説明

メソポーラス構造体の製造方法

【課題】メソポーラス体の細孔内に、微粒子を配置してなるメソポーラス構造体の製造方法において、微粒子を逆ミセル状態とすることなく、効率的に細孔内に配置する。
【解決手段】メソポーラス体10の細孔11内に、細孔11の径よりも小さい平均粒子径を持つ微粒子20を配置してなるメソポーラス構造体の製造方法において、メソポーラス体10を用意した後、メソポーラス体10と微粒子20とを混合した水溶液を作製し、この水溶液に対し加熱および加圧を行って水溶液中の水を亜臨界水状態とすることにより、微粒子20をメソポーラス体10の細孔11内に担持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メソポーラス体の細孔内に微粒子を配置してなるメソポーラス構造体の製造方法に関し、たとえば、自動車用排気浄化用、燃料電池用、環境浄化用に用いる触媒構造体や吸着剤、磁性材料、電極材料、オプトエレクトロニクスデバイス、生物的・化学的センサーなどに用いる構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車の排ガス等に含まれるHC、CO、NOx等の有害成分を浄化するための触媒としては、Pt、Pd、Rh等の貴金属が使用されている。これらの触媒用貴金属は、排ガスとの接触面積を高めるために、粒子として、アルミナ等の担体の表面に担持され、有害成分を浄化している。
【0003】
近年、自動車等の排出ガス規制は、さらに厳しくなる一方であり、排ガス浄化用触媒には、有害成分の浄化をより高効率で行うことが望まれている。同様に、燃料電池用の触媒や環境浄化用の触媒においても、さらに浄化性能、機能を向上させる必要があり、より高活性な触媒の開発が期待されている。
【0004】
貴金属触媒の効率向上対策の一つとして、貴金属粒子を微粒子化して、有害成分等との接触面積を大きくするために、接触面積の大きいナノメートルオーダの貴金属粒子の開発が進んでおり、その一つとして、より高活性であり且つ複数種類の物質に対して活性を示し、同時に少量で効果的に浄化させることのできる触媒粒子が提案されている(特許文献1参照)。
【0005】
このものは、ナノメートルオーダの平均粒子径(一次粒子径)を持つ一種の単体微粒子または二種以上の固溶体微粒子である基粒子と、この基粒子の表面の少なくとも一部を被覆するように配置された触媒金属と、よりなる触媒粒子、すなわちナノ複合触媒粒子からなる微粒子を提供するものである。
【0006】
このようなナノ複合触媒粒子によれば、ナノメートルオーダの基粒子の表面に触媒金属を配置するというナノメートルオーダでの立体構造を有しているため、比表面積が大きく、高い触媒活性を実現することができる。
【0007】
しかしながら、実際に上記ナノ複合触媒粒子を用いて排ガスを浄化しようとする際、従来の担持方法では、担体に対してナノ複合触媒粒子を分散性よく担持させることができず、ナノ複合触媒粒子の持つ本来の性能を出し切ることができない。
【0008】
そこで、メソポーラス体の細孔内に、当該細孔の径よりも小さい平均粒子径を持つ微粒子としてのナノ複合触媒粒子を、配置するようにしたメソポーラス構造体が提案されている(特許文献2参照)。
【0009】
ここで、メソポーラス体は、学術的に、径が5nm以上50nm未満の細孔を持つものと定義されており、ナノ複合触媒粒子を分散性よく担持できるだけの大きな細孔径と、大きな単位重量あたりの細孔容積を持つものである。このようなメソポーラス体は、一般にはテンプレートを鋳型として用いるテンプレート法により、金属酸化物などを用いて形成される。
【0010】
このテンプレート法は、具体的には、次のようなものである。界面活性剤よりなるテンプレートの水溶液に、金属酸化物などからなるメソポーラス体の原料を溶解させ、これを加熱する。すると、加水分解により、テンプレートの周囲を取り囲むようにメソポーラス体の原料が付着する。
【0011】
そして、この原料が付着したテンプレートは、界面活性剤の性質によって凝集し、凝集体すなわち自己組織体構造となり、沈殿する。そして、この沈殿物を分離して乾燥し、焼成することにより、当該沈殿物中のテンプレートを焼失させる。それにより、テンプレートが焼失した部分の空間が細孔となってメソポーラス体が形成される。
【0012】
そして、上記特許文献2に記載の製造方法においては、ナノ複合基粒子としての微粒子の原料を含む水溶液に界面活性剤を混合することで、微粒子が界面活性剤により包み込まれた逆ミセルの状態を形成した混合液を作製し、この混合液を、メソポーラス体の細孔内に含浸させた後、メソポーラス体を乾燥・焼成することでメソポーラス構造体を製造するようにしている。
【特許文献1】特開2003−80077号公報
【特許文献2】特開2005−15272号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、上記特許文献2に記載の製造方法では、微粒子を界面活性剤により包み込んだ逆ミセルの状態としているため、この逆ミセルの状態では元々の微粒子の径よりも大きくなってしまう。
【0014】
そのため、この微粒子を含む逆ミセルが、メソポーラス体の細孔内に入り込みにくくなる可能性が生じ、メソポーラス体の細孔内に効率よく、微粒子を配置させることが困難になる。
【0015】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、メソポーラス体の細孔内に、微粒子を配置してなるメソポーラス構造体の製造方法において、微粒子を逆ミセル状態とすることなく、効率的に細孔内に配置できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するため、本発明者は鋭意検討を行った。その結果、メソポーラス体を作製後に、物理的な力を利用して、細孔内に微粒子を導入すればよいと考えた。
【0017】
ここで、物理的な力を利用する処理としては、本発明者は、メソポーラス体と微粒子との混合水溶液に対して行う亜臨界処理や減圧含浸処理、あるいはメソポーラス体を乾燥処理などを考えた。
【0018】
まず、亜臨界処理とは、水を亜臨界水にすることである。この亜臨界水とは、後述する図4に示されるように、臨界点近傍の温度、圧力の低い熱水のことであり、水溶液が低粘度化することによって、優れた浸透力を発揮するものである。
【0019】
水をこのような亜臨界水の状態とするには、水に対して加熱・加圧を行い、亜臨界領域の高温高圧雰囲気とする必要がある。具体的な亜臨界処理としては、水熱合成処理や、水に超音波を照射し、それにより発生する気泡の破裂によって起こる衝撃エネルギーを利用する超音波照射や、水にマイクロ波を照射したときの衝撃を利用するマイクロ波照射が、知られている。
【0020】
そこで、本発明者は、メソポーラス体と微粒子とを混合した水溶液を、亜臨界水状態としてやれば、水溶液が低粘度化することによって、メソポーラス体の細孔内への優れた浸透力が発揮され、細孔内部に微粒子が導入されやすくなると考え、実験検討を行った。その結果、後述する実施例に示すように、微粒子を逆ミセル状態とすることなく、効率的に細孔内に配置できることがわかった。
【0021】
すなわち、本発明は、メソポーラス体(10)を用意した後、メソポーラス体(10)と微粒子(20)とを混合した水溶液を作製し、この水溶液に対し加熱および加圧を行って水溶液中の水を亜臨界水状態とすることにより、微粒子(20)をメソポーラス体(10)の細孔(11)内に担持することを、第1の特徴とする。
【0022】
それによれば、微粒子(20)を逆ミセル状態とすることなく、効率的に細孔(11)内に配置することができる。なお、その後は、メソポーラス体(10)と微粒子(20)が一体化したものを、乾燥・焼成することで、細孔(11)内に微粒子(20)が配置されたメソポーラス構造体を形成することができる。
【0023】
また、メソポーラス体と微粒子との混合水溶液に対して行う減圧含浸処理としては、当該混合水溶液を1気圧未満の減圧下に置いてやれば、細孔内の水を減圧の力により取り除いて分散性よく細孔内に微粒子が導入されやすくなると考え、実験検討を行った。その結果、後述する実施例に示すように、微粒子を逆ミセル状態とすることなく、効率的に細孔内に配置できることがわかった。
【0024】
このことから、本発明は、メソポーラス体(10)を用意した後、メソポーラス体(10)と微粒子(20)とを混合した水溶液を作製し、この水溶液を、1気圧未満の減圧下に置くことにより、微粒子(20)をメソポーラス体(10)の細孔(11)内に担持することを、第2の特徴とする。
【0025】
それによれば、微粒子(20)を逆ミセル状態とすることなく、効率的に細孔(11)内に配置することができる。なお、その後は、上記同様、メソポーラス体(10)と微粒子(20)が一体化したものを、乾燥・焼成することで、細孔(11)内に微粒子(20)が配置されたメソポーラス構造体を形成することができる。
【0026】
また、メソポーラス体を乾燥処理することについては、メソポーラス体を減圧乾燥、または100度以上の高温乾燥、または凍結乾燥を行うことにより、細孔内に存在する表面吸着水を取り除いてやれば、その後、微粒子が分散した水溶液を滴下することで、細孔内に微粒子が導入されやすくなると考え、実験検討を行った。その結果、後述する実施例に示すように、微粒子を逆ミセル状態とすることなく、効率的に細孔内に配置できることがわかった。
【0027】
このことから、本発明は、メソポーラス体(10)を用意し、次に、メソポーラス体(10)を乾燥させた後、微粒子(20)を分散させた水溶液を、メソポーラス体(10)の細孔(11)内に含浸させることにより、微粒子(20)をメソポーラス体(10)の細孔(11)内に担持することを、第3の特徴とする。
【0028】
それによれば、微粒子(20)を逆ミセル状態とすることなく、効率的に細孔(11)内に配置することができる。なお、その後は、上記同様、メソポーラス体(10)と微粒子(20)が一体化したものを、乾燥・焼成することで、細孔(11)内に微粒子(20)が配置されたメソポーラス構造体を形成することができる。
【0029】
さらに、検討を進めた結果、あらかじめメソポーラス体の外表面のみを疎水化処理しておくことで、より効率的に細孔内にのみ微粒子を導入できることを実験的に見出した。つまり、上記各特徴を有する製造方法においては、メソポーラス体(10)として細孔(11)以外の外表面が疎水化処理されたものを用意することが好ましい。
【0030】
この疎水化処理としては、メソポーラス体(10)をテンプレートを鋳型として形成するときに、テンプレートを細孔(11)の内部に残した状態で、表面疎水化剤とともに有機溶媒中で混合した後、テンプレートをアルコールで洗い流すことにより行うことができる。
【0031】
なお、特許請求の範囲およびこの欄で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。図1は、本発明の実施形態に係るメソポーラス構造体100の概略構成を示す図であり、(a)は、斜視図、(b)は断面図である。また、図2は、本実施形態に係る微粒子20の模式的な構成を示す図である。
【0033】
図1において、メソポーラス体10は、径が5nm以上50nm未満の細孔11を持つものである。図示例では、細孔11は六角形の穴形状を有しているが、これに限定されるものではなく、それ以外にも、たとえば、細孔11の穴形状は、円形、四角形などであってもよい。
【0034】
このメソポーラス体10は金属酸化物からなり、この金属酸化物を構成する金属としては、具体的にはCe、Zr、Al、Ti、Si、Mg、W、Fe、Sr、Y、Nb、Pなどから選ばれる一種の単体、または二種以上の固溶体が挙げられる。本例では、メソポーラス体10は、シリカからなる。
【0035】
そして、メソポーラス体10の細孔11内には、微粒子20が配置されている。この微粒子20は、メソポーラス体10の細孔11の内壁に一部分が含有されるか、もしくは細孔11の内壁の表面に吸着している形態で配置されている。
【0036】
この微粒子20は、一次粒子の平均粒子径がメソポーラス体10の細孔11の直径よりも小さいものであり、たとえば、1nm〜50nm程度の平均粒子径を持つものである。また、たとえば、微粒子20の平均粒子径は細孔11の直径の80%以下程度小さいものとする。
【0037】
この微粒子20は、図2(a)に示されるように、単一の粒子であってもよいし、図2(b)に示されるように、芯部21の外周面に、被覆層22が形成されているものであってもよい。
【0038】
図2(a)に示されるような微粒子20としては、たとえば、CeやCe−Zr、Ti、Zrなどの金属酸化物が挙げられる。また、図2(b)に示されるような微粒子20としては、上記特許文献1に記載のナノ複合触媒粒子が挙げられる。
【0039】
詳細は、上記特許文献1に譲るが、本実施形態におけるナノ複合触媒粒子としては、たとえば、Ce、Zr、Al、Ti、Siなど金属酸化物からなる芯部21の表面に、具体的に、Pt、Pd、Rh、Ir、Ruなどの貴金属または金属酸化物からなる被覆層23が付着したものにできる。また、この芯部21は酸素吸蔵放出機能を有するものであってもよい。
【0040】
このように、本実施形態のメソポーラス構造体100は、径が5nm以上50nm未満の細孔11を持つメソポーラス体10の、当該細孔11内に、細孔11の径よりも小さい平均粒子径を持つ微粒子20を配置してなる。また、このメソポーラス構造体100は全体として1.0μmかそれ以下の大きさのものである。
【0041】
次に、このメソポーラス構造体100の製造方法について述べる。メソポーラス体10としては市販のものを使用してもよいし、テンプレートを用いて作製したものを用いてもよい。テンプレートを用いてメソポーラス体10を作製する方法は、従来と同様のものであり、具体的には「背景技術」にて上記した通りである。
【0042】
ここで、本実施形態では、このテンプレートを用いたメソポーラス体10の作製工程において、焼成によってテンプレートを焼失させることに代えて、沈殿物乾燥後のテンプレートを細孔11の内部に残した状態で、表面疎水化剤とともに有機溶媒中で混合した後、アルコールでテンプレートを洗い流すようにしてもよい。
【0043】
ここで、表面疎水化剤としては、ケイ酸アルコキシドなどの化合物を用いた一般的な表面疎水化剤、有機溶媒としてもシクロヘキサンなどの一般的なものを採用できる。それによって、細孔11以外の外表面が疎水化処理されたメソポーラス体10が形成される。
【0044】
なお、テンプレートとしては、一般的な両親媒性のポリ(アルキレンオキサイド)ブロックコポリマーを採用できる。望ましくは、そのようなブロックコポリマーとしては、たとえば、ポリ(エチレンオキサイド)(EOx)のような親水性のポリ(アルキレンオキサイド)がポリプロピレンオキサイド(POx)のような疎水性ポリ(アルキレンオキサイド)の向かい合っている端に直線状に共有結合したトリブロックコポリマー(EOx−POx−EOx)、または、ポリ(エチレンオキサイド)がポリ(ブチレンオキサイド)(BOy)に直線状に共有結合したジブロックコポリマー(EOx−BOy)、または、ポリ(エチレンオキサイド)がポリ(乳酸)(LA)に直線状に共有結合したジブロックコポリマー(EOx−LA)などが挙げられる。ここで、xおよびyは各ポリマーの重合度を示す。たとえば、EO20−PO70−EO20の場合、EOの重合度は20、POの重合度は70であることを示す。
【0045】
そして、このようにして用意されたメソポーラス体10を用いて、メソポーラス体10と微粒子20とを混合した水溶液を作製する。そして、この混合水溶液に対して上述した亜臨界処理、または減圧含浸処理を行うことにより、微粒子20をメソポーラス体10の細孔11内に担持する。
【0046】
あるいは、用意されたメソポーラス体10を乾燥処理した後、微粒子20を分散させた水溶液を、メソポーラス体10の細孔11内に含浸させることにより、微粒子20をメソポーラス体10の細孔11内に担持する。
【0047】
図3(a)、(b)は、これら亜臨界処理、減圧含浸処理、乾燥処理のいずれかを行うことにより、微粒子20がメソポーラス体10の細孔11に侵入し、担持される様子を模式的に示す図である。
【0048】
なお、上述したように、亜臨界処理とは、メソポーラス体10と微粒子20とを混合した水溶液中の水を亜臨界水にすることであり、亜臨界水とは、上述したように、臨界点近傍の温度、圧力の低い熱水のことである。ここで、図4は、水の存在状態図であり、図4中には、亜臨界水領域が示されている。
【0049】
この水溶液の水を亜臨界状態とすることは、当該水溶液に対して、水熱合成処理、超音波照射、もしくはマイクロ波照射を行うことにより、なされる。水熱合成では、耐圧容器に水溶液を入れ、たとえば180℃程度に加熱する。
【0050】
また、超音波照射では、一般的な超音波発生器を用いて水溶液に超音波を照射し、それにより発生する気泡の破裂によって起こる衝撃エネルギーにより水溶液中に局所的に亜臨界水状態を形成する。
【0051】
また、マイクロ波照射では、市販されているマイクロウェーブ装置などを用いて、たとえば通常の電子レンジなどで発生されるものと同様のマイクロ波を、水溶液に照射し、その衝撃を利用して局所的に亜臨界水状態を形成する。
【0052】
また、メソポーラス体10と微粒子20との混合水溶液に対して行う減圧含浸処理は、当該水溶液をフラスコなどに入れて1気圧未満の減圧下に置き、水溶液中の水分を蒸発させながら、分散性よく細孔11内に微粒子20を導入する。
【0053】
また、メソポーラス体10の乾燥処理は、メソポーラス体10の細孔11内の表面級着水を除去するように乾燥させた後、メソポーラス体10の細孔11に対して、微粒子20が分散した水溶液を滴下してやればよい。
【0054】
これらうちのいずれかの方法によって、微粒子20をメソポーラス体10の細孔11内に担持した後、このメソポーラス体10を、沈殿物として取り出したり、水分を除去したりするなどの処理を行って乾燥し、焼成する。それにより、本実施形態のメソポーラス構造体100ができあがる。
【0055】
なお、微粒子を分散させた水溶液のpHを変え、メソポーラス体10と微粒子20の表面電荷を調整してやれば、より選択的にメソポーラス体10の細孔11内に微粒子20が配置されたメソポーラス構造体100を作製できる。
【0056】
次に、限定するものではないが、本実施形態のメソポーラス構造体100の製造方法について、以下の各実施例および比較例を参照して、より具体的に説明する。なお、以下の各実施例によって作製されるメソポーラス構造体は、各種の触媒として適用が可能なものである。
【0057】
(実施例1)
本例は、亜臨界処理を行うものである。メソポーラス体として、テンプレートであるEO20−PO70−EO20を用いテンプレート法により作製したシリカよりなるメソポーラス体を用い、微粒子として、酸素吸蔵放出機能を有する粒径が約4nmのCe酸化物を用いた。
【0058】
微粒子を純水に分散させ、この分散水にシリカよりなるメソポーラス体を微粒子に対して、メソポーラス体:微粒子=3:1の重量比で添加し、これにジエタノールアミンを加えてpHを7とした。
【0059】
これを十分に混合した後に、この水溶液を耐圧容器に移し、亜臨界処理として、180℃で24時間、水熱合成処理を行った。続いて、この水溶液を室温、大気圧に戻し、沈殿物を得た。
【0060】
その後、耐圧容器から沈殿物を取り出し、これを乾燥し、800℃で焼成することによってメソポーラス体の細孔に粒径が約4nmのCe酸化物よりなる微粒子を配置してなるメソポーラス構造体を得た。
【0061】
(実施例2)
亜臨界水処理として、周波数が25kHzの超音波を2時間照射したこと以外は、上記実施例1と同様の手法を用いて、シリカよりなるメソポーラス体の細孔に粒径が約4nmのCe酸化物よりなる微粒子を配置してなるメソポーラス構造体を得た。
【0062】
(実施例3)
亜臨界水処理として、マイクロウェーブ装置を用いて10分間、マイクロ波照射を行ったこと以外は、上記実施例1と同様の手法を用いて、シリカよりなるメソポーラス体の細孔に粒径が約4nmのCe酸化物よりなる微粒子を配置してなるメソポーラス構造体を得た。
【0063】
(実施例4)
微粒子の分散水を塩酸などを加えてpH3にしたこと以外は、上記実施例1と同様の手法を用いて、シリカよりなるメソポーラス体の細孔に粒径が約4nmのCe酸化物よりなる微粒子を配置してなるメソポーラス構造体を得た。
【0064】
(実施例5)
本例は、減圧含浸処理を行うものである。上記実施例1と同様に、メソポーラス体としてシリカよりなるメソポーラス体を用い、微粒子としてCe酸化物を用いた。
【0065】
そして、微粒子を純水に分散させ、この分散水にシリカよりなるメソポーラス体を微粒子に対して、メソポーラス体:微粒子=3:1の重量比で添加し、これにジエタノールアミンを加えてpHを7とした。
【0066】
これを十分に混合した後に、この水溶液をナスフラスコに移し、40℃、0.1気圧の減圧下に置いた。これにより、水溶液中の水分を乾燥して除去した。その後、残った乾燥体をナスフラスコから取り出し、800℃で焼成することによって、メソポーラス体の細孔に粒径が約4nmのCe酸化物よりなる微粒子を配置してなるメソポーラス構造体を得た。
【0067】
(実施例6)
本例は、上記乾燥処理を行うものである。上記実施例1と同様に、メソポーラス体としてシリカよりなるメソポーラス体を用い、微粒子としてCe酸化物を用いた。
【0068】
メソポーラス体を0.1気圧、40℃で乾燥させた後、乳鉢ですり潰しながら、微粒子を純粋に分散させた分散水を、1ミリリットル/秒の速度で、微粒子がメソポーラス体に対して、メソポーラス体:微粒子=3:1の重量比になるまで滴下し、その後、800℃で焼成することによってメソポーラス体の細孔に粒径が約4nmのCe酸化物よりなる微粒子を配置してなるメソポーラス構造体を得た。
【0069】
(実施例7)
乾燥処理として、200℃で5時間、乾燥させたこと以外は、上記実施例6と同様の手法を用いて、シリカよりなるメソポーラス体の細孔に粒径が約4nmのCe酸化物よりなる微粒子を配置してなるメソポーラス構造体を得た。
【0070】
(実施例8)
乾燥処理として、一般的な凍結乾燥により24時間、乾燥を行ったこと以外は、上記実施例6と同様の手法を用いて、シリカよりなるメソポーラス体の細孔に粒径が約4nmのCe酸化物よりなる微粒子を配置してなるメソポーラス構造体を得た。
【0071】
(実施例9)
メソポーラス体として、テンプレートを用いて作製する場合に、乾燥後のテンプレートを細孔内部に残した状態で、ケイ酸アルコキシドよりなる表面疎水化剤とともに、有機溶媒としてのシクロヘキサン中で混合した後、アルコールでテンプレートを洗い流した。
【0072】
それにより、外表面のみ疎水化されたメソポーラス体を形成し、これを用いて上記各実施例と同様の手順を行い、それぞれにおいて、シリカよりなるメソポーラス体の細孔に微粒子を配置してなるメソポーラス構造体を得た。
【0073】
(実施例10)
微粒子として、酸素吸蔵放出機能を有する固溶体である粒径が約4nmのCe−Zr酸化物固溶体(Ce:Zr=70:30)を用いたこと以外は、上記実施例1と同様の手法を用いて、シリカよりなるメソポーラス体の細孔に微粒子を配置してなるメソポーラス構造体を得た。
【0074】
(実施例11)
微粒子として、酸素吸蔵放出機能を有する粒径が約4nmのCe−Zr酸化物固溶体を芯部とし、その外周面にPtおよびRhの被覆層が形成されてなるものを用いたこと以外は、上記実施例1と同様の手法を用いて、シリカよりなるメソポーラス体の細孔に微粒子を配置してなるメソポーラス構造体を得た。
【0075】
(実施例12)
微粒子として、粒径が約4nmのTi酸化物を用いたこと以外は、上記実施例1と同様の手法を用いて、シリカよりなるメソポーラス体の細孔に微粒子を配置してなるメソポーラス構造体を得た。
【0076】
(実施例13)
微粒子として、粒径が約4nmのZr酸化物を用いたこと以外は、上記実施例1と同様の手法を用いて、シリカよりなるメソポーラス体の細孔に微粒子を配置してなるメソポーラス構造体を得た。
【0077】
(比較例1)
pHを1以下とした水中にテンプレートEO20−PO70−EO20を混合し、撹拌しながら、粒径が約4nmのCe酸化物からなる微粒子とオルトテトラケイ酸エチル(TEOS)を添加した。水とEO20−PO70−EO20と微粒子とTEOSの重量比は、120:4:1:8の割合である。
【0078】
これを十分に混合した後に、この水溶液を耐圧容器に移し、100℃で24時間の水熱合成を行った。その後、耐圧容器から溶液を取り出し、これを乾燥することにより生成物を分離し、600℃で焼成することによってテンプレートを焼失させ、シリカよりなるメソポーラス構造体を作製した。
【0079】
上記各実施例および比較例にて作製したメソポーラス構造体の細孔形状、微粒子の細孔内への配置状態を確認するためにTEM観察を実施した。上記各実施例においては、径が8〜9nmの配列した細孔が観察できたが、上記比較例で作製したメソポーラス構造体では、細孔内に内包されずに凝集した微粒子が多く観察され、細孔も一部分形成されているのみであった。
【0080】
また、上記各実施例において、イオンミリング法によってメソポーラス構造体の断面出しを行い、さらに、これをTEM観察したところ、メソポーラス構造体の細孔内に内包されている微粒子が観察され、微粒子が実際に細孔内に配置されていることを確認することができた。一方、比較例では、細孔内に微粒子の存在は実質的に見られなかった。
【0081】
なお、テンプレートとして、上記実施形態では、トリブロックコポリマー(EOx−POx−EOx)などの一般的な両親媒性のポリ(アルキレンオキサイド)ブロックコポリマーを挙げたが、テンプレート法に採用できるものならば、これらに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明の実施形態に係るメソポーラス構造体の概略構成を示す図であり、(a)は斜視図、(b)は断面図である。
【図2】上記実施形態に係る微粒子の模式的な構成を示す図である。
【図3】上記実施形態に係るメソポーラス構造体の製造方法を模式的に示す工程図である。
【図4】水の存在状態図である。
【符号の説明】
【0083】
10…メソポーラス体、11…メソポーラス体の細孔、
20…微粒子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メソポーラス体(10)の細孔(11)内に、前記細孔(11)の径よりも小さい平均粒子径を持つ微粒子(20)を配置してなるメソポーラス構造体の製造方法において、
前記メソポーラス体(10)を用意した後、前記メソポーラス体(10)と前記微粒子(20)とを混合した水溶液を作製し、この水溶液に対し加熱および加圧を行って前記水溶液中の水を亜臨界水状態とすることにより、前記微粒子(20)を前記メソポーラス体(10)の前記細孔(11)内に担持することを特徴とするメソポーラス構造体の製造方法。
【請求項2】
前記水溶液に対して、水熱合成処理、超音波照射、もしくはマイクロ波照射を行うことにより、前記水溶液中の水を亜臨界水状態とすることを特徴とする請求項1に記載のメソポーラス構造体の製造方法。
【請求項3】
メソポーラス体(10)の細孔(11)内に、前記細孔(11)の径よりも小さい平均粒子径を持つ微粒子(20)を配置してなるメソポーラス構造体の製造方法において、
前記メソポーラス体(10)を用意した後、前記メソポーラス体(10)と前記微粒子(20)とを混合した水溶液を作製し、この水溶液を、1気圧未満の減圧下に置くことにより、前記微粒子(20)を前記メソポーラス体(10)の前記細孔(11)内に担持することを特徴とするメソポーラス構造体の製造方法。
【請求項4】
メソポーラス体(10)の細孔(11)内に、前記細孔(11)の径よりも小さい平均粒子径を持つ微粒子(20)を配置してなるメソポーラス構造体の製造方法において、
前記メソポーラス体(10)を用意し、次に、前記メソポーラス体(10)を乾燥させた後、前記微粒子(20)を分散させた水溶液を、前記メソポーラス体(10)の前記細孔(11)内に含浸させることにより、前記微粒子(20)を前記メソポーラス体(10)の前記細孔(11)内に担持することを特徴とするメソポーラス構造体の製造方法。
【請求項5】
前記メソポーラス体(10)として前記細孔(11)以外の外表面が疎水化処理されたものを用意することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載のメソポーラス構造体の製造方法。
【請求項6】
前記メソポーラス体(10)は前記テンプレートを鋳型として形成するものであり、
前記疎水化処理は、前記メソポーラス体(10)を前記テンプレートを鋳型として形成するときに、前記テンプレートを前記細孔(11)の内部に残した状態で、表面疎水化剤とともに有機溶媒中で混合した後、前記テンプレートをアルコールで洗い流すことにより行うことを特徴とする請求項5に記載のメソポーラス構造体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−127210(P2008−127210A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−309975(P2006−309975)
【出願日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】