナペディアホメオドメインは、68アミノ酸残基の長さであり、4つのαヘリックスを含む。ペネトラチンは、アンテナペディアの第3のヘリックスに由来する16アミノ酸配列からなるこのタンパク質の活性ドメインである。TATタンパク質は、86アミノ酸からなり、HIV-1の複製に関与する。TATのPTDは、取り込みに重要と思われる親タンパク質の11アミノ酸配列ドメイン(残基47〜57;
【化7】

)からなる。加えて、塩基性ドメインTat(49-57)、又は
【化8】

は、PTDであることが示された。現在の文献において、TATは、細胞輸送のために関心がもたれるタンパク質に融合するために好まれてきた。グルタミンのアラニンへの交換、すなわちQ→Aを含むTATに対するいくつかの修飾は、哺乳動物細胞において、90%(Wenderらの文献、Proc Natl Acad Sci U S A., 97(24):13003-8(2000))から33倍までどこでも、細胞の取り込みの増大を示した(Hoらの文献、Cancer Res., 61(2):474-7(2001))。修飾されたタンパク質の最も効率的な取り込みは、TAT-PTDの突然変異誘発実験によって明らかにされ、それは、11アルギニンのひと配列が細胞内送達媒体として数桁違いの規模でより効率的だった。従って、一部の実施態様は、カチオン性、又は両親媒性であるPTDsを含む。更に例示的なPTDは、
【化9】

を含むが、限定されない。
【0053】
(C. ターゲティングシグナル、又はドメイン)
更に他の実施態様において、修飾されたポリヌクレオチド結合ポリペプチドは、ターゲティングシグナル、又はドメインを含むように任意に修飾される。ターゲティングシグナル、又は配列は、宿主、組織、器官、細胞、細胞小器官、非核細胞小器官、又は細胞コンパートメントに特異的であることができる。例えば、本明細書に開示される組成物は、組成物を肝臓に、又は肝細胞にターゲットするために、ガラクトシル末端の巨大分子で修飾することができる。修飾組成物は、これらの細胞だけに大量に、かつ高親和性に存在しているアシアロ糖タンパクレセプターと担体ガラクトース残基の相互作用の後、選択的に肝細胞に入る。その上、本明細書に開示される組成物は、その他の特異的な細胞間領域、コンパートメント、又は細胞タイプにターゲットすることができる。
【0054】
一つの実施態様において、ターゲティングシグナルは、細胞へのベクターの透過を可能にするように、ベクター、及び細胞膜を互いに十分に近づけるように、標的細胞の表面に位置するそのリガンド、又は受容体に結合する。本開示のさらなる実施態様は、特異的な組織、又は細胞タイプにポリヌクレオチドを特異的に送達することに向けられ、そこで、ポリヌクレオチドは、ポリペプチドをコードでき、又は異なるポリヌクレオチドの発現を妨げることができる。細胞に送達されるポリヌクレオチドは、細胞の機能を増強、又は寄与することができるポリペプチドをコードすることができる。
【0055】
好ましい実施態様において、ターゲティング分子は、抗体、又はその抗原結合断片、抗体ドメイン、抗原、T細胞受容体、細胞表面受容体、細胞表面細胞接着因子、主要組織適合遺伝子座タンパク質、ウイルス外膜タンパク、及び定義した細胞に特異的に結合するファージディスプレイによって選択されるペプチドからなる群から選択される。
【0056】
特異的な細胞にターゲティングするポリヌクレオチドは、特異的な細胞、及び組織ターゲティングシグナルを発現するように開示された組成物を修飾することによって達成することができる。これらの配列は、特異的な細胞、及び組織をターゲットするが、一部の実施態様において、ターゲティングシグナルと細胞の相互作用は、従来の受容体:リガンド相互作用を介して生じない。真核細胞は、多数の異なる細胞表面分子を含む。各分子の構造、及び機能は、細胞の起源、発現、特徴、及び構造に特異的であり得る。特異的な細胞タイプの分子の独特の細胞表面相補物の決定は、当該技術分野において周知の技術を使用して決定することができる。
【0057】
当業者であれば、記述したベクター組成物の指向性が、ターゲティングシグナルを単に変えることによって変化させることができることを理解するであろう。一つの具体的な実施態様において、ポリヌクレオチドの送達をターゲットするためのベクターへの細胞表面抗原に特異的な抗体の付加を可能にする組成物が提供される。例示的な細胞表面抗原を表1に提供してあり、本明細書に記述される。
【0058】
哺乳動物生物の組織におけるほとんどすべての細胞タイプが、いくつかの独特の細胞表面受容体、又は抗原を有することは、当該技術分野において公知である。従って、ターゲティングシグナルとして細胞表面受容体、又は抗原に対するほとんど任意のリガンドを組み込むことが可能である。例えば、ペプチドホルモンは、このようなホルモンの受容体を有するこれらの細胞に送達をターゲットするためのターゲット部分として使用することができる。ケモカイン、及びサイトカインは、同様に、これらの標的細胞への複合体の送達をターゲットするためのターゲティングシグナルとして使用することができる。様々な技術が、特定の細胞、又は細胞状態において優先して発現される遺伝子を同定するために開発されており、当業者であれば、関心対象のターゲット組織に優先して、又は一義的に発現されるターゲティングシグナルを同定するためにこのような技術を使用することができる。
【0059】
(i. 脳ターゲティング)
一つの実施態様において、ターゲティングシグナルは、脳、及び末梢神経系を含む神経系の細胞に向けられる。脳の細胞は、いくつかのタイプ、及び状態を含み、タイプに特異的な独特の細胞表面分子を有する。更に、細胞タイプ、及び状態は、共通の細胞表面分子の提示によって、更に特徴づけること、及び分類することができる。
【0060】
一つの実施態様において、ターゲティングシグナルは、神経系の細胞の表面上に発現される特異的な神経伝達物質受容体に向けられる。神経伝達物質受容体の分布は、当該技術分野において周知であり、当業者であれば、ターゲティングシグナルとして神経伝達物質受容体の特異的抗体使用することにより記述された組成物に向けることができる。更に、これらの受容体に対する神経伝達物質の指向性を考慮すると、一つの実施態様において、ターゲティングシグナルは、神経伝達物質受容体に特異的に結合することができる神経伝達物質、又はリガンドからなる。
【0061】
一つの実施態様において、ターゲティングシグナルは、アストロサイト、ミクログリア、神経細胞、オリゴデンドライト、及びシュワン細胞を含んでいてもよい神経系の細胞に特異的である。これらの細胞は、これらの機能、位置、形状、神経伝達物質クラス、及び病理学的状態によって更に分けることができる。また、神経系の細胞は、これらの分化の状態、例えば幹細胞によっても同定することができる。これらの細胞タイプ、及び状態に特異的な例示的なマーカーは、当該技術分野において周知であり、CD133、及びニューロスフェア(Neurosphere)を含むが、限定されない。
【0062】
(ii. 筋肉ターゲティング)
一つの実施態様において、ターゲティングシグナルは、筋骨格系の細胞に指示される。筋肉細胞は、いくつかの型、及び状態を含み、型、及び状態に特異的な独特の細胞表面分子を有する。更に、細胞タイプ、及び状態は、共通の細胞表面分子の提出によって、更に特徴づけ、分類することができる。
【0063】
一つの実施態様において、ターゲティングシグナルは、筋肉細胞の表面上に発現される特異的な神経伝達物質受容体に向けられる。神経伝達物質受容体の分布は、当該技術分野において周知であり、当業者であれば、ターゲティングシグナルとして神経伝達物質受容体の特異的抗体を使用することによって記述された組成物に向けることができる。更に、これらの受容体に対する神経伝達物質の指向性を考慮すると、一つの実施態様において、ターゲティングシグナルは、神経伝達物質からなる。ターゲットすることができる筋肉細胞上に発現される例示的な神経伝達物質は、アセチルコリン、及びノルエピネフリンを含むが、限定されない。
【0064】
一つの実施態様において、ターゲティングシグナルは、2つの主要なグループであるI型、及びII型からなる筋肉細胞に特異的である。これらの細胞は、これらの機能、位置、形状、ミオグロビン含量、及び病理学的状態によって更に分けることができる。また、筋肉細胞は、これらの分化の状態、例えば筋肉幹細胞によっても同定することができる。これらの細胞タイプ、及び状態に特異的な例示的なマーカーは、当該技術分野において周知であり、MyoD、Pax7、及びMR4を含むが、限定されない。
【0065】
(iii. 腫瘍ターゲティング)
一つの実施態様において、ターゲティングシグナルは、腫瘍細胞を選択的にターゲットするために使用される。腫瘍細胞は、腫瘍細胞にのみ発現され、又は非腫瘍細胞に存在するが腫瘍細胞に優先して存在する細胞表面マーカーを発現する。例示的な腫瘍特異的細胞表面マーカーは、α-フェトプロテイン(AFP)、C反応性タンパク質(CRP)、癌抗原-50(CA-50)、卵巣癌関連癌抗原-125(CA-125)、乳癌関連癌抗原15-3(CA15-3)、癌抗原-19(CA-19)、及び胃腸癌関連癌抗原-242、癌胎児抗原(CEA)、癌腫関連抗原(CAA)、クロモグラニンA、上皮ムチン抗原(MC5)、ヒト上皮特異的抗原(HEA)、ルイス(a)抗原、メラノーマ抗原、メラノーマ関連抗原100、25、及び150、ムチン様癌腫関連抗原、多剤耐性関連タンパク質(MRPm6)、多剤耐性関連タンパク質(MRP41)、Neu癌遺伝子タンパク質(C-erbB-2)、ニューロン特異的エノラーゼ(NSE)、P糖タンパク質(mdr1遺伝子産物)、多剤耐性関連抗原、p170、多剤耐性関連抗原、前立腺特異的抗原(PSA)、CD56、及びNCAMを含むが、限定されない。一つの実施態様において、ターゲティングシグナルは、腫瘍細胞表面マーカーに特異的な抗体からなる。
【0066】
(iv. 抗体)
別の実施態様は、ターゲティングシグナルとして作用する開示された組換えポリペプチドに結合する抗体、又はその抗原結合断片を提供する。抗体、又はその抗原結合断片は、ベクターを細胞タイプ、又は細胞状態に向けるために有用である。一つの実施態様において、組換えポリペプチドは、例えば黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)からのプロテインA、及びプロテインGのなどの抗体を結合することが知られているタンパク質からのものなどの、抗体結合ドメインを有する。抗体を結合することが知られているその他のドメインは、当該技術分野において公知であり、置換することができる。特定の実施態様において、抗体は、ポリクローナル、モノクローナル、直鎖状、ヒト化、キメラ、又はこれらの断片である。代表的な抗体断片は、非ウイルスベクターの抗体結合部分を結合する断片であり、当該技術分野において公知であるFab、Fab'、F(ab')、Fv二重特異性抗体、直鎖状抗体、単鎖抗体、及び二重特異性抗体を含む。
【0067】
一部の実施態様において、ターゲティングドメインは、所望のターゲット細胞タイプ、又は細胞状態にベクターを向ける抗体の全部、又は一部を含む。抗体は、モノクローナル、又はポリクローナルであることができるが、好ましくはモノクローナルである。ヒト遺伝子療法の目的のためには、抗体は、ヒト遺伝子に由来し、かつ細胞表面マーカーに特異的であり、かつ当技術分野において公知のようにヒト宿主への潜在的免疫原性を減少させるように産生される。例えば、「ヒト」抗体を産生することができる全てのヒト免疫グロブリン遺伝子クラスターを含むトランスジェニックマウスを利用することができる。一つの実施態様において、このようなヒト抗体の断片は、ターゲティングシグナルとして使用される。好ましい実施態様において、ヒト抗体でモデル化された単鎖抗体は、原核生物培養において調製される。
【0068】
本開示のさらなる実施態様は、細胞内コンパートメント、又は細胞小器官にポリペプチドを特異的に送達することに向けられる。真核細胞は、膜結合した構造、又は細胞小器官を含む。細胞小器官は、単一の、又は複数の膜を有することができ、植物、及び動物細胞の両方に存在することができる。細胞小器官の機能に応じて、細胞小器官は、タンパク質、及び補因子などの特異的な成分からなることができる。細胞小器官に送達されるポリペプチドは、細胞小器官の機能を増強すること、又は寄与することができる。ミトコンドリア、及び葉緑体などのいくつかの細胞小器官は、それ自体のゲノムを含む。核酸は、これらの細胞小器官の中で複製され、転写され、及び翻訳される。タンパク質は、移入され、代謝産物が移出される。従って、細胞小器官の膜を越えた物質の交換がある。一部の実施態様において、ミトコンドリアポリペプチドは、ミトコンドリアに特異的に送達される。
【0069】
例示的な細胞小器官は、核、ミトコンドリア、葉緑体、リソソーム、ペルオキシソーム、ゴルジ、小胞体、及び核小体を含む。合成細胞小器官は、脂質から形成することができ、脂質膜の中に特異的なタンパク質を含むことができる。加えて、合成細胞小器官の内容物には、核酸の翻訳のための成分を含むように操作することができる。
【0070】
(v. 核局在化シグナル)
本明細書に開示される組成物は、1つ以上の核局在化シグナルを含むことができる。核局在化シグナル(NLS)、又はドメインは、当該技術分野において公知であり、例えばSV 40 T抗原、又は
【化10】

などのその断片を含む。NLSは、約4約8アミノ酸の単純な陽イオン性の配列であることができ、又は約10〜12アミノ酸の突然変異耐性のリンカー領域によって分離された2つの相互依存する正に荷電したクラスターを有する二部構成であることができる。さらなる代表的なNLSは、
【化11】

を含むが、限定されない。
【0071】
(vi. ミトコンドリアターゲティング)
本開示のその他の実施態様において、ミトコンドリアに特異的にターゲットする修飾されたポリヌクレオチド結合ポリペプチドが開示される。ミトコンドリアは、グルコースの解糖からアデノシン三リン酸 (ATP)にエネルギーを変換する分子機構を含む。次いで、ATPの高エネルギーホスフェート結合において貯蔵されたエネルギーは、細胞機能に動力供給するために利用される。ミトコンドリアは、大部分がタンパク質であるが、いくらかの脂質、DNA、及びRNAが存在する。これらの一般的な球面細胞小器官は、酸化的リン酸化、及び電子伝達の酵素の足場に折り重なる内膜(クリステ)を囲んでいる外膜を有する。大部分のミトコンドリアは、平らな棚様のクリステを有するが、ステロイド分泌細胞においては、管状クリステを有し得る。ミトコンドリアマトリックスは、クエン酸回路、脂肪酸酸化、及びミトコンドリア核酸の酵素を含む。
【0072】
ミトコンドリアDNAは、二本鎖、及び環状である。ミトコンドリアRNAは、3つの標準的な多様性;リボソーム、メッセンジャー、及びトランスファーがあるが、それぞれがミトコンドリアに特異的である。いくつかのタンパク質合成は、ミトコンドリアにおいて、細胞質リボソームとは異なるミトコンドリアのリボソームで生じる。その他のミトコンドリアタンパク質は、細胞質リボソームで作製され、ミトコンドリアにこれらを向けるシグナルペプチドを持つ。細胞の代謝活性は、細胞内のクリステの数、及びミトコンドリアの数に関連がある。心筋などの高い代謝活性を有する細胞は、多くの十分に発達したミトコンドリアを有する。新たなミトコンドリアは、これらが成長して、分裂するときに、既存のミトコンドリアから形成される。
【0073】
ミトコンドリアの内膜は、膜を横切って種々の代謝産物を輸送する、関連した配列、及び構造のタンパク質のファミリーを含む。これらのアミノ酸配列は、三部構造を有して、約100アミノ酸の長さの3つの関連した配列を構成した。1つのキャリアのリピートは、その他に存在するものと関連があり、いくつかの特徴的な配列の特色が、ファミリーを通じて保存される。
【0074】
特異的なポリペプチドの細胞小器官へのターゲティングは、特異的な細胞小器官ターゲティングシグナルを含むように、開示された組成物を修飾することによって達成することができる。これらの配列は、特異的な細胞小器官にターゲットするが、一部の実施態様において、細胞小器官とターゲティングシグナルの相互作用は、従来の受容体:リガンド相互作用を介しては生じない。真核細胞は、多数の別々の膜に結合したコンパートメント、又は細胞小器官を含む。各細胞小器官の構造、及び機能は、主に構成成分のポリペプチドのその独特の相補物によって決定される。しかし、大多数のこれらのポリペプチドは、細胞質においてこれらの合成を開始する。従って、細胞小器官の生物発生、及び維持は、新しく合成されたタンパク質がこれらの適切なコンパートメントに正確にターゲットされ得ることを必要とする。これは、しばしば、アミノ末端のシグナリング配列、並びに翻訳後修飾、及び二次構造によって達成される。ミトコンドリアについては、いくつかのアミノ末端ターゲティングシグナルが推論され、当該技術分野において公知である。
【0075】
一つの実施態様において、細胞小器官をターゲットするシグナルは、少なくとも2、好ましくは5〜15、最も好ましくは約11個の荷電された群を含むことができ、正味の反対荷電を有する細胞小器官に引き寄せられるようにターゲティングシグナルを生じさせる。別の実施態様において、ターゲティングシグナルは、一連の荷電した基を含むことができ、これがターゲティングシグナルを電磁電位勾配に対して、又はその下のいずれかに細胞小器官内に輸送させる。適切に荷電した基は、荷電した官能基を有するアミノ酸、アミノ基、核酸等などの細胞内条件下で荷電される基である。ミトコンドリア局在化/ターゲティングシグナルは、一般に高度に正に荷電したアミノ酸のリーダー配列からなる。これにより、高度に負に荷電したミトコンドリアにタンパク質をターゲットすることができる。受容体に接近するためのリガンドの確率的ブラウン運動に依存する受容体:リガンドアプローチと異なり、一部の実施態様のミトコンドリア局在化シグナルは、荷電のためにミトコンドリアに引き寄せられる。
【0076】
ミトコンドリアに入るために、タンパク質は、一般に、Tim、及びTom複合体(ミトコンドリア膜の内側/外側のトランスロカーゼ)からなるミトコンドリア導入機構と相互作用しなければならない。ミトコンドリアターゲティングシグナルに関して、正電荷は、関連するタンパク質を複合体に引き寄せ、タンパク質をミトコンドリア内に引き寄せ続ける。Tim、及びTom複合体は、タンパク質が膜を横切ることを可能にする。従って、本開示の一つの実施態様は、正に荷電したターゲティングシグナル、及びミトコンドリア導入機構を利用して、本開示の組成物を内側のミトコンドリアスペースに送達する。別の実施態様において、ミトコンドリア局在化シグナルを含むPTD関連ポリペプチドは、ミトコンドリアマトリックスへの侵入のためにTom/Tim複合体を利用していないようである。Del Gaizoらの文献、 Mol Genet Metab. 80(1-2):170-80 (2003)を参照されたい。
【0077】
ヒト疾患、細胞増殖、細胞死、及び老化におけるミトコンドリアの重要性を考慮すると、本開示の実施態様は、また、ミトコンドリア機能の操作を包含し、公知のミトコンドリア疾患(LHON、MELAS、その他)、及び推定のミトコンドリア疾患(老化、アルツハイマー病、パーキンソン病、糖尿病、心疾患)を治療することができる手段を供給する。
【0078】
(vii. 葉緑体ターゲティング)
別の実施態様において,本明細書に開示される修飾された組成物は、葉緑体局在化シグナル、又はドメインを含むことによって、葉緑体にポリペプチドを特異的に送達する。葉緑体については、推論されるいくつかのアミノ末端ターゲティングシグナルが当該技術分野において公知である。葉緑体は、二重の周囲膜を持つ真核細胞における光合成細胞小器官である。二重膜内部の液体は、ストロマと呼ばれている。葉緑体は、その環状の、裸のDNAを収納するための核様体領域を有する。また、ストロマは、カルビン回路の部位である。カルビン回路は、二酸化炭素から炭水化物、及びその他の化合物を産生する、一連の酵素が触媒する化学的反応である。
【0079】
ストロマ内には、チラコイドと呼ばれる小さい膜嚢がある。嚢は、グループで積み重ねられる。それぞれのグループは、グラナと呼ばれる。それぞれの葉緑体には、多くのグラナがある。チラコイド膜は、光合成の明反応の部位である。チラコイドは、固有の、及び外部タンパク質を有し、いくつかは特別な補欠分子族を持ち、電子がタンパク質複合体からタンパク質複合体まで移動するのを可能にする。これらのタンパク質は、時にはZ-スキームとして知られている電子伝達系を構成する。
【0080】
2つの重要な膜タンパク質(P680、及びP700)の補欠分子族は、葉緑素の色素分子である。これらの葉緑素結合タンパク質は、チラコイドに強い緑色を与える。葉緑体における多くのチラコイドは、葉緑体に緑色を与える。葉の葉肉細胞における多くの葉緑体は、その細胞に緑色を与える。葉における多くの葉肉細胞は、葉に緑色を与える。葉緑素分子は、光エネルギーを吸収し、マグネシウムイオンを囲んでいる共鳴化学的構造における電子雲内に電子がブーストされる。この励起した電子は、膜における周囲の電子伝達タンパク質によって除去される。これらの電子、及び付随するプロトンの移動は、最終的にATPのリン酸結合にエネルギーをトラップすることとなる。従って、チラコイドは、光吸収、及びATP合成のための場所である。ストロマは、ATPを使用し、トラップしたエネルギーを炭水化物の炭素-炭素結合に貯蔵する。いくつかの葉緑体は、デンプン粒を発生することを示す。これらは、長期貯蔵のための炭水化物の複雑な重合体である。
【0081】
葉緑体の生体エネルギー機能を考慮すると、外来ポリペプチドを導入する能力は、他の敵対的な環境における生存度の増大、及び光合成の効率の上昇をさせるように植物を導き得る。従って、その他の実施態様は、市販の化合物のためのより有効な生合成ストラテジーのための葉緑体の修飾に向けられる。
【0082】
【表1】

【0083】
(3. ミトコンドリア生物発生、及びOXPHOSを増加)
本開示の実施態様は、ミトコンドリア生物発生、及び酸化的代謝を増加させることに適用できる組成物、及び方法を提供する。ミトコンドリア生物発生、及び/又は酸化的代謝の減少の結果としての細胞機能不全は、また、開示された組成物、及び方法を使用して治療、又は減少させることができる。例えば、レーバー遺伝性視神経萎縮症(LHON)に罹患している患者からのND4遺伝子におけるG11778A mtDNA突然変異を持つSH-SY5Y神経芽細胞腫サイブリッド細胞を、ミトコンドリアにターゲットされる形質導入可能なTFAM(MTD-TFAM)、又は緩衝液対照で処理した。グルコースを代謝している無処置の細胞を使用する、同時の「高解像度」酸素測定-呼吸実験を行った。基礎呼吸値は、それぞれの時点での相当する緩衝液対照細胞の値の割合として表される同数の生細胞の機能として示した。MTD-TFAMによる処理は、基礎呼吸速度の時間依存的な可逆的な増大を引き起こし、約2週間で対照試料に対して最大3倍に達した(図1A-C)。
【0084】
TFAMは、ミトコンドリアゲノム複製、及び転写のための認識された必須な因子であるので、MTD-TFAMの曝露は、呼吸器タンパク質へのミトコンドリア遺伝子複製、転写、及び翻訳を増加させ得る。いくつかのミトコンドリア遺伝子についての多重qPCRは、MTD-TFAMでの処理の後、DNA、及びRNA(cDNA)の両方で、ミトコンドリア遺伝子のコピー数の実質的増大を示す。複数の個々のETCタンパク質のレベルを、ウェスタンブロットを使用して、処理した細胞において評価した。ウェスタンブロット解析は、外側のミトコンドリア膜タンパク質マイトフィリン対細胞質βアクチンのものとの比として表してある、細胞における相対ミトコンドリア量は、MTD-TFAM処理した細胞において2倍(1.9倍)になったことを明らかにした(図2)。いくつかの複合体からのmtDNAがコードする(CIV、サブユニット2)、及び複数の核ゲノムがコードするETCタンパク質のレベルは、また、MTD-TFAM処理された細胞において実質的に、及び可逆的に増加し、11日目にて複合体Iにおいて最も大きな全体の増大が観察された(図2)。細胞における呼吸の増加は、動物に反映された。正常な成体雄マウスを、MTD-TFAM、又は緩衝液対照のI.P.注射で処理した。呼吸を、脳、心臓、骨格筋、腎臓、及び肝臓からのミトコンドリア調製物において調査した。処理したマウスは、個々の複合体について、相対的な状態3(+ADP)の呼吸数にて、組織全体で呼吸の増加を示した(図3A〜3B)。従って、本開示において提供される実施態様は、ミトコンドリア生物発生、及び、又はミトコンドリア酸化的代謝を増加する方法を可能にする。
【0085】
(4. 遺伝的な疾患、又は症候群)
本開示の実施態様は、組成物、及び方法を提供し、それはミトコンドリア機能不全が一次イベント、若しくは二次的な原因である疾患、又は障害に関連した遺伝子の治療的プロトコル、及び治療に適用できる。細胞ミトコンドリア機能不全は、また、開示された組成物、及び方法を使用して治療、又は減少させることができる。特に、ミトコンドリア機能不全を生じる疾患は、特異的にターゲットされる。また、改良されたミトコンドリア機能が治療的であると判明するかもしれない疾患も開示される。疾患は、子供、例えば18歳以下の個体、典型的には12歳以下、又は成人、例えば18歳以上の個個体に存在し得る。従って、本開示の実施態様は、ミトコンドリア機能不全を減少させる、又はミトコンドリア機能を改善することが可能な形質導入タンパク質で宿主を処理することによって、疾患、特に遺伝的疾患と診断された宿主を治療することに向けられる。
【0086】
本明細書に開示される組成物で治療することができる適切な遺伝子に基づいた疾患は、以下を含むが、限定されない:
(ミトコンドリア疾患):アルパース疾患;バース症候群;β-酸化欠損;カルニチン-アシルカルニチン欠損;カルニチン欠損;コエンザイムQ10欠損;複合体I欠損;複合体II欠損;複合体III欠損;複合体IV欠損;複合体V欠損;シトクロムcオキシダーゼ(COX)欠損、LHONレーバー遺伝性視神経萎縮症;MM−ミトコンドリアミオパチー;LIMM-致死小児性ミトコンドリアミオパチー;MMC-母系性筋疾患、及び心筋症;NARP-神経性の筋力低下、運動失調、及び色素性網膜炎;リー疾患;FICP-致死的小児性心筋症プラス、MELAS関連心筋症;MELAS-乳酸性アシドーシス、及び脳卒中様発症を伴うミトコンドリア脳筋症;LDYT-レーバー遺伝性視神経萎縮症、及びジストニア;MERRF-ミオクローヌス癲癇、及び赤色ぼろ筋線維;MHCM-母性遺伝肥大型心筋症;CPEO-慢性進行性外眼筋麻痺;KSS-カーンズ・セイヤー症候群;DM-真性糖尿病;DMDF真性糖尿病+聴覚障害;CIPO-筋疾患、及び眼筋麻痺を有する慢性腸偽性閉塞;DEAF-母性遺伝聴覚障害、又はアミノグリコシド誘導性聴覚障害;PEM-進行性脳症;SNHL-感音難聴;脳筋症;ミトコンドリア細胞変性;拡張型心筋症;GER-胃腸還流;DEMCHO-痴呆症、及び舞踏病;AMDF-運動失調、ミオクローヌス;運動不耐性;ESOC癲癇、脳卒中、視神経萎縮、及び認知の減退;FBSN家族性両側性線条体壊死;FSGS巣状糸球体硬化症;LIMM致死小児性のミトコンドリアミオパチー;MDM筋疾患、及び真性糖尿病;MEPRミオクローヌス癲癇、及び精神運動の後退;MERME MERRF/MELAS重複疾患;MHCM母系遺伝肥大型心筋症;MICM母系遺伝心筋症;MILS母系遺伝リー症候群;ミトコンドリア脳心筋症;多システムミトコンドリア障害(筋疾患、脳症、失明、難聴、末梢神経障害);NAION非動脈炎性前方虚血性視神経症;NIDDMインスリン非依存性真性糖尿病;PEM進行性脳症;PME進行性ミオクローヌスてんかん;RTT レット症候群;SIDS乳児突然死症候群;MIDD母性遺伝糖尿病、及び聴覚障害;及びMODY若者の中高年性糖尿病。
【0087】
(核疾患):筋ジストロフィー、エリス・ヴァンクレベルト症候群、マルファン症候群、筋強直性ジストロフィー、脊髄筋萎縮、軟骨異形成、筋萎縮性側索硬化症、シャルコー‐マリー‐ツース症候群、歓楽境症候群、ダイアストロフィー性骨異形成症、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、エリス・ヴァンクレベルト症候群、進行性骨化性線維形成異常症、アルツハイマー病、アンジェルマン症候群、癲癇、本態性振戦、脆弱エックス症候群、フリードライヒ運動失調症、ハンチントン疾患、ニーマンピック病、パーキンソン病、プラダー・ウィリー症候群、レット症候群、脊髄小脳萎縮、ウィリアムス症候群、血管拡張性失調症、貧血、鎌形赤血球、バーキット-リンパ種、ゴーシュ病、血友病、白血病、発作性夜間ヘモグロビン尿症、ポルフィリン症、地中海貧血症、クローン病、アルファ-1-抗トリプシン欠損、嚢胞性線維症、聴覚障害、ペンドレッド症候群、緑内障、脈絡膜及び網膜の渦巻形の萎縮、副腎過形成、アドレノロイコジストロフィ、コケイン症候群、長いQT症候群、高IgMを有する免疫不全症、アルポート症候群、エリス・ヴァンクレベルト症候群、進行性骨化性線維形成異常症、ワーデンブルグ症候群、ウェルナー症候群。
【0088】
(感染性疾患):ウイルス性-エイズ、エイズ関連症候群、水ぼうそう(水痘)、感冒、サイトメガロウイルス感染、コロラドダニ熱、デング熱、エボラ出血熱、おたふくかぜ、流感、手足口病、肝炎-単純ヘルペス、帯状ヘルペス、HPV、インフルエンザ、ラッサ熱、麻疹、マールブルグ出血熱、感染性単核症、耳下腺炎、灰白髄炎、進行性多病巣性白血球脳症、狂犬病、風疹、SARS、痘瘡(天然痘)、ウイルス性脳炎、ウイルス性胃腸炎、ウイルス性髄膜炎、ウイルス性肺炎、西ナイル疾患-黄熱;細菌性-炭疽菌、細菌性髄膜炎、ブルセラ症、腺ペスト、カンピロバクター感染症、猫ひっかき病、コレラ、ジフテリア、発疹チフス、りん疾、ハンセン病、レジオネラ症、らい、レプトスピラ症、リステリア症、ライム病、類鼻疽、MRSA感染、ノカルジア症、百日咳、肺炎球菌性肺炎、オウム病、Q熱、ロッキー山紅斑熱、又はRMSF、サルモネラ症、猩紅熱、細菌性赤痢、梅毒、破傷風、トラコーマ、結核、野兎病、腸チフス、チフス、百日咳; 寄生性-アフリカトリパノソーマ症、アメーバ症、蛔虫症、バベシア症、シャーガス病、肝ジストマ症、クリプトスポリジウム症、嚢虫症、裂頭条虫症、メジナ虫症、包虫症、蟯虫症、肝蛭症、肥大吸虫症、糸状虫感染症、自由生活アメーバ性感染、ジアルジア症、顎口虫症、膜様条虫症、イソスポラ症、カラアザール、リーシュマニア症、マラリア、メタゴニムス症、ハエ蛆症、回旋糸状虫症、シラミ寄生症、蟯虫感染、疥癬、住血吸虫病、テニア症、トキソカラ症、トキソプラズマ症、旋毛虫症、旋毛虫症、鞭虫症、トリパノソーマ症。
【0089】
(癌):乳癌、及び卵巣癌、バーキットリンパ種、慢性骨髄性白血病、大腸癌、肺癌、悪性メラノーマ、多発性内分泌腫瘍、神経線維腫症、p53リーフラメニ症候群、膵臓癌、前立腺癌、網膜芽細胞腫、フォンヒッペル-リンダウ症候群、多嚢胞腎疾患、結節硬化。
【0090】
(代謝性障害):アドレノロイコジストロフィ、アテローム硬化、ベスト病、ゴーシュ病、グルコースガラクトース吸収不良、渦巻形萎縮、若年型糖尿病、肥満、発作性夜間ヘモグロビン尿症、フェニールケトン尿症、レフサム病、タンジール病、テイ・サックス病、アドレノロイコジストロフィ、2型糖尿病、ゴーシュ病、遺伝性ヘモクロマトーシス、レッシューナイハン症候群、メープルシロップ尿症、メンケス症候群、ニーマンピック病、膵臓癌、プラダー-ウィリ症候群、ポルフィリン症、レフサム病、タンジール病、ウィルソン病、ツェルウェガー症候群、早老、SCID。
【0091】
(自己免疫疾患):自己免疫多腺性症候群、狼蒼、I型糖尿病、強皮症、多発性硬化症、クローン病、慢性活動性肝炎、慢性関節リウマチ、グレーブス病、重症筋無力症、筋炎、抗リン脂質症候群(APS)、ブドウ膜炎、多発筋炎、レイノー現象、及び脱髄性神経障害、並びにリウマチ性多筋痛、側頭動脈炎、シェーグレン症候群、ベーチェット病、チャーグ‐ストラウス症候群、及び高安動脈炎などのまれな障害。
【0092】
(炎症性障害):脱毛症、ダイアストロフィー性骨異形成症、エリス・ヴァンクレベルト症候群、喘息、骨関節炎、慢性関節リウマチ、及び脊椎関節症を含む関節炎。
【0093】
(年齢関連性障害):アルツハイマー病、パーキンソン病、アテローム硬化、年齢関連性黄斑部変性、年齢関連性骨粗鬆症。
【0094】
また、開示された方法、及び組成物は、ヒト、又はヒト以外の動物に対する組織再生/再生医療、幹細胞移植、認知の増強、性能強化、及び美容の変化において、年齢に関連する症候群を治療し、管理し、又は減少させるために使用することができる。
【0095】
(9. 肥満、及び食料消費)
本開示の実施態様は、肥満を減少させる、及び/又は食物摂取を増加させることに適用できる組成物、並びに方法を提供する。例えば、50匹のマウス(25匹の媒体対照、及びMTD-TFAMで処理した25匹)を、3月の時間のインターバルにわたって、食物摂取、及び重量についてモニターし、その間に生理食塩水、又はMTD-TFAMをそれぞれ毎月一回合計3回、IP注射した。研究の開始時のマウス重量は、変化しなかった。食物摂取は、毎週ベースで測定した。研究の終結時に、MTD-TFAM処理したマウスは、研究の期間にわたって、対照動物より43%多くの食物を消費していたにもかかわらず(p=.037)、統計学的に有意な体重減少を有した(p=.0002)(図4、及び5)。図5において、50匹のマウス(25匹の媒体対照、及びMTD-TFAMで処理した25匹)を、3月の時間インターバルにわたって食物摂取についてモニターし、その間に生理食塩水、又はMTD-TFAMをそれぞれ毎月一回合計3回、IP注射した。研究の開始時のマウス重量は、変化しなかった。食物摂取は、毎週ベースで測定した。研究の終結時に、MTD-TFAM処理したマウスは、研究の期間にわたって、対照動物より統計学的に有意な43%の食物摂取の増加を有した(p=.037)。従って、開示された方法は、肥満、及び/又は食物摂取の増加を治療するために使用することができる。
【0096】
(10. 投与)
本明細書に提供される組成物は、宿主に生理的に許容し得る担体において投与しもよい。投与の好ましい方法は、全身性、又は細胞への直接の投与を含む。組成物は、タンパク質療法についての技術分野において一般に公知であるように、細胞、又は患者に投与することができる。一つの実施態様は、ポリヌクレオチド結合ドメイン、ターゲティングドメイン、及びタンパク質形質導入ドメインを有する組換えポリペプチド、並びに医薬として許容し得る担体、又は賦形剤から本質的になる医薬組成物を提供する。好ましくは、ポリヌクレオチド結合ドメインは、ポリヌクレオチドを結合することができるTFAM、又はその断片を含む。組成物は、ミトコンドリア代謝を増加させるための組換えポリペプチドの有効量を含む。
【0097】
修飾された複合組成物は、医薬として許容し得る担体媒体との混合物中に組み合わせることができる。治療的製剤は、凍結乾燥された製剤、又は水性溶液の形態で、随意の生理的に許容し得る担体、賦形剤、又は安定剤(レミントンの医薬品化学、第16版(Remington's Pharmaceutical Sciences 16th edition)、Osol, A.編(1980))と所望の純度を有する活性成分を混合することによって、貯蔵のために調製される。許容し得る担体、賦形剤、又は安定剤は、使用される投薬量、及び濃度にてレシピエントに無毒性であり、リン酸、クエン酸、及びその他の有機酸などの緩衝液;アスコルビン酸を含む抗酸化剤;低分子量(約10残基未満の)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、又は免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性重合体、グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン、又はリジンなどのアミノ酸;グルコース、マンノース又はデキストリンを含む単糖類、二糖、及びその他の炭水化物;EDTAなどのキレート化剤;マンニトール、又はソルビトールなどの糖アルコール;ナトリウムなどの塩形成対イオン;及び/又はTween(登録商標)、Pluronic(登録商標)、又はPEGなどの非イオン性界面活性剤を含む。
【0098】
本開示の組成物は、非経口的に投与することができる。本明細書に使用される、「非経口投与」は、対象の組織の物理的な裂け目を介して医薬組成物を投与することによって特徴づけられる。非経口的投与は、注射による、外科的な切開を介する、又は組織を貫通する非外科的創傷等を介して投与することを含む。特に、非経口的投与は、皮下、腹腔内、静脈内、動脈内、筋肉内、胸骨内注射、及び腎臓透析注入技術を含む。
【0099】
非経口的製剤は、滅菌水、又は無菌の等浸透圧性生理食塩水などの医薬として許容し得る担体と組み合わせた活性成分を含むことができる。このような製剤は、ボーラス投与のため、又は連続投与のために適した形態で調製され、パックされ、又は販売されてもよい。注射可能な製剤は、アンプルに、又は保存剤を含む複数投与量容器に調製され、パックされ、又は販売されてもよい。非経口的投与製剤は、懸濁液、溶液、油性、又は水性媒体中の乳剤、ペースト、再構成可能な乾燥(すなわち粉末、又は粒状)製剤、及び移植可能な持効性、又は生物分解可能な製剤を含む。このような製剤は、また、薬剤を懸濁し、安定化し、又は分散させることを含む1つ以上のさらなる成分含んでいてもよい。非経口的製剤は、無菌の注射可能な水性、若しくは油性懸濁液、又は溶液の形態で調製され、パックされ、又は販売されてもよい。非経口的製剤は、また、本明細書に記述された分散剤、湿潤剤、又は懸濁剤を含んでいてもよい。これらのタイプの製剤を調製するための方法は、公知である。無菌の注射可能な製剤は、水、1,3-ブタンジオール、リンゲル液、生理食塩水、及び合成のモノグリセリド、若しくはジグリセリドなどの不揮発性油などの無毒性で非経口的に許容し得る希釈剤、又は溶媒を使用して調製してもよい。その他の非経口的投与製剤は、微晶質形態、リポソーム型調製、及び生分解性ポリマー系を含む。持効性、又は移植ための組成物は、乳剤、イオン交換樹脂、やや溶けにくい重合体、及びやや溶けにくい塩などの医薬として許容し得る重合体、又は疎水性材料を含んでいてもよい。
【0100】
医薬組成物は、頬側製剤において調製され、パックされ、又は販売されてもよい。このような製剤は、公知の方法を使用して作られる錠剤、粉末、エアロゾル、噴霧溶液、懸濁液、又はトローチ剤の形態でもよく、経口的に溶解性、若しくは分解可能な組成物、及び/又は本明細書に記述される1つ以上のさらなる成分を含む、製剤のバランスをとった約0.1%〜約20%(w/w)の活性成分を含んでいてもよい。好ましくは、粉末製剤、又はエアロゾル化製剤は、分散するときに、約0.1ナノメートル〜約200ナノメートルの範囲の平均的粒子、又は液滴サイズを有する。
【0101】
本明細書に使用される、「さらなる成分」は、以下の1つ以上を含む:賦形剤、界面活性剤、分散剤、不活性な希釈剤、造粒剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、甘味料薬剤、香味料薬剤、着色剤、防腐剤、生理的に分解可能な組成物(例えば、ゼラチン)、水性媒体、水性溶媒、油性媒体、及び油性溶媒、懸濁剤、分散剤、湿潤剤、乳化剤、緩和薬、緩衝液、塩、糊料、充填剤、乳化剤、抗酸化剤、抗生物質、抗真菌薬剤、安定化剤、及び医薬として許容し得る重合体、又は疎水性材料。医薬組成物に含まれてもよいその他の「さらなる成分」は、公知である。適切なさらなる成分は、レミントンの医薬品化学(Remington's Pharmaceutical Sciences)、Mack Publishing Co., Genaro,編, Easton, Pa.(1985)に記述されている。
【0102】
本開示の医薬品組成物において、本明細書に開示された投薬量、及び所望の濃度の修飾されたベクターは、想像される特定の用途に依存して変化させてもよい。適切な投薬量、又は投与経路の決定は、当業者の技術の範囲内であろう。動物実験は、ヒト療法の有効な用量の決定のための信頼できる指針を提供する。有効な用量の種間スケーリングは、Mordenti, J.、及び Chappell, W.の文献、トキシコキネティクスおよび新たな薬物開発における、「トキシコキネティクスにおける種間スケーリングの使用」("The use of interspecies scaling in toxicokinetics" in Toxicokinetics and New Drug Development), Yacobiら編, Pergamon Press, New York 1989、pp. 42-96によって提示されている原理に従って行うことができる。
【実施例】
【0103】
(実施例1:組換え構築物)
11アルギニンからなる11アミノ酸タンパク質形質導入ドメイン(PTD)は、黄色ブドウ球菌からのプロテインAの抗体を結合する部分、ドメインBにインフレームでクローン化した。PTD-ドメインBコード配列は、TFAMコード配列の上流にタンデムにクローン化して、細菌発現ベクターにクローン化した。組換えタンパク質は、細菌において発現させて、単離した。精製したタンパク質を濃縮して、タンパク質濃度をBradfordアッセイ(Biorad)で評価した。精製したタンパク質をSDS-Pageで解析し、純度を検証した。
【0104】
好ましい実施態様において、組換えポリペプチドは、
【化12】

と少なくとも80、85、90、95、97、99、又は100%の配列同一性を有する。
【0105】
別の実施態様において、組換えポリペプチドは、
【化13】

と少なくとも80、85、90、95、97、99、又は100%の配列同一性を有する核酸によってコードされる。
【0106】
(実施例2:構築物配列データ)
PTD-PA-TFAM(PTD実線下線;プロテインA抗体を結合するドメインのタンデムドメインB二重下線;TFAMダッシュ下線)ペプチド長(332):
【化14】


【0107】
【表2】

【0108】
本明細書において参照される配列のための配列データは、当該技術分野において、例えばGenBankにおいて公知であり、これらの全体が本明細書に参照により組み込まれる。
【0109】
本開示の上記の実施態様、特に、任意の「好ましい」実施態様は、単に可能な実施実施態様であり、単に本開示の原理を明らかに理解するために記載されていることが強調されるべきである。多くの変異、及び修飾を、本開示の精神、及び原理から実質的に逸脱することのなく、本開示の上記の実施態様に行ってもよい。全てのこのような修飾、及び変異は、本明細書において、この開示、及び本開示の範囲内に含まれ、以下の特許請求の範囲によって保護されることが意図される。
【図1A−B】

【図1C】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象におけるミトコンドリア生物発生を増加させるための組換えタンパク質の使用であって、該組換えタンパク質は、ポリヌクレオチド結合ドメイン、タンパク質形質導入ドメイン、及びターゲティングドメインを含み、該組換えタンパク質は、該対象のミトコンドリア転写を増加させる、前記使用。
【請求項2】
前記ポリヌクレオチド結合ドメインがポリヌクレオチドに結合するミトコンドリア転写因子、又はその断片を含む、請求項1記載の使用。
【請求項3】
前記ミトコンドリア転写因子がポリヌクレオチドを結合するのに有効なTFAMの一部を含む、請求項2記載の使用。
【請求項4】
前記ターゲティングドメインが哺乳動物抗体のFc部分を結合するために十分な細菌プロテインAの一部を含む、請求項1記載の使用。
【請求項5】
前記細菌プロテインAの一部が細胞表面抗原に特異的な抗体に作動可能に連結されている、請求項4記載の使用。
【請求項6】
前記抗体が組換えタンパク質に対して標的細胞タイプ、又は細胞状態に対する指向性を提供する、請求項5記載の使用。
【請求項7】
前記ターゲティングドメインが表面活性物質タンパク質A、及びB、動脈壁結合ペプチド、アシアログリコプロテイン、合成ガラクトシル化されたリガンド、レクチン、抗CD 3、抗CD 5、ヒアルロン酸断片、スチール因子、抗CD117、EGF、EGFペプチド抗EGF-R、TGF-α、抗ErbB2、IgG、塩基性FGF、葉酸塩、マラリアスポロゾイト周囲タンパク質、抗HER2、インスリン、RGDペプチド、受容体関連タンパク質(RAP)、合成リガンド、マンノシル化、NGF由来合成ペプチド、抗体ChCE7、抗体OV-TL16 Fab'断片、抗PECAM抗体、抗分泌性成分、ペプチドリガンド、抗IgG、抗イディオタイプ、抗トロンボモジュリン、抗Tn、及びトランスフェリンからなる群から選択されるターゲティングシグナルに80〜100%の配列同一性を有するポリペプチドを含む、請求項1記載の使用。
【請求項8】
前記接触がインビトロ、又はインビボで行われる、請求項1記載の使用。
【請求項9】
前記ポリペプチドが前記ポリヌクレオチドを結合するのに有効なTFAMの一部を含む、請求項7記載の使用。
【請求項10】
前記組換えタンパク質が配列番号:18を含む、請求項1記載の使用。
【請求項11】
対象の体重を減少させるための組換えタンパク質の使用であって、該組換えタンパク質は、ポリヌクレオチド結合ドメイン、タンパク質形質導入ドメイン、及び対象に対するターゲティングドメインを含み、該組換えタンパク質は、該対象におけるミトコンドリア酸化的代謝を増加させる、前記使用。
【請求項12】
前記ポリヌクレオチド結合ドメインがポリヌクレオチドに結合するミトコンドリア転写因子、又はその断片を含む、請求項11記載の使用。
【請求項13】
前記ミトコンドリア転写因子がポリヌクレオチドを結合するのに有効なTFAMの一部を含む、請求項12記載の使用。
【請求項14】
前記ターゲティングドメインが哺乳動物抗体のFc部分を結合するために十分な細菌プロテインAの一部を含む、請求項11記載の使用。
【請求項15】
前記細菌プロテインAの一部が細胞表面抗原に特異的な抗体に作動可能に連結されている、請求項14記載の使用。
【請求項16】
前記抗体が組換えタンパク質に対して標的細胞タイプ、又は細胞状態に対する指向性を提供する、請求項15記載の使用。
【請求項17】
前記タンパク質が前記ポリヌクレオチドを結合するのに有効なTFAMの一部を含む、請求項16記載の使用。
【請求項18】
前記組換えポリペプチドが配列番号:18を含む、請求項11記載の使用。
【請求項19】
抗体結合ドメインに作動可能に連結されたタンパク質形質導入ドメインを含む融合ポリペプチドであって、該抗体結合ドメインは、ポリヌクレオチドに結合するのに有効なポリヌクレオチド結合ドメイン、又はその断片に作動可能に連結されている、前記融合ポリペプチド。
【請求項20】
配列番号:17のアミノ酸配列、又は保存的置換を含む配列番号:17のアミノ酸を含む、請求項19記載の融合ポリペプチド。
【請求項21】
抗体のFc領域、又はその抗原結合性断片を介して、請求項19記載の融合ポリペプチドに結合された抗体、又はその抗原結合性断片を含む組成物。
【請求項22】
前記融合ポリペプチドが配列番号:17のアミノ酸配列、又は保存的置換を含む配列番号:17のアミノ酸配列を含む、請求項21記載の組成物。

【図2】
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【図3A−B】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2012−505902(P2012−505902A)
【公表日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−532208(P2011−532208)
【出願日】平成21年10月14日(2009.10.14)
【国際出願番号】PCT/US2009/060652
【国際公開番号】WO2010/045335
【国際公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【出願人】(506135051)ゲンシア コーポレーション (3)
【Fターム(参考)】