ミラー調整治具、構造物変状検知システムおよび構造物変状検知方法
【課題】自然構造物や人工構造物の状態監視を低コストで効果的に行える構造物変状検知システムおよび構造物変状検知方法、ならびに構造物にミラーを備え付け、高精度で角度調整を行うミラー調整治具を提供する。
【解決手段】発光手段を備えたターゲットと、ミラーと、該ミラーを支持・調整するミラー調整治具を備え、発光手段から放出された光が、ミラーに反射し、観測点に到達するか否かにより、構造物の変状を検知する。ミラー調整治具は、構造物に埋設もしくは固設する支柱と、ミラーを固定するミラー支持部と、支柱に設けられ、ミラー支持部に設けられた脚部を挿入して内部に固化材を充填させることにより、ミラー支持部を固定し得る脚受け部と、ミラー支持部を一端で支持し、他端で支柱もしくは脚受け部と連結固定されるアーム部と、ミラー支持部の傾斜角を調整し得る角度調整機構から成る。
【解決手段】発光手段を備えたターゲットと、ミラーと、該ミラーを支持・調整するミラー調整治具を備え、発光手段から放出された光が、ミラーに反射し、観測点に到達するか否かにより、構造物の変状を検知する。ミラー調整治具は、構造物に埋設もしくは固設する支柱と、ミラーを固定するミラー支持部と、支柱に設けられ、ミラー支持部に設けられた脚部を挿入して内部に固化材を充填させることにより、ミラー支持部を固定し得る脚受け部と、ミラー支持部を一端で支持し、他端で支柱もしくは脚受け部と連結固定されるアーム部と、ミラー支持部の傾斜角を調整し得る角度調整機構から成る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自然構造物ならびに人工構造物の現場での変状の発生・進展、あるいは危険度の増大を検知する目的で、構造物の状態監視を簡易に行う変状検知システムおよび変状検知方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
日本は国土の4分の3が山地で覆われており、全国には約9万の斜面崩壊危険箇所(以下、危険斜面という。)をはじめ、地すべり危険箇所、土石流危険箇所、落石危険箇所など21万箇所を数える土砂災害危険箇所が存在すると言われており、特に豪雨や震災発生時、斜面工事時などには、斜面災害が集中している。
【0003】
このような状況下、崩壊危険性の高い箇所から斜面防災対策を効率的に実施し、災害の発生やその予兆を捉える装置を配備すると共に、危険度に応じて道路利用者や周辺住民に情報提供することが必要とされている。そのために、モニタリングシステム、データ転送システム、データのリアルタイム分析システム、住民への告知システムなどが開発され、着実に成果を上げている。
【0004】
しかしながら、自然現象に起因する災害発生の危険度は基本的には不変であるのに対し、災害対策のための整備予算が減少していることもあり、例えば、処置を要する危険斜面の場合でも、未だ全体の約2割の整備率であるというのが実状である。
このうちデータのリアルタイム分析と住民への告知システムが完備している箇所は、極めて限定的なものにとどまっている。
【0005】
一方、現在、各現場で行っている危険斜面などの計測管理は、主要断面に複数の計測器を設置し、設計計算書を基に管理基準値を、例えば、第1警戒値から第3警戒値までの3段階に設定し、手動測定あるいは自動測定を行って、管理事務所内のコンピュータでデータ整理を行っている。そして、それらの測定結果から計測担当職員が斜面崩壊などの挙動を判断している。
例えば、測定値が管理基準値を超えた場合、職員が現場調査を実施し、危険と判断した場合、発注者と協議の上、警報または退避命令を発するのが一般的な管理方法である。また、管理基準値を超えない場合は、週報や月報で発注者に報告書を提出し、施工終了時には、施工に伴う計測データとして最終報告書に纏めて提出している。
【0006】
かかる状況下、発明者の一人である芥川は、既に、地すべりなどの防災から市民及び工事関係者を守るために不可欠な動態観測データを、リアルタイムに周辺関係者(住民、現場作業者など)に情報開示すべく、任意の観測点間の相対変位を光の色で表示する装置を提案している(特許文献1)。かかる提案の装置は、建設工事中の安全管理,供用中インフラの維持管理,防災,減災,地震被害の効果的査定などの業務を行うことを目的とする。また、この目的のために、変形や傾斜を計測して、その結果を視覚情報(たとえば光の色)に変換してその場所に表示するアプローチが効果的であることが分かっている、場合によっては、視覚情報を限定的に公開したいというケースがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−309784号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の自然構造物や人工構造物の変状が進み、現場の安全性が低下し続けている現状があったとしても、それを合理的・経済的に検知する方法やシステムは、未だ開発途上にある。このため、自然構造物及び人工構造物に関して、安全性の問題から、現場での変状の発生・進展、あるいは危険度の増大を検知する方法やシステムが求められている。
【0009】
現在、危険斜面の現場に導入されているシステムは、設備コストが高いため、危険性が既に把握されている箇所の全数に設置することができないといった問題がある。上記の問題点は、危険斜面の例だけに限らず、他の自然構造物、土木構造物、建築構造物、および関係する建設機械を対象とした建設中および供用時の変状監視や安全管理システムにおいても同様に存在している。
【0010】
また、上述した如く、一部の場合において、現場での視覚的な情報公開を限定的に行う必要がある場合がある。
例えば、道路,鉄道,エネルギー関連施設(原子力発電所など)など国家的レベルのインフラの管理責任者は、それらの存在する範囲と量が膨大であるため、異常が早期に発見された場合に、まずそれを管理責任者らだけが認知して、それらの異常が進行するようであれば第2段階としてその情報を住民に開示したいという背景がある。
【0011】
上記状況に鑑みて、本発明の第1の目的は、自然構造物や人工構造物の状態監視を低コストで効果的に行える構造物変状検知システムおよび構造物変状検知方法を提供することである。
また、本発明に係る構造物変状検知システムおよび構造物変状検知方法では、後述するようにミラーを用いるが、かかるミラーを目的位置に高精度で角度調整および固定することが要求される。そこで、本発明の第2の目的は、上記の構造物変状検知システムおよび構造物変状検知方法に好適に用いることができ、ミラーを目的位置に高精度で角度調整および固定できるミラー調整治具を提供することである。
【0012】
なお、本明細書において、自然構造物とは、道路脇や住宅地周辺の自然斜面、自然河川堤防など土質材料および岩盤などで形成されている自然地形の一部を意味する用語として用いる。自然構造物には、豪雪地帯における積雪も含まれる。また、人工構造物とは、大きく分けて土木構造物、建築構造物およびそれらを建設する際に用いる建設機械を意味する。土木構造物とは、橋梁,送電や通信用の鉄塔,ダム,トンネル,盛土,埋立地,人工河川堤防,人工斜面などを指し、建築構造物とは、一般住宅,高層ビル,公共建築物(美術館、学校、駅舎、体育館など),発電用の大型風車,大規模レジャー施設(コンサートホール、スポーツスタジアム、観覧車、ジェットコースターのレールなど),イベント会場仮設構造物などを指す。また、建設機械とは、特に大型クレーン、大型重機のようにオペレータが必要で工事中に周辺に住民もしくは作業員が近づく可能性があるものを指す。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的を達成すべく、本発明のミラー調整治具は、下記の1)〜5)の構成要件を備える。
1)構造物に埋設もしくは固設する支柱
2)ミラーを固定するミラー支持部
3)支柱に設けられ、ミラー支持部に設けられた脚部を挿入して内部に固化材を充填させることにより、ミラー支持部を固定し得る脚受け部
4)ミラー支持部の傾斜角を調整し得る角度調整部
5)角度調整部を一端で支持し、他端で支柱もしくは脚受け部と連結固定されるアーム部
【0014】
かかる構成によれば、ミラーを目的位置に高精度で調整・固定することができ、自然構造物および人工構造物の状態監視を行う構造物変状検知システムおよび構造物変状検知方法に好適に用いることができる。
【0015】
上記1)の構造物は、自然構造物および人工構造物のことである。また、支柱は構造物に埋設もしくは固設できるもので、硬質性素材で形成されるものである。例えば、鉄筋などの金属や硬質性樹脂などが好適に使用することができる。また、支柱の形状は、特に限定されるものではないが、パイプ状でもよく、構造物に埋設もしくは固設するために適宜設計すればよい。
【0016】
上記2)のミラーは、光を効率よく反射するものの意味で用いている。ミラーは、平面鏡だけでなく、凸面鏡も含まれる。また、ミラーを固定するミラー支持部は、例えば、ミラーの側面を挟み込んで固定するものでも、ミラーの裏面と嵌着して固定するものでもよい。
また、ミラーとミラー支持部は、取外し可能とすることが好ましい。これにより、ミラーの角度調整の際に、最初に凸型のミラーをミラー支持部に取り付けておいて、大まかにミラーの角度調整を行った後に、凸型のミラーを取り外して、平面型のミラーを取り付けることができる。ミラーが取外しできることで、ミラーの保守・交換が可能となる。
【0017】
上記3)の脚受け部は、支柱の端部を含め支柱のどの部位に設けてもよい。脚受け部の形状は、例えば、受け皿状や受け筒状のように、上面が開口され内部に物を収納できる構造であればよい。脚受け部は、その内部にミラー支持部の脚部を挿入し、内部に固化材を充填させることにより、ミラー支持部を固定できるようにするものである。
また、上記3)の固化材は、特に限定しないが、例えば、セメントやセメント系固化材が好適に用いることができる。ここで、セメント系固化材とはセメントを含有成分とする固化材であり、ポルトランドセメント、高炉セメントなどを用いることができる。
また、ミラー支持部に設けられた脚部とは、例えば、1本脚や2本脚といったものや、その脚の端部に台座が付いているものでもよい。
【0018】
上記4)の角度調整部は、ミラー支持部の傾斜角を調整できる機構を備える。例えば、水平軸の回動と垂直軸の回動を組み合わせて、ミラー支持部の傾斜角を任意に調整するものでもよい。或いは、アーム部の端部を球状曲面に構成し、ミラー支持部の裏面に該球状曲面と摺動接触する凹部を設けて、ミラー支持部の傾斜角を任意に調整するものでもよい。例えば、水平軸の回動と垂直軸の回動を組み合わせた角度調整部を用いることにより、ミラーの正面からみて、左右・前後の傾斜角を調整することができる。
【0019】
上記5)のアーム部は、角度調整部を一端で支持し、他端で支柱と連結固定されるものか、或いは、他端で脚受け部と連結固定されるものがある。角度調整部を一端で支持するとは、角度調整部の上方から吊り下げて支持するものや、角度調整部の側面や裏面から支持することをいう。
ここで、上記の角度調整部は、具体的には、ミラー支持部の1辺の側面部もしくは対向する2辺の側面部と軸着された第1部位と、第1部位と前記アーム部とが軸着された第2部位とからなり、第1部位と第2部位の各々の軸が回転することにより、ミラー支持部の傾斜角を調整できるものである。
かかる構成の角度調整部によれば、第1部位と第2部位の各々の軸が回転することによりミラー支持部の傾斜角を調整できる。ミラー支持部の1辺の側面部を軸着するとは、ミラーに向かって上側面、左側面、右側面のいずれかを軸着することである。また、ミラー支持部の対向する2辺の側面部を軸着するとは、ミラーに向かって上下の側面、或いは、左右の側面を軸着することである。なお、より安定性を考慮した場合、ミラー支持部の対向する2辺の側面部を軸着する方が好ましい。
【0020】
また、上記の角度調整部において、第2部位の軸の回転角度を操作角度の1/2の角度にする角度半減機構を更に備えることが好ましい。角度半減機構を用いることで、例えば、A方向からB方向まで回転操作を行った場合、操作角度の1/2の角度に第2部位の軸が自動的に回転することになる。これにより、A方向とB方向の真ん中の方向にミラーの鏡軸を合わせることになる。例えば、A方向に光源がある場合、ミラーに反射した光源の光はB方向に進むようになる。
【0021】
また、上述のミラー支持部において、ミラーの鏡軸の角度を微調整する微調整機構を備えることが好ましく、その微調整機構は、具体的には、ミラー裏面に設けられたステーと、脚部の上方でステーの後方に設けられた支持部材を3点の止ネジで支持するものであり、いずれか1点の止ネジの先端を球状曲面に構成し、球状曲面と摺動接触する凹部をステーの裏面に設けたものである。
かかる構成によれば、止ネジの先端が凹部の内面に摺動接触することにより、ミラーを支持部材上に揺動可能に保持させることができる。
【0022】
ミラー支持部の角度調整部とは別に、ミラー支持部における微調整機構を設けるのは以下の理由による。
ミラーの設置時に、ミラーを支持するミラー支持部の姿勢、すなわち傾斜角を角度調整部で調整する。角度調整の後、ミラー支持部の脚部を脚受け部に挿入し、脚受け部の内部に固化材を充填し、ミラー支持部を固定する。そのため、ミラー支持部を固定した後は、角度調整部で調整することはできない。そこで、ミラー支持部にミラーの微調整機構を設けたのである。この微調整機構は、固定されたミラー支持部の姿勢を調整するのではなく、ミラー支持部に支持されているミラー自体の姿勢を微調整する。ミラー支持部を固定した後に、ミラーの微調整が必要になるケースもあり得ることを想定したためである。
【0023】
上述のミラー調整治具において、ミラーの前面には、ミラー面積を調整する遮光部材を被覆することが好ましい。遮光部材を設けることにより、ミラーの大きさや形状を任意に調整することが容易に実現できるからである。遮光部材としては、ミラー表面に貼着する遮光シールが好適に用いることができる。
また、上述のミラー調整治具において、角度調整部と前記アームの間には、支柱の軸方向にスライドし得るスライド機構を更に設けることが好ましい。このスライド機構を用いることにより、支柱の軸方向、例えば、支柱が地面に垂直に立てられる場合、ミラーの正面からみて上下方向に、ミラーの位置を調整することができる。
前述の水平軸の回動と垂直軸の回動を組み合わせた角度調整部と、上記のスライド機構により、ミラーの姿勢を、ミラーの正面からみて、上下スライド、左右回転、前後回転の3軸姿勢の制御が行える。
【0024】
次に、自然構造物や人工構造物の状態監視を低コストで効果的に行えるために発案した本発明の構造物変状検知システムについて説明する。
本発明の構造物変状検知システムは、発光手段を備えたターゲットと、ミラーと、該ミラーを支持・調整するミラー調整治具を備え、発光手段から照射された光が、ミラーに反射し、観測点に到達するか否か、また到達した場合の到達した光の色により、構造物の変状を検知するシステムである。
【0025】
光を利用した構造物変状検知システムは、上述の特許文献1において開示されるように、発明者によって既に開発されている。しかしながら、実際には一部の場合において、視覚的な情報公開を限定的に行う必要がある場合がある。かかる目的に合致する極めて低コストのシステムが、本発明の構造物変状検知システムである。
すなわち、本発明の構造物変状検知システムによれば、例えば、施主やオーナーの意向により、構造物の変状の程度を特定作業員だけに効果的に把握させたい場合に、光とミラーを利用して、低コストでの構造物の状態変化をモニタリングすることが可能になる。
ここで、上記の本発明の構造物変状検知システムにおいて、発光手段を備えたターゲットとは、発光手段そのもの自体がターゲットとなるものや、ターゲットに発光手段の光が照射されるものが含まれる意味で用いている。発光手段を備えたターゲットには、発光ダイオード(LED)で構成された発光パネル自体や、色彩のある看板の傍にサーチライトや蛍光灯を用いて色彩を照らし明るくさせたものが例示される。
【0026】
また、上記の本発明の構造物変状検知システムにおけるミラー調整治具は、ミラーのミラー面が直交する補助ミラーを備えており、その補助ミラーはミラーの上部あるいは下部の位置に配置されることが好ましい。かかる構成により、ミラーと補助ミラーの交差する箇所から直接見える光源の形状と補助ミラーに反射して見える観測点の映像を用いて、ミラーの角度調整を効率的に大まかに行うことが可能である。
また、ミラー調整治具は、構造物に埋設もしくは固設する支柱を、外的な力を加えて弾性変形させることにより、ミラー角度の微調整を行うことができる。外的な力とは、おもりなどを支柱に取り付けることにより生じる鉛直下向き、もしくは滑車を利用することで得られる水平方向の力が生み出す力のモーメントである。支柱を外的な力を加えて弾性変形させるとは、例えば、垂直に立てた剛性のある棒に水平な枝が設けられ、かかる枝におもりを吊り下げて、その力を鉛直下向きに直接伝えること、もしくは滑車を通して水平方向に伝えることで得られる力のモーメントを生み出すことにより、垂直な棒に曲げによる弾性変形、もしくはねじりによる弾性回転変形を発生させることをいう。
【0027】
また、上記の本発明の構造物変状検知システムにおける発光手段は、常時点灯状態および点滅状態を切り替えできることが好ましい。点滅状態に切り替えできることにより、観測点においてターゲットの把握が容易になる。また、点滅状態に切り替えできることにより、観測点ならびにターゲット地点においてミラーを備え付けた構造物の状態変化の把握が容易になる。
【0028】
また、上記の本発明の構造物変状検知システムにおける発光手段は複数の異なる色の光源で構成され各光源が同心円周上に配置されたことが好ましい。あるいは、上記の本発明の構造物変状検知システムにおけるターゲットは異なる色彩で同心円状に模様が描かれ該模様に発光手段の光が照射されたことが好ましい。これにより、観測点においてミラーを備え付けた構造物のその点における変状(主に傾斜を意味する)の方向の把握が可能となる。
【0029】
また、上記の本発明の構造物変状検知システムにおける発光手段は複数の象限に色分けされたパネル光源で構成されたことが好ましい。あるいは、上記の本発明の構造物変状検知システムにおけるターゲットは異なる色彩で象限に色分けされ該象限に発光手段の光が照射されたことが好ましい。これにより、観測点においてミラーを備え付けた構造物の変状の方向の把握が可能となる。
【0030】
また、上記の本発明の構造物変状検知システムにおいて、ミラーを支持・調整するミラー調整治具とは、構造物にミラーを調整し固定できるもので、例えば、上述した本発明のミラー調整治具を好適に用いることができる。
【0031】
また、上記の本発明の構造物変状検知システムにおいて、観測点に受光手段を設け、所定間隔内に受光しない場合にアラームを出力することが好ましい。これにより、観測点において構造物の状態変化の把握が容易になる。すなわち、所定間隔内に受光しない場合、ミラーを備え付けた構造物に変位が生じたと認識し、自動的にアラームを発生する。ここで、アラームは、音告知や外部へのアラーム信号出力を意味する。
【0032】
また、上記の本発明の構造物変状検知システムにおいて、観測点に異なる色波長の受光手段を設け、特定の色波長の光を受光した場合に、受光した色波長に応じたアラームを出力することが更に好ましい。これにより、ターゲットの色(受光の波長)でアラームをレベル分けすることが可能になる。
【0033】
また、上記の本発明の構造物変状検知システムにおいて、観測点にカメラ手段と通信手段を設け、観測点におけるミラーに映る画像を遠隔地でモニタリングできることが更に好ましい。これにより、発光するターゲットをカメラで捕らえ、ミラーを備え付けた構造物の変状を遠隔監視するシステムを構築できる。
【0034】
また、上記の本発明の構造物変状検知システムにおいて、ターゲットの配設地点と観測点を平面図上で同一地点とすることが更に好ましい。ターゲットの配設地点と観測点を同一地点とすることにより、ミラーの姿勢調整が容易となる。すなわち、ターゲットの配設地点と観測点が同じであるため、ミラーの設置地点とターゲットの配設地点を結ぶ直線を鏡軸上に合わせることにより、ミラーの角度を調整できる。また、ターゲットと観測器を一体化できる利点もある。
【0035】
また、上記の本発明の構造物変状検知システムにおいて、ミラーおよびミラー調整治具を複数セットとし、変状モニタリング対象の構造物の複数の地点にミラーおよびミラー調整治具を取り付け、発光手段の照射光が各々のミラーに反射し観測点に到達するように各々のミラーの姿勢を予め調整し、発光手段の照射光が各ミラーに反射し観測点に到達するか否か、若しくは、到達した場合に到達した光の色を判定することにより、構造物の変状を検知することが好ましい。これにより、構造物が渓谷の側道の斜面やダムなど広範囲におよぶものの場合に、複数個所にミラーを据え付けて広範囲を監視する。
ここで、構造物は複数であってもかまわない。また、観測点は複数であってもよい。
【0036】
次に、自然構造物や人工構造物の状態監視を低コストで効果的に行えるために発案した本発明の構造物変状検知方法について説明する。
本発明の構造物変状検知方法は、発光手段を備えたターゲットを不動領域に設け、変状モニタリング対象の構造物にミラーを取り付け、発光手段の照射光が前記ミラーに反射し観測点に到達するようにミラーの姿勢を予め調整し、発光手段の照射光がミラーに反射し観測点に到達するか否か、若しくは、到達した場合に到達した光の色を判定することにより、構造物の変状を検知する。
かかる方法によれば、構造物の変状の程度を特定作業員だけに効果的に把握させたい場合に、光とミラーを利用して、低コストでの構造物の状態変化をモニタリングすることが可能になる。
【0037】
また、上記の本発明の構造物変状検知方法における発光手段は、常時点灯状態および点滅状態を切り替えできることが好ましい。点滅状態に切り替えできることにより、観測点においてターゲットの把握が容易になる。また、点滅状態に切り替えできることにより、観測点ならびにターゲット地点においてミラーを備え付けた構造物の状態変化の把握が容易になる。
【0038】
また、上記の本発明の構造物変状検知方法における発光手段は複数の異なる色の光源で構成され各光源が同心円周上に配置されたことが好ましい。あるいは、上記の本発明の構造物変状検知方法におけるターゲットは異なる色彩で同心円状に模様が描かれ該模様に発光手段の光が照射されたことが好ましい。これにより、観測点においてミラーを備え付けた構造物の変位の方向の把握が可能となる。
【0039】
また、上記の本発明の構造物変状検知方法における発光手段は複数の象限に色分けされたパネル光源で構成されたことが好ましい。あるいは、上記の本発明の構造物変状検知方法におけるターゲットは異なる色彩で象限に色分けされ該象限に発光手段の光が照射されたことが好ましい。これにより、観測点においてミラーを備え付けた構造物の変位の方向の把握が可能となる。
【0040】
また、上記の本発明の構造物変状検知方法において、ターゲットの配設地点と観測点を平面図上で同一地点とすることが更に好ましい。ターゲットの配設地点と観測点を同一地点とすることにより、ミラーの姿勢調整が容易となる。すなわち、ターゲットの配設地点と観測点が同じであるため、ミラーの設置地点とターゲットの配設地点を結ぶ直線を鏡軸上に合わせることにより、ミラーの角度を調整できる。また、ターゲットと観測器を一体化できる利点もある。
【0041】
また、上記の本発明の構造物変状検知方法において、ミラーおよびミラー調整治具を複数セットとし、変状モニタリング対象の構造物の複数の地点にミラーおよびミラー調整治具を取り付け、発光手段の照射光が各々のミラーに反射し観測点に到達するように各々のミラーの姿勢を予め調整し、発光手段の照射光が各ミラーに反射し観測点に到達するか否か、若しくは、到達した場合に到達した光の色を判定することにより、構造物の変状を検知することが好ましい。これにより、構造物が渓谷の側道の斜面やダムなど広範囲におよぶものの場合に、複数個所にミラーを据え付けて広範囲を監視する。
ここで、構造物は複数であってもかまわない。また、観測点は複数であってもよい。
【発明の効果】
【0042】
本発明の構造物変状検知システムならびに構造物変状検知方法によれば、自然構造物や人工構造物の状態監視を低コストで効果的に行える。
また、本発明のミラー調整治具によれば、構造物に備え付けるミラーを目的位置に高精度で角度調整および固定できる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本構造物変状検知システムの基本要素を示した模式図
【図2】本構造物変状検知システムの基本コンセプトの説明図(1)
【図3】本構造物変状検知システムの基本コンセプトの説明図(2)
【図4】本構造物変状検知システムの基本コンセプトの説明図(3)
【図5】任意点に置かれたミラーの中心を通る視線を幾何学的に示す図
【図6】ミラーの両端を通る視線を幾何学的に示す図
【図7】ミラーが捉えるターゲットゾーンを示すグラフ
【図8】ターゲットがミラーの中で次第に右側にずれてゆくことが観測できることを示す図。(a)は初期状態でミラーの中心にターゲットが映し出されている状態,(b)はミラーの回転角が0.04°になった状態。
【図9】ミラーが取り付けられた構造物の状変の変位精度の説明図
【図10】ミラーの回転による視線のずれの説明図
【図11】ミラーの回転角が0.01°の場合に光が反射しなくなるミラーの大きさを算出するグラフ
【図12】複数の色彩の光源からなるターゲットを示す図
【図13】色彩が段階的に変化する様子の説明図
【図14】ミラーの初期設定位置からの回転方向に依存せず、回転角の絶対値として捕らえることができる光源の配置の一例を示す図
【図15】段階的にミラーに映る光の色を制御できる様子を示す図
【図16】ツートーンの光源からなるターゲットを示す図
【図17】4つの象限パターンからなるターゲットを示す図
【図18】1つの変状の検知対象領域内の変状のモニタリング例
【図19】複数の変状の検知対象領域内の変状のモニタリング例
【図20】複数の変状検知対象領域を複数の観測点でモニタリングする例
【図21】ミラー調整治具の説明図
【図22】ミラー調整治具の裏面の構造模式図
【図23】ミラー調整治具の側面の構造模式図
【図24】ミラー調整治具における左右の角度半減機構の説明図1
【図25】ミラー調整治具における左右の角度半減機構の説明図2
【図26】ミラー調整治具における左右の角度半減機構の説明図3
【図27】光源と観測器の一体型装置の説明図
【図28】視線方向と補助ミラーの機能についての説明図
【図29】概略方向合わせをする際の解説図
【図30】設置作業者および観測点に立つ観測者が見る姿の概略図
【図31】他の実施形態のミラー調整治具の背面を正面とする正面図
【図32】図31の平面図
【図33】図31の左側面図
【図34】図31の右側面図
【図35】微小角度を調整するための手段の説明図1
【図36】微小角度を調整するための手段の説明図2
【図37】微小角度を調整するための手段の説明図3
【図38】微小角度を調整するための特殊ポールの説明図
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明していく。なお、本発明の範囲は、以下の実施例や図示例に限定されるものではなく、幾多の変更及び変形が可能である。
【0045】
先ず、本発明の構造物変状検知システムならびに構造物変状検知方法の基本コンセプトについて説明する。
図1は、本発明の構造物変状検知システムならびに構造物変状検知方法の基本要素を示している。基本要素は、ミラー1と、ミラー1を支持・調整するミラー調整治具2と、発光手段を備えたターゲット3と、観測点4である。発光手段を備えたターゲット3には、発光手段そのもの自体がターゲットとなるものや、ターゲットに発光手段の光が照射されるものがある。
【0046】
図1では、発光手段の光が四方八方に放出され、ミラー1に向かって照射された光(矢印5)は、ミラー1に反射して、ミラー1による反射光が観測点4に到達する(矢印6)。
ここで、発光手段は、発光ダイオード(LED)、レーザーダイオード(LD)、固体レーザー発振器などのレーザー、サーチライト、蛍光灯などが用いられる。発光手段を備えたターゲットは、具体的には、発光ダイオード(LED)で構成された発光パネル自体や、色彩のある看板の傍にサーチライトや蛍光灯を用いて色彩を照らし明るくさせたものである。色彩のある看板の傍にサーチライトや蛍光灯を用いて色彩を照らし明るくさせたものをターゲットとすることで、ターゲットが大型化した場合のコスト削減を図ることができる。
【0047】
図2〜4は、本発明の構造物変状検知システムならびに構造物変状検知方法の基本コンセプトを説明するための模式図を示している。
図2において、観測点4から距離d1にミラー1の中心(Xm,Ym)を配置することとし、そこからターゲット3の中心までの距離をd2とする。図において、縦線より左側がオープンスペース(Open space)で、縦線上にターゲット3および観測点4が配置されている。
【0048】
図3は、ミラー1と、ミラーに映る領域を示している。ミラー1は、所定の幅Sを有している。観測点4から見て、ターゲット3が映っている状態を初期状態とする。ターゲット3は、ミラー1に映っているターゲット領域(TaからTbまで)の中央付近にあるものとする。なお、図3や図4の中の線は、観測点4からミラー1の両端を経て、視線が縦線のどこを捉えているかを示すものである。
【0049】
図3において、ミラー1が山の斜面やダムなどの構造物に固定されていて、その固定箇所に傾きθmが生じた場合を考える。その場合、不動領域にある観測点4にいる者にとって、ミラー1に映っている場所が変化することになる。
図4は、θmが一定の大きさになり、図3の初期状態では観測されていたターゲット3が観測されなくなっている状態を示している。
以上、説明した原理を用いると、発光手段と観測点4の場所を不動領域に設置することを条件に、低コストの構造物の変状をモニタリングするシステムや方法が簡易に実施できることになる。
【0050】
構造物の変状をモニタリングの手順は、以下のステップ1〜4である。
(ステップ1)発光手段を備えたターゲットを不動領域に設ける。
(ステップ2)変状モニタリング対象の構造物にミラーを取り付ける。
この場合、1箇所でなくとも、複数個所に取り付けることで、各所で変状をモニタリングすることが可能となる。
(ステップ3)指定された観測点において、発光手段の照射光がミラーに反射し観測点に到達するように、ミラーの姿勢を調整する。すなわち、すべてのミラーにターゲットが映るようにそれぞれのミラーの方向を調整する。調整する際に用いる治具は、1台だけあればよく、1か所に設置した後、それを次々と別の場所での設置に用いることとする。
(ステップ4)発光手段の照射光がミラーに反射し観測点に到達するか否か、若しくは、到達した場合に到達した光の色を判定することにより、構造物の変状を検知できる。すなわち、観測点に再び立ち、ミラーにターゲットが映っていないことが確認されれば、ミラーを取り付けた箇所に一定値以上の角度変化が生じたことが視覚的に確認できるのである。
【0051】
図5は、任意点に置かれたミラーの中心を通る視線を幾何学的に示す図である。図5において、観測点を原点(0,0)と仮定し、任意点(x,y)において鉛直から時計回りにθmの角度を有するミラーを設置する。この時、観測点からミラーの中心を見た場合、ターゲット(xt、yt)が観測されているとする。この時、幾何学的関係から、ターゲットポイントのy座標ytは以下数式で与えられる。
【0052】
(数1)
yt = ym−(xt−xm)tan(θm−(π/2−β))・・・(式1)
【0053】
上記数式1の関係を利用して、観測点からミラーの左端および右端を通ってターゲットライン(x=xt)に到達するポイントTaおよびTbを求める。
図6は、ミラーの両端を通る視線を幾何学的に示す図である。図6において、原点を観測点とし、長さ40mmのミラーを、ミラー中心が位置(−20m,10m)になるように配置する。この時、観測点からミラーを観測すると、ターゲットライン上のTaからTbまでの範囲(長さ120mm)が観測されることになる。
【0054】
この状態から、ミラーに対して、時計回りの回転を0.04°まで与えたとき、ミラーが捉えるx=20mでのターゲットゾーンを図7のグラフに示す。図7のグラフにおいて、横軸はミラーの回転角度を示しており、縦軸はミラーに映る範囲(図6におけるTaとTbの間の範囲)のY座標を示す。
幅10mm程度の大きさのターゲットを準備し、ターゲットが鏡の中心に映るように最初の設定を行う。その後、ミラーの回転角が増えてくるにつれて、ターゲットゾーンはその幅をほぼ一定に保ったまま、図7のグラフで下側にシフトする。この時、観測点では、図8に示すように、ターゲットがミラーの中で次第に右側にずれてゆくことが観測できることになる。ここで、図8(a)は初期状態でミラーの中心にターゲットが映し出されている状態である。また、図8(b)はミラーの回転角が0.04°程度になった状態である。図8(a)(b)に示すように、ミラーの回転によって映し出されるゾーンがシフトし、ミラーの回転角が0.04°程度になった時点で、幅10mmのターゲットが全て、ミラーのターゲットゾーンから外れるため、観測点においてミラーに映っていたターゲットが観測できなくなる。この時点で、ミラーが設置されている箇所において、どちらかの方向に0.04°の回転があったことが視覚的に確認できることになる。ここで、どちらかの方向というのは、ミラーの回転が時計回りであっても、その逆であってもほぼ同じ回転角度で光源が見えなくなることを意味する。
【0055】
ミラーのサイズ,ターゲットとの距離,ミラーに映る範囲(ミラーで反射される範囲)から、ミラーが取り付けられた構造物の状変の変位精度について示す。図9に示すように、大きさ(例えば、ミラーが円形のものでは、直径)Sのミラーを観測点から距離d1に配置し、そのミラーから更にd2離れた場所のS’の領域が映っている状態を想定する。図9では、幾何学的関係を明確にするために、反射ではなく投影させるという形で図示する。
【0056】
図10に、ミラーの回転による視線のずれ(すなわち、ミラーに映るポイントのずれ)を図示する。観測点4からは最初にAが見えていたが、ミラー1がαだけ回転した後は見えるポイントはA´となる。この時、ミラー1の中心からターゲットに至る視線のラインは、当初のラインから2αだけ回転することになる。この幾何学的関係から、以下の関係式を導くことができる。
【0057】
(数2)
S = 2tan(2α)d1d2/(d1+d2) ・・・(式2)
【0058】
上記数式2において、Sは、ミラーの直径,αはミラーの回転角度、d1は観測点からミラーの中心までの距離、d2はミラーの中心から最初に見えていたポイントまでの距離である。
上記数式2を用いると、観測点からミラーの中心位置までの距離と、ミラーからターゲットまでの距離を把握した上で、要求される精度を達成するためのミラーの大きさSを決定できる、ここで、要求される精度とは、ミラーが何度回転したらターゲットがミラーで観測できなくなるか、あるいは、ターゲットの色や形を細工することでミラーが何度回転したらミラーに映るターゲットの色や形が変わるのか、ということである。
【0059】
図11に、ミラーの回転角が0.01°の場合に光が反射しなくなるためのミラーの大きさを算出するグラフを示す。ここで横軸はミラーとターゲットの距離d2を示し、縦軸はミラーの大きさSを示している。グラフは、ミラーと観測点との距離d1を10,50,100,200,300,400(m)とした場合をプロットしている。例えば、観測点から鏡までの距離d1を200mとし、ミラーからターゲットまでの距離d2を150mと想定した場合、ミラーの大きさ(直径)Sが約60mmの鏡を使用することで、回転角0.01°を判定できる高精度センサを構築できることがわかるのである。
【0060】
また、ミラーの回転が進んでゆく段階に応じて、ミラーに映る光の色を変えると、ミラー設置個所に生じる変状の度合いを段階的に捕らえることができる。
図12に、複数の色彩の光源からなるターゲットの一例を示している。ここでは、ミラーの回転軸が安定し、ミラーに映るターゲットゾーンが一方向のみに移動していく場合を想定する。図12において、Z20がミラーに映るターゲットゾーンであり、L1,L2,L3は3つの異なる色彩の光源である。今、光源L1の色を緑色、光源L2の色を黄色、光源L3の色を赤色とする。
図13に示すように、初期設定としてミラーに映るゾーンの中心に緑の光源L1を配置する(図13(a)の状態)。ミラーの回転が生じると、ゾーンが移動するためミラーに映る光の色が光源L2の色の黄色に変化する(図13(b)の状態)。更に、ミラーの回転が生じると、ゾーンが更に移動するためミラーに映る光の色が光源L3の色の赤に変化する(図13(c)の状態)。このように、緑,黄色,赤と段階的に変化するシステムを構築することができる。
【0061】
一般的に、構造物に取り付けたミラーの回転軸は予め予測することは困難である。
そのため、ミラーの回転の方向が任意であっても、その程度を表現できるために、ターゲットとなる光源の配置パターンに工夫を施す。図14は、ミラーの初期設定位置からの回転方向に依存せず、回転角の絶対値として捕らえることができる光源の配置の一例を示したものである。図14に示すように、複数の光源を用いて直径のことなる複数の円形光源(31,32,33)を構築する。直径が異なるものは、異なる色の光源にする。これを円形のミラーで映し出すようにする。図14の円形40は、円形のミラーが映しているゾーンを示している。ここで、例えば、円形光源31の色は緑色、円形光源32の色は黄色、円形光源33の色は赤色のパターンとする。
図15に示すように、このパターンでは、初期設定を緑色とし,段階的に黄色(図15(a)の状態)、赤色(図15(b)の状態)とミラーに映る光の色を制御できることがわかる。
【0062】
また、光源の設定やミラーの形状は目的に応じて自由に設定することが可能である。図16に示すツートーンの光源(34,35)からなるターゲットを用いることにより、ミラーが上向きに回転しているのか、あるいは、下向きに回転しているのかを見極めることができる。
また、図17に示す4つの象限パターンからなるターゲットを用いることにより、4つの象限のどのエリア(36,37,38,39)にミラーのゾーン40が移動しているかを見極めることができる。
このように、適用現場の状況により、自由な光源パターンとミラーの形状を設定することが可能である。
【0063】
図18に1つのターゲット3となる光源と1つの観測点4を準備し、1つの変状の検知対象領域5内の5点(1a,1b,1c,1d,1e)における変状のモニタリング例を示す。計測対象点数を増やしても、必要になるのはミラーだけである。従って、計測対象点数の増加に伴う追加のコストは低く抑えられることになる。また、観測点においては、肉眼で観測するだけではなく、デジタルカメラやビデオカメラなどで映像を記録することも可能である。また、それらの映像を画像処理ソフトで処理することにより、光の色の変化を記録することも可能である。
【0064】
図19に複数の変状検知対象領域がある場合のシステムの構成要素の配置レイアウト例を示す。この例では、2つの領域(5a,5b)、例えば、2つの地滑りゾーンを想定して、それぞれに5点ずつのミラーを設置している(1a〜1e,1f〜1j)。計測対象点は合計10か所となっているが、ターゲット3となる光源および観測点4は1点ずつであり、コストは最小限に抑えられることがわかる。
【0065】
また、図20に複数の変状検知対象領域を複数の観測点(4a,4b)でモニタリングする例を示す。観測点は原則的には1点あれば十分であるが、観測作業の実態やその場所に関する諸事情により、複数の観測点を設けたほうが良い場合が考えられる。この場合でも、ミラーの設置角度を変えるだけで様々な観測体制に対応できる柔軟なシステムを構築できることがわかるであろう。
【実施例1】
【0066】
次に、本発明のミラー調整治具の一実施形態を説明する。図21は、ミラー調整治具の概略構成図である。
図21に示すミラー調整治具は、以下のa)〜e)の要素から構成されるものである。
a)構造物に埋設する支柱30
b)ミラー1を固定するミラー支持部21
c)支柱30に設けられ、ミラー支持部21に設けられた脚部22を挿入して内部に固化材34を充填させることによりミラー支持部21を固定し得る脚受け部32
d)ミラー支持部21の傾斜角を調整し得る角度調整部25
e)角度調整部25を一端で支持し、他端で支柱30と連結固定されるアーム部27
【0067】
上記a)の支柱30は鉄筋で形成された棒状のものである。自然構造物および人工構造物の構造物に埋設して固定する。
また、上記b)のミラー支持部21は、平面鏡のミラー1の側面を挟み込んで、もしくはミラーホルダーを後方よりネジ止めにて、ミラーを固定する。
また、上記c)の脚受け部32は、支柱30の上端部、もしくは支柱30の周囲に設けられている。脚受け部32は、地面に設置された支柱30の角度により、上端部ではなく、取り付け治具を用いて支柱30の横に設置する場合もある。脚受け部32の形状は、上面が開口された受け筒状である。脚受け部32には、内部にミラー支持部21の脚部22が挿入されている。脚受け部32の内部にセメント系の固化材34を充填させて、ミラー支持部21を固定する。
【0068】
上記d)の角度調整部25は、ミラー支持部21の傾斜角を調整する。角度調整部25は、コの字状の形状を呈しており、アーム部27の一端27aで垂直軸26により吊り下げられている。角度調整部25は、垂直軸26の回動によって、左右の傾斜角度が調整される。また、ミラー支持部21の左側面に取り付けられた部材23aと右側面に取り付けられた部材23bは、コの字状の角度調整部25の左端部25aと右端部25bとそれぞれ水平軸(24a,24b)によって軸着されている。
水平軸(24a,24b)の回動と垂直軸26の回動を組み合わせて、ミラー支持部21の傾斜角、すなわち、ミラーの正面からみて左右・前後の傾斜角を任意に調整する。
【0069】
上記e)のアーム部27は、角度調整部25を一端(27a)で吊り下げて支持する。また、アーム部27は、他端(27c)で支柱30と部材28を介して連結固定される。部材28は、ネジで締め付け支柱30に固定する。
【0070】
次に、図22と図23を参照して、ミラー調整治具における微調整機構について説明する。図22は、ミラー調整治具の裏面の構造模式図である。図23は、ミラー調整治具の側面の構造模式図である。
ミラー調整治具における微調整機構は、図22に示すように、ミラー1の裏面に設けられたステー40と脚部22の上方に設けられた支持部材51を3点の止ネジ(52,62,72)で支持する。3点の止ネジ(52,62,72)のうち1点の止ネジ62の先端は球状曲面67に構成し、球状曲面67と摺動接触する凹部45をステー40の裏面に設ける(図23を参照)。これにより、止ネジ62の先端の球状曲面67が凹部45の内面に摺動接触して、ミラーを揺動可能に保持する。
この場合、図22に示すように、支持部材51の左側面に取り付けられた部材23aと右側面に取り付けられた部材23bが、コの字状の角度調整部25の左端部25aと右端部25bとそれぞれ水平軸(24a,24b)によって軸着される。
【0071】
図23に示すように、先端を球状曲面67に構成した止ネジ62は、止ネジの支持部材51と間にストッパー65が設けられている。他の止ネジ52は、ステー40の裏面の補強部材43と支持部材51の間にスプリング55が設けられている。止ネジ52を右回りに回すことで、ステー40の補強部材43と支持部材51の間の間隔を広げることができる。止ネジ52と止ネジ72のネジを調整することにより、ステー40に固定されたミラー41の角度の微調整が行える。
また、図23において、ハウジング部材40は、正面(図の左側)から見ると円形をしており、この中に円形のミラー41が収納できる構造となっている。42aおよび42bは、リング状の1つの部材である。部材(42a,42b)は、ミラー41がハウジング部材40から外れないように、ハウジング部材40の内側周囲に形成されたネジ溝にねじ込まれ、ミラー41の脱落を防いでいる。
【実施例2】
【0072】
実施例2では、上述の実施例1のミラー調整治具において、角度半減機構の一実施形態を説明する。図24〜図26は、角度半減機構の説明図である。
角度半減機構は、実施例1の角度調整部25において、図21に示す垂直軸26の回転角度を、操作角度の1/2の角度にするものである。
すなわち、角度半減機構は、図24や図25に図示するように、操作者がA方向をターゲットの方向とし、そこから観測点の方向であるB方向まで回転操作を行った場合、操作角度の1/2の角度に垂直軸26(図示せず)が自動的に回転する機構である。この機構を用いることにより、ターゲットのあるA方向と観測点のあるB方向の真ん中の方向にミラーの鏡軸を合わせることが容易にできる。これにより、A方向にターゲットの光源がある場合、ミラーに反射した光源の光は観測点のB方向に進むのである。
【0073】
角度半減機構の構造は、4つのギアー(G1〜G4)で構成される。角度半減機構は、アーム72の上方に位置し、軸心74を中心にして回動する。角度半減機構には、軸心74を共通にする2つのギアー(G1,G4)があり、これらの2つのギアーの軸は分離している。ギアーG1とギアーG4の歯数と径は異なり、上方に位置するギアーG4の方が、垂直軸26と連結するギアーG1よりも歯数と径が小さい。
一方で、上方に位置するギアーG4と噛み合うギアーG3が存在する。また、下方に位置するギアーG1と噛み合うギアーG2が存在する。これらの2つのギアーは、軸心75を共通にし、軸も共通である。上方に位置するギアーG4と噛み合うギアーG3と下方に位置するギアーG1と噛み合うギアーG2の歯数と径は異なり、上方に位置するギアーG3の方が、垂直軸26と連結するギアーG2よりも歯数と径が大きい。
【0074】
そして、ギアーG4が回転すると、それに噛み合うギアーG3が回転し、ギアーG3と軸を共通にするギアーG2がギアーG3の回転角と同一になるように回転する。ギアーG2が回転すると、それに噛み合うギアーG1が回転し、ギアーG1と部材25を介して連結する垂直軸26がギアーG1の回転角と同一だけ回転する。垂直軸26が回動することにより、その下方の角度調整部(図示せず)が回動する。
実施例2では、ギアーG1,G2,G3,G4の歯数を、それぞれ、75,75,100,50とする。この場合、歯数50のギアーG4が1回転すると、それに噛み合う歯数100のギアーG3は0.5回転する。ギアーG3と軸が共通であるギアーG2は、ギアーG3の回転角と同一の0.5回転する。歯数75のギアーG2が0.5回転すると、それに噛み合う同一歯数のギアーG1も0.5回転する。
従って、角度半減機構をアーム27上で軸心74を中心に回転させると、その回転角はギアーG4の回転角となるので、ギアー1の回転角はその半分の角度となり、ギアー1と垂直軸26を介して連結する角度調整部が半分の角度で回転することになる。
【実施例3】
【0075】
実施例3は、ターゲットの光源と観測器を一体型にした装置について説明する。図27は、光源と観測器の一体型装置の外観図を示している。
光源自体がターゲット3となり、光源から放出された光をミラー(図示せず)で反射して観測点4となる受光器でとらえる。ターゲット3と観測点4は水平バー81の上に設置されている。水平バー81は、三脚(84,85,86)を用いて地面に固定する。ターゲット3と観測点4の間の距離は、ターゲット3とミラー(図示せず)の間の距離と比較して、無視できる程度のものである。実際に使用する際は、例えば、ターゲット3とミラーの間の距離が200m程度で、ターゲット3と観測点4の間の距離は40cm程度であり、500:1程度の比である。従って、ターゲット3と観測点4の間の距離は無視でき、ほぼ同地点にあるとしてミラー角度を調整できる。そのため、ミラー調整が容易となり、システムのインストール作業や調整作業の利便性が向上する。
なお、ターゲット3と観測点4の間の距離は、40cmに限定されるものではなく、更に近づけてもよく、また1m程度はなれても構わない。
【実施例4】
【0076】
実施例4では、ミラーを設置する作業を効率化するための方法について、図28〜30を参照しながら説明する。
先ず、設置作業をする際の設置作業者の視線方向と、設置作業者の作業を合理化するために必要な補助ミラーについて、図28を参照して解説する。図28に示すように、補助ミラー102の法線がx軸に一致するように、補助ミラー102とメインミラー101に連結する。この時、設置作業者の視線(これは、原点Aを通る)は、原点Aと光源100を結んだ線に一致し、対称な位置に原点Aと観測点4を結んだ線が存在するようにミラー全体の方向を調整する。
【0077】
ミラー全体の方向の調整作業を説明するために、ミラーの構造をやや大きめに描いた図29を参照しながら説明する。図29に示すように、補助ミラー102(鏡面は右側)の法線がx軸に一致し、メインミラー101(鏡面は図では奥側)はy軸に一致する。
この時、視線の向こうに光源100(円形であることを想定)の中心が来るようにすると、設置作業者は光源100の右上1/4(図30(1)の104で示す部分)が見えることになる。また、設置作業者の視線が補助ミラー102によって折れ曲がり、その先に観測点4(ある大きさの円形と想定)の中心が来るとすれば、設置作業者は、観測点4の左上1/4(図30(1)の105で示す部分)を見ることになる(図30(1)を参照)。
また、この状態で、観測点4に立った観測者は、図30(2)に示すように、光源100の下半分がメインミラー101の上の辺の中心に映って見えることになる。
すなわち、光源100を映すミラーが、2つの直交するミラー面を持っていることにより、ミラーの設置作業者は、その後ろ側(光源100や観測点4の側と反対側)に立ち、幾何学的関係からミラーの初期位置を自らでおおよそ正しい方向に向けることができるのである。これは、ミラーの設置作業の効率化を図る上で重要なポイントとなる。
しかしながら、これは、ミラーの方向合わせが完璧にできる場合であり、実際の現場での設置作業にはある程度の誤差が付きまとうという問題が残る。
【0078】
そこで、概略的にミラー全体方向の調整が終了した後に、設置作業者は、観測点4に立つ観察者と相互に連絡を取りながら、メインミラー101の裏側に取り付けた方向調整ねじを用いて、メインミラー101の中心に光源100の中心が来るように方向を調整する。この際、距離が大きい場合は、観測者は望遠鏡を用いる必要がある。上記方法を用いることにより、ミラー全体方向の初期設定が完了する。
【0079】
次に、上下方向および左右方向の微調整が行える方向調整ねじをミラーの裏側に備えたミラー調整治具について説明する。図31〜34は、本実施例のミラー調整治具の構成を説明するための図であり、それぞれ、正面図(但し、実施例1のミラー調整治具の背面に相当する部位を正面としている。),平面図,左側面図,右側面図を示している。
以下、方向調整ねじをミラーの裏側に備えたミラー調整治具について詳細に説明する。
【0080】
図31は、ミラー(図示せず)を取り付けるミラー支持部110とミラー支持部の傾斜角を調整する角度調整機構を示している。角度調整機構は、図31に向かって右側の左右方向調整機構(130,132a,132b,134,136,138)と、左側の上下方向調整機構(140,142a,142b,144,146,148)と、アーム部(132a〜132d,142a〜142b)からなる。アーム部は構造物に固定された支柱に120の孔を介して接続される。
以下に、角度調整機構について、図32〜34を参照して詳細に説明する。
図32に示すように、ミラー支持部110は、両側に立てられた側片(112,114)を介して、ピン(134,144)が回転軸となり、アーム部(132b,142b)に取り付けられている。
【0081】
左右方向調整機構(130,132a,132b,134,136,138)は、ミラー支持部110に取り付けられた部材136をアーム部(132a)とバネ138で接続すると共に、調整ネジ130のネジ頭で左右方向の角度を調整できるようにしたものである。図34に示すように、調整ネジ130のネジ頭で部材136を図34の右方向に動かすと、ピン134がアーム部132bに設けられた水平方向に長いスリット孔132dを右方向にスライド移動できるようになっている。また、調整ネジ130のネジ頭を図34の左方向に動かすと、部材136がバネ138に引っ張られて左方向に移動し、ピン134がスリット孔132dを左方向にスライド移動する。
【0082】
上下方向調整機構(140,142a,142b,144,146,148)は、ミラー支持部110に取り付けられた部材146をアーム部(142a)とバネ148で接続すると共に、調整ネジ140のネジ頭で上下方向の角度を調整できるようにしたものである。図33に示すように、調整ネジ140のネジ頭で部材146を図33の左方向に動かすと、ミラー支持部110が、ピン144およびピン134を回転軸として右周りに回転できるようになっている。また、調整ネジ140のネジ頭を図33の右方向に動かすと、部材146がバネ148に引っ張られて、ミラー支持部110が、ピン144およびピン134を回転軸として左周りに回転する。
ここで、部材146は図33に示すように弧を描いた形状にすることで、ミラー支持部が回転した場合でも、常に部材146の表面に垂直に力が加わるようにしている。
【実施例5】
【0083】
ミラーには、標準的な角度調整機能が備わっており、それを支える支柱には微小な角度調整を可能とする角度調整機能が備わっていることが好ましい。一般的に、測量器具で、角度合わせをする際は、三脚を設置し、そのうえに取り付ける測量器具が備えている角度調整機能を利用するのが常識となっている。その際、三脚は動かないことが前提となっている。一般的に使用されている20秒読み程度の測量器具で考えると最小調整角度が20秒、すなわち、1°の1/60の1/60の20倍である。これは、角度で表すと、0.0056°程度になる。観測者からミラーの距離がkmオーダーになってもミラーの設置が容易にできるようになることが要求されている。
【0084】
例えば、0.001°レベルのオーダーで鏡の角度を微調整したい場合、この通常の測量器具が具備している最高レベルのさらに5倍の精度が必要になる。ちなみに、この角度は、1km離れた場所で1.74mm、或いは5km離れた場所で8.7mmずれる程度の超微小角度である。このように、観測者からミラーまでの距離がkmのオーダーになった場合、ミラーの裏側の方向調整ねじにおいても、高い精度で位置合わせが困難になることが想定される。
【0085】
かかる状況に鑑みて、以下では、超微小角の調整を可能とする手段について説明する。
観測者からミラーまでの距離がkmのオーダーになった場合、微小角度を調整する機能は、通常の概念では達成できないので、ミラーを設置する基礎構造(通常は三脚で動かないという扱いを受けるもの)の弾性変形を利用して、きわめて微小な角度の調整を行うことした。
【0086】
図35に示すように、しっかりと土中に埋め込まれ固定された鋼棒(地上部分の長さL)があり、その先端から直角に伸びたアーム(長さA)があると想定する。その先端には、おもりを吊るした場合、鋼棒の上部先端に力のモーメントが作用して、おもりを吊るした箇所からアーム部分および鋼棒全体において右回りの回転角度が生じることになる。この時、回転角度はアームの先端で最大値を取るが、ミラーが固定されている鋼棒の上部先端において生じる回転角度が鏡の角度を微調整する角度となる。
【0087】
E:205800(N/mm2)
D:10(mm)
I:490(=πd4/64)
L:500(mm)
A:100(mm)
W :9.8N (1kgf)
【0088】
上記値を代入すると、鋼棒の上部先端での右回りの回転角度が、0.278°であることになる。これを元に単純計算すると、アームの先端に吊るす重さを調整すれば、その先端の角度変化を意のままに、しかも超微小角度のレベルで調整できることがわかる。例えば、以下のような重さと角度変化の関係になる。
【0089】
100g ・・・ 0.0278°
10g ・・・ 0.00278°
1g ・・・0.000278°
【0090】
この角度調整機能とその精度は鋼棒の直径,長さ,アームの長さ,アームの先端にかける力を適切に選ぶことによって自由に設定できるという自由度がある。また、先端に重りを吊るす代わりに、これをターンバックルのねじの回転による強制微小変位として与えても同様の効果が得られることになる。
この原理を使うと、次のようなアレンジが可能であることがわかる。図36に示すように、M3の場所からz軸に平行なBranch
1とx軸に平行なBranch 2を設ける。それぞれの端部(A,B,C,D)に所定の角度変化を生じさせる重りを吊るすことが可能である。
【0091】
また、図36のメインポールにねじりを与えたい場合は、W5やW6の方向に力を与える必要がある。この場合、図37に示すように、地面に別途土台と滑車を設けて、それらを利用して重りの力が水平面内でメインポールに伝達されるようにすることができる。これらの力(W1からW6)を制御することにより、あらゆる方向における超微小角度調整が可能になる。
【0092】
重りの代わりに、ターンバックルを用いれば、図38に示すものになる。図38に示すように、地面(xz面)に垂直にポールを埋め込む。特殊ポールは、基本軸はM0からM4へのラインで構成される。特殊ポールの材質は、温度膨脹係数ができるだけ小さい金属が望ましく、本実施例ではすべて鋼棒で構成されている。また、特殊ポールは、M2から2本の枝が出ている構成を備える。但し、これらの枝は必ずしも同一点に溶接される必要はない。なお、1本目の枝(Branch
1)はzy面内にあり、2本の枝(Branch 2)はxy面内にある。
【0093】
また、M3からx軸方向にBranch 3が溶接されている。ここで、Branch 1の先端AとM3を結んだラインおよびBranch 2とBranch 3の先端Cを結んだラインにターンバックルを取り付ける。ここで、ターンバックルとは、互いに逆向きのねじ切りを有する鋼棒をナットで連結した“長さ調整棒”であり、ナットを回転することによって、ターンバックルの両端間の長さを自由に調整できるものである。
A−M3のラインに装着したターンバックルを用いて、メインポールとBranch1の間の角度を強制的に変化させることにより、ミラーをx軸周りに微調整できる。また、B−Cのラインに装着したターンバックルを用いて、メインポールをy軸周りに強制的に微小角度だけ回転させることができる。これらの作業は互いにわずかの干渉を及ぼしあうが、その作業を繰り返し行うことによって、kmのオーダーの空間においてもミラー角度を正しく調整できることになる。
【0094】
この特殊ポールにおいて、例えば、M2−M3の距離が50cm、またメインミラーの裏に供えられた角度調整ねじとそれを用いる際の回転の中心(支点)までの距離が5cmであると想定する。この時、角度調整ねじとターンバックルのねじピッチが同一であると仮定すると、この特殊ポールを用いた角度調整精度は、ミラーの裏の調整ねじだけを用いた場合の10倍程度の精度を有することになる。これは、回転が生じる際のアームの長さ(50cmに対する5cm)の比から決定される量である。
【0095】
(その他の実施例)
(1)実施例1において、アーム部25の形状は、コの字状であったが、U字状やV字状でもかまわない。特に、V字状の場合は、水平な辺と斜めの辺の2辺で形成されるものにし、ミラー支持部21の荷重を支えるようにする。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明は、上述したような自然構造物、土木構造物、建築構造物、およびそれに関係する建設機械を対象として構造物の建設中および供用後のすべての期間において変状を監視し、安全性を確認するためのシステムならびに方法として有用である。
【符号の説明】
【0097】
1 ミラー
2 ミラー調整治具
3 ターゲット
4 観測点
30 支柱
【技術分野】
【0001】
本発明は、自然構造物ならびに人工構造物の現場での変状の発生・進展、あるいは危険度の増大を検知する目的で、構造物の状態監視を簡易に行う変状検知システムおよび変状検知方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
日本は国土の4分の3が山地で覆われており、全国には約9万の斜面崩壊危険箇所(以下、危険斜面という。)をはじめ、地すべり危険箇所、土石流危険箇所、落石危険箇所など21万箇所を数える土砂災害危険箇所が存在すると言われており、特に豪雨や震災発生時、斜面工事時などには、斜面災害が集中している。
【0003】
このような状況下、崩壊危険性の高い箇所から斜面防災対策を効率的に実施し、災害の発生やその予兆を捉える装置を配備すると共に、危険度に応じて道路利用者や周辺住民に情報提供することが必要とされている。そのために、モニタリングシステム、データ転送システム、データのリアルタイム分析システム、住民への告知システムなどが開発され、着実に成果を上げている。
【0004】
しかしながら、自然現象に起因する災害発生の危険度は基本的には不変であるのに対し、災害対策のための整備予算が減少していることもあり、例えば、処置を要する危険斜面の場合でも、未だ全体の約2割の整備率であるというのが実状である。
このうちデータのリアルタイム分析と住民への告知システムが完備している箇所は、極めて限定的なものにとどまっている。
【0005】
一方、現在、各現場で行っている危険斜面などの計測管理は、主要断面に複数の計測器を設置し、設計計算書を基に管理基準値を、例えば、第1警戒値から第3警戒値までの3段階に設定し、手動測定あるいは自動測定を行って、管理事務所内のコンピュータでデータ整理を行っている。そして、それらの測定結果から計測担当職員が斜面崩壊などの挙動を判断している。
例えば、測定値が管理基準値を超えた場合、職員が現場調査を実施し、危険と判断した場合、発注者と協議の上、警報または退避命令を発するのが一般的な管理方法である。また、管理基準値を超えない場合は、週報や月報で発注者に報告書を提出し、施工終了時には、施工に伴う計測データとして最終報告書に纏めて提出している。
【0006】
かかる状況下、発明者の一人である芥川は、既に、地すべりなどの防災から市民及び工事関係者を守るために不可欠な動態観測データを、リアルタイムに周辺関係者(住民、現場作業者など)に情報開示すべく、任意の観測点間の相対変位を光の色で表示する装置を提案している(特許文献1)。かかる提案の装置は、建設工事中の安全管理,供用中インフラの維持管理,防災,減災,地震被害の効果的査定などの業務を行うことを目的とする。また、この目的のために、変形や傾斜を計測して、その結果を視覚情報(たとえば光の色)に変換してその場所に表示するアプローチが効果的であることが分かっている、場合によっては、視覚情報を限定的に公開したいというケースがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−309784号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の自然構造物や人工構造物の変状が進み、現場の安全性が低下し続けている現状があったとしても、それを合理的・経済的に検知する方法やシステムは、未だ開発途上にある。このため、自然構造物及び人工構造物に関して、安全性の問題から、現場での変状の発生・進展、あるいは危険度の増大を検知する方法やシステムが求められている。
【0009】
現在、危険斜面の現場に導入されているシステムは、設備コストが高いため、危険性が既に把握されている箇所の全数に設置することができないといった問題がある。上記の問題点は、危険斜面の例だけに限らず、他の自然構造物、土木構造物、建築構造物、および関係する建設機械を対象とした建設中および供用時の変状監視や安全管理システムにおいても同様に存在している。
【0010】
また、上述した如く、一部の場合において、現場での視覚的な情報公開を限定的に行う必要がある場合がある。
例えば、道路,鉄道,エネルギー関連施設(原子力発電所など)など国家的レベルのインフラの管理責任者は、それらの存在する範囲と量が膨大であるため、異常が早期に発見された場合に、まずそれを管理責任者らだけが認知して、それらの異常が進行するようであれば第2段階としてその情報を住民に開示したいという背景がある。
【0011】
上記状況に鑑みて、本発明の第1の目的は、自然構造物や人工構造物の状態監視を低コストで効果的に行える構造物変状検知システムおよび構造物変状検知方法を提供することである。
また、本発明に係る構造物変状検知システムおよび構造物変状検知方法では、後述するようにミラーを用いるが、かかるミラーを目的位置に高精度で角度調整および固定することが要求される。そこで、本発明の第2の目的は、上記の構造物変状検知システムおよび構造物変状検知方法に好適に用いることができ、ミラーを目的位置に高精度で角度調整および固定できるミラー調整治具を提供することである。
【0012】
なお、本明細書において、自然構造物とは、道路脇や住宅地周辺の自然斜面、自然河川堤防など土質材料および岩盤などで形成されている自然地形の一部を意味する用語として用いる。自然構造物には、豪雪地帯における積雪も含まれる。また、人工構造物とは、大きく分けて土木構造物、建築構造物およびそれらを建設する際に用いる建設機械を意味する。土木構造物とは、橋梁,送電や通信用の鉄塔,ダム,トンネル,盛土,埋立地,人工河川堤防,人工斜面などを指し、建築構造物とは、一般住宅,高層ビル,公共建築物(美術館、学校、駅舎、体育館など),発電用の大型風車,大規模レジャー施設(コンサートホール、スポーツスタジアム、観覧車、ジェットコースターのレールなど),イベント会場仮設構造物などを指す。また、建設機械とは、特に大型クレーン、大型重機のようにオペレータが必要で工事中に周辺に住民もしくは作業員が近づく可能性があるものを指す。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的を達成すべく、本発明のミラー調整治具は、下記の1)〜5)の構成要件を備える。
1)構造物に埋設もしくは固設する支柱
2)ミラーを固定するミラー支持部
3)支柱に設けられ、ミラー支持部に設けられた脚部を挿入して内部に固化材を充填させることにより、ミラー支持部を固定し得る脚受け部
4)ミラー支持部の傾斜角を調整し得る角度調整部
5)角度調整部を一端で支持し、他端で支柱もしくは脚受け部と連結固定されるアーム部
【0014】
かかる構成によれば、ミラーを目的位置に高精度で調整・固定することができ、自然構造物および人工構造物の状態監視を行う構造物変状検知システムおよび構造物変状検知方法に好適に用いることができる。
【0015】
上記1)の構造物は、自然構造物および人工構造物のことである。また、支柱は構造物に埋設もしくは固設できるもので、硬質性素材で形成されるものである。例えば、鉄筋などの金属や硬質性樹脂などが好適に使用することができる。また、支柱の形状は、特に限定されるものではないが、パイプ状でもよく、構造物に埋設もしくは固設するために適宜設計すればよい。
【0016】
上記2)のミラーは、光を効率よく反射するものの意味で用いている。ミラーは、平面鏡だけでなく、凸面鏡も含まれる。また、ミラーを固定するミラー支持部は、例えば、ミラーの側面を挟み込んで固定するものでも、ミラーの裏面と嵌着して固定するものでもよい。
また、ミラーとミラー支持部は、取外し可能とすることが好ましい。これにより、ミラーの角度調整の際に、最初に凸型のミラーをミラー支持部に取り付けておいて、大まかにミラーの角度調整を行った後に、凸型のミラーを取り外して、平面型のミラーを取り付けることができる。ミラーが取外しできることで、ミラーの保守・交換が可能となる。
【0017】
上記3)の脚受け部は、支柱の端部を含め支柱のどの部位に設けてもよい。脚受け部の形状は、例えば、受け皿状や受け筒状のように、上面が開口され内部に物を収納できる構造であればよい。脚受け部は、その内部にミラー支持部の脚部を挿入し、内部に固化材を充填させることにより、ミラー支持部を固定できるようにするものである。
また、上記3)の固化材は、特に限定しないが、例えば、セメントやセメント系固化材が好適に用いることができる。ここで、セメント系固化材とはセメントを含有成分とする固化材であり、ポルトランドセメント、高炉セメントなどを用いることができる。
また、ミラー支持部に設けられた脚部とは、例えば、1本脚や2本脚といったものや、その脚の端部に台座が付いているものでもよい。
【0018】
上記4)の角度調整部は、ミラー支持部の傾斜角を調整できる機構を備える。例えば、水平軸の回動と垂直軸の回動を組み合わせて、ミラー支持部の傾斜角を任意に調整するものでもよい。或いは、アーム部の端部を球状曲面に構成し、ミラー支持部の裏面に該球状曲面と摺動接触する凹部を設けて、ミラー支持部の傾斜角を任意に調整するものでもよい。例えば、水平軸の回動と垂直軸の回動を組み合わせた角度調整部を用いることにより、ミラーの正面からみて、左右・前後の傾斜角を調整することができる。
【0019】
上記5)のアーム部は、角度調整部を一端で支持し、他端で支柱と連結固定されるものか、或いは、他端で脚受け部と連結固定されるものがある。角度調整部を一端で支持するとは、角度調整部の上方から吊り下げて支持するものや、角度調整部の側面や裏面から支持することをいう。
ここで、上記の角度調整部は、具体的には、ミラー支持部の1辺の側面部もしくは対向する2辺の側面部と軸着された第1部位と、第1部位と前記アーム部とが軸着された第2部位とからなり、第1部位と第2部位の各々の軸が回転することにより、ミラー支持部の傾斜角を調整できるものである。
かかる構成の角度調整部によれば、第1部位と第2部位の各々の軸が回転することによりミラー支持部の傾斜角を調整できる。ミラー支持部の1辺の側面部を軸着するとは、ミラーに向かって上側面、左側面、右側面のいずれかを軸着することである。また、ミラー支持部の対向する2辺の側面部を軸着するとは、ミラーに向かって上下の側面、或いは、左右の側面を軸着することである。なお、より安定性を考慮した場合、ミラー支持部の対向する2辺の側面部を軸着する方が好ましい。
【0020】
また、上記の角度調整部において、第2部位の軸の回転角度を操作角度の1/2の角度にする角度半減機構を更に備えることが好ましい。角度半減機構を用いることで、例えば、A方向からB方向まで回転操作を行った場合、操作角度の1/2の角度に第2部位の軸が自動的に回転することになる。これにより、A方向とB方向の真ん中の方向にミラーの鏡軸を合わせることになる。例えば、A方向に光源がある場合、ミラーに反射した光源の光はB方向に進むようになる。
【0021】
また、上述のミラー支持部において、ミラーの鏡軸の角度を微調整する微調整機構を備えることが好ましく、その微調整機構は、具体的には、ミラー裏面に設けられたステーと、脚部の上方でステーの後方に設けられた支持部材を3点の止ネジで支持するものであり、いずれか1点の止ネジの先端を球状曲面に構成し、球状曲面と摺動接触する凹部をステーの裏面に設けたものである。
かかる構成によれば、止ネジの先端が凹部の内面に摺動接触することにより、ミラーを支持部材上に揺動可能に保持させることができる。
【0022】
ミラー支持部の角度調整部とは別に、ミラー支持部における微調整機構を設けるのは以下の理由による。
ミラーの設置時に、ミラーを支持するミラー支持部の姿勢、すなわち傾斜角を角度調整部で調整する。角度調整の後、ミラー支持部の脚部を脚受け部に挿入し、脚受け部の内部に固化材を充填し、ミラー支持部を固定する。そのため、ミラー支持部を固定した後は、角度調整部で調整することはできない。そこで、ミラー支持部にミラーの微調整機構を設けたのである。この微調整機構は、固定されたミラー支持部の姿勢を調整するのではなく、ミラー支持部に支持されているミラー自体の姿勢を微調整する。ミラー支持部を固定した後に、ミラーの微調整が必要になるケースもあり得ることを想定したためである。
【0023】
上述のミラー調整治具において、ミラーの前面には、ミラー面積を調整する遮光部材を被覆することが好ましい。遮光部材を設けることにより、ミラーの大きさや形状を任意に調整することが容易に実現できるからである。遮光部材としては、ミラー表面に貼着する遮光シールが好適に用いることができる。
また、上述のミラー調整治具において、角度調整部と前記アームの間には、支柱の軸方向にスライドし得るスライド機構を更に設けることが好ましい。このスライド機構を用いることにより、支柱の軸方向、例えば、支柱が地面に垂直に立てられる場合、ミラーの正面からみて上下方向に、ミラーの位置を調整することができる。
前述の水平軸の回動と垂直軸の回動を組み合わせた角度調整部と、上記のスライド機構により、ミラーの姿勢を、ミラーの正面からみて、上下スライド、左右回転、前後回転の3軸姿勢の制御が行える。
【0024】
次に、自然構造物や人工構造物の状態監視を低コストで効果的に行えるために発案した本発明の構造物変状検知システムについて説明する。
本発明の構造物変状検知システムは、発光手段を備えたターゲットと、ミラーと、該ミラーを支持・調整するミラー調整治具を備え、発光手段から照射された光が、ミラーに反射し、観測点に到達するか否か、また到達した場合の到達した光の色により、構造物の変状を検知するシステムである。
【0025】
光を利用した構造物変状検知システムは、上述の特許文献1において開示されるように、発明者によって既に開発されている。しかしながら、実際には一部の場合において、視覚的な情報公開を限定的に行う必要がある場合がある。かかる目的に合致する極めて低コストのシステムが、本発明の構造物変状検知システムである。
すなわち、本発明の構造物変状検知システムによれば、例えば、施主やオーナーの意向により、構造物の変状の程度を特定作業員だけに効果的に把握させたい場合に、光とミラーを利用して、低コストでの構造物の状態変化をモニタリングすることが可能になる。
ここで、上記の本発明の構造物変状検知システムにおいて、発光手段を備えたターゲットとは、発光手段そのもの自体がターゲットとなるものや、ターゲットに発光手段の光が照射されるものが含まれる意味で用いている。発光手段を備えたターゲットには、発光ダイオード(LED)で構成された発光パネル自体や、色彩のある看板の傍にサーチライトや蛍光灯を用いて色彩を照らし明るくさせたものが例示される。
【0026】
また、上記の本発明の構造物変状検知システムにおけるミラー調整治具は、ミラーのミラー面が直交する補助ミラーを備えており、その補助ミラーはミラーの上部あるいは下部の位置に配置されることが好ましい。かかる構成により、ミラーと補助ミラーの交差する箇所から直接見える光源の形状と補助ミラーに反射して見える観測点の映像を用いて、ミラーの角度調整を効率的に大まかに行うことが可能である。
また、ミラー調整治具は、構造物に埋設もしくは固設する支柱を、外的な力を加えて弾性変形させることにより、ミラー角度の微調整を行うことができる。外的な力とは、おもりなどを支柱に取り付けることにより生じる鉛直下向き、もしくは滑車を利用することで得られる水平方向の力が生み出す力のモーメントである。支柱を外的な力を加えて弾性変形させるとは、例えば、垂直に立てた剛性のある棒に水平な枝が設けられ、かかる枝におもりを吊り下げて、その力を鉛直下向きに直接伝えること、もしくは滑車を通して水平方向に伝えることで得られる力のモーメントを生み出すことにより、垂直な棒に曲げによる弾性変形、もしくはねじりによる弾性回転変形を発生させることをいう。
【0027】
また、上記の本発明の構造物変状検知システムにおける発光手段は、常時点灯状態および点滅状態を切り替えできることが好ましい。点滅状態に切り替えできることにより、観測点においてターゲットの把握が容易になる。また、点滅状態に切り替えできることにより、観測点ならびにターゲット地点においてミラーを備え付けた構造物の状態変化の把握が容易になる。
【0028】
また、上記の本発明の構造物変状検知システムにおける発光手段は複数の異なる色の光源で構成され各光源が同心円周上に配置されたことが好ましい。あるいは、上記の本発明の構造物変状検知システムにおけるターゲットは異なる色彩で同心円状に模様が描かれ該模様に発光手段の光が照射されたことが好ましい。これにより、観測点においてミラーを備え付けた構造物のその点における変状(主に傾斜を意味する)の方向の把握が可能となる。
【0029】
また、上記の本発明の構造物変状検知システムにおける発光手段は複数の象限に色分けされたパネル光源で構成されたことが好ましい。あるいは、上記の本発明の構造物変状検知システムにおけるターゲットは異なる色彩で象限に色分けされ該象限に発光手段の光が照射されたことが好ましい。これにより、観測点においてミラーを備え付けた構造物の変状の方向の把握が可能となる。
【0030】
また、上記の本発明の構造物変状検知システムにおいて、ミラーを支持・調整するミラー調整治具とは、構造物にミラーを調整し固定できるもので、例えば、上述した本発明のミラー調整治具を好適に用いることができる。
【0031】
また、上記の本発明の構造物変状検知システムにおいて、観測点に受光手段を設け、所定間隔内に受光しない場合にアラームを出力することが好ましい。これにより、観測点において構造物の状態変化の把握が容易になる。すなわち、所定間隔内に受光しない場合、ミラーを備え付けた構造物に変位が生じたと認識し、自動的にアラームを発生する。ここで、アラームは、音告知や外部へのアラーム信号出力を意味する。
【0032】
また、上記の本発明の構造物変状検知システムにおいて、観測点に異なる色波長の受光手段を設け、特定の色波長の光を受光した場合に、受光した色波長に応じたアラームを出力することが更に好ましい。これにより、ターゲットの色(受光の波長)でアラームをレベル分けすることが可能になる。
【0033】
また、上記の本発明の構造物変状検知システムにおいて、観測点にカメラ手段と通信手段を設け、観測点におけるミラーに映る画像を遠隔地でモニタリングできることが更に好ましい。これにより、発光するターゲットをカメラで捕らえ、ミラーを備え付けた構造物の変状を遠隔監視するシステムを構築できる。
【0034】
また、上記の本発明の構造物変状検知システムにおいて、ターゲットの配設地点と観測点を平面図上で同一地点とすることが更に好ましい。ターゲットの配設地点と観測点を同一地点とすることにより、ミラーの姿勢調整が容易となる。すなわち、ターゲットの配設地点と観測点が同じであるため、ミラーの設置地点とターゲットの配設地点を結ぶ直線を鏡軸上に合わせることにより、ミラーの角度を調整できる。また、ターゲットと観測器を一体化できる利点もある。
【0035】
また、上記の本発明の構造物変状検知システムにおいて、ミラーおよびミラー調整治具を複数セットとし、変状モニタリング対象の構造物の複数の地点にミラーおよびミラー調整治具を取り付け、発光手段の照射光が各々のミラーに反射し観測点に到達するように各々のミラーの姿勢を予め調整し、発光手段の照射光が各ミラーに反射し観測点に到達するか否か、若しくは、到達した場合に到達した光の色を判定することにより、構造物の変状を検知することが好ましい。これにより、構造物が渓谷の側道の斜面やダムなど広範囲におよぶものの場合に、複数個所にミラーを据え付けて広範囲を監視する。
ここで、構造物は複数であってもかまわない。また、観測点は複数であってもよい。
【0036】
次に、自然構造物や人工構造物の状態監視を低コストで効果的に行えるために発案した本発明の構造物変状検知方法について説明する。
本発明の構造物変状検知方法は、発光手段を備えたターゲットを不動領域に設け、変状モニタリング対象の構造物にミラーを取り付け、発光手段の照射光が前記ミラーに反射し観測点に到達するようにミラーの姿勢を予め調整し、発光手段の照射光がミラーに反射し観測点に到達するか否か、若しくは、到達した場合に到達した光の色を判定することにより、構造物の変状を検知する。
かかる方法によれば、構造物の変状の程度を特定作業員だけに効果的に把握させたい場合に、光とミラーを利用して、低コストでの構造物の状態変化をモニタリングすることが可能になる。
【0037】
また、上記の本発明の構造物変状検知方法における発光手段は、常時点灯状態および点滅状態を切り替えできることが好ましい。点滅状態に切り替えできることにより、観測点においてターゲットの把握が容易になる。また、点滅状態に切り替えできることにより、観測点ならびにターゲット地点においてミラーを備え付けた構造物の状態変化の把握が容易になる。
【0038】
また、上記の本発明の構造物変状検知方法における発光手段は複数の異なる色の光源で構成され各光源が同心円周上に配置されたことが好ましい。あるいは、上記の本発明の構造物変状検知方法におけるターゲットは異なる色彩で同心円状に模様が描かれ該模様に発光手段の光が照射されたことが好ましい。これにより、観測点においてミラーを備え付けた構造物の変位の方向の把握が可能となる。
【0039】
また、上記の本発明の構造物変状検知方法における発光手段は複数の象限に色分けされたパネル光源で構成されたことが好ましい。あるいは、上記の本発明の構造物変状検知方法におけるターゲットは異なる色彩で象限に色分けされ該象限に発光手段の光が照射されたことが好ましい。これにより、観測点においてミラーを備え付けた構造物の変位の方向の把握が可能となる。
【0040】
また、上記の本発明の構造物変状検知方法において、ターゲットの配設地点と観測点を平面図上で同一地点とすることが更に好ましい。ターゲットの配設地点と観測点を同一地点とすることにより、ミラーの姿勢調整が容易となる。すなわち、ターゲットの配設地点と観測点が同じであるため、ミラーの設置地点とターゲットの配設地点を結ぶ直線を鏡軸上に合わせることにより、ミラーの角度を調整できる。また、ターゲットと観測器を一体化できる利点もある。
【0041】
また、上記の本発明の構造物変状検知方法において、ミラーおよびミラー調整治具を複数セットとし、変状モニタリング対象の構造物の複数の地点にミラーおよびミラー調整治具を取り付け、発光手段の照射光が各々のミラーに反射し観測点に到達するように各々のミラーの姿勢を予め調整し、発光手段の照射光が各ミラーに反射し観測点に到達するか否か、若しくは、到達した場合に到達した光の色を判定することにより、構造物の変状を検知することが好ましい。これにより、構造物が渓谷の側道の斜面やダムなど広範囲におよぶものの場合に、複数個所にミラーを据え付けて広範囲を監視する。
ここで、構造物は複数であってもかまわない。また、観測点は複数であってもよい。
【発明の効果】
【0042】
本発明の構造物変状検知システムならびに構造物変状検知方法によれば、自然構造物や人工構造物の状態監視を低コストで効果的に行える。
また、本発明のミラー調整治具によれば、構造物に備え付けるミラーを目的位置に高精度で角度調整および固定できる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本構造物変状検知システムの基本要素を示した模式図
【図2】本構造物変状検知システムの基本コンセプトの説明図(1)
【図3】本構造物変状検知システムの基本コンセプトの説明図(2)
【図4】本構造物変状検知システムの基本コンセプトの説明図(3)
【図5】任意点に置かれたミラーの中心を通る視線を幾何学的に示す図
【図6】ミラーの両端を通る視線を幾何学的に示す図
【図7】ミラーが捉えるターゲットゾーンを示すグラフ
【図8】ターゲットがミラーの中で次第に右側にずれてゆくことが観測できることを示す図。(a)は初期状態でミラーの中心にターゲットが映し出されている状態,(b)はミラーの回転角が0.04°になった状態。
【図9】ミラーが取り付けられた構造物の状変の変位精度の説明図
【図10】ミラーの回転による視線のずれの説明図
【図11】ミラーの回転角が0.01°の場合に光が反射しなくなるミラーの大きさを算出するグラフ
【図12】複数の色彩の光源からなるターゲットを示す図
【図13】色彩が段階的に変化する様子の説明図
【図14】ミラーの初期設定位置からの回転方向に依存せず、回転角の絶対値として捕らえることができる光源の配置の一例を示す図
【図15】段階的にミラーに映る光の色を制御できる様子を示す図
【図16】ツートーンの光源からなるターゲットを示す図
【図17】4つの象限パターンからなるターゲットを示す図
【図18】1つの変状の検知対象領域内の変状のモニタリング例
【図19】複数の変状の検知対象領域内の変状のモニタリング例
【図20】複数の変状検知対象領域を複数の観測点でモニタリングする例
【図21】ミラー調整治具の説明図
【図22】ミラー調整治具の裏面の構造模式図
【図23】ミラー調整治具の側面の構造模式図
【図24】ミラー調整治具における左右の角度半減機構の説明図1
【図25】ミラー調整治具における左右の角度半減機構の説明図2
【図26】ミラー調整治具における左右の角度半減機構の説明図3
【図27】光源と観測器の一体型装置の説明図
【図28】視線方向と補助ミラーの機能についての説明図
【図29】概略方向合わせをする際の解説図
【図30】設置作業者および観測点に立つ観測者が見る姿の概略図
【図31】他の実施形態のミラー調整治具の背面を正面とする正面図
【図32】図31の平面図
【図33】図31の左側面図
【図34】図31の右側面図
【図35】微小角度を調整するための手段の説明図1
【図36】微小角度を調整するための手段の説明図2
【図37】微小角度を調整するための手段の説明図3
【図38】微小角度を調整するための特殊ポールの説明図
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明していく。なお、本発明の範囲は、以下の実施例や図示例に限定されるものではなく、幾多の変更及び変形が可能である。
【0045】
先ず、本発明の構造物変状検知システムならびに構造物変状検知方法の基本コンセプトについて説明する。
図1は、本発明の構造物変状検知システムならびに構造物変状検知方法の基本要素を示している。基本要素は、ミラー1と、ミラー1を支持・調整するミラー調整治具2と、発光手段を備えたターゲット3と、観測点4である。発光手段を備えたターゲット3には、発光手段そのもの自体がターゲットとなるものや、ターゲットに発光手段の光が照射されるものがある。
【0046】
図1では、発光手段の光が四方八方に放出され、ミラー1に向かって照射された光(矢印5)は、ミラー1に反射して、ミラー1による反射光が観測点4に到達する(矢印6)。
ここで、発光手段は、発光ダイオード(LED)、レーザーダイオード(LD)、固体レーザー発振器などのレーザー、サーチライト、蛍光灯などが用いられる。発光手段を備えたターゲットは、具体的には、発光ダイオード(LED)で構成された発光パネル自体や、色彩のある看板の傍にサーチライトや蛍光灯を用いて色彩を照らし明るくさせたものである。色彩のある看板の傍にサーチライトや蛍光灯を用いて色彩を照らし明るくさせたものをターゲットとすることで、ターゲットが大型化した場合のコスト削減を図ることができる。
【0047】
図2〜4は、本発明の構造物変状検知システムならびに構造物変状検知方法の基本コンセプトを説明するための模式図を示している。
図2において、観測点4から距離d1にミラー1の中心(Xm,Ym)を配置することとし、そこからターゲット3の中心までの距離をd2とする。図において、縦線より左側がオープンスペース(Open space)で、縦線上にターゲット3および観測点4が配置されている。
【0048】
図3は、ミラー1と、ミラーに映る領域を示している。ミラー1は、所定の幅Sを有している。観測点4から見て、ターゲット3が映っている状態を初期状態とする。ターゲット3は、ミラー1に映っているターゲット領域(TaからTbまで)の中央付近にあるものとする。なお、図3や図4の中の線は、観測点4からミラー1の両端を経て、視線が縦線のどこを捉えているかを示すものである。
【0049】
図3において、ミラー1が山の斜面やダムなどの構造物に固定されていて、その固定箇所に傾きθmが生じた場合を考える。その場合、不動領域にある観測点4にいる者にとって、ミラー1に映っている場所が変化することになる。
図4は、θmが一定の大きさになり、図3の初期状態では観測されていたターゲット3が観測されなくなっている状態を示している。
以上、説明した原理を用いると、発光手段と観測点4の場所を不動領域に設置することを条件に、低コストの構造物の変状をモニタリングするシステムや方法が簡易に実施できることになる。
【0050】
構造物の変状をモニタリングの手順は、以下のステップ1〜4である。
(ステップ1)発光手段を備えたターゲットを不動領域に設ける。
(ステップ2)変状モニタリング対象の構造物にミラーを取り付ける。
この場合、1箇所でなくとも、複数個所に取り付けることで、各所で変状をモニタリングすることが可能となる。
(ステップ3)指定された観測点において、発光手段の照射光がミラーに反射し観測点に到達するように、ミラーの姿勢を調整する。すなわち、すべてのミラーにターゲットが映るようにそれぞれのミラーの方向を調整する。調整する際に用いる治具は、1台だけあればよく、1か所に設置した後、それを次々と別の場所での設置に用いることとする。
(ステップ4)発光手段の照射光がミラーに反射し観測点に到達するか否か、若しくは、到達した場合に到達した光の色を判定することにより、構造物の変状を検知できる。すなわち、観測点に再び立ち、ミラーにターゲットが映っていないことが確認されれば、ミラーを取り付けた箇所に一定値以上の角度変化が生じたことが視覚的に確認できるのである。
【0051】
図5は、任意点に置かれたミラーの中心を通る視線を幾何学的に示す図である。図5において、観測点を原点(0,0)と仮定し、任意点(x,y)において鉛直から時計回りにθmの角度を有するミラーを設置する。この時、観測点からミラーの中心を見た場合、ターゲット(xt、yt)が観測されているとする。この時、幾何学的関係から、ターゲットポイントのy座標ytは以下数式で与えられる。
【0052】
(数1)
yt = ym−(xt−xm)tan(θm−(π/2−β))・・・(式1)
【0053】
上記数式1の関係を利用して、観測点からミラーの左端および右端を通ってターゲットライン(x=xt)に到達するポイントTaおよびTbを求める。
図6は、ミラーの両端を通る視線を幾何学的に示す図である。図6において、原点を観測点とし、長さ40mmのミラーを、ミラー中心が位置(−20m,10m)になるように配置する。この時、観測点からミラーを観測すると、ターゲットライン上のTaからTbまでの範囲(長さ120mm)が観測されることになる。
【0054】
この状態から、ミラーに対して、時計回りの回転を0.04°まで与えたとき、ミラーが捉えるx=20mでのターゲットゾーンを図7のグラフに示す。図7のグラフにおいて、横軸はミラーの回転角度を示しており、縦軸はミラーに映る範囲(図6におけるTaとTbの間の範囲)のY座標を示す。
幅10mm程度の大きさのターゲットを準備し、ターゲットが鏡の中心に映るように最初の設定を行う。その後、ミラーの回転角が増えてくるにつれて、ターゲットゾーンはその幅をほぼ一定に保ったまま、図7のグラフで下側にシフトする。この時、観測点では、図8に示すように、ターゲットがミラーの中で次第に右側にずれてゆくことが観測できることになる。ここで、図8(a)は初期状態でミラーの中心にターゲットが映し出されている状態である。また、図8(b)はミラーの回転角が0.04°程度になった状態である。図8(a)(b)に示すように、ミラーの回転によって映し出されるゾーンがシフトし、ミラーの回転角が0.04°程度になった時点で、幅10mmのターゲットが全て、ミラーのターゲットゾーンから外れるため、観測点においてミラーに映っていたターゲットが観測できなくなる。この時点で、ミラーが設置されている箇所において、どちらかの方向に0.04°の回転があったことが視覚的に確認できることになる。ここで、どちらかの方向というのは、ミラーの回転が時計回りであっても、その逆であってもほぼ同じ回転角度で光源が見えなくなることを意味する。
【0055】
ミラーのサイズ,ターゲットとの距離,ミラーに映る範囲(ミラーで反射される範囲)から、ミラーが取り付けられた構造物の状変の変位精度について示す。図9に示すように、大きさ(例えば、ミラーが円形のものでは、直径)Sのミラーを観測点から距離d1に配置し、そのミラーから更にd2離れた場所のS’の領域が映っている状態を想定する。図9では、幾何学的関係を明確にするために、反射ではなく投影させるという形で図示する。
【0056】
図10に、ミラーの回転による視線のずれ(すなわち、ミラーに映るポイントのずれ)を図示する。観測点4からは最初にAが見えていたが、ミラー1がαだけ回転した後は見えるポイントはA´となる。この時、ミラー1の中心からターゲットに至る視線のラインは、当初のラインから2αだけ回転することになる。この幾何学的関係から、以下の関係式を導くことができる。
【0057】
(数2)
S = 2tan(2α)d1d2/(d1+d2) ・・・(式2)
【0058】
上記数式2において、Sは、ミラーの直径,αはミラーの回転角度、d1は観測点からミラーの中心までの距離、d2はミラーの中心から最初に見えていたポイントまでの距離である。
上記数式2を用いると、観測点からミラーの中心位置までの距離と、ミラーからターゲットまでの距離を把握した上で、要求される精度を達成するためのミラーの大きさSを決定できる、ここで、要求される精度とは、ミラーが何度回転したらターゲットがミラーで観測できなくなるか、あるいは、ターゲットの色や形を細工することでミラーが何度回転したらミラーに映るターゲットの色や形が変わるのか、ということである。
【0059】
図11に、ミラーの回転角が0.01°の場合に光が反射しなくなるためのミラーの大きさを算出するグラフを示す。ここで横軸はミラーとターゲットの距離d2を示し、縦軸はミラーの大きさSを示している。グラフは、ミラーと観測点との距離d1を10,50,100,200,300,400(m)とした場合をプロットしている。例えば、観測点から鏡までの距離d1を200mとし、ミラーからターゲットまでの距離d2を150mと想定した場合、ミラーの大きさ(直径)Sが約60mmの鏡を使用することで、回転角0.01°を判定できる高精度センサを構築できることがわかるのである。
【0060】
また、ミラーの回転が進んでゆく段階に応じて、ミラーに映る光の色を変えると、ミラー設置個所に生じる変状の度合いを段階的に捕らえることができる。
図12に、複数の色彩の光源からなるターゲットの一例を示している。ここでは、ミラーの回転軸が安定し、ミラーに映るターゲットゾーンが一方向のみに移動していく場合を想定する。図12において、Z20がミラーに映るターゲットゾーンであり、L1,L2,L3は3つの異なる色彩の光源である。今、光源L1の色を緑色、光源L2の色を黄色、光源L3の色を赤色とする。
図13に示すように、初期設定としてミラーに映るゾーンの中心に緑の光源L1を配置する(図13(a)の状態)。ミラーの回転が生じると、ゾーンが移動するためミラーに映る光の色が光源L2の色の黄色に変化する(図13(b)の状態)。更に、ミラーの回転が生じると、ゾーンが更に移動するためミラーに映る光の色が光源L3の色の赤に変化する(図13(c)の状態)。このように、緑,黄色,赤と段階的に変化するシステムを構築することができる。
【0061】
一般的に、構造物に取り付けたミラーの回転軸は予め予測することは困難である。
そのため、ミラーの回転の方向が任意であっても、その程度を表現できるために、ターゲットとなる光源の配置パターンに工夫を施す。図14は、ミラーの初期設定位置からの回転方向に依存せず、回転角の絶対値として捕らえることができる光源の配置の一例を示したものである。図14に示すように、複数の光源を用いて直径のことなる複数の円形光源(31,32,33)を構築する。直径が異なるものは、異なる色の光源にする。これを円形のミラーで映し出すようにする。図14の円形40は、円形のミラーが映しているゾーンを示している。ここで、例えば、円形光源31の色は緑色、円形光源32の色は黄色、円形光源33の色は赤色のパターンとする。
図15に示すように、このパターンでは、初期設定を緑色とし,段階的に黄色(図15(a)の状態)、赤色(図15(b)の状態)とミラーに映る光の色を制御できることがわかる。
【0062】
また、光源の設定やミラーの形状は目的に応じて自由に設定することが可能である。図16に示すツートーンの光源(34,35)からなるターゲットを用いることにより、ミラーが上向きに回転しているのか、あるいは、下向きに回転しているのかを見極めることができる。
また、図17に示す4つの象限パターンからなるターゲットを用いることにより、4つの象限のどのエリア(36,37,38,39)にミラーのゾーン40が移動しているかを見極めることができる。
このように、適用現場の状況により、自由な光源パターンとミラーの形状を設定することが可能である。
【0063】
図18に1つのターゲット3となる光源と1つの観測点4を準備し、1つの変状の検知対象領域5内の5点(1a,1b,1c,1d,1e)における変状のモニタリング例を示す。計測対象点数を増やしても、必要になるのはミラーだけである。従って、計測対象点数の増加に伴う追加のコストは低く抑えられることになる。また、観測点においては、肉眼で観測するだけではなく、デジタルカメラやビデオカメラなどで映像を記録することも可能である。また、それらの映像を画像処理ソフトで処理することにより、光の色の変化を記録することも可能である。
【0064】
図19に複数の変状検知対象領域がある場合のシステムの構成要素の配置レイアウト例を示す。この例では、2つの領域(5a,5b)、例えば、2つの地滑りゾーンを想定して、それぞれに5点ずつのミラーを設置している(1a〜1e,1f〜1j)。計測対象点は合計10か所となっているが、ターゲット3となる光源および観測点4は1点ずつであり、コストは最小限に抑えられることがわかる。
【0065】
また、図20に複数の変状検知対象領域を複数の観測点(4a,4b)でモニタリングする例を示す。観測点は原則的には1点あれば十分であるが、観測作業の実態やその場所に関する諸事情により、複数の観測点を設けたほうが良い場合が考えられる。この場合でも、ミラーの設置角度を変えるだけで様々な観測体制に対応できる柔軟なシステムを構築できることがわかるであろう。
【実施例1】
【0066】
次に、本発明のミラー調整治具の一実施形態を説明する。図21は、ミラー調整治具の概略構成図である。
図21に示すミラー調整治具は、以下のa)〜e)の要素から構成されるものである。
a)構造物に埋設する支柱30
b)ミラー1を固定するミラー支持部21
c)支柱30に設けられ、ミラー支持部21に設けられた脚部22を挿入して内部に固化材34を充填させることによりミラー支持部21を固定し得る脚受け部32
d)ミラー支持部21の傾斜角を調整し得る角度調整部25
e)角度調整部25を一端で支持し、他端で支柱30と連結固定されるアーム部27
【0067】
上記a)の支柱30は鉄筋で形成された棒状のものである。自然構造物および人工構造物の構造物に埋設して固定する。
また、上記b)のミラー支持部21は、平面鏡のミラー1の側面を挟み込んで、もしくはミラーホルダーを後方よりネジ止めにて、ミラーを固定する。
また、上記c)の脚受け部32は、支柱30の上端部、もしくは支柱30の周囲に設けられている。脚受け部32は、地面に設置された支柱30の角度により、上端部ではなく、取り付け治具を用いて支柱30の横に設置する場合もある。脚受け部32の形状は、上面が開口された受け筒状である。脚受け部32には、内部にミラー支持部21の脚部22が挿入されている。脚受け部32の内部にセメント系の固化材34を充填させて、ミラー支持部21を固定する。
【0068】
上記d)の角度調整部25は、ミラー支持部21の傾斜角を調整する。角度調整部25は、コの字状の形状を呈しており、アーム部27の一端27aで垂直軸26により吊り下げられている。角度調整部25は、垂直軸26の回動によって、左右の傾斜角度が調整される。また、ミラー支持部21の左側面に取り付けられた部材23aと右側面に取り付けられた部材23bは、コの字状の角度調整部25の左端部25aと右端部25bとそれぞれ水平軸(24a,24b)によって軸着されている。
水平軸(24a,24b)の回動と垂直軸26の回動を組み合わせて、ミラー支持部21の傾斜角、すなわち、ミラーの正面からみて左右・前後の傾斜角を任意に調整する。
【0069】
上記e)のアーム部27は、角度調整部25を一端(27a)で吊り下げて支持する。また、アーム部27は、他端(27c)で支柱30と部材28を介して連結固定される。部材28は、ネジで締め付け支柱30に固定する。
【0070】
次に、図22と図23を参照して、ミラー調整治具における微調整機構について説明する。図22は、ミラー調整治具の裏面の構造模式図である。図23は、ミラー調整治具の側面の構造模式図である。
ミラー調整治具における微調整機構は、図22に示すように、ミラー1の裏面に設けられたステー40と脚部22の上方に設けられた支持部材51を3点の止ネジ(52,62,72)で支持する。3点の止ネジ(52,62,72)のうち1点の止ネジ62の先端は球状曲面67に構成し、球状曲面67と摺動接触する凹部45をステー40の裏面に設ける(図23を参照)。これにより、止ネジ62の先端の球状曲面67が凹部45の内面に摺動接触して、ミラーを揺動可能に保持する。
この場合、図22に示すように、支持部材51の左側面に取り付けられた部材23aと右側面に取り付けられた部材23bが、コの字状の角度調整部25の左端部25aと右端部25bとそれぞれ水平軸(24a,24b)によって軸着される。
【0071】
図23に示すように、先端を球状曲面67に構成した止ネジ62は、止ネジの支持部材51と間にストッパー65が設けられている。他の止ネジ52は、ステー40の裏面の補強部材43と支持部材51の間にスプリング55が設けられている。止ネジ52を右回りに回すことで、ステー40の補強部材43と支持部材51の間の間隔を広げることができる。止ネジ52と止ネジ72のネジを調整することにより、ステー40に固定されたミラー41の角度の微調整が行える。
また、図23において、ハウジング部材40は、正面(図の左側)から見ると円形をしており、この中に円形のミラー41が収納できる構造となっている。42aおよび42bは、リング状の1つの部材である。部材(42a,42b)は、ミラー41がハウジング部材40から外れないように、ハウジング部材40の内側周囲に形成されたネジ溝にねじ込まれ、ミラー41の脱落を防いでいる。
【実施例2】
【0072】
実施例2では、上述の実施例1のミラー調整治具において、角度半減機構の一実施形態を説明する。図24〜図26は、角度半減機構の説明図である。
角度半減機構は、実施例1の角度調整部25において、図21に示す垂直軸26の回転角度を、操作角度の1/2の角度にするものである。
すなわち、角度半減機構は、図24や図25に図示するように、操作者がA方向をターゲットの方向とし、そこから観測点の方向であるB方向まで回転操作を行った場合、操作角度の1/2の角度に垂直軸26(図示せず)が自動的に回転する機構である。この機構を用いることにより、ターゲットのあるA方向と観測点のあるB方向の真ん中の方向にミラーの鏡軸を合わせることが容易にできる。これにより、A方向にターゲットの光源がある場合、ミラーに反射した光源の光は観測点のB方向に進むのである。
【0073】
角度半減機構の構造は、4つのギアー(G1〜G4)で構成される。角度半減機構は、アーム72の上方に位置し、軸心74を中心にして回動する。角度半減機構には、軸心74を共通にする2つのギアー(G1,G4)があり、これらの2つのギアーの軸は分離している。ギアーG1とギアーG4の歯数と径は異なり、上方に位置するギアーG4の方が、垂直軸26と連結するギアーG1よりも歯数と径が小さい。
一方で、上方に位置するギアーG4と噛み合うギアーG3が存在する。また、下方に位置するギアーG1と噛み合うギアーG2が存在する。これらの2つのギアーは、軸心75を共通にし、軸も共通である。上方に位置するギアーG4と噛み合うギアーG3と下方に位置するギアーG1と噛み合うギアーG2の歯数と径は異なり、上方に位置するギアーG3の方が、垂直軸26と連結するギアーG2よりも歯数と径が大きい。
【0074】
そして、ギアーG4が回転すると、それに噛み合うギアーG3が回転し、ギアーG3と軸を共通にするギアーG2がギアーG3の回転角と同一になるように回転する。ギアーG2が回転すると、それに噛み合うギアーG1が回転し、ギアーG1と部材25を介して連結する垂直軸26がギアーG1の回転角と同一だけ回転する。垂直軸26が回動することにより、その下方の角度調整部(図示せず)が回動する。
実施例2では、ギアーG1,G2,G3,G4の歯数を、それぞれ、75,75,100,50とする。この場合、歯数50のギアーG4が1回転すると、それに噛み合う歯数100のギアーG3は0.5回転する。ギアーG3と軸が共通であるギアーG2は、ギアーG3の回転角と同一の0.5回転する。歯数75のギアーG2が0.5回転すると、それに噛み合う同一歯数のギアーG1も0.5回転する。
従って、角度半減機構をアーム27上で軸心74を中心に回転させると、その回転角はギアーG4の回転角となるので、ギアー1の回転角はその半分の角度となり、ギアー1と垂直軸26を介して連結する角度調整部が半分の角度で回転することになる。
【実施例3】
【0075】
実施例3は、ターゲットの光源と観測器を一体型にした装置について説明する。図27は、光源と観測器の一体型装置の外観図を示している。
光源自体がターゲット3となり、光源から放出された光をミラー(図示せず)で反射して観測点4となる受光器でとらえる。ターゲット3と観測点4は水平バー81の上に設置されている。水平バー81は、三脚(84,85,86)を用いて地面に固定する。ターゲット3と観測点4の間の距離は、ターゲット3とミラー(図示せず)の間の距離と比較して、無視できる程度のものである。実際に使用する際は、例えば、ターゲット3とミラーの間の距離が200m程度で、ターゲット3と観測点4の間の距離は40cm程度であり、500:1程度の比である。従って、ターゲット3と観測点4の間の距離は無視でき、ほぼ同地点にあるとしてミラー角度を調整できる。そのため、ミラー調整が容易となり、システムのインストール作業や調整作業の利便性が向上する。
なお、ターゲット3と観測点4の間の距離は、40cmに限定されるものではなく、更に近づけてもよく、また1m程度はなれても構わない。
【実施例4】
【0076】
実施例4では、ミラーを設置する作業を効率化するための方法について、図28〜30を参照しながら説明する。
先ず、設置作業をする際の設置作業者の視線方向と、設置作業者の作業を合理化するために必要な補助ミラーについて、図28を参照して解説する。図28に示すように、補助ミラー102の法線がx軸に一致するように、補助ミラー102とメインミラー101に連結する。この時、設置作業者の視線(これは、原点Aを通る)は、原点Aと光源100を結んだ線に一致し、対称な位置に原点Aと観測点4を結んだ線が存在するようにミラー全体の方向を調整する。
【0077】
ミラー全体の方向の調整作業を説明するために、ミラーの構造をやや大きめに描いた図29を参照しながら説明する。図29に示すように、補助ミラー102(鏡面は右側)の法線がx軸に一致し、メインミラー101(鏡面は図では奥側)はy軸に一致する。
この時、視線の向こうに光源100(円形であることを想定)の中心が来るようにすると、設置作業者は光源100の右上1/4(図30(1)の104で示す部分)が見えることになる。また、設置作業者の視線が補助ミラー102によって折れ曲がり、その先に観測点4(ある大きさの円形と想定)の中心が来るとすれば、設置作業者は、観測点4の左上1/4(図30(1)の105で示す部分)を見ることになる(図30(1)を参照)。
また、この状態で、観測点4に立った観測者は、図30(2)に示すように、光源100の下半分がメインミラー101の上の辺の中心に映って見えることになる。
すなわち、光源100を映すミラーが、2つの直交するミラー面を持っていることにより、ミラーの設置作業者は、その後ろ側(光源100や観測点4の側と反対側)に立ち、幾何学的関係からミラーの初期位置を自らでおおよそ正しい方向に向けることができるのである。これは、ミラーの設置作業の効率化を図る上で重要なポイントとなる。
しかしながら、これは、ミラーの方向合わせが完璧にできる場合であり、実際の現場での設置作業にはある程度の誤差が付きまとうという問題が残る。
【0078】
そこで、概略的にミラー全体方向の調整が終了した後に、設置作業者は、観測点4に立つ観察者と相互に連絡を取りながら、メインミラー101の裏側に取り付けた方向調整ねじを用いて、メインミラー101の中心に光源100の中心が来るように方向を調整する。この際、距離が大きい場合は、観測者は望遠鏡を用いる必要がある。上記方法を用いることにより、ミラー全体方向の初期設定が完了する。
【0079】
次に、上下方向および左右方向の微調整が行える方向調整ねじをミラーの裏側に備えたミラー調整治具について説明する。図31〜34は、本実施例のミラー調整治具の構成を説明するための図であり、それぞれ、正面図(但し、実施例1のミラー調整治具の背面に相当する部位を正面としている。),平面図,左側面図,右側面図を示している。
以下、方向調整ねじをミラーの裏側に備えたミラー調整治具について詳細に説明する。
【0080】
図31は、ミラー(図示せず)を取り付けるミラー支持部110とミラー支持部の傾斜角を調整する角度調整機構を示している。角度調整機構は、図31に向かって右側の左右方向調整機構(130,132a,132b,134,136,138)と、左側の上下方向調整機構(140,142a,142b,144,146,148)と、アーム部(132a〜132d,142a〜142b)からなる。アーム部は構造物に固定された支柱に120の孔を介して接続される。
以下に、角度調整機構について、図32〜34を参照して詳細に説明する。
図32に示すように、ミラー支持部110は、両側に立てられた側片(112,114)を介して、ピン(134,144)が回転軸となり、アーム部(132b,142b)に取り付けられている。
【0081】
左右方向調整機構(130,132a,132b,134,136,138)は、ミラー支持部110に取り付けられた部材136をアーム部(132a)とバネ138で接続すると共に、調整ネジ130のネジ頭で左右方向の角度を調整できるようにしたものである。図34に示すように、調整ネジ130のネジ頭で部材136を図34の右方向に動かすと、ピン134がアーム部132bに設けられた水平方向に長いスリット孔132dを右方向にスライド移動できるようになっている。また、調整ネジ130のネジ頭を図34の左方向に動かすと、部材136がバネ138に引っ張られて左方向に移動し、ピン134がスリット孔132dを左方向にスライド移動する。
【0082】
上下方向調整機構(140,142a,142b,144,146,148)は、ミラー支持部110に取り付けられた部材146をアーム部(142a)とバネ148で接続すると共に、調整ネジ140のネジ頭で上下方向の角度を調整できるようにしたものである。図33に示すように、調整ネジ140のネジ頭で部材146を図33の左方向に動かすと、ミラー支持部110が、ピン144およびピン134を回転軸として右周りに回転できるようになっている。また、調整ネジ140のネジ頭を図33の右方向に動かすと、部材146がバネ148に引っ張られて、ミラー支持部110が、ピン144およびピン134を回転軸として左周りに回転する。
ここで、部材146は図33に示すように弧を描いた形状にすることで、ミラー支持部が回転した場合でも、常に部材146の表面に垂直に力が加わるようにしている。
【実施例5】
【0083】
ミラーには、標準的な角度調整機能が備わっており、それを支える支柱には微小な角度調整を可能とする角度調整機能が備わっていることが好ましい。一般的に、測量器具で、角度合わせをする際は、三脚を設置し、そのうえに取り付ける測量器具が備えている角度調整機能を利用するのが常識となっている。その際、三脚は動かないことが前提となっている。一般的に使用されている20秒読み程度の測量器具で考えると最小調整角度が20秒、すなわち、1°の1/60の1/60の20倍である。これは、角度で表すと、0.0056°程度になる。観測者からミラーの距離がkmオーダーになってもミラーの設置が容易にできるようになることが要求されている。
【0084】
例えば、0.001°レベルのオーダーで鏡の角度を微調整したい場合、この通常の測量器具が具備している最高レベルのさらに5倍の精度が必要になる。ちなみに、この角度は、1km離れた場所で1.74mm、或いは5km離れた場所で8.7mmずれる程度の超微小角度である。このように、観測者からミラーまでの距離がkmのオーダーになった場合、ミラーの裏側の方向調整ねじにおいても、高い精度で位置合わせが困難になることが想定される。
【0085】
かかる状況に鑑みて、以下では、超微小角の調整を可能とする手段について説明する。
観測者からミラーまでの距離がkmのオーダーになった場合、微小角度を調整する機能は、通常の概念では達成できないので、ミラーを設置する基礎構造(通常は三脚で動かないという扱いを受けるもの)の弾性変形を利用して、きわめて微小な角度の調整を行うことした。
【0086】
図35に示すように、しっかりと土中に埋め込まれ固定された鋼棒(地上部分の長さL)があり、その先端から直角に伸びたアーム(長さA)があると想定する。その先端には、おもりを吊るした場合、鋼棒の上部先端に力のモーメントが作用して、おもりを吊るした箇所からアーム部分および鋼棒全体において右回りの回転角度が生じることになる。この時、回転角度はアームの先端で最大値を取るが、ミラーが固定されている鋼棒の上部先端において生じる回転角度が鏡の角度を微調整する角度となる。
【0087】
E:205800(N/mm2)
D:10(mm)
I:490(=πd4/64)
L:500(mm)
A:100(mm)
W :9.8N (1kgf)
【0088】
上記値を代入すると、鋼棒の上部先端での右回りの回転角度が、0.278°であることになる。これを元に単純計算すると、アームの先端に吊るす重さを調整すれば、その先端の角度変化を意のままに、しかも超微小角度のレベルで調整できることがわかる。例えば、以下のような重さと角度変化の関係になる。
【0089】
100g ・・・ 0.0278°
10g ・・・ 0.00278°
1g ・・・0.000278°
【0090】
この角度調整機能とその精度は鋼棒の直径,長さ,アームの長さ,アームの先端にかける力を適切に選ぶことによって自由に設定できるという自由度がある。また、先端に重りを吊るす代わりに、これをターンバックルのねじの回転による強制微小変位として与えても同様の効果が得られることになる。
この原理を使うと、次のようなアレンジが可能であることがわかる。図36に示すように、M3の場所からz軸に平行なBranch
1とx軸に平行なBranch 2を設ける。それぞれの端部(A,B,C,D)に所定の角度変化を生じさせる重りを吊るすことが可能である。
【0091】
また、図36のメインポールにねじりを与えたい場合は、W5やW6の方向に力を与える必要がある。この場合、図37に示すように、地面に別途土台と滑車を設けて、それらを利用して重りの力が水平面内でメインポールに伝達されるようにすることができる。これらの力(W1からW6)を制御することにより、あらゆる方向における超微小角度調整が可能になる。
【0092】
重りの代わりに、ターンバックルを用いれば、図38に示すものになる。図38に示すように、地面(xz面)に垂直にポールを埋め込む。特殊ポールは、基本軸はM0からM4へのラインで構成される。特殊ポールの材質は、温度膨脹係数ができるだけ小さい金属が望ましく、本実施例ではすべて鋼棒で構成されている。また、特殊ポールは、M2から2本の枝が出ている構成を備える。但し、これらの枝は必ずしも同一点に溶接される必要はない。なお、1本目の枝(Branch
1)はzy面内にあり、2本の枝(Branch 2)はxy面内にある。
【0093】
また、M3からx軸方向にBranch 3が溶接されている。ここで、Branch 1の先端AとM3を結んだラインおよびBranch 2とBranch 3の先端Cを結んだラインにターンバックルを取り付ける。ここで、ターンバックルとは、互いに逆向きのねじ切りを有する鋼棒をナットで連結した“長さ調整棒”であり、ナットを回転することによって、ターンバックルの両端間の長さを自由に調整できるものである。
A−M3のラインに装着したターンバックルを用いて、メインポールとBranch1の間の角度を強制的に変化させることにより、ミラーをx軸周りに微調整できる。また、B−Cのラインに装着したターンバックルを用いて、メインポールをy軸周りに強制的に微小角度だけ回転させることができる。これらの作業は互いにわずかの干渉を及ぼしあうが、その作業を繰り返し行うことによって、kmのオーダーの空間においてもミラー角度を正しく調整できることになる。
【0094】
この特殊ポールにおいて、例えば、M2−M3の距離が50cm、またメインミラーの裏に供えられた角度調整ねじとそれを用いる際の回転の中心(支点)までの距離が5cmであると想定する。この時、角度調整ねじとターンバックルのねじピッチが同一であると仮定すると、この特殊ポールを用いた角度調整精度は、ミラーの裏の調整ねじだけを用いた場合の10倍程度の精度を有することになる。これは、回転が生じる際のアームの長さ(50cmに対する5cm)の比から決定される量である。
【0095】
(その他の実施例)
(1)実施例1において、アーム部25の形状は、コの字状であったが、U字状やV字状でもかまわない。特に、V字状の場合は、水平な辺と斜めの辺の2辺で形成されるものにし、ミラー支持部21の荷重を支えるようにする。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明は、上述したような自然構造物、土木構造物、建築構造物、およびそれに関係する建設機械を対象として構造物の建設中および供用後のすべての期間において変状を監視し、安全性を確認するためのシステムならびに方法として有用である。
【符号の説明】
【0097】
1 ミラー
2 ミラー調整治具
3 ターゲット
4 観測点
30 支柱
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物に埋設もしくは固設する支柱と、
ミラーを固定するミラー支持部と、
前記支柱に設けられ、前記ミラー支持部に設けられた脚部を挿入して内部に固化材を充填させることにより前記ミラー支持部を固定し得る脚受け部と、
前記ミラー支持部の傾斜角を調整し得る角度調整部と、
前記角度調整部を一端で支持し、他端で前記支柱もしくは前記脚受け部と連結固定されるアーム部と、
を備えたことを特徴とするミラー調整治具。
【請求項2】
前記角度調整部は、前記ミラー支持部の1辺の側面部もしくは対向する2辺の側面部と軸着された第1部位と、第1部位と前記アーム部とが軸着された第2部位とからなり、第1部位と第2部位の各々の軸が回転することにより前記ミラー支持部の傾斜角を調整できることを特徴とする請求項1に記載のミラー調整治具。
【請求項3】
前記角度調整部において、前記第2部位の軸の回転角度を操作角度の1/2の角度にする角度半減機構を更に備えたことを特徴とする請求項2に記載のミラー調整治具。
【請求項4】
前記ミラー支持部は、ミラーの鏡軸の角度を微調整する微調整機構を備え、該微調整機構は、ミラー裏面に設けられたステーと、前記脚部の上方で前記ステーの後方に設けられた支持部材を3点の止ネジで支持するものであり、いずれか1点の止ネジの先端を球状曲面に構成し、前記球状曲面と摺動接触する凹部を前記ステーの裏面に設け、前記止ネジの先端が前記凹部の内面に摺動接触することにより、ミラーを前記支持部材上に揺動可能に保持させることを特徴とする請求項2又は3に記載のミラー調整治具。
【請求項5】
前記角度調整部と前記アームの間には、前記支柱の軸方向にスライドし得るスライド機構が更に設けられたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のミラー調整治具。
【請求項6】
前記ミラーの前面には、ミラー面積を調整する遮光部材が被覆されたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のミラー調整治具。
【請求項7】
発光手段を備えたターゲットと、ミラーと、 該ミラーを支持・調整するミラー調整治具を備え、
前記発光手段から照射された光が、前記ミラーに反射し、観測点に到達するか否かにより、構造物の変状を検知する構造物変状検知システム。
【請求項8】
発光手段を備えたターゲットと、ミラーと、 該ミラーを支持・調整する請求項1〜5のいずれかのミラー調整治具を備え、
前記発光手段から照射された光が、前記ミラーに反射し、観測点に到達するか否かにより、構造物の変状を検知する構造物変状検知システム。
【請求項9】
前記発光手段は、常時点灯状態および点滅状態を切り替え得ることを特徴とする請求項7又は8に記載の構造物変状検知システム。
【請求項10】
前記発光手段は複数の異なる色の光源で構成され各光源が同心円周上に配置されたこと、又は、前記ターゲットは異なる色彩で同心円状に模様が描かれ該模様に前記発光手段の光が照射されたことを特徴とする請求項7〜9のいずれかに記載の構造物変状検知システム。
【請求項11】
前記発光手段は複数の象限に色分けされたパネル光源で構成されたこと、又は、前記ターゲットは異なる色彩で象限に色分けされ該象限に前記発光手段の光が照射されたことを特徴とする請求項7〜9のいずれかに記載の構造物変状検知システム。
【請求項12】
前記観測点に受光手段を設け、所定間隔内に受光しない場合にアラームを出力することを特徴とする請求項7〜11のいずれかに記載の構造物変状検知システム。
【請求項13】
前記観測点に異なる色波長の受光手段を設け、特定の色波長の光を受光した場合に、受光した色波長に応じたアラームを出力することを特徴とする請求項10又は11に記載の構造物変状検知システム。
【請求項14】
前記観測点にカメラ手段と通信手段を設け、前記観測点における前記ミラーに映る画像を遠隔地でモニタリングできることを特徴とする請求項7〜13のいずれかに記載の構造物変状検知システム。
【請求項15】
前記ターゲットの配設地点と前記観測点を同一地点とすることを特徴とする請求項7〜14のいずれかに記載の構造物変状検知システム。
【請求項16】
前記ミラー調整治具は、前記ミラーのミラー面が直交する補助ミラーを備え、その補助ミラーは前記ミラーの上部あるいは下部の位置に配置され、前記ミラーと補助ミラーの交差する箇所から直接見える光源の形状と補助ミラーに反射して見える観測点の映像を用いて、前記ミラーの角度調整を行うことを特徴とする請求項7に記載の構造物変状検知システム。
【請求項17】
前記ミラー調整治具は、構造物に埋設もしくは固設する支柱を、外的な力を加えて弾性変形させることにより、ミラー角度の微調整を行うことを特徴とする請求項7又は8に記載の構造物変状検知システム。
【請求項18】
前記ミラーおよび前記ミラー調整治具を複数セットとし、変状モニタリング対象の構造物の複数の地点に前記ミラーおよび前記ミラー調整治具を取り付け、前記発光手段の照射光が各々のミラーに反射し観測点に到達するように各々のミラーの姿勢を予め調整し、前記発光手段の照射光が各ミラーに反射し観測点に到達するか否か、若しくは、到達した場合に到達した光の色を判定することにより、構造物の変状を検知することを特徴とする請求項7〜17のいずれかに記載の構造物変状検知システム。
【請求項19】
発光手段を備えたターゲットを不動領域に設け、
変状モニタリング対象の構造物にミラーを取り付け、
前記発光手段の照射光が前記ミラーに反射し観測点に到達するように前記ミラーの姿勢を予め調整し、
前記発光手段の照射光が前記ミラーに反射し観測点に到達するか否か、若しくは、到達した場合に到達した光の色を判定することにより、構造物の変状を検知する構造物変状検知方法。
【請求項20】
前記発光手段は、常時点灯状態および点滅状態を切り替え得ることを特徴とする請求項19に記載の構造物変状検知方法。
【請求項21】
前記発光手段を複数の異なる色の光源で構成させ、各光源が同心円周上に配置させたこと、又は、前記ターゲットは異なる色彩で同心円状に模様が描かれ該模様に前記発光手段の光が照射されたことを特徴とする請求項19又は20に記載の構造物変状検知方法。
【請求項22】
前記発光手段を複数の象限に色分けされたパネル光源で構成させたこと、又は、前記ターゲットは異なる色彩で象限に色分けされ該象限に前記発光手段の光が照射されたことを特徴とする請求項19又は20に記載の構造物変状検知方法。
【請求項23】
前記発光手段の配設地点と前記観測点を同一地点に設けることを特徴とする請求項19又は20に記載の構造物変状検知方法。
【請求項24】
前記ミラーを複数とし、変状モニタリング対象の構造物の複数の地点にミラーを取り付け、前記発光手段の照射光が各々のミラーに反射し観測点に到達するように各々のミラーの姿勢を予め調整し、前記発光手段の照射光が各ミラーに反射し観測点に到達するか否か、若しくは、到達した場合に到達した光の色を判定することにより、構造物の変状を検知することを特徴とする請求項19〜23のいずれかに記載の構造物変状検知方法。
【請求項1】
構造物に埋設もしくは固設する支柱と、
ミラーを固定するミラー支持部と、
前記支柱に設けられ、前記ミラー支持部に設けられた脚部を挿入して内部に固化材を充填させることにより前記ミラー支持部を固定し得る脚受け部と、
前記ミラー支持部の傾斜角を調整し得る角度調整部と、
前記角度調整部を一端で支持し、他端で前記支柱もしくは前記脚受け部と連結固定されるアーム部と、
を備えたことを特徴とするミラー調整治具。
【請求項2】
前記角度調整部は、前記ミラー支持部の1辺の側面部もしくは対向する2辺の側面部と軸着された第1部位と、第1部位と前記アーム部とが軸着された第2部位とからなり、第1部位と第2部位の各々の軸が回転することにより前記ミラー支持部の傾斜角を調整できることを特徴とする請求項1に記載のミラー調整治具。
【請求項3】
前記角度調整部において、前記第2部位の軸の回転角度を操作角度の1/2の角度にする角度半減機構を更に備えたことを特徴とする請求項2に記載のミラー調整治具。
【請求項4】
前記ミラー支持部は、ミラーの鏡軸の角度を微調整する微調整機構を備え、該微調整機構は、ミラー裏面に設けられたステーと、前記脚部の上方で前記ステーの後方に設けられた支持部材を3点の止ネジで支持するものであり、いずれか1点の止ネジの先端を球状曲面に構成し、前記球状曲面と摺動接触する凹部を前記ステーの裏面に設け、前記止ネジの先端が前記凹部の内面に摺動接触することにより、ミラーを前記支持部材上に揺動可能に保持させることを特徴とする請求項2又は3に記載のミラー調整治具。
【請求項5】
前記角度調整部と前記アームの間には、前記支柱の軸方向にスライドし得るスライド機構が更に設けられたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のミラー調整治具。
【請求項6】
前記ミラーの前面には、ミラー面積を調整する遮光部材が被覆されたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のミラー調整治具。
【請求項7】
発光手段を備えたターゲットと、ミラーと、 該ミラーを支持・調整するミラー調整治具を備え、
前記発光手段から照射された光が、前記ミラーに反射し、観測点に到達するか否かにより、構造物の変状を検知する構造物変状検知システム。
【請求項8】
発光手段を備えたターゲットと、ミラーと、 該ミラーを支持・調整する請求項1〜5のいずれかのミラー調整治具を備え、
前記発光手段から照射された光が、前記ミラーに反射し、観測点に到達するか否かにより、構造物の変状を検知する構造物変状検知システム。
【請求項9】
前記発光手段は、常時点灯状態および点滅状態を切り替え得ることを特徴とする請求項7又は8に記載の構造物変状検知システム。
【請求項10】
前記発光手段は複数の異なる色の光源で構成され各光源が同心円周上に配置されたこと、又は、前記ターゲットは異なる色彩で同心円状に模様が描かれ該模様に前記発光手段の光が照射されたことを特徴とする請求項7〜9のいずれかに記載の構造物変状検知システム。
【請求項11】
前記発光手段は複数の象限に色分けされたパネル光源で構成されたこと、又は、前記ターゲットは異なる色彩で象限に色分けされ該象限に前記発光手段の光が照射されたことを特徴とする請求項7〜9のいずれかに記載の構造物変状検知システム。
【請求項12】
前記観測点に受光手段を設け、所定間隔内に受光しない場合にアラームを出力することを特徴とする請求項7〜11のいずれかに記載の構造物変状検知システム。
【請求項13】
前記観測点に異なる色波長の受光手段を設け、特定の色波長の光を受光した場合に、受光した色波長に応じたアラームを出力することを特徴とする請求項10又は11に記載の構造物変状検知システム。
【請求項14】
前記観測点にカメラ手段と通信手段を設け、前記観測点における前記ミラーに映る画像を遠隔地でモニタリングできることを特徴とする請求項7〜13のいずれかに記載の構造物変状検知システム。
【請求項15】
前記ターゲットの配設地点と前記観測点を同一地点とすることを特徴とする請求項7〜14のいずれかに記載の構造物変状検知システム。
【請求項16】
前記ミラー調整治具は、前記ミラーのミラー面が直交する補助ミラーを備え、その補助ミラーは前記ミラーの上部あるいは下部の位置に配置され、前記ミラーと補助ミラーの交差する箇所から直接見える光源の形状と補助ミラーに反射して見える観測点の映像を用いて、前記ミラーの角度調整を行うことを特徴とする請求項7に記載の構造物変状検知システム。
【請求項17】
前記ミラー調整治具は、構造物に埋設もしくは固設する支柱を、外的な力を加えて弾性変形させることにより、ミラー角度の微調整を行うことを特徴とする請求項7又は8に記載の構造物変状検知システム。
【請求項18】
前記ミラーおよび前記ミラー調整治具を複数セットとし、変状モニタリング対象の構造物の複数の地点に前記ミラーおよび前記ミラー調整治具を取り付け、前記発光手段の照射光が各々のミラーに反射し観測点に到達するように各々のミラーの姿勢を予め調整し、前記発光手段の照射光が各ミラーに反射し観測点に到達するか否か、若しくは、到達した場合に到達した光の色を判定することにより、構造物の変状を検知することを特徴とする請求項7〜17のいずれかに記載の構造物変状検知システム。
【請求項19】
発光手段を備えたターゲットを不動領域に設け、
変状モニタリング対象の構造物にミラーを取り付け、
前記発光手段の照射光が前記ミラーに反射し観測点に到達するように前記ミラーの姿勢を予め調整し、
前記発光手段の照射光が前記ミラーに反射し観測点に到達するか否か、若しくは、到達した場合に到達した光の色を判定することにより、構造物の変状を検知する構造物変状検知方法。
【請求項20】
前記発光手段は、常時点灯状態および点滅状態を切り替え得ることを特徴とする請求項19に記載の構造物変状検知方法。
【請求項21】
前記発光手段を複数の異なる色の光源で構成させ、各光源が同心円周上に配置させたこと、又は、前記ターゲットは異なる色彩で同心円状に模様が描かれ該模様に前記発光手段の光が照射されたことを特徴とする請求項19又は20に記載の構造物変状検知方法。
【請求項22】
前記発光手段を複数の象限に色分けされたパネル光源で構成させたこと、又は、前記ターゲットは異なる色彩で象限に色分けされ該象限に前記発光手段の光が照射されたことを特徴とする請求項19又は20に記載の構造物変状検知方法。
【請求項23】
前記発光手段の配設地点と前記観測点を同一地点に設けることを特徴とする請求項19又は20に記載の構造物変状検知方法。
【請求項24】
前記ミラーを複数とし、変状モニタリング対象の構造物の複数の地点にミラーを取り付け、前記発光手段の照射光が各々のミラーに反射し観測点に到達するように各々のミラーの姿勢を予め調整し、前記発光手段の照射光が各ミラーに反射し観測点に到達するか否か、若しくは、到達した場合に到達した光の色を判定することにより、構造物の変状を検知することを特徴とする請求項19〜23のいずれかに記載の構造物変状検知方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【公開番号】特開2012−173130(P2012−173130A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−35265(P2011−35265)
【出願日】平成23年2月21日(2011.2.21)
【出願人】(504150450)国立大学法人神戸大学 (421)
【出願人】(511046508)
【出願人】(592168511)有限会社牛方商会 (5)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月21日(2011.2.21)
【出願人】(504150450)国立大学法人神戸大学 (421)
【出願人】(511046508)
【出願人】(592168511)有限会社牛方商会 (5)
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