説明

メガネフレームおよびメガネ

【課題】作製が容易であるとともに柔軟性、耐衝撃性、耐折れ曲げ性、耐候性、塗装性に優れるメガネフレームおよびメガネを提供すること。
【解決手段】メガネフレーム20は、前枠2とつる3とを有し、前記前枠2および前記つる3が、アクリル系ブロック共重合体を含有する組成物からとが射出成形により一体に成形されており、前記アクリル系ブロック共重合体が、メタクリル酸エステル及びアクリル酸エステル単量体のいずれか又は両方から合成される、ガラス転移温度が50℃以上の重合体ブロック(A)を2以上、メタクリル酸エステル及びアクリル酸エステル単量体のいずれか又は両方から合成される、ガラス転移温度が20℃以下の重合体ブロック(B)を1以上有するブロック共重合体である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メガネフレームおよびメガネに関する。
【背景技術】
【0002】
一般にメガネフレームは、レンズが保持される前枠部分と、前枠部分の両端に配置される左右のつる部分とを有し、前枠部分と左右のつる部分とは、通常、ねじ部材を介して揺動自在に連結されている。
【0003】
このようなメガネフレームを作製するにあたり、これまでは複数の材料と複数の工程とを必要とし、最終的には、別途形成した左右のレンズをフレーム本体内に組み込んで作製している。
【0004】
例えば、特許文献1では、メガネフレームを作製するにあたり、前枠部分の両端部にV字状の溝を形成する一方、つる部分の端部にピン部材を設け、ピン部材をV字状の溝内に圧入している。これによりワンショットの圧入作業により組み込みを行うことを可能にし、作業効率を向上させている。
【0005】
また、汎用のメガネフレームは硬質で、柔軟性が乏しく、強い衝撃を受けた場合などには変形したり、場合によっては破損してしまう虞がある。
そのため、スポーツ用のメガネフレームなどでは、例えば、特許文献2に開示されているように、フレームの前枠部分に、ゴムやバンドなど、柔らかい素材を別途取付けたものも提供されている。しかしながら、ゴムなどの素材については、耐候性、塗装性に改善の余地がある。
【0006】
このように一般のメガネ、スポーツ用のメガネについて、製造工程および使用する素材に関して改善が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−62546号公報
【特許文献2】特開平9−239050号公報
【特許文献3】特開平6−93060号公報
【特許文献4】特表平5−507737号公報
【特許文献5】特開平11−335432号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】「Macromol. Chem. Phys.」,2000年,201巻,p.1108〜1114
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、製造工程が容易であるとともに柔軟性、耐衝撃性、耐折れ曲げ性、耐候性、塗装性に優れるメガネフレームおよびメガネを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、アクリル系ブロック共重合体を含有する組成物からなるメガネフレームが、前記課題を解決することを見出した。
【0011】
すなわち本発明に係るメガネフレームは、
前枠とつるとを有し、前記前枠および前記つるが、アクリル系ブロック共重合体を含有する組成物からなることを特徴としている。
【0012】
ここで、本発明に係るメガネフレームは、前記前枠と前記つるとが一体に成形されていることが好ましい。
また、本発明に係るメガネフレームは、前記前枠と前記つるとが射出成形により一体に成形されていることが好ましい。
【0013】
さらに、本発明に係るメガネフレームでは、前記アクリル系ブロック共重合体が、メタクリル酸エステル及びアクリル酸エステル単量体のいずれか又は両方から合成される、ガラス転移温度が50℃以上の重合体ブロック(A)を2以上、メタクリル酸エステル及びアクリル酸エステル単量体のいずれか又は両方から合成される、ガラス転移温度が20℃以下の重合体ブロック(B)を1以上有するブロック共重合体であることが好ましい。
【0014】
また、本発明に係るメガネフレームは、前記アクリル系ブロック共重合体を含有する組成物がさらに、アクリル樹脂、ポリ乳酸およびポリブチレンテレフタレートのいずれかを含むことが好ましい。
【0015】
本発明に係るメガネは、上記いずれかのメガネフレームと、レンズとを備えたことを特徴としている。
さらに、本発明に係るメガネは、メガネフレームと前記レンズとが、二色成形により成形されていることが好ましい。
【0016】
また、本発明に係るメガネは、前記レンズが、セラミックス、アクリル系ブロック共重合体を含有する組成物、アクリル樹脂を含有する組成物、およびポリエステル樹脂を含有する組成物のいずれかからなることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、製造工程の簡略化が可能であるとともに、柔軟性、耐衝撃性、耐折れ曲げ性、耐候性、塗装性、成形性に優れたメガネフレームおよびメガネを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は本発明の一実施例に係るメガネフレームの斜視図である。
【図2】図2は本発明の他の実施例に係るメガネフレーム斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。
図1は本発明の一実施例に係るメガネフレーム10を示したものである。図1において、メガネフレーム10は、前枠2と、つる3と、ヒンジ4とを備えている。
【0020】
なお、図1に示したメガネフレーム10には、別途形成されたレンズが前枠2に組み込まれて、実際に使用するメガネが構成される。
また、本発明のメガネフレームは、少なくとも前枠2とつる3とを備えたものであれば良く、ヒンジ4は有していても有していなくてもよい。なお、工程簡略化の観点からは、ヒンジ4が介在されず、前枠2とつる3とが一体的に成形されていることが好ましい。
【0021】
図2は、このようなメガネフレーム20あるいはメガネ20’を示したもので、特に、スキーや釣り、陸上競技などを行う際に好適に使用されるものである。このメガネフレーム20は、前枠2とつる3とを備え、ヒンジ4は有していない。なお、図2のメガネフレーム20のように、スポーツに適するタイプとする場合には、メガネフレーム20を成形すると同時に、透明体あるいは半透明のレンズを一体成形してメガネ20’とすることもできる。
【0022】
このようなメガネフレーム10,20、あるいはメガネ20’のうち、前枠2およびつる3は、アクリル系ブロック共重合体を含む組成物で形成されている。前枠部分2およびつる部分3の両方が、アクリル系ブロック共重合体を含む組成物からなるものであると、柔軟性、耐衝撃性、耐折れ曲げ性、耐候性、塗装性、工程簡略化の観点から好ましい。
【0023】
本発明で用いられるアクリル系ブロック共重合体は、メタクリル酸エステル及びアクリル酸エステル単量体のいずれか又は両方から合成される、ガラス転移温度が50℃以上の重合体ブロック(A)を2以上、メタクリル酸エステル及びアクリル酸エステル単量体のいずれか又は両方から合成される、ガラス転移温度が20℃以下の重合体ブロック(B)を1以上有するものが好ましい。このようなアクリル系ブロック共重合体は溶融加工性に優れ、柔軟性、耐衝撃性、耐折れ曲げ性、耐候性、塗装性に優れる。
【0024】
上記重合体ブロック(A)の合成に用いられる単量体としては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸sec−ブチル、メタクリル酸tert−ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチルなどのメタクリル酸エステル、アクリル酸tert−ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸フェニル、アクリル酸2−ヒドロキシエチルなどのアクリル酸エステルなどが挙げられる。
【0025】
これらの中でも、メガネフレームの耐久性を向上させる観点から、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸tert−ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸メチル、アクリル酸tert−ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸フェニル、アクリル酸2−ヒドロキシエチルが好ましく、メタクリル酸メチルがより好ましい。重合体ブロック(A)は、これらメタクリル酸エステル及びアクリル酸エステルの1種から合成されていても、2種以上から合成されていてもよい。また、上記アクリル系ブロック共重合体には、重合体ブロック(A)が2つ以上含まれるが、それら重合体ブロック(A)は、同一であっても異なっていてもよい。
【0026】
上記重合体ブロック(B)の合成に用いられる単量体としては、例えば、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸アミル、メタクリル酸イソアミル、メタクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ペンタデシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸フェノキシエチル、メタクリル酸2−メトキシエチルなどのメタクリル酸エステル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸sec−ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸イソアミル、アクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ペンタデシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸フェノキシエチル、アクリル酸2−メトキシエチルなどが挙げられる。
【0027】
これらの中でも、得られるメガネフレームの柔軟性、耐衝撃性、耐寒性、低温特性を向上させる観点から、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸イソアミル、アクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ペンタデシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸フェノキシエチル、アクリル酸2−メトキシエチルが好ましく、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ペンタデシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸フェノキシエチル、アクリル酸2−メトキシエチルがより好ましい。重合体ブロック(B)は、これらのメタクリル酸エステル及びアクリル酸エステルの1種から合成されていても、2種以上から合成されていてもよい。また、上記アクリル系ブロック共重合体に、重合体ブロック(B)が2つ以上含まれる場合には、それら重合体ブロック(B)は、同一であっても異なっていてもよい。
【0028】
本発明に用いるアクリル系ブロック共重合体の特性を損なわない範囲で、上記重合体ブロック(A)及び重合体ブロック(B)の合成に用いる単量体として、さらに、反応基を有するメタクリル酸エステル及びアクリル酸エステルを用いてもよい。反応基を有するメタクリル酸エステル及びアクリル酸エステルとしては、例えば、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸アリル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸アリルなどが挙げられる。これら単量体は、通常少量で使用されるが、各重合体ブロックの合成に使用する単量体の全質量に対して、好ましくは40質量%以下、より好ましくは20質量%以下の量で使用される。
【0029】
また、本発明に用いるアクリル系ブロック共重合体の特性を損なわない範囲で、上記重合体ブロック(A)及び重合体ブロック(B)の合成に用いる単量体として、必要に応じて他の単量体を併用してもよい。
【0030】
これら他の単量体としては、例えば、メタクリル酸、アクリル酸、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、m−メチルスチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エチレン、プロピレン、イソブテン、ブタジエン、イソプレン、オクテン、酢酸ビニル、無水マレイン酸、塩化ビニル、塩化ビニリデンなどが挙げられる。これら単量体は、通常少量で使用されるが、各重合体ブロックの合成に使用する単量体の全質量に対して、好ましくは40質量%以下、より好ましくは20質量%以下の量で使用される。
【0031】
本発明で用いるアクリル系ブロック共重合体は、上記重合体ブロック(A)及び重合体ブロック(B)の他に、必要に応じ、他の重合体ブロックを有していてもよい。
他の重合体ブロックとしては、例えば、メタクリル酸、アクリル酸、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、m−メチルスチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エチレン、プロピレン、イソブテン、1,3−ブタジエン、イソプレン、オクテン、酢酸ビニル、無水マレイン酸、塩化ビニル、塩化ビニリデンなどの単量体から合成される重合体ブロック又は共重合体ブロック、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸、ポリウレタン、ポリジメチルシロキサンからなる重合体ブロックなどが挙げられる。また、上記重合体ブロックには、ブタジエン、イソプレンなどのジエン系単量体を含む単量体から合成された重合体ブロックの水素添加物も含まれる。
【0032】
本発明のアクリル系ブロック共重合体に含まれる重合体ブロックの結合形態は特に限定されないが、少なくとも1つの重合体ブロック(B)の両端に重合体ブロック(A)が結合した形態を有することが、本発明のメガネフレーム部材の耐熱性、力学強度、表面膠着などの観点から好ましい。上記共重合体としては、例えば、重合体ブロック(A)−b−重合体ブロック(B)−b−重合体ブロック(A)のA−B−A型トリブロック共重合体、重合体ブロック(A)−b−重合体ブロック(B)−b−重合体ブロック(A)−b−重合体ブロック(B)のA−B−A−B型テトラブロック共重合体が挙げられる。中でも、製造が容易である点、表面膠着が少ない点から、重合体ブロック(A)−b−重合体ブロック(B)−b−重合体ブロック(A)のA−B−A型トリブロック共重合体がより好ましい。
【0033】
本発明における重合体ブロック(A)及び重合体ブロック(B)のガラス転移温度は、アクリル系ブロック共重合体を示差走査熱量計測定(DSC測定)して得られた曲線において認められる重合体ブロック(A)及び重合体ブロック(B)の転移領域の外挿開始温度(Tgi)である。上記DSC測定で得られる曲線に基づけば、本発明で用いるアクリル系ブロック共重合体では、重合体ブロック(A)及び重合体ブロック(B)に由来する複数のガラス転移温度が求められる。重合体ブロック(A)及び重合体ブロック(B)に由来するガラス転移温度は、それぞれの重合体ブロックと同様の化学構造(モノマー組成、立体規則性等)を有する重合体のガラス転移温度と同一の、あるいは近い温度であるので、これら複数のガラス転移温度がどの重合体ブロックに由来するものか、容易に判定できる。なお、重合体ブロック(A)及び重合体ブロック(B)と同様の化学構造を有する重合体は、アクリル系ブロック共重合体を1H−NMR、13C−NMRなどで分析して、重合体ブロック(A)及び重合体ブロック(B)のモノマー組成、立体規則性などの化学構造を求め、その化学構造が再現されるように適宜、重合を行うことにより、容易に製造できる。
【0034】
上記アクリル系ブロック共重合体の分子量は特に限定されないが、本発明のメガネフレームの成形性の観点から、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定により求めたポリスチレン換算の重量平均分子量が、10,000〜500,000であることが好ましく、20,000〜300,000であることがより好ましい。
【0035】
本発明のメガネフレーム10,20の成形方法としては、押出成形法、射出成形法、溶液キャスト法などが挙げられるが、後述する射出成形法が最も好ましい成形方法であり、これら成形方法において、成形時の流動性から上記の範囲の重量平均分子量が好ましい。
【0036】
上記アクリル系ブロック共重合体の分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量)は特に限定されないが、本発明のメガネフレームの表面の膠着性、及び透明性の観点から、分子量分布が1.01〜2.20であることが好ましく、1.05〜1.60であることがより好ましい。分子量分布が上記範囲より大きい場合は、高分子量体が多くなり透明性が損なわたり、低分子量成分が多くなり表面膠着が酷くなる欠点が発生する場合がある。また、分子量分布が上記範囲より小さい場合は、成形性に好影響する低分子量成分や力学特性に好適に寄与する高分子量成分の組成比が小さくなり、結果として、成形性が損なわれたり、メガネフレームとして必要な力学特性が損なわれる場合がある。
【0037】
上記アクリル系ブロック共重合体は、必要に応じて、分子鎖中又は分子鎖末端に水酸基、カルボキシル基、酸無水物基、アミノ基、トリメトキシシリル基などの官能基を有していてもよい。
【0038】
上記アクリル系ブロック共重合体が上述した特性を有するためには、アクリル系ブロック共重合体として純度の高いものを用いることが好ましい。このような高純度のアクリル系ブロック共重合体を製造する方法としては、分子構造を高度に制御できるリビング重合方法が挙げられる。リビング重合とは、ブロック共重合体を構成する重合体ブロックの単量体を重合し、この重合が失活又は停止する前に他の単量体の重合を行いブロック共重合体を合成する方法であり、例えば、有機希土類金属錯体を重合開始剤としてリビング重合する方法(特許文献3を参照)、有機アルカリ金属化合物を重合開始剤としアルカリ金属又はアルカリ土類金属の塩などの鉱酸塩の存在下でリビングアニオン重合する方法(特許文献4を参照)、有機アルミニウム化合物の存在下で、有機アルカリ金属化合物を重合開始剤としリビングアニオン重合する方法(特許文献5を参照)、原子移動ラジカル重合方法(ATRP)(非特許文献1を参照)などが挙げられる。
【0039】
上記製造方法のうち、有機アルミニウム化合物の存在下で有機アルカリ金属化合物を重合開始剤としてリビングアニオン重合する方法による場合は、重合途中の失活が少ないため失活成分であるホモポリマーの混入が少なく、その結果、得られるアクリル系ブロック共重合体の力学強度、溶融流動性、透明性が高い。また、単量体の重合転化率が高いため、製品中の残存単量体が少なく、残存単量体やオリゴマーによる臭気が抑えられる。さらに、重体ブロック(A)を構成する単量体がメタクリル酸エステルの場合、得られる重合体ブロックの分子構造が高シンジオタクチックとなり耐熱性を高める効果がある。そして、比較的温和な温度条件下でリビング重合が可能であることから、工業的に生産する場合に、環境負荷(主に重合温度を制御するための冷凍機にかかるエネルギー)が少なくて済む利点がある。以上の点から、上記アクリル系ブロック共重合体は、有機アルミニウム化合物の存在下で、有機アルカリ金属化合物を重合開始剤としてリビングアニオン重合する方法により、好ましく製造される。
【0040】
本発明のメガネフレームに用いられるアクリル系ブロック共重合体またはその組成物は、その柔軟性・耐衝撃性・耐折れ曲げ性等の特性に必要な弾性率と柔軟性とが必要となる。そのため、該アクリル系ブロック共重合体は、25℃での貯蔵弾性率が104〜109Paであることが好ましく、105〜1010Paであることがより好ましい。
【0041】
上記範囲の弾性率を有するアクリル系ブロック共重合体を得るためには、アクリル系ブロック共重合体の重合体ブロック(A)と重合体ブロック(B)との組成比(重合体ブロック(A)/重合体ブロック(B))は、20/80〜80/20であることが好ましく、30/70〜50/50であることがより好ましい。重合体ブロック(A)/重合体ブロック(B)の組成比が上記範囲より小さい場合には、粘着が酷くなり傷ツキや埃の付着により表面性が損なわれる場合があり、また、耐久性が低下する場合がある。重合体ブロック(A)/重合体ブロック(B)の組成比が上記範囲より大きい場合には、アクリル系ブロック共重合体の有する柔軟性が十分に発現せず、耐衝撃性、耐折れ曲げ性が低下する傾向にある。
【0042】
本発明のメガネフレーム10,20に用いるアクリル系ブロック共重合体を含有する組成物には、上記アクリル系ブロック共重合体が1種含まれていてもよく、2種以上含まれていてもよい。
【0043】
本発明のメガネフレーム10、20の前枠2とつる3の材料となるアクリル系ブロック共重合体は、上記アクリル系ブロック共重合体を単独で使用しても良いし、その組成物を用いても良いが、組成物を用いる場合は、上記アクリル系ブロック共重合体と配合させる樹脂として、例えば、ポリメタクリル酸メチル及びメタクリル酸エステル共重合体などのアクリル樹脂;ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリプロピレン、ポリブテン−1、ポリ−4−メチルペンテン−1、ポリノルボルネン等のオレフィン系樹脂;エチレン系アイオノマー;ポリスチレン、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ハイインパクトポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂、AES樹脂、AAS樹脂、ACS樹脂、MBS樹脂等のスチレン系樹脂;メチルメタクリレート−スチレン共重合体;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸等のポリエステル樹脂;ナイロン6、ナイロン66、ポリアミドエラストマー等のポリアミド類;ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリアセタール、ポリフッ化ビニリデン、ポリウレタン、変性ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、シリコーンゴム変性樹脂、脂肪族系ポリウレタン、芳香族ポリウレタン等のポリウレタン類などが挙げられる。
【0044】
これらの樹脂の中でも、上記組成物に含まれるアクリル系ブロック共重合体との相容性の観点から、アクリル樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、AS樹脂、ポリ乳酸、ポリブチレンテレフタレート、ポリフッ化ビニリデン、脂肪族ポリウレタンが好ましく用いられる。
【0045】
本発明のメガネフレームに用いられる材料は、上記の例のうち、塗装性、成形性、入手容易性の観点から、アクリル系ブロック共重合体のみからなる組成物、アクリル系ブロック共重合体とアクリル樹脂との組成物、アクリル系ブロック共重合体とポリ乳酸との組成物、アクリル系ブロック共重合体とポリブチレンテレフタレートとの組成物が特に好ましい。
【0046】
アクリル系ブロック共重合体を上記樹脂と配合する場合、その配合比(質量比)について、アクリル系ブロック共重合体/アクリル樹脂の場合は、10/90〜90/10が好ましく、30/70〜70/30がより好ましい。アクリル系ブロック共重合体/ポリ乳酸の場合は、10/90〜90/10が好ましく、30/70〜70/30がより好ましい。アクリル系ブロック共重合体/ポリブチレンテレフタレートの場合は、10/90〜90/10が好ましく、30/70〜70/30がより好ましい。
【0047】
さらに、上記組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、他の樹脂、ゴムなどの重合体、さらに、軟化剤、滑剤、可塑剤、粘着剤、粘着付与剤、熱安定剤、酸化防止剤、光安定剤、帯電防止剤、難燃剤、発泡剤、着色剤、染色剤、フィラーなどの添加剤が含まれていてもよい。これら重合体及び添加剤は、組成物に1種が含まれていてもよいし、2種以上が含まれていてもよい。
【0048】
本発明のメガネフレームは、アクリル系ブロック共重合体を含有する組成物であり、塗料、印刷材、蒸着膜等との接着性に優れるため模様の導入が容易であり、さらに柔軟でありながら塗装が剥がれ難い特徴を有するため、様々な意匠に富んだデザインの模様を載せることができる。
【0049】
本発明のメガネフレームを成形する方法としては、射出成形、押出成形などが挙げられる。このうち、射出成形が好ましい。図1に示したメガネフレーム10のように、ヒンジ4を備えたメガネフレーム10の場合には、前枠2とつる3のそれぞれを、別途、射出成形で成形するとともに、別途用意された金属などからなるヒンジ4を介して後工程で連結させることにより、作製することができる。
【0050】
また、図2に示したヒンジを有していないメガネフレーム20の場合には、前枠2とつる3とを一体的に射出成形することにより、工程を簡略化して、メガネフレーム20を成形することができる。このとき、前枠2とつる3の連結部が屈曲し易いようにして成形してもよいし、前枠部分とつる部分を略直線状に一体的に射出成形した後、前枠2とつる3との連結部が脆弱となるように、後工程で曲げる加工を行ってもよい。なお、本発明のメガネフレームを射出成形で成形する場合には、通常200〜250℃のシリンダー温度、30〜100MPaの射出圧力条件で製造できる。
【0051】
本発明に係るメガネは、図1あるいは図2に示したように形成されたメガネフレームに、別途形成されたレンズを組み込んで構成される。あるいは、図2に示したように、スポーツなどで使用されるメガネの場合には、透明あるいは半透明のレンズを前枠2と一体に成形しても良い。
【0052】
上記レンズの材料としては、例えば、ガラスなどのセラミックス;アクリル系ブロック共重合体;ポリメタクリル酸メチル及びメタクリル酸エステル共重合体などのアクリル樹脂;ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリプロピレン、ポリブテン−1、ポリ−4−メチルペンテン−1、ポリノルボルネン等のオレフィン系樹脂;ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸等のポリエステル樹脂;が挙げられる。
【0053】
これらの中でも、上記レンズの材料が、アクリル系ブロック共重合体、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、のいずれかを含むものであると、透明性、耐衝撃性等に優れる傾向にあるため、好ましい。また、レンズの材料が、アクリル系ブロック共重合体を含むものであると、さらに柔軟性、耐折れ曲げ性、他の材料との接着性・塗装性にも優れるものとなる。また、上記ポリエステル樹脂の中でも、ポリカーボネートを用いると、特に耐衝撃性に優れたものとなる。
【0054】
上記レンズは、さらに外側に機能性の層を設けることもできる。例えば、ハードコート、帯電防止層、吸水剤層、防曇剤層、抗菌剤層、傷付き防止ラミネートフィルム層、着色剤層等を挙げることができる。また、レンズに、種々の機能を持たせる加工をすることも可能である。例えば、偏光処理などの光学処理をすることで、本発明のメガネは、3Dメガネとして使用することも可能である。
【0055】
本発明のメガネは、メガネフレームおよびレンズが、アクリル系ブロック共重合体を含有する組成物からなる場合、曲げても元に戻りやすく、非常に割れにくいものとなる。また、丸めて収納することなどが可能である。
【0056】
本発明のメガネを作製する方法としては、例えば、射出成形、押出成形などの他、レンズとメガネフレームを、各種成形法で、それぞれ形成した後に組み合わせてもよいし、レンズと前枠2を一体化させて形成した後、つる3を取付けてもよい。レンズを前枠2に一体化させる方法としては、例えば、レンズを予め成形し、そのレンズを金型内に載置し、その状態から、メガネフレームの材料となる溶融樹脂を金型内に射出する、二色成形法などの方法を採用することができる。
【0057】
このようにして作製された本発明のメガネフレームおよびメガネは、柔軟性、耐衝撃性、耐折れ曲げ性、耐候性、塗装性、成形性に優れ、製造時の工程簡略化が可能である。また、本発明のメガネは、装飾用メガネ、サングラスなどに使用できる。また、柔軟性に優れ、非常に割れにくいため、水中ゴーグル、スキーゴーグルなどのスポーツ用途、3Dメガネなどのアミューズメント用途にも好適である。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明のメガネフレームおよびメガネは、柔軟性、耐衝撃性、耐折れ曲げ性、耐候性、塗装性、成形性に優れ、製造時の工程簡略化が可能であるので、装飾用メガネ、サングラスなどに使用できる。また、柔軟性に優れ、非常に割れにくいため、水中ゴーグル、スキーゴーグルなどのスポーツ用途にも好適に使用できる。また、3Dメガネなどのアミューズメント用途にも好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前枠とつるとを有し、前記前枠および前記つるが、アクリル系ブロック共重合体を含有する組成物からなることを特徴とするメガネフレーム。
【請求項2】
前記前枠と前記つるとが一体に成形されていることを特徴とする請求項1に記載のメガネフレーム。
【請求項3】
前記前枠と前記つるとが射出成形により一体に成形されていることを特徴とする請求項2に記載のメガネフレーム。
【請求項4】
前記アクリル系ブロック共重合体が、メタクリル酸エステル及びアクリル酸エステル単量体のいずれか又は両方から合成される、ガラス転移温度が50℃以上の重合体ブロック(A)を2以上、メタクリル酸エステル及びアクリル酸エステル単量体のいずれか又は両方から合成される、ガラス転移温度が20℃以下の重合体ブロック(B)を1以上有するブロック共重合体である請求項1に記載のメガネフレーム。
【請求項5】
前記アクリル系ブロック共重合体を含有する組成物がさらに、アクリル樹脂、ポリ乳酸およびポリブチレンテレフタレートのいずれかを含む請求項4に記載のメガネフレーム。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかに記載のメガネフレームと、合成樹脂製のレンズとを備えたことを特徴とするメガネ。
【請求項7】
請求項6に記載のメガネフレームと前記レンズとが、二色成形により成形されていることを特徴とするメガネ。
【請求項8】
前記レンズが、セラミックス、アクリル系ブロック共重合体を含有する組成物、アクリル樹脂を含有する組成物、およびポリエステル樹脂を含有する組成物のいずれかからなる請求項6または請求項7に記載のメガネ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−181255(P2012−181255A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−42626(P2011−42626)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(000001085)株式会社クラレ (1,607)
【出願人】(501300104)学校法人 多摩美術大学 (25)
【Fターム(参考)】