説明

ミリ波撮像装置

【課題】被写体を下方から撮像し、その撮像画像から被写体の底部に隠された物品を検出することのできるミリ波撮像装置を提供する。
【解決手段】ミリ波撮像装置10は、ミリ波センサアレー20を、人が乗降可能でミリ波を透過可能なケースの載置面12a下方に配置することにより、載置面12aに乗った乗客の靴底を撮像できるようにされている。また、載置面12aの下方には、乗客が乗ったことを検知するための圧力センサ22が設けられており、圧力センサ22で乗客が検出されると、画像処理部30が、ミリ波センサアレー20を起動して、各ミリ波センサ18からミリ波の検波電圧を取り込むことで、靴底の画像データを生成する。また、画像処理部30は、生成した画像データを処理することで、靴底に隠された検査対象物4を検出し、その検出結果を、表示部16を介して周囲に報知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体などの被写体から放射されるミリ波を受信することにより被写体を撮像するミリ波撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、人体などの被写体から放射されるミリ波を受信することによって、被写体を撮像し、その撮像画像から、被写体に隠された金属・非金属類の武器や、密輸品を検知することが提案されている(例えば、特許文献1、2等参照)。
【0003】
また、この提案で用いられるミリ波撮像装置は、通常、複数のミリ波センサを同一平面上に配置したミリ波センサアレーと、このミリ波センサアレーのミリ波入力面上に、人体などの被写体から放射されたミリ波を集束してミリ波画像を結像させるレンズとを備え、ミリ波センサアレーを構成する各ミリ波センサからの受信信号の信号レベルを、被写体像の画素値として取り込むことで、被写体像を撮像するようにされている。
【特許文献1】特開2006−258496号公報
【特許文献2】特許第2788519号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように、従来のミリ波撮像装置には、ミリ波センサアレーのミリ波入力面上に被写体のミリ波画像を結像させるレンズが設けられている。これは、ミリ波撮像装置を被写体から離れた位置に設置して、被写体を上方或いは側方から撮像できるようにするためであるが、こうした従来のミリ波撮像装置は、被写体を下方から撮像するのには適しておらず、例えば、空港等で乗客の靴底を検査するのには使用することはできなかった。
【0005】
本発明は、こうした問題に鑑みなされたものであり、被写体を下方から撮像し、その撮像画像から被写体の底部に隠された物品を検出することのできるミリ波撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成するためになされた請求項1に記載のミリ波撮像装置は、被写体から放射されたミリ波を受信して、その信号レベルを検出する複数のミリ波センサを、平面状に配置してなる撮像手段と、該撮像手段を構成する各ミリ波センサからの出力に基づき、前記被写体の画像データを生成する画像データ生成手段と、前記被写体が載置可能で且つミリ波が透過可能な載置面を有するケースと、を備え、前記ケースの載置面に載置された被写体の底部から放射されたミリ波を前記複数のミリ波センサで受信するよう、前記ケースの載置面下方に前記撮像手段を配置したことを特徴とする。
【0007】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のミリ波撮像装置において、前記ケースには、前記載置面に被写体が載置されたことを検出する載置センサが設けられており、前記画像データ生成手段は、前記載置センサにて被写体の載置が検出されると、前記撮像手段を動作させて前記各ミリ波センサからの出力を取り込み、前記画像データを生成することを特徴とする。
【0008】
また次に、請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載のミリ波撮像装置において、前記検査対象となる物品の形状を表す検査対象物データが記憶された記憶手段と、該記憶手段に記憶された検査対象物データと、前記画像データ生成手段にて生成された画像データとを比較することにより、前記被写体の底部に隠れた検査対象物を検出する検出手段と、該検出手段による検出結果を出力する出力手段と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載のミリ波撮像装置においては、被写体が載置可能で且つミリ波が透過可能な載置面を有するケースを備え、ミリ波画像を撮像するための撮像手段が、このケースの載置面下方に配置されている。
【0010】
このため、本発明のミリ波撮像装置によれば、被写体の底部を、ミリ波を使って撮像できることになり、その撮像画像から、被写体の底部に隠された検査対象物を見つけることができるようになる。
【0011】
従って、本発明のミリ波撮像装置は、例えば、空港等で床に設置して、乗客の靴底に検査対象物が隠されていないか検査したり、荷物を載せる載置台に設置して、荷物の底部に検査対象物が隠されていないか検査するのに適した装置となり、本発明のミリ波撮像装置を使用すれば、空港等で行われているセキュリティチェックをより有効に機能させることができるようになる。
【0012】
次に、請求項2に記載のミリ波撮像装置には、ケースの載置面に被写体が載置されたことを検出する載置センサが設けられており、画像データ生成手段は、この載置センサにて被写体の載置が検出されると、撮像手段を動作させて各ミリ波センサからの出力を取り込み、画像データを生成する。
【0013】
従って、請求項2に記載のミリ波撮像装置によれば、ケースの載置面に被写体が載置されたときにだけ、撮像手段及び画像データ生成手段を動作させることができ、ミリ波撮像装置による撮像動作を必要最小限に抑えて、消費電力を低減することが可能となる。
【0014】
また次に、請求項3に記載のミリ波撮像装置には、検査対象となる物品の形状を表す検査対象物データが記憶された記憶手段が設けられている。そして、検出手段が、記憶手段に記憶された検査対象物データと画像データ生成手段にて生成された画像データとを比較することで、被写体の底部に隠れた検査対象物を検出し、出力手段が、検出手段による検査対象物の検出結果を出力する。
【0015】
従って、請求項3に記載のミリ波撮像装置によれば、検査対象となる物品の形状を表す検査対象物データを記憶手段に記憶しておけば、検査対象物を自動で検出して、その検出結果を検査者に通知することができるようになり、被写体の底部を検査する検査装置として使用する場合の使い勝手を向上できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に本発明の一実施形態について説明する。
図1は本発明が適用されたミリ波撮像装置10の外観を表す説明図であり、図2はミリ波撮像装置10の構成を表すブロック図である。
【0017】
本実施形態のミリ波撮像装置10は、空港などで乗客が靴底や荷物の底に危険物(検査対象物4)を隠し持っていないかどうかをチェックするのに使用されるものであり、乗客が靴を脱がずに乗降可能な強度を有する扁平なケース12を備え、このケース12内に各種機能部品を収納することにより構成されている。
【0018】
ここで、ケース12の上面(人が乗ったり荷物を置くための載置面)12aは、ミリ波を透過可能な樹脂若しくはガラスにて構成されている。そして、この載置面12aの裏面側略全域には、乗客の靴底を被写体として撮像するための撮像部14が設けられており、裏面側の一端部には、靴底に隠されたナイフ等の検査対象物4を検出した際にその旨を報知するための表示部16が設けられている。
【0019】
撮像部14は、ケース12の載置面12aに沿って平面状に配置された複数のミリ波センサ18からなるミリ波センサアレー20と、載置面12aからの圧力を受けて載置面12a上に人若しくは物が載置されたことを検出する圧力センサ22と、から構成されている。
【0020】
そして、ミリ波センサアレー20を構成するミリ波センサ18からの出力、及び、圧力センサ22からの検出信号は、それぞれ、入力部24を介して、画像処理部30に入力される。
【0021】
また、ミリ波センサ18は、図3に示すように、ミリ波を受信するための受信アンテナ42と、受信アンテナ42からの受信信号を増幅するローノイズアンプ(LNA)44と、LNA44にて増幅された受信信号の中から、検査対象物4の検出に適した所定周波数帯(例えば75GHz帯)の受信信号を選択的に通過させるバンドパスフィルタ(BPF)46と、BPF46を通過した受信信号を検波し、その信号レベルを検出する検波回路48と、から構成されている。
【0022】
このため、ミリ波センサアレー20を構成する各ミリ波センサ18からは、各々の受信点で受信したミリ波の信号レベルに応じた検波電圧が出力され、画像処理部30は、入力部24を介して、これら各ミリ波センサ18からの検波電圧を順次取り込むことで、載置面12a上の被写体2の画像データを生成する。
【0023】
また、画像処理部30は、画像処理機能を有するコンピュータにて構成されており、上記のように被写体2の画像データを生成するだけでなく、その生成した画像データを処理することで、被写体2である靴底に検査対象物4が隠れているか否かを判定し、検査対象物4が隠れていれば、駆動部26を介して表示部16を駆動することにより、その旨を周囲に通知する。
【0024】
なお、本実施形態では、表示部16は、略一列に配置された複数の発光ダイオードにて構成されており、画像処理部30は、駆動部26を介して、表示部16の発光ダイオードを点灯させることにより、被写体2である靴底に検査対象物4が隠れている旨を通知する。
【0025】
以下、このように画像データを生成して、検査対象物4を検出するために、画像処理部30において実行される検査処理を、図5に示すフローチャートを用いて説明する。
図5に示すように、この検査処理では、まずS110(Sはステップを表す)にて、圧力センサ22からの検出信号に基づき、圧力センサ22にて所定圧力以上の圧力が検出されたか否か、換言すれば、載置面12a上に乗客(若しくは荷物)が乗ったか否か、を判断する。
【0026】
そして、S110にて、圧力センサ22により所定圧力以上の圧力が検出されていないと判断されると、S120にて、ミリ波センサアレー20への電源供給を遮断することによりその動作を停止させた後、再度S110に移行する。
【0027】
一方、S110にて、圧力センサ22により所定圧力以上の圧力が検出されたと判断されると、載置面12a上に検査の対象となる乗客(若しくは荷物)が乗っているので、S130に移行して、ミリ波センサアレー20への電源供給を開始することにより、ミリ波センサアレー20を構成している各ミリ波センサ18を起動し、S140に移行する。
【0028】
そして、S140では、入力部24を介して、各ミリ波センサ18から検波電圧を取り込み、各検波電圧を画素値とする画像データを生成する。なお、S140で生成された画像データは、続くS150以降の検査対象物4の有無判定に用いられる他、画像処理部30に接続された図示しない外部装置(表示装置、記憶装置、コンピュータ等)にも出力される。
【0029】
また、このように画像データが生成されると、S150に移行し、画像処理部30に内蔵された不揮発性メモリ(ROM、EEPROM等)に予め記憶されている検査対象物4の形状データに基づき、画像データを検索することにより、今回撮像した画像中に検査対象物4と略同形状の画像が存在するか否かを判断する。
【0030】
そして、続くS160では、撮像画像中に検査対象物4の画像が存在することが認識されたか否かを判断し、検査対象物4の画像が認識されていなければ、当該処理を一旦終了して、再度S110に移行し、逆に、検査対象物4の画像が認識されていれば、S170に移行し、駆動部26を介して表示部16を一定時間点灯させることで、乗客の靴底に検査対象物4が隠されている旨を周囲に報知し、再度S110に移行する。
【0031】
以上説明したように、本実施形態のミリ波撮像装置10においては、ミリ波画像を撮像するためのミリ波センサアレー20を、ケース12の載置面12a下方に配置することにより、ミリ波センサアレー20を構成する複数のミリ波センサ18にて、載置面12aに乗った乗客の靴底を撮像できるようにされている。このため、本実施形態のミリ波撮像装置によれば、その撮像画像から、乗客の靴底等に隠された検査対象物を見つけることができるようになる。
【0032】
また、本実施形態のミリ波撮像装置10においては、ケース12の載置面12aの下方に圧力センサ22が設けられており、この圧力センサ22に、載置面12a上に乗った乗客(若しくは荷物)からの圧力が加わると、画像処理部30がその旨を検出して、ミリ波センサアレー20を起動する。
【0033】
このため、本実施形態のミリ波撮像装置10によれば、通常は装置全体を待機状態にして、消費電力を抑制し、ケース12の載置面12aに乗客等が乗ったときに、装置全体を通常動作状態にして、被写体2の撮像及び検査対象物の検出を実行することができる。
【0034】
また、本実施形態のミリ波撮像装置10においては、ケース12の載置面12a上に乗った被写体2を撮像するだけでなく、その撮像画像から被写体2に隠された検査対象物4を検出して、検出結果を周囲に報知することから、撮像画像を見ながら検査対象物4を監視する検査者を補助することができ、検査者による当該装置の使い勝手を向上できる。
【0035】
なお、本実施形態においては、ミリ波センサアレー20が、本発明の撮像手段に相当し、画像処理部30にて実行されるS110〜S140の処理が、本発明の画像データ生成手段に相当し、圧力センサ22が、本発明の載置センサに相当し、画像処理部30に内蔵された不揮発性メモリが、本発明の記憶手段に相当し、画像処理部30にて実行されるS150及びS160の処理が、本発明の検出手段に相当し、表示部16及びS170の処理が、本発明の出力手段に相当する。
【0036】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内にて種々の態様をとることができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】実施形態のミリ波撮像装置の外観及び使用状態を表す説明図である。
【図2】ミリ波撮像装置全体の構成を表すブロック図である。
【図3】ミリ波センサの構成を表す説明図である。
【図4】画像処理部にて実行される検査処理を表すフローチャートである。
【符号の説明】
【0038】
2…被写体(靴底)、4…検査対象物、10…ミリ波撮像装置、12…ケース、12a…載置面、14…撮像部、16…表示部、18…ミリ波センサ、20…ミリ波センサアレー、22…圧力センサ、24…入力部、26…駆動部、30…画像処理部、42…受信アンテナ、44…LNA(ローノイズアンプ)、46…BPF(バンドパスフィルタ)、48…検波回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体から放射されたミリ波を受信して、その信号レベルを検出する複数のミリ波センサを、平面状に配置してなる撮像手段と、
該撮像手段を構成する各ミリ波センサからの出力に基づき、前記被写体の画像データを生成する画像データ生成手段と、
前記被写体が載置可能で且つミリ波が透過可能な載置面を有するケースと、
を備え、前記ケースの載置面に載置された被写体の底部から放射されたミリ波を前記複数のミリ波センサで受信するよう、前記ケースの載置面下方に前記撮像手段を配置したことを特徴とするミリ波撮像装置。
【請求項2】
前記ケースには、前記載置面に被写体が載置されたことを検出する載置センサが設けられており、
前記画像データ生成手段は、前記載置センサにて被写体の載置が検出されると、前記撮像手段を動作させて前記各ミリ波センサからの出力を取り込み、前記画像データを生成することを特徴とする請求項1に記載のミリ波撮像装置。
【請求項3】
前記検査対象となる物品の形状を表す検査対象物データが記憶された記憶手段と、
該記憶手段に記憶された検査対象物データと、前記画像データ生成手段にて生成された画像データとを比較することにより、前記被写体の底部に隠れた検査対象物を検出する検出手段と、
該検出手段による検出結果を出力する出力手段と、
を備えたことを特徴とするミリ波撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−8274(P2010−8274A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−168865(P2008−168865)
【出願日】平成20年6月27日(2008.6.27)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成19年度、文部科学省、「安全・安心科学技術プロジェクト」委託事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000113665)マスプロ電工株式会社 (395)
【出願人】(000210964)中央電子株式会社 (81)
【出願人】(504157024)国立大学法人東北大学 (2,297)
【Fターム(参考)】