説明

ミョウガの養液栽培装置

【課題】養液が停滞して発生する植物の病気を極減する。ミョウガ以外の植物を一緒に生育しながら、一緒に栽培する植物を理想的な環境で栽培する。
【解決手段】養液栽培装置は、培地4と、培地4の下に積層される根切りシート3と、根切りシート3の下に積層される保水シート5と、保水シート5の下に積層される下地フィルム2と、下地フィルム2の下に積層されて培地4を載せる基礎プレート1とを備える。基礎プレート1は、両側縁に沿って一対の側壁6を備え、側壁6から内側に離れて一対の側溝7を設け、側壁6と側溝7との間の上面を傾斜面8としている。培地4は、一対の側溝7間の中央上面12に配設される中央培地4Aと、この中央培地4Aの側部で傾斜面8の上に配設される側部培地4Bとに分離している。養液栽培装置は、側部培地4Bを透過する廃液を、傾斜面8から側溝7に向かって流し、側溝7から基礎プレート1の外部に排水する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミョウガを植え付けしている培地に養液を供給してミョウガを生育させるミョウガの養液栽培装置に関し、特にミョウガと一緒に、別の作物も栽培できるミョウガの養液栽培装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ミョウガを養液栽培する装置は開発されている。(特許文献1参照)
この公報に記載される栽培装置を図1に示す。この装置は、養液30を充填しているトレイ31に所定の厚さのロックウール32を敷き、ロックウール32の上に根切りシート33を積層して、根切りシート33の上に培地34を積層する。トレイ31の養液30は、ロックウール32の下部を浸漬して、根切りシート33を浸漬しないレベルにコントロールされる。
【0003】
この公報に記載される栽培装置は、生育させるミョウガ等の植物が病気になりやすく、また設備コストが非常に高価となる欠点がある。植物が病気になりやすいのは、トレイに養液を貯溜するので、これが汚れたり腐敗するからである。また、栽培装置が高価になるのは、養液を貯溜するためにトレイを水漏れしない構造とし、さらに、トレイには厚いロックウールを敷設し、さらに、このロックウールの下部のみを養液に浸漬するように、養液レベルを正確にコントロールするからである。
【0004】
植物の培地から速やかに養液を排水する栽培装置は開発されている。(特許文献2参照)
この公報に記載される栽培装置は、培地の底部に水分気化排出材を敷設している。水分気化排出材は、トレイの底に設けた貫通孔から外部に引き出されている。この水分気化排出材は不織布で、培地の水分を吸い取って外部に移行させる。水分気化排出材で外部に移行された水分は、気化して消失される。この栽培装置は、水分気化排出材で培地の水分を外部に排出する。
【0005】
この構造の栽培装置は、水分気化排出材で培地の水分を外部に移行させるが、培地底部の水分率は高くなって、この部分を水分率の低い状態にはできない。それは、培地の水分率が低くなるにしたがって、培地の水分が水分気化排出材に移行し難くなるからである。したがってこの培地では、種々の植物を病気から保護して元気に生育させるのが難しい欠点がある。
【特許文献1】特開平11−318244号公報
【特許文献2】特開平11−313565号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の第1の目的は、従来の栽培装置が有する以上の欠点を解決することを目的に開発されたもので、本発明の重要な目的は、養液が停滞して発生する植物の病気を極減することに加えて、設備コストを著しく低減できる養液栽培用の栽培装置を提供することにある。
【0007】
ところで、図1に示す栽培装置で栽培されるミョウガは、植え付けしてから収穫までに約半年もかかる。このため、植え付けしてから相当に長い期間は、収益のない状態で栽培し続ける必要がある。ミョウガに比較して速く収穫できる植物、たとえば豆類等の植物を一緒に栽培できるなら、ミョウガの収穫までの間に、豆等を収穫して収益を上げることができる。
【0008】
本発明の第2の目的は、他の植物を一緒に生育することができるミョウガの養液栽培装置を提供することにある。
【0009】
さらに、本発明の第3の目的は、ミョウガ以外の植物を一緒に生育しながら、一緒に栽培する植物を理想的な環境で栽培でき、しかも、ミョウガ以外の植物を栽培しながら、基礎プレートを強固にできるミョウガの養液栽培装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のミョウガの養液栽培装置は、前述の目的を達成するために以下の構成を備える。
ミョウガの養液栽培装置は、ミョウガの根を生育させる所定の厚さと幅を有する培地4と、この培地4の下に積層されて、培地4に植え付けされるミョウガの根が通過するのを阻止して水を通過させる根切りシート3と、この根切りシート3の下に積層されて、培地4に水を供給する保水シート5と、この保水シート5の下に積層している下地フィルム2と、さらに下地フィルム2の下に積層されて、培地4を載せる基礎プレート1とを備える。基礎プレート1は、プラスチックを発泡成形したものであって、両側縁に沿って上方に突出する一対の側壁6を一体的に成形して設けている。さらに、基礎プレート1は、一対の側壁6から内側に離れた位置に、側壁6に沿って一対の側溝7を設けており、さらに側壁6と側溝7との間の上面を、側溝7に向かって下り勾配に傾斜させてなる傾斜面8としている。培地4は、基礎プレート1に設けている一対の側溝7間の中央上面12に配設される中央培地4Aと、この中央培地4Aの側部であって傾斜面8の上に配設される側部培地4Bとに分離している。この養液栽培装置は、培地4に供給されて側部培地4Bを透過する廃液を、傾斜面8から側溝7に向かって流し、側溝7から基礎プレート1の外部に排水する。
【0011】
本発明のミョウガの養液栽培装置は、保水シート5を、無機繊維を方向性なく立体的に集合している保水マット、又は、繊維を方向性なく集合して繊維を交点で結合している不織布とすることができる。
【0012】
本発明のミョウガの養液栽培装置は、基礎プレート1の中央上面12を側溝7に向かって下り勾配に傾斜させることができる。
【0013】
本発明のミョウガの養液栽培装置は、基礎プレート1の側溝7の間に中央溝11を設けて、中央上面12を中央溝11と側溝7のいずれか又は両方に向かって下り勾配に傾斜させることができる。
【0014】
本発明のミョウガの養液栽培装置は、側部培地4Bを、ミョウガ以外の植物を植え付けする培地とすることができる。
【0015】
本発明のミョウガの養液栽培装置は、基礎プレート1を複数の区画プレート1Aに分割して、隣接して配置される区画プレート1Aを嵌着構造で連結することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明のミョウガの養液栽培装置は、養液が停滞して発生する植物の病気を極減できる特長がある。それは、本発明の養液栽培装置が、培地を載せる基礎プレートの両側縁に沿って上方に突出する一対の側壁を設けると共に、一対の側壁から内側に離れた位置に、側壁に沿って一対の側溝を設けており、さらに側壁と側溝との間の上面を、側溝に向かって下り勾配の傾斜面として、側部培地を透過する廃液を傾斜面から側溝に向かって流して、側溝から基礎プレートの外部に排水するからである。この構造の養液栽培装置は、培地と根切りシートを透過した養液を、従来の養液栽培装置のように貯溜することなく、速やかに流して基礎プレートから排水するので、停滞する養液に起因する植物の病気を極減できる。
【0017】
とくに、本発明の養液栽培装置は、培地を、一対の側溝間の中央上面に配設される中央培地と、この中央培地の側部であって傾斜面の上に配設される側部培地とに分離しているので、側部培地を透過する廃液を、基礎プレートの側縁部に停滞させることなく、傾斜面から側溝に向かって流して速やかに排水させて、側部培地に植え付けされる植物の生育環境をより理想的な環境に保持できる。
【0018】
さらに、本発明の養液栽培装置は、従来のように水漏れしない構造を必要とせず、また貯溜された養液レベルをコントロールするための機構を必要としないので、設備コストを著しく低減できる特長もある。とくに、本発明の養液栽培装置は、基礎プレートにプラスチックを発泡成形したものを使用するので安価に多量生産できる特長がある。
【0019】
さらに、本発明の養液栽培装置は、根切りシートの下に積層した保水シートで、培地と根切りシートを透過する水を保水するので、培地が乾燥するときに、保水シートから培地に水分を供給して、培地の過乾燥を防止しながら植物を生育できる特長がある。
【0020】
本発明の請求項3の養液栽培装置は、基礎プレートの中央上面を側溝に向かって下り勾配に傾斜させているので、中央培地を透過して中央上面の上側に排水される廃液を、側溝に向かって速やかに流して、側溝から基礎プレートの外部に排水できる。
【0021】
本発明の請求項4の養液栽培装置は、基礎プレートの側溝の間に中央溝を設けているので、中央培地を透過して中央上面の上側に排水される廃液をより効率よく排水できる。とくに、この養液栽培装置は、中央上面を中央溝と側溝のいずれか又は両方に向かって下り勾配に傾斜させているので、中央上面の上側に排水される廃液を中央溝あるいは側溝に向かって速やかに流して排水できる。
【0022】
本発明の請求項5の養液栽培装置は、側部培地にミョウガ以外の植物を植え付けするので、ミョウガ以外の植物を一緒に生育しながら、一緒に栽培する植物を理想的な環境で栽培できる。とくに、この養液栽培装置は、中央培地に植え付けたミョウガの収穫までの間に、側部培地に植え付けた作物を収穫して収益を上げることができる。
【0023】
さらにまた、本発明の請求項6の養液栽培装置は、基礎プレートを複数の区画プレートに分割して、隣接して配置される区画プレートを嵌着構造で連結しているので、所定の大きさの区画プレートを、簡単に連結して細長い基礎プレートを実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施例は、本発明の技術思想を具体化するためのミョウガの養液栽培装置を例示するものであって、本発明はミョウガの養液栽培装置を以下のものに特定しない。
【0025】
さらに、この明細書は、特許請求の範囲を理解しやすいように、実施例に示される部材に対応する番号を、「特許請求の範囲」および「課題を解決するための手段の欄」に示される部材に付記している。ただ、特許請求の範囲に示される部材を、実施例の部材に特定するものでは決してない。
【0026】
図2と図3に示すミョウガの養液栽培装置は、ミョウガの根を生育させる所定の厚さと幅を有する培地4と、この培地4の下に積層されて、培地4に植え付けされるミョウガの根が通過するのを阻止して水を通過させる根切りシート3と、この根切りシート3の下に積層されて、培地4に水を供給する保水シート5と、この保水シート5の下に積層している下地フィルム2と、さらに下地フィルム2の下に積層されて、培地4を載せる基礎プレート1とを備える。これらの養液栽培装置は、ミョウガを植え付けている培地4に給水器25で養液20を供給してミョウガを生育させる。
【0027】
基礎プレート1は、図4ないし図11に示すように、両側縁に沿って上方に突出する一対の側壁6を一体的に成形して設けている。この側壁6は、基礎プレート1の上に載せられる培地4や給水管23から供給される養液20が、基礎プレート1の外側にこぼれ落ちるのを防止する。したがって、側壁6の高さは、培地4や養液20が外にこぼれるのを防止できる高さに成形する。側壁6の高さは、1cm以上、好ましくは2cm以上、さらに好ましくは3cm以上とする。側壁を高くするほど、培地や養液が外にこぼれるのを確実に防止できる。ただ、高い側壁は強度が低下して壊れやすくなる。したがって、側壁6は、10cmよりも低く、好ましくは8cm以下とする。側壁6は、その厚さを厚くしての強度を高めることができる。ただ、側壁6を厚くすると、基礎プレート1全体の幅が広くなる。したがって、側壁6は、その厚さを1〜5cm、好ましくは2〜3cmとして、高さを1〜10cm、好ましくは3〜8cm、より好ましくは、4〜7cmとする。
【0028】
さらに、基礎プレート1は、一対の側壁6から内側に離れた位置に、側壁6に沿って一対の側溝7を設けている。側溝7は、図9に示すように、基礎プレート1の両端面まで延長して設けている。基礎プレート1は、培地4を透過する廃液をこの側溝7に案内し、この側溝7から基礎プレート1の外部に排水する。側溝7は、廃液をスムーズに流すことができる幅と深さを有する。側溝7は、幅が狭すぎても、深さが浅すぎても、廃液に含まれる異物が詰まりやすくなり、廃液をスムーズに排水できない。このため、側溝7の幅と深さは、たとえば1cm以上、好ましくは2cm以上とする。ただ、基礎プレートは、側溝の幅を広くして、深さを深くすると全体の強度が低下する。このため、側溝7の幅と深さは、たとえば7cmよりも小さく、好ましくは6cm以下とする。側溝7の幅と深さは、廃液の詰まりを少なく、かつ培地4を水平に保持することから、好ましくは3〜5cmとする。
【0029】
さらに、基礎プレート1は、側壁6と側溝7との間の上面を、側溝7に向かって下り勾配に傾斜させてなる傾斜面8としている。この基礎プレート1は、傾斜面8の上方に配設される培地4を透過した廃液を、傾斜面8から側溝7に向かって流して排水する。すなわち、この基礎プレート1は、側壁6の近傍において培地4を通過する廃液を、側壁6のふもとのコーナー部に停滞させることなく速やかに側溝7に向かって流下させることができる。また、この部分を傾斜面8とする基礎プレート1は、側壁6との連結部分である側縁プレート部9を側壁6に向かって次第に厚く成形できるので、側縁プレート部9と側壁6との連結強度を高くできる特長もある。
【0030】
さらに、図に示す基礎プレート1は、側壁5と傾斜面8の底面側に位置して、下方に突出する複数列の補強リブ10を設けている。補強リブ10は、側壁6に対して垂直な方向に形成されており、基礎プレート1の底面側に所定の間隔で一体的に成形して設けている。この補強リブ10は、側縁プレート部9と側壁6とを下側から支持してこれらを補強しており、この部分が変形したり破壊されるのを防止している。
【0031】
さらに、基礎プレート1は、一対の側溝7の間に中央溝11を設けている。中央溝11は、一対の側溝7の中間に位置して、側溝7と平行に設けている。この中央溝11も、基礎プレート1の両端面まで延長して設けている。この中央溝11は、基礎プレート1の中央上面12の上方に配設される培地4を透過する廃液の一部を案内して効率よく排水する。この中央溝11の幅と深さも、前述の側溝7と同じ範囲とすることができる。
【0032】
さらに、図に示す基礎プレート1は、一対の側溝7の間の中央上面12を、側溝7に向かって下り勾配に傾斜させている。この構造は、中央上面12の上方に配設される培地4を透過する廃液を、両側の側溝7に向かって速やかに流下させて排水できる特長がある。ただ、基礎プレートは、中央上面を、中央溝に向かって下り勾配に傾斜させることも、側溝と中央溝の両方に向かって下り勾配に傾斜させることもできる。
【0033】
さらに、基礎プレート1は、一対の側溝7と中央溝11とを連結溝13で連結している。連結溝13は、一対の側溝7を連結して設けた溝で、中央溝11を横断して、中央溝11と垂直に交差している。この連結溝13は、中央溝11を流れる廃液を側溝7に流して排水する。また、連結溝11は、基礎プレート1の中央上面12の上方に配設される培地4を透過する廃液の一部を案内して排水するはたらきもある。この連結溝13の幅と深さも、前述の側溝7と同じ範囲とすることができる。
【0034】
さらに、図8に示す連結溝13は、中央溝11から両側の側溝7に向かって、底面を下り勾配に傾斜させている。この構造の連結溝13は、中央溝11を流れる廃液を、速やかに側溝7に向かって流下させることができる。ただ、連結溝は、一方の側溝から他方の側溝に向かって、底面を下り勾配に傾斜させることもできる。この構造は、一方の側溝と中央溝を流れる廃液を、他方の側溝に流下させて排水する。
【0035】
さらに、基礎プレート1は、側溝7に流れ込んだ廃液を基礎プレート1の外部に排水する排水孔14を設けている。図4に示す基礎プレート1は、排水孔14を、一方の側溝7の中央部に設けている。排水孔14は、図8に示すように、基礎プレート1の底面を貫通する貫通孔で、側溝7に流れ込んだ廃液を通過させて外部に排水する。基礎プレートは、図示しないが、側溝の底面を排水孔に向かって下り勾配に傾斜させて、側溝を流れる廃液を速やかに排水孔に流すことができる。
【0036】
以上の構造の基礎プレート1は、プラスチックを発泡成形して製作される。この基礎プレート1は安価に多量生産できる。プラスチック発泡体で製作される基礎プレート1は、表面に非発泡層を設けて、廃液の内部への浸透を阻止し、あるいは独立気泡に発泡させて、廃液の内部への浸透を阻止することができる。ただ、基礎プレートは、上面に敷設される非透水シートの下地フィルムで、廃液が基礎プレートに浸透するのを防止できるので、基礎プレートを完全な防水構造とする必要はない。プラスチック発泡体の基礎プレート1は、発泡スチロールで製作して、とくに安価に多量生産できる。ただ、基礎プレートは、他のプラスチック発泡体、たとえば塩化ビニル発泡体、EVA発泡体、ウレタン発泡体等で製造することもできる。
【0037】
さらに、図の基礎プレート1は、複数の区画プレート1Aに分割して、隣接して配置する区画プレート1Aを嵌着構造で連結する構造としている。この基礎プレート1は、所定の大きさの区画プレート1Aを並べて畝のように細長く連結できる。区画プレート1Aは、隣接縁に互いに嵌着できる突出部15と凹部16とを設けている。この基礎プレート1は、図11に示すように、突出部15を凹部16に入れて、隣接する区画プレート1Aを定位置に連結できる。養液栽培装置は、基礎プレート1の上に非透水シートの下地フィルム2を敷設するので、区画プレート1Aを、連結部から水が漏れないように防水構造で連結する必要はない。上に敷設している下地フィルム2で、廃液が基礎プレート1の上面に浸透しないようにしながら集めることができるからである。
【0038】
下地フィルム2は、基礎プレート1の上に敷設している。この下地フィルム2は、上側に配設される培地4、根切りシート3及び保水シート5と、下側に配設されると基礎プレート1とを区画している。下地フィルム2は非透水シートで、培地4を通過した廃液がこれを透過して、基礎プレート1まで浸透するのを防止している。下地フィルム2は、基礎プレート1の外形よりも大きく、両側の側壁6の外側面まで延長して配設される。側壁6と下地フィルム2の間から廃液が浸入するのを防止するためである。
【0039】
下地フィルム2は、基礎プレート1の上面に沿う状態で敷設される。側溝7や中央溝11に敷設される下地フィルム2は、図2と図3に示すように、その内面に沿って敷設される。側溝7や中央溝11の内面に沿って敷設される下地フィルム2は、その内側に形成される溝内を廃液が流れる。したがって、本明細書において、「側溝や中央溝を廃液が流れる」とは、側溝や中央溝の内側に直接に廃液が流れるのではなく、側溝や中央溝の内側に敷設される下地フィルムの内側を廃液が流れることを意味するものとする。
【0040】
下地フィルム2は、プラスチックフィルムからなる非透水シートである。プラスチックフィルムである非透水シートの下地フィルム2は、ポリエチレンフィルムが適している。ただ、この下地フィルムのプラスチックフィルムには、塩化ビニルフィルムも使用できる。さらに、本発明の養液栽培装置は、非透水シートである下地フィルムを、プラスチックフィルムに特定しない。非透水シートである下地フィルムには、たとえば表面を防水加工した不織布や布等も使用できるからである。不織布や布で構成される下地フィルムは、プラスチックフィルムに比べて破れ難く、また熱に強い特長がある。
【0041】
保水シート5は、基礎プレート1の上面に位置して、下地フィルム2の上に敷設している。すなわち、保水シート5は、下地フィルム2と根切りシート3の間に配設している。この保水シート5は、培地4と根切りシート3を透過した廃液を吸水して保水する。保水シート5は、無機繊維を方向性なく立体的に集合している保水マット、繊維を方向性なく集合して繊維を交点で結合している不織布、所定の厚さのロックウール、織布、耐水性のある紙等が使用できる。図2に示す養液栽培装置は、保水シート5を保水マットとし、図3に示す養液栽培装置は、保水シート5をロックウールとしている。これらの養液栽培装置は、保水シート5に水分を保水するので、培地4が乾燥するときに、保水する水分を根切りシート3に透過させて、培地4に供給する。保水シート5の水分は、気化して培地4に供給され、あるいは根切りシート3を透過して培地4に浸透して補給される。したがって、これらの養液栽培装置は、培地4の過乾燥を防止しながら植物を生育できる特長がある。
【0042】
根切りシート3は、防根シートとも呼ばれるシートで、すでに市販されているものを使用する。根切りシート3は、細繊維を立体的に集合した不織布が使用できる。また、微細な貫通孔を無数に設けているプラスチックフィルムも根切りシート3として使用できる。さらに、根切りシート3は、水を透過させて植物の根が成長して通過するのを阻止できる全てのシートを使用することができる。
【0043】
根切りシート3は、培地4の下に積層されて、培地4に植え付けしている植物の根が通過するのを阻止する。図の根切りシート3は、培地4と保水シート5との間に配設されており、植物の根が伸びて保水シート5や基礎プレート1の溝に侵入するのを阻止する。植物の根が保水シート5や基礎プレート1の溝に侵入すると、根が廃液に接触して病気になるからである。したがって、根切りシート3は、好ましくは、図2と図3に示すように、基礎プレート1の上面全面に配設される。ただ、基礎プレートの上面の全面でなく、一部に培地を載せて植物を生育させる場合、必ずしも基礎プレートの全面に根切りシートを配設する必要はない。図の根切りシート3は、保水シート5の上に水平に敷設して、基礎プレート1の側壁6の両側から下方に垂らしている。この養液栽培装置は、植物の根や培地4が根切りシート3と下地フィルム2の間に侵入するのを確実に防止できる。
【0044】
培地4は、供給される水分を保水する保水性と、過剰な水分を排水する排水性とが要求される。図の培地4は、所定の厚さのマット状で、根切りシート3の上に載せている。培地4は、生育させる植物に最適なものが選択され、たとえばミョウガの場合は、ヤシガラやバーク等の有機物をプレスして、所定の厚さのマット状に固化したものが使用される。この培地4でミョウガを生育させる場合、たとえば長さを1m、幅を30cm、養液を供給する状態での厚さを約12cmとするものを使用する。ただ、培地には、植物の生育に適した保水性と排水性のある全てのもの、たとえば有機物や無機物を単独であるいは混合したものが使用しできる。無機物である培地は、たとえば、シリカやアルミナを無数の空隙がある状態に焼結した粒体やロックウール等が使用できる。
【0045】
さらに、培地4は、基礎プレート1に設けている一対の側溝7間の中央上面に配設される中央培地4Aと、この中央培地4Aの側部であって傾斜面8の上に配設される側部培地4Bとに分離している。この養液栽培装置は、中央培地4Aにミョウガを植え付けし、側部培地4Bにミョウガ以外の植物を植え付けして栽培できる。養液栽培装置は、たとえば、側部培地4Bに豆類やキュウリ等の野菜のように、ミョウガに比較して速く収穫できる植物を植え付けることができる。この養液栽培装置は、中央培地4Aに植え付けたミョウガの収穫までの間に、側部培地4Bに植え付けた作物を収穫して収益を上げることができる。とくに、この養液栽培装置は、側部培地4Bを透過する廃液を、基礎プレート1の側縁部に停滞させることなく、傾斜面8から側溝7に向かって流して速やかに排水できるので、側部培地4Bに植え付けされる植物の生育環境を理想的な環境に保持できる。
【0046】
さらに、図2と図3に示す養液栽培装置は、基礎プレート1の上面のほぼ全面にわたって1枚の保水シート5を配設しているが、養液栽培装置は、中央培地の下側と側部培地の下側とに、保水率の異なる保水シートをそれぞれ配設することもできる。たとえば、中央培地の下側には保水率の高い保水シートを配設して過乾燥を防止しながら、側部培地の下側には保水率の低い保水シートを配設して優れた排水性を実現することもできる。すなわち、中央培地の下側と側部培地の下側とに配設される保水シートは、各々の培地に植え付けされる植物の植生に最適なものが使用できる。さらに、保水シートは、必ずしも基礎プレートの上面の全面にわたって配設する必要はなく、たとえば、保水シートを中央培地の下側にのみ配設して、側部培地の下側の保水シートを省略することもできる。
【0047】
以上の養液栽培装置は、水平栽培台26の上に水平に配置される。図2と図3に示す水平栽培台26は、地面から上に離して配置している載せ台である。このように、載せ台に載置される養液栽培装置は、排水孔14から外部に排水される廃液を自然に流下させて効率よく回収できる特長がある。ただ、水平栽培台は、必ずしも地面から離した載せ台とする必要はなく、水平栽培台を露地として、養液栽培装置を直接に、露地に載置することもできる。
【0048】
図の養液栽培装置は、植物を植え付けている培地4に、給水器25で養液20を供給している。給水器25は、図に示すように、養液20を貯溜するタンク21と、このタンク21内の養液20を吸い上げて移送するポンプ22と、このポンプ22から供給される養液20を培地4に散水する給水管23とを備える。この構造の給水器25は、ポンプ22を連続運転して植物に定量の養液20を連続供給し、あるいは、ポンプ22の運転を制御部24で制御して、所定量の養液20を所定の時間間隔で植物に供給する。植物に供給される養液20は、培地4と根切りシート5とを透過して、一部は保水シート5に吸収され、残りは廃液として側溝7に流入されて外部に排水される。側溝7から外部に排水される廃液は、図に示すように、回収されて給水器25のタンク21に環流される。図に示す給水器25は、タンク21に環流される廃液を、給水器25を介して再び培地4に供給する構造としているが、回収した廃液は、給水器25のタンク21に環流させることなく、給水器とは別の回収用のタンクに集めることもできる。
【0049】
植物に供給される養液20は、水に肥料や薬剤を添加した溶液である。したがって、培地4と根切りシート3を透過した廃液が、露地に排水されるのは好ましくない。それは、廃液に含まれる成分によって露地の土壌を汚染し、あるいは、雑草や細菌等の繁殖を促進するおそれがあるからである。このように、基礎プレートから外部に排水される廃液を回収する養液栽培装置は、廃液が露地に浸透するのを防止して、理想的な環境で植物を栽培できる特長がある。
【0050】
回収された廃液は、廃棄され、あるいは再び培地に供給される。回収されて再び培地4に供給される廃液は、必要な肥料を添加して所定の肥料濃度に調整される。ただ、回収された廃液は、肥料濃度を調整することなく、水分を補給する目的で培地4に供給することもできる。回収した廃液を再び培地4に供給する装置は、水を有効に利用して水の消費量を少なくできる。また、廃液には肥料も含有されているので、廃液を再び培地に供給する装置は、ランニングコストを低減できる特長もある。さらにまた、肥料を含む廃液を周囲に排水しない特徴もある。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】従来の養液栽培装置の構成を示す縦断面図である。
【図2】本発明の一実施例にかかるミョウガの養液栽培装置の概略断面図である。
【図3】本発明の他の実施例にかかるミョウガの養液栽培装置の概略断面図である。
【図4】基礎プレートの平面図である。
【図5】図4に示す基礎プレートの底面図である。
【図6】図4に示す基礎プレートの正面図である。
【図7】図4に示す基礎プレートのA−A線断面図である。
【図8】図4に示す基礎プレートのB−B線断面図である。
【図9】図4に示す基礎プレートのC−C線断面図である。
【図10】図4に示す基礎プレートのD−D線断面図である。
【図11】区画プレートの連結構造を示す側面図である。
【符号の説明】
【0052】
1…基礎プレート 1A…区画プレート
2…下地フィルム
3…根切りシート
4…培地 4A…中央培地
4B…側部培地
5…保水シート
6…側壁
7…側溝
8…傾斜面
9…側縁プレート部
10…補強リブ
11…中央溝
12…中央上面
13…連結溝
14…排水孔
15…突出部
16…凹部
20…養液
21…タンク
22…ポンプ
23…給水管
24…制御部
25…給水器
26…水平栽培台
30…養液
31…トレイ
32…ロックウール
33…根切りシート
34…培地

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミョウガの根を生育させる所定の厚さと幅を有する培地(4)と、この培地(4)の下に積層されて、培地(4)に植え付けされるミョウガの根が通過するのを阻止して水を通過させる根切りシート(3)と、この根切りシート(3)の下に積層されて、培地(4)に水を供給する保水シート(5)と、この保水シート(5)の下に積層している下地フィルム(2)と、さらに下地フィルム(2)の下に積層されて、培地(4)を載せる基礎プレート(1)とを備えるミョウガの養液栽培装置であって、
基礎プレート(1)はプラスチックを発泡成形したものであって、両側縁に沿って上方に突出する一対の側壁(6)を一体的に成形して設けており、さらに一対の側壁(6)から内側に離れた位置には、側壁(6)に沿って一対の側溝(7)を設けており、さらにまた側壁(6)と側溝(7)との間の上面を、側溝(7)に向かって下り勾配に傾斜させてなる傾斜面(8)としており、
培地(4)は、基礎プレート(1)に設けている一対の側溝(7)間の中央上面(12)に配設される中央培地(4A)と、この中央培地(4A)の側部であって傾斜面(8)の上に配設される側部培地(4B)とに分離されており、
培地(4)に供給されて、側部培地(4B)を透過する廃液を、傾斜面(8)から側溝(7)に向かって流し、側溝(7)から基礎プレート(1)の外部に排水するようにしてなるミョウガの養液栽培装置。
【請求項2】
保水シート(5)が無機繊維を方向性なく立体的に集合している保水マット、又は、繊維を方向性なく集合して繊維を交点で結合している不織布である請求項1に記載されるミョウガの養液栽培装置。
【請求項3】
基礎プレート(1)の中央上面(12)が側溝(7)に向かって下り勾配に傾斜している請求項1に記載されるミョウガの養液栽培装置。
【請求項4】
側溝(7)の間に中央溝(11)を設けており、中央上面(12)が中央溝(11)と側溝(7)のいずれか又は両方に向かって下り勾配に傾斜する請求項1に記載されるミョウガの養液栽培装置。
【請求項5】
側部培地(4B)が、ミョウガ以外の植物を植え付けする培地である請求項1に記載されるミョウガの養液栽培装置。
【請求項6】
基礎プレート(1)を複数の区画プレート(1A)に分割しており、隣接して配置される区画プレート(1A)を嵌着構造で連結するようにしてなる請求項1に記載されるミョウガの養液栽培装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−345783(P2006−345783A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−176991(P2005−176991)
【出願日】平成17年6月16日(2005.6.16)
【出願人】(393019355)
【Fターム(参考)】