説明

メソポーラスシリカ、及びその製造方法

【課題】均一で規則的に配列したメソ細孔内に多数のスルフィド基を多量に含有するメソポーラスシリカ、及び工程が簡便であるそれの製造方法を提供する。
【解決手段】メソポーラスシリカ1は、スルフィド基含有アルコキシシランが界面活性剤のミセル2を取り巻きつつ縮合したポリシロキサン骨格によって開孔したメソ細孔4を形成したシリカ粒子3が、ミセル2の除去により空洞となったメソ細孔4を露出しつつ、凝集している。その製造方法は、ミセル2を形成する工程と、スルフィド基含有アルコキシシランを、ミセル2と混合し、アルカリ性条件下で、ミセル2に取り巻かせつつ、それのポリシロキサン骨格へと縮合することによって、ミセル2が内包された開孔のメソ細孔4を有するシリカ粒子3の凝集中間体を、形成する工程と、凝集中間体を、溶媒と混合することにより、ミセル3を除去して、メソポーラスシリカ1を形成する工程とを、含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スルフィド基を含有するメソポーラスシリカ、及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
メソポーラスシリカ、シリカゲル、活性炭、ゼオライト等の多孔質物質は、その微粒子表面に多数の細孔や凹凸を持つことから、大きな比表面積を有し、多量の化学物質を吸着して担持することができる。そのため、この多孔質物質は、パラジウムやロジウム等の有用遷移金属原子を吸着して、触媒を調製したり、二酸化炭素、メルカプタン等の有害ガスや蒸気のような気体分子、水に溶けているクロム、ヒ素、カドミウム、水銀等の有害金属原子や有機溶媒中の微量水分の水分子を吸着して、回収、除去、又は浄化したりするのに、汎用されている。
【0003】
その中でも、ポリシロキサンからなるメソポーラスシリカは、均一で規則的に配列したメソ細孔を持ち、メソ細孔への有用遷移金属や有害金属等の吸着能に優れた多孔質物質である。メソポーラスシリカは、メソ細孔の径が一般的に2〜50nm程度で、比表面積が最大で1000m/g程度のものである。
【0004】
メソポーラスシリカへの有用遷移金属や有害金属等の金属の吸着能を向上させるために、これら金属へ配位するジスルフィド基のような硫黄含有官能基、アミノ基のような窒素含有官能基等を有する官能化剤と、メソポーラスシリケート前駆体とを共縮合させて、これら官能基を含有させ、若しくはさらにそれのジスルフィド基を還元したチオール基を含有させたメソポーラスシリカ及び金属を含む触媒や、メソポーラスシリケート前駆体へこれらのような官能基を修飾させたメソポーラスシリカ及び金属を含む触媒が、特許文献1に開示されている。
【0005】
このような共重合したメソポーラスシリカは、化学構造の異なるシリル化剤とシリケート材料との共重合であるので、相対的にシリル化剤の存在比率が小さいこと、及びランダム共重合であることと相俟って、均質で均一径のメソ細孔を形成し難く、一方、官能基を修飾させたメソポーラスシリカは、煩雑な修飾工程を必要とし面倒であるうえ、何れも微細なメソ細孔内壁にこれら官能基を多量に発現させ難い。しかも、このようなメソポーラスシリカ中の硫黄原子含有量は、最大でも20重量%にしかならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2008−535645号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は前記の課題を解決するためになされたもので、均一で規則的に配列したメソ細孔内に多数のスルフィド基を多量に含有するメソポーラスシリカ、及び工程が簡便で高収率であるそれの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するためになされた、特許請求の範囲の請求項1に記載されたメソポーラスシリカは、スルフィド基を含有するアルコキシシランが界面活性剤のミセルを取り巻きつつ縮合したポリシロキサン骨格によって開孔したメソ細孔を形成したシリカ粒子が、前記ミセルの除去により空洞となった前記メソ細孔を露出しつつ、凝集していることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載のメソポーラスシリカは、請求項1に記載されたものであって、前記スルフィド基中の硫黄原子数が、1〜6であることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載のメソポーラスシリカは、請求項1に記載されたものであって、前記メソ細孔の空洞内壁表面に、前記スルフィド基が発現していることを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載のメソポーラスシリカの製造方法は、界面活性剤を媒体に混合してそのミセルを形成する工程と、スルフィド基含有アルコキシシランを、前記ミセルと混合し、アルカリ性条件下で、前記ミセルに取り巻かせつつ、それのポリシロキサン骨格へと縮合することによって、前記ミセルが内包された開孔のメソ細孔を有するシリカ粒子の凝集中間体を、形成する工程と、前記凝集中間体を、溶媒と混合することにより、前記ミセルを除去して、空洞の前記メソ細孔が露出されたメソポーラスシリカを形成する工程とを、含むことを特徴とする。
【0012】
請求項5に記載のメソポーラスシリカの製造方法は、請求項4に記載されたものであって、前記アルカリ性条件下の後、酸性条件下で、前記縮合することを特徴とする。
【0013】
請求項6に記載のメソポーラスシリカの製造方法は、請求項4に記載されたものであって、前記スルフィド基含有アルコキシシランが、下記化学式
(C2n+1O)Si(CH(S)(CHSi(OC2n+1
(式中、nは1〜2、t及びvは2〜3、uは1〜6)で表されることを特徴とする。
【0014】
請求項7に記載のメソポーラスシリカの製造方法は、請求項4に記載されたものであって、前記界面活性剤が、ノニオン界面活性剤であることを特徴とする。
【0015】
請求項8に記載のメソポーラスシリカの製造方法は、請求項7に記載されたものであって、前記ノニオン界面活性剤が、ポリエチレンオキサイドとポリプロピレンオキサイドとを含むブロック共重合体であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明のメソポーラスシリカは、単一のスルフィド基含有アルコキシシランだけが縮合して形成されたものであるから、規則的に配列した均一な径のメソ細孔を多数有しているものである。このメソポーラスシリカは、表面に多数のスルフィド基を露出している。特に、そのメソ細孔内壁表面に発現している多数のスルフィド基により、それの硫黄原子と配位し易いクロム等の有害金属原子やパラジウム等の有用遷移金属原子等を、このメソポーラスシリカは吸着して、このメソポーラスシリカのメソ細孔内に多量に、また確実かつ簡便に捕捉することができるものである。
【0017】
本発明のメソポーラスシリカの製造方法によれば、単一のスルフィド基含有アルコキシシランを、ポリシロキサン骨格の原料物質として用いているから、複数の原料物質を共縮合したり官能基を後修飾したりしてメソポーラスシリカを合成することなく、簡易かつ短時間で効率よくメソポーラスシリカを合成することができる。また、スルフィド基含有アルコキシシランを縮合する際に共存させる界面活性剤のミセルの種類を適宜選択することにより、メソポーラスシリカのメソ細孔を、捕捉すべき分子や金属原子の大きさに合わせて、自在に調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明を適用するメソポーラスシリカの製造過程を示す模式図である。
【図2】本発明を適用する実施例1のメソポーラスシリカの吸着等温線を示すグラフである。
【図3】本発明を適用する実施例2の別なメソポーラスシリカの吸着等温線を示すグラフである。
【図4】本発明を適用する実施例3の別なメソポーラスシリカの吸着等温線を示すグラフである。
【図5】本発明を適用する実施例4の別なメソポーラスシリカの吸着等温線を示すグラフである。
【図6】本発明を適用する実施例5の別なメソポーラスシリカの吸着等温線を示すグラフである。
【図7】本発明を適用する実施例6の別なメソポーラスシリカの吸着等温線を示すグラフである。
【図8】本発明を適用する実施例7の別なメソポーラスシリカの吸着等温線を示すグラフである。
【図9】本発明の適用外の比較例1のシリカ粉末の吸着等温線を示すグラフである。
【図10】本発明の適用外の比較例2のシリカ粉末の吸着等温線を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施するための形態を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの形態に限定されるものではない。
【0020】
本発明のメソポーラスシリカ、及びその製造方法の好ましい一例について、図1を参照して説明する。
【0021】
メソポーラスシリカ1は、スルフィド基含有アルコキシシランが隣り合う分子のアルコキシシラン同士で縮合して形成したポリシロキサン骨格によって均一で規則的に配列した空洞のメソ細孔4を持つ一次粒子シリカ3が、凝集した無定形の多孔質物質である。メソ細孔4は筒状であり、最密に重畳しつつ集積して配列し、又は蜂の巣状に集積して配列したもので、複数のメソ細孔4が同一方向を向いて露出している。メソポーラスシリカの表面からはスルフィド基が発現しており、筒状のメソ細孔4の空洞内壁表面にも、スルフィド基が多数発現している。メソ細孔4は、そこに鋳型として内在されていた界面活性剤2のミセルの除去によって、丁度ミセルの径に相当する径の空洞が形成されたものである。メソポーラスシリカ1のメソ細孔4の径は、2〜50nm程度で、メソポーラスシリカ1の比表面積は最大で1000m/gである。
【0022】
メソポーラスシリカ1は、以下のようにして製造される。スルフィド基含有アルコキシシランとして、ビス(トリエトキシシリルプロピル)ポリスルフィド(スルフィド基中の硫黄原子の平均数は4;以下BTESP4Sと示す)を原料に用いて、製造された例について説明する。先ず、アルカリ性水溶液に界面活性剤2を室温で溶解させて、混合液を作製する。この混合液中で、この界面活性剤2は、親水基を外に疎水基を内に向けて会合してミセルを形成する。この混合液を加熱した後、BTESP4Sを加え、この混合液を攪拌する。すると、このBTESP4Sは界面活性剤のミセルの周りを取り巻くように集まって複合体を形成する。複合体を形成したBTESP4Sは、下記式(I)のような反応により加水分解する。加水分解したそれは、下記式(II)のように脱水縮合する。
【0023】
【化1】

【0024】
【化2】

【0025】
その加水分解と縮合とが、次々と繰り返され、終にはミセルをあたかも雌鋳型のように取り巻きつつ縮合したポリシロキサン骨格によって開孔したメソ細孔を有するシリカ粒子が、形成される。そのポリシロキサン骨格は、数nmから10数nm程度の小さなメソ細孔を有している。そのポリシロキサン骨格は、下記式(III)のような繰り返し単位を持つ。
【0026】
【化3】

(式(III)中、A、A、A、及びAの少なくとも一つは、ケイ素を介して結合している隣り合う繰り返し単位を示し、残余はエチル基を示す。)
【0027】
ポリシロキサン骨格により、このような小さなメソ細孔を形成するメカニズムの詳細は、必ずしも明らかでないが、以下のように推察される。アルカリ性水溶液がBTESP4Sの加水分解反応及び縮合反応の触媒として作用する。BTESP4Sの縮合反応は、酸性溶液に比べ、アルカリ性水溶液のほうが速い。そのため、ミセル表面に集まったBTESP4Sの架橋が早く生じ、BTESP4Sはポリシロキサン骨格を形成する。BTESP4Sのように有機基等を多く含む複合シラン原料の場合は、そのアルコキシシリル基のBTESP4S含有溶液中の濃度が低くなる為、BTESP4Sの加水分解反応及び縮合反応が遅くなるが、アルカリ性水溶液によりこれらの反応をより促進させて、ポリシロキサン骨格を形成することが肝要となると考えられる。
【0028】
そのシリカ粒子3はメソ細孔4に界面活性剤2のミセルを内包したまま凝集して、凝集中間体を形成し、反応混合液中で分散している。反応混合液を濾過し、凝集中間体を分取した後、イオン交換水で洗浄液がpH7付近になるまで洗浄してから、乾燥させると、凝集中間体の粉末が得られる。この凝集中間体粉末に有機溶媒を加え、加熱しながら撹拌すると、メソ細孔4に内包されている界面活性剤2のミセルが、抽出されて除去され、メソポーラスシリカ1が形成される。それを、濾取し、溶媒を揮発させて乾燥させると、所望のメソポーラスシリカ1の粉末が得られる。
【0029】
メソポーラスシリカの製造方法として、BTESP4Sをアルカリ性条件下で加水分解及び縮合してポリシロキサン骨格を形成する例について示したが、アルカリ性水溶液を加えたアルカリ条件下の後、酸性水溶液を加えた酸性条件下で加水分解及び縮合してポリシロキサン骨格を形成してもよい。ポリシロキサン骨格を、アルカリ性条件下の後、酸性条件下で形成させると、アルカリ条件下で形成させたときよりも、ポリシロキサン骨格で形成されるメソ細孔の直径が幾分大きく、10数nmになる。そのメカニズムの詳細は、必ずしも明らかでないが、以下のように推察される。BTESP4Sの架橋反応はより促進され、ポリシロキサン骨格を形成し始める。酸性条件下にすると、BTESP4Sは界面活性剤のミセルに取り巻きつつ複合体を形成したまま、酸性水溶液がBTESP4S中の残りのアルコキシシリル基を加水分解する。そして、アルカリ性水溶液に比べ、酸性水溶液はゆっくりとした縮合反応を進行させ、比較的大きなメソ細孔を形成しつつポリシロキサン骨格が形成され、シリカ粒子となり、それが凝集すると考えられる。
【0030】
さらに、親水基や疎水基が異なっている界面活性剤の種類、その分子量を適宜調整することにより、ミセルの大きさを調整して、所望のメソ細孔の径を有するメソポーラスシリカを、調製してもよい。
【0031】
メソポーラスシリカは、用いるスルフィド基含有アルコキシシランの選択により、メソポーラスシリカ中の硫黄原子含有量を、15〜46重量%にすることもできる。
【0032】
スルフィド基含有アルコキシシランは、スルフィド基を、硫黄原子1個のチオエーテル基即ちモノスルフィド基、硫黄原子2〜6個のポリスルフィド基即ちジスルフィド基・トリスルフィド基・テトラスルフィド基・ペンタスルフィド基・ヘキサスルフィド基とするものや、その混合物が挙げられる。例えば、化学式、(C2n+1O)Si(CH(S)(CHSi(OC2n+1(nは1〜2、t及びvは2〜3、uは1〜6)で示されるものである。より具体的には、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィドのようなものが挙げられる。
【0033】
界面活性剤は、ポリエチレンオキサイドと、ポリプロピレンオキサイドとを含むブロック共重合体であるPluronic P123(BASF社製、PluronicはBASF社の登録商標)が挙げられる。
【0034】
アルカリ性水溶液は、水酸化ナトリウム水溶液が挙げられる。濃度は0.05〜0.25mol/lが好ましい。
【0035】
アルカリ性水溶液に界面活性剤を均一に溶解させ、ミセルを形成することが好ましい。その際、アルカリ性水溶液と界面活性剤との混合液を、室温〜40℃で加熱してもよい。また、その界面活性剤のミセルに、スルフィド基含有アルコキシシランを加え、3時間程度撹拌して縮合させることが好ましい。その際、アルカリ性水溶液と界面活性剤とスルフィド基含有アルコキシシランとの混合液を40℃程度で加熱する。
【0036】
アルカリ性水溶液に加えられる酸性水溶液は、塩酸が挙げられる。また、そのアルカリ性条件下での酸性水溶液を加える前の攪拌時間は3時間程度、酸性水溶液を加えた後の攪拌時間は20時間程度が好ましい。その際、酸性水溶液を加える前、及び加えた後のアルカリ性水溶液と界面活性剤とスルフィド基含有アルコキシシランとの混合液を、40℃程度で加熱する。その後、酸性水溶液を加えたこの混合液を、60〜100℃程度で加熱し、72時間程度、スルフィド基含有アルコキシシランを縮合させる。
【0037】
メソ細孔から抽出による界面活性剤の除去に用いる溶媒は、エタノールが挙げられる。その際、エタノールと界面活性剤との混合液を、60℃で3時間程度撹拌して、界面活性剤を除去することが好ましい。
【0038】
アルカリ性水溶液と界面活性剤とスルフィド基含有アルコキシシランとは、0.72〜3.61:0.05〜0.50:1.00のモル比で混合することが好ましい。また、アルカリ性水溶液とそれに加える酸性水溶液とは、1.00:250〜350のモル比で混合することが好ましい。
【実施例】
【0039】
以下、本発明の実施例を詳細に説明する。
【0040】
(実施例1)
4ツ口の500mlセパラブルフラスコに攪拌装置、温度計、ジムロート型冷却管、ゴム栓を付け、その中に界面活性剤であるPluronic P123(分子量=5800)の15.33g(2.64mmol)と、0.07M水酸化ナトリウム水溶液の187.81mlを室温で混合し、完全に溶解させた。その水溶液を40℃に加熱後、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド(カブラス4:ダイソー株式会社製、分子量=538;カブラスはダイソー株式会社の登録商標)の7.00g(13.01mmol)を加え、3時間攪拌した。その混合液に、8.37M塩酸の35.18mlを加え、20時間攪拌した。得られた混合液を、ガラス製の耐熱瓶へ移し、100℃で48時間静置した。静置した混合液を濾紙(桐山ロート用濾紙No.5B:有限会社桐山製作所製)で濾過し、イオン交換水にて洗浄液がpH7付近になるまで洗浄し、80℃で24時間乾燥した。乾燥により得られた生成物に、エタノールの500gを加え、60℃に加熱し、3時間攪拌した。攪拌後、濾過により得られた生成物を、80℃で24時間乾燥し、メソポーラスシリカAを得た。
【0041】
(実施例2)
4ツ口の500mlセパラブルフラスコに攪拌装置、温度計、ジムロート型冷却管、ゴム栓を付け、その中にPluronic P123の5.11g(0.88mmol)と0.07M水酸化ナトリウム水溶液の187.81mlを室温で混合し、完全に溶解させた。その水溶液を40℃に加熱後、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドの7.00g(13.01mmol)を加え、3時間攪拌した。その混合液に、8.37M塩酸の35.18mlを加え、20時間攪拌した。得られた混合液を、ガラス製の耐熱瓶へ移し、100℃で48時間静置した。静置した混合液を濾紙で濾過し、イオン交換水にて洗浄液がpH7付近になるまで洗浄し、80℃で24時間乾燥した。乾燥により得られた生成物に、エタノールの500gを加え、60℃に加熱し、3時間攪拌した。攪拌後、濾過により得られた生成物を、80℃で24時間乾燥し、メソポーラスシリカBを得た。
【0042】
(実施例3)
4ツ口の500mlセパラブルフラスコに攪拌装置、温度計、ジムロート型冷却管、ゴム栓を付け、その中にPluronic P123の30.66g(5.29mmol)と0.07M水酸化ナトリウム水溶液の187.81mlを室温で混合し、完全に溶解させた。その水溶液を40℃に加熱後、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドの7.00g(13.01mmol)を加え、3時間攪拌した。その混合液に、8.37M塩酸の35.18mlを加え、20時間攪拌した。得られた混合液を、ガラス製の耐熱瓶へ移し、100℃で48時間静置した。静置した混合液を濾紙で濾過し、イオン交換水にて洗浄液がpH7付近になるまで洗浄し、80℃で24時間乾燥した。得られた生成物にエタノールの500gを加え、60℃に加熱し、3時間攪拌した。攪拌後、濾過により得られた最終的な生成物を、80℃で24時間乾燥し、メソポーラスシリカCを得た。
【0043】
(実施例4)
4ツ口の500mlセパラブルフラスコに攪拌装置、温度計、ジムロート型冷却管、ゴム栓を付け、その中にPluronic P123の30.66g(5.29mmol)と0.07M水酸化ナトリウム水溶液の187.81mlを室温で混合し、完全に溶解させた。その水溶液を40℃へ加熱後、ビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィドの7.00g(14.77mmol)を加え3時間攪拌した。その混合液に8.37M塩酸の35.18mlを加え、20時間攪拌した。得られた混合液をガラス製の耐熱瓶へ移し、100℃で48時間静置した。静置した混合液を濾紙で濾過し、イオン交換水にて洗浄液がpH7付近になるまで洗浄し、80℃で24時間乾燥した。得られた生成物にエタノールの500gを加え、60℃に加熱し、3時間攪拌した。攪拌後、濾過により得られた最終的な生成物を、80℃で24時間乾燥し、メソポーラスシリカDを得た。
【0044】
(実施例5)
4ツ口の500mlセパラブルフラスコに攪拌装置、温度計、ジムロート型冷却管、ゴム栓を付け、その中にPluronic P123の15.33g(2.64mmol)と0.07M水酸化ナトリウム水溶液の187.81mlを室温で混合し、完全に溶解させた。その水溶液を40℃に加熱後、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドの7.00g(13.01mmol)を加え、20時間攪拌した。得られた混合物をガラス製の耐熱瓶へ移し、100℃で48時間静置した。静置した混合液を濾紙で濾過し、イオン交換水にて洗浄液がpH7付近になるまで洗浄し、80℃で24時間乾燥した。得られたシリカにエタノールの500gを加え、60℃に加熱し、3時間攪拌した。濾過により得られた最終的な生成物を、80℃で24時間乾燥し、メソポーラスシリカEを得た。
【0045】
(実施例6)
4ツ口の500mlセパラブルフラスコに攪拌装置、温度計、ジムロート型冷却管、ゴム栓を付け、その中にPluronic P123の15.33g(2.64mmol)と0.07M水酸化ナトリウム水溶液の187.81mlを室温で混合し、完全に溶解させた。その水溶液を40℃に加熱後、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドの7.00g(13.01mmol)を加え、20時間攪拌した。得られた混合物をガラス製の耐熱瓶へ移し、60℃で48時間静置した。静置した混合液を濾紙で濾過し、イオン交換水にて洗浄液がpH7付近になるまで洗浄し、80℃で24時間乾燥した。得られたシリカにエタノールの500gを加え、60℃に加熱し、3時間攪拌した。濾過により得られた最終的な生成物を、80℃で24時間乾燥し、メソポーラスシリカFを得た。
【0046】
(実施例7)
4ツ口の500mlセパラブルフラスコに攪拌装置、温度計、ジムロート型冷却管、ゴム栓を付け、その中にPluronic P123の15.33g(2.64mmol)と0.07M水酸化ナトリウム水溶液の187.81mlを室温で混合し、完全に溶解させた。その水溶液を40℃に加熱後、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドの7.00g(13.01mmol)を加え、20時間攪拌した。得られた混合物をガラス製の耐熱瓶へ移し、80℃で48時間静置した。静置した混合液を濾紙で濾過し、イオン交換水にて洗浄液がpH7付近になるまで洗浄し、80℃で24時間乾燥した。得られたシリカにエタノールの500gを加え、60℃に加熱し、3時間攪拌した。濾過により得られた最終的な生成物を、80℃で24時間乾燥し、メソポーラスシリカGを得た。
【0047】
(比較例1)
4ツ口の500mlセパラブルフラスコに攪拌装置、温度計、ジムロート型冷却管、ゴム栓を付け、その中にPluronic P123の15.33g(2.64mmol)と0.07M塩酸水溶液の187.81mlを室温で混合し、完全に溶解させた。その水溶液を40℃に加熱後、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドの7.00g(13.01mmol)を加え、20時間攪拌した。得られた混合物をガラス製の耐熱瓶へ移し、100℃で48時間静置した。静置した混合液を濾紙で濾過し、イオン交換水にて洗浄液がpH7付近になるまで洗浄し、80℃で24時間乾燥した。得られた生成物にエタノールの500gを加え、60℃に加熱し、3時間攪拌した。攪拌後、濾過により得られた最終的な生成物を、80℃で24時間乾燥し、シリカ粉末Hを得た。
【0048】
(比較例2)
4ツ口の500mlセパラブルフラスコに攪拌装置、温度計、ジムロート型冷却管、ゴム栓を付け、その中にPluronic P123の5.11g(0.88mmol)と0.07M塩酸水溶液の187.81mlを室温で混合し、完全に溶解させた。その水溶液を40℃に加熱後、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドの7.00g(13.01mmol)を加え、20時間攪拌した。得られた混合物をガラス製の耐熱瓶へ移し、100℃で48時間静置した。静置した混合液を濾紙で濾過し、イオン交換水にて洗浄液がpH7付近になるまで洗浄し、80℃で24時間乾燥した。得られた生成物にエタノールの500gを加え、60℃に加熱し、3時間攪拌した。攪拌後、濾過により得られた最終的な生成物を、80℃で24時間乾燥し、シリカ粉末Iを得た。
【0049】
実施例、比較例のメソポーラスシリカ、及びシリカ粉末の比表面積、細孔容積、細孔直径は、窒素雰囲気下で固体表面の窒素の吸着を測定する窒素吸着脱離測定法により、測定したものである。測定装置は、自動比表面積/細孔分布測定装置BELSORP−miniII(日本ベル株式会社製)である。測定データは、固体の比表面積を算出するBET多点法を用いて、換算した。メソポーラスシリカA〜G、又はシリカ粉末H〜Iの比表面積、細孔容積、細孔直径を、纏めて下記表1に示す。
【0050】
【表1】

【0051】
表1から明らかな通り、アルカリ性条件の後に酸性条件下で縮合させた実施例1〜4のメソポーラスシリカA〜Dと、アルカリ性条件下で縮合させた実施例5〜7のメソポーラスシリカE〜Gとは、酸性条件下で縮合させたシリカ粉末H〜Iに比べ、細孔直径が遥かに小さく、比表面積が遥かに大きい。
【0052】
メソ細孔構造の有無については、温度一定の下に気相圧力に対しての窒素ガスの吸着量を表わす吸着等温線のグラフから判断した。吸着等温線は、2相の界面で起こる吸着現象において、吸着が進行する速度と逆に離脱する速度が等しくなる吸着平衡を、Pで表わし、温度一定で、吸着平衡のときの飽和蒸気圧をPで表わしたとき、吸着平衡と飽和蒸気圧の比である相対圧P/Pを横軸に、窒素の吸着量(cm/g)を縦軸に、示したものである。その相対圧を順次増加させて得られる窒素の吸着量の変化hを実線で、相対圧を順次減少させて得られる窒素の吸着量の変化iを破線で示した。
【0053】
図2〜図8は、夫々メソポーラスシリカA〜Gの吸着等温線のグラフである。これらのグラフに示す吸着等温線は、いずれも相対圧を順次増加させて得られる窒素の吸着量の変化hと、相対圧を順次減少させて得られる窒素の吸着量の変化iとが一致していない。これは、メソ細孔構造特有の現象であり、メソ細孔が毛管凝縮を起こしていることを示している。よって、メソポーラスシリカA〜Gは、メソ細孔構造を有するメソポーラスシリカであることが確認できた。
【0054】
図9〜図10は、夫々シリカ粉末H〜Iの吸着等温線のグラフである。このグラフに示す吸着等温線は、相対圧を順次増加させて得られる吸着量の変化hと、相対圧を順次減少させて得られる吸着量の変化iとが一致しており、メソ細孔が毛管凝縮を起こしていないことを示している。よって、シリカ粉末H〜Iは、メソ細孔構造を有しておらず、メソポーラスシリカが合成できていないことが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明のメソポーラスシリカは、有用遷移金属原子や有害金属や気体分子や微量水分のみならず、有機スルホン酸、抗菌物質、銀ナノ粒子等の有機化合物・無機化合物を吸着できるので、乾燥剤、燃料電池の電解質膜、分離膜、カラムクロマトグラフィー用の担体、触媒、消臭剤、抗菌剤等の製品に利用できる。また、このメソポーラスシリカは、メソポーラスシリカの均一な細孔径を利用して、細孔内に入る物質の大きさを調整し、特定の大きさの金属等を捕捉することができる。
【0056】
本発明のメソポーラスシリカの製造方法は、これら製品の原料物質であるメソポーラスシリカを工業的に大量生産するのに、用いられる。
【符号の説明】
【0057】
1はメソポーラスシリカ、2は界面活性剤、3はシリカ粒子、4はメソ細孔である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スルフィド基を含有するアルコキシシランが界面活性剤のミセルを取り巻きつつ縮合したポリシロキサン骨格によって開孔したメソ細孔を形成したシリカ粒子が、前記ミセルの除去により空洞となった前記メソ細孔を露出しつつ、凝集していることを特徴とするメソポーラスシリカ。
【請求項2】
前記スルフィド基中の硫黄原子数が、1〜6であることを特徴とする請求項1に記載のメソポーラスシリカ。
【請求項3】
前記メソ細孔の空洞内壁表面に、前記スルフィド基が発現していることを特徴とする請求項1に記載のメソポーラスシリカ。
【請求項4】
界面活性剤を媒体に混合してそのミセルを形成する工程と、
スルフィド基含有アルコキシシランを、前記ミセルと混合し、アルカリ性条件下で、前記ミセルに取り巻かせつつ、それのポリシロキサン骨格へと縮合することによって、前記ミセルが内包された開孔のメソ細孔を有するシリカ粒子の凝集中間体を、形成する工程と、
前記凝集中間体を、溶媒と混合することにより、前記ミセルを除去して、空洞の前記メソ細孔が露出されたメソポーラスシリカを形成する工程とを、
含むことを特徴とするメソポーラスシリカの製造方法。
【請求項5】
前記アルカリ性条件下の後、酸性条件下で、前記縮合することを特徴とする請求項4に記載のメソポーラスシリカの製造方法。
【請求項6】
前記スルフィド基含有アルコキシシランが、下記化学式
(C2n+1O)Si(CH(S)(CHSi(OC2n+1
(式中、nは1〜2、t及びvは2〜3、uは1〜6)で表されることを特徴とする請求項4に記載のメソポーラスシリカの製造方法。
【請求項7】
前記界面活性剤が、ノニオン界面活性剤であることを特徴とする請求項4に記載のメソポーラスシリカの製造方法。
【請求項8】
前記ノニオン界面活性剤が、ポリエチレンオキサイドとポリプロピレンオキサイドとを含むブロック共重合体であることを特徴とする請求項7に記載のメソポーラスシリカの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−46579(P2011−46579A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−198401(P2009−198401)
【出願日】平成21年8月28日(2009.8.28)
【出願人】(000162076)共栄社化学株式会社 (67)
【Fターム(参考)】