説明

メソポーラス材料の製造方法

【課題】細孔の形状、大きさ、細孔径分布などを自在に制御することが可能であり、しかも、表面に担持される微粒子の担持割合、分布などを自在に制御することが可能なメソポーラス材料の製造方法を提供すること。
【解決手段】金属又は金属酸化物からなり、表面が有機物で被覆された1種又は2種以上の微粒子を細孔内に内包するメソポーラス材料からなる有機物被覆微粒子充填メソポーラス体を製造する有機物被覆微粒子充填メソポーラス体製造工程と、前記有機物被覆微粒子充填メソポーラス体から少なくとも1種の前記微粒子を除去する微粒子除去工程とを備えたメソポーラス材料の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メソポーラス材料の製造方法に関し、さらに詳しくは、排ガス触媒、光触媒、カーボンナノチューブ合成用触媒等の各種触媒を担持するための触媒担体、吸着剤などに用いることができるメソポーラス材料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
メソポーラス材料は、メソ孔を有する多孔質材料であり、触媒材料や吸着剤などへの応用が期待されている。メソポーラス材料は、そのまま使用される場合と、メソ孔内に微粒子を担持した状態で使用される場合とがある。また、メソポーラス材料には、メソ孔が不規則配列しているものと、規則配列しているものとが知られている。
メソポーラス材料は、通常、界面活性剤からなる球状又は棒状のテンプレートを鋳型として作製される。また、メソ孔が規則配列しているメソポーラス材料は、通常、
(1)基板上や液中でテンプレートを自己組織化する際に、テンプレート周囲をメソポーラス材料(又は、その前駆体)で被覆し、
(2)次いでこれを自己組織化し、
(3)さらに自己組織体を乾燥させた後、熱処理を施してテンプレートを燃焼除去する
ことにより得られる。
また、予めメソ孔内に微粒子が充填されたメソポーラス材料も知られている。このようなメソポーラス材料は、界面活性剤に代えて、直径の揃った金属材料又は無機材料からなる微粒子をテンプレートに用いることにより得られる。
【0003】
この種のメソポーラス材料及び自己組織化が可能な微粒子については、従来から種々の提案がなされている。
例えば、非特許文献1には、
(1) チオールで安定化させたAuナノ結晶(NC)を界面活性剤でカプセル化して、水に可溶なNCミセルを形成し、
(2) NCミセルを溶解させた水溶液にテトラエチルオルトシリケート(TEOS)及び触媒を加え、NCミセルの界面活性剤−水界面においてTEOSの加水分解により生成したケイ酸の一部を重縮合させ、
(3) 酸性条件下で、過剰のシロキサンの縮合、スピンコーティング、又は、キャスティングを行うこと
により得られる規則配列したAuNC/シリカメソ相薄膜が開示されている。
同文献には、AuNC濃度を低下させると、立方晶のAuNC/シリカメソ相が次第に2次元六方晶のシリカ/界面活性剤メソ相に変化する点が記載されている。
【0004】
また、非特許文献2には、Fe(acac)3及びMn(acac)2に1,2−ヘキサデカンジオール、オレイン酸及びオレイルアミンを加え、ベンジルエーテル中で反応させることにより得られる単分散MnFe24粒子が開示されている。
同文献には、
(1) 界面活性剤/Fe(acac)3比を3:1とすると、立方体状のMnFe24粒子が得られる点、
(2) seed-madiated 成長を用いると、多面体形状を有するMnFe24粒子が得られる点、及び、
(3) このような粒子を分散させた溶液からゆっくりと溶媒を蒸発させると、ナノ粒子超格子が得られる点、
が記載されている。
【0005】
また、非特許文献3には、Fe(III)アセチルアセトナートのアルコール還元反応により得られる立方体状の酸化鉄ナノ粒子を自己組織化させることにより得られる配列体が開示されている。同文献には、立方体状の酸化鉄ナノ粒子を自己組織化させると、2次元正方配列体が得られる点が記載されている。
【0006】
また、非特許文献4には、直径の異なるAu粒子を含む分散液をグリッド上に滴下し、乾燥させることにより得られる規則配列体が開示されている。
同文献には、
(1) 大きなAu粒子の直径(RA)と小さなAu粒子(RB)の比(RB/RA)が約0.58である場合、大粒子が六方晶配列を形成し、小粒子が三方晶格子間位置を占めるバイモーダル配列が得られる点、
(2) RB/RA比が約0.47である場合、大粒子と小粒子のドメインに相分離し、各ドメインは2次元六方晶配列となる点、及び、
(3) RB/RA比が約0.87である場合、ランダム配列が形成される点、
が記載されている。
【0007】
また、非特許文献5には、Auナノ粒子とAgナノ粒子とを含む分散液をTEMグリッド上に滴下し、乾燥させることにより得られるコロイドナノ合金が開示されている。
同文献には、
(1) Au溶液とAg溶液とをほぼ等モル混合した場合、ランダム合金構造が形成される点、及び、
(2) Au粒子が過剰となるようにAu溶液とAg溶液を混合した場合、規則的な超格子構造が得られる点、
が記載されている。
【0008】
さらに、非特許文献6には、単分散CoPt3ナノ結晶を自己組織化させた配列体が開示されている。
同文献には、2種類の単分散コロイドCoPt3ナノ結晶(それぞれ、直径4.5nm及び2.6nm)の混合物からゆっくりと溶媒を揮発させると、AB5型の3次元超格子が得られる点が記載されている。
【0009】
【非特許文献1】H.Fan et al., Science, 2004, vol.34, 567-571
【非特許文献2】H.Zeng et al., J.Am.Chem.Soc., 2004, vol.126, 11485-11459
【非特許文献3】S.Yamamuro et al., Chem.Phys.Lett., 2006 vol.418, 166-169
【非特許文献4】C.J.Kiely at al., Nature, 1998, vol.396, 444-446
【非特許文献5】C.J.Kiely et al., Adv.Mater., 2000, vol.12, 640-643
【非特許文献6】E.V.Shevcheko et al., J.Am.Chem.Soc., 2002, vol.124, 11480-11485
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
メソポーラス材料の細孔径分布、形状、細孔配列などを精密にコントロールすると、例えば、ガスの吸着特性、触媒担持能などを制御できる可能性がある。そのため、メソポーラス材料の細孔構造制御は、これらの応用を実現させるために重要である。
しかしながら、代表的なメソポーラス材料であるメソポーラスシリカに着目すると、細孔の形状や大きさを自在に制御することは困難である。また、2種以上の細孔径分布を持ったメソポーラスシリカを製造したり、あるいは、細孔の割合、形状等を自在に制御することも困難である。さらに、メソポーラスシリカに微粒子を担持させる場合において、微粒子の担持割合や分布を制御することも困難である。
【0011】
本発明が解決しようとする課題は、細孔の形状や大きさを自在に制御することが可能なメソポーラス材料の製造方法を提供することにある。
また、本発明が解決しようとする他の課題は、2種以上の細孔径分布を持つメソポーラス材料を製造することができ、しかも、細孔の割合、形状等を自在に制御することが可能なメソポーラス材料の製造方法を提供することにある。
さらに、本発明が解決しようとする他の課題は、表面に担持される微粒子の担持割合、分布などを自在に制御することが可能なメソポーラス材料の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために本発明に係るメソポーラス材料の製造方法は、
金属又は金属酸化物からなり、表面が有機物で被覆された1種又は2種以上の微粒子を細孔内に内包するメソポーラス材料からなる有機物被覆微粒子充填メソポーラス体を製造する有機物被覆微粒子充填メソポーラス体製造工程と、
前記有機物被覆微粒子充填メソポーラス体から少なくとも1種の前記微粒子を除去する微粒子除去工程と
を備えている。
【発明の効果】
【0013】
有機物被覆微粒子充填メソポーラス体を作製し、次いで、有機物被覆微粒子充填メソポーラス体から微粒子の全部又は一部を除去すると、除去された微粒子の大きさ、形状、分布等を反映したメソ孔を有するメソポーラス材料が得られる。そのため、微粒子の形状、大きさ等を制御することにより、細孔の形状、大きさ等を自在に制御することができる。また、大きさの異なる2種以上の微粒子を用いて有機物被覆微粒子充填メソポーラス体を作製した後、微粒子を除去すれば、2種以上の細孔径分布を持つメソポーラス材料が得られ、しかも細孔径の異なる細孔の割合、形状等を自在に制御することができる。さらに、組成の異なる2種以上の微粒子を内包した有機物被覆微粒子充填メソポーラス体を作製した後、一部の微粒子のみを除去したり、あるいは、微粒子の全部又は一部を除去した後、別の微粒子を細孔内に充填することにより、表面に担持される微粒子の担持割合、分布などを自在に制御することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に、本発明の一実施の形態について詳細に説明する。
[1. メソポーラス材料の製造方法]
本発明に係るメソポーラス材料の製造方法は、有機物被覆微粒子充填メソポーラス体製造工程と、有機物除去工程と、微粒子除去工程とを備えている。
【0015】
[1.1 有機物被覆微粒子充填メソポーラス体製造工程]
有機物被覆微粒子充填メソポーラス体製造工程は、金属又は金属酸化物からなり、表面が有機物で被覆された1種又は2種以上の微粒子を細孔内に内包するメソポーラス材料からなる有機物被覆微粒子充填メソポーラス体を製造する工程である。
【0016】
[1.1.1 微粒子]
微粒子は、金属又は金属酸化物からなる。微粒子の表面は、後述するように、その製造方法に起因する有機物で被覆されている。微粒子の組成は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な組成を選択することができる。
微粒子としては、具体的には、
(1) Au、Ag、CoPt3、Fe、Co、Ni、Ru、Pd、Fe−Co系、Co−Ni系、PdSe、CdSe、Pb1-xMnxSeなどの金属微粒子、
(2) Fe23、Fe34、MFe24(M=Fe、Co、Mn、Mg、Ni、Znなど)、ZnO、BaTiO3、Eu23、Gd23、In23などの金属酸化物微粒子、
などがある。
有機物被覆微粒子充填メソポーラス体は、同一組成を有する微粒子のみを含むものでも良く、あるいは、組成の異なる2種以上の微粒子を含んでいても良い。
これらの中でも、Feを主成分とする微粒子は、除去が容易であるので、細孔内に充填する微粒子として特に好適である。
【0017】
微粒子の形状は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な形状を選択することができる。微粒子の形状としては、具体的には、球、多面体、立方体などがある。
有機物被覆微粒子充填メソポーラス体は、ほぼ同一の形状を有する微粒子のみを含むものでも良く、あるいは、形状の異なる2種以上の微粒子を含むものでも良い。細孔が規則配列したメソポーラス材料を得るためには、各微粒子の形状は、ほぼ同一であるのが好ましい。
【0018】
微粒子の直径は、メソサイズ(1〜50nm)であれば良い。ここで、「微粒子の直径」とは、微粒子の形状が立方体であるときは1辺の長さ、微粒子の形状が立方体以外の形状であるときは微粒子に外接する最小の球の直径をいう。
有機物被覆微粒子充填メソポーラス体は、平均直径がほぼ等しい微粒子のみを含むものでも良く、あるいは、平均直径の異なる2種以上の微粒子を含むものでも良い。有機物被覆微粒子充填メソポーラス体が平均直径の異なる2種以上の微粒子を含む場合、各微粒子の平均直径は、目的に応じて、任意に選択することができる。また、有機物被覆微粒子充填メソポーラス体が平均直径の異なる2種以上の微粒子を含む場合、各微粒子は互いに同一組成であっても良く、あるいは、微粒子毎に組成が異なっていても良い。
【0019】
微粒子が規則配列した有機物被覆微粒子充填メソポーラス体を得るためには、微粒子の粒度分布は狭いほど良い。微粒子の粒度分布の程度は、微粒子の平均直径(Dm)に対する標準偏差(σ)の比の割合(σ×100/Dm(%)。以下、これを「単分散度」という。)で表すことができる。微粒子を規則配列させるためには、微粒子の単分散度は、10%以下が好ましく、さらに好ましくは、5%以下である。平均直径の異なる2種以上の微粒子を含む場合、上述した単分散度の条件は、平均直径の異なる微粒子毎に満たしていれば良い。
【0020】
有機物被覆微粒子充填メソポーラス体に含まれる微粒子が、平均直径DAの第1の微粒子(A)と、平均直径DBの第2の微粒子(B)(但し、DA>DB)とを含む場合、
(1) 各微粒子の大きさの差の割合((DA−DB)×100/DA(%))又は直径比(DB/DA)、
(2) 第1の微粒子(A)の数(nA)に対する第2の微粒子(B)の数(nB)の比(nB/nA)、
(3) 各微粒子の単分散度、
を最適化すると、第1の微粒子と第2の微粒子の配列状態を制御することができる。
特に、第1の微粒子(A)及び第2の微粒子(B)の単分散が共に10%以下であり、粒子数比を調整すると、直径の異なる微粒子が規則配列した配列体が得られる。
粒子数比(nB/nA)が2であり、直径比(DB/DA)が0.482〜0.624である場合、AB2型の超格子が得られる。
また、例えば、粒子数比(nB/nA)が1であり、直径比(DB/DA)が0.27〜0.425である場合、岩塩構造に類似したAB型の超格子が得られる。
また、例えば、直径比(DB/DA)が0.458〜0.482である場合、大粒子が規則的に配列したドメインと、小粒子が規則的に配列したドメイン構造の有機物被覆微粒子充填メソポーラス体が得られる。
一方、直径比(DB/DA)が0.85以上である場合、平均直径が異なる2種類の粒子がランダムに配列した有機物被覆微粒子充填メソポーラス体が得られる。
直径の異なる3種類以上の微粒子を用いる場合も同様であり、直径比、粒子数比及び単分散度を最適化すると、これらの値に応じて種々の構造を有する配列体が得られる。
このように、粒子同士が規則化したり、ランダムに混ざり合ったり、ドメイン構造を形成するのは、丁度、2種類の元素が化合物を形成するか、固溶体を形成するか、又は、共晶組織などのように相分離するか、と同様に考えて良い。ヒュームロザリー則によれば、原子径差が15%以下の元素同士は固溶体を形成しやすいとしており、非特許文献4のRB/RA比が0.85以上でランダムに配列するとの一致している。また、原子の大きさの差がより大きいと、ある特定の混合比で化合物を形成する。ナノ粒子が超格子を形成する際には、原子のような複雑な電子状態がないので、超格子構造のバリエーションは、化合物のバリエーションと比べると、ずっと少ないと考えられる。
【0021】
[1.1.2 メソポーラス材料]
メソポーラス材料とは、メソサイズの細孔を有する多孔質体をいう。細孔内には、上述した微粒子が内包されている。
細孔は、規則配列していても良く、あるいは、不規則配列していても良い。有機物被覆微粒子充填メソポーラス体は、後述するように微粒子をテンプレートとして作製されるので、直径比、粒子数比及び単分散度を最適化すると、これらの値に応じて、種々のパターンで細孔が配列している有機物被覆微粒子充填メソポーラス体が得られる。
【0022】
メソポーラス材料の組成は、特に限定されるものではなく、種々の材料を用いることができる。メソポーラス材料としては、具体的には、シリカ、チタニア、ジルコニア、アルミナなどがある。特に、シリカを主成分とする材料は、安価であり、比較的合成が容易であるので、メソポーラス材料として好適である。
【0023】
[1.1.3 微粒子の製造]
所定の直径及び粒度分布を有する微粒子は、金属源及び他の原料を所定の比率で配合し、所定の条件下で加熱することにより製造することができる。
【0024】
[A. 溶解・混合工程]
まず、金属源と、アルコールと、有機物とを有機溶媒中で溶解・混合する(溶解・混合工程)。
金属源には、微粒子を構成する少なくとも1つの金属元素を含み、有機溶媒に可溶な化合物を用いる。微粒子が2種以上の金属元素を含む場合、金属源には、2種以上の化合物を用いても良い。
金属源としては、具体的には、
(1) 金属元素(M)のイオン又はMOイオンに有機物が配位した有機錯体、
(2) 金属元素の有機酸塩、
(3) 金属元素の無機酸塩、
などがある。
【0025】
有機錯体としては、Fe(III)アセチルアセトナート、Fe(II)アセチルアセトナート、Co(II)アセチルアセトナート、Co(III)アセチルアセトナート、Ni(II)アセチルアセトナート、VOアセチルアセトナート、TiOアセチルアセトナート、Zrトリフルオロアセチルアセトナート、Hfトリフルオロアセチルアセトナート、Tiジイソプロポオキサイドビステトラメチルヘプタンジオネート、Yアセチルアセトナート、Baアセチルアセトナート、Ceアセチルアセトナート、Alアセチルアセトナート、Mnアセチルアセトナート、Mgヘキサフルオロアセチルアセトナート、モリブデニルアセチルアセトナート、Ptアセチルアセトナート、Cuアセチルアセトナートなどがある。
有機酸塩としては、酢酸鉄(II)、シュウ酸鉄(II)、シュウ酸鉄(III)、酢酸コバルト(II)、酢酸コバルト(III)、酢酸ニッケル(II)、シュウ酸チタン、酢酸ジルコニウムなどがある。
無機酸塩としては、硫酸チタン、酸化硫酸バナジウム、硫酸バナジウム、硫酸ハフニウムなどがある。
【0026】
アルコールは、金属源を還元し、有機溶媒中において金属イオン又はMOイオンを非イオンの状態にするための還元剤である。還元剤には、1種類のアルコールを用いても良く、あるいは、2種以上を組み合わせて用いても良い。
還元剤として使用可能なアルコールとしては、具体的には、1,2−ヘキサデカンジオール、1,2−オクタデカンジオール、1,2−テトラデカンジオールなどがある。
【0027】
「有機物」は、有機酸、有機アミン、及び/又は、チオールからなる。有機物には、1種類の有機酸、有機アミン又はチオールを用いても良く、あるいは、2種以上を組み合わせて用いても良い。有機物は、生成した粒子の表面に配位し、保護層となる。
保護層は、主として、微粒子を合成する際に微粒子の凝集を抑制し、粒子径を均一にする作用、及び、後述する分散液中に分散させる際に微粒子の凝集を抑制する作用を有する。このような効果を得るためには、有機物は、相対的に長さ(分子長)の長いものが好ましい。また、保護層は、1種類の有機物からなるものでも良く、あるいは、2種以上の有機物からなるものでも良い。特に、2種以上の有機物を保護層として用いると、微粒子の粒子径が安定化し、均一化するという利点がある。
【0028】
有機酸としては、具体的には、RCOOH、RSOH、RPOHなどの脂肪酸(Rは、アルキル鎖(CH3(CH2)x−)を表す)がある。
有機アミンとしては、具体的には、RNH2、R2NH、R3Nなどの脂肪アミン(Rは、アルキル鎖(CH3(CH2)x−)を表す)などがある。
チオールとしては、具体的には、R−SH(Rは、アルキル鎖(CH3(CH2)x−)を表す)などがある。
合成時に使用する有機酸としては、特に、オレイン酸、カプロン酸、ラウリン酸、酪酸、リノール酸などが好適である。
また、合成時に使用する有機アミンとしては、特に、オレイルアミン、ヘキシルアミン、ラウリルアミンなどが好適である。
微粒子の粒子径を安定化させるためには、有機物には、オレイン酸とオレイルアミンを組み合わせて用いるのが好ましい。また、粒子によっては(金の場合)、チオールが使われる場合もある。
【0029】
有機溶媒は、上述した金属源、アルコール及び有機物を溶解可能なものであればよい。また、溶液は、後述するように所定の温度に加熱されるので、沸点が200℃以上である溶媒を用いるのが好ましい。有機溶媒としては、具体的には、オクチルエーテル、フェニルエーテルなどがある。これらの有機溶媒は、それぞれ単独で用いても良く、あるいは、2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0030】
溶液中における金属源の濃度は、作製しようとする微粒子の直径、標準偏差等に応じて最適な濃度を選択する。一般に、希薄溶液を用いると、直径のそろった均一な微粒子が得られる。金属源に加える有機溶媒の量は、金属源の種類にもよるが、通常、金属源1mmolに対して、10〜50mL程度である。
アルコール(還元剤)は、上述したように溶液中に含まれる金属イオン又はMOイオンに電子を与え、非イオンの状態にするためのものである。金属イオン又はMOイオンが還元されると、これらが互いに集まって微粒子を形成する。還元剤の添加量は、金属源及びその他の原料の種類にもよるが、通常、溶液中に含まれる金属イオン又はMOイオンのモル数の1〜20倍程度である。
有機物は、溶液中において金属イオン又はMOイオンと結合すると考えられている。この溶液中にさらに還元剤が加えられると、金属イオン又はMOイオンが還元されて微粒子状に凝集すると同時に、微粒子の周囲が保護層で被覆された状態となる。有機物の添加量は、金属源及びその他の原料の種類にもよるが、通常、溶液中に含まれる金属イオン又はMOイオンのモル数の1〜10倍程度である。
【0031】
[B. 加熱工程]
次に、溶解・混合工程で得られた均一な溶液を、不活性雰囲気下において180℃〜300℃で加熱する(加熱工程)。加熱により溶液中に、保護層で被覆された微粒子が生成する。
溶液の加熱は、溶液中で生成した微粒子の酸化を防ぐために不活性雰囲気下(例えば、窒素雰囲気下、アルゴン雰囲気下など)で行う。
加熱温度は、使用する原料の種類や目的とする直径に応じて、最適な温度を選択する。一般に、加熱温度が低すぎると、原料間の反応が不十分となる。原料間の反応を効率よく進行させるためには加熱温度は、180℃以上が好ましい。
一方、加熱温度が高すぎると、微粒子の凝集が進行し、粒子の直径が不均質になる。従って、加熱温度は、300℃以下が好ましい。
【0032】
溶解・混合工程及び加熱工程の条件を最適化すると、合成された微粒子の形状、平均直径及び標準偏差を制御することができる。
例えば、球状の微粒子は、有機物としてオレイン酸やオレイルアミン、金属源としてFeアセチルアセトナートを用いた場合では、前述の有機物/金属源比を小さく(モル比で3以下)するか、直径をおよそ8nm以下に抑えることで得られる。
また、例えば、立方体状の微粒子は、有機物/金属源比を3に近づけ、直径をおよそ8nm以上にすることにより得られる。
また、例えば、多面体状の微粒子は、さらに粒子直径を10〜20nm程度に大きくすることで得られやすくなる。
これらの場合において、それぞれ、反応液中の溶質濃度を調整したり、反応温度や時間を制御すると、平均直径及び標準偏差を制御することができ、概して小さい粒子ほど球状化しやすく、大きい粒子ほど多面体状になりやすい。しかし、有機物/金属源比を調整することで、それぞれの形状が保たれる直径範囲を調整することができる。
【0033】
[1.1.4 有機物被覆微粒子充填メソポーラス体の製造]
[A. 微粒子の親水化]
上述の方法により得られた微粒子表面は、外界に対して疎水性の化学基を向けて有機物で覆われた状態になっている。微粒子を、メソポーラス体を作製する際のテンプレートにするには、粒子は親水性でなければならない。そのため、まず疎水性微粒子を親水化する。微粒子の親水化は、微粒子を分散させた溶液に界面活性剤を添加することにより行う。疎水性の微粒子が分散している溶液に界面活性剤を加えると、界面活性剤の疎水基が微粒子表面に吸着し、親水基が外側を向いた水溶性のミセルが得られる。
親水化に用いる界面活性剤は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適なものを選択する。界面活性剤としては、具体的には、
(1) ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド(CH3(CH2)15N(CH3)3Br(C16))、オクチルトリメチルアンモニウムブロミド(CH3(CH2)7N(CH3)3Br(C8))、n−デシルトリメチルアンモニウムブロミド(CH3(CH2)9N(CH3)3Br(C10))、ラウリルトリメチルアンモニウムブロミド(CH3(CH2)11N(CH3)3Br(C12))、
(2) 上記の試薬のBrをClに代えたもの、
などがある。
【0034】
[B. 前駆体の吸着]
次に、水溶性ミセルの周囲にメソポーラス材料の前駆体を吸着させる。水溶性ミセルを分散させた水溶液にアルコキシド及び触媒を添加すると、界面活性剤の親水基/水界面において、アルコキシドの加水分解により生じたメソポーラス材料の前駆体が吸着する。吸着した前駆体の一部は、重縮合し、水溶性ミセルの周囲にシェルを形成する。
前駆体源には、アルコキシドを用いる。アルコキシドとしては、具体的には、
(1) テトラメチルオルトシリケート(TMOS)、テトラエチルオルトシリケート(TEOS)、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトライソブトキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトラ−sec−ブトキシシラン、
(2) トリメトキシアルミニウム、トリエトキシアルミニウム、トリ−n−プロポキシアルミニウム、トリイソプロポキシアルミニウム、トリ−n−ブトキシアルミニウム、トリイソブトキシアルミニウム、トリ−sec−ブトキシアルミニウム、
(3) テトラメトキチタン、テトラエトキシチタン、テトラ−n−プロポキシチタン、テトライソプロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシチタン、テトライソブトキシチタン、テトラ−sec−ブトキシチタン、
(4) テトラメトキシジルコニウム、テトラエトキシジルコニウム、テトラ−n−プロポキシジルコニウム、テトライソプロポキシジルコニウム、テトラ−n−ブトキシジルコニウム、テトライソブトキシジルコニウム、テトラ−sec−ブトキシジルコニウム、
などがある。
また、触媒としては、塩酸、水酸化ナトリウム、アンモニアなどがある。
アルコキシド及び触媒の添加量は、特に限定されるものではなく、アルコキシドの種類に応じて最適なものを選択する。
【0035】
[C. 自己組織化]
上述の処理を施した微粒子(前駆体を吸着させたミセル)を自己組織化させる。自己組織化の方法としては、例えば、微粒子を分散させた分散液を適当な基板表面に塗布し、溶媒をゆっくり揮発させる方法がある。溶媒をゆっくり揮発させると、粒子間の静電反発力により微粒子が自己組織化する。この時、微粒子の平均直径、標準偏差、形状等を最適化すると、微粒子をランダムに配列させたり、あるいは、規則配列させることができる。
溶媒を完全に除去すると、前駆体の重縮合がさらに進行する。その結果、細孔内に有機物で被覆された微粒子を内包したメソポーラス材料からなる有機物被覆微粒子充填メソポーラス体が得られる。
【0036】
微粒子を自己組織化させる場合において、水溶性ミセルに前駆体を添加する際に水溶性ミセル分散液の濃度を変えると、細孔壁の厚さや表面に露出する細孔(すなわち、微粒子)の密度を制御することができる。一般に、微粒子に対して前駆体の量が相対的に多くなるほど、細孔壁を厚くすることができ、また、表面に露出する細孔の密度を小さくすることができる。
さらに、微粒子の配列状態は、微粒子の単分散度、直径比、粒子数比等により制御することができる。また、微粒子の真の表面と細孔内壁の間の距離は、微粒子の周囲を被覆する有機物を、これとは分子長が異なるものに交換(配位子交換)することにより制御することができる。
【0037】
[1.2 有機物除去工程]
有機物除去工程は、微粒子の周囲を被覆する有機物を除去する工程である。
有機物被覆微粒子充填メソポーラス体の細孔内に内包されている微粒子の周囲は、有機酸、有機アミン、チオール等からなる有機物で覆われている。有機物除去工程は、必ずしも必要ではないが、予め有機物を除去しておくと、微粒子の除去が容易化する。
有機物の除去方法としては、具体的には、
(1) 有機物被覆微粒子充填メソポーラス体を大気中において熱処理する方法、
(2) 有機物被覆微粒子充填メソポーラス体に対して酸素プラズマ処理する方法
などがある。
処理条件は、特に限定されるものではなく、有機物をほぼ完全に除去可能な条件であれば良い。例えば、熱処理により有機物を除去する場合、熱処理温度は、300〜600℃が好ましく、熱処理時間は、30分以上が好ましい。
【0038】
[1.3 微粒子除去工程]
微粒子除去工程は、必要に応じて有機物を除去した後、有機物被覆微粒子充填メソポーラス体又は有機物を除去した後の微粒子充填メソポーラス体から少なくとも1種の微粒子を除去する工程である。
微粒子の除去方法としては、具体的には、
(1) 微粒子を溶解可能な溶液に(有機物被覆)微粒子充填メソポーラス体を浸漬する方法(湿式法)、
(2) 反応性の気体(エッチングガス)やイオン、ラジカルによってエッチングする方法(ドライエッチング法)、
などがある。
特に、湿式法は、(有機物被覆)微粒子充填メソポーラス体の厚さが相対的に厚い場合であっても、微粒子をほぼ完全に除去できるので、微粒子を除去する方法として好適である。
【0039】
いずれの方法を用いて微粒子を除去する場合であっても、(有機物被覆)微粒子充填メソポーラス体に含まれるすべての微粒子を除去しても良く、あるいは、一部の微粒子を除去しても良い。(有機物被覆)微粒子充填メソポーラス体が組成の異なる2種以上の微粒子を含む場合において、一部の微粒子のみを選択的に除去すると、メソサイズの細孔を有し、かつ、一部の細孔内に微粒子を内包したメソポーラス材料が得られる。組成の異なる微粒子の比率を制御すれば、細孔内の微粒子の充填割合が制御されたメソポーラス材料が得られる。
【0040】
湿式法を用いて微粒子を除去する場合、溶液には、微粒子の組成に応じて最適なものを選択する。例えば、除去すべき微粒子がFeを主成分とするものである場合、溶液には、塩酸を用いるのが好ましい。また、(有機物被覆)微粒子充填メソポーラス体が組成の異なる微粒子を含む場合、湿式法を用いると、特定の微粒子のみを選択的に除去することができる。
【0041】
[2. 本発明に係る方法により得られるメソポーラス材料の具体例]
[2.1 具体例1]
図1に、本発明に係る方法により得られるメソポーラス材料の第1の具体例を示す。図1左上図は、有機物被覆微粒子充填メソポーラス体の断面模式図である。図1において、有機物被覆微粒子充填メソポーラス体は、組成及び直径がほぼ等しく、かつ、表面が界面活性剤で覆われた球状の微粒子と、多孔質体(メソポーラス材料)とを備えている。微粒子は、多孔質体の細孔内に充填されており、かつ、規則配列している。
この有機物微粒子充填メソポーラス体を大気中において熱処理すると、界面活性剤が燃焼除去される(図1左下図)。その結果、微粒子と多孔質体の細孔内壁との間に隙間が形成された微粒子充填メソポーラス体となる。次いで、微粒子を溶解可能な溶液(例えば、酸水溶液など)に、微粒子充填メソポーラス体を浸漬し、微粒子を溶解除去する(図1右上図)。微粒子が完全に除去された後、メソポーラス材料を洗浄・乾燥する(図1右下図)。得られたメソポーラス材料は、(真の微粒子直径+界面活性剤層の厚さ×2)に相当する内径を有する球状の細孔が規則配列した状態になっている。
【0042】
[2.2 具体例2]
図2に、本発明に係る方法により得られるメソポーラス材料の第2の具体例を示す。図2左図は、有機物被覆微粒子充填メソポーラス体の断面模式図である。図2において、有機物被覆微粒子充填メソポーラス体は、組成が等しく、直径が異なり、かつ、表面が界面活性剤で覆われた2種類の球状の微粒子と、多孔質体(メソポーラス材料)とを備えている。大小2種類の微粒子は、それぞれ、多孔質体の細孔内に充填されており、かつ、規則配列している。
この有機物被覆微粒子充填メソポーラス体(図2左図)に対して、必要に応じて界面活性剤除去のための熱処理を行った後、微粒子を酸等で除去すると、メソポーラス材料が得られる(図2右図)。得られたメソポーラス材料は、内径の異なる2種類の球状の細孔が、それぞれ、規則配列した状態になっている。
【0043】
[2.3 具体例3]
図3に、本発明に係る方法により得られるメソポーラス材料の第3の具体例を示す。図3左図は、有機物被覆微粒子充填メソポーラス体の断面模式図である。図3において、有機物被覆微粒子充填メソポーラス体は、組成及び直径がほぼ等しく、かつ、表面が界面活性剤で覆われた立方体状の微粒子と、多孔質体(メソポーラス材料)とを備えている。微粒子は、多孔質体の細孔内に充填されており、かつ、規則配列している。
この有機物被覆微粒子充填メソポーラス体(図3左図)に対して、必要に応じて界面活性剤除去のための熱処理を行った後、微粒子を酸等で除去すると、メソポーラス材料が得られる(図3右図)。得られたメソポーラス材料は、立方体状の細孔が規則配列した状態になっている。
【0044】
[2.4 具体例4]
図4に、本発明に係る方法により得られるメソポーラス材料の第4の具体例を示す。図4左図は、有機物被覆微粒子充填メソポーラス体の断面模式図である。図4において、有機物被覆微粒子充填メソポーラス体は、組成が異なり、直径がほぼ等しく、かつ、表面が界面活性剤で覆われた2種類の球状の微粒子A、B(例えば、酸に不溶のAuと、溶けるFe)と、多孔質体(メソポーラス材料)とを備えている。組成の異なる微粒子A、Bは、多孔質体の細孔内に充填されており、かつ、規則配列しているが、微粒子Aと微粒子Bとは、ランダムに配列した状態になっている。
この有機物被覆微粒子充填メソポーラス体(図4左図)に対して、界面活性剤除去のための熱処理を行うと、微粒子充填メソポーラス体となる(図4中図)。さらに、微粒子Bのみを酸等で除去すると、メソポーラス材料が得られる(図4右図)。得られたメソポーラス材料は、球状の細孔が規則配列しており、かつ、細孔の一部に微粒子Aが充填された状態になっている。
【0045】
[2.5 具体例5]
図5に、本発明に係る方法により得られるメソポーラス材料の第5の具体例を示す。図5左上図は、有機物被覆微粒子充填メソポーラス体の断面模式図である。図5において、有機物被覆微粒子充填メソポーラス体は、組成及び直径が異なり、かつ、表面が界面活性剤で覆われた2種類の球状の微粒子A、Bと、多孔質体(メソポーラス材料)とを備えている。組成及び直径の異なる微粒子A、Bは、それぞれ、多孔質体の細孔内に充填されており、かつ、規則配列している。直径比(DB/DA)及び粒子数比(nB/nA)を調整すると、微粒子A、Bを規則配列させることができる。
この有機物微粒子充填メソポーラス体(図5左上図)に対して、界面活性剤除去のための熱処理を行うと、微粒子充填メソポーラス体となる(図5右上図)。さらに、直径の大きい微粒子Aのみを酸等で除去すると、メソポーラス材料が得られる(図5下図)。得られたメソポーラス材料は、内径が異なる2種類の球状の細孔が規則配列しており、かつ、内径の小さい細孔内には微粒子Bが充填された状態になっている。
【0046】
[3. 本発明に係るメソポーラス材料の製造方法の作用]
事前に有機溶媒中で作製した金属又は金属酸化物微粒子を水溶化処理し、これをテンプレートとして有機物被覆微粒子充填メソポーラス体を作製する。次いで、細孔内の微粒子を除去するとメソポーラス材料が得られる。この時、微粒子を除去する方法として、酸などの薬液を細孔に浸透させ、細孔内の微粒子を溶出する湿式法を用いると、有機物被覆微粒子充填メソポーラス体の表面だけでなく、内部にある微粒子であっても容易に除去することができる。また、微粒子は、通常、水溶化処理によって界面活性剤で覆われているので、熱処理により予め界面活性剤を除去しておくと、薬液の浸透性が高くなり、完全に微粒子を除去することができる。
【0047】
最終的に得られたメソポーラス材料の細孔形状や細孔径分布の制御は、事前に準備する微粒子の形状や大きさの制御により達成される。上述の方法により得られる有機物(例えば、カルボン酸)で被覆された微粒子は、界面活性剤層の厚さを含めると、およそ4〜50nmの範囲で直径を制御可能である。また、合成条件を最適化することにより、球状のみならず、多面体形状、あるいは、立方体形状の微粒子であっても合成することができる。そのため、これらの微粒子をテンプレートに用いることにより、その形状や大きさに対応した細孔を持つメソポーラス材料を作製することができる。
【0048】
また、大きさが均一な微粒子をテンプレートに用いれば、より均一な細孔径を有し、規則的な細孔構造を有するメソポーラス材料が得られる。また、例えば、大小二種類の微粒子を用いれば、これに対応した細孔径分布や特異な細孔構造を有するメソポーラス材料が得られる。
さらに、酸に可溶な微粒子と不溶な微粒子の2種類の微粒子をテンプレートに用い、(有機物被覆)微粒子充填メソポーラス体を作製後、一方の微粒子のみを酸で除去すれば、細孔の一部に微粒子を担持したメソポーラス材料が得られる。また、二種類の微粒子の混合割合を調節すれば、細孔内部への微粒子の充填率や充填の規則・不規則性を制御することができる。
【0049】
このように、予め用意する微粒子の形状、大きさ、組成や、その混合割合を調節するだけで、簡便にメソポーラス材料の細孔形状、細孔径、細孔配列構造を容易に制御することができる。微粒子群の組み合わせは自在である。そのため、本発明に係る方法を用いると、これまでに得られなかった細孔構造のメソポーラス材料や微粒子充填メソポーラス体を合成することも可能である。また、本発明に係る方法で作製したメソポーラス材料をさらにテンプレートとして、様々の形状のドット構造を有する構造体を作製することもできる。
【実施例】
【0050】
(実施例1)
[1. 試料の作製]
Feアセチルアセトナート(1mmol)、1,2−ヘキサデカンジオール(7mmol)、オレイン酸(3mmol)、オレイルアミン(3mmol)、オクチルエーテル(20mL)を不活性ガス下で1時間混合後、250℃まで昇温して30分間保持した。反応液を室温に冷却後、エタノールを加え、遠心分離により粒子の洗浄を行った。上澄み液を除去後、沈殿物にクロロホルムを加え、微粒子の分散液を作製した。
【0051】
微粒子のクロロホルム分散液2mL、純水2mL、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミドCH3(CH2)15N(CH3)3Br(C16)(臭化セチルトリメチルアンモニウム)0.05gを混合し、エマルジョン化した後、クロロホルムを優先的に蒸発させた。クロロホルムを十分蒸発させ、数時間放置して沈殿を生じさせ、茶透明な上澄み液を回収し、微粒子分散水溶液を得た。微粒子分散水溶液の吸光係数を測定した結果、波長が680nmにおいて、1.17であった。
【0052】
微粒子分散水溶液を152μL採取し、1848μLの純水で希釈後、塩酸4μL及びテトラエトキシシラン(TMOS)14.6μLを添加・混合した。混合液を1cm角のSi基板上にスピンコートにより塗布・乾燥後、400℃において4時間大気中で熱処理し、有機物を除去した。次いで、基板を塩酸に5分間浸し、メソポーラス材料を得た。
【0053】
[2. 試料の評価]
得られたメソポーラス材料の表面を走査型電子顕微鏡で観察した。図6(a)及び図6(b)に、それぞれ、酸処理前の微粒子充填メソポーラス体及び酸処理後のメソポーラス材料のSEM写真を示す。酸処理により、酸化鉄微粒子がメソポーラスシリカ細孔から除去されていることを確認した。
【0054】
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明に係るメソポーラス材料の製造方法は、排ガス触媒、光触媒、カーボンナノチューブ合成用触媒等の各種触媒を担持するための触媒担体、吸着剤などの製造方法として使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るメソポーラス材料の製造方法を示す概略図である。
【図2】本発明の第2の実施の形態に係るメソポーラス材料の製造方法を示す概略図である。
【図3】本発明の第3の実施の形態に係るメソポーラス材料の製造方法を示す概略図である。
【図4】本発明の第4の実施の形態に係るメソポーラス材料の製造方法を示す概略図である。
【図5】本発明の第5の実施の形態に係るメソポーラス材料の製造方法を示す概略図である。
【図6】図6(a)及び図6(b)は、それぞれ、実施例1で作製した微粒子充填メソポーラス体及び微粒子を除去した後のメソポーラス材料の表面のSEM写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属又は金属酸化物からなり、表面が有機物で被覆された1種又は2種以上の微粒子を細孔内に内包するメソポーラス材料からなる有機物被覆微粒子充填メソポーラス体を製造する有機物被覆微粒子充填メソポーラス体製造工程と、
前記有機物被覆微粒子充填メソポーラス体から少なくとも1種の前記微粒子を除去する微粒子除去工程と
を備えたメソポーラス材料の製造方法。
【請求項2】
前記微粒子は、多面体形状を有する請求項1に記載のメソポーラス材料の製造方法。
【請求項3】
前記微粒子は、立方体状である請求項1に記載のメソポーラス材料の製造方法。
【請求項4】
前記微粒子は、平均直径がDAである第1の微粒子(A)と、平均直径がDBである第2の微粒子(B)(但し、DA>DB)とを含む請求項1から3までのいずれかに記載のメソポーラス材料の製造方法。
【請求項5】
前記メソポーラス材料は、前記細孔が規則配列している請求項1から4までのいずれかに記載のメソポーラス材料の製造方法。
【請求項6】
前記メソポーラス材料は、シリカを主成分とする請求項1から5までのいずれかに記載のメソポーラス材料の製造方法。
【請求項7】
前記微粒子の少なくとも1種は、鉄を主成分として含む請求項1から6までのいずれかに記載のメソポーラス材料の製造方法。
【請求項8】
前記微粒子除去工程は、塩酸を用いて前記微粒子を除去するものである請求項7に記載のメソポーラス材料の製造方法。
【請求項9】
前記微粒子除去工程の前に、前記有機物を除去する有機物除去工程をさらに備えた請求項1から8までのいずれかに記載のメソポーラス材料の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−173477(P2009−173477A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−12073(P2008−12073)
【出願日】平成20年1月22日(2008.1.22)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【Fターム(参考)】